(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175987
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】液体吐出装置、液体吐出ヘッド、及び、液体吐出装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241212BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B41J2/01 207
B41J2/14 611
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094144
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】折原 大地
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EB29
2C056EB30
2C056EB39
2C056EB40
2C056FA04
2C056FA10
2C057AL24
2C057AN01
2C057AR16
2C057BA04
2C057BA14
2C057DD06
2C057DD09
(57)【要約】
【課題】検出信号を適切な振幅にする。
【解決手段】駆動信号により駆動される圧電素子、内部に液体が充填され圧電素子の駆動に応じて体積が変化する圧力室、及び、圧力室の体積の変化に応じて圧力室内の液体を吐出するノズル、を具備する吐出部と、圧電素子の駆動後に、吐出部に残留する振動に応じて変動する圧電素子の電位を示す振動信号を検出し、検出した振動信号に基づいて検出信号を生成する検出部と、吐出部が吐出する液体の特性に関連する液体特性情報と、圧電素子の特性に関連する素子特性情報と、に基づいて信号増幅率を設定する設定部と、を備え、検出部は、設定部の設定した信号増幅率に応じて、振動信号を増幅することで、検出信号を生成する、ことを特徴とする液体吐出装置。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動信号により駆動される圧電素子、内部に液体が充填され前記圧電素子の駆動に応じて体積が変化する圧力室、及び、前記圧力室の体積の変化に応じて前記圧力室内の液体を吐出するノズル、を具備する吐出部と、
前記圧電素子の駆動後に、前記吐出部に残留する振動に応じて変動する前記圧電素子の電位を示す振動信号を検出し、検出した振動信号に基づいて検出信号を生成する検出部と、
前記吐出部が吐出する液体の特性に関連する液体特性情報と、前記圧電素子の特性に関連する素子特性情報と、に基づいて信号増幅率を設定する設定部と、
を備え、
前記検出部は、前記設定部の設定した信号増幅率に応じて、前記振動信号を増幅することで、前記検出信号を生成する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記検出信号の示す特徴量を、1または複数の基準値と比較することで、前記吐出部における液体の吐出状態が正常か否かを判定する判定部を備え、
前記1または複数の基準値は、前記液体特性情報の示す液体の特性が変動しても値が変動せず、且つ、前記素子特性情報の示す圧電素子の特性が変動しても値が変動しない固定基準値を含む、
ことを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記設定部は、前記液体特性情報の示す液体の特性が変動した場合に、前記検出信号の振幅を所定の振幅範囲に留めるために必要となる前記振動信号の増幅率を示す第1増幅情報に基づいて、前記信号増幅率を設定する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記設定部は、前記素子特性情報の示す圧電素子の特性が変動した場合に、前記検出信号の振幅を所定の振幅範囲に留めるために必要となる前記振動信号の増幅率を示す第2増幅情報に基づいて、前記信号増幅率を設定する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記駆動信号を生成する駆動信号生成部を備え、
前記駆動信号生成部は、前記検出部が前記振動信号を増幅しても、前記検出信号の振幅を所定の振幅範囲に留めことができない場合に、前記検出信号の振幅を前記所定の振幅範囲に留めるように、前記駆動信号の波形を補正する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記液体特性情報は、前記吐出部が吐出する液体の温度に応じた温度を示し、
前記信号増幅率は、前記液体特性情報の示す温度が低い場合、高い場合と比較して大きい値に設定される、
ことを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
駆動信号により駆動される圧電素子、内部に液体が充填され前記圧電素子の駆動に応じて体積が変化する圧力室、及び、前記圧力室の体積の変化に応じて前記圧力室内の液体を吐出するノズル、を具備する吐出部と、
前記圧電素子の駆動後に、前記吐出部に残留する振動に応じて変動する前記圧電素子の電位を示す振動信号を検出し、検出した振動信号に基づいて検出信号を生成する検出部と、
を備え、
前記検出部は、前記吐出部が吐出する液体の特性に関連する液体特性情報と、前記圧電素子の特性に関連する素子特性情報と、に基づいて設定された信号増幅率に応じて、前記振動信号を増幅することで、前記検出信号を生成する、
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項8】
駆動信号により駆動される圧電素子と、内部に液体が充填され前記圧電素子の駆動に応じて体積が変化する圧力室と、前記圧力室の体積の変化に応じて前記圧力室内の液体を吐出するノズルと、を具備する吐出部、
を備える液体吐出装置の制御方法であって、
前記圧電素子の駆動後に、前記吐出部に残留する振動に応じて変動する前記圧電素子の電位を示す振動信号を検出し、
前記吐出部が吐出する液体の特性に関連する液体特性情報と、前記圧電素子の特性に関連する素子特性情報と、に基づいて信号増幅率を設定し、
前記振動信号を前記信号増幅率に応じて増幅することで検出信号を生成する、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項9】
前記検出信号の示す特徴量を、1または複数の基準値と比較することで、前記吐出部における液体の吐出状態が正常か否かを判定し、
前記1または複数の基準値は、前記液体特性情報の示す液体の特性が変動しても値が変動せず、且つ、前記素子特性情報の示す圧電素子の特性が変動しても値が変動しない固定基準値を含む、
ことを特徴とする、請求項8に記載の制御方法。
【請求項10】
前記液体特性情報の示す液体の特性が変動した場合に、前記検出信号の振幅を所定の振幅範囲に留めるために必要となる前記振動信号の増幅率を示す第1増幅情報に基づいて、前記信号増幅率を設定する、
ことを特徴とする、請求項8に記載の制御方法。
【請求項11】
前記素子特性情報の示す圧電素子の特性が変動した場合に、前記検出信号の振幅を所定の振幅範囲に留めるために必要となる前記振動信号の増幅率を示す第2増幅情報に基づいて、前記信号増幅率を設定する、
ことを特徴とする、請求項8に記載の制御方法。
【請求項12】
前記振動信号を増幅しても、前記検出信号の振幅を所定の振幅範囲に留めことができない場合に、
前記検出信号の振幅を前記所定の振幅範囲に留めるように、前記駆動信号の波形を補正する、
ことを特徴とする、請求項8に記載の制御方法。
【請求項13】
前記液体特性情報は、前記吐出部が吐出する液体の温度に応じた温度を示し、
前記液体特性情報の示す温度が低い場合、高い場合と比較して、前記信号増幅率を大きい値に設定する、
ことを特徴とする、請求項8に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、液体吐出ヘッド、及び、液体吐出装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンター等の液体吐出装置は、液体吐出ヘッドが具備する吐出部に設けられた圧電素子を駆動することにより、吐出部に設けられた圧力室に充填されているインク等の液体をノズルから吐出させ、媒体に画像を形成する。しかし、液体吐出装置において、吐出部から液体を正常に吐出できなくなる吐出異常が生じる場合がある。そこで、従来から、吐出部における吐出状態を判定する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、圧電素子の駆動後に吐出部に残留する振動を示す振動信号を増幅した検出信号に基づいて、吐出部における吐出状態を判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、圧電素子の駆動後に吐出部に残留する振動の振幅は、吐出部が吐出する液体の特性と、圧電素子の特性と、に応じて変動する。このため、吐出部に残留する振動を示す振動信号を一定の増幅率で増幅した検出信号に基づいて、吐出部における吐出状態を判定する場合、検出信号が不適切な振幅を有するため、吐出状態の判定が不正確となる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明に係る液体吐出装置は、駆動信号により駆動される圧電素子、内部に液体が充填され前記圧電素子の駆動に応じて体積が変化する圧力室、及び、前記圧力室の体積の変化に応じて前記圧力室内の液体を吐出するノズル、を具備する吐出部と、前記圧電素子の駆動後に、前記吐出部に残留する振動に応じて変動する前記圧電素子の電位を示す振動信号を検出し、検出した振動信号に基づいて検出信号を生成する検出部と、前記吐出部が吐出する液体の特性に関連する液体特性情報と、前記圧電素子の特性に関連する素子特性情報と、に基づいて信号増幅率を設定する設定部と、を備え、前記検出部は、前記設定部の設定した信号増幅率に応じて、前記振動信号を増幅することで、前記検出信号を生成する、ことを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係る液体吐出ヘッドは、駆動信号により駆動される圧電素子、内部に液体が充填され前記圧電素子の駆動に応じて体積が変化する圧力室、及び、前記圧力室の体積の変化に応じて前記圧力室内の液体を吐出するノズル、を具備する吐出部と、前記圧電素子の駆動後に、前記吐出部に残留する振動に応じて変動する前記圧電素子の電位を示す振動信号を検出し、検出した振動信号に基づいて検出信号を生成する検出部と、を備え、前記検出部は、前記吐出部が吐出する液体の特性に関連する液体特性情報と、前記圧電素子の特性に関連する素子特性情報と、に基づいて設定された信号増幅率に応じて、前記振動信号を増幅することで、前記検出信号を生成する、ことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る制御方法は、駆動信号により駆動される圧電素子と、内部に液体が充填され前記圧電素子の駆動に応じて体積が変化する圧力室と、前記圧力室の体積の変化に応じて前記圧力室内の液体を吐出するノズルと、を具備する吐出部、を備える液体吐出装置の制御方法であって、前記圧電素子の駆動後に、前記吐出部に残留する振動に応じて変動する前記圧電素子の電位を示す振動信号を検出し、前記吐出部が吐出する液体の特性に関連する液体特性情報と、前記圧電素子の特性に関連する素子特性情報と、に基づいて信号増幅率を設定し、前記振動信号を前記信号増幅率に応じて増幅することで検出信号を生成する、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンター1の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】インクジェットプリンター1の概略的な構造の一例を示す斜視図である。
【
図3】吐出部D[m]の構造の一例を説明するための断面図である。
【
図4】ヘッドユニット3の構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】ヘッドユニット3に供給される信号の一例を説明するためのタイミングチャートである。
【
図6】個別指定信号Sd[m]の一例を説明するための説明図である。
【
図7】個別指定信号Sd[m]の一例を説明するための説明図である。
【
図8】検出信号SK[m]の一例を説明するためのタイミングチャートである。
【
図9】吐出状態判定処理の一例を説明するための説明図である。
【
図10】増幅率設定処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図11】インク対応増幅情報QGTの一例を説明するための説明図である。
【
図12】ピエゾ対応増幅情報QGPの一例を説明するための説明図である。
【
図13】増幅率強化情報QGCの一例を説明するための説明図である。
【
図14】本発明の変形例1に係るインクジェットプリンター1Bの構成の一例を示すブロック図である。
【
図15】変形例1に係る増幅率設定処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図16】インク対応振幅情報QKTの一例を説明するための説明図である。
【
図17】ピエゾ対応振幅情報QKPの一例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。ただし、各図において、各部の寸法及び縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0010】
<<A.実施形態>>
本実施形態では、インクを吐出して記録用紙PPに画像を形成するインクジェットプリンターを例示して、液体吐出装置を説明する。
【0011】
<<1.インクジェットプリンターの概要>>
以下、
図1乃至
図3を参照しつつ、本実施形態に係るインクジェットプリンター1の構成の一例について説明する。
【0012】
図1は、インクジェットプリンター1の構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0013】
図1に示すように、インクジェットプリンター1には、パーソナルコンピューターまたはデジタルカメラ等のホストコンピューターから、インクジェットプリンター1が形成すべき画像を示す印刷データImgが供給される。インクジェットプリンター1は、ホストコンピューターから供給される印刷データImgの示す画像を記録用紙PPに形成する印刷処理を実行する。
【0014】
図1に示すように、インクジェットプリンター1は、インクジェットプリンター1の各部を制御する制御ユニット2と、インクを吐出する吐出部Dが設けられたヘッドユニット3と、吐出部Dを駆動するための駆動信号Comを生成する駆動信号生成ユニット4と、吐出部Dにおけるインクの吐出状態を判定する判定ユニット5と、各種情報を記憶する記憶ユニット6と、ヘッドユニット3に対する記録用紙PPの相対位置を変化させるための搬送ユニット7と、を備える。
なお、本実施形態において、インクジェットプリンター1は「液体吐出装置」の一例であり、ヘッドユニット3は「液体吐出ヘッド」の一例であり、インクは「液体」の一例であり、駆動信号生成ユニット4は「駆動信号生成部」の一例であり、判定ユニット5は「判定部」の一例である。
【0015】
本実施形態では、インクジェットプリンター1が、1または複数のヘッドユニット3と、1または複数のヘッドユニット3と1対1に対応する1または複数の駆動信号生成ユニット4と、1または複数のヘッドユニット3と1対1に対応する1または複数の判定ユニット5と、を備える場合を想定する。具体的には、本実施形態では、インクジェットプリンター1が、4個のヘッドユニット3と、4個のヘッドユニット3と1対1に対応する4個の駆動信号生成ユニット4と、4個のヘッドユニット3と1対1に対応する4個の判定ユニット5と、を備える場合を想定する。但し、以下では、説明の便宜上、
図1に示すように、4個のヘッドユニット3のうち一のヘッドユニット3と、4個の駆動信号生成ユニット4のうち一のヘッドユニット3に対応して設けられた一の駆動信号生成ユニット4と、4個の駆動信号生成ユニット4のうち一のヘッドユニット3に対応して設けられた一の判定ユニット5と、に着目して説明する。
【0016】
制御ユニット2は、1または複数のCPU(Central Processing Unit)を含んで構成される。但し、制御ユニット2は、CPUの代わりに、または、CPUに加えて、FPGA(field-programmable gate array)等のプログラマブルロジックデバイスを備えるものでよい。
【0017】
記憶ユニット6は、RAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリーと、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、または、PROM(Programmable ROM)等の不揮発性メモリーと、の一方または両方を含んで構成される。詳細は後述するが、記憶ユニット6は、インクジェットプリンター1の制御プログラムPRGと、インク対応増幅情報QGTと、ピエゾ対応増幅情報QGPと、増幅率強化情報QGCと、を記憶している。
【0018】
制御ユニット2は、記憶ユニット6に記憶された制御プログラムPRGを実行し、制御プログラムPRGに従って動作することで、駆動制御部21、吐出制御部22、判定管理部23、増幅率設定部24、及び、搬送制御部25として機能する。
【0019】
駆動制御部21は、波形指定信号dComを生成し、生成した波形指定信号dComを駆動信号生成ユニット4に供給する。ここで、波形指定信号dComは、駆動信号Comの波形を規定するデジタルの信号である。駆動信号Comは、吐出部Dを駆動するためのアナログの信号である。駆動信号生成ユニット4は、波形指定信号dComにより規定される波形を有する駆動信号Comを生成し、生成した駆動信号Comをヘッドユニット3に供給する。
【0020】
吐出制御部22は、指定信号SIを生成し、生成した指定信号SIをヘッドユニット3に供給する。ここで、指定信号SIは、吐出部Dの動作の種類を指定するデジタルの信号である。具体的には、指定信号SIは、吐出部Dに対して駆動信号Comを供給するか否かを指定することで、吐出部Dの動作の種類を指定する信号である。
【0021】
ヘッドユニット3は、供給回路31と、記録ヘッド32と、検出回路33と、温度センサ35と、を備える。
【0022】
記録ヘッド32は、M個の吐出部Dを備える。ここで、値Mは、「M≧2」を満たす自然数である。なお、以下では、記録ヘッド32に設けられたM個の吐出部Dのうち、m番目の吐出部Dを、吐出部D[m]と称する場合がある。ここで、変数mは、「1≦m≦M」を満たす自然数である。また、以下では、インクジェットプリンター1の構成要素または信号等が、M個の吐出部Dのうち、吐出部D[m]に対応する場合は、当該構成要素または信号等を表わすための符号に、添え字[m]を付すことがある。
【0023】
供給回路31は、指定信号SIに基づいて、駆動信号Comを吐出部D[m]に供給するか否かを切り替える。以下では、駆動信号Comのうち、吐出部D[m]に供給される駆動信号Comを、供給駆動信号Vin[m]と称する場合がある。
【0024】
供給回路31は、指定信号SIに基づいて、吐出部D[m]が具備するピエゾ素子PZ[m]に設けられた上部電極Zu[m]の電位を示す振動信号VX[m]を検出回路33に供給するか否かを切り替える。以下では、吐出部D[m]から検出回路33に対して振動信号VX[m]が供給される場合、当該吐出部D[m]を、判定対象吐出部DHと称する場合がある。なお、ピエゾ素子PZ[m]及び上部電極Zu[m]については、
図3において後述する。
【0025】
検出回路33は、判定対象吐出部DHとされた吐出部D[m]から供給回路31を介して供給される振動信号VX[m]に基づいて、検出信号SK[m]を生成する。具体的には、検出回路33は、振動信号VX[m]を増幅することで検出信号SK[m]を生成する。なお、本実施形態において、検出回路33は「検出部」の一例である。
【0026】
温度センサ35は、ヘッドユニット3の温度ATを測定し、当該測定結果を示す温度信号STを出力する。なお、吐出部D[m]が吐出するインクの温度は、温度信号STの示す温度ATに応じた温度を有する。そして、吐出部D[m]が吐出するインクの粘度は、温度信号STの示す温度ATに応じた温度を有する。つまり、温度信号STは、吐出部D[m]が吐出するインクの温度及び粘度に応じた温度ATを示す。なお、本実施形態において、吐出部D[m]が吐出するインクの温度は「吐出部が吐出する液体の特性」の一例であり、吐出部D[m]が吐出するインクの粘度は「吐出部が吐出する液体の特性」の他の例である。また、本実施形態において、温度信号STの示す情報は「液体特性情報」の一例である。
【0027】
増幅率設定部24は、温度信号STと指定信号SIとに基づいて、増幅率指定信号SGを生成する。ここで、増幅率指定信号SGは、検出回路33における振動信号VX[m]の増幅率AG[m]を指定する信号である。なお、本実施形態において、増幅率AG[m]は「信号増幅率」の一例である。また、以下では、増幅率設定部24が増幅率指定信号SGを生成する処理を、増幅率設定処理と称する場合がある。
【0028】
具体的には、増幅率設定部24は、増幅率設定処理において、まず、指定信号SIに基づいてピエゾ駆動回数情報SPを生成する。ここで、ピエゾ駆動回数情報SPは、吐出部D[1]~D[M]に対応するピエゾ駆動回数AP[1]~AP[M]を示す情報である。このうち、ピエゾ駆動回数AP[m]は、インクジェットプリンター1の製品出荷時から現在までに至る期間における、吐出部D[m]に設けられたピエゾ素子PZ[m]の駆動回数である。なお、本実施形態において、ピエゾ素子PZ[m]の駆動回数は「圧電素子の特性」の一例である。また、本実施形態において、ピエゾ駆動回数情報SPは「素子特性情報」の一例である。
そして、増幅率設定部24は、増幅率設定処理において、温度信号STと、ピエゾ駆動回数情報SPとに基づいて、増幅率AG[m]を設定し、当該増幅率AG[m]を示す増幅率指定信号SGを生成する。次に、増幅率設定部24は、増幅率指定信号SGを、検出回路33に供給する。検出回路33は、増幅率指定信号SGの示す増幅率AG[m]に応じて振動信号VX[m]を増幅することで、検出信号SK[m]を生成する。
なお、本実施形態において、増幅率設定部24は「設定部」の一例である。
【0029】
また、増幅率設定部24は、増幅率設定処理において、温度信号STと指定信号SIとに基づいて、駆動波形補正信号SCを生成する。ここで、駆動波形補正信号SCは、駆動信号Comの波形の補正を指示する信号であり、且つ、補正後の駆動信号Comの振幅ACを示す信号である。駆動制御部21は、増幅率設定部24から駆動波形補正信号SCが供給された場合、駆動信号Comの振幅が、駆動波形補正信号SCの示す振幅ACとなるように、波形指定信号dComを補正する。
【0030】
判定ユニット5は、検出信号SK[m]に基づいて、吐出部D[m]におけるインクの吐出状態を判定する。換言すれば、判定ユニット5は、検出信号SK[m]に基づいて、吐出部D[m]において吐出異常が生じていないか否かを判定する。ここで、吐出異常とは、吐出部D[m]が具備するノズルNから、インクを正常に吐出できない状態の総称である。例えば、吐出異常とは、吐出部D[m]からインクを吐出できなくなる状態、吐出部D[m]が駆動信号Comにより規定されるインクの吐出量とは異なる量のインクを吐出する状態、及び、吐出部D[m]が駆動信号Comにより規定されるインクの吐出速度とは異なる速度でインクを吐出する状態、等を含む。
なお、以下では、検出信号SK[m]に基づいて、吐出部D[m]における吐出状態を判定する処理を、吐出状態判定処理と称する。
また、以下では、吐出部D[m]を判定対象吐出部DHとして駆動して当該吐出部D[m]から振動信号VX[m]を検出する処理を、判定対象駆動処理と称する。
【0031】
判定ユニット5は、インクの吐出状態の判定の結果に基づいて、結果情報SHを生成し、生成した結果情報SHを判定管理部23に供給する。そして、判定管理部23は、判定ユニット5から供給される結果情報SHを管理する。ここで、結果情報SHは、吐出部D[m]におけるインクの吐出状態の判定の結果を示す判定結果情報SH1[m]と、検出信号SK[m]の振幅AK[m]を示す振幅情報SH2[m]と、を含む。
【0032】
なお、上述のとおり、インクジェットプリンター1は、印刷処理を実行する。印刷処理が実行される場合、吐出制御部22は、印刷データImgに基づいて、指定信号SI等のヘッドユニット3を制御するための信号を生成する。また、駆動制御部21は、波形指定信号dCom等の駆動信号生成ユニット4を制御するための信号を生成する。また、搬送制御部25は、搬送ユニット7を制御するための搬送制御信号MHを生成する。これにより、制御ユニット2は、印刷処理において、ヘッドユニット3に対する記録用紙PPの相対位置を変化させるように搬送ユニット7を制御しつつ、吐出部D[m]からのインクの吐出の有無、インクの吐出量、及び、インクの吐出タイミング等を調整し、印刷データImgに対応する画像が記録用紙PPに形成されるように、インクジェットプリンター1の各部を制御する。
以下では、印刷処理と判定対象駆動処理とを、吐出部駆動処理と総称する場合がある。
【0033】
図2は、インクジェットプリンター1の概略的な内部構造の一例を示す斜視図である。
【0034】
図2に示すように、本実施形態では、インクジェットプリンター1がシリアルプリンターである場合を想定する。具体的には、インクジェットプリンター1は、印刷処理を実行する場合、X1方向に記録用紙PPを搬送しつつ、X1方向に交差するY1方向と、Y1方向の逆方向であるY2方向とに、ヘッドユニット3を往復動させながら、吐出部D[m]からインクを吐出させることで、記録用紙PP上に、印刷データImgに応じたドットDtを形成する。
【0035】
以下では、X1方向とその逆方向であるX2方向とを「X軸方向」と総称し、X軸方向に交差するY1方向とその逆方向であるY2方向とを「Y軸方向」と総称し、X軸方向及びY軸方向に交差するZ1方向とその逆方向であるZ2方向とを「Z軸方向」と総称する。本実施形態では、一例として、X軸方向、Y軸方向、及び、Z軸方向が、互いに直交する場合を想定して説明する。但し、本発明はこのような態様に限定されるものではない。X軸方向、Y軸方向、及び、Z軸方向は、互いに交差していればよい。なお、本実施形態において、Z1方向は、吐出部D[m]からインクが吐出される方向であることとする。
【0036】
図2に示すように、本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、筐体100と、筐体100内をY軸方向に往復動可能であり、4個のヘッドユニット3を搭載するキャリッジ110と、を備える。
【0037】
本実施形態では、
図2に示すように、キャリッジ110が、シアン、マゼンタ、イエロー、及び、ブラックの4色のインクと1対1に対応する、4個のインクカートリッジ120を格納している場合を想定する。また、本実施形態では、上述のとおり、インクジェットプリンター1が、4個のインクカートリッジ120と1対1に対応する、4個のヘッドユニット3を備える場合を想定する。各吐出部D[m]は、当該吐出部D[m]が設けられたヘッドユニット3に対応するインクカートリッジ120からインクの供給を受ける。これにより、各吐出部D[m]は、供給されたインクを内部に充填し、充填したインクをノズルNから吐出することができる。なお、インクカートリッジ120は、キャリッジ110の外部に設けられてもよい。
【0038】
また、上述のとおり、本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、搬送ユニット7を備える。搬送ユニット7は、キャリッジ110をY軸方向に往復動させるためのキャリッジ搬送機構71と、キャリッジ110をY軸方向に往復自在に支持するキャリッジガイド軸76と、記録用紙PPを搬送するための媒体搬送機構73と、キャリッジ110のZ1方向に設けられたプラテン75と、を具備する。このため、搬送ユニット7は、印刷処理が実行される場合に、キャリッジ搬送機構71により、ヘッドユニット3をキャリッジ110と共にキャリッジガイド軸76に沿ってY軸方向に往復動させ、媒体搬送機構73により、プラテン75上の記録用紙PPをX1方向に搬送することで、記録用紙PPのヘッドユニット3に対する相対位置を変化させ、記録用紙PPの全体に対するインクの着弾を可能とする。
【0039】
図3は、吐出部D[m]を含むように記録ヘッド32を切断した、記録ヘッド32の概略的な一部断面図である。
【0040】
図3に示すように、吐出部D[m]は、ピエゾ素子PZ[m]と、内部にインクが充填されたキャビティCV[m]と、キャビティCV[m]に連通するノズルN[m]と、振動板321と、を備える。吐出部D[m]は、ピエゾ素子PZ[m]が供給駆動信号Vin[m]により駆動されることにより、キャビティCV[m]内のインクをノズルN[m]から吐出させる。キャビティCV[m]は、キャビティプレート324と、ノズルN[m]が形成されたノズルプレート323と、振動板321と、により区画される空間である。キャビティCV[m]は、インク供給口326を介してリザーバ325と連通している。リザーバ325は、インク取入口327を介して、吐出部D[m]に対応するインクカートリッジ120と連通している。ピエゾ素子PZ[m]は、上部電極Zu[m]と、下部電極Zd[m]と、上部電極Zu[m]及び下部電極Zd[m]の間に設けられた圧電体Zm[m]と、を有する。下部電極Zd[m]は、所定の電位VBSに設定された給電線Lvと電気的に接続される。そして、上部電極Zu[m]に供給駆動信号Vin[m]が供給されて、上部電極Zu[m]及び下部電極Zd[m]の間に電圧が印加されると、当該印加された電圧に応じてピエゾ素子PZ[m]がZ1方向またはZ2方向に変位し、その結果、ピエゾ素子PZ[m]が振動する。振動板321には、下部電極Zd[m]が接合されている。このため、ピエゾ素子PZ[m]が供給駆動信号Vin[m]により駆動されて振動すると、振動板321も振動する。そして、振動板321の振動によりキャビティCV[m]の容積及びキャビティCV[m]内の圧力が変化し、キャビティCV[m]内に充填されたインクがノズルN[m]より吐出される。なお、本実施形態において、ピエゾ素子PZ[m]は「圧電素子」の一例であり、キャビティCV[m]は「圧力室」の一例である。
【0041】
<<2.ヘッドユニットの概要>>
以下、
図4乃至
図7を参照しつつ、ヘッドユニット3の概要について説明する。
【0042】
図4は、ヘッドユニット3の構成の一例を示すブロック図である。
【0043】
図4に示すように、ヘッドユニット3は、供給回路31と記録ヘッド32と検出回路33とを備える。また、ヘッドユニット3は、駆動信号生成ユニット4から駆動信号Comが供給される配線Lcと、振動信号VX[m]を検出回路33に供給するための配線Lsと、を備える。
【0044】
供給回路31は、M個の吐出部D[1]~D[M]と1対1に対応するM個のスイッチWc[1]~Wc[M]と、M個の吐出部D[1]~D[M]と1対1に対応するM個のスイッチWs[1]~Ws[M]と、各スイッチの接続状態を指定する接続状態指定回路34と、を備える。
【0045】
接続状態指定回路34は、制御ユニット2から供給される指定信号SI、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及び、期間指定信号Tsigに基づいて、スイッチWc[m]のオンオフを指定する接続状態指定信号Rc[m]と、スイッチWs[m]のオンオフを指定する接続状態指定信号Rs[m]と、を生成する。
【0046】
スイッチWc[m]は、接続状態指定信号Rc[m]に基づいて、配線Lcと、ピエゾ素子PZ[m]の上部電極Zu[m]との、導通及び非導通を切り替える。本実施形態において、スイッチWc[m]は、接続状態指定信号Rc[m]がハイレベルの場合にオンし、ローレベルの場合にオフする。スイッチWc[m]がオンする場合、配線Lcに供給される駆動信号Comが、供給駆動信号Vin[m]として、吐出部D[m]の上部電極Zu[m]に供給される。
スイッチWs[m]は、接続状態指定信号Rs[m]に基づいて、配線Lsと、ピエゾ素子PZ[m]の上部電極Zu[m]との、導通及び非導通を切り替える。本実施形態において、スイッチWs[m]は、接続状態指定信号Rs[m]がハイレベルの場合にオンし、ローレベルの場合にオフする。スイッチWs[m]がオンする場合、吐出部D[m]に設けられた上部電極Zu[m]の電位を示す振動信号VX[m]が、上部電極Zu[m]から配線Lsを介して検出回路33に供給される。
【0047】
検出回路33は、配線Lsから供給される振動信号VX[m]と、増幅率設定部24から供給される増幅率指定信号SGと、に基づいて、振動信号VX[m]の波形に応じた波形を有する検出信号SK[m]を生成する。具体的には、検出回路33は、振動信号VX[m]を、増幅率指定信号SGの示す増幅率AG[m]により増幅することで、検出信号SK[m]を生成する。
【0048】
本実施形態では、インクジェットプリンター1が、印刷処理または吐出状態判定処理を実行する場合、インクジェットプリンター1の動作期間として、1または複数の単位期間TPが設定される。インクジェットプリンター1は、各単位期間TPにおいて、印刷処理または判定対象駆動処理を含む吐出部駆動処理のために各吐出部D[m]を駆動することができる。
【0049】
図5は、単位期間TPにおいてヘッドユニット3に供給される駆動信号Com等の各種信号の一例を示すタイミングチャートである。
【0050】
図5に示すように、制御ユニット2は、パルスPLLを有するラッチ信号LATを出力する。これにより、制御ユニット2は、パルスPLLの立ち上がりから次のパルスPLLの立ち上がりまでの期間として、単位期間TPを規定する。
また、制御ユニット2は、単位期間TPにおいて、パルスPLCを有するチェンジ信号CHを出力する。そして、制御ユニット2は、単位期間TPを、パルスPLLの立ち上がりからパルスPLCの立ち上がりまでの駆動期間TQ1と、パルスPLCの立ち上がりからパルスPLLの立ち上がりまでの駆動期間TQ2と、に区分する。
【0051】
また、制御ユニット2は、単位期間TPにおいて、パルスPLT1とパルスPLT2とを有する期間指定信号Tsigを出力する。そして、制御ユニット2は、単位期間TPを、パルスPLLの立ち上がりからパルスPLT1の立ち上がりまでの制御期間TS1と、パルスPLT1の立ち上がりからパルスPLT2の立ち上がりまでの制御期間TS2と、パルスPLT2の立ち上がりからパルスPLLの立ち上がりまでの制御期間TS3と、に区分する。
【0052】
図5に示すように、指定信号SIは、M個の吐出部D[1]~D[M]と1対1に対応するM個の個別指定信号Sd[1]~Sd[M]を含む。個別指定信号Sd[m]は、インクジェットプリンター1が印刷処理または吐出状態判定処理を実行する場合に、各単位期間TPにおける吐出部D[m]の駆動の態様を指定する。制御ユニット2は、各単位期間TPに先立って、M個の個別指定信号Sd[1]~Sd[M]を含む指定信号SIを、クロック信号CLに同期させて接続状態指定回路34に供給する。そして、接続状態指定回路34は、当該単位期間TPにおいて、個別指定信号Sd[m]に基づいて、接続状態指定信号Rc[m]及び接続状態指定信号Rs[m]を生成する。
【0053】
なお、本実施形態では、インクジェットプリンター1が印刷処理または判定対象駆動処理を実行する場合に、吐出部D[m]が、インク量ξ1のインクからなる大ドットと、インク量ξ1よりも少ないインク量ξ2のインクからなる小ドットと、のうち、何れかのドットDtを形成可能である場合を想定する。
【0054】
図6及び
図7は、個別指定信号Sd[m]の一例を説明するための説明図である。
【0055】
図6及び
図7に示すように、本実施形態において、個別指定信号Sd[m]は、単位期間TPにおいて、吐出部D[m]を大ドット形成吐出部DP-1として指定する値「1」と、吐出部D[m]を小ドット形成吐出部DP-2として指定する値「2」と、吐出部D[m]を非駆動吐出部DP-3として指定する値「3」と、吐出部D[m]を判定対象吐出部DHとして指定する値「4」との、4個の値のうち、何れか1個の値を示す。
【0056】
ここで、大ドット形成吐出部DP-1とは、単位期間TPにおいて大ドットを形成する吐出部Dである。小ドット形成吐出部DP-2とは、単位期間TPにおいて小ドットを形成する吐出部Dである。非駆動吐出部DP-3とは、単位期間TPにおいて駆動信号Comにより駆動されない吐出部Dである。判定対象吐出部DHとは、単位期間TPにおいて吐出状態判定処理の対象となる吐出部Dである。
【0057】
説明を
図5に戻す。
図5に示すように、本実施形態において、駆動信号Comは、駆動期間TQ1に設けられた波形PA1と、駆動期間TQ2に設けられた波形PA2と、を有する。
【0058】
このうち、波形PA1は、駆動期間TQ1のうち制御期間TS1において、基準電位V0から、基準電位V0よりも低電位の電位VL1、及び、基準電位V0よりも高電位の電位VH1を経て、基準電位V0に戻り、駆動期間TQ1のうち制御期間TS2及び制御期間TS3において、基準電位V0を維持する波形である。波形PA1を有する供給駆動信号Vin[m]が吐出部D[m]に供給される場合に、吐出部D[m]からインク量ξ1に相当するインクが吐出されるように、波形PA1が定められる。
【0059】
また、波形PA2は、駆動期間TQ2において、基準電位V0から、基準電位V0よりも低電位の電位VL2、及び、基準電位V0よりも高電位の電位VH2を経て、基準電位V0に戻る波形である。波形PA2を有する供給駆動信号Vin[m]が吐出部D[m]に供給される場合に、吐出部D[m]からインク量ξ2に相当するインクが吐出されるように、波形PA2が定められる。
【0060】
なお、本実施形態では、一例として、吐出部D[m]に供給される供給駆動信号Vin[m]の電位が高電位の場合に、低電位の場合と比較して、吐出部D[m]の備えるキャビティCV[m]の容積が小さくなる場合を想定する。このため、吐出部D[m]が波形PA1等を有する供給駆動信号Vin[m]により駆動される場合、供給駆動信号Vin[m]の電位が低電位から高電位に変化することで、吐出部D[m]内のインクがノズルN[m]から吐出される。
【0061】
次に、
図6及び
図7を参照しつつ、個別指定信号Sd[m]により指定された吐出部D[m]の動作について説明する。
【0062】
図6に示すように、個別指定信号Sd[m]が、単位期間TPにおいて吐出部D[m]を大ドット形成吐出部DP-1として指定する値「1」を示す場合、接続状態指定回路34は、接続状態指定信号Rc[m]を、駆動期間TQ1においてハイレベルに設定する。この場合、スイッチWc[m]が、駆動期間TQ1においてオンする。このため、吐出部D[m]は、単位期間TPにおいて、波形PA1を有する供給駆動信号Vin[m]により駆動され、大ドットに相当するインク量ξ1のインクを吐出する。
【0063】
また、個別指定信号Sd[m]が、単位期間TPにおいて吐出部D[m]を小ドット形成吐出部DP-2として指定する値「2」を示す場合、接続状態指定回路34は、接続状態指定信号Rc[m]を、駆動期間TQ2においてハイレベルに設定する。この場合、スイッチWc[m]が、駆動期間TQ2においてオンする。このため、吐出部D[m]は、単位期間TPにおいて、波形PA2を有する供給駆動信号Vin[m]により駆動され、小ドットに相当するインク量ξ2のインクを吐出する。
【0064】
また、個別指定信号Sd[m]が、単位期間TPにおいて吐出部D[m]を非駆動吐出部DP-3として指定する値「3」を示す場合、接続状態指定回路34は、接続状態指定信号Rc[m]及び接続状態指定信号Rs[m]を、単位期間TPに亘りローレベルに設定する。この場合、スイッチWc[m]とスイッチWs[m]とが、単位期間TPに亘りオフする。このため、吐出部D[m]は、単位期間TPにおいて、駆動信号Comにより駆動されず、インクを吐出しない。
【0065】
図7に示すように、個別指定信号Sd[m]が、単位期間TPにおいて吐出部D[m]を判定対象吐出部DHとして指定する値「4」を示す場合、接続状態指定回路34は、接続状態指定信号Rc[m]を、制御期間TS1においてハイレベルに設定し、接続状態指定信号Rs[m]を、制御期間TS2においてハイレベルに設定する。この場合、スイッチWc[m]が、制御期間TS1においてオンし、スイッチWs[m]が、制御期間TS2においてオンする。このため、判定対象吐出部DHとして指定された吐出部D[m]が、制御期間TS1において、波形PA1を有する供給駆動信号Vin[m]により駆動された結果として、吐出部D[m]に生じる振動が、制御期間TS2において残留する。そして、制御期間TS2において、吐出部D[m]に残留している振動に応じて、吐出部D[m]に設けられた上部電極Zu[m]の電位が変化する。そして、検出回路33は、吐出部D[m]に残留している振動に応じた変化する上部電極Zu[m]の電位を、制御期間TS2においてスイッチWs[m]を介して振動信号VX[m]として検出する。
すなわち、制御期間TS2において吐出部D[m]から検出される振動信号VX[m]の波形は、制御期間TS2において吐出部D[m]に残留している振動の波形を示す。そして、制御期間TS2において吐出部D[m]から検出される振動信号VX[m]に基づいて生成される検出信号SK[m]の波形は、制御期間TS2において吐出部D[m]に残留している振動の波形を示す。
【0066】
<<3.判定ユニットの概要>>
以下、
図8及び
図9を参照しつつ、判定ユニット5の概要について説明する。
【0067】
上述のとおり、判定ユニット5は、検出回路33から供給される検出信号SK[m]に基づいて、判定対象吐出部DHとして指定された吐出部D[m]におけるインクの吐出状態を判定する吐出状態判定処理を実行する。
【0068】
図8は、検出回路33が判定ユニット5に供給する検出信号SK[m]の一例を説明するためのタイミングチャートである。なお、検出回路33が制御期間TS2において出力する検出信号SK[m]は、制御期間TS2における吐出部D[m]に残留している振動に基づく波形を示す。
【0069】
図8に示すように、以下では、検出信号SK[m]の電位が、検出信号SK[m]の振幅中心付近に設定された基準電位VK0に一致したタイミングから、次に基準電位VK0に一致するタイミングまでの期間を、周期期間NTC[m]と称する。また、以下では、周期期間NTC[m]の有する時間長を、検出信号SK[m]の周期TC[m]と称する。本実施形態において、周期TC[m]は「検出信号SK[m]の示す特徴量」の一例である。
また、本実施形態では、周期期間NTC[m]において、検出信号SK[m]の最高電位VKH[m]と、検出信号SK[m]の最低電位VKL[m]との電位差を、検出信号SK[m]の振幅AK[m]と看做すこととする。
【0070】
本実施形態において、判定ユニット5は、検出信号SK[m]の有する周期TC[m]と振幅AK[m]とを測定する。そして、判定ユニット5は、周期TC[m]に基づいて、吐出部D[m]におけるインクの吐出状態を判定し、当該判定の結果を示す判定結果情報SH1[m]を生成する吐出状態判定処理を実行する。次に、判定ユニット5は、判定結果情報SH1[m]と、振幅AK[m]を示す振幅情報SH2[m]とを含む、結果情報SHを生成し、生成した結果情報SHを制御ユニット2に供給する。
【0071】
図9は、判定ユニット5の吐出状態判定処理における判定結果情報SH1[m]の生成の一例を説明するための説明図である。
【0072】
図9に示すように、判定ユニット5は、吐出状態判定処理において、周期TC[m]と、閾値Tth1、閾値Tth2、及び、閾値Tth3の一部または全部とを比較することで、吐出部D[m]におけるインクの吐出状態を判定し、当該判定の結果を示す判定結果情報SH1[m]を生成する。
【0073】
閾値Tth1は、吐出部D[m]の吐出状態が正常である場合に吐出部D[m]に生じる残留振動の周期TC[m]と、吐出部D[m]のキャビティCV[m]に気泡が混入した場合において吐出部D[m]に生じる残留振動の周期TC[m]との、境界を示すための固定値である。
閾値Tth2は、閾値Tth1よりも大きい値であって、吐出部D[m]の吐出状態が正常である場合に吐出部D[m]に生じる残留振動の周期TC[m]と、吐出部D[m]のノズルN[m]付近に異物が付着した場合において吐出部D[m]に生じる残留振動の周期TC[m]との、境界を示すための固定値である。
閾値Tth3は、閾値Tth2よりも大きい値であって、吐出部D[m]のノズルN[m]付近に異物が付着した場合において吐出部D[m]に生じる残留振動の周期TC[m]と、吐出部D[m]のキャビティCV[m]内のインクが増粘した場合において吐出部D[m]に生じる残留振動の周期TC[m]との、境界を示すための固定値である。
なお、本実施形態において、閾値Tth1、閾値Tth2、及び、閾値Tth3は、「固定基準値」の一例である。
【0074】
本実施形態において、判定ユニット5は、吐出状態判定処理において、周期TC[m]が「Tth1≦TC[m]≦Tth2」を満たす場合、吐出部D[m]におけるインクの吐出状態が正常であると看做し、判定結果情報SH1[m]に対して、吐出部D[m]におけるインクの吐出状態が正常であることを示す値「1」を設定する。
また、判定ユニット5は、吐出状態判定処理において、周期TC[m]が「TC[m]<Tth1」を満たす場合、吐出部D[m]において気泡による吐出異常が生じていると看做し、判定結果情報SH1[m]に対して、吐出部D[m]において気泡による吐出異常が生じていることを示す値「2」を設定する。
また、判定ユニット5は、吐出状態判定処理において、周期TC[m]が「Tth2<TC[m]≦Tth3」を満たす場合、吐出部D[m]において異物付着による吐出異常が生じていると看做し、判定結果情報SH1[m]に対して、吐出部D[m]において異物付着による吐出異常が生じていることを示す値「3」を設定する。
また、判定ユニット5は、吐出状態判定処理において、周期TC[m]が「Tth3<TC[m]」を満たす場合、吐出部D[m]において増粘による吐出異常が生じていると看做し、判定結果情報SH1[m]に対して、吐出部D[m]において増粘による吐出異常が生じていることを示す値「4」を設定する。
【0075】
なお、本実施形態では、判定ユニット5が、周期TC[m]を、閾値Tth1、閾値Tth2、及び、閾値Tth3の3個の閾値と比較可能な場合を例示しているが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。判定ユニット5が、周期TC[m]を、閾値Tth1、閾値Tth2、及び、閾値Tth3の3個の閾値のうち1個以上の閾値と比較可能であればよい。
【0076】
以上のように、判定ユニット5は、検出信号SK[m]に基づいて、吐出部D[m]におけるインクの吐出状態の判定の結果を示す判定結果情報SH1[m]と、検出信号SK[m]の有する振幅AK[m]を示す振幅情報SH2[m]と、を含む結果情報SHを生成する。
【0077】
なお、一般的に、振動信号VX[m]の振幅は、吐出部D[m]が吐出するインクの温度及び粘度に応じて変動する。よって、検出信号SK[m]の振幅AK[m]も、吐出部D[m]が吐出するインクの温度及び粘度に応じて変動する。また、一般的に、振動信号VX[m]の振幅は、吐出部D[m]が有するピエゾ素子PZ[m]の劣化の程度に応じて変動する。よって、検出信号SK[m]の振幅AK[m]も、吐出部D[m]が有するピエゾ素子PZ[m]の劣化の程度に応じて変動する。
【0078】
このため、従来のように、検出回路33が振動信号VX[m]を一定の増幅率で増幅することで検出信号SK[m]を生成し、判定ユニット5が検出信号SK[m]に基づいて吐出部D[m]を対象とする吐出状態判定処理を実行する場合、検出信号SK[m]の振幅AK[m]が、吐出状態判定処理には不適切な振幅となる場合があった。具体的には、従来のように、検出回路33が振動信号VX[m]を一定の増幅率で増幅する場合、検出信号SK[m]の振幅AK[m]が、所定の上限振幅AK1よりも大きくなることで、検出信号SK[m]に基づく吐出状態判定処理の精度が低下する場合があった。また、従来のように、検出回路33が振動信号VX[m]を一定の増幅率で増幅する場合、検出信号SK[m]の振幅AK[m]が、所定の下限振幅AK2よりも小さくなることで、検出信号SK[m]の周期TC[m]を測定することが困難となり、検出信号SK[m]に基づく吐出状態判定処理が困難となる場合があった。
【0079】
これに対して、本実施形態によれば、上述のとおり、増幅率設定部24が、指定信号SI及び温度信号STに基づいて、増幅率AG[m]を設定する。そして、本実施形態によれば、上述のとおり、検出回路33が、増幅率AG[m]に応じて振動信号VX[m]を増幅することで、検出信号SK[m]を生成する。このため、本実施形態によれば、下限振幅AK2以上で且つ上限振幅AK1以下の、吐出状態判定処理に適した基準振幅AK0を含む所定の振幅範囲となるように、検出信号SK[m]の振幅AK[m]を設定することが可能となる。これにより、本実施形態によれば、従来のように検出回路33が振動信号VX[m]を一定の増幅率で増幅する場合と比較して、検出信号SK[m]に基づく増幅率設定処理の精度を良好にすることが可能となる。
【0080】
<<4.増幅率設定処理>>
以下、
図10乃至
図13を参照しつつ、増幅率設定処理の概要について説明する。
【0081】
図10は、増幅率設定処理が実行される場合における、制御ユニット2の動作の一例を示すフローチャートである。
【0082】
図10に示すように、増幅率設定処理が開始されると、増幅率設定部24は、温度センサ35から、温度信号STを取得する(S101)。
また、増幅率設定部24は、吐出制御部22から、指定信号SIを取得する(S103)。
【0083】
次に、増幅率設定部24は、ステップS103において取得した指定信号SIに基づいて、ピエゾ駆動回数AP[m]を示すピエゾ駆動回数情報SPを生成する(S105)。
具体的には、増幅率設定部24は、一の増幅率設定処理において、ステップS105で生成したピエゾ駆動回数情報SPを、記憶ユニット6に記憶させる。そして、増幅率設定部24は、一の増幅率設定処理の次に実行される他の増幅率設定処理のステップS105において、記憶ユニット6に記憶されているピエゾ駆動回数情報SPを取得する。次に、増幅率設定部24は、他の増幅率設定処理のステップS105において、記憶ユニット6から取得したピエゾ駆動回数情報SPの示すピエゾ駆動回数AP[m]に対して、他の増幅率設定処理のステップS103で取得した指定信号SIの示す吐出部D[m]の駆動回数を加算することで、ピエゾ駆動回数AP[m]を更新し、更新後のピエゾ駆動回数AP[m]を示すピエゾ駆動回数情報SPを生成する。
【0084】
図10に示すように、増幅率設定部24は、ステップS101で取得した温度信号STと、記憶ユニット6が記憶しているインク対応増幅情報QGTと、に基づいて、暫定増幅率AGT[m]を設定する(S107)。
【0085】
図11は、インク対応増幅情報QGTの一例を説明するための説明図である。
【0086】
図11に示すように、インク対応増幅情報QGTは、横軸が温度ATに対応する温度座標値ATxを表し、縦軸が増幅率AG[m]に対応する増幅率座標値AGyを表すグラフG-GTにおいて、検出信号SK[m]の振幅AK[m]を基準振幅AK0に維持するための、増幅率AG[m]と温度ATとの組み合わせを表す曲線LGT0を示す情報である。具体的には、インク対応増幅情報QGTは、グラフG-GTにおける、曲線LGT0上の複数の点の各々の座標を示す情報である。例えば、
図11において、温度座標値ATxが基準温度AT0となり、且つ、増幅率座標値AGyが基準増幅率AGT0となる点は、曲線LGT0上の点である。このため、温度ATが基準温度AT0となり、且つ、増幅率AG[m]が基準増幅率AGT0となる場合に、検出信号SK[m]の振幅AK[m]は、基準振幅AK0となる。
【0087】
また、インク対応増幅情報QGTは、検出信号SK[m]の振幅AK[m]を上限振幅AK1に維持するための、増幅率AG[m]及び温度ATの組み合わせを表す曲線LGT1を示す情報である。具体的には、インク対応増幅情報QGTは、グラフG-GTにおける、曲線LGT1上の複数の点の各々の座標を示す情報である。
また、インク対応増幅情報QGTは、検出信号SK[m]の振幅AK[m]を下限振幅AK2に維持するための、増幅率AG[m]及び温度ATの組み合わせを表す曲線LGT2を示す情報である。具体的には、インク対応増幅情報QGTは、グラフG-GTにおける、曲線LGT2上の複数の点の各々の座標を示す情報である。
【0088】
増幅率設定部24は、増幅率設定処理のステップS107において、インク対応増幅情報QGTを参照することで、ステップS101で取得した温度信号STの示す温度ATを温度座標値ATxとして有する曲線LGT0上の点を特定する。そして、本実施形態において、増幅率設定部24は、当該特定した曲線LGT0上の点に対応する増幅率座標値AGyを、暫定増幅率AGT[m]として設定する。なお、本実施形態において、増幅率設定部24は、温度信号STの示す温度ATが低い場合に高い場合と比較して、暫定増幅率AGT[m]を大きい値に設定する。
【0089】
なお、本実施形態では、曲線LGT0上の点に対応する増幅率座標値AGyを暫定増幅率AGT[m]として設定する場合を例示するが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、増幅率設定部24は、ステップS107において、ステップS101で取得した温度信号STの示す温度ATを温度座標値ATxとして有する曲線LGT2上の点に対応する増幅率座標値AGy以上であり、且つ、ステップS101で取得した温度信号STの示す温度ATを温度座標値ATxとして有する曲線LGT1上の点に対応する増幅率座標値AGy以下の範囲の増幅率座標値AGyを、暫定増幅率AGT[m]として設定してもよい。
【0090】
なお、本実施形態において、インク対応増幅情報QGTは「第1増幅情報」の一例である。
【0091】
図10に示すように、増幅率設定部24は、ステップS105で生成したピエゾ駆動回数情報SPと、記憶ユニット6が記憶しているピエゾ対応増幅情報QGPと、に基づいて、暫定増幅率AGP[m]を設定する(S109)。
【0092】
図12は、ピエゾ対応増幅情報QGPの一例を説明するための説明図である。
【0093】
図12に示すように、ピエゾ対応増幅情報QGPは、横軸がピエゾ駆動回数AP[m]に対応する駆動回数座標値APxを表し、縦軸が増幅率AG[m]に対応する増幅率座標値AGyを表すグラフG-GPにおいて、検出信号SK[m]の振幅AK[m]を基準振幅AK0に維持するための、増幅率AG[m]とピエゾ駆動回数AP[m]との組み合わせを表す曲線LGP0を示す情報である。具体的には、ピエゾ対応増幅情報QGPは、グラフG-GPにおける、曲線LGP0上の複数の点の各々の座標を示す情報である。例えば、
図12において、駆動回数座標値APxが基準ピエゾ駆動回数AP0となり、且つ、増幅率座標値AGyが基準増幅率AGP0となる点は、曲線LGP0上の点である。このため、ピエゾ駆動回数AP[m]が基準ピエゾ駆動回数AP0となり、且つ、増幅率AG[m]が基準増幅率AGP0となる場合に、検出信号SK[m]の振幅AK[m]は、基準振幅AK0となる。
【0094】
また、ピエゾ対応増幅情報QGPは、検出信号SK[m]の振幅AK[m]を上限振幅AK1に維持するための、増幅率AG[m]及びピエゾ駆動回数AP[m]の組み合わせを表す曲線LGP1を示す情報である。具体的には、ピエゾ対応増幅情報QGPは、グラフG-GPにおいて、曲線LGP1上の複数の点の各々の座標を示す情報である。
また、ピエゾ対応増幅情報QGPは、検出信号SK[m]の振幅AK[m]を下限振幅AK2に維持するための、増幅率AG[m]及びピエゾ駆動回数AP[m]の組み合わせを表す曲線LGP2を示す情報である。具体的には、ピエゾ対応増幅情報QGPは、グラフG-GPにおいて、曲線LGP2上の複数の点の各々の座標を示す情報である。
【0095】
増幅率設定部24は、ステップS109において、ピエゾ対応増幅情報QGPを参照することで、ステップS105で生成したピエゾ駆動回数情報SPの示すピエゾ駆動回数AP[m]を駆動回数座標値APxとして有する曲線LGP0上の点を特定する。そして、本実施形態において、増幅率設定部24は、当該特定した曲線LGP0上の点に対応する増幅率座標値AGyを、暫定増幅率AGP[m]として設定する。なお、本実施形態において、増幅率設定部24は、ピエゾ駆動回数情報SPの示すピエゾ駆動回数AP[m]が大きい値である場合に小さい値である場合と比較して、暫定増幅率AGP[m]を大きい値に設定する。
【0096】
なお、本実施形態では、曲線LGP0上の点に対応する増幅率座標値AGyを暫定増幅率AGP[m]として設定する場合を例示するが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、増幅率設定部24は、ステップS109において、ステップS105で生成したピエゾ駆動回数情報SPの示すピエゾ駆動回数AP[m]を駆動回数座標値APxとして有する曲線LGP2上の点に対応する増幅率座標値AGy以上であり、且つ、ステップS105で生成したピエゾ駆動回数情報SPの示すピエゾ駆動回数AP[m]を駆動回数座標値APxとして有する曲線LGP1上の点に対応する増幅率座標値AGy以下の範囲の増幅率座標値AGyを、暫定増幅率AGP[m]として設定してもよい。
【0097】
なお、本実施形態において、ピエゾ対応増幅情報QGPは「第2増幅情報」の一例である。
【0098】
図10に示すように、増幅率設定部24は、ステップS107において設定した暫定増幅率AGT[m]と、ステップS109において設定した暫定増幅率AGP[m]と、に基づいて、増幅率AG[m]を設定する(S111)。
【0099】
具体的には、増幅率設定部24は、ステップS111において、暫定増幅率AGT[m]と基準増幅率AGT0との相違の程度と、暫定増幅率AGP[m]と基準増幅率AGP0との相違の程度と、に基づいて、増幅率AG[m]を設定する。また、増幅率設定部24は、ステップS111において、暫定増幅率AGT[m]が基準増幅率AGT0よりも大きい場合に小さい場合と比較して、増幅率AG[m]を大きい値に設定し、暫定増幅率AGP[m]が基準増幅率AGP0よりも大きい場合に小さい場合と比較して、増幅率AG[m]を大きい値に設定する。本実施形態では、増幅率設定部24は、ステップS111において、一例として、暫定増幅率AGT[m]の基準増幅率AGT0に対する比率と、暫定増幅率AGP[m]の基準増幅率AGP0に対する比率と、に基づいて、増幅率AG[m]を設定する。すなわち、本実施形態において、増幅率設定部24は、ステップS111において、一例として、以下の式(1)に基づいて増幅率AG[m]を設定する。
AG[m] = AG0×{AGT[m]÷AGT0}×{AGP[m]÷AGP0} …(1)
【0100】
なお、式(1)に示す基準増幅率AG0は、温度ATが基準温度AT0であり、ピエゾ駆動回数AP[m]が基準ピエゾ駆動回数AP0であり、且つ、増幅率AG[m]が基準増幅率AG0である場合に、検出信号SK[m]の振幅AK[m]が基準振幅AK0となるような、増幅率AG[m]である。また、以下では、式(1)の右辺「AG0×{AGT[m]÷AGT0}×{AGP[m]÷AGP0}」を、目標増幅率AGM[m]と称する。
【0101】
なお、本実施形態では、検出回路33が、最小増幅率AG-min以上で且つ最大増幅率AG-max以下の増幅率AG[m]で、振動信号VX[m]を増幅可能である場合を想定する。このため、増幅率設定部24は、ステップS111において、以下の式(2)が成立する場合には、増幅率AG[m]を最小増幅率AG-minとし、以下の式(3)が成立する場合には、増幅率AG[m]を最大増幅率AG-maxとし、以下の式(2)及び式(3)の何れも不成立の場合には、増幅率AG[m]を目標増幅率AGM[m]とする。
AGM[m] < AG-min …(2)
AG-max < AGM[m] …(3)
【0102】
次に、増幅率設定部24は、増幅率AG[m]を示す増幅率指定信号SGを生成し、生成した増幅率指定信号SGを検出回路33に供給する(S113)。
【0103】
次に、増幅率設定部24は、ステップS113において供給された増幅率指定信号SGの示す増幅率AG[m]により、検出回路33が振動信号VX[m]を増幅した場合に得られる検出信号SK[m]の振幅AK[m]が、所定の振幅範囲に含まれるか否かを判定する(S115)。具体的には、増幅率設定部24は、ステップS115において、ステップS111で設定された増幅率AG[m]が目標増幅率AGM[m]であるか否かを判定する。例えば、増幅率設定部24は、ステップS115において、以下の式(4)が成立するか否かを判定してもよい。
AG-min ≦ AGM[m] ≦ AG-max …(4)
【0104】
ステップS115における判定の結果が肯定の場合、増幅率設定部24は、増幅率設定処理を終了させる。
ステップS115における判定の結果が否定の場合、増幅率設定部24は、増幅率強化情報QGCに基づいて、振幅ACを設定する(S117)。なお、本実施形態において、振幅ACは、電位VH1と電位VL1との電位差である。
【0105】
図13は、増幅率強化情報QGCの一例を説明するための説明図である。
【0106】
図13に示すように、増幅率強化情報QGCは、横軸が振幅ACに対応する振幅座標値ACxを表し、縦軸が増幅率AG[m]に対応する増幅率座標値AGyを表すグラフG-GCにおいて、検出信号SK[m]の振幅AK[m]を基準振幅AK0に維持するための、増幅率AG[m]と振幅ACとの組み合わせを表す曲線LGC0を示す情報である。具体的には、増幅率強化情報QGCは、グラフG-GCにおいて、曲線LGC0上の複数の点の各々の座標を示す情報である。例えば、
図13において、振幅座標値ACxが基準振幅AC0となり、且つ、増幅率座標値AGyが基準増幅率AG0となる点は、曲線LGC0上の点である。このため、振幅ACが基準振幅AC0となり、且つ、増幅率AG[m]が基準増幅率AG0となる場合に、検出信号SK[m]の振幅AK[m]は、基準振幅AK0となる。
【0107】
また、増幅率強化情報QGCは、検出信号SK[m]の振幅AK[m]を上限振幅AK1に維持するための、増幅率AG[m]及び振幅ACの組み合わせを表す曲線LGC1を示す情報である。具体的には、増幅率強化情報QGCは、グラフG-GCにおいて、曲線LGC1上の複数の点の各々の座標を示す情報である。
また、増幅率強化情報QGCは、検出信号SK[m]の振幅AK[m]を下限振幅AK2に維持するための、増幅率AG[m]及び振幅ACの組み合わせを表す曲線LGC2を示す情報である。具体的には、増幅率強化情報QGCは、グラフG-GCにおいて、曲線LGC2上の複数の点の各々の座標を示す情報である。
【0108】
増幅率設定部24は、ステップS117において、ステップS111で設定した増幅率AG[m]を増幅率座標値AGyとして有する曲線LGC0上の点を特定する。そして、増幅率設定部24は、当該特定した曲線LGC0上の点に対応する振幅座標値ACxを、振幅ACとして設定する。なお、本実施形態において、増幅率設定部24は、増幅率指定信号SGの示す増幅率AG[m]が小さい値である場合に大きい値である場合と比較して、振幅ACを大きい値に設定する。
【0109】
なお、本実施形態では、曲線LGC0上の点に対応する振幅座標値ACxを振幅ACとして設定する場合を例示するが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、増幅率設定部24は、ステップS117において、ステップS111で設定した増幅率AG[m]を増幅率座標値AGyとして有する曲線LGC2上の点に対応する振幅座標値ACx以上であり、且つ、ステップS111で設定した増幅率AG[m]を増幅率座標値AGyとして有する曲線LGC1上の点に対応する振幅座標値ACx以下の範囲の振幅座標値ACxを、振幅ACとして設定してもよい。
【0110】
図10に示すように、増幅率設定部24は、ステップS117で設定した振幅ACを示す駆動波形補正信号SCを生成し、生成した駆動波形補正信号SCを駆動制御部21に供給したうえで(S119)、増幅率設定処理を終了させる。
【0111】
<<5.実施形態の結び>>
以上のように、本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、駆動信号Comにより駆動されるピエゾ素子PZ[m]と、内部にインクが充填されピエゾ素子PZ[m]の駆動に応じて体積が変化するキャビティCV[m]と、キャビティCV[m]の体積の変化に応じてキャビティCV[m]内の液体を吐出するノズルN[m]と、を具備する吐出部D[m]と、ピエゾ素子PZ[m]の駆動後に、吐出部D[m]に残留する振動に応じて変動するピエゾ素子PZ[m]の電位を示す振動信号VX[m]を検出し、検出した振動信号VX[m]に基づいて検出信号SK[m]を生成する検出回路33と、吐出部D[m]が吐出するインクの温度に関連する値を示す温度信号STと、ピエゾ素子PZ[m]の駆動回数に関連する値を示すピエゾ駆動回数情報SPと、に基づいて、増幅率AG[m]を設定する増幅率設定部24と、を備え、検出回路33は、増幅率設定部24の設定した増幅率AG[m]に応じて振動信号VX[m]を増幅することで、検出信号SK[m]を生成する、ことを特徴とする。
【0112】
このように、本実施形態によれば、増幅率設定部24が温度信号ST及びピエゾ駆動回数情報SPに基づいて設定した増幅率AG[m]に応じて、検出回路33が振動信号VX[m]を増幅することで、検出信号SK[m]を生成する。このため、本実施形態によれば、検出回路33が振動信号VX[m]を一定の増幅率で増幅する場合と比較して、吐出部D[m]におけるインクの吐出状態の判定に適した検出信号SK[m]を生成することができる。
【0113】
また、本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、検出信号SK[m]の示す周期TC[m]を、閾値Tth1、閾値Tth2、及び、閾値Tth3の一部または全部と比較することで、吐出部D[m]におけるインクの吐出状態が正常か否かを判定する判定ユニット5を備え、閾値Tth1、閾値Tth2、及び、閾値Tth3は、温度信号STの示すインクの温度が変動しても値が変動せず、ピエゾ駆動回数情報SPの示すピエゾ素子PZ[m]の駆動回数が変動しても値が変動しない固定基準値を含む、ことを特徴とする。
【0114】
このように、本実施形態によれば、閾値Tth1、閾値Tth2、及び、閾値Tth3が固定基準値であるため、閾値Tth1、閾値Tth2、及び、閾値Tth3を温度信号STの示す温度ATに応じて変動させる態様、または、閾値Tth1、閾値Tth2、及び、閾値Tth3をピエゾ駆動回数情報SPの示すピエゾ駆動回数AP[m]に応じて変動させる態様と比較して、吐出状態判定処理を簡素化することが可能となる。
【0115】
また、本実施形態に係るインクジェットプリンター1において、増幅率設定部24は、温度信号STの示すインクの温度ATが変動した場合に、検出信号SK[m]の振幅AK[m]を所定の振幅範囲に留めるために必要となる振動信号VX[m]の増幅率AG[m]を示すインク対応増幅情報QGTに基づいて、増幅率AG[m]を設定する、ことを特徴とする。
【0116】
このため、本実施形態によれば、吐出状態判定処理に適した検出信号SK[m]を生成することができる。
【0117】
また、本実施形態に係るインクジェットプリンター1において、増幅率設定部24は、ピエゾ駆動回数情報SPの示すピエゾ駆動回数AP[m]が変動した場合に、検出信号SK[m]の振幅AK[m]を所定の振幅範囲に留めるために必要となる振動信号VX[m]の増幅率AG[m]を示すピエゾ対応増幅情報QGPに基づいて、増幅率AG[m]を設定する、ことを特徴とする。
【0118】
このため、本実施形態によれば、吐出状態判定処理に適した検出信号SK[m]を生成することができる。
【0119】
また、本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、駆動信号Comを生成する駆動信号生成ユニット4を備え、駆動信号生成ユニット4は、検出回路33が振動信号VX[m]を増幅しても、検出信号SK[m]の振幅AK[m]を所定の振幅範囲に留めることができない場合に、検出信号SK[m]の振幅AK[m]を所定の振幅範囲に留めるように、駆動信号Comの振幅ACを補正する、ことを特徴とする。
【0120】
このため、本実施形態によれば、吐出状態判定処理に適した検出信号SK[m]を生成することができる。
【0121】
また、本実施形態に係るインクジェットプリンター1において、温度信号STは、吐出部D[m]が吐出するインクの温度に応じた温度ATを示し、増幅率AG[m]は、温度信号STの示す温度ATが低い場合、高い場合と比較して、大きい値に設定される、ことを特徴とする。
【0122】
このため、本実施形態によれば、吐出部D[m]が吐出するインクの温度が低くなり、吐出部D[m]が吐出するインクの粘度が高くなる場合においても、検出信号SK[m]の振幅AK[m]が小さくなることを抑制し、吐出状態判定処理に適した検出信号SK[m]を生成することができる。
【0123】
<<B.変形例>>
以上の各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲内で適宜に併合され得る。なお、以下に例示する変形例において作用や機能が実施形態と同等である要素については、以上の説明で参照した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0124】
<<変形例1>>
上述した実施形態では、増幅率設定部24が、結果情報SH及び検出信号SK[m]を用いずに増幅率AG[m]を設定する態様を例示して説明したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。増幅率設定部24は、結果情報SHに含まれる振幅情報SH2[m]、または、検出信号SK[m]に基づいて、増幅率AG[m]を設定してもよい。
【0125】
図14は、本変形例に係るインクジェットプリンター1Bの構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0126】
図14に示すように、インクジェットプリンター1Bは、制御ユニット2の代わりに制御ユニット2Bを備える点と、記憶ユニット6の代わりに記憶ユニット6Bを備える点と、において、実施形態に係るインクジェットプリンター1と相違する。
記憶ユニット6Bは、インク対応振幅情報QKTと、ピエゾ対応振幅情報QKPと、制御プログラムPRG-Bと、を記憶している。
制御ユニット2Bは、記憶ユニット6Bに記憶された制御プログラムPRG-Bを実行し、制御プログラムPRG-Bに従って動作することで、駆動制御部21、吐出制御部22、判定管理部23、増幅率設定部24B、及び、搬送制御部25として機能する。すなわち、制御ユニット2Bは、増幅率設定部24の代わりに増幅率設定部24Bを備える点において、実施形態に係る制御ユニット2と相違する。
【0127】
図15は、本変形例に係る増幅率設定処理が実行される場合における制御ユニット2Bの動作の一例を示すフローチャートである。
【0128】
図15に示すように、増幅率設定部24Bは、増幅率設定処理が開始されると、判定ユニット5から結果情報SHを取得し、結果情報SHに含まれる振幅情報SH2[m]の示す振幅AK[m]を特定する(S201)。なお、増幅率設定部24Bは、ステップS201において、振幅情報SH2[m]の代わりに検出信号SK[m]を取得し、検出信号SK[m]に基づいて振幅AK[m]を特定してもよい。以下では、増幅率設定部24BがステップS201で特定した振幅AK[m]を、現状振幅AKr[m]と称する。
【0129】
次に、増幅率設定部24Bは、ステップS201で特定した現状振幅AKr[m]が所定の振幅範囲に含まれるか否かを判定する(S203)。つまり、増幅率設定部24Bは、ステップS203において、以下の式(5)が成立するか否かを判定する。
AK2 ≦ AKr[m] ≦ AK1 …(5)
【0130】
ステップS203における判定の結果が肯定の場合、増幅率設定部24Bは、増幅率設定処理を終了させる。
ステップS203における判定の結果が否定の場合、増幅率設定部24Bは、温度センサ35から、温度信号STを取得する(S205)。以下では、増幅率設定部24BがステップS205で取得した温度信号STの示す温度ATを、現状温度ATrと称する。
【0131】
また、増幅率設定部24Bは、吐出制御部22から、指定信号SIを取得する(S207)。
そして、増幅率設定部24Bは、ステップS207において取得した指定信号SIに基づいて、ピエゾ駆動回数AP[m]を示すピエゾ駆動回数情報SPを生成する(S209)。以下では、増幅率設定部24BがステップS207で生成したピエゾ駆動回数情報SPの示すピエゾ駆動回数AP[m]を、現状ピエゾ駆動回数APr[m]と称する。
【0132】
次に、増幅率設定部24Bは、以下の式(6)を満たすような、暫定振幅AKT[m]と暫定振幅AKP[m]とを特定する(S211)。
AK0 = AKr[m]×{AKT[m]÷AKr[m]}×{AKP[m]÷AKr[m]} …(6)
【0133】
なお、増幅率設定部24Bは、ステップS211において、暫定振幅AKT[m]及び暫定振幅AKP[m]の組合せが複数個存在する場合には、当該複数個の組み合わせの中から、任意の1つの組合せを選択すればよい。例えば、増幅率設定部24Bは、ステップS211において、暫定振幅AKT[m]及び暫定振幅AKP[m]の複数の組合せのうち、以下の式(7)の示す評価値VLが最小となる組合せを選択してもよい。
VL = {AKT[m]}2+{AKP[m]}2 …(7)
【0134】
次に、増幅率設定部24Bは、インク対応振幅情報QKTに基づいて、暫定振幅AKT[m]に対応する暫定増幅率AGKT[m]を特定する(S213)。
【0135】
図16は、インク対応振幅情報QKTの一例を説明するための説明図である。
【0136】
図16に示すように、インク対応振幅情報QKTは、第1の軸が温度ATに対応する温度座標値ATxを表し、第2の軸が増幅率AG[m]に対応する増幅率座標値AGyを表し、第3の軸が振幅AK[m]に対応する振幅座標値AKzを表す、3次元のグラフG-KTにおいて、温度信号STの示す温度ATと、増幅率指定信号SGの示す増幅率AG[m]とに対応する振幅AK[m]を表す、曲面CKTを示す情報である。具体的には、インク対応振幅情報QKTは、グラフG-KTにおける、曲面CKT上の複数の点の各々の座標を示す情報である。
例えば、
図16において、温度座標値ATxが現状温度ATrとなり、且つ、振幅AK[m]が現状振幅AKr[m]となる、曲面CKT上の点が有する増幅率座標値AGyは、初期増幅率AGrとなる。
【0137】
増幅率設定部24Bは、ステップS213において、温度座標値ATxが現状温度ATrとなり、且つ、振幅AK[m]が暫定振幅AKT[m]となる、曲面CKT上の点が有する増幅率座標値AGyを、暫定増幅率AGKT[m]として特定する。
【0138】
また、増幅率設定部24Bは、ピエゾ対応振幅情報QKPに基づいて、暫定振幅AKP[m]に対応する暫定増幅率AGKP[m]を特定する(S215)。
【0139】
図17は、ピエゾ対応振幅情報QKPの一例を説明するための説明図である。
【0140】
図17に示すように、ピエゾ対応振幅情報QKPは、第1の軸がピエゾ駆動回数AP[m]に対応する駆動回数座標値APxを表し、第2の軸が増幅率AG[m]に対応する増幅率座標値AGyを表し、第3の軸が振幅AK[m]に対応する振幅座標値AKzを表す、3次元のグラフG-KPにおいて、ピエゾ駆動回数情報SPの示すピエゾ駆動回数AP[m]と、増幅率指定信号SGの示す増幅率AG[m]とに対応する振幅AK[m]を表す、曲面CKPを示す情報である。具体的には、ピエゾ対応振幅情報QKPは、グラフG-KPにおける、曲面CKP上の複数の点の各々の座標を示す情報である。
例えば、
図17において、駆動回数座標値APxが現状ピエゾ駆動回数APr[m]となり、且つ、振幅AK[m]が現状振幅AKr[m]となる、曲面CKP上の点が有する増幅率座標値AGyは、初期増幅率AGrとなる。
【0141】
増幅率設定部24Bは、ステップS215において、駆動回数座標値APxが現状ピエゾ駆動回数APr[m]となり、且つ、振幅AK[m]が暫定振幅AKP[m]となる、曲面CKP上の点が有する増幅率座標値AGyを、暫定増幅率AGKP[m]として特定する。
【0142】
次に、増幅率設定部24Bは、ステップS213において特定した暫定増幅率AGKT[m]と、ステップS215において特定した暫定増幅率AGKP[m]と、に基づいて、増幅率AG[m]を設定する(S217)。
【0143】
具体的には、増幅率設定部24Bは、ステップS217において、暫定増幅率AGKT[m]と基準増幅率AGT0との相違の程度と、暫定増幅率AGKP[m]と基準増幅率AGP0との相違の程度と、に基づいて、増幅率AG[m]を設定してもよい。また、増幅率設定部24Bは、ステップS217において、暫定増幅率AGKT[m]が基準増幅率AGT0よりも大きい場合に小さい場合と比較して、増幅率AG[m]を大きい値に設定し、暫定増幅率AGKP[m]が基準増幅率AGP0よりも大きい場合に小さい場合と比較して、増幅率AG[m]を大きい値に設定してもよい。本変形例では、増幅率設定部24Bは、ステップS217において、暫定増幅率AGKT[m]の基準増幅率AGT0に対する比率と、暫定増幅率AGKP[m]の基準増幅率AGP0に対する比率と、に基づいて、増幅率AG[m]を設定する。すなわち、本変形例において、増幅率設定部24Bは、ステップS217において、以下の式(8)に基づいて増幅率AG[m]を設定する。
AG[m] = AG0×{AGKT[m]÷AGT0}×{AGKP[m]÷AGP0} …(8)
【0144】
次に、増幅率設定部24Bは、増幅率AG[m]を示す増幅率指定信号SGを生成し、生成した増幅率指定信号SGを検出回路33に供給し(S113)、増幅率設定処理を終了させる。
【0145】
以上のように、本変形例によれば、増幅率設定部24Bが、温度信号STとピエゾ駆動回数情報SPと振幅情報SH2[m]とに基づいて設定した増幅率AG[m]に応じて、検出回路33が振動信号VX[m]を増幅することで、検出信号SK[m]を生成する。このため、本変形例によれば、検出回路33が振動信号VX[m]を一定の増幅率で増幅する場合と比較して、吐出部D[m]におけるインクの吐出状態の判定に適した検出信号SK[m]を生成することができる。
【0146】
<<変形例2>>
上述した実施形態及び変形例1において、ヘッドユニット3は、供給回路31、記録ヘッド32、検出回路33、及び、温度センサ35を含んで構成されたが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。ヘッドユニット3は、供給回路31、記録ヘッド32、検出回路33、及び、温度センサ35以外の構成要素を含んで構成されてもよい。例えば、ヘッドユニット3は、判定ユニット5を含んで構成されてもよい。
【0147】
<<変形例3>>
上述した実施形態並びに変形例1及び2では、インクジェットプリンター1が4個のヘッドユニット3を備える場合を想定したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。インクジェットプリンター1は、1個以上3個以下のヘッドユニット3を備えるものであってもよいし、また、5個以上のヘッドユニット3を備えるものであってもよい。
【0148】
<<変形例4>>
上述した実施形態及び変形例1乃至3では、インクジェットプリンター1がシリアルプリンターである場合を例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。インクジェットプリンター1は、ヘッドユニット3において、複数のノズルNが、記録用紙PPの幅よりも広く延在するように設けられた、所謂ラインプリンターであってもよい。
【符号の説明】
【0149】
1…インクジェットプリンター、2…制御ユニット、3…ヘッドユニット、4…駆動信号生成ユニット、5…判定ユニット、6…記憶ユニット、7…搬送ユニット、21…駆動制御部、22…吐出制御部、23…判定管理部、24…増幅率設定部、25…搬送制御部、31…供給回路、32…記録ヘッド、33…検出回路、35…温度センサ。