(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175988
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 23/90 20230101AFI20241212BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20241212BHJP
【FI】
H04N23/90
G03B15/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094145
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 圭
(72)【発明者】
【氏名】秋久 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小田 博志
【テーマコード(参考)】
5C122
【Fターム(参考)】
5C122DA11
5C122EA59
5C122FA01
5C122FA18
5C122FH10
5C122FH11
5C122FH14
5C122HA13
5C122HA35
5C122HA46
5C122HA88
5C122HB01
5C122HB09
(57)【要約】
【課題】監視カメラによって監視が可能な領域を評価する。
【解決手段】所定の空間に存在する構造物に関する構造物データと、前記所定の空間内を移動するオブジェクトに関するオブジェクトデータと、に基づいて、前記所定の空間に配置された監視カメラについて、前記オブジェクトに起因する視界の遮蔽度合いを評価した評価結果を生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の空間に存在する構造物に関する構造物データと、
前記所定の空間内を移動するオブジェクトに関するオブジェクトデータと、
に基づいて、前記所定の空間に配置された監視カメラについて、前記オブジェクトに起因する視界の遮蔽度合いを評価した評価結果を生成する
制御部を有する、情報処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記監視カメラの視界内において、前記オブジェクトによって遮蔽される領域の割合が小さいほど高くなる評価値を、前記評価結果として算出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、所定の時間幅に対する、前記オブジェクトによって前記監視カメラの視界の少なくとも一部が遮蔽される時間の割合が小さいほど高くなる評価値を、前記評価結果として算出する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、複数の監視カメラにそれぞれ対応する複数の前記評価値を統合し、前記複数の監視カメラの配置パターンを評価する、
請求項2または3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記複数の評価値の合計が所定値を超えるような配置パターンに、前記複数の監視カメラの配置を決定する、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記オブジェクトデータは、複数の前記オブジェクトの経時的な動きを定義したデータである、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記オブジェクトデータに基づいて、前記所定の空間内における、前記オブジェクトの動きをシミュレーションし、前記シミュレーションの結果に基づいて、前記評価結果を生成する、
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記監視カメラの視界内において、前記オブジェクトによって遮蔽される領域の割合が小さいほど高くなる評価値を、前記評価結果として算出する、
請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記制御部は、所定の時間幅に対する、前記オブジェクトによって前記監視カメラの視界の少なくとも一部が遮蔽される時間の割合が小さいほど高くなる評価値を、前記評価結果として算出する、
請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記制御部は、複数の監視カメラにそれぞれ対応する複数の前記評価値を統合し、前記複数の監視カメラの配置パターンを評価する、
請求項8または9に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記複数の評価値の合計が所定値を超えるような配置パターンに、前記複数の監視カメラの配置を決定する、
請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記オブジェクトデータは、前記オブジェクトが前記所定の空間に存在する時間帯に関するデータをさらに含む、
請求項8または9に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記評価値の算出を時間帯別に実行する、
請求項12に記載の情報処理装置。
【請求項14】
情報処理装置が、
所定の空間に存在する構造物に関する構造物データを取得するステップと、
前記所定の空間内を移動するオブジェクトに関するオブジェクトデータを取得するステップと、
前記構造物データおよび前記オブジェクトデータに基づいて、前記所定の空間に配置された監視カメラについて、前記オブジェクトに起因する視界の遮蔽度合いを評価した評価結果を生成するステップと、
を実行する、情報処理方法。
【請求項15】
前記監視カメラの視界内において、前記オブジェクトによって遮蔽される領域の割合が小さいほど高くなる評価値を、前記評価結果として算出する、
請求項14に記載の情報処理方法。
【請求項16】
所定の時間幅に対する、前記オブジェクトによって前記監視カメラの視界の少なくとも一部が遮蔽される時間の割合が小さいほど高くなる評価値を、前記評価結果として算出する、
請求項15に記載の情報処理方法。
【請求項17】
複数の監視カメラにそれぞれ対応する複数の前記評価値を統合し、前記複数の監視カメラの配置パターンを評価するステップをさらに含む、
請求項15に記載の情報処理方法。
【請求項18】
前記複数の評価値の合計が所定値を超えるような配置パターンに、前記複数の監視カメラの配置を決定する、
請求項17に記載の情報処理方法。
【請求項19】
前記オブジェクトデータは、複数の前記オブジェクトの経時的な動きを定義したデータであり、
前記オブジェクトデータに基づいて、前記所定の空間内における、前記オブジェクトの動きをシミュレーションし、前記シミュレーションの結果に基づいて、前記評価結果を生成する、
請求項14に記載の情報処理方法。
【請求項20】
請求項14から19のいずれか1項に記載の情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
監視カメラによる監視を最適化するためのシステムが知られている。例えば、特許文献1には、構造物情報に基づいて、監視カメラの監視領域を変更または補正するシステムに関する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-225108号公報
【特許文献2】特開2021-010069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、監視カメラによって監視が可能な領域を評価することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の実施形態の一態様は、
所定の空間に存在する構造物に関する構造物データと、前記所定の空間内を移動するオブジェクトに関するオブジェクトデータと、に基づいて、前記所定の空間に配置された監視カメラについて、前記オブジェクトに起因する視界の遮蔽度合いを評価した評価結果を生成する制御部を有する、情報処理装置である。
【0006】
本開示の実施形態の一態様は、
情報処理装置が、所定の空間に存在する構造物に関する構造物データを取得するステップと、前記所定の空間内を移動するオブジェクトに関するオブジェクトデータを取得するステップと、前記構造物データおよび前記オブジェクトデータに基づいて、前記所定の空間に配置された監視カメラについて、前記オブジェクトに起因する視界の遮蔽度合いを評価した評価結果を生成するステップと、を実行する、情報処理方法である。
【0007】
また、他の態様として、上記の方法をコンピュータに実行させるためのプログラム、または、該プログラムを非一時的に記憶したコンピュータ可読記憶媒体が挙げられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、監視カメラによって監視が可能な領域を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】記憶部12に記憶されるデータを説明するための図。
【
図4】オブジェクトデータに含まれる動き情報を説明するための図。
【
図5】第一の実施形態において実行される処理のフローチャート。
【
図6】第一の実施形態において実行される処理のフローチャート。
【
図8】第二の実施形態で利用されるマテリアルデータの一例。
【
図9】第二の実施形態で利用される環境光データの一例。
【
図10】第二の実施形態において実行される処理のフローチャート。
【
図11】第二の実施形態において実行される処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
商業施設の店内といった、所定の空間内を監視するため、複数の監視カメラを利用することが一般的に行われている。複数の監視カメラによって施設内を監視する場合、死角となる範囲を最小化するように、その配置位置を決定することが好ましい。
【0011】
これに関する技術として、例えば、空間内に配置された構造物の位置に関する情報を利用して、複数の監視カメラのそれぞれが捉えることができる領域を算出し、死角がより少なくなるような監視カメラの配置位置を決定するシステムがある。これにより、例えば、柱の陰といった、監視が行えない領域の発生を最小化することができる。
【0012】
しかし、斯様なシステムでは、構造物以外の情報を利用していないため、監視が可能な範囲を適切に推定できないケースが起こりうる。
例えば、監視対象の空間内に、人や自動車といった、動的なオブジェクトが存在するケースを考える。ここで、動的なオブジェクトが監視カメラの前に来ると、監視カメラの視界が遮蔽されてしまい、十分な監視が行えない領域が発生する場合がある。
【0013】
例えば、商品を自動的に決済する目的で、店舗内に複数の監視カメラを配置することを考える。店舗の利用者が商品を棚から取ったことを判定するためには、その手元を映像で捉える必要があるが、利用者の数が増えると、人影によって対象者の手元が見えなくなってしまう場合がある。
【0014】
この問題を解決するためには、移動するオブジェクトの存在を考慮して、監視カメラの視界を評価することが好ましい。
本開示にかかる情報処理装置は、かかる問題を解決する。
【0015】
一実施形態に係る情報処理装置は、所定の空間に存在する構造物に関する構造物データと、前記所定の空間内を移動するオブジェクトに関するオブジェクトデータと、に基づいて、前記所定の空間に配置された監視カメラについて、前記オブジェクトに起因する視界の遮蔽度合いを評価した評価結果を生成する制御部を有する。
【0016】
所定の空間とは、監視対象である空間であって、典型的には室内空間である。
構造物データは、当該空間内にある、固定された構造物に関するデータである。構造物データは、例えば、一つ以上の構造物の形状、大きさ、配置位置などに関するデータであってもよい。また、構造物データは、構造物に設けられた開口部(例えば、窓など)に関する情報を含んでいてもよい。構造物データは、三次元空間内における、複数の構造物の配置を表したデータであってもよい。
【0017】
オブジェクトデータは、所定の空間内を移動するオブジェクトに関するデータである。オブジェクトデータは、例えば、オブジェクトの種類、大きさ、所定の空間内に現れる時間帯、所定の空間内における動きなどに関するデータを含んでいてもよい。
【0018】
制御部は、構造物データを利用することで、特定の位置からの物理的な死角を判定することができ、ある監視カメラから見た視界を特定することができる。さらに、制御部は、オブジェクトデータを利用することで、例えば、空間内にいる人などのオブジェクトの動きをシミュレーションすることができる。これにより、オブジェクトに起因して、監視カメラの視界の一部が遮蔽された状態になる(すなわち、監視が可能な領域が想定よりも狭くなる)ことを判定することができる。また、オブジェクトに起因して、監視カメラの視
界がどの程度遮蔽されるかを判定することができる。
【0019】
なお、制御部は、監視カメラの視界内において、オブジェクトによって遮蔽される領域の割合が小さいほど高くなるような評価値を算出してもよい。つまり、制御部は、遮蔽される領域が小さいほど大きい値をとり、遮蔽される領域が大きくなるにつれ値が小さくなるような評価値を生成してもよい。
【0020】
また、制御部は、所定の時間幅に対する、オブジェクトによって監視カメラの視界の少なくとも一部が遮蔽される時間の割合が小さいほど高くなる評価値を算出してもよい。つまり、制御部は、遮蔽が発生する時間が短いほど大きい値をとり、遮蔽が発生する時間が長くなるにつれ値が小さくなるような評価値を生成してもよい。
【0021】
さらに、制御部は、複数の監視カメラにそれぞれ対応する複数の評価値を統合し、複数の監視カメラの配置パターンを評価してもよい。また、複数の評価値の合計が所定値を超えるような、複数の監視カメラの配置パターンを決定してもよい。
【0022】
さらに、オブジェクトデータは、動的オブジェクトが所定の空間に存在する時間帯に関するデータをさらに含んでもよく、制御部は、評価値の算出を時間帯別に実行してもよい。
【0023】
以下、図面に基づいて、本開示の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の構成に限定されない。
【0024】
(第一の実施形態)
第一の実施形態に係る評価装置の概要について説明する。本実施形態に係る評価装置は、所定の空間内における、複数の監視カメラの最適な配置位置を決定する装置である。
【0025】
最初に、監視カメラの最適な配置位置について説明する。
図1は、複数の監視カメラによって監視を行う対象の空間を例示した平面図である。監視を行う対象の空間は、例えば、店舗などの商業施設の内部とすることができる。
【0026】
図1において、店舗内には、壁や柱など、見通しの妨げになる構造物が存在する。店舗内には、例えば、符号102Aおよび102Bで示した柱が存在する。この他、店内には、商品を陳列する棚や、レジカウンターが存在する。棚やカウンターも、構造物の一部とすることができる。
【0027】
ここでは、斯様な店舗の内部を、複数の監視カメラによって監視する例を考える。符号101は、店舗の一角に備えられた監視カメラである。監視カメラは、所定の視野を持っている。ここでは、監視カメラ101は、符号103で示した範囲を撮像可能なものとする。なお、以降の説明において、物理的な障壁なく各カメラが撮像可能な三次元領域を、撮像領域と称する。
斯様な店舗の内部をくまなく監視するためには、複数の監視カメラによる撮像領域が、店舗内の全領域をカバーできるように、監視カメラを配置することが好ましい。
【0028】
しかし、これだけでは、いずれの監視カメラによっても監視できない領域が発生してしまうケースが存在する。
例えば、
図1の例において、符号104で示した位置に人が立っていたものとする。このような場合、棚の一部が人の陰に隠れてしまい、監視カメラ101によって捉えることができなくなる。図示した例では、符号105で示した領域が一時的に見えなくなる。このような状況が長く続く場合、領域105を監視するために、別の監視カメラを配置しな
ければならない。このような現象の発生は、構造物の位置情報のみでは、推測することができない。
【0029】
本実施形態における評価装置1は、構造物の位置情報に加え、人の動きをシミュレーションすることで、複数の監視カメラによる視界を評価する。また、監視カメラの配置位置を複数のパターンについて評価し、当該評価の結果に基づいて、好適な監視カメラの配置位置を決定する。
【0030】
[装置構成]
図2は、評価装置1の構成の一例を示した図である。
評価装置1は、例えば、サーバ装置、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、携帯電話、タブレットコンピュータ、個人情報端末といったコンピュータである。評価装置1は、制御部11、記憶部12、および入出力部13を含んで構成される。
【0031】
評価装置1は、プロセッサ(CPU、GPU等)、主記憶装置(RAM、ROM等)、補助記憶装置(EPROM、ハードディスクドライブ、リムーバブルメディア等)を有するコンピュータとして構成することができる。補助記憶装置には、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、各種テーブル等が格納され、そこに格納されたプログラムを実行することによって、後述するような、所定の目的に合致した各機能(ソフトウェアモジュール)を実現することができる。ただし、一部または全部の機能は、例えば、ASIC、FPGA等のハードウェア回路によってハードウェアモジュールとして実現されてもよい。
【0032】
制御部11は、所定のプログラムを実行することで、評価装置1の各種機能を実現する演算ユニットである。制御部11は、例えば、CPU等のハードウェアプロセッサによって実現することができる。また、制御部11は、RAM、ROM(Read Only Memory)、キャッシュメモリ等を含んで構成されてもよい。
【0033】
制御部11は、データ取得部111、シミュレーション部112、および結果出力部113の3つのソフトウェアモジュールを有して構成される。各ソフトウェアモジュールは、後述する記憶部12に記憶されたプログラムを制御部11(CPU)によって実行することで実現されてもよい。
【0034】
データ取得部111は、所定の空間について、監視カメラの設置位置を評価するためのデータを取得する。本実施形態では、データ取得部111は、対象の空間内に存在する構造物に関するデータ(以下、構造物データ)、および、空間内を移動する仮想的な動的オブジェクトに関するデータ(以下、オブジェクトデータ)を取得する。
【0035】
シミュレーション部112は、データ取得部111が取得したデータに基づいて、複数の監視カメラのそれぞれによって捉えることができる領域をシミュレーションする。シミュレーションには、動的オブジェクトのシミュレーションが含まれる。
【0036】
結果出力部113は、シミュレーション部112が行ったシミュレーション結果に基づいて、複数の監視カメラの好適な配置に関する情報を生成し、出力する。
【0037】
記憶部12は、情報を記憶する手段であり、RAM、磁気ディスクやフラッシュメモリなどの記憶媒体により構成される。記憶部12には、制御部11にて実行されるプログラム、当該プログラムの実行時に利用されるデータ等が記憶される。
【0038】
記憶部12には、データ取得部111によって取得された、構造物データおよびオブジ
ェクトデータが記憶される。
【0039】
ここで、構造物データの一例について説明する。
図3(A)は、構造物データの一例である。
構造物データは、空間中に存在する構造物の形状や大きさに関するデータである。構造物データは、例えば、構造物ID、種別、及び、位置情報の各フィールドを含んで構成される。構造物IDフィールドには、構造物ごとに割り当てられた識別子が格納される。種別フィールドには、構造物の種別(例えば、柱、壁、窓など)が格納される。位置情報フィールドには、構造物の、空間中における位置に関するデータが格納される。斯様なデータとして、例えば、構造物の三次元モデル、構造物の大きさに関する情報、構造物の配置位置に関する情報などが例示できる。位置情報を参照することで、制御部11は、監視対象の空間中における構造物の位置を特定することができる。
なお、構造物データは、BIM(Building Information Modeling)モデルや、3D-
CADによるモデルであってもよい。また、構造物データは、建物そのものの構造に関するデータを含んでいてもよい。
【0040】
次に、オブジェクトデータの一例について説明する。
図3(B)は、オブジェクトデータの一例である。
オブジェクトデータは、監視対象の空間内を移動する複数の仮想的なオブジェクトを定義したデータである。仮想的なオブジェクトとして、例えば、人物、自動車、自転車、またはパーソナルモビリティなどが例示できる。本実施形態では、仮想的なオブジェクトは人物である。
オブジェクトデータの各レコードは、オブジェクトごとに定義される。
図3(B)の例では、オブジェクトとして人物が3人定義されている。オブジェクトデータは、オブジェクトID、種別、形状情報、時刻情報、および動き情報の各フィールドを含んで構成される。
【0041】
オブジェクトIDフィールドには、仮想的なオブジェクトの識別子が格納される。種別フィールドには、例えば、人、自動車などの、オブジェクトの種別が格納される。形状情報フィールドには、オブジェクトの形状や大きさなどに関するデータ(形状情報)が格納される。オブジェクトが人である場合、形状情報は、身長や性別などに関する情報であってもよい。また、オブジェクトが自動車である場合、形状情報は、当該自動車の車格、形状、サイズなどに関する情報であってもよい。また、形状情報は、三次元モデリングデータであってもよい。
【0042】
時刻情報フィールドには、対応するオブジェクトが、監視対象の店舗等を訪問する時間帯や時刻などに関する情報が格納される。例えば、ある仮想人物について、「月曜日から金曜日の12時から13時の間に来店し、15分間滞在する」といった情報を持たせてもよい。
【0043】
動き情報フィールドには、対応するオブジェクトの動きに関する情報が格納される。例えば、監視対象が店舗である場合、動き情報は、来店客の入店から退店までの動き(位置の時系列変化)を定義したデータであってもよい。動き情報は、来店客の典型的な行動パターンに基づいて自動的に生成されたものであってもよい。
【0044】
動き情報は、空間内におけるオブジェクトの位置を表す情報(位置情報)と、オブジェクト(人物)のポーズを表す情報(ポーズ情報)の組み合わせであってもよい。動き情報は、例えば、
図4に示したように、位置情報とポーズ情報のそれぞれを時刻ごとに定義したデータとしてもよい。ここで、時刻t1は、対象のオブジェクトが監視対象の空間に入場(又は進入)する時刻であり、時刻t2は、対象のオブジェクトが監視対象の空間から
退出する時刻である。
【0045】
本実施形態におけるオブジェクトとは、典型的には、人間、自動車、自転車、パーソナルモビリティ等の、移動する仮想物体である。オブジェクトは生物であってもよいし、無機物であってもよい。
オブジェクトデータは、評価装置1のユーザが用意してもよいし、過去に観測されたオブジェクトの動きに基づいて生成されたものであってもよい。また、オブジェクトデータは、機械学習モデルなどを利用して生成されたものであってもよい。
【0046】
図2に戻って説明を続ける。
入出力部13は、オペレータが行った入力操作を受け付け、オペレータに対して情報を提示する手段である。具体的には、入出力部13は、マウス、キーボード等の入力を行うための装置、及びディスプレイ、スピーカ等の出力を行うための装置を含む。入出力装置は、例えば、タッチパネルディスプレイ等により一体的に構成されてもよい。
【0047】
なお、評価装置1の具体的なハードウェア構成は、実施形態に応じて、適宜、構成要素の省略、置換及び追加が可能である。例えば、制御部11は、複数のハードウェアプロセッサを含んでもよい。ハードウェアプロセッサは、マイクロプロセッサ、FPGA、GPU等で構成されてよい。また、例示したもの以外の入出力装置(例えば、光学ドライブ等)が付加されてもよい。また、評価装置1は、複数台のコンピュータにより構成されてよい。この場合、各コンピュータのハードウェア構成は、一致していてもよいし、一致していなくてもよい。
【0048】
[処理の流れ]
次に、本実施形態に係る評価装置1が実行する処理について説明する。
図5は、評価装置1が実行する処理のフローチャートである。図示した処理は、評価装置1のオペレータの操作によって開始される。
【0049】
まず、ステップS11で、データ取得部111が、監視対象の空間に含まれる構造物に関するデータ(構造物データ)を取得する。構造物データは、所定のフォーマットで記述されたファイル等であってもよく、入出力部13を介して取り込まれてもよい。装置のオペレータは、対象の空間について構造物データを生成し、評価装置1にインポートすることができる。
【0050】
次に、ステップS12で、データ取得部111が、監視対象の空間内を移動するオブジェクトに関するデータ(オブジェクトデータ)を取得する。オブジェクトデータは、所定のフォーマットで記述されたファイル等であってもよく、入出力部13を介して取り込まれてもよい。装置のオペレータは、対象の空間内を移動するオブジェクトに対応するオブジェクトデータを生成し、評価装置1にインポートすることができる。
【0051】
なお、オブジェクトデータは、自動的に生成されたものであってもよい。
例えば、監視対象の空間を単位時間あたりに訪問する人の数、性別、訪問条件、退出条件、訪問から退出までの行動パターンなどを統計的に記述したデータに基づいて、
図3(B)に示したようなオブジェクトデータを生成することもできる。オブジェクトデータの生成には、ある条件下において対象の空間を過去に訪問した人物の統計や行動パターンが利用されてもよい。
【0052】
ステップS13からS18は、監視対象の空間に対応する仮想空間上に、仮想的な監視カメラを配置し、その視界をシミュレーションするステップである。これらのステップは、シミュレーション部112によって実行される。
【0053】
ステップS13では、複数の仮想的な監視カメラを仮想空間上に仮配置する。監視カメラの台数は、例えば、所定の値を上限とする任意の台数としてもよい。監視カメラの配置位置は、一般的な手法によって決定してもよい。
【0054】
次に、ステップS14で、仮配置された複数の監視カメラによる撮像領域を算出する。本ステップでは、例えば、監視カメラのパラメータ(例えば、画角や焦点距離など)に基づいて、各カメラから物理的に見える領域を特定し、撮像領域とする。本ステップでは、ステップS11で取得された構造物データに基づいて、対象の空間に配置された構造物を考慮して、撮像領域が算出される。撮像領域は、三次元空間上における座標によって特定してもよい。
【0055】
次に、ステップS15で、シミュレーションを行う時間範囲(時間幅)を設定する。シミュレーションを行う時間範囲は、入出力部13を介して装置のオペレータが指定してもよい。本ステップでは、時間範囲として、例えば、「月曜日の午前10時から午後7時」といった範囲が指定される。
【0056】
ステップS16では、オブジェクトの動きをシミュレーションし、監視カメラから見た視界を評価する。本ステップでは、設定された時間範囲に含まれるタイムステップごとに、オブジェクトデータを用いてオブジェクトの動きをシミュレーションし、複数の監視カメラのそれぞれについて、オブジェクトによってどの程度の遮蔽が発生するかを判定する。
前述したように、オブジェクトが空間内を移動することで、監視カメラから見えなくなる領域が発生する場合がある。このような場合、当該領域(以下、監視不能領域)を、本来の撮像領域から除外する。残った領域が、監視可能領域である。監視可能領域とは、オブジェクトなどの外的要因に影響されずに監視が可能な領域を意味する。
ステップS16では、このような判定をタイムステップごとに行い、本来の視界(撮像領域)に対して、監視可能領域がどの程度の割合であるかを統計する。
【0057】
図6は、ステップS16において実行される処理をより詳細に示したフローチャートである。
【0058】
ステップS161およびS162の処理は、シミュレーションを行う時間範囲に含まれる所定のタイムステップごとに実行される。タイムステップは、例えば、1分ごとといったように、所定の間隔で設定される。例えば、シミュレーションの対象が1時間であって、所定の間隔が1分ごとであった場合、60個のタイムステップが設定される。
【0059】
まず、ステップS161で、オブジェクトの位置(およびポーズ)をシミュレーションする。
図4で示したように、オブジェクトデータには、オブジェクト(例えば人物)の位置に関するデータが時刻ごとに定義されているため、これを用いて、ある時刻における人物の位置やポーズを決定することができる。
【0060】
次に、ステップS162で、複数の監視カメラのそれぞれについて、オブジェクトの存在に起因して発生する監視不能領域を算出する。オブジェクトによって遮蔽される領域は、三次元空間内における位置情報に基づいて求めることができる。監視不能領域が無い場合、撮像領域と監視可能領域は等しくなる。
【0061】
なお、以降の説明において、撮像領域に対する監視不能領域の割合を、遮蔽率と称する。例えば、オブジェクトに起因して、撮像領域のうちの30%が遮蔽される場合、遮蔽率は30%となる。遮蔽率は、
図7に示したように、タイムステップごとに求めることがで
きる。
【0062】
シミュレーションを行う時間範囲に含まれる全てのタイムステップについて処理が終わると、ステップS163で、監視カメラごとの平均遮蔽率を算出する。平均遮蔽率とは、タイムステップごとに得られた遮蔽率の平均値である。平均遮蔽率が高いことは、より多くの領域がオブジェクトによって遮蔽されていること、および/または、シミュレーションを行う時間範囲においてオブジェクトによる一部の領域が遮蔽される合計時間が長いことを意味する。
【0063】
図5に戻り、説明を続ける。
ステップS17では、結果出力部113が、仮配置された監視カメラの配置パターンについて、評価値を算出する。本実施形態では、評価値は、仮配置された複数の監視カメラの平均遮蔽率が低いほど高い値を取る。評価値は、例えば、0-100の範囲をとる数値とすることができる。
【0064】
なお、監視対象の空間は、重み付けされていてもよい。例えば、監視対象の空間内に、重点的に監視すべき領域がある場合、当該領域について、より大きい重みを付したうえで評価値を算出するようにしてもよい。例えば、当該領域がオブジェクトによって遮蔽される時間が長い場合、評価値がより低くなるように補正を行ってもよい。
また、監視を行う必要がない領域がある場合、当該領域については、遮蔽率の算出対象から外してもよい。
【0065】
ステップS18では、結果出力部113が、算出された評価値が所定の閾値以上であるか否かを判定する。ここで、算出された評価値が所定の閾値を下回っていた場合、処理はステップS13へ戻り、監視カメラの仮配置が再度実行される。
【0066】
なお、監視カメラの仮配置を複数回実行する場合、それぞれの監視カメラの配置位置を所定値だけずらしながら、考えられる全ての配置パターンを網羅するようにしてもよい。また、監視カメラの複数の配置パターンを予め設定しておき、当該複数の配置パターンに従って監視カメラを仮配置してもよい。配置位置の決定には、最適化計算で採用される様々な手法を用いることができる。
【0067】
ステップS18において、算出された評価値が所定の閾値以上であった場合、処理はステップS19へ遷移し、結果出力部113が、処理結果を出力する。処理結果には、複数の監視カメラの配置位置、撮像領域に関する情報、監視不能領域に関する情報、監視可能領域に関する情報、遮蔽率、平均遮蔽率、および算出された評価値などを含ませてもよい。さらに、処理結果には、オブジェクトの動きに関する情報を含ませてもよい。例えば、複数のタイムステップの大部分において遮蔽される領域が発生する場合、当該事象が発生する時間帯や、当該領域に関する情報を、処理結果の一部として出力してもよい。例えば、「繁忙時間帯はレジ前に行列ができるため、後方にある棚がほとんど見えなくなる」といった情報を出力してもよい。
【0068】
なお、
図5の例では、算出された評価値が所定の閾値以上となった場合に処理を終了させているが、所定の閾値以上である評価値が得られても処理を継続し、監視カメラのより好適な配置パターンを得るようにしてもよい。この場合、評価値によって結果をソートし、最終的に出力するようにしてもよい。
【0069】
以上説明したように、本実施形態に係る評価装置は、所定の空間内に配置された構造物に関する情報と、空間内を移動する仮想的なオブジェクトに関する情報に基づいて、監視カメラの視界を評価する。また、評価結果に基づいて、複数の監視カメラの好適な配置位
置を決定する。
特に、オブジェクトの動きに関する情報を利用してシミュレーションを実行することで、オブジェクトの存在に起因して監視が阻害される事象を精度よく検出することが可能になる。
【0070】
(第二の実施形態)
第一の実施形態では、仮想的なオブジェクトの動きを考慮して監視カメラの視界を評価し、監視カメラの好適な配置位置を決定した。一方、動的オブジェクト以外にも、監視を妨げる要因は存在する。
例えば、監視対象の空間内に、建物の外から環境光(太陽光など)が入射するケースを考える。ここで、太陽光が内部の構造物に反射すると、カメラが捉えた映像にグレア等が発生し、十分な監視が行えない領域が発生する場合がある。すなわち、監視不能領域が、オブジェクト以外の要因によって発生する場合がある。
【0071】
第二の実施形態は、これに対応するため、監視対象の空間内における、環境光の反射をシミュレーションし、環境光に起因する監視不能領域(例えば、太陽光が反射して発生するグレアなどに起因して見えなくなる領域)を算出する。また、オブジェクトのシミュレーション結果と、環境光のシミュレーション結果を併用して、評価値を算出する。
【0072】
第二の実施形態では、記憶部12が、構造物データのほか、構造物の表面素材に関するデータ(以下、マテリアルデータ)、および、環境光に関するデータ(以下、環境光データ)を記憶する。また、データ取得部111が、マテリアルデータおよび環境光データを取得可能に構成される。
第二の実施形態では、シミュレーション部112は、データ取得部111が取得したデータに基づいて、環境光のシミュレーションをさらに実行する。
【0073】
図8は、第二の実施形態で利用されるマテリアルデータの一例である。
マテリアルデータは、構造物データによって定義された構造物の表面素材に関するデータである。マテリアルデータは、例えば、構造物ID、マテリアルID、及び、特性情報の各フィールドを含んで構成される。構造物IDフィールドには、構造物ごとに割り当てられた識別子が格納される。マテリアルIDフィールドには、表面素材ごとに割り当てられた識別子が格納される。特性情報フィールドには、表面素材の、光の反射特性に関するデータが格納される。斯様なデータとして、例えば、光の反射方向および反射率が例示できる。反射方向は、当該表面素材に光が当たったときにどの方向に光が反射するかを表す。反射率は、入射した光に対してどれくらいの割合が反射するか(素材に吸収されなかった光の割合)を表す。
なお、本例では、構造物データとマテリアルデータを別個のものとしたが、両者は一種類のデータであってもよい。BIMモデル等を利用することで、双方を統合することもできる。
【0074】
図9は、第二の実施形態で利用される環境光データの一例である。
環境光データは、監視対象の空間を照明する環境光に関するデータである。環境光データは、具体的には、環境光が入射する方向や、光の強さを定義したデータである。環境光データは、例えば、種別、照光条件、方位角、及び、角度の各フィールドを含んで構成される。種別フィールドには、環境光の種別(例えば、太陽光、人工照明光など)が格納される。環境光が、季節や時間帯によって変化する場合、照光条件フィールドに、関連するデータが格納される。例えば、太陽の位置は、一日の間において絶えず変化する。また、太陽の高度は、年間を通して変化する。このような場合、照光条件フィールドに、条件(例えば、日付や時間帯を示すデータ)が格納される。方位角フィールドには、環境光が入射する方位角を示すデータが格納される。角度フィールドには、環境光が入射する角度(
例えば、太陽の仰角)を示すデータが格納される。なお、環境光データは、これ以外にも、環境光の特徴に関するデータ(例えば、強度や波長など)を含んでもよい。
なお、
図9の例では、照光条件ごとに方位角や角度を定義したが、太陽のように連続的に動く光源を定義する場合、これらを数式によって表してもよい。
【0075】
図10は、第二の実施形態において制御部11が実行する処理のフローチャートである。第一の実施形態と同様の処理については、破線で示し、説明は省略する。
【0076】
ステップS12においてオブジェクトデータが取得された後、ステップS121で、データ取得部111が、マテリアルデータを取得する。また、ステップS122で、データ取得部111が、環境光データを取得する。各データは、所定のフォーマットで記述されたファイル等であってもよく、入出力部13を介して取り込まれてもよい。取得されたマテリアルデータおよび環境光データは、記憶部12に記憶される。
【0077】
第二の実施形態では、ステップS16Aにおいて、シミュレーション部112が、オブジェクトのシミュレーションと環境光のシミュレーションを同時に行う。
図11は、ステップS16Aにおいて実行される処理のフローチャートである。ステップS161-S162Aの処理は、第一の実施形態と同様に、タイムステップごとに実行される。
【0078】
まず、ステップS161で、第一の実施形態と同様に、シミュレーション部112が、オブジェクトの位置をシミュレーションする。
【0079】
次に、ステップS1611で、シミュレーション部112が、構造物データ、マテリアルデータ、および環境光データに基づいて、仮想空間上において、環境光のシミュレーションを実行する。
環境光のシミュレーションは、例えば、光線追跡法(レイトレーシング)等によって行ってもよい。例えば、光源から出ている光の量や方向に基づいて、物体の表面などで起こる光の屈折や反射などをシミュレーションする。この際、構造物の表面で光が反射する場合、マテリアルデータを用いて、光の反射角や反射量を演算することができる。
【0080】
ステップS162Aでは、シミュレーション部112が、複数の監視カメラのそれぞれについて、オブジェクトの存在に起因して発生する監視不能領域と、環境光の反射に起因して発生する監視不能領域の双方を算出する。
【0081】
本ステップでは、複数の監視カメラのそれぞれについて、所定の閾値以上の強度で光が入射するか否かを判定する。本ステップでは、例えば、監視カメラが有するレンズの表面に入射する光束(あるいは、単位面積あたりの光束)が所定の閾値以上であるか否かを判定する。ここで、所定の閾値以上の強度で光が入射する監視カメラがあった場合、当該監視カメラが捉えた映像上に、ハレーションやグレアが発生すると推定することができる。また、ハレーションやグレアが発生することで、対象物が十分に見えない範囲が画像中に発生することが推定できる。本ステップでは、例えば、レンズ表面において、光束が所定の強度以上で入射する範囲を特定し、当該範囲に基づいて、監視不能領域を特定してもよい。
環境光に起因する監視不能領域は、オブジェクトに起因する監視不能領域と統合される。
【0082】
ステップS163では、第一の実施形態と同様に、監視カメラごとの平均遮蔽率が算出される。第二の実施形態では、オブジェクトに起因する監視不能領域に、環境光に起因する監視不能領域を加えたうえで平均遮蔽率が算出される。
ステップS17以降の処理は、第一の実施形態と同様である。すなわち、オブジェクト
によって遮蔽される領域が多く発生し、環境光によって見えづらくなる領域が多く発生するほど、低い評価値が算出される。また、オブジェクトによる遮蔽がより長時間発生し、環境光によって見えづらくなる領域がより長時間発生するほど、低い評価値が算出される。
【0083】
以上説明したように、第二の実施形態では、監視対象の空間に入射する環境光の反射によって見えづらくなる領域を、オブジェクトによって遮蔽される領域と同等に捉え、監視カメラごとの評価値を算出する。これにより、環境光の影響を考慮して、監視カメラの適切な配置位置を決定することができる。
【0084】
(変形例)
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。
例えば、本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【0085】
また、実施形態の説明では、シミュレーションを行う対象の時間帯を指定したが、複数の日付や時間帯に対して複数回のシミュレーションを実行してもよい。この場合、日付や時間帯ごとに得られた評価値に基づいて、好適な監視カメラの配置位置を、日付や時間帯ごとに出力するようにしてもよい。
【0086】
また、実施形態の説明では、タイムステップごとの平均遮蔽率を用いて評価値を算出した。しかし、評価値は、あるタイムステップにおいてオブジェクトによって遮蔽されている領域が小さく、かつ、オブジェクトによって遮蔽されている時間が短いほど小さくなる値であれば、他の方法で算出されてもよい。
【0087】
また、実施形態で例示したオブジェクトデータは、仮想的なオブジェクトを定義したデータであったが、オブジェクトデータは、実空間における実測に基づいて生成されたものであってもよい。
【0088】
また、実施形態の説明では、監視カメラの配置位置という語を、監視カメラが配置される座標といった意味で使用したが、監視カメラの配置位置は、監視カメラの座標および角度(レンズが向いている向き)を含む概念であってもよい。この場合、ステップS13~S18のループで、各監視カメラが向いている方向をさらに変更しながら評価値を算出してもよい。
さらに、監視カメラの台数および配置(座標)が決まっている場合、ステップS13~S18のループで、その向きのみを変更しながら評価値を算出してもよい。すなわち、配置位置とは、向きのみを含む概念であってもよい。
【0089】
また、実施形態の説明では、監視カメラを固定されたカメラとしたが、複数の監視カメラは、動的な配置位置変更が可能なカメラ(例えば、カメラを搭載したモビリティ)であってもよい。この場合、評価装置1は、監視カメラの配置位置を制御する制御装置に対して、好適な監視カメラの位置を指示する指示情報を送信してもよい。
また、複数の監視カメラは、動的に角度(向き)の変更が可能なカメラであってもよい。この場合、評価装置1は、監視カメラの角度を制御する制御装置に対して、角度(向き)を指示する指示情報を送信してもよい。
また、時間帯(タイムスロット)ごとに、監視カメラの好適な配置位置が異なる場合、時間帯ごとに、各監視カメラの配置位置を変更すべく、評価装置1は、前述した指示情報を、監視カメラの制御装置に送信するようにしてもよい。
【0090】
また、実施形態の説明では、シミュレーション部112が、監視カメラの配置位置を自動的に生成したが、監視カメラの配置位置は、評価装置1のオペレータによって指定されてもよい。この場合、座標や向きといった、監視カメラの配置位置に関する条件を、入出力部13を介して取得し、当該条件下における評価値(またはシミュレーション結果)を出力するようにしてもよい。すなわち、評価装置1は、指定された条件下における監視可能領域の広さを評価する装置として機能してもよい。
【0091】
また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは柔軟に変更可能である。
【0092】
本開示は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク・ブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、光学式カード、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0093】
1・・・評価装置
11・・・制御部
12・・・記憶部
13・・・入出力部