(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175994
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20241212BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20241212BHJP
B60K 1/02 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
F16H57/04 P
H02K7/116
B60K1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094158
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕介
(72)【発明者】
【氏名】奥田 弘一
(72)【発明者】
【氏名】田端 淳
【テーマコード(参考)】
3D235
3J063
5H607
【Fターム(参考)】
3D235AA01
3D235BB45
3D235BB46
3D235CC12
3D235DD13
3D235FF32
3D235HH07
3D235HH31
3J063AA01
3J063AB01
3J063AC01
3J063BA15
3J063XD03
3J063XD16
3J063XD42
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3J063XD72
3J063XE38
3J063XE40
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3J063XH13
5H607AA02
5H607AA12
5H607BB01
5H607BB05
5H607BB14
5H607CC03
5H607CC05
5H607DD03
5H607EE36
5H607GG25
(57)【要約】
【課題】 車両に横方向に加速度が加わった場合に、第1オイルポンプと第2オイルポンプで正常にオイルを吸引する。
【解決手段】 駆動装置であって、左車輪を駆動する第1電動機と、右車輪を駆動する第2電動機と、オイル貯留槽と、前記オイル貯留槽の底面に設けられているとともに前記オイル貯留槽を左オイル貯留槽と右オイル貯留槽に区画している隔壁と、前記左オイル貯留槽の底面に開口する吸入口からオイルを吸入するとともに吸入したオイルを前記第1電動機へ供給する第1オイルポンプと、前記右オイル貯留槽の底面に開口する吸入口からオイルを吸入するとともに吸入したオイルを前記第2電動機へ供給する第2オイルポンプ、を有する。前記隔壁に前記左オイル貯留槽から前記右オイル貯留槽まで伸びる貫通孔が設けられている。横方向に加速度が加わったときに前記貫通孔を閉塞する閉塞器を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動装置であって、
車両の左車輪を駆動する第1電動機と、
前記車両の右車輪を駆動する第2電動機と、
オイル貯留槽と、
前記オイル貯留槽の底面に設けられており、前記オイル貯留槽を左オイル貯留槽と右オイル貯留槽に区画している隔壁と、
前記左オイル貯留槽の底面に開口する吸入口からオイルを吸入し、吸入したオイルを前記第1電動機へ供給する第1オイルポンプと、
前記右オイル貯留槽の底面に開口する吸入口からオイルを吸入し、吸入したオイルを前記第2電動機へ供給する第2オイルポンプ、
を有し、
前記隔壁に前記左オイル貯留槽から前記右オイル貯留槽まで伸びる貫通孔が設けられており、
前記車両に横方向に加速度が加わったときに前記貫通孔を閉塞する閉塞器を有する、
駆動装置。
【請求項2】
前記左オイル貯留槽内のオイルに浸漬されており、前記第1電動機の駆動力を前記左車輪へ伝達する第1ギヤと、
前記右オイル貯留槽内のオイルに浸漬されており、前記第2電動機の駆動力を前記右車輪へ伝達する第2ギヤ、
をさらに有する請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記閉塞器が、前記車両に横方向と前後方向の両方に加速度が加わったときに前記貫通孔を閉塞する、請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記隔壁が、前記オイル貯留槽の横方向における中央に配置されている、請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記隔壁が、前記車両の前後方向に沿って伸びている、請求項1または2に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、駆動装置に関する。
【0002】
特許文献1には、左車輪と右車輪とを別の電動機で駆動する電動車両が開示されている。この電動車両の駆動装置は、第1電動機と第2電動機を有している。第1電動機の駆動力は左車輪へ伝えられ、第2電動機の駆動力は右車輪へ伝えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動車両には、電動機にオイルを供給するオイルポンプが設けられる。電動機にオイルが供給されることで、電動機が冷却される。第1電動機と第2電動機を有する駆動装置においては、第1電動機にオイルを供給する第1オイルポンプと第2電動機にオイルを供給する第2オイルポンプとを独立して設けることができる。このように第1オイルポンプと第2オイルポンプが設けられると、第1電動機に供給されるオイルの流量と第2電動機に供給されるオイルの流量とが個別に制御され得る。したがって、第1電動機の温度と第2電動機の温度とが適切に制御され得る。
【0005】
駆動装置が第1オイルポンプと第2オイルポンプを有する場合、オイル貯留槽の底面には第1オイルポンプの吸入口と第2オイルポンプの吸入口が存在する。電動車両に横方向に加速度が加わると、オイル貯留槽内のオイルが左右のいずれかに偏る。このようにオイル貯留槽内のオイルが偏って分布すると、第1オイルポンプの吸入口と第2オイルポンプの吸入口のいずれかの上部でオイルの液位が低下し、いずれかのオイルポンプでオイルを吸入できなくなる。この場合、第1電動機または第2電動機の冷却が困難となる。本明細書では、車両に横方向に加速度が加わった場合でも、第1オイルポンプと第2オイルポンプの両方が正常にオイルを吸引できる駆動装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する駆動装置は、車両の左車輪を駆動する第1電動機と、前記車両の右車輪を駆動する第2電動機と、オイル貯留槽と、前記オイル貯留槽の底面に設けられているとともに前記オイル貯留槽を左オイル貯留槽と右オイル貯留槽に区画している隔壁と、前記左オイル貯留槽の底面に開口する吸入口からオイルを吸入するとともに吸入したオイルを前記第1電動機へ供給する第1オイルポンプと、前記右オイル貯留槽の底面に開口する吸入口からオイルを吸入するとともに吸入したオイルを前記第2電動機へ供給する第2オイルポンプ、を有する。前記隔壁に前記左オイル貯留槽から前記右オイル貯留槽まで伸びる貫通孔が設けられている。前記車両に横方向に加速度が加わったときに前記貫通孔を閉塞する閉塞器を有する。
【0007】
この駆動装置では、隔壁によってオイル貯留槽が左オイル貯留槽と右オイル貯留槽に区画されている。隔壁には貫通孔が設けられているので、通常時は左オイル貯留槽と右オイル貯留槽の間でオイルが流れることができる。このため、通常時は、左オイル貯留槽と右オイル貯留槽とでほぼ均等にオイルが分布しており、第1オイルポンプと第2オイルポンプの両方が適切にオイルを吸入できる。また、車両に横方向に加速度が加わった場合には、閉塞器によって貫通孔が閉塞される。このため、左オイル貯留槽と右オイル貯留槽の間でオイルが流れることができなくなる。これにより、左オイル貯留槽と右オイル貯留槽の間でオイルが偏って分布することが抑制される。したがって、車両に横方向に加速度が加わった場合でも、左オイル貯留槽と右オイル貯留槽に十分な量のオイルを貯留できる。このため、第1オイルポンプと第2オイルポンプの両方が適切にオイルを吸入できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】左右方向と前後方向に沿う駆動装置の断面図。
【
図3】左右方向に沿う隔壁60とその周辺の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本明細書が開示する駆動装置の付加的な特徴を列記する。
【0010】
駆動装置は、左オイル貯留槽内のオイルに浸漬されているとともに第1電動機の駆動力を左車輪へ伝達する第1ギヤと、右オイル貯留槽内のオイルに浸漬されているとともに第2電動機の駆動力を前記右車輪へ伝達する第2ギヤ、をさらに有していてもよい。
【0011】
この構成によれば、第1ギヤによって左オイル貯留槽内にオイルが散布され、第2ギヤによって右オイル貯留槽内にオイルが散布される。散布されたオイルによって各ギヤが潤滑される。上述したように、車両に横方向に加速度が加わった場合には、貫通孔が閉塞されるので、左オイル貯留槽と右オイル貯留槽でオイルの液位が低下し難い。このため、車両に横方向に加速度が加わった場合でも、各ギヤがオイルを散布できる。
【0012】
閉塞器が、車両に横方向と前後方向の両方に加速度が加わったときに貫通孔を閉塞してもよい。この場合、隔壁の左側面が前後方向に対して傾斜しており、隔壁の右側面が前後方向に対して左側面の傾斜する向きとは反対向きに傾斜していてもよい。
【0013】
この構成によれば、車両が加速または減速しながらコーナーを走行する場合に貫通孔を閉塞できる。
【0014】
隔壁が、オイル貯留槽の横方向における中央に配置されていてもよい。また、隔壁が、車両の前後方向に沿って伸びていてもよい。
【0015】
閉塞器が、貫通孔に対向する位置に配置された閉塞部材を有していてもよい。閉塞部材は、プレートまたはボールであってもよい。閉塞部材は、吊り下げられていてもよい。プレート又はボールは、右オイル貯留槽と左オイル貯留槽のそれぞれに設けられていてもよい。
【実施例0016】
図1に示す実施例の駆動装置10は、電動車両に搭載されている。なお、
図1において矢印FRは車両前方向を示しており、矢印RHは車両右方向を示している。駆動装置10は、電動車両の左後輪90と右後輪92を駆動する。
【0017】
駆動装置10は、ケース12を有している。ケース12の内部には、左電動機室13、右電動機室15及びギヤ室17が設けられている。ギヤ室17は、オイルを貯留するオイル貯留槽としても機能する。ギヤ室17は、隔壁60によって左ギヤ室14と右ギヤ室16に区画されている。隔壁60は前後方向に沿って伸びており、ギヤ室17の横方向の中央に配置されている。左ギヤ室14は左電動機室13の後方に配置されている。右電動機室15は左電動機室13の右側に配置されている。右ギヤ室16は右電動機室15の後方に配置されている。左電動機室13には左電動機20が収容されている。左ギヤ室14には、左電動機20の駆動力を左後輪90に伝えるギヤセットが収容されている。右電動機室15には右電動機40が収容されている。右ギヤ室16には、右電動機40の駆動力を右後輪92に伝えるギヤセットが収容されている。
【0018】
左電動機20は、ロータ20aとステータ20bを有している。ロータ20aは、シャフト20cを有している。ロータ20aは、シャフト20cが電動車両の前後方向に沿って伸びる向きで左電動機室13内に収容されている。ロータ20aは、ケース12に設けられた軸受け(図示省略)によって回転可能に支持されている。シャフト20cは、左電動機室13と左ギヤ室14の間の隔壁を貫通しており、左電動機室13から左ギヤ室14まで伸びている。ステータ20bは、ロータ20aの周囲に配置されている。ステータ20bに電流を流すことで、ロータ20aが回転する。
【0019】
左ギヤ室14内に設けられたギヤセットは、ギヤ22、23、24、25を有する。また、左ギヤ室14内には、カウンタシャフト26と駆動シャフト27が配置されている。カウンタシャフト26は、ロータ20aのシャフト20cと平行に配置されている。カウンタシャフト26は、ケース12に設けられた軸受け(図示省略)によって回転可能に指示されている。駆動シャフト27は、電動車両の左右方向に沿って伸びている。駆動シャフト27は、左ギヤ室14からケース12の左側壁を貫通してケース12の外部まで伸びている。駆動シャフト27の左側の端部には、左後輪90が接続されている。駆動シャフト27は、ケース12に設けられた軸受け(図示省略)によって回転可能に指示されている。ギヤ22は、円柱型の歯車であり、ロータ20aのシャフト20cに固定されている。ギヤ23は、円柱型の歯車であり、カウンタシャフト26に固定されている。ギヤ23は、ギヤ22と係合している。ギヤ24は、円錐台型の歯車であり、カウンタシャフト26に固定されている。ギヤ25は、円錐台型の歯車であり、駆動シャフト27に固定されている。ギヤ25は、ギヤ24と係合している。ギヤ24とギヤ25によってハイポイドギヤが構成されている。
【0020】
左電動機20が駆動することによってロータ20aのシャフト20cが回転すると、ギヤ22が回転し、ギヤ22からギヤ23に駆動力が伝わる。このため、ギヤ23、カウンタシャフト26及びギヤ24が回転する。ギヤ24が回転すると、ギヤ24からギヤ25に駆動力が伝わる。このため、ギヤ25と駆動シャフト27が回転する。その結果、左後輪90が回転する。このように、左ギヤ室14内の各ギヤは、左電動機20の駆動力を左後輪90に伝達する。
【0021】
図2に示すように、左ギヤ室14の底面は左電動機室13の底面よりも下側に配置されている。左ギヤ室14内には、ギヤ25の下部が浸る程度の液位でオイル80が貯留されている。このため、左電動機20の駆動によってギヤ25が回転すると、左ギヤ室14内に貯留されているオイル80がギヤ25によって跳ね上げられる。これによって、左ギヤ室14内にオイルが散布される。左ギヤ室14内に散布されたオイルによって、各ギヤが潤滑される。
【0022】
駆動装置10は、左電動機室13と左ギヤ室14にオイルを循環させる左オイル循環路を有している。左オイル循環路は、オイルポンプ30、オイル供給路31、シャフト流路32、オイル流路33、オイル吸引口34及びオイル吸引路35を有している。オイル供給路31は、ケース12の外部の配管とケース12の外壁内に設けられた流路によって構成されている。ロータ20aのシャフト20cは、円筒形状を有しており、その中心孔によってシャフト流路32が構成されている。シャフト流路32は、シャフト20cの前端から後端まで伸びている。オイル供給路31は、オイルポンプ30の吐出口とシャフト流路32の前端とを接続している。シャフト20cの外周壁には、複数のオイル散布流路32aが設けられている。オイル流路33は、左電動機室13と左ギヤ室14との間の隔壁を貫通している。オイル吸引口34は、左ギヤ室14の底面に開口している。オイル吸引路35は、ケース12の外部の配管によって構成されている。オイル吸引路35は、オイル吸引口34とオイルポンプ30の吸込口とを接続している。
【0023】
オイルポンプ30が動作すると、左ギヤ室14内に貯留されているオイル80がオイル吸引口34内に吸い込まれる。オイル吸引口34内に吸い込まれたオイルは、オイル吸引路35、オイルポンプ30及びオイル供給路31を通ってシャフト流路32へ供給される。シャフト流路32内では、オイルがシャフト流路32の前端から後端に向かって流れる。シャフト流路32内を後端まで流れたオイルは、左ギヤ室14内に吐出される。また、シャフト流路32内を流れるオイルの一部は、オイル散布流路32aから左電動機室13内に散布される。シャフト流路32内を流れるオイル及び左電動機室13内に散布されるオイルによって左電動機20が冷却される。また、左電動機室13内に散布されるオイルによって、ロータ20aが潤滑される。左電動機室13内に散布されたオイルは、オイル流路33を通って左ギヤ室14へ流れる。このように、オイルポンプ30が動作することで、左オイル循環路内にオイルが循環し、左電動機20が冷却される。
【0024】
右電動機室15及び右ギヤ室16内の構造は、左電動機室13及び左ギヤ室14内の構造を左右反転した構造と等しい。右電動機40は、ロータ40aとステータ40bを有している。ロータ40aは、シャフト40cを有している。ロータ40aは、シャフト40cが電動車両の前後方向に沿って伸びる向きで右電動機室15内に収容されている。ロータ40aは、ケース12に設けられた軸受け(図示省略)によって回転可能に支持されている。シャフト40cは、右電動機室15と右ギヤ室16の間の隔壁を貫通しており、右電動機室15から右ギヤ室16まで伸びている。ステータ40bは、ロータ40aの周囲に配置されている。ステータ40bに電流を流すことで、ロータ40aが回転する。
【0025】
右ギヤ室16内に設けられたギヤセットは、ギヤ42、43、44、45を有する。また、右ギヤ室16内には、カウンタシャフト46と駆動シャフト47が配置されている。カウンタシャフト46は、ロータ40aのシャフト40cと平行に配置されている。カウンタシャフト46は、ケース12に設けられた軸受け(図示省略)によって回転可能に指示されている。駆動シャフト47は、電動車両の左右方向に沿って伸びている。駆動シャフト47は、右ギヤ室16からケース12の右側壁を貫通してケース12の外部まで伸びている。駆動シャフト47の右側の端部には、右後輪92が接続されている。駆動シャフト47は、ケース12に設けられた軸受け(図示省略)によって回転可能に指示されている。ギヤ42は、円柱型の歯車であり、ロータ40aのシャフト40cに固定されている。ギヤ43は、円柱型の歯車であり、カウンタシャフト46に固定されている。ギヤ43は、ギヤ42と係合している。ギヤ44は、円錐型の歯車であり、カウンタシャフト46に固定されている。ギヤ45は、円錐型の歯車であり、駆動シャフト47に固定されている。ギヤ45は、ギヤ44と係合している。ギヤ44とギヤ45によってハイポイドギヤが構成されている。
【0026】
右電動機40が駆動することでシャフト40cが回転すると、シャフト40cからギヤ42、43、44、45を介して駆動シャフト47に駆動力が伝わる。これにより、駆動シャフト47が回転し、右後輪92が回転する。このように、右ギヤ室16内の各ギヤは、右電動機40の駆動力を右後輪92に伝達する。
【0027】
図2と同様に、右ギヤ室16の底面は右電動機室15の底面よりも下側に配置されている。右ギヤ室16内には、ギヤ45の下部が浸る程度の液位でオイルが貯留されている。このため、右電動機40の駆動によってギヤ45が回転すると、右ギヤ室16内に貯留されているオイルがギヤ45によって跳ね上げられる。これによって、右ギヤ室16内にオイルが散布される。右ギヤ室16内に散布されたオイルによって、各ギヤが潤滑される。
【0028】
駆動装置10は、右電動機室15と右ギヤ室16にオイルを循環させる右オイル循環路を有している。右オイル循環路は、オイルポンプ50、オイル供給路51、シャフト流路52、オイル流路53、オイル吸引口54及びオイル吸引路55を有している。オイル供給路51は、ケース12の外部の配管とケース12の外壁内に設けられた流路によって構成されている。ロータ40aのシャフト40cは、円筒形状を有しており、その中心孔によってシャフト流路52が構成されている。シャフト流路52は、シャフト40cの前端から後端まで伸びている。オイル供給路51は、オイルポンプ50の吐出口とシャフト流路52の前端とを接続している。シャフト40cの外周壁には、複数のオイル散布流路52aが設けられている。オイル流路53は、右電動機室15と右ギヤ室16との間の隔壁を貫通している。オイル吸引口54は、右ギヤ室16の底面に開口している。オイル吸引路55は、ケース12の外部の配管によって構成されている。オイル吸引路55は、オイル吸引口54とオイルポンプ50の吸込口とを接続している。
【0029】
オイルポンプ50が動作すると、右ギヤ室16内に貯留されているオイルが、オイル吸引口54、オイル吸引路55、オイルポンプ50及びオイル供給路51を通ってシャフト流路52へ供給される。シャフト流路52内を前端から後端まで流れたオイルは、右ギヤ室16内に吐出される。また、シャフト流路52内を流れるオイルの一部は、オイル散布流路52aから右電動機室15内に散布される。シャフト流路52内を流れるオイル及び右電動機室15内に散布されるオイルによって右電動機40が冷却される。また、右電動機室15内に散布されるオイルによって、ロータ40aが潤滑される。右電動機室15内に散布されたオイルは、オイル流路53を通って右ギヤ室16へ流れる。このように、オイルポンプ50が動作することで、右オイル循環路内にオイルが循環し、右電動機40が冷却される。
【0030】
隔壁60には、貫通孔62が設けられている。貫通孔62は、左ギヤ室14から右ギヤ室16まで伸びている。したがって、貫通孔62を通って左ギヤ室14と右ギヤ室16の間でオイルが流れることができる。
【0031】
図3は、隔壁60の断面を示している。
図3に示すように、隔壁60はギヤ室17の底面に立設されている。隔壁60とギヤ室17の天井面の間には間隔が設けられている。したがって、左ギヤ室14と右ギヤ室16は隔壁60の上部で繋がっている。但し、隔壁60がギヤ室17の天井面まで伸びていてもよい。隔壁60は、左側板60aと右側板60bによって構成されている。左側板60aの上端と右側板60bの上端は互いに接続されている。左側板60aと右側板60bの間(すなわち、隔壁60の内部)に空間64が設けられている。左側板60aに貫通孔62aが設けられており、右側板60bに貫通孔62bが設けられている。貫通孔62a、62bによって、隔壁60を左右に貫通する貫通孔62が構成されている。隔壁60の内部の空間64にバッフルプレート66が配置されている。バッフルプレート66は、隔壁60の上端から吊り下げられている。バッフルプレート66は、車両の前後方向に沿って伸びている。バッフルプレート66は、貫通孔62a、62bの間に配置されている。すなわち、バッフルプレート66は、貫通孔62a、62bに対向する位置に配置されている。通常時(すなわち、車両に加速度が加わっていない状態)では、バッフルプレート66は貫通孔62a、62bを塞いでいない。バッフルプレート66は、隔壁60の上端を中心に左右に揺動することができる。
【0032】
図3の線L1は、通常時(すなわち、車両に加速度が加わっていない状態)のオイルの液面の位置を示している。オイルの液面は、貫通孔62a、62bよりも上側に位置している。なお、
図3ではオイルの液面が隔壁60の上端よりも下側に位置しているが、オイルの液面が隔壁60の上端よりも上側に位置していてもよい。通常時は、バッフルプレート66が貫通孔62a、62bを塞いでいないので、左ギヤ室14と右ギヤ室16の間でオイルの液位が等しい。
【0033】
車両がカーブを走行している場合などに、車両に横方向に加速度が加わる。オイルに横方向に加速度が加わると、ギヤ室17内のオイルの分布が変化する。
図3の線L2、L3は、車両に右方向に加速度が加わった場合のオイルの液面を示している。なお、線L2は比較例としてバッフルプレート66が存在しない場合を示しており、線L3はバッフルプレート66が存在する場合を示している。
【0034】
バッフルプレート66が存在しない場合には、貫通孔62が閉塞されない。したがって、オイルに右方向に加速度が加わると、貫通孔62を介して左ギヤ室14から右ギヤ室16へオイルが流れる。したがって、
図3の線L2に示すように、右ギヤ室16のオイルの液位が上昇し、左ギヤ室14のオイルの液位が低下する。このため、
図3では、オイル吸引口34がオイルから露出している。このようにオイル吸引口34が露出すると、オイルポンプ30で左電動機20にオイルを供給できず、左電動機20の冷却が困難となる。また、左ギヤ室14のオイルの液位が低下すると、ギヤ25の全体がオイルから露出し、ギヤ25によってオイルを散布することができなくなる。これにより、左ギヤ室14内のギヤの潤滑性が低下する。同様に、オイルに左方向に加速度が加わった場合には、右電動機40の冷却が困難となり、右ギヤ室16内のギヤの潤滑性が低下する。
【0035】
これに対し、バッフルプレート66が存在する場合(すなわち、実施例の場合)には、車両に右方向に加速度が加わるとバッフルプレート66が右側に揺動して貫通孔62bを塞ぐ。このため、左ギヤ室14から右ギヤ室16へオイルが流れることが阻止される。これにより、左ギヤ室14のオイルの液位の減少が防止される。このため、
図3の線L3に示すように、オイル吸引口34がオイルから露出することが防止される。このため、オイルポンプ30によって左電動機20にオイルを供給でき、左電動機20を好適に冷却できる。また、左ギヤ室のオイルの液位の減少が防止されるので、ギヤ25によって左ギヤ室14内にオイルを散布することができる。すなわち、左ギヤ室14内のギヤの潤滑性の低下が生じない。同様に、オイルに左方向に加速度が加わった場合には、バッフルプレート66が左側に揺動して貫通孔62aを塞ぐ。このため、オイルポンプ50によって右電動機40にオイルを供給でき、右電動機40を好適に冷却できる。また、右ギヤ室16内のギヤの潤滑性の低下が生じない。
【0036】
以上に説明したように、実施例の駆動装置10によれば、車両に横方向に加速度が加わった場合でも、オイルポンプ30とオイルポンプ50の両方が適切にオイルを吸入でき、左電動機20と右電動機40を適切に冷却できる。
【0037】
バッフルプレート66は、横方向に加速度が加わったときに貫通孔62を閉塞する閉塞器の一例である。横方向に加速度が加わったときに貫通孔62を閉塞できれば、閉塞器はどのような構成であってもよい。
図4は、隔壁60と閉塞器の変形例を示している。
【0038】
図4(a)では、隔壁60が一枚の板により構成されている。隔壁60を貫通する貫通孔62の左側にバッフルプレート66aが配置されており、貫通孔62の右側にバッフルプレート66bが配置されている。右方向に加速度が加わった場合にはバッフルプレート66aが右側に揺動して貫通孔62を塞ぎ、左方向に加速度が加わった場合にはバッフルプレート66bが左側に揺動して貫通孔62を塞ぐ。
【0039】
図4(b)では、隔壁60の内部の空間64に2つのバッフルプレート66a、66bが配置されている。右方向に加速度が加わった場合にはバッフルプレート66bが右側に揺動して貫通孔62bを塞ぎ、左方向に加速度が加わった場合にはバッフルプレート66aが左側に揺動して貫通孔62aを塞ぐ。
【0040】
図4(c)では、隔壁60が一枚の板により構成されている。隔壁60を貫通する貫通孔62の左側にボール66cが配置されており、貫通孔62の右側にボール66dが配置されている。各ボール66c、66dは、ガイドレールによって左右に移動可能とされている。通常時は、各ボール66c、66dは、隔壁60から離れた位置に配置されており、貫通孔62を塞いでいない。右方向に加速度が加わった場合にはボール66cが右側に移動して貫通孔62を塞ぎ、左方向に加速度が加わった場合にはボール66dが左側に移動して貫通孔62を塞ぐ。
【0041】
図5は、隔壁60と閉塞器の変形例を示している。
図5では、左側板60aが前側ほど左側に変位するように配置されており、右側板60bが前側ほど右側に変位するように配置されている。隔壁60の内部の空間64に2つのバッフルプレート66a、66bが配置されている。バッフルプレート66aは貫通孔62aに対向しており、バッフルプレート66bは貫通孔62bに対向している。バッフルプレート66aの中心は貫通孔62aの中心よりも前側に位置しており、バッフルプレート66bの中心は貫通孔62bの中心よりも前側に位置している。バッフルプレート66bは右斜め後方に加速度が加わったとき(すなわち、右方向と後方向の両方に加速度が加わったとき)に貫通孔62bを塞ぎ、バッフルプレート66aは左斜め後方に加速度が加わったとき(すなわち、左方向と後方向の両方に加速度が加わったとき)に貫通孔62aを塞ぐ。このように、
図5の構成では、横方向と後方向に同時に加速度が加わったときに貫通孔62が塞がれる。オイル吸引口34、54がギヤ室17の前端に近い位置に配置されている場合には、オイルに後方向に加速度が加わったとき(すなわち、車両が加速しているとき)にオイル吸引口34、54がオイルから露出し易い。このような場合には、
図5の構成を採用し、横方向と後方向に同時に加速度が加わったときに貫通孔62が塞がれるようにしてもよい。また、
図5の構成を前後反転することで、オイルに対して横方向と前方向に同時に加速度が加わったときに貫通孔62が塞がれるようにすることもできる。
【0042】
なお、上述した実施例では、ギヤ室17がオイルポンプ30、50に供給されるオイルを貯留するオイル貯留槽として機能した。しかしながら、ギヤ室17とは別にオイル貯留槽が設けられていてもよい。
【0043】
また、上述した実施例では、オイルポンプによって吐出されるオイルがロータのシャフトの内部を流れることで電動機が冷却された。しかしながら、電動機を冷却できればオイルポンプから電動機にどのような形態でオイルが供給されてもよい。例えば、オイル供給路からロータの外周面に向かってオイルが吐出されてもよい。
【0044】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
10:駆動装置、17:ギヤ室、20:左電動機、30:オイルポンプ、34:オイル吸引口、40:右電動機、50:オイルポンプ、54:オイル吸引口、60:隔壁、62:貫通孔、66:バッフルプレート