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  • 特開-カロテンの分析方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175991
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】カロテンの分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/88 20060101AFI20241212BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20241212BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20241212BHJP
   B01J 20/287 20060101ALI20241212BHJP
   G01N 27/62 20210101ALI20241212BHJP
【FI】
G01N30/88 C
G01N30/72 C
G01N30/26 A
B01J20/287
G01N27/62 X
G01N27/62 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094150
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(74)【代理人】
【識別番号】100143096
【弁理士】
【氏名又は名称】山岸 忠義
(72)【発明者】
【氏名】前島 希
【テーマコード(参考)】
2G041
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041DA09
2G041EA04
2G041FA06
2G041GA03
2G041GA06
2G041GA09
2G041HA01
(57)【要約】
【課題】α-カロテンおよびβ-カロテンを区別して分析できる。
【解決手段】
カロテンを液体クロマトグラフィーにより分析する分析方法であって、α-カロテンおよびβ-カロテンを含有する測定試料を、イソブチル基およびオクタデシル基を有する充填剤が充填されているカラムに通過させて、α-カロテンおよびβ-カロテンを分離する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カロテンを液体クロマトグラフィーにより分析する分析方法であって、
α-カロテンおよびβ-カロテンを含有する測定試料を、イソブチル基およびオクタデシル基を有する充填剤が充填されているカラムに通過させて、α-カロテンおよびβ-カロテンを分離する、カロテンの分析方法。
【請求項2】
液体クロマトグラフィーにより分離した測定試料に対して、質量分析法を実施する、請求項1に記載のカロテンの分析方法。
【請求項3】
前記質量分析法において、前記測定試料を大気圧化学イオン化法によりイオン化する、請求項2に記載のカロテンの分析方法。
【請求項4】
前記質量分析法において、m/zが119.0付近であるイオン、および、m/zが123.0付近であるイオンを検出する、請求項2に記載のカロテンの分析方法。
【請求項5】
前記質量分析法において、m/zが123.0付近であるイオンを検出することにより得られるマスクロマトグラムのピークに基づいて、α-カロテンを特定し、m/zが119.0付近であるイオンを検出することにより得られるマスクロマトグラムのピークに基づいて、β-カロテンを特定する、請求項4に記載のカロテンの分析方法。
【請求項6】
移動相が、メタノールおよびエタノールの混合溶媒である、請求項1に記載のカロテンの分析方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カロテンの分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
体の機能を正常に保つ働きをする種々のビタミンのうち、ビタミンAは、主としてレチノールであって、カロテンが生体内で分解されることにより生成される。カロテンの多くは、α-カロテンまたはβ-カロテンから構成されている。α-カロテンおよびβ-カロテンの生体利用率は、それぞれ、1/24、1/12と見積もられており(非特許文献1参照)、両者の生体利用率は大きく異なる。したがって、飲食物におけるビタミンAの活性を調査するには、飲食物中に含まれるα-カロテンおよびβ-カロテンのそれぞれの個別定量が重要となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】厚生労働省、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」171~172頁、https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf、[令和5年5月11日検索],インターネット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、質量分析法によってα-カロテンおよびβ-カロテンを含む飲食物を測定しようとしても、α-カロテンおよびβ-カロテンはお互いの構造が非常に類似している異性体であるため、両者を区別して分析することが困難となっている。また、液体クロマトグラフィーによる測定においても、一般的な逆相カラム(具体的には、オクタデシル基で表面修飾したシリカゲルが充填されたC18カラム)を用いると、両者の移動相中の動態が類似し、両者の保持時間はほぼ同一であるため、両者を分離することが困難となっている。
【0005】
したがって、本発明は、α-カロテンおよびβ-カロテンを区別して分析できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の分析方法は、カロテンを液体クロマトグラフィーにより分析する分析方法であって、α-カロテンおよびβ-カロテンを含有する測定試料を、イソブチル基およびオクタデシル基を有する充填剤が充填されているカラムに通過させて、α-カロテンおよびβ-カロテンを分離する。
【発明の効果】
【0007】
第1の態様の分析方法によれば、測定試料中のα-カロテンおよびβ-カロテンを区別して分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例1において得られるマスクロマトグラムである。縦軸はピーク面積、横軸は保持時間を示す。
図2図2は、実施例1において作成した検量線であり、左図がα-カロテンの検量線、右図がβ-カロテンの検量線である。縦軸はピーク面積、横軸は濃度(ng/mL)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.第1の実施形態
本発明の第1の実施形態の分析方法は、測定試料に対して液体クロマトグラフィー質量分析法を実施する。すなわち、測定試料に対して、液体クロマトグラフィーを実施し、続いて、液体クロマトグラフィーにより分離された測定試料に対して、質量分析法を実施する。
【0010】
測定試料は、α-カロテンおよびβ-カロテン(下記構造式を参照)の両方を含有するものであって、例えば、野菜成分またはそれを含有する液体が挙げられる。測定液が液体(試料液)である場合は、必要に応じて、メタノールなどの有機溶媒;水などで希釈されていてもよい。また、前処理として、塩析のために硫酸ナトリウムなどの添加、遠心分離などを実施してもよい。
【0011】
【化1】
【0012】
液体クロマトグラフィーでは、測定試料を移動相(溶離液)と混合し、カラムに通過させることにより、測定試料の成分であるα-カロテンおよびβ-カロテンを時間ごとに分離させる。液体クロマトグラフィーに用いる装置としては、公知の液体クロマトグラフ分析計を用いればよく、例えば、島津製作所社製のNexeraシリーズなどが市販されている。
【0013】
液体クロマトグラフィーに用いられるカラムには、イソブチル基およびオクタデシル基を有する充填剤が充填されている。すなわち、測定試料を、イソブチル基およびオクタデシル基を有する充填剤が充填されているカラムに通過させる。これにより、α-カロテンおよびβ-カロテンをカラム内にそれぞれ異なる保持時間保持させて、これらを分離することができる。このような充填剤は、オクタデシル基を有する充填剤(いわゆるC18固定相)に、イソブチル基がさらに導入されている。より具体的には、オクタデシル基が表面修飾されたシリカ粒子に、イソブチル基を化学修飾することにより得られる。さらに、充填剤は、トリメチルシリル基などによってエンドキャッピングされていることが好ましい。イソブチル基およびオクタデシル基を有する充填剤としては、具体的には、Phenomenex社製のKinetex XB-C18などが挙げられる。
【0014】
移動相は、例えば、メタノール、エタノール、アセトニトリル、2-プロパノール、アセトン、クロロホルム、テトラヒドロフランなどの有機溶媒が挙げられ、好ましくは、メタノールおよび/またはエタノールが挙げられ、より好ましくは、メタノールおよびエタノールの混合溶媒が挙げられる。これにより、α-カロテンおよびβ-カロテンの保持時間をより確実にずらすことができ、これらのピークをより一層確実に分離することができる。混合溶媒の場合、混合溶媒におけるエタノールの割合は、例えば、5(v/v)%以上、好ましくは、10(v/v)%以上であり、また、例えば、50(v/v)%以下、好ましくは、25(v/v)%以下とすればよい。
【0015】
移動相の流速は、例えば、5mL/分以下、好ましくは、1mL/分以下、より好ましくは、0.4mL/分以下であり、例えば、0.1mL/分以上である。移動相の流速を上記上限以下とすることにより、クロマトグラム(トータルイオンクロマトグラム、マスクロマトグラムなど)において、α-カロテン由来のピークとβ-カロテン由来のピークとの分離が良好となる。一方、移動相の流速を上記下限以上とすることにより、分析時間を短縮することができる。
【0016】
また、第1の実施形態の液体クロマトグラフィーでは、アイソクラティック法およびグラジエント法のいずれの方法を採用してよい。アイソクラティック法を採用する場合は、分析後、有機溶媒比率を上げて、カラムを洗浄することが好ましい。
【0017】
カラム温度は、例えば、20℃以上、好ましくは、30℃以上であり、また、例えば、60℃以下、好ましくは、50℃以下である。上記温度範囲とすることにより、ピーク分離がより一層良好となる。
【0018】
これにより、カラムを通過した測定試料は、各保持時間に応じてα-カロテンおよびβ-カロテンが分離される。具体的には、先にα-カロテンがカラムを通過し、その後、所定時間を隔ててβ-カロテンがカラムを通過する。
【0019】
続いて、質量分析法では、測定試料において分離されたα-カロテンおよびβ-カロテンをそれぞれイオン化し、特定のm/z(質量電荷比)を有するイオンを選択ないし分離して、検出する。
【0020】
質量分析法において、イオン化の手段としては、例えば、電子化イオン法(EI:Electron Ionization)、エレクトロスプレーイオン化法(ESI:Electrospray Ionization)、大気圧化学イオン化法(APCI:Atmospheric Pressure Chemical Ionization)などが挙げられる。第1の実施形態では、より確実にα-カロテンおよびβ-カロテンをイオン化して検出できる観点から、好ましくは、APCIが挙げられる。
【0021】
イオン化されたα-カロテンおよびβ-カロテンに対する質量分離の方式、すなわち、質量分析計の種類としては、例えば、四重極型質量分析計、磁場セクター型質量分析計、飛行時間型質量分析計、イオントラップ型(オービトラップ型を含む)質量分析計、イオンサイクロトロン共鳴型質量分析計などが挙げられる。また、複数の分析計からなるタンデム質量分析計であってもよい。すなわち、第1の実施形態では、液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(LC/MS/MS)を採用してもよい。タンデム質量分析(MS/MS)の種類としては、例えば、トリプル四重極型(Q-Q)質量分析計、タンデム飛行時間型(TOF-TOF)質量分析計、四重極-飛行時間型(Q-TOF)質量分析計、四重極-イオントラップ型(Q-IT)質量分析計、四重極-イオンサイクロトロン共鳴型(Q-ICR)質量分析計、イオントラップ-飛行時間型(IT-TOF)質量分析計などが挙げられる。
【0022】
第1の実施形態では、タンデム質量分析法を採用することが好ましく、特に、トリプル四重極型質量分析計を用いることが好ましい。これにより、α-カロテンおよびβ-カロテン由来の特定のフラグメントイオンを分離および検出したマススペクトルを得られ、当該スペクトルから、より正確なα-カロテンおよびβ-カロテンの同定および定量が可能となる。
【0023】
トリプル四重極型によるタンデム質量分析法では、一段目の四重極(第1質量分離部:Q1)でプリカーサイオンのみを選択ないし通過させ、次の衝突室でそのプリカーサイオンを開裂させて複数種のプロダクトイオン(フラグメントイオンの一種)を生成し、二段目の四重極(第2質量分離部:Q2)で特定のプロダクトイオンのみを選択ないし通過させ、最後に検出部でそのプロダクトイオンを検出する。この際、好ましくは、プロダクトイオンとして、少なくとも、m/zが119.0付近であるイオン、および、m/zが123.0付近であるイオンを検出する。特に好ましくは、α-カロテンの特定において、Q1にて、プレカーサーイオンとして、m/zが537.5付近のイオンを選択し、Q2にて、プロダクトイオンとしてm/zが119.0付近のイオンを選択するとともに、β-カロテンの特定において、プレカーサーイオンとして、m/zが537.5付近のイオンを選択し、プロダクトイオンとしてm/zが119.0付近のイオンを選択する。これにより、α-カロテンおよびβ-カロテンは、衝突室において、これらm/zイオンを発生するため、α-カロテンおよびβ-カロテンの存在を検知することができる。特に、イオン衝突室でのα-カロテンの開裂においてm/z123.0のイオンが多く発生する一方、β-カロテンの開裂においてm/z119.0のイオンが多く発生する。そのため、m/zが119.0付近のマススペクトルにおいてα-カロテン由来のピークが、m/zが123.0付近のマススペクトルにおいてβ-カロテン由来のピークが、それぞれ大きく出現され、その結果、α-カロテンおよびβ-カロテンを感度よく検出することができる。m/zの選択において、イオンの極性(polarity)は、+(プラス)に設定される。第1の実施形態において、「付近」とは、±0.5の範囲を示し、例えば、119.0付近は、118.5以上119.5以下の範囲である。
【0024】
質量分析法に用いる装置としては、公知の質量分析計を用いればよく、例えば、島津製作所社製のLCMSシリーズが市販されている。質量分析計における流量、温度、衝突エネルギーなどの各種条件は、各種装置の推奨に従い、適宜設定すればよい。
【0025】
これにより、液体クロマトグラフィーで成分分離した測定試料において、トータルイオンクロマトグラム、マスクロマトグラムおよびマススペクトルが得られる。このうち、例えば、マスクロマトグラムにおいて、α-カロテンおよびβ-カロテンに由来するイオン(プレカーサーイオン、プロダクトイオン)のピークが、それぞれ異なる保持時間で、観察される。具体的には、α-カロテンおよびβ-カロテンを含む測定試料に対する液体クロマトグラフィーにおいて、α-カロテンは、β-カロテンよりも先にカラムから溶出し、質量分析計に到達するため、マスクロマトグラムでは、α-カロテンに由来するピークは、β-カロテンに由来するピークよりも早い保持時間で出現される。
【0026】
特に、トリプル四重極型による液体クロマトグラフィー質量分析法において、プレカーサーイオンのm/zとして537.5付近を選択し、プロダクトイオンのm/zとして119.0付近を選択したマススペクトルでは、大きく2つのピークが出現される。同様に、プレカーサーイオンのm/zとして537.5付近を選択し、プロダクトイオンのm/zとして123.0付近を選択したマススペクトルでも、大きく2つのピークが出現される。これらのマススペクトルにおいて、2つのピークは、それぞれ、α-カロテンに由来するイオン、および、β-カロテンに由来するイオンであって、保持時間が早い方に出現されるピークがα-カロテンのピークであり、保持時間が遅い方に出現されるピークがβ-カロテンのピークである。
【0027】
以上から、未知の測定試料において、第1の実施形態の分析方法を実施し、得られたマススペクトルに2つのピークが観察された場合、測定試料は、α-カロテンおよびβ-カロテンの両方を含むと判断できる。
【0028】
α-カロテンおよびβ-カロテンの濃度の算出(定量分析)については、検出線の作成によって、可能となる。具体的には、濃度が既知であるα-カロテンおよびβ-カロテンを含有する測定試料を、複数種の濃度で用意し、これらを上記の質量分析を実施することにより、α-カロテンおよびβ-カロテンのそれぞれにおいて、濃度とピーク強度(ピーク面積など)との関係をプロットした検量線を作成する。この検量線に、濃度が未知であるα-カロテンおよびβ-カロテンを含有する測定試料における各ピーク強度をそれぞれ対応させて、α-カロテンおよびβ-カロテンの濃度を決定することができる。
【0029】
第1の実施形態の分析方法によれば、α-カロテンおよびβ-カロテンを個別に定量することができる。また、短時間で分析することができる。
【0030】
2.第2の実施形態
本発明の第2の実施形態の分析方法は、測定試料を、液体クロマトグラフィーによって分析する方法である。換言すれば、第2の実施形態の分析方法は、分析方法として、質量分析法を実施せずに、液体クロマトグラフィーのみを実施する方法である。
【0031】
測定条件は、第1の実施形態の液体クロマトグラフィーと同様である。この第2の実施形態の分析方法により、α-カロテン由来のピークおよびβ-カロテン由来のピークがそれぞれ分離したクロマトグラムが得られる。このクロマトグラムから、α-カロテンおよびβ-カロテンを同定することができる。また、これらのピーク強度を測定し、予め作成した検量線を参照することにより、α-カロテンおよびβ-カロテンの濃度を個別に算出することができる。
【0032】
3.態様
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0033】
(第1項)一態様に係るカロテンの分析方法は、カロテンを液体クロマトグラフィーにより分析する分析方法であって、α-カロテンおよびβ-カロテンを含有する測定試料を、イソブチル基およびオクタデシル基を有する充填剤が充填されているカラムに通過させて、α-カロテンおよびβ-カロテンを分離してもよい。
【0034】
(第2項)第1項の記載の分析方法において、液体クロマトグラフィーにより分離した測定試料に対して、質量分析法を実施してもよい。
【0035】
(第3項)第2項の記載の分析方法において、前記質量分析法において、前記測定試料を大気圧化学イオン化法によりイオン化してもよい。
【0036】
(第4項)第2項または第3項の記載の分析方法において、前記質量分析法において、m/zが119.0付近であるイオン、および、m/zが123.0付近であるイオンを検出してもよい。
【0037】
(第5項)第2項~第4項のいずれか一項に記載の分析方法において、前記質量分析法において、m/zが123.0付近であるイオンを検出することにより得られるマスクロマトグラムのピークに基づいて、α-カロテンを特定し、m/zが119.0付近であるイオンを検出することにより得られるマスクロマトグラムのピークに基づいて、β-カロテンを特定してもよい。
【0038】
(第6項)第1項~第5項のいずれか一項に記載の分析方法において、移動相が、メタノールおよびエタノールの混合溶媒であってもよい。
【実施例0039】
次に実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらによって限定されない。
【0040】
<実施例1>
(試料液の分析)
市販の野菜ジュース1gに、無水硫酸ナトリウム5gおよびエタノール10mLを添加し、5分間振とうさせた後、5分間遠心分離して、上清を採取した。遠心分離の沈殿物に対しては、抽出処理をさらに2回実施して、上清を採取した。これらの上清を混合し、エタノールを添加して、40mLに定容した。この抽出液40mLをエタノールで100倍に希釈した後、10分間遠心分離し、上清を採取して、測定試料とした。この測定試料に対して、下記の条件でクロマトグラフィー質量分析法を実施した。なお、カラムとして、イソブチル基を導入したC18カラム(トリメチルシリル基でエンドキャッピング処理済み)であるKinetex XB-C18を用いた。
【0041】
[LC条件]
装置名:超高速液体クロマトグラフNexera X3(島津製作所社製)
カラム:Kinetex XB-C18(100mm×3.0mmI.D.,1.7&micro;m)
移動相:A)メタノール
B)エタノール
時間プログラム条件:アイソクラティック法
B濃度 15%(0-7分)、100%(7.01-12分)
流速:0.5mL/分
カラム温度:40℃
注入量:5μL
【0042】
[MS条件]
装置名:トリプル四重極質量分析計LCMS-8050(島津製作所社製)
イオン化モード:APCI
ネブライザーガス流量:3L/分
ドライイングガス流量:10L/分
DL温度:200℃
インターフェース温度:300℃
ヒートブロック温度:200℃
測定モード:多重反応モニタリング(MRM)、条件は下記表1参照
【0043】
【表1】
【0044】
このときのマスクロマトグラムを図1に示す。図1に示すように、2つのピークが分離して観察されているため、α-カロテンおよびβ-カロテンは区別して測定できていることが分かる。また、10分未満で測定が完了しており、高速で分析できていることが分かる。なお、α-カロテンの標準試料液、および、β-カロテンの標準試料液に対して、それぞれ、上記液体クロマトグラフィー質量分析法を実施したところ、保持時間が6.1分付近のピークがα-カロテンに起因し、保持時間が6.5分付近のピークがβ-カロテンに起因することを確認した。
【0045】
さらに、図1から、α-カロテンのピーク(保持時間6.1分)において、m/z537.45>123.15由来のピークは、m/z537.45>119.10由来のピークに対して面積比で1.7倍大きく、感度が良好であるため、α-カロテンは、m/z537.45>123.15由来のイオンに基づいて、検出することが好ましいことが分かる。一方、β-カロテンのピーク(保持時間6.5分)において、m/z537.45>119.10由来のピークは、m/z537.45>123.15由来のピークに対して面積比で4.6倍大きく、感度が良好であるため、β-カロテンは、m/z537.45>119.10由来のイオンに基づいて、検出することが好ましいことが分かる。
【0046】
(検量線の作成)
濃度が既知のα-カロテンおよびβ-カロテンが含まれる標準品を5種用意した。これらについて、上記実施例1と同様にして、分析を実施した。このときの定量および再現性を表2に示す。また、この結果に基づき、検量線を作成した。これを図2に示す。表2および図2から、広範囲で精度よく、α-カロテンおよびβ-カロテンを定量できることが分かる。
【0047】
【表2】
【0048】
<実施例2>
LC条件において、移動相の流速を0.4mL/分に変更した以外は、実施例1と同様に実施した。得られたマスクロマトグラムでは、α-カロテンおよびβ-カロテンのピークが、それぞれ保持時間7.7分付近および8.1分付近の箇所で観察された。なお、このときのα-カロテンおよびβ-カロテンのピークの分離度(USP法)は、1.505であった。一方、実施例1における分離度は、1.085であった。このことから、実施例2の方がピーク分離は良好であることが分かる。
【0049】
<比較例1~4>
LC条件において、カラムを、(1)AQUITY UPLC BEH C18、(2)Shim-pack Scepter PFPP-120、(3)Kinetex 2.6uBiphenyl 100A、または、(4)Kinetex PFP 100Aにそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様に実施した。このときのマスクロマトグラムを確認したところ、いずれのカラムに対しても、α-カロテンのピークとβ-カロテンのピークとは分離されておらず、両者を区別することが困難であった。


図1
図2