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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175982
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】評価装置及び評価方法
(51)【国際特許分類】
   H02S 50/15 20140101AFI20241212BHJP
【FI】
H02S50/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094136
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】599114760
【氏名又は名称】東芝環境ソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】諸澤 泰裕
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251BA11
5F251KA09
(57)【要約】
【課題】太陽電池モジュールの発電性能評価装置及び評価方法を提供することを目的とする。
【解決手段】実施形態に係る評価装置は、Electro Luminescence(EL)現象により発光させた太陽電池モジュールの撮影画像(EL画像)に基づいて、前記太陽電池モジュールの発電性能を判定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Electro Luminescence(EL)現象により発光させた太陽電池モジュールの撮影画像(EL画像)に基づいて、前記太陽電池モジュールの発電性能を推定する評価装置。
【請求項2】
前記EL画像を処理して輝度情報を抽出する画像処理部を備え、
前記輝度情報に基づいて前記発電性能を推定する請求項1に記載の評価装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、
前記EL画像をマスキング処理して前記太陽電池モジュールの部分の画像である抽出画像を抽出するマスキング処理部と、
前記抽出画像の全てのピクセルの輝度の平均である平均輝度を算出する平均輝度算出部と、を備え、
前記平均輝度に基づいて前記発電性能を推定する請求項2に記載の評価装置。
【請求項4】
前記平均輝度と最大出力との対応関係と前記平均輝度とに基づいて前記最大出力を推定する最大出力推定部を備え、
前記最大出力に戻づいて前記発電性能を推定する請求項3に記載の評価装置。
【請求項5】
前記画像処理部は、予め最大出力を測定済みの太陽電池モジュールである基準モジュールのEL画像(基準EL画像)に対する平均輝度(基準平均輝度)と最大出力が不明の太陽電池モジュールである評価モジュールのEL画像である評価EL画像に対する平均輝度(評価平均輝度)とを算出し、
前記最大出力推定部は、前記基準平均輝度と前記評価平均輝度と前記対応関係とに基づいて、前記評価モジュールの最大出力を推定する請求項4に記載の評価装置。
【請求項6】
前記最大出力推定部は、前記基準平均輝度と前記対応関係とから水平移動量を算出し、
前記水平移動量で前記評価平均輝度を調整した調整された評価平均輝度を算出する輝度調整部と、
前記調整された評価平均輝度と前記対応関係とから前記評価モジュールの最大出力を求める出力変換部と、を備える請求項5に記載の評価装置。
【請求項7】
前記基準EL画像と前記評価EL画像は、前記基準モジュールと前記評価モジュールとを別々に撮影したEL画像である請求項5に記載の評価装置。
【請求項8】
前記基準モジュールと前記評価モジュールとを並べて同時に撮影して同一のEL画像に含め、前記同一のEL画像から基準モジュールの画像部分を抽出した画像を前記基準EL画像とし、前記同一のEL画像から評価モジュールの画像部分を抽出した画像を前記評価EL画像とする請求項5に記載の評価装置。
【請求項9】
前記平均輝度が第1閾値以上である場合に、前記太陽電池モジュールの発電性能発の状態が良好と判定する請求項3に記載の評価装置。
【請求項10】
前記平均輝度に基づいて、前記太陽電池モジュールのクラスを判定する請求項3に記載の評価装置。
【請求項11】
前記最大出力が第1閾値以上である場合に、前記太陽電池モジュールの発電性能の状態が良好と判定する請求項4に記載の評価装置。
【請求項12】
前記最大出力に基づいて、前記太陽電池モジュールのクラスを判定する請求項4に記載の評価装置。
【請求項13】
前記対応関係を格納する記憶部を備え、当該記憶部には、前記評価モジュールの型式ごとの前記対応関係を備える請求項5に記載の評価装置。
【請求項14】
Electro Luminescence(EL)現象により発光させた太陽電池モジュールの撮影画像を処理する画像処理部を備え、
前記画像処理部は、
前記撮像画像に含まれるフチ部分の画像をマスクするためのマスキングデータを生成するマスキングデータ生成部と、
前記マスキングデータによりマスクされた残りの画像部分を抽出画像として取り出すマスキング処理部と、
前記抽出画像の全ての輝度の平均である平均輝度を算出する平均輝度算出部と、を備え、
前記平均輝度に基づいて前記太陽電池モジュールの発電性能を推定する請求項1に記載の評価装置。
【請求項15】
前記マスキングデータ生成部は、前記フチ部分の画像に対して、マスキングデータを出力するメモリを備え、当該メモリの読出しタイミングとアドレスを調整可能とする請求項14に記載の評価装置。
【請求項16】
Electro Luminescence(EL)現象により発光させた太陽電池モジュールの撮影画像(EL画像)に基づいて、前記太陽電池モジュールの発電性能を推定する評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、EL画像を用いた太陽電池モジュールの発電性能の評価装置及び評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換型半導体である太陽電池モジュールは太陽光を受けると発電することが知られているが、逆に外部から電流を印可すると発光する現象が知られている。この現象はEL(Electro Luminescence)現象と呼ばれており、発電素子(一般的にはSi型半導体)の断線、割れ、形成不良などの不良確認など太陽電池モジュールの品質評価(EL性能評価)に利用されている。太陽電池モジュールのリユースなどのためには、EL性能評価の他、発電性能(最大出力)を評価するIV性能評価(電流・電圧性能評価)、外観検査、耐電圧性能評価、絶縁性能評価などの品質評価の工程が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2006/059615号
【特許文献2】特開2014-228517号公報
【特許文献3】特開2017-67605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、各品質評価工程には専用の機材が必要となるなど導入コスト、維持コストが大きい。特にIV性能評価装置は、運用コストも高く、低コストに導入可能であるというリユース品のメリット低減の一因となる。また今後のリユース品の需要増加を想定すると、大量の太陽電池モジュール製品を短期間かつ低コストに品質評価する必要がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、太陽電池モジュールの発電性能の評価装置及び評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る評価装置は、Electro Luminescence(EL)現象により発光させた太陽電池モジュールの撮影画像(EL画像)に基づいて、前記太陽電池モジュールの発電性能を判定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係る太陽電池モジュールの評価システムの構成ブロック図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る評価装置における太陽電池モジュール評価処理の動作例を示すフローチャートである。
図3図3は、第1の実施形態に係る評価装置がEL性能評価により取得した太陽電池モジュールの画像と8ビット変換した画像の例である。
図4図4は、第1の実施形態に係る評価装置がマスキングデータ生成過程において生成する画像の例である。
図5図5は、第1の実施形態に係る評価装置のマスキング処理の過程において生成する画像の例である。
図6図6は、第1の実施形態に係る評価装置の平均輝度の算出処理の動作例を示すフローチャートである。
図7図7は、第1の実施形態に係る評価装置による太陽電池モジュールの発電性能の判定方法の例を示す図である。
図8図8は、第2の実施形態に係る太陽電池モジュールの評価システムの構成ブロック図である。
図9図9は、第2の実施形態に係る評価装置の検量線の生成処理の動作例を示すフローチャートである。
図10図10は、第2の実施形態に係る評価装置が取得した太陽電池モジュールのデータの分布図の一例である。
図11図11は、第2の実施形態に係る評価装置検量線の生成処理過程の動作例を示すフローチャートである。
図12図12は、第2の実施形態に係る評価装置による太陽電池モジュールの取得データを調整した後のデータの例を示す分布図である。
図13図13は、第2の実施形態に係る評価装置による太陽電池モジュールの評価順の例を示す模式図である。
図14図14は、第2の実施形態に係る評価装置による太陽電池モジュールの発電性能の判定処理の動作例を示すフローチャートである。
図15図15は、第2の実施形態に係る評価装置が平均輝度と検量線とから太陽電池モジュールの最大出力を決定する手順を示す図である。
図16図16は、第2の実施形態に係る評価装置による太陽電池モジュールの発電性能の判定方法の例を示す図である。
図17図17は、第3の実施形態に係る評価装置による太陽電池モジュールのEL画像の例を示す模式図である。
図18図18は、第3の実施形態に係る評価装置による太陽電池モジュールの発電性能の判定処理の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
本実施形態の評価システムは、EL性能評価において撮影した太陽電池モジュールの画像から輝度などの明るさ情報を抜きだし、計算可能な数値として算出する。より具体的には、撮影したRGBカラー画像を8bitのHSL画像に変換してピクセルごとの輝度を抽出し、マスキング処理などを行った上で、8bitのHSL画像から平均輝度を算出する。本実施形態の評価システムは、算出した平均輝度に基づいて、太陽電池モジュールの発電性能を推測する。発電性能とは、太陽電池モジュールに日光が当たった際、どの程度発電するかという性能を示し、太陽電池モジュールの発電量、発電量の良否などを含んだ太陽電池モジュールの発電に関わる状態を示す場合もある。また最大出力は通常、基準光(AM1.5、1000W/m2)換算で何W出力するかという値として定義され、発電性能に対する評価基準の一つである。
【0009】
図1は、第1の実施形態に係る太陽電池モジュールの評価システムの構成ブロック図である。
【0010】
評価装置1は、演算機能、制御機能などを備え、ソフトウェアなどのプログラムを実行するCPUや、データを記憶する揮発性メモリや不揮発性メモリなどを備えたコンピュータであり、例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォンなど任意のコンピュータ装置であってよい。評価装置1は、任意の外部装置と接続可能であり、例えばカメラから画像を取得したり、モニタへ表示データを出力したりすることができる。なお、評価装置1は、EV評価装置の機能に含めてEV評価装置の機能としてもよいし、EV評価装置とは独立な装置としてもよい。
【0011】
画像処理部10は、撮影部2から入力される画像データを処理し、画像データの画素(ピクセルとも称する)ごとに輝度、さらには後述する平均輝度などを算出する。輝度や輝度に基づいて得られる平均輝度などを含めて、輝度情報と称する。画像処理部10は、CPUで実行されるソフトウェア(プログラム)であってもよいし、IC回路などのハードウェアであってもよいし、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせで実現されてもよい。
【0012】
画像色調変換部101は、入力された画像が32ビットのRGBデータである場合に、8ビットのHSLデータに変換する。RGBデータは、赤、緑、青を原色として色を表現するRGBカラーモデルにより得られるデータであり、HSLデータは、色相、彩度、輝度で色を表現するHSLカラーモデルにより得られるデータである。ピクセルごとにRGBデータ、HSLデータが得られ、RGBデータからHSLデータへの変換が可能である。変換方法などは一般的な方法であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0013】
RGBデータ、HSLデータからそれぞれのピクセルの輝度を求めることができるが、本実施形態では入力画像であるEL画像の色は、明るさ、輝度がその大部分を占めているため、32ビットのRGBデータから得られる輝度は、8ビットのHSLデータから得られる輝度で近似することができる。画像色調変換部101が、32ビットのRGBデータ画像の各ピクセルを8ビットのHSLデータに変換して、各ピクセルの輝度を0~255までの簡易な数値で表すことにより、後工程の計算処理量が削減されるなどより扱いやすいデータとなる。
【0014】
画像2値変換部102は、画像の各ピクセルの輝度の閾値(例えば輝度3以上など)を設定し、閾値以上であるピクセルの輝度を1、閾値未満であるピクセルの輝度を0として変換する。すなわち画像2値変換部102は、1ビット画像を生成する。
【0015】
マスキングデータ生成部103は、太陽電池モジュール5のEL画像から後段の判定に必要な部分を抽出するためのマスキングデータを生成する。例えば、マスキングデータ生成部103は、EL画像上の太陽電池モジュール5のSiウェハ部分とフチ部分(Siウェハ外の部分であり、フレームと称する場合もある)を区別するために、フチ部分をマスキングするためのマスキングデータを作成する。より具体的にマスキングデータ生成部103は、画像2値変換部102が生成した1ビット画像に対して、補間処理やオブジェクト除去など必要に応じた加工をしてマスキングデータを得る。
【0016】
一度使用した太陽電池モジュール5のフチ部分は、使用条件(使用期間、使用場所、使用地域など)に応じて、傷がついていたり、輝度の高い砂、メッキの剥がれが生じていたり、テープ等の付着物がついていたりする。このため、フチ部分の輝度が、EL画像の測定に与える影響が大きい場合がある。また付着物と照明の角度によって、付着物や傷が高い輝度で発光することもある。
【0017】
これらの影響を考えると、Siウェハ部分の輝度を正確に測定するためには、上記フチ部分を精度よくマスクし、フチ部分の反射光(不要な輝度)がSiウェハ部分の輝度測定に悪影響を与えないように対策することが望ましい。本実施形態では、フチ部分をマスクするマスキングデータ生成部103を採用しており、このマスキングデータによりフチ部分を精度よくマスクしている。しかもマスキングデータ生成部103は、電気的にマスク位置を任意に且つ容易に調整可能でありマスク精度を高めることが可能である。具体的には、画像キャプチャ部分において、撮影した画像のフチ部分に対して、マスキングデータを出力するメモリを用意すればよいし、またメモリの読出しタイミングとアドレスを調整可能とすることで、マスク精度を一層高めることが可能である。
【0018】
マスキング処理部104は、EL画像に対して、マスキングデータ生成部103が生成したマスキングデータを適用してマスキングし、太陽電池モジュール5のEL画像から後段の判定に必要な画像部分を抽出する。このマスキング処理によりEL画像から輝度情報(発光情報)を計算する際の上記した反射光等のノイズを除去する効果もある。
【0019】
平均輝度算出部105は、Siウェハ部分(正常な場合に発光する部分)の平均輝度を算出する。詳細については後述する。
判定部11は、平均輝度算出部105が算出した平均輝度に基づいて、算出元のEL画像に写っている太陽電池モジュール5の発電性能を判定する。
出力部12は、判定部11が生成した判定結果などを外部へ出力する。
入力部13は、撮影部2から得た画像データを取得し、画像処理部10へ出力する。
【0020】
撮影部2は、例えばカメラであり、撮影して取得した画像データを評価装置1などへ出力することでもよい。
表示部3は、例えばディスプレイ、モニタであり、評価装置1が出力する表示データを表示させることでもよい。また評価装置1が音声データなどを出力する場合は、図示せぬスピーカーから音声データに基づいて音声を出力するようにしてもよい。
電気信号出力部4は、EL性能評価の評価対象である太陽電池モジュール5に入力するための電流を出力する。
【0021】
太陽電池モジュール5は、シリコン型(Si型)の光電変換型半導体であり、本実施形態による評価対象である。太陽電池モジュール5は、1以上の太陽電池セルを含む。太陽電池モジュール5は、太陽光を受けて発電するが、外部から電流を印可されると発光する特性がある。EL性能評価は、太陽電池モジュール5のこの特性を利用した評価方法である。
【0022】
以下、太陽電池モジュール評価システムの動作を説明する。本実施形態は、太陽電池モジュール5の品質評価工程におけるEL性能評価にて撮影した画像(以降、EL画像と称する)を用いる。EL性能評価は、電気信号出力部4から太陽電池モジュール5に電流を入力して、撮影部2で撮影して得たEL画像から太陽電池モジュール5の故障箇所などを判定する評価方法であり、品質評価工程の1つである。
【0023】
図2は、第1の実施形態に係る評価装置における太陽電池モジュール評価処理の動作例を示すフローチャートである。
【0024】
評価装置1は、太陽電池モジュール5のEL画像を取得し、画像処理部10へ入力する(ステップS101)。EL画像は32ビットのRGBカラーによる画像であるものとする。画像色調変換部101は、EL画像の色調変換を行う。より具体的に画像色調変換部101は、EL画像の各ピクセルの32ビットのRGBデータを8ビットのHSLデータに変換する(ステップS102)。
【0025】
図3は、第1の実施形態に係る評価装置がEL性能評価により取得した太陽電池モジュールの画像と8ビット変換した画像の例である。図3(a)は、32ビットのRGBカラーによるEL画像(32ビットRGB画像と称する)の例であり、エリアa10は、太陽電池セルを示し、エリアa100は、太陽電池モジュール5を示す。図に示すように太陽電池モジュール5は複数(図の例では60個)の太陽電池セルを含む。
【0026】
図3(b)は、8ビットのHSLデータに変換した後のEL画像(8ビットHSL画像と称する)の例である。図3(c)は、8ビットHSL画像の一部分(例えば、図3(b)のエリアa0)の5×6の各ピクセルに対して算出した輝度の例であり、0~255までの数値で表される。8ビットHSL画像の各ピクセルの輝度を8ビット輝度と称する場合もある。
【0027】
図2に戻り、画像処理部10は、マスクデータを生成する(ステップS103)。ステップS103において、画像2値変換部102は、ステップS102で得た8ビットHSL画像を2値の画像(1ビット画像と称する)に変換する。
【0028】
図4は、第1の実施形態に係る評価装置がマスキングデータ生成過程において生成する画像の例である。
【0029】
図4(a)は、ステップS102で得た1ビット画像の例であり、図3(c)に示した輝度に対して適当な閾値を設定し、ピクセルごとに、閾値以上の場合は色を白(輝度255)とし、閾値未満の場合は色を黒(輝度0)とした画像である。
【0030】
1ビット画像の黒の部分、例えばエリアa111の黒い部分は、太陽電池セルの間の空間を示し、エリアa112の黒い部分は、太陽電池セルの結線などを示し、エリアa113の黒い部分は、太陽電池セルについた傷など示す。エリアa113の黒い部分は、太陽電池モジュールの発電量に関わる部分であるが、エリアa111及びエリアa112の黒い部分は、Siウェハ部分ではなく最大出力に影響のない部分であるため、マスキング処理をしてもよい。本実施形態おいては、処理量削減などのために、エリアa111、エリアa112を含めて後段の平均輝度算出エリア(図4(c)のa131)とする例を示す。
【0031】
図4(b)は、図4(a)の画像の隙間(例えば、エリアa111、a112、a113の黒い部分)を埋めるように補間処理を実施した結果の画像(補間処理後画像と称する)である。エリアa121の黒い部分は、補間処理後画像に残ったオブジェクトの例を示す。
【0032】
図4(c)は、図4(b)のエリアa121のオブジェクトを除去する処理を実施した結果の画像(オブジェクト除去画像と称する)である。
【0033】
図2に戻り、画像処理部10は、ステップS103の処理により得た図4(c)のオブジェクト除去画像をマスキングデータとする。マスキング処理部104は、このマスキングデータにより8ビットHSL画像をSiウェハ部分(太陽電池モジュール部分)のエリアa131とそれ以外のフチ部分(本来、発光しない部分)とに区別するマスキング処理を実施する(ステップS104)。
【0034】
図5は、第1の実施形態に係る評価装置のマスキング処理の過程において生成する画像の例である。
【0035】
図5(a)は、図3(b)に示した8ビットHSL画像であり、図5(b)は、図4(c)に示したマスキングデータ(1ビット画像)である。図5(c)は、図5(a)を図5(b)のマスキングデータでマスキング処理を実施した結果の画像である。
【0036】
図2のステップS104により、マスキング処理部104は、エリアa231の太陽電池モジュール5以外部分をマスキングする。すなわち、マスキング処理部104は、Siウェハ(太陽電池モジュール5)部分以外の輝度情報を削除する。これにより、反射光等により微弱な輝度を有していたフチ部分(特に顕著だったのは図5(a)のエリアa211)の輝度0とし完全な黒色としたことで、後段にて輝度情報を計算する際のノイズを除去することができる。
【0037】
平均輝度算出部105は、図5(c)の画像を元に、Siウェハ部分(太陽電池モジュール5)の平均輝度を算出する(ステップS105)。
【0038】
図6は、第1の実施形態に係る評価装置の平均輝度の算出処理の動作例を示すフローチャートである。
【0039】
平均輝度算出部105は、マスキングデータ(図5(b)に相当)に対する平均輝度X1を算出する(ステップS121)。図5(b)は1ビット画像であるため、画像の各ピクセルは、出力なし/あり(0か1)となり、出力値0のピクセル数をn0、出力値1のピクセル数をn1として平均輝度X1を式1として求める。
【0040】
X1=(1×n1+0×n0)/全体のピクセル数 (式1)
【0041】
式1から平均輝度X1は、出力1のピクセル数n1を全体のピクセル数(=n1+n0)で除算した値に等しく、また画像全体に対するSiウェハ部分(出力1のピクセル)の面積比率にも等しい。なお、図4(a)に示されるようにセルとセルの間にSiウェハでない隙間部分(d111の黒部分)が含まれるが、平均輝度算出部105は、この隙間部分を考慮して平均輝度X1を求めてもよい。ただし、太陽電池モジュールの周囲のSiウェハでない空白部分に比べ隙間部分の影響は小さいため、本実施形態においては、隙間部分は考慮しない。
【0042】
次に平均輝度算出部105は、マスキング後の8ビットHSL画像全体(図5(c)に相当)の平均輝度X2を算出する(ステップS122)。マスキング後の8ビットHSL画像全体の平均輝度は、式2のように画像の全ピクセルの輝度の合計を全体のピクセル数で除算した値として得る。
【0043】
X2=全ピクセルの輝度の合計/全体のピクセル数 (式2)
【0044】
X2はマスキング処理により取り除くエリアの面積(図5(c)のエリアa231以外の部分)を含む全体平均輝度となるため、平均輝度算出部105は、式3のように、この全体平均輝度X2を1ビット画像の赤色部分の面積比率である平均輝度X1で除算することでSiウェハ部分の平均輝度X3を算出する(ステップS123)。
【0045】
X3=全ピクセルの合計輝度/(全体のピクセル数×Siウェハ部分の面積率)
=X2/X1 (式3)
【0046】
平均輝度算出部105は、以上の手順により、評価対象となる太陽電池モジュールのEL画像から平均輝度情報を算出する(図2のステップS105)。
【0047】
図2に戻り、判定部11は、ステップS105にて得た平均輝度に基づいて、評価対象の太陽電池モジュールの発電性能を判定する(ステップS106)。本実施形態においては、平均輝度と太陽電池モジュールの発電量とが正の相関を示す傾向があるという光電変換の特性(可逆性)を利用する。
【0048】
ステップS106における判定の具体例を以下に示す。
【0049】
図7は、第1の実施形態に係る評価装置による太陽電池モジュールの発電性能の判定方法の例を示す図である。
【0050】
図7(a)は、平均輝度に閾値th0を設定し、評価対象の太陽電池モジュールの発電性能を判定する例である。判定部11は、ステップS105で得られた平均輝度がth0以上である場合は、評価対象の太陽電池モジュールの発電性能を良好(OK)と判定し、平均輝度がth0未満である場合は、発電性能を不良と判定する。
【0051】
図7(b)は、平均輝度に複数の閾値th1、th2、th3、th4を設定し、評価対象の太陽電池モジュールの発電性能をクラス分け判定する例である。判定部11は、ステップS105で得られた平均輝度X3に基づいて、クラスA(X3≧th1の場合)、クラスB(th1>X3≧th2の場合)、クラスC(th2>X3≧th3の場合)、クラスD(th3>X3≧th4の場合)、クラスE(th4>X3の場合)のようにクラス分けする。
【0052】
以上の手順により、EL現象を利用して発光させた太陽電池モジュール5の撮影画像であるEL画像の輝度情報から太陽電池モジュール5の発電性能の評価ができる。例えば、評価対象の太陽電池モジュール5のEL画像を評価装置1に入力すると、表示部3に、太陽電池モジュール5の発電性能の良否やクラスが表示されるようにしても良い。
(第2の実施形態)
本実施形態においては、検量線を用いた太陽電池モジュールの発電性能を判定する方法の例を示す。検量線は、最大出力と平均輝度の対応関係を示し、本実施形態においては、複数の太陽電池モジュールから取得したデータ(平均輝度、最大出力)に対する統計処理などにより得る。最大出力とは、太陽電池モジュールの発電量を表す物理量として一般的に用いられる電力値(単位はワットW)を示す。
【0053】
図8は、第2の実施形態に係る太陽電池モジュールの評価システムの構成ブロック図である。
【0054】
本実施形態の説明において、第1の実施形態の構成ブロック図(図1)に示した同一名称のブロックと区別する場合、符号にAを付与する。例えば、第1の実施形態の評価装置1は、本実施形態においては評価装置1Aのように示す。また例えば、撮影部2などのように特に区別を要しない場合は、Aを付与せずに、第1の実施形態で用いた符号をそのまま用いることとする。また図1と同一名称のブロックについては、機能が同様である場合には、その説明を省略し、ここでは図1と異なる点を中心に説明する。
入力部13Aは、評価対象の太陽電池モジュール5のEL画像を撮影部2から取得し、同時にその太陽電池モジュール5の最大出力(発電量)を取得する。太陽電池モジュール5の最大出力は、品質評価工程のIV性能評価においてIV性能評価装置によって取得される。IV性能評価は、一般的な事項であり、詳細な説明は省略する。
【0055】
記憶部14Aは、例えば不揮発性メモリであり、入力部13Aが取得したEL画像、最大出力など評価対象の太陽電池モジュール5のデータや検量線のデータなどが格納される。
検量線生成部15Aは、記憶部14Aに格納されるデータを統計処理するなどし、平均輝度と最大出力との関係を示す検量線を生成する。詳細な説明は後述する。
【0056】
輝度調整部16Aは、検量線や基準値などに基づいて、画像処理部10Aが算出する平均輝度に対する調整量(移動量)を算出する。
出力変換部17Aは、移動量、検量線に基づいて、評価対象の太陽電池モジュール5の最大出力を推定し、出力する。推定した最大出力を推定最大出力と称する。
【0057】
輝度調整部16Aと出力変換部17Aとを含めて、最大出力推定部100Aと称してもよい。最大出力推定部100Aは、平均輝度と検量線とに基づいて、最大出力を推定する。
【0058】
本実施形態においては、検量線作成、太陽電池モジュールの発電性能の評価との2つのフェーズに大きく分かれる。以下に、検量線作成のフェーズについて説明する。
【0059】
図9は、第2の実施形態に係る評価装置の検量線の生成処理の動作例を示すフローチャートである。
【0060】
入力部13Aは、IV性能評価装置によって測定された評価対象の太陽電池モジュール5の最大出力(実測最大出力)と、EL画像から算出した平均輝度とを組で記憶部14Aに格納する(ステップS201)。ステップS201においては、平均輝度を算出するために用いたEL画像の撮影日を撮影対象の太陽電池モジュール5に紐づけて記憶部14Aに格納する。多数の同一型式の太陽電池モジュール5に対してステップS201による処理を実施して、最大出力[W]と平均輝度との分布図を作成する(ステップS202)。
【0061】
図10は、第2の実施形態に係る評価装置が取得した太陽電池モジュールのデータの分布図の一例である。横軸を平均輝度(式3のX3に相当)、縦軸を最大出力[W]とし、250枚の同一型式の太陽電池モジュール5に対して、10日間にわたって25枚ずつ評価して得た実際のデータである。
【0062】
分布図では、EL画像の撮影日毎のデータ(同一撮影日のデータグループをpaletteと称する)ごとにマークを変えて示す。また同一撮影日のデータが多く集まっているエリアに示した楕円(G3、G4、G6、G8)の例のように、撮影日毎すなわちpaletteごとにデータが偏る傾向がある。本実施形態においては、このデータの偏りを考慮して検量線を作成する(図9のステップS203)。
【0063】
図11は、第2の実施形態に係る評価装置検量線の生成処理過程の動作例を示すフローチャートであり、図9のステップS203の詳細の動作に相当する。
【0064】
検量線生成部15Aは、記憶部14Aから全データ(図10のPalette1からPalette10までの全てのデータ)を取得し、全データを使って最小二乗近似直線(図10のLSL01に相当)を算出する(ステップS221)。
検量線生成部15Aは、同一撮影日のデータごとにデータの処理を行う(ステップS222からステップS226)。
【0065】
検量線生成部15Aは、同一撮影日のデータグループの2次元重心点を算出する(ステップS223)。図10のGC3、GC4、GC6、GC8は、それぞれpallet3、4、6,8のデータに対して算出した2次元重心点の例である。2次元重心点は、単純に同一撮影日の平均輝度、最大出力のそれぞれの平均値としてもよいし、それぞれの中央値などでもよい。また、過去に取得した同一撮影日のデータグループから各データの分散値などを算出し、分散の大きなデータを予めデータグループから削除してから算出したデータの平均値を2次元重心点とするなど任意のやり方が可能である。
【0066】
検量線生成部15Aは、2次元重心点を算出すると、ステップS221で算出した最小二乗近似直線と2次元重心点との横軸方向(平均輝度の軸)の差分(水平移動量)を計算する(ステップS223)。図10のHM3、HM4、HM6、HM8は、それぞれpallet3、4、6,8のデータに対する2次元重心点と最小二乗近似直線LSL01との水平移動量の例である。
【0067】
ステップS223において水平移動量を算出したのは、一般的にIV性能評価装置により測定される最大出力値は信頼性が高く誤差が小さいことから、図10に示した撮影日ごとのデータの偏りの原因は水平方向の平均輝度である可能性が高いことを考慮したものである。例えば、撮影日ごとに撮影場所の温度、湿度、カメラの初期化条件などが変わる可能性があり、それらを要因としてカメラの受光感度などが変化することなどが、平均輝度のデータの偏りの原因として考えられる。
【0068】
検量線生成部15Aは、ステップS223で算出した水平移動量で、データグループすなわちPaletteごとにデータを水平移動する(ステップS225)。例えば、図10のPalette6の場合は、全データを最小二乗近似直線LSL01に近づけるように水平移動量HM6で正の方向(右方向)に水平移動する。また図10のPalette3の場合は、全データを水平移動量HMで負の方向(左方向)に移動する。検量線生成部15Aは、ステップS223からステップS225の処理を全てのデータグループに対して実施することにより、撮影日ごとのデータの偏りを低減したデータが得られる。
【0069】
図12は、第2の実施形態に係る評価装置による太陽電池モジュールの取得データを調整した後のデータの例を示す分布図であり、図10の全データをステップS223からステップS225の処理によりPaletteごとの水平移動量HMで水平移動した後の分布図である。図12から平均輝度と最大出力との間には正の相関が確認できる。
【0070】
図9に戻り、データをグループごとに水平移動した後の全データを使って最小二乗近似直線を算出し、検量線を得る(ステップS203)。図12に示す検量線CCは、ステップS203において算出した最小二乗近似直線の例である。得られた検量線CCを記憶部14Aに格納する際には、最小二乗近似直線の係数の値を記憶部14Aに格納してもよい。例えば、最小二乗近似直線をy=ax+b(xを平均輝度、yを最大出力とする)とした場合、係数a、bの値を記憶部14Aに格納する。これにより平均輝度が得られば検量線CCを用いて最大出力が推定できる。
【0071】
また得られた検量線CC上の数点の座標データ(平均輝度、最大出力)をテーブルデータとして記憶部14Aに格納してもよい。テーブルデータとした場合、後段において検量線CCを用いるときには、テーブルデータを補間するなどして、得られた平均輝度に対する最大出力を算出することでもよい。
【0072】
なお、撮影部2として用いるカメラの型式や性能の違い、評価する太陽電池モジュール5の型式や性能の違い、電気信号出力部4の出力電気信号のバイアスなども平均輝度に関わる誤差の要因となる。本実施形態においては、撮影日ごとのデータの偏りを考慮したが、同一の撮影日でも、例えば、カメラの型式を変えて複数のデータグループを取得し、データグループごとに図11のステップS223からS225の処理を繰り返すことで、外的要因による平均輝度の変化を補正できる。本実施形態では、補正によりさまざまな外的要因を吸収することができ、太陽電池モジュール5の型式ごとに検量線を作成する。
【0073】
以上の手順により、検量線の作成ができる。太陽電池モジュール5の型式ごとに検量線を作成し、記憶部14Aに記憶しておくことでもよい。また、本実施形態においては、最小二乗近似直線を検量線とする例を示したが、検量線は、例えば、指数関数などの単調増加関数のように平均輝度と最大出力とが1対1対応する関数であれば直線には限らない。
【0074】
以下、太陽電池モジュールの発電性能の評価のフェーズについて説明する。
【0075】
図13は、第2の実施形態に係る評価装置による太陽電池モジュールの評価順の例を示す模式図である。
【0076】
太陽電池モジュール5-0は、IV性能評価装置による測定で最大出力が公称値の255Wであることがわかっている正常で故障のない太陽電池モジュール5であり、基準モジュールと称する。太陽電池モジュール5-1、5-2は、評価対象の評価モジュールであり、最大出力については未知である。本実施形態では、太陽電池モジュール5-0、5-1、5-2の順にEL画像20-0、20-1、20-2を撮影し、IV性能評価装置を用いずに太陽電池モジュール5-1、5-2の最大出力値を推定する。
【0077】
図14は、第2の実施形態に係る評価装置による太陽電池モジュールの発電性能の判定処理の動作例を示すフローチャートであり、図13に示したように、基準モジュールである太陽電池モジュール5-0、評価モジュールである太陽電池モジュール5-1、5-2の順にフローチャートの処理を実施する。
【0078】
評価装置1Aは、撮影部2からEL画像を取得すると、画像処理部10Aにおいて、平均輝度を算出する(ステップS251、S252)。本ステップにおける処理は、図2のフローチャートと同様の処理であり、ここでは詳細の説明は省略する。
【0079】
評価装置1Aは、太陽電池モジュール5の種類を判定する(ステップS253)。太陽電池モジュール5の種類は、基準モジュールか評価モジュールかの違いであり、本フローチャート処理の前に評価装置1Aに図示せぬパソコンのキーボードなどから種類を設定するようにしてもよいし、EL画像のデータに種類を示す属性情報を付与して、入力部13AがEL画像を取得する時に、太陽電池モジュール5の種類を受信するなど任意の方法であってよい。
【0080】
評価装置1Aは、入力されたEL画像が、基準モジュールの画像であることを確認すると(ステップS253の「基準モジュール」)、基準モジュールの最大出力の公称値255Wに基づいて、検量線CCから水平移動量を算出する(ステップS254)。
【0081】
図15は、第2の実施形態に係る評価装置が平均輝度と検量線とから太陽電池モジュールの最大出力を決定する手順を示す図であり、横軸を平均輝度、縦軸を最大出力とする。
【0082】
まず、画像処理部10Aは、基準モジュールの平均輝度AL0を算出する(図15の(1)、図14のステップS252に相当)。輝度調整部16Aは、検量線CC上の最大出力255W(基準モジュールの公称値)に対する平均輝度AL1を求め、水平移動量HMをAL0とAL1との差分として式21のように求める(図15の(2)、図14のステップS254に相当)。
【0083】
HM=AL1-AL0 (式21)
【0084】
以上の手順により、水平移動量HMを決定する。次にこの水平移動量HMを用いて、評価装置1Aが評価モジュールの発電性能の判定をする処理動作について説明する。
【0085】
図14に戻り、評価装置1Aは、評価モジュールである太陽電池モジュール5-1のEL画像を取得し、平均輝度を算出する(ステップS251、S252)。評価装置1Aは、入力されたEL画像が評価モジュールの画像であることを確認すると(ステップS253の「評価モジュール」)、ステップS254にて求めた水平移動量HMを用いて平均輝度に対する輝度調整処理を行い、検量線CCを用いて太陽電池モジュール5-1の最大出力を推定する(ステップS255、S256)。本ステップにおける動作について、図15を用いて以下に説明する。
【0086】
画像処理部10Aは、評価モジュールである太陽電池モジュール5-1の平均輝度AL2を算出する(図15の(3)、図14のステップS252に相当)。輝度調整部16Aは、平均輝度AL2を水平移動量HM分だけ水平移動させた平均輝度AL3を式22のように求める(図15の(4)、(5))。
【0087】
AL3=AL2+HM (式22)
【0088】
出力変換部17Aは、検量線CC上の平均輝度AL3に対する最大出力EV1を太陽電池モジュール5-1の最大出力とする(図15の(6))。太陽電池モジュール5-2についても同様に図15の(3)から(6)の手順で最大出力を推定することができる。
【0089】
以上の手順により、評価モジュールの最大出力を推定することができる。
【0090】
図14に戻り、判定部11Aは、ステップS256で推定した評価モジュールの最大出力に基づいて、評価モジュールの最大出力の状態の判定を行う(ステップS257)。
【0091】
図16は、第2の実施形態に係る評価装置による太陽電池モジュールの発電性能の判定方法の例を示す図である。
【0092】
図16(a)は、最大出力に閾値th10を設定し、評価対象の太陽電池モジュールの発電性能の良否を判定する例である。判定部11Aは、ステップS256で得られた最大出力EV1がth10以上である場合は、評価対象の太陽電池モジュールの発電性能を良好(OK)と判定し、最大出力EV1がth10未満である場合は、発電性能を不良と判定する。
【0093】
図16(b)は、最大出力に複数の閾値th11、th12、th13、th14を設定し、評価対象の太陽電池モジュールの発電性能をクラス分け判定する例である。判定部11Aは、ステップS256で得られた最大出力EV1に基づいて、クラスA(EV1≧th11の場合)、クラスB(th11>EV1≧th12の場合)、クラスC(th12>EV1≧th13の場合)、クラスD(th13>EV1≧th14の場合)、クラスE(th14>EV1の場合)のようにクラス分けをする。
【0094】
以上の手順により、EL現象を利用して発光させた太陽電池モジュール5の撮影画像であるEL画像の輝度情報と太陽電池モジュール5の最大出力との関係を示す検量線を用いて太陽電池モジュール5の発電性能の評価ができる。
【0095】
なお、本実施形態においては、評価を行う太陽電池モジュール5の型式は全て同一であることを前提としていたが、評価装置1Aは、太陽電池モジュール5の型式を認識して、認識した型式ごとに対応する検量線を利用することでもよい。本実施形態によれば、いくつかのデータサンプルを用いて作成した検量線を用いることで、大量の太陽電池モジュール製品の検査において、全数検査が不要となる可能性がある。また、検量線を用いた本実施形態によれば、高価なIV特性評価装置を用いずに発電性能の評価をすることが可能となり、リユースのための品質評価のコスト低減につながる。
(第3の実施形態)
第2の実施形態においては、図13に示したように、最大出力既知の基準モジュール、最大出力未知の評価モジュールの順にEL画像を別の画像として取得して、それぞれの平均輝度を算出する例を示したが、本実施形態においては、基準モジュール、評価モジュールを同時に撮影して同一のEL画像含める例を示す。
【0096】
構成ブロック図などは第2の実施形態の構成ブロック図(図8)と同様であるため図示しないが、本実施形態の説明において第2の実施形態と同一名称の機能ブロックを用いる場合は、必要に応じて符号にBを付与する。
【0097】
図17は、第3の実施形態に係る評価装置による太陽電池モジュールのEL画像の例を示す模式図である。
【0098】
EL画像20は、基準モジュールである太陽電池モジュール5-0と、4つの評価モジュールである太陽電池モジュール5-1から5-4の合計5つの太陽電池モジュール5に電気信号出力部4から同時に電流を入力してEL現象による発光をさせ、同時に撮影したEL画像を示す。EL画像20における太陽電池モジュール5-0から5-4部分の位置は、評価装置1Bに予め設定されているなどわかっているものとし、EL画像20から太陽電池モジュール5-0から5-4部分の画像をそれぞれ切り出し可能である。
【0099】
図18は、変形例に係る評価装置による太陽電池モジュールの状態判定の動作例を示すフローチャートである。
【0100】
評価装置1Bは、撮影部2からEL画像20を取得すると、画像処理部10Bにおいて、基準モジュールである太陽電池モジュール5-0部分の画像を切り出す(ステップS301、S302)。平均輝度算出部10Aは、切り出した画像から太陽電池モジュール5-0の平均輝度(図15のAL0に相当、以降、平均輝度AL0と称する)を算出する(ステップS303)。
【0101】
輝度調整部16Bは、検量線CCから基準モジュールの最大出力の公称値255Wに対応する平均輝度(図15のAL1に相当、以降、平均輝度AL1と称する)に基づいて、水平移動量(図15のHMに相当、以降、水平移動量HMと称する)HMを算出する(ステップS303)。本ステップにおける処理は、図14のフローチャートのステップS254に至る処理と同様であり、詳細の説明は省略する。
【0102】
評価装置1Bは、EL画像20に写る評価モジュールごとに発電性能の判定を行う(ステップS305からS311)。以下、評価モジュールである太陽電池モジュール5-1を例に詳細の動作を説明する。
【0103】
画像処理部10Bは、太陽電池モジュール5-1部分の画像を切り出す(ステップS305)。平均輝度算出部10Aは、切り出した画像から太陽電池モジュール5-1の平均輝度(図15のAL2に相当、以降、平均輝度AL2と称する)を算出する(ステップS307)。
【0104】
輝度調整部16Bは、平均輝度AL2に対してステップS303において算出された水平移動量HMで輝度調整処理を実行し、水平移動後の平均輝度(図15のAL3に相当、以降、平均輝度AL3と称する)を得る(ステップS308)。出力変換部17Bは、検量線CC上の平均輝度AL3に対する最大出力EV1を太陽電池モジュール5-1の最大出力(図15のEV1に相当、以降、最大出力EV1と称する)とする(ステップS309)。
【0105】
判定部11Bは、ステップS309で推定した太陽電池モジュール5-1の最大出力に基づいて、太陽電池モジュール5-1の発電性能の判定を行う(ステップS310)。ステップS310における状態判定処理は、図14のフローチャートに示したステップS257と同様である。
【0106】
以上の手順により、基準モジュールと1以上の評価モジュールとを同時にEL現象を利用して発光させて同時に撮影した1枚のEL画像から、評価モジュールの発電性能の評価ができる。
【0107】
以上に述べた少なくとも1つの実施形態によれば、太陽電池モジュールの発電性能の評価装置及び評価方法を提供する。また以上に述べた少なくとも1つの実施形態によれば、大量の太陽電池モジュール製品を短期間かつ低コストに品質評価可能となる。
【0108】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0109】
また、フローチャート、シーケンスチャートなどに示す処理は、CPU、ICチップ、デジタル信号処理プロセッサ(Digital Signal ProcessorまたはDSP)などのハードウェアもしくはマイクロコンピュータを含めたコンピュータなどで動作させるソフトウェア(プログラムなど)またはハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって実現してもよい。また請求項を制御ロジックとして表現した場合、コンピュータを実行させるインストラクションを含むプログラムとして表現した場合、及び前記インストラクションを記載したコンピュータ読み取り可能な記録媒体として表現した場合でも本発明の装置を適用したものである。
【0110】
また、使用している名称や用語についても限定されるものではなく、他の表現であっても実質的に同一内容、同趣旨であれば、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0111】
1…評価装置、2…撮影部、3…表示部、4…電気信号出力部、5…太陽電池モジュール、10…画像処理部、11…判定部、12…出力部、13…入力部、14A…記憶部、15A…検量線生成部、16A…輝度調整部、17A…出力変換部、101…画像色調変換部、102…画像2値変換部、103…マスキングデータ生成部、104…マスキング処理部、105…平均輝度算出部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18