(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175983
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】放射線撮像装置、放射線撮影システム、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/42 20240101AFI20241212BHJP
【FI】
A61B6/00 300S
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094137
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】小菅 麻人
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 孔明
(72)【発明者】
【氏名】上野 弘人
(72)【発明者】
【氏名】森田 秀明
(72)【発明者】
【氏名】大栗 洋和
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA03
4C093CA32
4C093EB12
4C093EB17
4C093FA33
(57)【要約】
【課題】 AEC機能の動作中において、消費電力を低減すること。
【解決手段】 本開示の放射線撮像装置は、放射線の照射線量を検出する検出画素を含む複数の画素群を有する撮像手段と、前記複数の画素群から出力される信号を読み出す複数の読み出し手段と、前記複数の画素群において、前記撮像手段における撮像領域に含まれる複数の候補領域のうち関心領域として選択された少なくとも一つの候補領域を含まない画素群が存在する場合には、前記検出画素を用いて前記照射線量を検出する検出期間において、前記少なくとも1つの候補領域の少なくとも一部の領域を含む少なくとも1つの画素群から出力される信号を読み出す第1の読み出し手段を第1の状態に制御し、前記少なくとも一つの候補領域を含まない画素群から出力される信号を読み出す第2の読み出し手段を前記第1の状態より電力消費の少ない第2の状態に制御する制御手段と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線の照射線量を検出する検出画素を含む複数の画素群を有する撮像手段と、
前記複数の画素群から出力される信号を読み出す複数の読み出し手段と、
前記複数の画素群において、前記撮像手段における撮像領域に含まれる複数の候補領域のうち関心領域として選択された少なくとも一つの候補領域を含まない画素群が存在する場合には、前記検出画素を用いて前記照射線量を検出する検出期間において、前記少なくとも1つの候補領域の少なくとも一部の領域を含む少なくとも1つの画素群から出力される信号を読み出す第1の読み出し手段を第1の状態に制御し、前記少なくとも一つの候補領域を含まない画素群から出力される信号を読み出す第2の読み出し手段を前記第1の状態より電力消費の少ない第2の状態に制御する制御手段と、
を備える放射線撮像装置。
【請求項2】
前記複数の画素群は放射線画像を取得する撮像画素をさらに有し、
前記制御手段は、前記撮像画素を用いて前記放射線画像を取得する画像取得期間において、前記第1の読み出し手段と前記第2の読み出し手段とを前記第1の状態に制御する請求項1記載の放射線撮像装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記検出期間において検出された前記照射線量が閾値に到達した後に、前記第2の読み出し手段を前記第2の状態から前記第1の状態に変更し前記画像取得期間を開始する請求項2記載の放射線撮像装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記検出期間において、前記第1の読み出し手段に第1の電圧を供給することで前記第1の読み出し手段を前記第1の状態に制御し、前記第2の読み出し手段に前記第1の電圧より低い第2の電圧を供給することで前記第2の読み出し手段を前記第2の状態に制御する請求項1記載の放射線撮像装置。
【請求項5】
前記関心領域は、操作者からの指示により選択される請求項1記載の放射線撮像装置。
【請求項6】
前記複数の画素群の各々から出力される信号は、前記複数の読み出し手段の各々により読み出される請求項1記載の放射線撮像装置。
【請求項7】
前記撮像手段は、前記検出画素を含まない複数の第2の画素群をさらに有し、
前記制御手段は、前記検出期間において、前記複数の第2の画素群から出力される信号を読み出す複数の第3の読み出し手段を前記第2の状態に制御する請求項1記載の放射線撮像装置。
【請求項8】
前記複数の候補領域は前記複数の画素群のうちいずれかに含まれる請求項7記載の放射線撮像装置。
【請求項9】
前記複数の第2の画素群は1つの前記複数の第3の読み出し手段により読み出される請求項7記載の放射線撮像装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記第1の読み出し手段を前記第1の状態に制御し、且つ前記第2の読み出し手段を前記第2の状態に制御して、前記照射線量を補正する第1の補正データを前記検出期間より前の第1の期間において取得し、前記第1の補正データを用いて前記照射線量を前記検出期間において補正する請求項1記載の放射線撮像装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記第1の読み出し手段を前記第1の状態に制御し、且つ前記第2の読み出し手段を前記第2の状態に制御して、前記放射線画像を補正する第2の補正データを前記画像取得期間より後の第2の期間において取得し、前記第2の補正データを用いて前記放射線画像を前記第2の期間において補正する請求項1記載の放射線撮像装置。
【請求項12】
複数の選択肢と前記複数の候補領域とを表示し、操作者からの指示により前記複数の選択肢のうち1つが選択された場合は、前記複数の候補領域のうち関心領域として選択された少なくとも1つの候補領域を強調するように表示する制御を行う表示制御手段をさらに備える請求項1記載の放射線撮像装置。
【請求項13】
放射線の照射線量を検出する検出画素を含む複数の画素群を有する撮像手段と、
前記複数の画素群から出力される信号を読み出す複数の読み出し手段と、
前記複数の画素群において、前記撮像手段における撮像領域に含まれる複数の候補領域のうち関心領域として選択された少なくとも一つの候補領域を含む画素群から出力される信号を読み出す第1の読み出し手段を第1の状態に制御し、且つ前記少なくとも一つの候補領域を含まない画素群から出力される信号を読み出す第2の読み出し手段を前記第1の状態より電力消費の少ない第2の状態に制御する制御手段と、
を備える放射線撮像装置。
【請求項14】
情報処理を行う情報処理装置と、
前記情報処理装置と通信可能に接続された請求項1乃至13のいずれか1項に記載の放射線撮像装置と、
を備える放射線撮影システム。
【請求項15】
放射線の照射線量を検出する検出画素を含む複数の画素群を有する撮像手段から出力される信号を複数の読み出し手段により読み出す放射線撮像装置の制御方法であって、
前記複数の画素群において、前記撮像手段における撮像領域に含まれる複数の候補領域のうち関心領域として選択された少なくとも一つの候補領域を含まない画素群が存在する場合には、前記検出画素を用いて前記照射線量を検出する検出期間において、前記少なくとも1つの候補領域の少なくとも一部の領域を含む少なくとも1つの画素群から出力される信号を読み出す第1の読み出し手段を第1の状態に制御し、前記少なくとも一つの候補領域を含まない画素群から出力される信号を読み出す第2の読み出し手段を前記第1の状態より電力消費の少ない第2の状態に制御する制御方法。
【請求項16】
放射線の照射線量を検出する検出画素を含む複数の画素群を有する撮像手段から出力される信号を複数の読み出し手段により読み出す放射線撮像装置の制御方法であって、
前記複数の画素群において、前記撮像手段における撮像領域に含まれる複数の候補領域のうち関心領域として選択された少なくとも一つの候補領域を含む画素群から出力される信号を読み出す第1の読み出し手段を第1の状態に制御し、且つ前記少なくとも一つの候補領域を含まない画素群から出力される信号を読み出す第2の読み出し手段を前記第1の状態より電力消費の少ない第2の状態に制御する制御方法。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の制御方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放射線撮像装置、放射線撮影システム、及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動露出制御(Automatic Exposure Control:AEC)機能を有する放射線撮像装置が知られている。AEC機能とは、放射線撮像装置が有する検出画素を用いて放射線の照射線量を測定し、照射線量が目標値に達したら放射線の照射を終了させる機能である。
【0003】
ここで、特許文献1には、AEC機能の動作を開始するまでは、検出画素から出力される信号を読み出す読み出し回路へ供給する電力を抑制することで、消費電力を低減可能とする放射線撮像装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の記載の技術では、例えば、AEC機能の動作中においては、消費電力を低減できない可能性がある。そこで、本開示の目的は、AEC機能の動作中において、消費電力を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の放射線撮像装置は、
放射線の照射線量を検出する検出画素を含む複数の画素群を有する撮像手段と、
前記複数の画素群から出力される信号を読み出す複数の読み出し手段と、
前記複数の画素群において、前記撮像手段における撮像領域に含まれる複数の候補領域のうち関心領域として選択された少なくとも一つの候補領域を含まない画素群が存在する場合には、前記検出画素を用いて前記照射線量を検出する検出期間において、前記少なくとも1つの候補領域の少なくとも一部の領域を含む少なくとも1つの画素群から出力される信号を読み出す第1の読み出し手段を第1の状態に制御し、前記少なくとも一つの候補領域を含まない画素群から出力される信号を読み出す第2の読み出し手段を前記第1の状態より電力消費の少ない第2の状態に制御する制御手段と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、AEC機能の動作中において、消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る放射線撮像装置の構成を示す図。
【
図5】実施形態に係る放射線撮影システムの構成例を示す図。
【
図6】実施形態に係る放射線撮影システムの動作例を示す図。
【
図8】実施形態に係る候補領域と読み出し回路の対応関係を示す図。
【
図9】実施形態に係る操作者の撮影フローと制御部180の動作フローを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付の図面を参照しつつ本開示の実施形態について以下に説明する。様々な実施形態を通じて同様の要素には同一の参照符号を付し、重複する説明を省略する。また、各実施形態は適宜変更、組み合わせが可能である。
【0010】
図5は、放射線撮像装置100を含む放射線撮影システム500の構成例を示す。放射線撮影システム500は、放射線撮像装置100、情報処理装置502、アクセスポイント503、通信デバイス504、同期制御装置505、放射線発生装置506、院内LAN508、状態通知デバイス509、を有している。
【0011】
放射線撮像装置100は、被写体Hを透過した放射線507に基づき放射線画像を撮影する。放射線撮像装置100で撮影された放射線画像は、情報処理装置502へと送られる。
【0012】
情報処理装置502は、汎用のコンピュータ等の公知の技術で実現される制御装置である。情報処理装置502は、アクセスポイント503を介して放射線撮像装置100と通信可能に接続されている。情報処理装置502は、放射線撮像装置100から受信した放射線画像に対する補正や、記憶及び表示のための画像処理を行う。このとき、画像処理の一部または全部の機能を放射線撮像装置100に行わせてもよい。また、情報処理装置502は、表示制御部511を有し、ディスプレイ等の表示部510を通して、操作者に対する放射線画像の表示や、操作者に対するGUIを表示するなどの表示制御を行う。なお、表示制御部511は、表示制御手段の一例である。また、情報処理装置502は不図示の入力部を有し、操作者から指示された撮影条件等が入力部へ入力される。また、情報処理装置502は、アクセスポイント503等から取得した信号強度と閾値との比較を行う。また、情報処理装置502は、アクセスポイント503等からの接続要求に対する返答を行う。また、情報処理装置502は、無線通信部で通信を行うための無線情報などをアクセスポイント503等へ送信したりする機能を有する。
【0013】
アクセスポイント503は、放射線撮像装置100と情報処理装置502との間で無線にて情報をやり取りするための電波の中継を行う機器である。なお、
図5ではアクセスポイント503が同期制御装置505を介して情報処理装置502に接続されているが、情報処理装置502に直接接続されていてもよい。
【0014】
通信デバイス504は、情報処理装置502に接続されており、放射線撮像装置100と情報処理装置502との間で無線での近距離通信を行うための電波の送受信を行う機器である。例えば、通信デバイス504は、USB(Universal Serial Bus)インターフェースにより情報処理装置502と接続されるドングルである。また、例えば、通信デバイス504はBluetooth(登録商標) Basic Rate/Enhanced Data Rate(BR/EDR)規格もしくはBluetooth Low Energy(BLE)規格の少なくとも一つに対応した機器である。また、通信デバイス504は、ID情報を埋め込んだタグから、電磁界や電波などを用いた近距離の無線通信によって情報をやりとりするRFID(radio frequency IDentifier)デバイスであってもよい。RFIDの交信方式は、電磁誘導方式、電波方式を問わない。また、通信デバイス504は、アクセスポイントの機能を有していてもよい。
【0015】
なお、上記の説明および
図5において通信デバイス504は情報処理装置502に接続されている例を示したが、この限りではない。通信デバイス504は、放射線発生装置506などの放射線撮影システム500を構成する他の装置に接続されていてもよい。また、通信デバイス504は、必ずしも独立したデバイスでなくてもよい。例えば、放射線撮影システム500を構成する装置のいずれかに組み込まれたデバイスであってもよい。
【0016】
状態通知デバイス509は、情報処理装置502に接続されている。状態通知デバイス509は、操作者への通知手段である。状態通知デバイス509は、アクセスポイント503もしくは通信デバイス504を介して受信した放射線撮像装置100の情報に基づき、放射線撮像装置100の現在の状態や特定の処理が完了したことを操作者へ通知する。状態通知デバイス509は、例えばLED等の発光体が用いられる。状態通知デバイス509は、複数の点灯パターンと放射線撮像装置100の複数の状態とを事前に紐づけておくことで操作者への通知を行う。また、状態通知デバイス509はスピーカ等の音源を用いてもよい。その場合は複数のブザー音のパターンと放射線撮像装置100の複数の状態とを事前に紐づけておくことで操作者への通知を行う。また、状態通知デバイス509は、発光体と音源とが組み合わされたデバイスであってもよい。また、状態通知デバイス509は情報処理装置502に接続されている例を示したが、情報処理装置502組み込まれたディスプレイやスピーカなどを使用してもよい。
【0017】
同期制御装置505は、通信を媒介する回路を保有し、放射線撮像装置100と放射線発生装置506の状態を監視する。例えば、同期制御装置505は、放射線発生装置506からの放射線507の照射を制御したり、放射線撮像装置100による被写体Hの撮影を制御したりする。また、同期制御装置505は、複数のネットワーク機器を接続するHUBなどを内蔵していてもよい。
【0018】
放射線発生装置506は、X線等の放射線507を発生する装置である。放射線発生装置506は、例えば、電子を高電圧で加速して陽極に衝突させる放射線管を有している。なお、放射線507は、X線の他、α線、β線、γ線、中性子線が用いられてもよい。放射線発生装置506から照射された放射線507は、患者である被写体Hに照射される。
【0019】
院内LAN508は、病院内に構築されたローカル・エリア・ネットワークである。院内LAN508は、放射線撮影システム500で撮影された放射線画像を、病院内の各所と送受信する機能を有する。
【0020】
ここで、放射線撮影システム500は、同期撮影と非同期撮影との2つの方法により撮影を行うことができる。同期撮影とは、放射線撮像装置100と放射線発生装置506との間で同期制御装置505を介して電気的な同期信号をやり取りすることで、放射線照射と撮影のタイミングを合わせる撮影方法である。一方、非同期撮影とは、放射線撮像装置100と放射線発生装置506との間で、電気的な同期信号をやりとりすることなく、放射線撮像装置100が、放射線の入射を検出することにより撮影を開始する撮影方法である。非同期撮影において、放射線撮像装置100は、撮影毎に放射線画像を転送してもよいし、撮影した画像を撮影毎に転送せずに放射線撮像装置100内部に記憶しておいてもよい。
【0021】
また、放射線撮影システム500は、透視撮影、連続撮影、静止画撮影、DSA撮影、ロードマップ撮影、プログラム撮影、断層撮影、トモシンセシス撮影など、放射線撮影にて一般的に撮影される撮影条件により撮影を行うことができる。
【0022】
また、放射線撮影システム500には、撮影フレームレート、管電圧、管電流、センサ読み出しエリア、センサ駆動ビニング設定、コリメータ絞り設定、放射線ウインドウ幅、放射線撮像装置100へ放射線画像を撮り溜めるか否かなどの各種の機能の設定が行われる。加えて、放射線撮影システム500には自動電圧制御(ADC:Auto Dose Contorol)、自動露出制御定(AEC:Auto Exposure Contorol)などの機能の設定が行われる。
【0023】
図1(a)は、本開示の実施形態に係る放射線撮像装置100の概略の構成例である。放射線撮像装置100は、撮像領域IRと、撮像領域IRに電源を供給する電源回路140と、撮像領域IRを駆動するための駆動回路150と、撮像領域IRで撮像された信号を読み出す読み出し回路160と、読み出し回路160で読み出した信号を処理する信号処理部170と、駆動回路150と読み出し回路160と信号処理部170とを制御する制御部180と、通信部190と、を有する。
【0024】
撮像領域IRは、撮像領域IR(1)~(5)からなる。撮像領域IR(1)~(5)各々の境界を破線で示す。各々の撮像領域IRは、後述する撮像画素を含む。また、各々の撮像領域IRは、撮像画素の他、後述する検出画素を含んでいてもよい。撮像領域IRは、例えば、半導体材料によって形成された平面検出器である。なお、撮像領域IR(1)や撮像領域IR(2)は、画素群の一例である。また、撮像領域IR(1)~(5)からなる撮像領域IRは、撮像手段の一例である。
【0025】
読み出し回路160は、読み出し回路(1)~(5)からなる。読み出し回路(1)~(5)各々の境界を破線で示す。撮像領域IR(1)~(5)の各々から出力される信号は、読み出し回路(1)~(5)の各々により読み出される。例えば、領域IR(1)は、読み出し回路(1)によって読み出される。また、例えば、領域IR(2)は、読み出し回路(2)によって読み出される。読み出し回路(1)~(5)各々は、例えば、IC(Integrated Circuit:集積回路)チップ等の電気部品で構成される。なお、読み出し回路(1)や、読み出し回路(2)は、読み出し手段の一例である。
【0026】
また、撮像領域IRには、関心領域が設定可能である。関心領域とは、医師が主として診断に用いる領域である。関心領域は、予め設けられた候補領域(R1~R9)から選択される。医師あるいは操作者は、撮影の前に、候補領域(R1~R9)のなかからいずれかを関心領域として選択する。また、候補領域(R1~R9)には、後述する撮像画素と検出画素とを含む。
【0027】
信号処理部170は、演算部171及び記憶部172を含んでいる。信号処理部170は、読み出し回路(1)~(5)から読み出された信号を受信し、その信号に対して演算、記憶などの信号処理を行う。
【0028】
通信部190は、制御部180により制御され、放射線撮像装置100と外部機器との通信を行う機能を有する。通信は有線通信、無線通信など望む方式や規格の通信を実現する通信部190を使用すればよく、特定の規格に限定されない。また複数の通信規格に対するために通信部190を複数搭載してもよい。
【0029】
図1(b)は、本開示の実施形態に係る放射線撮像装置100の詳細な構成例を示す。
図1(b)は、
図1(a)における一点鎖線の部分を示した図である。放射線撮像装置100は、複数の行及び複数の列を構成するように撮像領域IRに配列された複数の画素と、複数の駆動線110と、複数の信号線120とを有する。複数の駆動線110は、画素の複数の行に対応して配置されており、各駆動線110が何れか1つの画素行に対応する。複数の信号線120は、画素の複数の列に対応して配置されており、各信号線120が何れか1つの画素列に対応する。
【0030】
複数の画素は、放射線画像を取得するために用いられる複数の撮像画素101と、放射線の照射線量を検出するために用いられる1つ以上の検出画素104と、放射線の照射線量を補正するために用いられる1つ以上の補正画素107とを含む。放射線に対する補正画素107の感度は、放射線に対する検出画素104の感度よりも低い。
【0031】
撮像画素101は、放射線を電気信号に変換する変換素子102と、対応する信号線120と変換素子102とを互いに接続するスイッチ素子103とを含む。検出画素104は、放射線を電気信号に変換する変換素子105と、対応する信号線120と変換素子105とを互いに接続するスイッチ素子106とを含む。検出画素104は、複数の撮像画素101によって構成される行及び列に含まれるように配置される。補正画素107は、放射線を電気信号に変換する変換素子108と、信号線120と変換素子108とを互いに接続するスイッチ素子109とを含む。補正画素107は、複数の撮像画素101によって構成される行及び列に含まれるように配置される。
図1及び後続の図面では、変換素子102、変換素子105及び変換素子108に対して相異なるハッチングを付すことによって撮像画素101、検出画素104及び補正画素107を区別する。
【0032】
変換素子102、変換素子105及び変換素子108は、放射線を光に変換するシンチレータと、光を電気信号に変換する光電変換素子と、によって構成されてもよい。シンチレータは、一般的に、撮像領域IRを覆うようにシート状に形成され、複数の画素によって共有される。これに代えて、変換素子102、変換素子105及び変換素子108は、放射線を直接に電気信号に変換する変換素子で構成されてもよい。
【0033】
スイッチ素子103、スイッチ素子106及びスイッチ素子109は、例えば、非晶質シリコンまたは多結晶シリコンなどの半導体で活性領域が構成された薄膜トランジスタ(TFT)を含んでもよい。
【0034】
変換素子102の第1電極は、スイッチ素子103の第1主電極に接続され、変換素子102の第2電極は、バイアス線130に接続される。1つのバイアス線130は、列方向に延びていて、列方向に配列された複数の変換素子102の第2電極に共通に接続される。バイアス線130は、電源回路140からバイアス電圧Vsを受ける。1つの列に含まれる1つ以上の撮像画素101のスイッチ素子103の第2主電極は、1つの信号線120に接続される。1つの行に含まれる1つ以上の撮像画素101のスイッチ素子103の制御電極は、1つの駆動線110に接続される。
【0035】
検出画素104及び補正画素107も撮像画素101と同様の画素構成を有しており、対応する駆動線110及び対応する信号線120に接続される。検出画素104と補正画素107とは、信号線120に排他的に接続されている。すなわち、検出画素104が接続されている信号線120に補正画素107は接続されていない。また、補正画素107が接続されている信号線120に検出画素104は接続されていない。撮像画素101は、検出画素104又は補正画素107と同じ信号線120に接続されてもよい。
【0036】
駆動回路150は、制御部180からの信号に従って、複数の駆動線110を通じて、駆動対象の画素に対して駆動信号を供給するように構成される。本実施形態では、駆動信号は、駆動対象の画素に含まれるスイッチ素子をオンにするための信号である。各画素のスイッチ素子は、ハイレベルの信号でオンとなり、ローレベルの信号でオフとなる。そのため、このハイレベルの信号を駆動信号と呼ぶ。画素に駆動信号が供給されることによって、この画素の変換素子に蓄積された信号が読み出し回路160によって読み出し可能な状態となる。駆動線110が検出画素104及び補正画素107の少なくとも一方に接続されている場合に、その駆動線110を検出駆動線111と呼ぶ。
【0037】
読み出し回路160は、複数の信号線120を通じて、複数の画素から信号を読み出すように構成される。読み出し回路160は、複数の増幅部161と、マルチプレクサ162と、アナログデジタル変換器(以下、AD変換器)163とを含む。複数の信号線120のそれぞれは、読み出し回路160の複数の増幅部161のうち対応する増幅部161に接続される。1つの信号線120は、1つの増幅部161に対応する。マルチプレクサ162は、複数の増幅部161を所定の順番で選択し、選択した増幅部161からの信号をAD変換器163に供給する。AD変換器163は、供給された信号をデジタル信号に変換して出力する。
【0038】
撮像画素101から読み出された信号は、信号処理部170に供給され、信号処理部170によって演算、記憶などの処理がなされる。具体的に、信号処理部170は演算部171及び記憶部172を含んでおり、演算部171が撮像画素101から読み出された信号に基づいて放射線画像を生成し、制御部180へ供給する。検出画素104及び補正画素107から読み出された信号は、信号処理部170に供給され、その演算部171によって演算、記憶などの処理がなされる。具体的に、信号処理部170は、検出画素104及び補正画素107から読み出された信号に基づいて、放射線撮像装置100に対する放射線の照射を示す情報を出力する。例えば、信号処理部170は、放射線撮像装置100に対する放射線の照射を検出したり、放射線の照射量及び/または照射線量(積算照射量)を決定したりする。
【0039】
制御部180は、信号処理部170からの情報に基づいて、駆動回路150及び読み出し回路160を制御する。制御部180は、信号処理部170からの情報に基づいて、例えば、露出(撮像画素101による照射された放射線に対応する電荷の蓄積)の開始及び終了を制御する。制御部180は、マイクロプロセッサのような汎用処理回路で構成されてもよいし、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)のような専用処理回路で構成されてもよい。制御部180が汎用処理回路で構成される場合に、制御部180はメモリをさらに含んでもよい。なお、制御部180は、制御手段の一例である。
【0040】
放射線の照射線量を決定するために、制御部180は、駆動回路150を制御することによって、検出駆動線111のみを走査し、検出画素104及び補正画素107からの信号だけを読み出し可能な状態にする。次に、制御部180は、読み出し回路160を制御することによって、検出画素104及び補正画素107に対応する列の信号を読み出し、放射線の照射線量を示す情報として出力する。そのような動作により、放射線撮像装置100は、検出画素104における照射情報を放射線照射中に得ることができる。
【0041】
図2は、増幅部161の詳細な回路構成例を示す。増幅部161は、差動増幅回路AMP及びサンプルホールド回路SHを含む。差動増幅回路AMPは、信号線120に現れた信号を増幅して出力する。制御部180は、差動増幅回路AMPのスイッチ素子に信号φRを供給することによって、信号線120の電位をリセットできる。差動増幅回路AMPからの出力は、サンプルホールド回路SHによって保持可能である。制御部180は、サンプルホールド回路SHのスイッチ素子に信号φSHを供給することによって、サンプルホールド回路SHに信号を保持させる。サンプルホールド回路SHに保持された信号は、マルチプレクサ162によって読み出される。
【0042】
図3及び
図4を参照して、放射線撮像装置100の画素の構造例について説明する。
図3は、放射線撮像装置100における撮像画素101、検出画素104及び補正画素107の構成を示す平面図である。平面図は、放射線撮像装置100の撮像領域IRに平行な面への正投影と等価である。ハッチングで示すように、補正画素107の変換素子108の上に金属層が配置されており、この金属層によって変換素子108が遮光されている。
【0043】
図4(a)は、
図3のA-A’線に沿った撮像画素101の断面図である。検出画素104の断面図は撮像画素101の断面図と同様である。ガラス基板等の絶縁性の支持基板400の上にスイッチ素子103が配置されている。スイッチ素子103は、TFT(薄膜トランジスタ)であってもよい。スイッチ素子103の上に、層間絶縁層401が配置されている。層間絶縁層401の上に変換素子102が配置されている。この変換素子102は、光を電気信号に変換可能な光電変換素子である。変換素子102は、例えば電極402、PINフォトダイオード403、電極404で構成される。変換素子102は、PIN型のフォトダイオードであるかわりに、MIS型のセンサによって構成されてもよい。
【0044】
変換素子102の上に、保護膜405、層間絶縁層406、バイアス線130、保護膜407が順に配置されている。保護膜407の上に、不図示の平坦化膜及びシンチレータが配置されている。電極404は、コンタクトホールを介してバイアス線130に接続されている。電極404の材料として、光透過性を有するITOが用いられ、不図示のシンチレータで放射線から変換された光を透過可能である。
【0045】
図4(b)は、
図3のB-B’線に沿った補正画素107の断面図である。補正画素107は、変換素子108が遮光部材408によって覆われている点で撮像画素101及び検出画素104とは異なり、他の点は同じであってもよい。遮光部材408は、例えばバイアス線130と同層の金属層によって形成される。補正画素107の変換素子108は遮光部材408によって覆われているので、放射線に対する補正画素107の感度は、撮像画素101及び検出画素104の感度と比べて著しく低い。すなわち、補正画素107の変換素子108に蓄積される電荷は放射線の影響をほとんど受けない。
【0046】
図9を用いて操作者の撮影フローと制御部180の動作フローについて説明する。
【0047】
S901で、操作者は、表示部510に表示されたGUIを用いて撮影手技の選択を実施する。
【0048】
図7に、表示部510に表示された、GUIの一例を示す。
【0049】
図7(a)に示したGUIには、撮影手技を選択するための選択部701、及び、放射線撮像装置100における候補領域R1~R9の位置を示す模式
図702が表示されている。
【0050】
操作者は、選択部701を用いて複数の選択肢のなかから目的とする撮影手技を選択する。撮影手技が選択されると、AEC撮影に用いる関心領域が候補領域R1~R9から選択される。例えば、心臓の撮影手技が選択された場合には、R5が関心領域として選択される。すなわち、操作者からの指示によりR5が関心領域として選択される。模式
図702は、選択されたR5を強調するように表示している例を示している。ここで、関心領域は撮影手技に紐づいて選択されてもよいし、操作者によって個々に選択されてもよい。
【0051】
また、
図7(b)に示したGUIには、関心領域の設定パターンを選択するための選択領域703、及び、放射線撮像装置100における候補領域R1~R9の位置を示す模式
図702が表示されている。
【0052】
操作者は、選択領域703に表示された複数の設定パターンから1つを選択する。設定パターンが選択されると、AEC撮影に用いる関心領域が、選択された設定パターンに基づいて選択される。例えば、操作者がマウスカーソル704により左下の設定パターンを選択すると、R5、R7、R9が関心領域として選択される。
【0053】
操作者からの指示により関心領域が選択されたら、選択された関心領域に紐づいてS912で実施する電荷の読み出し時の読み出し回路の電源制御が決定される。ここで、GUIは、撮影手技の選択だけでなく、線量、照射上限時間(ms)、管電流(mA)、管電圧(kV)が入力できてもよい。
【0054】
撮影手技が選択されると、操作者は、S902で、放射線管球と被写体及び放射線撮像装置との位置合わせを実施する。例えば、S901で心臓の撮影手技が選択された場合にはR5が関心領域として選択されているため、操作者は、患者の心臓の位置がR5の位置となるように位置合わせを実施する。
【0055】
撮影手技が選択されると、制御部180は、電荷のリセット動作(S911)を行う。このとき、制御部180は、全ての読み出し回路を電力消費の少ないモード(低消費電力モード)で動作させる。電荷のリセット動作の後、制御部180は、電荷の読み出し動作(S912)を開始する。このとき、制御部180は、関心領域として選択された候補領域を含む画素群から出力される信号を読み出す読み出し回路の動作モードを変更する。例えば、S901で心臓の撮影手技が選択された場合にはR5が関心領域として選択されているため、読み出し回路(2)及び読み出し回路(3)の動作モードを変更する。具体的には、制御部180は、低消費電力モードから電荷を読み出すための読み出しモードへ変更する。動作モードの変更は、例えば、読み出し回路のconfig設定値(ICに対する設定値)で変更してもよいし、電圧及び電流を変更してもよい。例えば、電圧を変更する場合は、読み出し回路へ供給する電圧を、GND電圧(例えば、0V)から動作電圧(例えば、1.8V)へ上昇させる。なお、読み出し回路(2)及び読み出し回路(3)は、第1の読み出し手段の一例である。また、読み出し回路(2)及び読み出し回路(3)以外の読み出し回路(1)及び読み出し回路(4)及び読み出し回路(5)は、第2の読み出し手段の一例である。また、電荷を読み出すための読み出しモードは、第1の状態の一例である。また、電力消費の少ないモード(低消費電力モード)は、第2の状態の一例である。また、動作電圧は、第1の電圧の一例である。また、GND電圧は、第1の電圧より低い第2の電圧の一例である。また、関心領域として選択されたR5を含まない撮像領域IR(1)、(4)、及び(5)は、関心領域として選択された少なくとも一つの候補領域を含まない画素群の一例である。
【0056】
また、関心領域として選択されたR5を含まない画素群が存在する場合には、その画素群を電力消費の少ないモード(低消費電力モード)のままとする。具体的には、読み出し回路(2)及び読み出し回路(3)以外の読み出し回路は関心領域として選択されたR5を含まないため、低消費電力モードのままとする。
【0057】
以上のような動作を行うことにより、読み出し回路(2)及び読み出し回路(3)以外の読み出し回路は電力消費の少ないモード(低消費電力モード)のままで動作させることができる。その結果、消費電力を低減することが可能である。
【0058】
ここで、制御部180は、S912で読み出した電荷を補正するための補正情報をS911の前に取得しておき、取得した補正情報を用いて補正を実施することで補正精度を高めることが可能である。さらに、この補正情報を取得する際の読み出し回路の電力消費モードをS912の電力消費モードと同一とすれば精度が高くなる。なお、電荷を補正するための補正情報は照射線量を補正する第1の補正データの一例である。また、補正情報を取得するS911の前の期間は、第1の期間の一例である。
【0059】
S902が終了すると、操作者は、S903で、放射線の照射を開始する。具体的には、例えば、操作者は、放射線発生装置506に付属された曝射スイッチを操作する。曝射スイッチが操作されると、情報処理装置502は、放射線撮像装置100に開始要求信号を送信する。開始要求信号とは、放射線の照射を受け入れる準備を開始することを要求する信号である。放射線撮像装置100は、開始要求信号を受信したことに応じて、放射線の照射を受け入れる準備を開始する。放射線撮像装置100は、準備が整ったら、アクセスポイント503もしくは通信デバイス504を介して放射線発生装置506に開始可能信号を送信する。開始可能信号とは、放射線の照射開始が可能であることを通知する信号である。放射線発生装置506は、開始可能信号を受信したことに応じて、放射線507の照射を開始する。
【0060】
放射線507の照射が開始されると、S912の電荷の読み出しで読みだされる電荷量が増加する。一定以上の電荷が読みだされると、制御部180は、S913で、放射線停止を通知する。具体的には、制御部180は、照射された放射線の線量の積算値の閾値に到達したら、アクセスポイント503もしくは通信デバイス504を介して放射線発生装置506に照射停止信号を送信する。照射停止信号とは、放射線の照射終了を要求する信号である。放射線発生装置506は、照射停止信号を受信したことに応じて、放射線507の照射を終了する。線量の閾値は、線量の入力値、放射線照射強度、各ユニット間の通信ディレイ、処理ディレイ等に基づいて決定される。放射線の照射時間が、入力された照射上限時間に達した場合は、放射線発生装置506は、照射停止信号を受信していなくても、放射線の照射を停止してもよい。なお、電荷の読み出し動作を開始するS912から放射線停止を通知するS913までの期間は、検出期間の一例である。
【0061】
放射線の照射が停止されると、操作者は、S904で、放射線の照射が停止されたことを確認する。具体的には、例えば、GUIの表示を確認する等を実施する。
【0062】
また、放射線の照射が停止されると、制御部180は、S914で、放射線画像を読み出す。なお、放射線画像を読み出すS914を実行する期間は、画像取得期間の一例である。
【0063】
その後、制御部180は、S914で読み出した放射線画像を補正するために、S915で、電荷のリセットを実施する。
【0064】
続いて、制御部180は、S916で、電荷の読み出し動作を実施する。さらに、続いて、制御部180は、S917で、画像の読み出し動作を実施する。制御部180は、S916で読み出した電荷とS917で読み出した画像とを用いてS914で読み出された放射線画像の補正を実施する。さらに、制御部180は、補正された放射線画像を、有線もしくは無線通信などを用いて情報処理装置502に転送する。尚、補正に用いる画像は事前に用意したものでもよい。また、S916で実施する電荷の読み出し動作ではS912と読み出し回路の電源状態を同じ状態にすることで補正精度を向上させることが可能である。なお、S916で読み出された電荷及びS917で読み出された画像は、放射線画像を補正する第2の補正データの一例である。また、S916及びS917を実行する期間は、第2の期間の一例である。
【0065】
補正された放射線画像が情報処理装置502に転送されると、操作者は、S905で、転送された放射線画像の確認を行う。
【0066】
図6のタイミングチャートを参照して、制御部180のS911~S914の動作についてさらに詳細に説明する。この動作は、駆動回路150及び読み出し回路160を制御する制御部180と、信号処理部170とが連携することによって実行される。この動作により、放射線撮像装置100に照射される放射線の量が決定される。
【0067】
まず、凡例を説明する。「開始要求信号」「開始可能信号」「照射停止信号」は上述したため説明を省略する。「放射線」は、放射線撮像装置100に放射線が照射されているか否かを示す。ローの場合に放射線が照射されておらず、ハイの場合に放射線が照射されている。「Vg1」~「Vgn」は、駆動回路150から複数の駆動線110に供給される駆動信号を示す。「Vgk」はk行目(k=1,...,駆動線の合計本数)の駆動線110に対応する。上述のように、複数の駆動線110の一部は、検出駆動線111とも呼ばれる。j番目の検出駆動線111を「Vdj」(j=1,...,検出駆動線の合計本数)と表す。
【0068】
φSHは、増幅部161のサンプルホールド回路SHに供給される信号のレベルを示す。φRは、増幅部161の差動増幅回路AMPに供給される信号のレベルを示す。「検出画素信号」は、検出画素104から読み出された信号の値を示す。「補正画素信号」は、補正画素107から読み出された信号の値を示す。「照射線量(積算照射量)」は、放射線撮像装置100に照射された放射線の積算値を示す。この積算値の決定方法については後述する。
【0069】
続いて、時刻t0~t10における制御部180の動作を説明する。
【0070】
時刻t0で、制御部180は、複数の画素のリセット動作を開始する。リセット動作とは、各画素の変換素子に蓄積した電荷を除去する動作のことである。具体的には、駆動線110に駆動信号を供給し、各画素のスイッチ素子を導通状態にすることにより、電荷が除去される。制御部180は、駆動回路150を制御することによって、1行目の駆動線110に接続された各画素をリセットする。続いて、制御部180は、2行目の駆動線110に接続された各画素をリセットする。制御部180は、この動作を最後の行の駆動線110まで繰り返す。時刻t1において、制御部180は、最後の行の駆動線110のリセット動作を終了した後、再び1行目の駆動線110からリセット動作を繰り返す。
【0071】
時刻t2で、制御部180は、情報処理装置502から開始要求信号を受信する。開始要求信号の受信に応じて、制御部180は、最後の行までリセット動作を行い、リセット動作を終了する。制御部180は、最後の行までリセット動作を行う前にリセット動作を終了し、次の処理に移行してもよい。例えば、制御部180は、k行目の駆動線110のリセット動作中に開始要求信号の受信した場合に、k+1行目以降の駆動線110のリセット動作を行わずに次の処理に移行してもよい。この場合に、放射線画像を取得するための駆動の調整や放射線画像に対する画像処理を行うことによって、放射線画像に発生しうる段差を軽減してもよい。
【0072】
時刻t3で、制御部180は、放射線撮像装置100に照射中の放射線の量を決定するための決定動作を開始する。決定動作において、制御部180は、検出画素104及び補正画素107から読み出す読み出し動作を繰り返し実行する。繰り返し実行される複数回の読み出し動作のうち、前半に実行される1回以上の読み出し動作は補正値を決定するために行われる。また、後半に実行される1回以上の読み出し動作は、各時点の放射線の量を継続的に決定するために行われる。読み出し動作は、検出駆動線111に対して実行され、それ以外の駆動線110に対しては実行されない。具体的に、駆動回路150は、複数の駆動線110のうち検出画素104及び補正画素107の少なくとも一方に接続された駆動線110(すなわち検出駆動線111)に駆動信号を供給する。しかし、駆動回路150は、複数の駆動線110のうち検出画素104及び補正画素107の何れにも接続されていない駆動線110に駆動信号を供給しない。また、駆動回路150は、複数の駆動線110のうち検出画素104及び補正画素107の少なくとも一方に接続された駆動線110に同時に駆動信号を供給する。それによって、同じ信号線120に接続されている複数の画素からの信号が合わさって読み出し回路160に読み出される。検出画素104と補正画素107とは排他的に信号線120に接続されているので、読み出し回路160は、感度の異なる画素の信号を分離して読み出せる。
【0073】
以上、時刻t0~時刻t3の動作は、
図9のS911に相当する。
【0074】
1回の読み出し動作において、制御部180は、時刻t3~時刻t4の動作を行う。具体的に制御部180は、1つ以上の検出駆動線111に一時的に駆動信号を供給する。その後、制御部180は、信号φSHを一時的にハイレベルにすることによって、信号線120を通じて画素から読み出し回路160に読み出された信号をサンプルホールド回路SHに保持する。その後、制御部180は、信号φRを一時的にハイレベルにすることによって、読み出し回路160(具体的にはその増幅部161の差動増幅回路AMP)をリセットする。撮像領域IR内に関心領域が設定されている場合に、この関心領域に含まれない検出画素104から信号を読み出さなくてもよい。
【0075】
制御部180は、補正値を決定するために、読み出し動作を所定の回数行う。信号処理部170は、所定の回数の読み出し動作によって、検出画素104から読み出された信号に基づく補正値Odと補正画素107から読み出された信号に基づく補正値Ocとを決定する。
【0076】
補正値Odの決定について詳細に説明する。所定の回数が1回の場合には、検出画素104から読み出される信号は1つであるので、信号処理部170はその信号の値を補正値Odとする。所定の回数が複数回の場合には、信号処理部170は、読み出された複数個の信号の平均値を補正値Odとする。平均値に代えて他の統計値が用いられてもよい。補正画素107から読み出された信号に基づいて、補正値Ocも同様に決定される。信号処理部170は、このようにして決定した補正値Od、Ocを記憶部172に格納し、後続の処理に使用可能にする。
【0077】
1回以上読み出し動作を終了すると、制御部180は、時刻t5で、放射線発生装置506へ開始可能信号を送信する。上述の補正値Od、Ocの決定は、開始可能信号の送信前に行われてもよいし、送信後に行われてもよい。制御部180は、開始可能信号を送信した後に、上述の読み出し動作を繰り返し実行する。信号処理部170は、読み出し動作ごとに放射線の照射量を測定し、照射量の積算値が閾値を超えたか否かを判定する。ここで、照射量とは、一度の読み出し動作で読み出される値である。また、照射量の積算値とは、複数回にわたって読み出された照射量を積算した値である。また、本実施形態では、照射量の積算値は、照射線量(積算照射量)とも記載する。時刻t5の後に時刻t6から放射線の照射が開始される。
【0078】
制御部180は、時刻t8で照射線量(積算照射量)が閾値に到達したら、同期制御装置505に照射停止信号を送信する。同期制御装置505は照射停止信号を受け放射線発生装置506の放射線の照射停止制御を行う。ここで、制御部180は、照射線量(積算照射量)が閾値に到達する時刻t8(到達予測時刻)を推定し、さらに到達予測時刻に対して通信部190から同期制御装置505に信号が到達するまでの通信遅延時間を加味して推定送信時刻t7を求め、この推定送信時刻t7に照射停止信号を送信してもよい。
【0079】
以上、時刻t3~時刻t8の動作は、
図9のS912~S913に相当する。なお、時刻t3~時刻t8の期間は、検出期間の一例である。
【0080】
時刻t9で、放射線発生装置506は、同期制御装置505からの照射停止制御に応じて、放射線の照射を終了する。
【0081】
制御部180は、時刻t9で放射線の照射が終了したら、放射線撮像装置100は、撮像画素101のみが接続された駆動線110(検出駆動線111以外の駆動線110)を順次走査し、各撮像画素101の画像信号を読み出し回路160により読み出すことによって、放射線画像を取得する。ここで、検出画素104に蓄積された電荷は放射線の照射中に読み出されており、補正画素107は遮光されているため、これらの画素からの信号は放射線画像の形成に使用できない。そこで、放射線撮像装置100の信号処理部170は、検出画素104及び補正画素107の周囲の撮像画素101の画素値を用いて補間処理を行うことによって、これらの画素の位置における画素値を補間する。放射線画像の取得が時刻t10で終了した後、制御部180は、時刻t10から、時刻t0~t3同様に複数の画素のリセット動作を行う。
【0082】
以上、時刻t9~時刻t10の動作は、
図9のS914に相当する。なお、時刻t9~時刻t10の期間は、画像取得期間の一例である。
【0083】
以上が、制御部180の詳細な動作である。
【0084】
ここで、
図1(a)の構成では、R5が関心領域として選択されていた場合、読み出し回路(2)及び(3)を読み出しモードに上げていた。そこで、例えば、候補領域と読み出し回路の対応関係を
図8(a)のように変更することで、消費電力がさらに低減できる。
図8では、候補領域と読み出し回路との境界(破線)を一致させている。この対応関係では、検出画素を含む撮像領域IR(2)は、読み出し回路(2)により読み出される。同様に、検出画素を含む撮像領域IR(4)は、読み出し回路(4)により読み出される。また、検出画素を含まない撮像領域IR(1)は、読み出し回路(1)により読み出される。同様に、検出画素を含まない撮像領域IR(3)は、読み出し回路(3)により読み出される。この対応関係とすることにより、例えば、R5が関心領域として選択されていた場合、電荷の読み出し動作を開始するS912から放射線停止を通知するS913までの期間(検出期間)では、読み出し回路(4)のみを読み出しモードにするだけでよい。すなわち、読み出し回路(4)以外の読み出し回路は、電力消費の少ないモード(低消費電力モード)のままとすることができる。その結果、
図1(a)と比較して、例えば、消費電力がさらに低減できる。なお、検出画素を含まない撮像領域IR(1)、(3)、(5)、及び(7)は、検出画素を含まない複数の第2の画素群の一例である。また、読み出し回路(1)、(3)、(5)、及び(7)は、第3の読み出し手段の一例である。
【0085】
また、候補領域と読み出し回路との対応関係を
図8(b)のように変更することで、消費電力がさらに低減できる。
図8(b)では、候補領域に対応しないIR(1)(3)(5)、及び(7)を、一つの読み出し回路(1)で読み出す対応関係としている。この対応関係とすることにより、例えば、
図8(b)と比べて読み出し回路の数を減らすことができるため、例えば、消費電力がさらに低減できる。
【0086】
また、
図8(a)及び
図8(b)で説明した手法は駆動回路150に対しても同様に実施することが可能である。その場合、消費電力がさらに低減できる。
【0087】
(その他の実施形態)
また、開示の技術は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、開示の技術は、上述した様々な実施形態の1以上の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理でも実現可能である。コンピュータは、1つ又は複数のプロセッサー若しくは回路を有し、コンピュータ実行可能命令を読み出し実行するために、分離した複数のコンピュータ又は分離した複数のプロセッサー若しくは回路のネットワークを含みうる。このとき、プロセッサー又は回路は、中央演算処理装置(CPU)、マイクロプロセッシングユニット(MPU)、グラフィクスプロセッシングユニット(GPU)、特定用途向け集積回路(ASIC)、又はフィールドプログラマブルゲートウェイ(FPGA)を含みうる。また、プロセッサー又は回路は、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、データフロープロセッサ(DFP)、又はニューラルプロセッシングユニット(NPU)を含みうる。
【0088】
本実施形態の開示は、以下の構成、方法及びプログラムを含む。
【0089】
(構成1)
放射線の照射線量を検出する検出画素を含む複数の画素群を有する撮像手段と、
前記複数の画素群から出力される信号を読み出す複数の読み出し手段と、
前記複数の画素群において、前記撮像手段における撮像領域に含まれる複数の候補領域のうち関心領域として選択された少なくとも一つの候補領域を含まない画素群が存在する場合には、前記検出画素を用いて前記照射線量を検出する検出期間において、前記少なくとも1つの候補領域の少なくとも一部の領域を含む少なくとも1つの画素群から出力される信号を読み出す第1の読み出し手段を第1の状態に制御し、前記少なくとも一つの候補領域を含まない画素群から出力される信号を読み出す第2の読み出し手段を前記第1の状態より電力消費の少ない第2の状態に制御する制御手段と、
を備える放射線撮像装置。
【0090】
(構成2)
前記複数の画素群は放射線画像を取得する撮像画素をさらに有し、
前記制御手段は、前記撮像画素を用いて前記放射線画像を取得する画像取得期間において、前記第1の読み出し手段と前記第2の読み出し手段とを前記第1の状態に制御する構成1に記載の放射線撮像装置。
【0091】
(構成3)
前記制御手段は、前記検出期間において検出された前記照射線量が閾値に到達した後に、前記第2の読み出し手段を前記第2の状態から前記第1の状態に変更し前記画像取得期間を開始する構成1又は2に記載の放射線撮像装置。
【0092】
(構成4)
前記制御手段は、前記検出期間において、前記第1の読み出し手段に第1の電圧を供給することで前記第1の読み出し手段を前記第1の状態に制御し、前記第2の読み出し手段に前記第1の電圧より低い第2の電圧を供給することで前記第2の読み出し手段を前記第2の状態に制御する構成1乃至3のいずれかに記載の放射線撮像装置。
【0093】
(構成5)
前記関心領域は、操作者からの指示により選択される構成1乃至4のいずれかに記載の放射線撮像装置。
【0094】
(構成6)
前記複数の画素群の各々から出力される信号は、前記複数の読み出し手段の各々により読み出される構成1乃至5のいずれかに記載の放射線撮像装置。
【0095】
(構成7)
前記撮像手段は、前記検出画素を含まない複数の第2の画素群をさらに有し、
前記制御手段は、前記検出期間において、前記複数の第2の画素群から出力される信号を読み出す複数の第3の読み出し手段を前記第2の状態に制御する構成1乃至6のいずれかに記載の放射線撮像装置。
【0096】
(構成8)
前記複数の候補領域は前記複数の画素群のうちいずれかに含まれる構成7に記載の放射線撮像装置。
【0097】
(構成9)
前記複数の第2の画素群は1つの前記複数の第3の読み出し手段により読み出される構成7に記載の放射線撮像装置。
【0098】
(構成10)
前記制御手段は、前記第1の読み出し手段を前記第1の状態に制御し、且つ前記第2の読み出し手段を前記第2の状態に制御して、前記照射線量を補正する第1の補正データを前記検出期間より前の第1の期間において取得し、前記第1の補正データを用いて前記照射線量を前記検出期間において補正する構成1乃至9のいずれかに記載の放射線撮像装置。
【0099】
(構成11)
前記制御手段は、前記第1の読み出し手段を前記第1の状態に制御し、且つ前記第2の読み出し手段を前記第2の状態に制御して、前記放射線画像を補正する第2の補正データを前記画像取得期間より後の第2の期間において取得し、前記第2の補正データを用いて前記放射線画像を前記第2の期間において補正する構成1乃至10のいずれかに記載の放射線撮像装置。
【0100】
(構成12)
複数の選択肢と前記複数の候補領域とを表示し、操作者からの指示により前記複数の選択肢のうち1つが選択された場合は、前記複数の候補領域のうち関心領域として選択された少なくとも1つの候補領域を強調するように表示する制御を行う表示制御手段をさらに備える構成1乃至11のいずれかに記載の放射線撮像装置。
【0101】
(構成13)
放射線の照射線量を検出する検出画素を含む複数の画素群を有する撮像手段と、
前記複数の画素群から出力される信号を読み出す複数の読み出し手段と、
前記複数の画素群において、前記撮像手段における撮像領域に含まれる複数の候補領域のうち関心領域として選択された少なくとも一つの候補領域を含む画素群から出力される信号を読み出す第1の読み出し手段を第1の状態に制御し、且つ前記少なくとも一つの候補領域を含まない画素群から出力される信号を読み出す第2の読み出し手段を前記第1の状態より電力消費の少ない第2の状態に制御する制御手段と、
を備える放射線撮像装置。
【0102】
(構成14)
情報処理を行う情報処理装置と、
前記情報処理装置と通信可能に接続された構成1乃至13のいずれかに記載の放射線撮像装置と、
を備える放射線撮影システム。
【0103】
(方法1)
放射線の照射線量を検出する検出画素を含む複数の画素群を有する撮像手段から出力される信号を複数の読み出し手段により読み出す放射線撮像装置の制御方法であって、
前記複数の画素群において、前記撮像手段における撮像領域に含まれる複数の候補領域のうち関心領域として選択された少なくとも一つの候補領域を含まない画素群が存在する場合には、前記検出画素を用いて前記照射線量を検出する検出期間において、前記少なくとも1つの候補領域の少なくとも一部の領域を含む少なくとも1つの画素群から出力される信号を読み出す第1の読み出し手段を第1の状態に制御し、前記少なくとも一つの候補領域を含まない画素群から出力される信号を読み出す第2の読み出し手段を前記第1の状態より電力消費の少ない第2の状態に制御する制御方法。
【0104】
(方法2)
放射線の照射線量を検出する検出画素を含む複数の画素群を有する撮像手段から出力される信号を複数の読み出し手段により読み出す放射線撮像装置の制御方法であって、
前記複数の画素群において、前記撮像手段における撮像領域に含まれる複数の候補領域のうち関心領域として選択された少なくとも一つの候補領域を含む画素群から出力される信号を読み出す第1の読み出し手段を第1の状態に制御し、且つ前記少なくとも一つの候補領域を含まない画素群から出力される信号を読み出す第2の読み出し手段を前記第1の状態より電力消費の少ない第2の状態に制御する制御方法。
【0105】
(プログラム1)
方法1又は2に記載の制御方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【符号の説明】
【0106】
100 放射線撮像装置
500 放射線撮影システム
502 情報処理装置
503 アクセスポイント
505 同期制御装置
506 放射線発生装置
508 院内LAN
510 表示部
511 表示制御部