(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175992
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】表示装置の製造方法および表示装置
(51)【国際特許分類】
H10K 71/20 20230101AFI20241212BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20241212BHJP
H10K 50/844 20230101ALI20241212BHJP
H10K 59/122 20230101ALI20241212BHJP
H10K 50/818 20230101ALI20241212BHJP
H10K 50/828 20230101ALI20241212BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20241212BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H10K71/20
H10K50/10
H10K50/844
H10K59/122
H10K50/818
H10K50/828
G09F9/30 365
G09F9/30 349Z
G09F9/00 338
G09F9/30 309
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094156
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田畠 弘志
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB08
3K107CC23
3K107CC33
3K107CC45
3K107DD23
3K107DD27
3K107DD89
3K107DD91
3K107DD95
3K107EE48
3K107FF15
3K107GG12
3K107GG28
5C094AA31
5C094BA27
5C094DA07
5C094DA15
5C094EA07
5C094EA10
5C094EC04
5C094FA01
5C094FA02
5C094FA03
5C094GB10
5C094JA08
5C094JA09
5G435AA14
5G435BB05
5G435KK05
(57)【要約】
【課題】信頼性の低下を抑制することが可能な表示装置の製造方法および表示装置を提供すること。
【解決手段】一実施形態に係る表示装置の製造方法は、下電極を形成し、下電極を覆う無機絶縁層を形成し、無機絶縁層の上に、導電性の下部と、下部の側面から突出した端部を有する上部とを含む隔壁を形成し、第1方向に延びる一対の第1直線部と、第1方向と交差する第2方向に延びる一対の第2直線部と、隣り合う第1直線部および第2直線部を接続する円弧状の4つの角部とを有する開口を備えたフォトマスクを用いてパターニングされたレジストを、無機絶縁層の上に形成し、無機絶縁層のうちレジストから露出した部分を除去することにより、下電極と重なる画素開口を有するリブを形成する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下電極を形成し、
前記下電極を覆う無機絶縁層を形成し、
前記無機絶縁層の上に、導電性の下部と、前記下部の側面から突出した端部を有する上部とを含む隔壁を形成し、
第1方向に延びる一対の第1直線部と、前記第1方向と交差する第2方向に延びる一対の第2直線部と、隣り合う第1直線部および第2直線部を接続する円弧状の4つの角部とを有する開口を備えたフォトマスクを用いてパターニングされたレジストを、前記無機絶縁層の上に形成し、
前記無機絶縁層のうち前記レジストから露出した部分を除去することにより、前記下電極と重なる画素開口を有するリブを形成する、
表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記リブは、前記画素開口の全周にわたりテーパー形状の端部を有する、
請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記リブの端部の傾斜角は、45°以下である、
請求項2に記載の表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記角部の各々の曲率半径は、3μm以上である、
請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記フォトマスクは、前記角部の各々に対応する領域に配置されたハーフトーン膜と、前記角部の各々に対応する領域と前記開口以外の領域に配置されたクロム膜とからなる、
請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記ハーフトーン膜の幅は、4μm以上である、
請求項5に記載の表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記下電極を覆うとともに、電圧の印加に応じて発光する有機層を形成し、
前記有機層を覆うとともに、前記下部に接触する上電極を形成する、
ことをさらに含む請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記有機層および前記上電極を含む積層膜と、前記隔壁とを連続的に覆う封止層を形成する、
ことをさらに含む請求項7に記載の表示装置の製造方法。
【請求項9】
下電極と、
前記下電極と重なる画素開口を有するリブと、
前記リブの上に配置される導電性の下部と、前記下部の側面から突出した端部を有する上部とを含む隔壁と、
前記画素開口を通じて前記下電極に接触する有機層と、前記有機層を覆う上電極とを含む積層膜と、
前記積層膜を覆う封止層と、
を備え、
前記リブは、前記画素開口の全周にわたりテーパー形状の端部を有する、
表示装置。
【請求項10】
前記リブの端部の傾斜角は、45°以下である、
請求項9に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示装置の製造方法および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を適用した表示装置が実用化されている。この表示素子は、下電極と、下電極を覆う有機層と、有機層を覆う上電極とを備えている。
【0003】
上記のような表示装置を製造するにあたり、信頼性の低下を抑制する技術が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-195677号公報
【特許文献2】特開2004-207217号公報
【特許文献3】特開2008-135325号公報
【特許文献4】特開2009-32673号公報
【特許文献5】特開2010-118191号公報
【特許文献6】国際公開第2018/179308号
【特許文献7】米国特許出願公開第2022/0077251号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、信頼性の低下を抑制することが可能な表示装置の製造方法および表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る表示装置の製造方法は、下電極を形成し、前記下電極を覆う無機絶縁層を形成し、前記無機絶縁層の上に、導電性の下部と、前記下部の側面から突出した端部を有する上部とを含む隔壁を形成し、第1方向に延びる一対の第1直線部と、前記第1方向と交差する第2方向に延びる一対の第2直線部と、隣り合う第1直線部および第2直線部を接続する円弧状の4つの角部とを有する開口を備えたフォトマスクを用いてパターニングされたレジストを、前記無機絶縁層の上に形成し、前記無機絶縁層のうち前記レジストから露出した部分を除去することにより、前記下電極と重なる画素開口を有するリブを形成する。
【0007】
一実施形態に係る表示装置は、下電極と、前記下電極と重なる画素開口を有するリブと、前記リブの上に配置される導電性の下部と、前記下部の側面から突出した端部を有する上部とを含む隔壁と、前記画素開口を通じて前記下電極に接触する有機層と、前記有機層を覆う上電極とを含む積層膜と、前記積層膜を覆う封止層と、を備え、前記リブは、前記画素開口の全周にわたりテーパー形状の端部を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る表示装置の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、副画素のレイアウトの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、
図2中のIII-III線に沿う表示パネルの概略的な断面図である。
【
図4】
図4は、同実施形態に係る画素開口の平面形状を示す概略的な平面図である。
【
図5】
図5は、同実施形態に係る画素開口を有するリブに適用し得る構造の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、同実施形態に係るフォトマスクの一部を示す概略的な平面図である。
【
図7】
図7は、同実施形態に係るフォトマスクの一部を示す概略的な平面図である。
【
図8】
図8は、同実施形態に係る製造方法における画素開口を形成する工程を説明するための図である。
【
図9】
図9は、同実施形態に係る製造方法における画素開口を形成する工程を説明するための図である。
【
図10】
図10は、比較例に係る製造方法において用いられるフォトマスクの一部を示す概略的な平面図である。
【
図11】
図11は、比較例に係る製造方法における画素開口を形成する工程を説明するための図である。
【
図12】
図12は、比較例に係る製造方法により製造された表示装置の一部を示す概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0010】
図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を記載する。X軸に沿った方向を第1方向と称し、Y軸に沿った方向を第2方向と称し、Z軸に沿った方向を第3方向と称する。第3方向Zは、第1方向Xと第2方向Yを含む平面に対して法線方向である。また、第3方向Zと平行に各種要素を見ることを平面視という。
【0011】
本実施形態に係る表示装置は、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置であり、テレビ、パーソナルコンピュータ、車載機器、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話端末、ウェアラブル端末等の各種の電子機器に搭載され得る。
【0012】
図1は、本実施形態に係る表示装置DSPの構成例を示す図である。表示装置DSPは、絶縁性の基板10を含む表示パネルPNLを備えている。表示パネルPNLは、画像を表示する表示領域DAと、表示領域DAの周辺の周辺領域SAとを有している。基板10は、ガラスであってもよいし、可撓性を有する樹脂フィルムであってもよい。
【0013】
本実施形態においては、平面視における基板10の形状が長方形である。但し、基板10の平面視における形状は長方形に限られず、正方形、円形あるいは楕円形などの他の形状であってもよい。
【0014】
表示領域DAは、第1方向Xおよび第2方向Yにマトリクス状に配列された複数の画素PXを備えている。画素PXは、複数の副画素SPを含む。一例では、画素PXは、青色の副画素SP1、緑色の副画素SP2および赤色の副画素SP3を含む。なお、画素PXは、副画素SP1,SP2,SP3とともに、あるいは副画素SP1,SP2,SP3のいずれかに代えて、白色などの他の色の副画素SPを含んでもよい。
【0015】
副画素SPは、画素回路1と、画素回路1によって駆動される表示素子DEとを備えている。画素回路1は、画素スイッチ2と、駆動トランジスタ3と、キャパシタ4とを備えている。画素スイッチ2および駆動トランジスタ3は、例えば薄膜トランジスタにより構成されたスイッチング素子である。
【0016】
画素スイッチ2のゲート電極は、走査線GLに接続されている。画素スイッチ2のソース電極およびドレイン電極の一方は信号線SLに接続され、他方は駆動トランジスタ3のゲート電極およびキャパシタ4に接続されている。駆動トランジスタ3において、ソース電極およびドレイン電極の一方は電源線PLおよびキャパシタ4に接続され、他方は表示素子DEに接続されている。
【0017】
なお、画素回路1の構成は図示した例に限られない。例えば、画素回路1は、より多くの薄膜トランジスタおよびキャパシタを備えてもよい。
【0018】
図2は、副画素SP1,SP2,SP3のレイアウトの一例を示す概略的な平面図である。
図2の例においては、副画素SP2,SP3がそれぞれ副画素SP1と第1方向Xに並んでいる。さらに、副画素SP2と副画素SP3が第2方向Yに並んでいる。
【0019】
副画素SP1,SP2,SP3がこのようなレイアウトである場合、表示領域DAには、副画素SP2,SP3が第2方向Yに交互に配置された列と、複数の副画素SP1が第2方向Yに繰り返し配置された列とが形成される。これらの列は、第1方向Xに交互に並ぶ。なお、副画素SP1,SP2,SP3のレイアウトは
図2の例に限られない。
【0020】
表示領域DAには、リブ5が配置されている。リブ5は、副画素SP1,SP2,SP3においてそれぞれ画素開口AP1,AP2,AP3を有している。
図2の例においては、画素開口AP1が画素開口AP2よりも大きく、画素開口AP2が画素開口AP3よりも大きい。
【0021】
副画素SP1は、画素開口AP1とそれぞれ重なる下電極LE1、上電極UE1および有機層OR1を備えている。副画素SP2は、画素開口AP2とそれぞれ重なる下電極LE2、上電極UE2および有機層OR2を備えている。副画素SP3は、画素開口AP3とそれぞれ重なる下電極LE3、上電極UE3および有機層OR3を備えている。
【0022】
下電極LE1、上電極UE1および有機層OR1のうち画素開口AP1と重なる部分は、副画素SP1の表示素子DE1を構成する。下電極LE2、上電極UE2および有機層OR2のうち画素開口AP2と重なる部分は、副画素SP2の表示素子DE2を構成する。下電極LE3、上電極UE3および有機層OR3のうち画素開口AP3と重なる部分は、副画素SP3の表示素子DE3を構成する。表示素子DE1,DE2,DE3は、後述するキャップ層をさらに含んでもよい。リブ5は、これら表示素子DE1,DE2,DE3の各々を囲っている。
【0023】
下電極LE1は、コンタクトホールCH1を通じて副画素SP1の画素回路1(
図1参照)に接続されている。下電極LE2は、コンタクトホールCH2を通じて副画素SP2の画素回路1に接続されている。下電極LE3は、コンタクトホールCH3を通じて副画素SP3の画素回路1に接続されている。
【0024】
リブ5の上には、隔壁6が配置されている。隔壁6は、全体的にリブ5と重なっており、リブ5と同様の平面形状を有している。すなわち、隔壁6は、副画素SP1,SP2,SP3においてそれぞれ開口AP61,AP62,AP63を有している。他の観点からいうと、リブ5および隔壁6は、表示素子DE1,DE2,DE3の間に配置されており、平面視において格子状である。
【0025】
図3は、
図2中のIII-III線に沿う表示パネルPNL(表示装置DSP)の概略的な断面図である。上述の基板10の上に回路層11が配置されている。回路層11は、
図1に示した画素回路1、走査線GL、信号線SLおよび電源線PLなどの各種回路や配線を含む。
【0026】
回路層11は、有機絶縁層12により覆われている。有機絶縁層12は、回路層11により生じる凹凸を平坦化する平坦化膜として機能する。
図3の断面には表れていないが、上述のコンタクトホールCH1,CH2,CH3は有機絶縁層12に設けられている。
【0027】
下電極LE1,LE2,LE3は、有機絶縁層12の上に配置されている。リブ5は、有機絶縁層12および下電極LE1,LE2,LE3の上に配置されている。下電極LE1,LE2,LE3の端部は、リブ5により覆われている。
【0028】
隔壁6は、リブ5の上に配置された導電性を有する下部61と、下部61の上に配置された上部62とを含む。上部62は、下部61よりも大きい幅を有している。これにより、上部62の両端部が下部61の側面よりも突出している。このような隔壁6の形状は、オーバーハング状と呼ばれる。
【0029】
有機層OR1は、画素開口AP1を通じて下電極LE1を覆っている。上電極UE1は、有機層OR1を覆い、下電極LE1と対向している。有機層OR2は、画素開口AP2を通じて下電極LE2を覆っている。上電極UE2は、有機層OR2を覆い、下電極LE2と対向している。有機層OR3は、画素開口AP3を通じて下電極LE3を覆っている。上電極UE3は、有機層OR3を覆い、下電極LE3と対向している。上電極UE1,UE2,UE3は、隔壁6の下部61の側面に接触している。
【0030】
図3の例においては、上電極UE1の上にキャップ層CP1が配置され、上電極UE2の上にキャップ層CP2が配置され、上電極UE3の上にキャップ層CP3が配置されている。キャップ層CP1,CP2,CP3は、それぞれ有機層OR1,OR2,OR3が発する光の取り出し効率を向上させる光学調整層としての役割を有している。
【0031】
以下の説明においては、有機層OR1、上電極UE1およびキャップ層CP1を含む多層体を積層膜FL1と呼び、有機層OR2、上電極UE2およびキャップ層CP2を含む多層体を積層膜FL2と呼び、有機層OR3、上電極UE3およびキャップ層CP3を含む多層体を積層膜FL3と呼ぶ。
【0032】
積層膜FL1の一部は、上部62の上に位置している。当該一部は、積層膜FL1のうち隔壁6の下に位置する部分(表示素子DE1を構成する部分)と離間している。同様に、積層膜FL2の一部は上部62の上に位置し、当該一部は積層膜FL2のうち隔壁6の下に位置する部分(表示素子DE2を構成する部分)と離間している。さらに、積層膜FL3の一部は上部62の上に位置し、当該一部は積層膜FL3のうち隔壁6の下に位置する部分(表示素子DE3を構成する部分)と離間している。
【0033】
副画素SP1,SP2,SP3には、封止層SE1,SE2,SE3がそれぞれ配置されている。封止層SE1は、積層膜FL1や副画素SP1の周囲の隔壁6を連続的に覆っている。封止層SE2は、積層膜FL2や副画素SP2の周囲の隔壁6を連続的に覆っている。封止層SE3は、積層膜FL3や副画素SP3の周囲の隔壁6を連続的に覆っている。
【0034】
図3の例においては、副画素SP1,SP2の間の隔壁6上の積層膜FL1および封止層SE1が、当該隔壁6上の積層膜FL2および封止層SE2と離間している。また、副画素SP1,SP3の間の隔壁6上の積層膜FL1および封止層SE1が、当該隔壁6上の積層膜FL3および封止層SE3と離間している。
【0035】
封止層SE1,SE2,SE3は、樹脂層13により覆われている。樹脂層13は、封止層14により覆われている。封止層14は、樹脂層15により覆われている。樹脂層13,15および封止層14は、少なくとも表示領域DAの全体に連続的に設けられ、その一部が周辺領域SAにも及んでいる。
【0036】
偏光板、タッチパネル、保護フィルムまたはカバーガラスなどのカバー部材が樹脂層15の上方にさらに配置されてもよい。このようなカバー部材は、例えばOCA(Optical Clear Adhesive)などの接着層を介して樹脂層15に接着されてもよい。
【0037】
有機絶縁層12は、有機絶縁材料で形成されている。リブ5および封止層14,SE1,SE2,SE3は、シリコン窒化物(SiNx)、シリコン酸化物(SiOx)、シリコン酸窒化物(SiON)または酸化アルミニウム(Al2O3)などの無機絶縁材料で形成されている。一例では、リブ5がシリコン酸窒化物で形成され、封止層14,SE1,SE2,SE3がシリコン窒化物で形成されている。樹脂層13,15は、例えばエポキシ樹脂やアクリル樹脂などの樹脂材料(有機絶縁材料)で形成されている。
【0038】
下電極LE1,LE2,LE3は、例えば銀(Ag)で形成された反射層と、この反射層の上面および下面をそれぞれ覆う一対の導電性酸化物層とを有している。各導電性酸化物層は、例えばITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)またはIGZO(Indium Gallium Zinc Oxide)などの透明な導電性酸化物で形成することができる。
【0039】
上電極UE1,UE2,UE3は、例えばマグネシウムと銀の合金(MgAg)などの金属材料で形成されている。例えば、下電極LE1,LE2,LE3はアノードに相当し、上電極UE1,UE2,UE3はカソードに相当する。
【0040】
有機層OR1,OR2,OR3は、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロッキング層、発光層、正孔ブロッキング層、電子輸送層および電子注入層の積層構造を有している。有機層OR1,OR2,OR3は、複数の発光層を含むいわゆるタンデム構造を有してもよい。
【0041】
キャップ層CP1,CP2,CP3は、例えば透明な複数の薄膜が重ねられた積層構造を有している。当該複数の薄膜は、無機材料によって形成された薄膜および有機材料によって形成された薄膜を含んでもよい。また、当該複数の薄膜は、互いに異なる屈折率を有している。これら薄膜の材料は、上電極UE1,UE2,UE3の材料とは異なり、また、封止層SE1,SE2,SE3の材料とも異なる。なお、キャップ層CP1,CP2,CP3の少なくとも1つが省略されてもよい。
【0042】
隔壁6の下部61は、例えばアルミニウムによって形成されている。下部61は、アルミニウム-ネオジム合金(AlNd)、アルミニウム-イットリウム合金(AlY)およびアルミニウム-シリコン合金(AlSi)などのアルミニウム合金によって形成されてもよいし、アルミニウム層とアルミニウム合金層の積層構造を有してもよい。さらに、下部61は、アルミニウム層またはアルミニウム合金層の下に、アルミニウムやアルミニウム合金とは異なる金属材料で形成されたボトム層を有してもよい。このようなボトム層を形成する金属材料としては、例えばモリブデン(Mo)、窒化チタン(TiN)、モリブデン-タングステン合金(MoW)またはモリブデン-ニオブ合金(MoNb)を用いることができる。
【0043】
例えば、隔壁6の上部62は、金属材料で形成された下層と、導電性酸化物で形成された上層との積層構造を有している。下層を形成する金属材料としては、例えばチタン、窒化チタン、モリブデン、タングステン、モリブデン-タングステン合金またはモリブデン-ニオブ合金を用いることができる。上層を形成する導電性酸化物としては、例えばITOまたはIZOを用いることができる。なお、上部62は、金属材料の単層構造を有してもよい。
【0044】
隔壁6には、共通電圧が供給されている。この共通電圧は、下部61の側面に接触した上電極UE1,UE2,UE3にそれぞれ供給される。下電極LE1,LE2,LE3には、副画素SP1,SP2,SP3がそれぞれ有する画素回路1を通じて画素電圧が供給される。
【0045】
有機層OR1,OR2,OR3は、電圧の印加に応じて発光する。具体的には、下電極LE1と上電極UE1の間に電位差が形成されると、有機層OR1の発光層が青色の波長域の光を放つ。下電極LE2と上電極UE2の間に電位差が形成されると、有機層OR2の発光層が緑色の波長域の光を放つ。下電極LE3と上電極UE3の間に電位差が形成されると、有機層OR3の発光層が赤色の波長域の光を放つ。
【0046】
他の例として、有機層OR1,OR2,OR3の発光層が同一色(例えば白色)の光を放ってもよい。この場合において、表示装置DSPは、発光層が放つ光を副画素SP1,SP2,SP3に対応する色の光に変換するカラーフィルタを備えてもよい。また、表示装置DSPは、発光層が放つ光により励起して副画素SP1,SP2,SP3に応じた色の光を生成する量子ドットを含んだ層を備えてもよい。
【0047】
図4は、副画素SP1の画素開口AP1の平面形状を示す概略的な平面図である。なお、この図においては、副画素SP1の画素開口AP1を示すが、副画素SP2の画素開口AP2および副画素SP3の画素開口AP3も同様な平面形状を有している。
【0048】
図4に示すように、画素開口AP1は、第1方向Xに延びた一対の第1直線部LX1と、第2方向Yに延びた一対の第2直線部LY1と、円弧状に形成された4つの角部CN1と、を有している。角部CN1の各々は、隣り合う第1直線部LX1と第2直線部LY1とを接続している。詳細については後述するが、画素開口AP1は、当該画素開口AP1を形成する際に配置されるレジストをパターニングするためのフォトマスクに形成されたマスク開口と同様な平面形状を有している。
なお、画素開口AP1を囲う隔壁6の開口AP61は、
図4に示すように、矩形状である。つまり、副画素SP1の画素開口AP1と、副画素SP1の周囲の隔壁6の開口AP61とは、異なる平面形状を有している。
【0049】
図5は、画素開口を有するリブ5に適用し得る構造の一例を示す図である。なお、この図においては、画素開口AP1を有するリブ5を示すが、副画素SP2の画素開口AP2を有するリブ5および副画素SP3の画素開口AP3を有するリブ5にも同様の構造を適用できる。
【0050】
図5の例において、下電極LE1の端部は、下部61の下方に位置している。これによれば、下電極LE1に起因したリブ5の段差は、下部61によって覆われている。
【0051】
図5ではその詳しい図示を省略しているが、下部61の側面には、上述したように、積層膜FL1に含まれる上電極UE1が接触している。なお、積層膜FL1に含まれる有機層OR1は、下部61の側面には接触せず、全体的に上電極UE1で覆われている。また、積層膜FL1に含まれるキャップ層CP1は、下部61の側面に接触しなくてもよいし、当該側面に接触してもよい。
【0052】
図5の破線で囲まれた領域Vに示されるように、画素開口AP1付近のリブ5の端部51は、下電極LE1の上面に対して角度θ1をなして緩やかに傾斜している。換言すると、リブ5の端部51は、テーパー形状(より詳しくは、第3方向Zに沿った上方に向かうにしたがってリブ5の幅が減少する順テーパー形状)を有している。
【0053】
なお、角度θ1(より詳しくは、下電極LE1の上面に対する端部51の傾斜角θ1)は45°以下の値であることが望ましい。換言すると、リブ5の端部51の水平方向の長さL1は、リブ5の膜厚L2よりも長いことが望ましい。このような構造によれば、画素開口AP1付近のリブ5の端部51において、積層膜FL1(上電極UE1、有機層OR1およびキャップ層CP1)が段切れしてしまうことや、封止層SE1が切れしてしまうこと(封止層SE1に亀裂等の欠陥が生じてしまうこと)を防ぐことが可能である。
【0054】
リブ5の端部51は、画素開口AP1の全周にわたり
図5に示した構造を有している。つまり、リブ5の端部51は、画素開口AP1の第1直線部LX1付近、第2直線部LY1付近および角部CN1付近のいずれにおいても、
図5に示した構造を有している。なお、上述したように、リブ5の端部51は、副画素SP2の画素開口AP2の全周および副画素SP3の画素開口AP3の全周においても同様な構造を有する。
【0055】
図6は、画素開口を形成する際に配置されるレジストをパターニングするためのフォトマスクPMの一部を示す概略的な平面図である。フォトマスクPMは、例えばクロム(Cr)によって形成されている。なお、この図においては、フォトマスクPMのうち、副画素SP1の画素開口AP1に対応する部分(つまり、
図4に示した画素開口AP1に対応する部分)を示すが、副画素SP2の画素開口AP2に対応する部分および副画素SP3の画素開口AP3に対応する部分も同様である。
【0056】
図6に示すように、フォトマスクPMは、画素開口AP1に対応するマスク開口AP1mを有している。マスク開口AP1mは、第1方向Xに延びた一対の第1直線部LX1mと、第2方向Yに延びた一対の第2直線部LY1mと、円弧状に形成された4つの角部CN1mと、を有している。角部CN1mの各々は、隣り合う第1直線部LX1mと第2直線部LY1mとを接続している。
【0057】
図5に示した構造、つまり、リブ5の端部51の長さL1が、リブ5の膜厚L2よりも長い構造(換言すると、リブ5の端部51が、下電極LE1の上面に対して45°以下の角度をなして緩やかに傾斜する構造)を実現するためには、角部CN1mの各々の曲率半径R1は、3μm以上の値に設定されることが望ましい。より好ましくは、角部CN1mの各々の曲率半径R1は、5μm以上の値に設定されることが望ましい。これによれば、詳細については後述するが、
図5に示した構造を実現することが可能である。
【0058】
図6の例においては、マスク開口AP1mの角部CN1mの各々が、R面取りされたR面(曲面)である場合を示したが、当該角部CN1mの各々は、C面取りされたC面(第1直線部LX1mまたは第2直線部LY1mに対して45°に傾斜した直線部によって第1直線部LX1mと第2直線部LY1mとを接続し、その直線部に沿った面)であっても構わない。
【0059】
なお、R面の値(曲率半径)やC面の値(寸法)は、画素開口AP1を囲う隔壁6(下部61および上部62)の高さと、当該隔壁6の開口AP61から当該画素開口AP1までの距離とに基づき設定される。
【0060】
図7は、画素開口を形成する際に配置されるレジストをパターニングするための別のフォトマスクPMの一部を示す概略的な平面図である。
図7に示すフォトマスクPMは、上述のクロムにより形成されるクロム膜が配置された第1領域r
Crと、上述のクロム膜の代わりにハーフトーン膜が配置された第2領域r
HTとを含む点で、
図6に示したフォトマスクPMと相違している。
【0061】
図7の斜線が付された領域が第1領域r
Crに相当し、
図7のドットが付された領域が第2領域r
HTに相当する。第2領域r
HTは、
図7に示すように、マスク開口AP1mの角部CN1mの各々に対応する領域である。クロム膜が配置された第1領域r
Crの光透過率が0%であるのに対し、ハーフトーン膜が配置された第2領域r
HTの光透過率はおよそ30%~40%程度である。マスク開口AP1mと重なる位置に配置されたレジストはパターニングにより除去され、第1領域r
Crと重なる位置に配置されるレジストはパターニングにより除去されず、第2領域r
HTと重なる位置に配置されるレジストはパターニングによりその一部が除去される。
【0062】
図5に示した構造、つまり、リブ5の端部51の長さL1が、リブ5の膜厚L2よりも長い構造(換言すると、リブ5の端部51が、下電極LE1の上面に対して45°以下の角度をなして緩やかに傾斜する構造)を実現するためには、
図7に示すハーフトーン膜が配置された第2領域r
HTの幅W1は、4μm以上の値に設定されることが望ましい。これによれば、
図6に示したフォトマスクPMを用いた場合と同様に、
図5に示した構造を実現することが可能である。
【0063】
なお、マスク開口AP1mの角部CN1mの各々が、R面取りされたR面(曲面)であっても、C面取りされたC面であってもよい点は、
図6に示したフォトマスクPMと同様である。
【0064】
次に、
図8および
図9を参照して、本実施形態に係る製造方法における画素開口AP1を形成する工程について説明する。なお、これらの図においては、副画素SP1の画素開口AP1が形成される様子を示すが、同じ工程において、副画素SP2の画素開口AP2および副画素SP3の画素開口AP3も形成される。
【0065】
ここではその詳しい図示を省略するが、表示装置DSPの製造においては、まず基板10の上に回路層11および有機絶縁層12が形成される。次に、有機絶縁層12の上に下電極LE1,LE2,LE3が形成される。その後、下電極LE1,LE2,LE3を全体的に覆うように、リブ5に加工するための無機絶縁層5aが形成される。さらに、下部61に加工するための導電性の第1層61aが無機絶縁層5aの上に形成され、上部62に加工するための第2層62aが第1層61aの上に形成される。
【0066】
続いて、第1層61aおよび第2層62aがパターニングされる。このパターニングは、第2層62aを上部62の形状に加工するエッチングと、第1層61aを下部61の形状に加工するエッチングとを含む。これらのエッチングにより、下部61および上部62を含む隔壁6が無機絶縁層5aの上に形成される。
【0067】
隔壁6の形成の後、
図8に示すように、
図6または
図7に示したフォトマスクPMを介してリブ5の平面形状にパターニングされたレジストRG1が、無機絶縁層5aの上に配置される。
図6または
図7示したフォトマスクPMが用いられることにより、レジストRG1は、
図8に示すように、画素開口AP1を形成する部分付近において傾斜した形状にパターニングされる。ここでは図示されないが、画素開口AP2を形成する部分付近、および、画素開口AP3を形成する部分付近のレジストRG1の形状も同様である。
【0068】
その後、
図9に示すように、リブ5に加工するための無機絶縁層5aのうち、レジストRG1から露出した部分がエッチングにより除去される。これによれば、
図9に示すように、画素開口AP1(および画素開口AP2,AP3)を有し、緩やかなテーパー形状の端部51を有するリブ5が形成される。
【0069】
以降、表示素子DE1,DE2,DE3を形成するための工程が順に実施される。これによれば、
図5に示した構造を有する表示装置DSPが製造される。つまり、画素開口AP1(および画素開口AP2,AP3)の全周にわたり、リブ5の端部51の長さL1が、リブ5の膜厚L2よりも長い構造(換言すると、リブ5の端部51が、下電極LE1の上面に対して45°以下の角度をなして緩やかに傾斜する構造)を有する表示装置DSPが製造される。
【0070】
以下、比較例を用いて、本実施形態に係る製造方法および表示装置DSPの効果について説明する。なお、比較例は、本実施形態に係る製造方法および表示装置DSPが奏し得る効果の一部を説明するためのものであって、本実施形態と比較例とで共通する効果を本願発明の範囲から除外するものではない。
【0071】
図10は、比較例に係る製造方法において用いられるフォトマスクPM´の一部を示す概略的な平面図である。なお、この図においては、フォトマスクPM´のうち、副画素SP1の画素開口AP1に対応する部分を示すが、副画素SP2の画素開口AP2に対応する部分および副画素SP3の画素開口AP3に対応する部分も同様である。
【0072】
比較例に係るフォトマスクPM´は、
図10に示すように、マスク開口AP1mの平面形状が、第1方向Xに延びる一対の第1直線部LX1mと第2方向Yに延びる一対の第2直線部LY1mとを有した矩形になっている点で、本実施形態に係るフォトマスクPMと相違している。
【0073】
図11は、比較例に係る製造方法における画素開口AP1を形成する工程を説明するための図である。
図12は、比較例に係る製造方法により製造された表示装置DSP´の一部を示す概略的な断面図である。
比較例に係る製造方法においては、本実施形態に係る製造方法と同様な工程により隔壁6を形成すると、
図10に示したフォトマスクPM´を用いてパターニングされたレジストRG1が無機絶縁層5aの上に配置される。これによれば、主に、矩形状のマスク開口AP1mの角部付近と重なる位置に配置されるレジストRG1は、
図11に示すように、急峻な形状にパターニングされ、傾斜した形状にパターニングされない。このため、当該レジストRG1をマスクとしたパターニングの結果形成されるリブ5の端部51もまた、急峻な形状になってしまう。
【0074】
これによれば、
図12に示すように、表示素子DE1を形成する工程において下電極LE1の上に蒸着される積層膜FL1(有機層OR1、上電極UE1およびキャップ層CP1)が、リブ5の端部51で段切れしてしまう可能性がある。さらに、
図12に示すように、積層膜FL1を覆う封止層SE1が、リブ5の端部51で切れてしまう可能性(つまり、封止層SE1に亀裂等の欠陥が生じてしまう可能性)がある。このような、積層膜FL1の段切れや封止層SE1の欠陥は、表示装置の輝度を低下させたり、表示装置の水分への耐性を低下させる等、表示装置の信頼性を低下させる。
【0075】
これに対し、本実施形態に係る製造方法においては、
図6または
図7に示したフォトマスクPMを用いてレジストRG1をパターニングし、マスク開口AP1mの角部CN1m付近と重なる位置に配置されるレジストRG1を傾斜した形状にパターニングすることができるため(
図8参照)、当該レジストRG1をマスクとしたパターニングの結果形成されるリブ5の端部51を、
図9に示したように、画素開口AP1の全周にわたり傾斜した形状にすることが可能である。これによれば、リブ5の端部51において、積層膜FL1(上電極UE1、有機層OR1およびキャップ層CP1)が段切れしてしまうことや、封止層SE1が切れしてしまうこと(封止層SE1に亀裂等の欠陥が生じてしまうこと)を防ぐことが可能である。つまり、表示装置の信頼性の低下を抑制することができる。
【0076】
以上説明した一実施形態によれば、信頼性の低下を抑制することが可能な表示装置の製造方法および表示装置を提供することが可能である。
【0077】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
DSP…表示装置、LE1,LE2,LE3…下電極、AP1,AP2,AP3…画素開口、OR1,OR2,OR3…有機層、UE1,UE2,UE3…上電極、FL1,FL2,FL3…積層膜、SE1,SE2,SE3…封止層、RG1…レジスト、5…リブ、51…端部、6…隔壁、61…下部、62…上部。