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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175985
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/57 20230101AFI20241212BHJP
   H04N 25/51 20230101ALI20241212BHJP
【FI】
H04N25/57
H04N25/51
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094142
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】唐橋 文人
【テーマコード(参考)】
5C024
【Fターム(参考)】
5C024CX43
5C024GX02
5C024HX17
(57)【要約】
【課題】 被写体ブレを抑えつつ、ダイナミックレンジを拡大したHDR画像を取得する。
【解決手段】 画素の各々は、光電変換部と、前記光電変換部により変換された電荷を蓄積する2つの電荷保持部を備え、2つの電荷保持部に蓄積される電荷に基づく信号をそれぞれ複数の異なるゲインで増幅することによって得られる同一フレームの複数の信号をもとにHDR合成を行う。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が光電変換部と、前記光電変換部により変換された電荷を保持する第1の電荷保持部と、前記光電変換部により変換された電荷を蓄積する第2の電荷保持部とを有する複数の画素と、
前記電荷に基づく信号を複数の異なるゲインで増幅可能な増幅手段と、
前記増幅手段により異なるゲインで増幅された複数の信号のHDR合成処理を行う画像処理手段と、を備え、
1フレーム期間において前記第1の電荷保持部と前記第2の電荷保持部に蓄積される電荷量が異なり、前記第1の電荷保持部および前記第2の電荷保持部に蓄積される電荷に基づく信号の少なくとも一方が前記増幅手段により異なるゲインで増幅されることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記第1の電荷保持部と前記第2の電荷保持部における電荷蓄積の開始タイミングが異なることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記第1の電荷保持部と前記第2の電荷保持部における電荷保持の開始タイミングが同じであることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記第1の電荷保持部に蓄積された電荷に基づく信号と前記第2の電荷保持部に蓄積された電荷に基づく信号の一方が前記増幅手段により異なるゲインで増幅されることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記第1の電荷保持部に蓄積された電荷に基づく信号と前記第2の電荷保持部に蓄積された電荷に基づく信号の両方が前記増幅手段により異なるゲインで増幅されることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
被写体輝度または撮影モードに応じて、前記画像処理手段によるHDR合成処理の回数や組み合わせが変更されることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記画像処理手段によるHDR合成処理に使用しない信号を被写体に関する所定の検出に用いることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的なデジタルカメラに使われているCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等の撮像素子を用いて、階調に関するダイナミックレンジを拡大する技術が提案されている。ダイナミックレンジの拡大技術の一つとして、複数の異なる露出で撮影した画像を合成する手法があるが、複数の露出画像を順々に撮影する必要があり、各露出の画像に撮影タイミングの差が生じてしまう。そのため、移動体を撮影する場合には、合成時に被写体ブレが目立つ可能性がある。
【0003】
また、特許文献1には、単位画素毎に2つの電荷保持部を有する画素構成においてダイナミックレンジを拡大する方法が記載されている。すなわち、各画素の光電変換部で蓄積された電荷信号について基準電圧との大小関係を判定する。そして、基準電圧よりも小さければ第1の電荷保持部を使用し、基準電圧よりも大きければ第2の電荷保持部を使用することによってダイナミックレンジの拡大を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-178163号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、電荷保持部の容量で画像データのダイナミックレンジが決まってしまうため、複数の異なる露出で撮影した画像をHDR合成する方式に比べるとダイナミックレンジ拡大効果が限定的である。
【0006】
本発明の目的は、被写体ブレが少なくダイナミックレンジが十分に拡大されたHDR画像の撮影が可能な撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る撮像装置は、各々が光電変換部と、前記光電変換部により変換された電荷を保持する第1の電荷保持部と、前記光電変換部により変換された電荷を蓄積する第2の電荷保持部とを有する複数の画素と、前記電荷に基づく信号を複数の異なるゲインで増幅可能な増幅手段と、前記増幅手段により異なるゲインで増幅された複数の信号のHDR合成処理を行う画像処理手段と、を備え、1フレーム期間において前記第1の電荷保持部と前記第2の電荷保持部に蓄積される電荷量が異なり、前記第1の電荷保持部および前記第2の電荷保持部に蓄積される電荷に基づく信号の少なくとも一方が前記増幅手段により異なるゲインで増幅されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被写体ブレの少なくダイナミックレンジが十分に拡大されたHDR画像の撮影が可能な撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例に係る撮像装置の構成を示すブロック図。
図2】実施例に係る撮像素子の構成を示す図。
図3】実施例に係る撮像素子の構成を示す図。
図4】実施例に係る撮像素子の構成を示す図。
図5】実施例に係る撮像素子の構成を示す図。
図6】実施例1に係る撮像装置の動作を示すフローチャート。
図7】実施例に係る蓄積時間制御を示す図。
図8】実施例1に係る撮像装置の動作を示すフローチャート。
図9】実施例2に係る撮像装置の動作を示すフローチャート。
図10】実施例3に係る撮像装置の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に掛かる発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これら複数の特徴の全てが発明に必須の物とは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成の説明は省略する。
【0011】
(実施例1)
図1は、本発明の実施例1に係る撮像装置の構成を示すブロック図である。
【0012】
図1において、撮影光学系120は、第1レンズ100、絞り101、第2レンズ102、第3レンズ103、フォーカルプレーンシャッタ104、光学ローパスフィルタ105を備えている。
【0013】
絞り101は、その開口径を調節することで撮影時に第1レンズ100から入射した光の光量調節を行う。第2レンズ102、第3レンズ103は、後述のフォーカスアクチュエータ116によって駆動され、光軸方向に進退することにより、撮影光学系120の焦点位置を調節する。
【0014】
フォーカルプレーンシャッタ104は、静止画撮影時に開閉することにより撮像素子106の露光秒時を調節する。なお、撮像素子106が有する電子シャッタ機能により露光秒時を調節する構成でもよい。光学ローパスフィルタ105は、撮影画像の偽色やモアレを低減するために設けられている。撮像素子106は、撮影光学系120で形成された被写体の光学像を光電変換して電気信号を出力する。撮像素子106は、後述するCPU109によって制御される。
【0015】
DSP(Digital Signal Processor)107は、撮像素子106で撮影された画像データの各種補正・HDR合成等の画像処理を行う。RAM108は、撮像素子106からの出力データを一時的に保持する信号保持、DSP107で処理された画像データの記憶、後述するCPU109が動作を行う際のワークメモリの機能を兼備する。
【0016】
なお、本実施形態では、これらの機能はRAM108を用いて実現する構成であるが、アクセス速度が十分に速くて動作上問題のないレベルのメモリであれば、他の種類のメモリを用いることも可能である。また、本実施形態では、RAM108は、DSP107、CPU109の外部に配置されているが、その一部または全部の機能をDSP107やCPU109に内蔵する構成であってもよい。
【0017】
CPU109は、撮像装置の各部を制御するためのプログラムを実行し、撮像装置の動作を統括的に制御する。CPU109は、DSP107から出力される相関演算の結果を用いてフォーカス駆動回路115を制御し、撮影光学系120の焦点位置を調節する機能も有する。
【0018】
表示部110は、撮影した静止画像や動画像およびメニュー等の表示を行う。操作部111は、ユーザによる撮影指示や撮影条件等の設定をCPU109に対して行う。記録媒体112は着脱可能な記録媒体であり、撮影された静止画データ及び動画データが記録される。ROM113には、CPU109が各部の動作を制御するためにロードして実行するプログラムが格納されている。
【0019】
シャッタ駆動回路114は、CPU109の出力に基づいてフォーカルプレーンシャッタ104を駆動制御する。フォーカス駆動回路115は、CPU109の出力に基づいてフォーカスアクチュエータ116を制御し、第2レンズ102及び第3レンズ103を光軸方向に進退駆動して撮影光学系120の焦点位置を変更することで焦点調節を行う。絞り駆動回路117は、CPU109の出力に基づいて絞りアクチュエータ118を制御して絞り101の開口を制御する。
【0020】
図2は、撮像素子106の回路構成の一例を示す図である。画素群250には、複数の画素200が画素R1_1~Bm_n(m、nは任意の整数)のように行列状に配置されている。画素200に付された符号Rは赤色、符号Gは緑色、符号Bは青色のカラーフィルタがそれぞれ画素上に配置されていることを意味する。
【0021】
また、R(G,B)i_jは、画素部250における第i行第j列に位置する画素であることを示す。また、同じ列の画素200のうち奇数行の画素は垂直出力線202に接続されており、偶数行の画素は垂直出力線206に接続されている。なお、本実施形態では、1つの画素部200に1本の垂直出力線が接続されているが、1つの画素部200に対して複数の垂直出力線が接続されていても構わない。
【0022】
列回路スイッチ205がオフになっているときは、奇数行の画素からの画素信号は垂直出力線202を介して列回路203にのみ入力され、列回路スイッチ205がオンになっているときは、列回路203と列回路207にそれぞれ入力される。偶数行の画素も同様に、列回路スイッチ205がオフになっているときは、偶数行の画素からの画素信号は垂直出力線206を介して列回路207にのみ入力される。
【0023】
また、列回路スイッチ205がオンになっているときは、列回路203と列回路207にそれぞれ入力される。列回路スイッチ205がオフになっているときは偶奇行の画素信号を同時に読み出すことができ、オンになっているときは偶奇行の画素信号が順次読み出される。列回路スイッチ205をオンにすることで、1本の垂直出力線に対して2つの列回路203、207が接続され、1つの画素部200から出力される画素信号を列回路203、207において複数の異なるゲインで増幅可能となる。
【0024】
各駆動信号RES、TX、SEL、FDINC、GSは、垂直走査回路201から画素部200にそれぞれ供給される。これらの駆動信号については、行に対応する数字を表す自然数変数m(=1,2,・・・,n)が付加されたRES_m、TX_m、SEL_m、FDINC_m、GS_m、と表記する。
【0025】
タイミングジェネレータ(以下、TG)210は、垂直走査回路201、列回路203,207、メモリ211のそれぞれに対して駆動信号を供給する。メモリ211は、後述するように列回路203,207においてアナログ-デジタル変換された画像データを、TG210から出力される書き込み信号memwrに従って保持する。
【0026】
メモリ211に保持された画像データは、水平走査回路212の走査によりデータ出力部213へ順次転送される。データ出力部213は、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)等の伝送方式により、撮像素子106の外部へ画像データを出力する。
【0027】
図3は、撮像素子における画素200の構成を示す図である。図3を用いて画素200の構成について説明する。フォトダイオード(以下、PD)300は入射光を光電変換し、入射光量に応じた電荷を蓄積する。転送スイッチ301aは、信号gs1のレベルがHighレベルであるときに、PD300に蓄積されている電荷を第1の保持部310aに転送する。また、転送スイッチ301bは、信号gs2のレベルがHighレベルであるときに、PD300に蓄積されている電荷を第2の保持部310bに転送する。
【0028】
転送スイッチ302aは、信号tx1のレベルがHighレベルであるときに、第1の保持部310aに蓄積されている電荷をフローティングディフュージョン部(以下、FD部)303に転送する。また、転送スイッチ302bは、信号tx2のレベルがHighレベルであるときに、第2の保持部310bに蓄積されている電荷をFD部303に転送する。
【0029】
FD部303は、FDアンプ304を構成するトランジスタのゲートに接続されている。FDアンプ304は、PD301からFD部303に転送される電荷量に応じた電圧値を出力する。FDリセットスイッチ305は、FD部303をリセットするためのスイッチ素子であり、信号resのレベルがHighレベルであるときに、FD部303のリセットを行う。
【0030】
FDincスイッチ307は、信号fdincのレベルがHighレベルであるときにオンになり、付加容量308をFD部303と接続する。また、信号fdincのレベルがLowレベルであるときにはFDincスイッチ307がオフになり、付加容量308とFD部303とが非接続状態となる。これにより、FD部303に生じる容量が変化する。言い換えるとFDincスイッチ307および付加容量308は、入力ノードの容量値を可変とする。
【0031】
FDincスイッチ307のオン・オフによって、FD部303に転送された電荷に対するFDアンプ304の出力電圧の変換比、すなわち画素における信号増幅率であるゲイン(FDゲイン)を切り替えることができる。付加容量308がFD部303に接続された接続状態では静電容量値が増加し、非接続状態の場合と比べてFDゲインが小さくなる。逆に、付加容量308とFD部303とが非接続状態になると静電容量値が減少し、接続状態と比べてFDゲインが大きくなる。
【0032】
このように、本実施形態の撮像装置は、信号fdincに応じてFD部303に保持される電荷量を可変とし、画素部200のFDゲインを切り替えることができるため、複数の異なるゲインで画素信号を出力することが可能である。画素選択スイッチ306は、信号selのレベルがHighレベルであるときに、FDアンプ304で電圧に変換された画素信号voutを出力する。
【0033】
PDリセットトランジスタ309は、PDに蓄積された電荷をリセットするためのスイッチであり、信号ofdのレベルがHighレベルであるときに、PD300に蓄積された電荷がリセットされる。
【0034】
次に、図4は、撮像素子における列回路203の構成を示す図である。図4を参照して、列回路203の構成について説明する。なお、列回路207は基本的な構成は列回路203と同一であるため、ここでは説明を省略する。画素部200の出力voutは、その画素200の出力端子に接続された垂直出力線202を介して列回路203に入力される。列ごとに設けられた垂直出力線202は、電流源204を介して接地されている。電流源204と垂直出力線202に接続された画素部200のFDアンプ304とによってソースフォロワ回路が構成される。
【0035】
列回路203において、クランプ容量401は静電容量C1を有し、フィードバック容量402は静電容量C2を有する。画素部200の出力voutはクランプ容量401を介して演算増幅器403の反転入力端子に入力される。演算増幅器403の非反転入力端子には、基準電圧Vrefが供給される。演算増幅器403の反転入力端子と出力端子に接続されたフィードバック容量402と並列にスイッチ404が接続されている。
【0036】
スイッチ404は、フィードバック容量402の両端をショートさせるためのスイッチ素子であり、駆動信号cfsにより制御される。スイッチ404のオン・オフ制御によって信号増幅率であるゲインの設定を変更することができるため、複数の異なるゲイン(列アンプゲイン)で増幅した信号の出力が可能となる。
【0037】
S信号転送スイッチ405は、画素部200から読み出される光電変換された光信号(S信号)を、S信号保持容量407に転送するためのスイッチ素子であり、駆動信号tsによりオン・オフ制御される。駆動信号tsのレベルをHighレベルにすることにより、演算増幅器403で増幅されたS信号がS信号転送スイッチ405を介してS信号保持容量407に保持される。
【0038】
N信号転送スイッチ406は、画素部200がリセットされた直後に画素部200から読み出されるリセット解除信号(N信号)をN信号保持容量408に転送するためのスイッチ素子であり、駆動信号tnによりオン・オフ制御される。駆動信号tnのレベルをHighレベルにすることにより、演算増幅器403で増幅されたN信号がN信号転送スイッチ406を介してN信号保持容量408に保持される。なお、駆動信号cfs、ts、tn等は、CPU109の制御に応じてTG210から供給される。
【0039】
次に、図5は、撮像素子における列回路203、207に内蔵されているアナログ-デジタル変換回路(AD変換回路)の構成を示す図である。図5を用いてAD変換回路について説明する。AD変換回路は、S信号保持容量407およびN信号保持容量408にそれぞれ保持されているS信号vsとN信号vnの差分をアナログ-デジタル変換する。
【0040】
AD変換回路は、比較器501、カウンタ回路502、ラッチ回路503、および演算回路504を備えている。ランプ信号生成部506(RAMP回路)は、時間の経過とともに信号レベルが変化するランプ信号を生成する回路である。
【0041】
比較器501は、図4で説明した列アンプゲインにより増幅された画素信号とランプ信号の出力を比較し、時間変化するランプ信号と画素出力が一致したタイミングで反転信号を出力する。
【0042】
カウンタ回路502は、接続されている制御線から供給されるクロック信号pCNTに基づいてカウント動作を行う。すなわち、カウンタ回路502は、比較器501により画素信号とランプ信号との比較を開始したタイミングからカウント動作を開始し、比較器501の出力が反転したときのカウント値を出力する。
【0043】
つまり、ランプ信号の時間変化が遅ければ比較器501の出力が反転するタイミングも遅れ、カウント値が増える。ランプ信号の時間変化の速度は画素部200の出力信号の増幅率に相当するので、時間変化の程度を変えることでAD変換回路における信号増幅率であるゲイン(RAMPゲイン)を切り替えることができる。
【0044】
ラッチ回路503は、カウンタ回路502が出力するカウント値を一時的に保持すると共に、ラッチ制御信号pLTCによる制御に基づいて保持しているカウント値を出力する。
【0045】
演算回路504は、接続されている演算制御信号pCALによる制御に基づいて、ラッチ回路503が出力するカウント値を画素のデジタル信号として一時的に記憶し、記憶している画素のデジタル信号を出力する。
【0046】
次に、図6は、実施例1における撮像装置の撮影動作を説明するためのフローチャートである。図6を用いて実施例1における撮像装置の撮影動作について説明する。このフローチャートの動作は、CPU109がROM113に記憶されているプログラムを実行することにより実現される。
【0047】
ステップS600において、CPU109は、操作部111からの撮影指示に従ってシャッタ駆動回路114を制御し、撮像素子106を露光させて撮影を開始する。
【0048】
ステップS601において、撮像素子106のPD300における電荷蓄積を開始する。
【0049】
ステップS602において、PD300に蓄積された電荷量Mの電荷を第1の保持部310aに転送する。この電荷量Mは、1回の転送で転送される電荷量である。
【0050】
ステップS603において、PD300に蓄積された電荷量Nの電荷を第2の保持部310bに転送する。この電荷量Nは、1回の転送で転送される電荷量である。
【0051】
ステップS604において、1フレーム期間におけるPD300に蓄積されたすべての電荷の第1の保持部310aまたは第2の保持部310bへの転送が完了したか否かを判断する。転送が完了している場合は、ステップS605へ進み、完了していない場合はステップS602へ戻る。
【0052】
ステップS605において、第1の保持部310aに蓄積された電荷をFD部303へ転送する。
【0053】
ステップS606において、第1の保持部310aに蓄積された電荷に基づく信号を第1のゲインと第2のゲインで増幅して読み出す。本実施形態では第1のゲインを高ゲイン、第2のゲインを低ゲインとして説明するが、第1のゲインを低ゲイン、第2のゲインを高ゲインとしても構わない。
【0054】
すなわち、撮像素子106の列回路スイッチ205をオンにし、1つの画素部200から出力される画素信号に対して列回路203、207において異なるゲインで増幅することで、高ゲイン画像と低ゲイン画像の読み出しを行うことができる。なお、前述したようにAD変換回路におけるRAMPゲインの切り換えにより高ゲイン画像と低ゲイン画像を読み出してもよい。
【0055】
さらに前述したFDゲインを切り替えて、高ゲイン画像と低ゲイン画像の読み出しを行うことも可能である。すなわち、FDincスイッチ307をオンにした状態で第1の保持部310aに電荷を蓄積して読み出し、FDincスイッチ307をオフにした状態で第1の保持部310aに電荷を蓄積して読み出してもよい。
【0056】
ステップS607において、第2の保持部310bに蓄積された電荷をFD部303へ転送する。
【0057】
ステップS608において、第2の保持部310bに蓄積された電荷に基づく信号を高ゲインと低ゲインで増幅して読み出す。
【0058】
ステップS609において、ステップS606とステップS608で読み出された4つの画像から後述するようにHDR画像を取得する。
【0059】
ステップS610において、続けて撮影を行うか否かを判断し、HDR撮影を行わない場合は終了し、撮影を続ける場合はステップS601へ戻る。
【0060】
図7は、第1の保持部310aと第2の保持部310bの各々における1フレーム期間の電荷蓄積の様子を示す図である。
【0061】
まず、図7(a)は、1フレーム期間において、最初に転送スイッチ301aをオンすることで第1の保持部310aへ電荷量Mの電荷を転送し、次に転送スイッチ301bをオンすることで第2の保持部310bへ電荷量Nの電荷を転送する例を示している。
【0062】
例えば、第1の保持部310aに保持される電荷量M<第2の保持部310bに保持される電荷量Nとなるように制御することにより、露出(蓄積電荷量)が異なる画像を取得することができる。なお、第1の保持部310aへの電荷転送完了後に転送スイッチ301aをオフし、第2の保持部310bへの電荷転送完了後に転送スイッチ301bをオフするように制御される。
【0063】
次に、図7(b)は、1フレーム期間において、第1の保持部310aと第2の保持部310bへの電荷転送の開始タイミングと終了タイミングをそれぞれ同じにする例を示している。すなわち、転送スイッチ301aと転送スイッチ301bを同時にオンすることで1フレーム期間における第1の保持部310aと第2の保持部310bへの電荷転送を開始する。その後、複数回に分割して第1の保持部310aと第2の保持部310bへそれぞれ電荷を転送する。
【0064】
そして、1フレーム期間の終わりに転送スイッチ301aと転送スイッチ301bを同時にオフすることによって、1フレーム期間における第1の保持部310aと第2の保持部310bへの電荷転送を終了する。このような制御により、1フレーム期間における第1の保持部310aと第2の保持部310bに電荷を保持する期間(電荷保持開始から電荷保持終了までの期間)を一致させることができるため、被写体の動きブレの少ない画像を取得することが可能となる。
【0065】
さらに、図7(c)は、第1の保持部310aに保持される電荷の露光重心と第2の保持部310bに保持される電荷の露光重心が等しくなるようにする例を示している。ここでも1フレーム期間において、複数回に分割して第1の保持部310aと第2の保持部310bへそれぞれ電荷を転送する。第1の保持部310aと第2の保持部310bへの電荷転送の開始タイミングと終了タイミングはそれぞれ異なるものの、蓄積電荷の露光重心を揃えることで、蓄積時間差が大きい場合でも被写体の動きブレの少ない画像を取得することが可能となる。
【0066】
なお、図7(b)、図7(c)においても、第1の保持部310aに保持される電荷量M<第2の保持部310bに保持される電荷量Nとなるように制御することにより、露出(蓄積電荷量)が異なる画像を取得することができる。そして、このように、第1の保持部310aと第2の保持部310bとで異なる電荷量の電荷を蓄積することによって、露出の異なる画像を取得することができる。
【0067】
図8は、露出の異なる4つの画像をDSP107に入力することでHDR合成処理を行うことでHDR画像を取得する動作を説明するためのフローチャートである。このフローチャートの動作は、CPU109がROM113に記憶されているプログラムを実行することにより実現される。
【0068】
ステップS606aにおいて、第1の保持部310aに蓄積されて低ゲインで増幅された第1の画像を読み出し、ステップS606bにおいて、第1の保持部310aに蓄積されて高ゲインで増幅された第2の画像を読み出す。
【0069】
ステップS701において、DSP107により第1の画像と第2の画像のHDR合成処理を行う。ここで、合成後の画像を第5の画像とする。このとき、第1の画像と第2の画像の蓄積時間は同じであるため、高ゲインと低ゲインで増幅する際のゲイン差が合成後のダイナミックレンジ拡大に寄与することになる。ただし、前述したように、ゲイン差分のみでのHDR合成処理を行う場合、露出を変更して複数枚撮影するHDR合成処理に比べると、ダイナミックレンジ拡大効果が限定的になる場合がある。
【0070】
ステップS608aにおいて、第2の保持部310bに蓄積されて高ゲインで増幅された第3の画像を読み出し、ステップS608bにおいて、第2の保持部に蓄積されて低ゲインで増幅された第4の画像を読み出す。
【0071】
ステップS702において、DSP107により第3の画像と第4の画像のHDR合成処理を行う。ここで、合成後の画像を第6の画像とする。このとき、第3の画像と第4の画像の蓄積時間は同じであるため、高ゲインと低ゲインで増幅する際のゲイン差が合成後のダイナミックレンジ拡大に寄与することになる。
【0072】
ステップS703において、DSP107により第5の画像と第6の画像のHDR合成処理を行う。前述したように第5の画像は、第1の保持部310aに蓄積された電荷に基づく画像信号をHDR合成処理した画像であり、第6の画像は、第2の保持部に蓄積された電荷に基づく画像信号をHDR合成処理した画像である。すなわち、この2つの画像は、蓄積時間が異なる。したがって、第5の画像と第6の画像のHDR合成処理を行うことによって、1フレーム期間においてゲイン差と蓄積時間差のあるHDR画像を取得することができる。
【0073】
以上説明したように、実施例1に係る撮像装置によれば、HDR撮影を行う場合に、1フレーム期間に光電変換部で生成される電荷を第1の保持部310aと第2の保持部310bに分割して転送することで、蓄積時間の異なる画像を取得することができる。さらに、蓄積時間の異なる画像に対して異なるゲインで増幅することにより、蓄積時間とゲインが異なる4つの画像をもとにHDR合成処理を行うことが可能である。そのため、被写体のブレを抑えつつ、ダイナミックレンジが十分に拡大された画像を生成することができる。
【0074】
(実施例2)
図9は、本発明の実施例2における撮像装置の撮影動作を説明するためのフローチャートである。図9を用いて実施例2における撮像装置の撮影動作について、実施例1との差分を中心に説明する。このフローチャートの動作は、CPU109がROM113に記憶されているプログラムを実行することにより実現される。
【0075】
ステップS900~ステップS910は、実施例1の図6で説明したステップS600~ステップS610と同様の処理であるため、その説明を省略する。
【0076】
ステップS911において、ステップS905で第1の保持部310aからFD部303に転送された電荷に基づく信号について、ダイナミックレンジの拡大が必要かどうかを判断する。例えば、第1の保持部310aからFD部303に転送された電荷の電荷量が十分に多く、被写体の高輝度側のレンジを確保できている場合にはステップS912へ進む。
【0077】
ステップS912では、第1の保持部310aに保持された電荷に基づく信号を第1のゲイン(高ゲイン)または第2のゲイン(低ゲイン)のいずれかのみで増幅して読み出す。前述したように高輝度側のレンジを確保できている場合においては、すでに高輝度側のレンジを広げる必要がないため、第2のゲイン(低ゲイン)で増幅して読み出す。そうすることで、高輝度側のレンジを確保しつつも、撮像素子からの画像信号の読み出しにかかる時間を短縮することが可能となる。
【0078】
また、被写体輝度に応じてだけでなく、撮影モードに応じて制御を変更しても構わない。例えば、HDR画像を高速に取得したい場合には、処理時間を短縮するために、第1の保持部310aの電荷に基づく信号を一方のゲインのみで増幅して読み出し、第2の保持部310bの電荷に基づく信号は両方のゲインで増幅して読み出しても構わない。
【0079】
なお、本実施例では、第1の保持部に保持された電荷に基づく信号を一方のゲインのみで増幅して読み出し、第2の保持部に保持された電荷に基づく信号を高ゲインと低ゲインの両方で増幅して読み出す例について説明したが、これに限らない。すなわち、第1の保持部に保持された電荷に基づく信号を高ゲインと低ゲインの両方で増幅して読み出し、第2の保持部に保持された電荷に基づく信号を一方のゲインのみで増幅して読み出しても構わない。
【0080】
以上説明した実施例2によれば、HDR撮影において、被写体や撮影モードに応じて、第1の保持部の電荷または第2の保持部の電荷に基づく信号を一方のゲインのみで増幅して読み出すことにより、画像信号の読み出し時間を短縮することが可能である。そのため、画像信号の読み出し時間を短縮させつつ、ダイナミックレンジが十分に拡大されたHDR画像を取得することができる。
【0081】
(実施例3)
図10は、本発明の実施例3におけるHDR画像を取得する動作を説明するためのフローチャートである。図10を用いて実施例3における動作について、実施例1との差分を中心に説明する。このフローチャートの動作は、CPU109がROM113に記憶されているプログラムを実行することにより実現される。
【0082】
ステップS606a、ステップS606b、ステップS608a、ステップS608bは、実施例1の図8で説明したステップS606a、ステップS606b、ステップS608a、ステップS608bと同様の処理であるため、その説明を省略する。また、ステップS1001~ステップS1003は、実施例1の図8で説明したステップS701~ステップS703と同様の処理であるため、その説明を省略する。
【0083】
ステップS1010では、第1の画像と第2の画像を比較し、ダイナミックレンジの拡大が必要か否かを判断する。例えば、第1の画像と第2の画像は短秒蓄積時の画像であるため、高輝度側のレンジ拡大に使用するケースが考えられるが、低ゲインで増幅された画像のみで高輝度側のレンジを確保できている場合は、ステップS1011に進む。
【0084】
ステップS1011では、HDR合成処理を行わずに第1の画像のみを出力する。ここで、HDR合成処理に使用しない第2の画像を、被写体に関する所定の検出(例えば、被写体移動方向のベクトル検出等)に使用しても構わない。
【0085】
ステップS1012では、第3の画像と第4の画像を比較し、ダイナミックレンジの拡大が必要か否かを判断する。例えば、第3の画像と第4の画像は長秒蓄積時の画像であるため、低輝度側のレンジ拡大に使用するケースが考えられるが、高ゲインで増幅された画像のみで低輝度側のレンジを確保できている場合は、ステップS1013に進む。
【0086】
ステップS1013では、HDR合成処理を行わずに第4の画像のみを出力する。ここで、HDR合成処理に使用しない第3の画像を、被写体に関する所定の検出(例えば被写体移動方向のベクトル検出等)に使用しても構わない。
【0087】
ステップS1014において、DSP107により第1の画像と第4の画像のHDR合成処理を行う。実施例1の図8では、HDR合成処理を3回行っていたが、本実施例の手法であればHDR合成処理の回数を減らしつつ、ダイナミックレンジを拡大した画像を取得することが可能となる。
【0088】
また、被写体輝度に応じてだけでなく、撮影モードに応じて制御を変更しても構わない。例えば、HDR画像を高速に取得したい場合には、処理時間を短縮するために、前述したようにHDR合成処理の回数や合成パターンを変更することで合成処理時間を短縮し、ダイナミックレンジを拡大した画像を取得することが可能である。なお、本実施例では第1の画像と第4の画像のHDR合成処理を行う例について説明したが、これに限らない。
【0089】
以上説明した実施例3によれば、HDR撮影において、被写体や撮影モードに応じて、HDR合成処理の回数やパターンを変更することで処理時間を短縮しつつ、ダイナミックレンジが十分に拡大されたHDR画像を取得することができる。
【0090】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0091】
106 撮像素子
107 DSP
109 CPU
203、207 列回路
205 列回路スイッチ
301a 第1の保持部
301b 第2の保持部
308 付加容量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10