(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175996
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ステータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/12 20060101AFI20241212BHJP
H02K 15/04 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H02K15/12 D
H02K15/04 E
H02K15/12 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094162
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】池田 雄太郎
(72)【発明者】
【氏名】成澤 優太
(72)【発明者】
【氏名】中川 英樹
(72)【発明者】
【氏名】梶本 昇吾
(72)【発明者】
【氏名】浦野 広暁
(72)【発明者】
【氏名】土屋 侑生
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB05
5H615BB14
5H615PP14
5H615SS16
5H615SS33
5H615SS34
5H615SS42
(57)【要約】
【課題】コイルエンドの軸方向上方に導電部材が延在するステータにおいて、導電部材を避けてコイルエンドを絶縁する技術を提供する。
【解決手段】ステータ2は、その中心軸に対して環状のステータコア4と、ステータコア4に装着されたステータコイル6と、ステータコア4の一方の端面4aから突出するコイルエンド8の軸方向上方に配置されて引出しコイル10と接続される導電部材12と、を備える。ステータ2の製造方法は、ステータ2のコイルエンド8の軸方向上方に、導電部材12をマスクするマスキング部材20を配置し、マスキング部材20を介して軸方向上方からコイルエンド8に向けて絶縁塗装剤を供給する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータの製造方法であって、
前記ステータは、その中心軸に対して環状のステータコアと、前記ステータコアに装着されたステータコイルと、前記ステータコアの一方の端面から突出するコイルエンドの軸方向上方に配置されて引出しコイルと接続される導電部材と、を備え、
前記コイルエンドの前記軸方向上方に、前記導電部材をマスクするマスキング部材を配置する工程と、
前記マスキング部材を介して前記軸方向上方から前記コイルエンドに向けて絶縁塗装剤を供給する工程と、
を備える、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、ステータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、モータユニットにおけるステータは、ステータコアに平角線コイルが装着されてステータコイルが装備されている。ステータコイルのステータコアの軸方向の両端にはスタータコアから軸方向外方に延在されたコイルの端末同士が溶接で結線されてコイルエンドが形成される。
【0003】
こうしたコイルエンドの一部から延出される引出しコイルには、動力線や中性線などの導電部材が溶接により接続される。これら導電部材やその近傍などは、絶縁塗装剤での塗装が好適でない場合がある。一方、導電部材に隣接するコイルエンドは、絶縁塗装剤などにより絶縁を確保することが好ましい場合がある。
【0004】
絶縁塗装剤をコイルエンドにのみ供給し塗装する方法が開示されている(特許文献1)。この方法は、ステータコアから延出されるコイル端子に絶縁性の粉体塗料を付着させないように、コイル端子の下方からキャッピングするようにして、コイルエンドを粉体塗料に浸漬して塗装する、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ステータにおいては、導電部材が、コイルエンドが突出する方向であるコイルエンドの軸方向上方に延在することもある。このような形態であると、特許文献1に開示される方法では、導電部材や、ステータコイルに接続された導電部材への絶縁塗装剤の供給を回避しつつ、コイルエンドへ絶縁塗装剤を供給することはできない。
【0007】
本明細書は、コイルエンドの軸方向上方に導電部材が延在するステータにおいて、導電部材を避けてコイルエンドを絶縁する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書が開示する技術は、ステータの製造方法に具現化される。ステータは、その中心軸に対して環状のステータコアと、ステータコアに装着されたステータコイルと、ステータコアの一方の端面から突出するコイルエンドの軸方向上方に配置されて引出しコイルと接続される導電部材と、を備える。この製造方法は、コイルエンドの軸方向上方に、導電部材をマスクするマスキング部材を配置する工程と、マスキング部材を介して軸方向上方からコイルエンドに向けて絶縁塗装剤を供給する工程と、を備える。
【0009】
この製造方法によれば、コイルエンドの軸方向上方に延在する導電部材をマスクするマスキング部材を配置し、軸方向上方からこのマスキング部材を介して絶縁塗装剤をコイルエンドに供給する。このため、導電部材が軸方向上方に延在するように配置されてコイルに接続されていても、この導電部材を備える領域を回避してコイルエンドに絶縁塗装剤を供給し塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本明細書に開示されるステータの製造方法の被加工体としてのステータを模式的に示す図である。
【
図2】
図1の枠Aで示す範囲のステータのコイルエンドの構造を拡大して示す図である。
【
図3】
図1の枠Bで示す範囲を拡大して、ステータの製造工程の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本明細書に開示されるステータの製造方法について、適宜図面を参照して説明する。なお、本明細書において、単に「軸方向」というとき、ステータコアの一方の端面から突出する多数のコイルエンドの共通の中心軸方向を意味している。
【0012】
図1は、本明細書に開示されるステータの製造方法の加工対象を示す。
図1は、絶縁塗装をしようとする絶縁塗装前のステータ2のステータコア4の中心軸Zを通る縦端面を示す。ステータ2は、例えば、自動車の電子部品やモータに電力を供給するモータの構成部品である。モータは、走行用モータであってもよい。
【0013】
ステータ2は、ステータコア4と、ステータコイル6と、導電部材12と、を備えている。ステータコア4は、中心軸Zに対する略円環状体であり、例えば、積層鋼板などからなる。なお、ステータコア4の中央孔部には、図示しないロータが配置されてモータが構成される。
【0014】
ステータコイル6は、例えば、平角線コイルで形成されている。ステータコイル6は、エナメルなどの絶縁被覆を備えていない。ステータコイル6は、ステータコア4内に設けられた複数の挿通孔に挿通されつつステータコア4を券回する。
【0015】
図1に示すように、ステータコア4の一方の端面4aには、端面4aから突出するコイルエンド8を備えている。なお、
図1において、コイルエンド8を、詳細を省略して示している。
図2に、
図1の枠Aの範囲を拡大して示す。コイルエンド8は、
図2に拡大して示すように、ステータコア4の上下の端面のうちの一方の端面4aから突出するステータコイル6の端末同士が、例えば、TIC溶接より結線されて形成されている。こうして形成された多数のコイルエンド8は、全体として、それ自身の軸方向を有し、その軸方向に沿って端面4aから離れる方向(本明細書における軸方向上方)に突出している。また、多数のコイルエンド8は、ステータコア4の端面4aにわたってリング状に分布している。
【0016】
導電部材12は、ステータコア4の一方の端面4aから突出するコイルエンド8の軸方向上方に配置されて所定の引出しコイル10と接続されている(
図3(a)参照)。導電部材12と引出しコイル10とは、例えば、溶接により接続されている。導電部材12は、例えば、3相交流の動力線や中性線である。導電部材12は、必要に応じて、バスバーモジュールに一体化されていてもよい。
【0017】
次に、こうしたステータ2を被加工体として、コイルエンド8に絶縁塗装剤Xを付与する工程について
図3を参照して説明する。
図3は、
図1の枠Bを拡大して、これらの工程を模式的に示す。
【0018】
図3(a)に示すように、ステータ2が備える導電部材12の軸方向上方に、マスキング部材20を配置する。マスキング部材20は、遮蔽部22と開口部24とを備えている。遮蔽部22は、コイルエンド8の軸方向上方からみて引出しコイル10に接続された導電部材12がステータコア4の端面4aに対して占有する領域をマスク(遮蔽)する。開口部24は、コイルエンド8やバスバーなど絶縁するのが好適である対象が占有する領域を露出(開放)させる。遮蔽部22及び開口部24は、導電部材12への絶縁塗装剤Xの供給を回避し、コイルエンド8などへの絶縁塗装剤Xの供給を可能とするものであれば、その形態は特に限定されない。マスキング部材20の配置には、適宜塗装ロボットが用いられてもよい。
【0019】
次に、
図3(b)に示すように、絶縁塗装剤Xを供給する。すなわち、マスキング部材20の軸方向上方からマスキング部材20を介してコイルエンド8に向けて絶縁塗装剤Xを供給する。絶縁塗装剤Xは、特に限定されないで粉体塗料などの公知の絶縁塗装剤を用いることができる。絶縁塗装剤Xを、マスキング部材20を介して供給する態様としては、特に限定するものではないが、例えば、噴霧、滴下などとすることができる。
【0020】
絶縁塗装剤Xが軸方向上方からマスキング部材20を介して供給されるため、絶縁塗装剤Xは、開口部24を通じて、コイルエンド8に到達して、コイルエンド8を被覆し絶縁する。また、絶縁塗装剤Xは、遮蔽部22によって遮断されるため、導電部材12には供給されない。
【0021】
絶縁塗装剤Xの供給後、必要に応じて、乾燥、硬化などを行い、コイルエンド8に供給された絶縁塗装剤Xの塗膜を形成する。最終的に、コイルエンド8が絶縁されたステータ2を得ることができる。
【0022】
以上説明したように、本明細書に開示されるステータの製造方法は、軸方向上方からみて導電部材12の占有領域を遮蔽し、コイルエンド8を露出させるマスキング部材20を用いて、軸方向上方から絶縁塗装剤Xを供給する。これにより、コイルエンド8の軸方向上方に導電部材12を備えるステータ2であっても、導電部材12への絶縁塗装剤Xの供給を回避してコイルエンド8に必要な絶縁塗膜を形成することができる。
【符号の説明】
【0023】
2 ステータ、4 ステータコア、6 ステータコイル、8 コイルエンド、10 引出しコイル、12 導電部材、20 マスキング部材