(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175995
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】通信装置及び通信制御方法
(51)【国際特許分類】
H04W 48/18 20090101AFI20241212BHJP
H04W 12/06 20210101ALI20241212BHJP
H04W 4/44 20180101ALI20241212BHJP
【FI】
H04W48/18
H04W12/06
H04W4/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094159
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹岡 航司
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
5K067EE25
5K067HH36
(57)【要約】
【課題】車載端末と通信装置との間の通信の信頼性を確保可能とする。
【解決手段】車載端末と通信する通信装置であって、車載端末と通信装置との通信に利用可能な複数のアクセス網の中から選択されたアクセス網上に確立されたトンネルを用いて通信装置が車載端末から受信する認証情報に基づく認証を行うことと、認証が成功した場合に、車載端末から受信されるデータのルーティングを行うこととを実行する制御部を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載端末と通信する通信装置であって、
前記車載端末と前記通信装置との通信に利用可能な複数のアクセス網の中から選択されたアクセス網上に確立されたトンネルを用いて前記通信装置が前記車載端末から受信する認証情報に基づく認証を行うことと、
前記認証が成功した場合に、前記車載端末から受信されるデータのルーティングを行うことと
を実行する制御部
を含む通信装置。
【請求項2】
前記認証情報に基づく認証は、前記複数のアクセス網に関して共通な手続きである
請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記認証情報が、前記車載端末が前記複数のアクセス網と異なるセルラー網を介して前記通信装置にアクセスし、前記通信装置が前記セルラー網のコア網の一部として動作する場合に使用される認証情報である
請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
前記通信装置が、前記セルラー網である第1のセルラー網と異なる第2のセルラー網を経由する第1のアクセス網と、テザリングによって利用される前記第1のセルラー網以外の網を経由する第2のアクセス網とを含む前記複数のアクセス網の中から選択されたアクセス網を用いて前記認証情報を受信する
請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
車載端末と通信する通信装置が、
前記車載端末と前記通信装置との通信に利用可能な複数のアクセス網の中から選択されたアクセス網上に確立されたトンネルを用いて前記通信装置が前記車載端末から受信する認証情報に基づく認証を行うことと、
前記認証が成功した場合に、前記車載端末から受信されるデータのルーティングを行うことと、
を含む通信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信装置及び通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載端末がインターネットを介してデータセンタに車載端末の現在位置データを含むリクエストデータを送信し、データセンタでは、ユーザ認証後に最新情報のうちユーザの現在位置に合致する情報のみを抽出して車載端末に供給するものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、車載端末と通信装置との間の通信の信頼性を確保可能な通信装置及び通信制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の態様の一つは、車載端末と通信する通信装置であって、前記車載端末と前記通信装置との通信に利用可能な複数のアクセス網の中から選択されたアクセス網上に確立されたトンネルを用いて前記通信装置が前記車載端末から受信する認証情報に基づく認証を行うことと、前記認証が成功した場合に、前記車載端末から受信されるデータのルーティングを行うこととを実行する制御部を含む通信装置である。
【0006】
本開示の他の態様は、上記通信装置による通信制御方法、コンピュータを上記通信装置として動作させるプログラム、プログラムを記録した記録媒体等を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示の態様の一つによれば、車載端末と通信装置との間の通信の信頼性を確保可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る通信システムの一例を示す図である。
【
図3】
図3Aは、通信装置の構成例を示し、
図3Bは、スマートデバイスの構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、DCMの処理例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、通信システムにおける動作例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
コネクティッドカー及び自動運転車両などの通信機能を備える車両に係る事業者(例えば、車両の製造会社、販売会社、及びレンタル会社など)は、車両に関するデータ(例えば、車両の運転に関するデータ、及び車両の通信に関するデータなど)の収集を所望することがある。このため、事業者の通信装置(通信設備)が、車両に搭載された車載端末から送信される所定のデータ(IoTデータ)をネットワーク経由で受信することが考えられている。
【0010】
車載端末と通信装置とを結ぶネットワークとして、車両のユーザが契約した移動体通信事業者(MNO:通信キャリアともいう)のネットワーク(通信キャリア網と呼ばれる)を用いることが考えられる。但し、通信装置へのアクセスは、上述した通信キャリア網のほかに、他の通信キャリアの通信キャリア網及びインターネットを経由するケース、或いは、テザリングを用いて無線LAN及びインターネットを経由するケースなどが考えられる。通信装置へのアクセスに用いるアクセス網を複数のアクセス網からユーザが選択できるようにすれば、ユーザにとって有利な条件で車両に関するデータを通信装置へ送信することが可能となるため、車両に関するデータの収集に対するユーザの協力を得やすくなる。一方、事業者にとってはより多くのデータ収集が可能となる。
【0011】
ところが、車載端末から通信装置までのネットワークの経路にインターネットが含まれるケースでは、通信キャリア網のみを経路に用いる場合に比べて通信の信頼性が低下する問題があった。また、車載端末から通信装置へのアクセス方法の相違によって、車載端末と通信装置とがやりとりする情報、特に車載端末の認証に関する情報が異なるようでは、車載端末側の構成や具備すべき情報が複雑となる問題もあった。
【0012】
以下に説明する実施形態は、上記した問題を解決可能な通信システムについて説明する。すなわち、通信装置へのアクセス方法をユーザに委ねても通信の信頼性(セキュアな通信)を確保することができる一方、アクセス方法を選択可能とすることによる車載端末の構成の複雑化を抑えることが可能な通信システムについて説明する。
【0013】
以下、図面に基づいて、本開示の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の構成に限定されない。
図1は、実施形態に係る通信システムの一例を示す図である。通信システムは、車両に搭載された車載端末の一例であるDCM(Data Communication Module)10と、通信装置20とを含む。車載端末は、DCM以
外の情報処理装置であってもよい。車載端末は、据え置きタイプでも可搬性を有するタイプでもよい。
【0014】
DCM10は、車載装置(例えば、カーナビゲーション装置、ドライブレコーダ、及び、ECU(Electronic Control Unit)等)から、車両に関する情報(位置、車速等の車
両の運転に関するデータを収集することができる。また、DCM10は、車両(車載端末)の通信に関するデータを収集することもできる。DCM10から送信されるデータ(ユーザデータ)は、通信装置20を経由して所定の通信相手(例えばサーバ51、或いはサーバ52)へ送られる。もっとも、ユーザデータの宛先は通信装置20であってもよい。
【0015】
DCM10が通信装置20との通信に用いるデフォルトのネットワークとして、車両のユーザが契約した通信キャリア網2が用いられる。通信キャリア網はMNO(Mobile Network Operator)網であっても、MVNO(Mobile Virtual Network Operator)網であってもよい。通信キャリア網2は、無線アクセス網(基地局)とコア網とを有する。通信キャリア網2が使用される場合、通信装置10は、通信キャリア網2のコア網の一部を構成する。通信キャリア網2におけるDCM10の認証には、DCM10が有する第1SIM(Subscriber Identity Module)105に記憶された認証情報が用いられる。
【0016】
本実施形態では、ユーザは、通信キャリア網2以外のアクセス網として、通信キャリア網2のMNO又はMVNO以外のMNO又はMVNOの網(
図1ではMVNO網3を例示)を使用できる。この場合、MVNO網3におけるDCM10の認証には、第2SIM106)に記憶された認証情報が使用される。通信キャリア網2及びMVNO網3の夫々は、4G(LTE)網であっても、5G網であっても、6G網であってもよい。
【0017】
また、ユーザは、テザリング用デバイス13を用いたテザリングにより、無線LAN(Wi-Fi)4をアクセス網として用いることもできる。テザリングは、Wi-Fiテザリングでも、Bluetooth(登録商標)テザリングでも、USB(Universal serial Bus)
テザリングでもよい。アクセス網としてMVNO網3或いは無線LAN4が用いられる場合、DCM10から通信装置20までの経路は、インターネット1を経由する。このように、ユーザは、通信装置20へのアクセスに関し、通信キャリア網2以外に、MVNO網3或いは無線LAN4といった複数のアクセス網からユーザが使用を所望するアクセス網を選択することができる。すなわち、DCM10は、複数のアクセス方法からユーザが選択したアクセス方法を用いて通信装置20にアクセスすることができる。通信キャリア網はセルラー網(第1のセルラー網)の一例である。MVNO網3は、第2のセルラー網、及び第2のセルラー網を経由する第1のアクセス網の一例である。無線LAN4は、テザリングによって利用される第1のセルラー網以外の網、及び当該網を経由する第2のアクセス網の一例である。
【0018】
通信装置20は、1つのコンピュータ又は2以上のコンピュータの集合(クラウド)によって構成することができる。通信装置20は、インターネット1と接続されたゲートウェイ(GW)21を有する。GW21は、インターネットなどの非3GPP(登録商標)無線アクセス(Untrusted Non-3GPP(登録商標) IP Access)を収容するゲートウェイである。例えば、通信装置が4Gに適合する場合はePDG(Evolved Packet Data Gateway)であり、5Gに適合する場合はN3IWF(non-3GPP(登録商標) Interworking Function)であり、3Gに適合する場合はPDGである。GW21は、インターネット1か
ら受信される信号形式を、通信装置20内で使用される、通信キャリア網2のコア網に適合したフォーマットに変換することができる。インターネット1は、通信キャリア網2(3GPP(登録商標)無線アクセス)に比べて通信の信頼性(セキュリティ)が劣る。このため、DCM10が通信キャリア網2以外のアクセス網を用いて通信装置20と通信する場合、DCM10とGW21との間には、論理的なトンネルが確立される。トンネルは、例えば、IPsecトンネルモードによって確立されるIPsecトンネルである。但し、トンネルはIPsecトンネル以外であってもよい。
【0019】
通信装置20は、認証部22と、ルーティング部23とを備える。認証部22は、トンネルが確立された後に、DCM10からトンネルを通じて送られてくる認証情報をGW21経由で受け取り、DCM10(ユーザ)の認証を行う。認証情報として、本実施形態では、第1SIM105に格納された、通信キャリア網2における認証用の認証情報が用いられる。但し、認証情報は、第1SIM105以外の、DCM10のセキュアな記憶領域に記憶されたものであってもよい。通信装置20がLTE(4G)のコア網の一部として動作する場合には、認証部22は、認証処理を行うHSS(Home Subscriber Server)として動作する。但し、認証部22は、HSSとAAA(Authentication Authorization Accounting)の組み合わせとして動作してもよい。通信装置20が5Gのコア網の一部と
して動作する場合には、認証部21はAUSF(Authentication Server Function)、すなわち、UDM(Unified Data Management)に格納されている加入者情報に対して加入
者/UE(DCM10)を認証するネットワーク機能として動作する。認証方式として、
例えば、EPA-AKAが適用される。但し、認証方式はこれ以外であってもよい。
【0020】
DCM10が通信キャリア網2以外のアクセス網(アクセス回線)を用いて通信装置20にアクセスする場合に用いられる認証情報は、MVNO網3とテザリングのいずれが用いられる場合であっても共通の認証情報が使用される。本実施形態では、複数のアクセス網に関して共通の認証情報として、第1SIM105に記憶された認証情報(通信キャリア網2用の認証情報)が使用される。
【0021】
ルーティング部23は、DCM10からのユーザデータの宛先(通信相手:例えば、サ
ーバ51又はサーバ52)への経路の設定及び判定を行う。ルーティング部23とDCM10との間には、通信経路(セッション)が確立される。ルーティング部23は、通信装置20がLTE(4G)のコア網の一部として動作する場合、PGW(Packet data network Gateway)として動作する。通信装置20が5Gのコア網の一部として動作する場合
には、ルーティング部23は、UPF(User Plane Function)として動作する。
【0022】
DCM10がサーバ51又はサーバ52と通信する場合、ルーティング部23によって、サーバ51又はサーバ52宛のデータは必ずトンネルを通って通信装置20に到達し、ルーティング部23を通じてサーバ51又はサーバ52へ送信される。サーバ51又はサーバ52から送信されるDCM10宛のデータは、必ず通信装置20を経由し、トンネルを通じて転送される。
【0023】
通信キャリア網2を経由するDCM10と通信装置20との間の経路(第1のルートという)を用いて通信が行われている状態において、DCM10とGW21との間の通信経路(第2のルートという)が確立されてもよい。すなわち、第1のルートと第2のルートとは並列に利用されてもよい。
【0024】
図2は、DCM10の構成例を示す図である。DCM10は、CPU101と、メモリ102と、補助記憶装置103と、無線通信部104と、第1SIM105と、第2SIM106とを備える。補助記憶装置103は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、及
び、SSD(Solid State Drive)、EEPROM等である。補助記憶装置103は、例
えば、OS(Operation System)と、複数種類のアプリケーションプログラム(アプリ)とが記憶される。アプリは、通信制御プログラムなどの様々な機能を実現するためのプログラムを含む。メモリ102は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random
Access Memory)のような半導体メモリを含む。メモリ102および補助記憶装置103(これらをまとめて記憶装置とも表記する)は、それぞれ、コンピュータで読み取り可能な記録媒体の一例である。
【0025】
無線通信部104は、DCE(Data Circuit terminating Equipment)を含み、セルラー網(LTE、4G、5G又は6Gなど)、Bluetooth(登録商標)、無線LAN(IEEE 802.11シリーズ、Wi-Fi含む)などの無線通信方式に従って外部の装置と通信を行う。外部の装置は、通信キャリア網の場合は基地局であり、無線LAN(Wi-Fi)の場合は、アクセスポイントであり、Bluetooth(登録商標)の場合は、Bluetooth(登録商標)対応の通信機器である。
【0026】
第1SIM105及び第2SIM106の夫々は、eUICCである。第1SIM105は、通信キャリア網2用のSIMであり、第2SIM106は、MVNO網3用のSIMである。第1SIM105及び第2SIM106は、チップ型でもカード型でもよい。SIMがカード型である場合には、DCM10は、SIMスロット及びSIMカードリーダ等を備える。
【0027】
また、DCM10は、USBコネクタ107と、入力装置108と、ディスプレイ109とを含む。USBコネクタ107には、USBドングル13Bが接続可能である。USBコネクタ107には、USBケーブルを介してスマートデバイス13Aを接続することもできる。USBドングル13B及びスマートデバイス13Aは、テザリング用デバイス13の例である。スマートデバイス13Aは、スマートフォン或いはタブレット端末などである。
【0028】
入力装置108は、ボタン、キー、タッチパネルなどであり、情報の入力及び設定等に用いられる。ディスプレイ109は情報の表示に使用される。入力装置108は、ディス
プレイ109に表示されるユーザインタフェースであってもよい。
【0029】
CPU101は、記憶装置に記憶された様々なプログラムを実行することにより、DCM10の動作(データ収集、収集されたデータの受け取り、及びデータの送受信など)に関する様々な処理を実行する。CPU101は、制御部、コントローラ、又はプロセッサの一例である。
【0030】
図3は、通信装置20の構成例を示し、
図3Bは、スマートデバイス13Aの構成例を示す図である。
図3Aにおいて、通信装置20は、一例として、プロセッサ31、記憶装置32、通信インタフェース(通信IF)33、入力装置34、及びディスプレイ35を有する。
【0031】
記憶装置32は、様々なプログラム及びデータを記憶する。プロセッサ31は、制御部の一例であり、CPU、DSP、GPU或いはこれらの組み合わせなどである。プロセッサ31は、記憶装置32に記憶されたプログラムを実行し、記憶装置32に記憶されたデータ等を用いた演算又は加工など、様々な処理を行う。プログラムの実行によって、通信装置20は、GW21、認証部22及びルーティング部23を備えた装置として動作する。プロセッサ31は、GW21、認証部22及びルーティング部23としての動作を行う制御部に相当する。通信IF33は、通信キャリア網2との通信インタフェース回路と、インターネット1との通信インタフェース回路とを含み、通信に係る信号の送受信、フォーマット(プロトコル)変換などを行う。入力装置34は、情報の入力及び設定等に使用されるボタン、キー、タッチパネルなどである。ディスプレイ35は情報の表示に使用される。
【0032】
図3Bにおいて、スマートデバイス13Aは、一例として、プロセッサ131、記憶装置132、入力装置134、及びディスプレイ135を有する。これらは、性能や種類の違いはあるが、プロセッサ31、記憶装置32、入力装置34、及びディスプレイ35と同様の機能を有する。無線通信インタフェース(無線通信IF)133は、通信キャリア網、Bluetooth(登録商標)、及び無線LAN(Wi-Fi)のそれぞれに対する無線ア
クセスを可能とする通信インタフェース回路を含む。プロセッサ131は、記憶装置132に記憶されたプログラムを実行することによって様々な処理を行うことができる。
【0033】
図4は、DCM10の処理例を示すフローチャートである。
図5は、通信システムにおける動作例を示すシーケンス図である。
図4に示すフローチャートは、例えば、車両のユーザがDCM10を操作して通信装置20へのアクセス回線(アクセス方法)の選択画面をディスプレイ109に呼び出した場合に処理が開始される。
【0034】
ステップS01では、DCM10のCPU101は、ユーザが入力装置108を用いて入力した、アクセス回線の選択結果の確定入力を受け付ける。ステップS02では、CPU101は、選択結果が通信キャリア網2か否かが判定される。通信キャリア網2が選択されたと判定される場合には処理がステップS07に進み、そうでない場合には、処理がステップS03に進む。
【0035】
ステップS07に処理が進んだ場合には、CPU101は、通信キャリア網2を介した通信装置20との通信路の確立処理を行う。通信路の確立にあたっては、DCM10は、通信相手の情報を含んだ接続要求を通信キャリア網2へ送信する。
【0036】
第1SIM105に記憶された情報(契約者情報及び認証情報など)を用いて、通信キャリア網2におけるDCM10の位置登録及び認証等が行われる。CPU101は、認証のため、第1SIM105に記憶された認証情報を読み出して通信キャリア網2へ送信す
る処理を行う。通信キャリア網2は、認証部22と異なる認証部を備え、この認証部によって認証情報を用いた認証が行われる。認証部22は、通信キャリア網2以外のアクセス回線が使用される場合の認証を行うために使用される。
【0037】
DCM10と通信装置20と通信路の確立において、通信キャリア網2における認証が成功すると、通信キャリア網2は、通信装置20におけるルーティング部23とDCM10とを結ぶ通信路を確立するための制御を行う。当該通信路の確立において、ルーティング部23は、DCM10の通信相手(例えば、サーバ51又は52)とのルーティングを行う。ルーティングによって、DCM10と通信相手との間で通信装置20(ルーティング部23)を通じた通信(データの送受信)が可能な状態となる。
【0038】
ステップS03に処理が進んだ場合には、CPU101は、GW21との接続処理を行う。例えば、アクセス回線の選択結果としてMVNO網3が選択された場合には、DCM10は、第2SIM106に記憶された情報(契約者情報及び認証情報など)を用いてMVNO網3におけるDCM10の位置登録及び認証等が行われる。CPU101は、認証のため、第2SIM106に記憶された認証情報を読み出して通信キャリア網2へ送信する処理を行う。MVNO網3は、認証が成功すると、DCM10の通信相手であるGW21へのルーティングを行い、DCM10とGW21との間の通信路を確立する(
図5<1>)。
【0039】
アクセス回線の選択結果としてテザリング用デバイス13(スマートデバイス13A又はUSBドングル13B)を用いたテザリングが選択された場合には、ユーザは、DCM10とテザリング用デバイス13とをUSBコネクタ107を用いて接続する処理を行う。或いは、DCM10とスマートデバイス13Aとを無線通信(Bluetooth(登録商標)
又はWi-Fi)でペアリングする設定が行われる。DCM10は、GW21向けのデータをテザリング用デバイス13に送る。テザリング用デバイス13は、モバイルルーターのような動作をして、所定の無線LANのアクセスポイントにアクセスし、無線LAN4及びインターネットを介してデータをGW21に送信する。このようにして、DCM10とGW21とが無線LAN4及びインターネット1を介して通信可能となる(
図5<1>)。
【0040】
ステップS04では、CPU101は、DCM10とGW21との間でIPsecトンネルモードによるトンネル(IPsecトンネル)を確立する処理を行う。例えば、DCM10が端末、GW21がVPN機器に相当するリモートアクセスVPNを構築する(
図5<2>)。なお、トンネルは、IPsecの代わりに、SSL/TLSを用いることが
考えられる。
【0041】
トンネルが確立されると、CPU101は、第1SIM105から認証情報を読み出して、GW21へ送信する処理を行う(
図5<3>)。認証情報は、トンネルを通じてGW21に転送される。GW21は、認証情報を認証部22に転送する。認証部22は、認証情報を用いて認証処理を行う(
図5<4>)。
【0042】
また、認証が成功すると、ルーティング部23が、認証情報とともに(別のタイミングでもよい)DCM23から送信される通信相手(サーバ51又は52)の情報を用いて、両者間を送受信されるデータに対するルーティングを行う(
図5<5>)。ルーティングの結果、ルーティング部23は、DCM10からのデータを通信相手へ向けて送り、通信相手からのデータをDCM10へ向けて送信する状態となる。すなわち、DCM10が通信相手との間で通信可能な状態となる(
図5<6>)。
【0043】
その後、通信装置20からDCM10へ認証成功(通信可能)を知らせる情報が送信さ
れ(
図5<7>)、DCM10で受信される(ステップS06)。その後、DCM10から送信される車両に関するデータ等のユーザデータは、トンネルを通じて通信装置20に達し、通信装置20のルーティング部23を経て通信相手に受信される(
図5<8>及び<9>)。また、通信相手からのDCM10宛のデータは、ルーティング部23を経由し、トンネルを通じてDCM10に受信される(
図5<10>及び<11>)。
【0044】
実施形態に係る通信システムによれば、DCM10(車載端末)と通信装置20との間に確立されたトンネルを用いて認証情報がDCM10から通信装置20に受け渡される。このため、DCM10と通信装置20との間に存在するアクセス網の信頼性を不問にできる。すなわち、DCM10と通信装置20との間の通信は、トンネル(VPN接続)によって暗号化された状態で行われる。これによって、インターネット1を経由するルートであっても通信の信頼性が確保される。これにより、ユーザがアクセス回線を柔軟に選択することができる。
【0045】
また、通信キャリア網2以外のアクセス回線が用いられる場合、アクセス回線の選択結果に関わらず、共通の認証情報を用いた認証が通信装置20の認証部22で行われる。このアクセス回線(アクセス網)間で共通な認証情報は、通信キャリア網2を利用する場合の認証情報である。これによって、DCM10(ユーザ(加入者))を通信キャリア網2利用の場合と同様の手法で認証できるため、DCM10(車載端末)の構成の複雑化が抑えられる。
【0046】
また、DCM10は、通信装置20から届いたデータのみを受信し、通信装置20以外から届いたデータはリジェクトする構成ないし設定とすることができる。このような構成とすれば、DCM10において、通信相手が信頼できるかどうかを判定する必要がないため、DCM10の構成を簡素化できる。DCM10は、通信装置20との通信のみに特化できるため、将来の高度なアプリケーション提供を念頭にルーティングを含めた全ての機能を通信装置20側に配置することが可能になる。
【0047】
また、スマートデバイス13A(例えばユーザのスマートフォン)を用いたテザリングでDCM10と通信装置20との間で通信する場合における通信費は、ネットワーク上にある課金機構40(
図1)で課金される。この場合の通信費はユーザに課金されるようにすることができる。例えば、ユーザが、スマートフォンの通信費について、一定の通信量までは定額の契約を結んでいる場合、上記したテザリングによる通信は、定額の範囲における残りの通信量の範囲で行うようにすることができる。このようにすれば、テザリングに係る通信費用を事業者側が負担しなくて済むことになる。また、ユーザも定額の範囲での通信となるため、通信費用を実質的に負担しなくて済むというメリットがある。また、将来において、或る金額で定額利用可能な通信量が増加した場合に、DCM10が利用するアプリケーションプログラムを使用通信量が多い代わりに利便性の高いものに変更可能となる。
【0048】
このようなテザリングの通信費に係る運用において、スマートデバイス13Aに、以下のような処理を行うアプリケーションプログラム(アプリ)をインストールしてもよい。
・テザリングが行われる場合に、通信費がユーザに課金されることを報知する。報知は、例えばディスプレイ125に表示することで行われる。
・テザリングが行われる場合に、定額で利用可能な通信量のうちのすでに使用した通信量を報知する、又は、定額で利用可能な通信量のうち、定額で利用可能な残りの通信量を報知する。
・定額利用な通信量のうち、既に使用した通信量が閾値以上である(又は、残りの通信量が閾値を下回る)場合に、テザリングの利用に対する警告を発する(例えばディスプレイ125に表示する)。或いはテザリングの使用を禁止する(DCM10とスマートデバイ
ス10Aの接続又はペアリングができない状態とする)。
【0049】
また、以下のような構成を採用してもよい。
・ユーザが許容可能な通信量の増減に応じて、DCM10の通信量を制御する。DCM10が通信装置20向けの通信量を増減する場合もあれば、通信装置20からDCM10に向けた通信量を増減する場合もある。
・通信装置20が、DCM10からの通信用のアプリケーションのインストール要求に対し、ユーザが許容する通信量に応じたアプリケーションのインストールを許可する。すなわち、ユーザの定額利用可能な通信量に応じて、DCM10にインストール可能なアプリケーションの種類を制御する。
【0050】
本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは柔軟に変更可能である。本開示は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク、ブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、光学式カード、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0051】
1・・・インターネット、2・・・通信キャリア網、3・・・MCNO網、4・・・無線LAN、10・・・DCM、20・・・通信装置、31・・・プロセッサ、21・・・ゲートウェイ、22・・・認証部、23・・・ルーティング部