(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175998
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 20/12 20160101AFI20241212BHJP
B60K 6/445 20071001ALI20241212BHJP
B60W 10/00 20060101ALI20241212BHJP
B60W 20/20 20160101ALI20241212BHJP
G01C 21/34 20060101ALI20241212BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20241212BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20241212BHJP
G16Y 40/60 20200101ALI20241212BHJP
【FI】
B60W20/12
B60K6/445 ZHV
B60W10/00 900
B60W20/20
G01C21/34
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094167
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】前村 雅人
(72)【発明者】
【氏名】池村 亮祐
(72)【発明者】
【氏名】津下 聖悟
【テーマコード(参考)】
2F129
3D202
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129CC15
2F129CC16
2F129DD13
2F129DD15
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2F129DD20
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2F129FF02
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2F129FF12
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2F129FF32
2F129FF65
2F129HH02
2F129HH12
2F129HH18
2F129HH19
2F129HH20
2F129HH21
3D202AA03
3D202BB00
3D202BB25
3D202BB51
3D202CC00
3D202CC31
3D202DD00
3D202DD50
(57)【要約】
【課題】経済的な走行と、環境負荷の低減とを両立することができる車両制御装置を提供すること。
【解決手段】本開示に係る車両制御装置は、回転電機およびガソリンエンジンを備え、道路側に設けられる給電レーンから電力を受電して回転電機の動力を出力するバッテリの充電を行う車両を制御する車両制御装置であって、プロセッサを備え、プロセッサは、電力価格およびガソリン価格と、目的地までに排出される総CO
2排出量とに基づいて、回転電機による第1の走行と、ガソリンエンジンによる第2の走行とのいずれかを選択して、目的地までの経路における車両の走行を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機およびガソリンエンジンを備え、道路側に設けられる給電レーンから電力を受電して前記回転電機の動力を出力するバッテリの充電を行う車両を制御する車両制御装置であって、
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
電力価格およびガソリン価格と、目的地までに排出される総CO2排出量とに基づいて、前記回転電機による第1の走行と、ガソリンエンジンによる第2の走行とのいずれかを選択して、前記目的地までの経路における前記車両の走行を制御する、
車両制御装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記ガソリン価格が前記電力価格よりも安く、かつ、前記第2の走行によるCO2排出量が前記第1の走行によるCO2排出量より少ない場合に、前記第2の走行を選択する、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記目的地までの経路を、道路の種別に応じて複数の区間に分割し、
各区間について、前記第1および第2の走行のうちのいずれかを設定する、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記ガソリン価格が前記電力価格よりも安い場合、
前記ガソリン価格および前記電力価格の価格差が、予め設定された閾値以上となる場合に、前記第2の走行を選択する、
請求項1に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外部充電可能なメインバッテリと、エンジンとを備え、受信した電力価格情報および燃料価格情報と、車両走行履歴とに基づいて、外部からメインバッテリへの充電量を制御するハイブリッド車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、環境への負荷を低減する取り組みが各地で実施され、車両の走行においても環境負荷を低減することが求められている。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、経済的な走行と、環境負荷の低減とを両立することができる車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る車両制御装置は、回転電機およびガソリンエンジンを備え、道路側に設けられる給電レーンから電力を受電して前記回転電機の動力を出力するバッテリの充電を行う車両を制御する車両制御装置であって、プロセッサを備え、前記プロセッサは、電力価格およびガソリン価格と、目的地までに排出される総CO2排出量とに基づいて、前記回転電機による第1の走行と、ガソリンエンジンによる第2の走行とのいずれかを選択して、前記目的地までの経路における前記車両の走行を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、経済的な走行と、環境負荷の低減とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態における車両制御装置を備えるワイヤレス電力伝送システムを示す模式図である。
【
図2】
図2は、給電レーンについて説明するための図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る車両の制御装置が適用される車両の概略構成を示した図である。
【
図4】
図4は、実施形態における車両制御装置を車両の機能構成を説明するためのブロック図である。
【
図5】
図5は、実施形態における走行モードの設定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、変形例における走行モードの設定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施形態に係る車両制御装置について、図面を参照しながら説明する。なお、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
(実施形態)
実施形態に係る車両制御装置が適用されるワイヤレス電力伝送システム(Wireless Power Transfer System)について、
図1~
図3を参照しながら説明する。
【0011】
図1は、実施形態における車両制御装置を備えるワイヤレス電力伝送システムを示す模式図である。ワイヤレス電力伝送システム1は、給電レーン20から車両40に対して、例えば磁界共振結合(磁界共鳴)によるワイヤレス電力伝送を行う。ワイヤレス電力伝送システム1は、制御装置10と、給電レーン20と、バッテリ30と、車両40とを備える。車両40は、例えば、回転電機およびエンジンを備えたハイブリッド車両である。この車両40は、手動運転車両であってもよいし、自動運転車両であってもよい。また、車両40は、制御装置10と通信を行うための通信部(例えばDCM:Data Communication Module)を備えている。
ワイヤレス電力伝送システム1は、給電レーン20から車両40へ磁界共振結合(磁界共鳴)によるワイヤレス電力伝送を行う。
【0012】
ワイヤレス電力伝送システム1は、道路に配設される給電レーン20上を走行中の車両40に対して非接触で電力を伝送する。つまり、ワイヤレス電力伝送システム1は磁界共鳴方式により電力を伝送するものであり、磁界共振結合(磁界共鳴)を用いて車両40への走行中給電を実現するものである。ワイヤレス電力伝送システム1は、ダイナミックワイヤレス電力伝送(D-WPT)システムや、磁界ダイナミックワイヤレス電力伝送(MF-D-WPT)システムと表現できる。
【0013】
制御装置10および車両40は、いずれも通信機能を備えており、ネットワークNを通じて相互に通信可能に構成されている。このネットワークNは、例えばインターネット回線網、携帯電話回線網、WiFi(登録商標、Wireless Fidelity)、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy))等から構成される。
【0014】
制御装置10は、車両40と各種情報をやり取りするとともに、給電レーン20およびバッテリ30の制御を行う。制御装置10は、制御部11と、通信部12と、記憶部13とを備える。
【0015】
制御部11は、具体的には、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等からなるプロセッサと、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等からなるメモリ(主記憶部)と、を備えている。
【0016】
制御部11は、記憶部13に格納されたプログラムを主記憶部の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各構成部等を制御することにより、所定の目的に合致した機能を実現する。
【0017】
通信部12は、例えば各種情報を送受信可能な通信モジュール等により構成される。通信部12は、例えば給電レーン20から車両40に対して電力を供給する場合や、給電レーン20が車両40から電力の供給を受ける場合に、例えばネットワークNを通じて車両40と通信を行い、各種情報を送受信する。
【0018】
記憶部13は、例えばEPROM(Erasable Programmable ROM)、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)およびリムーバブルメディア等の記録媒体から構成される。リムーバブルメディアとしては、例えばUSB(Universal Serial Bus)メモリ、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)のようなディスク記録媒体が挙げられる。記憶部13には、オペレーティングシステム(Operating System:OS)、各種プログラム、各種テーブル、各種データベース等が格納可能である。
【0019】
記憶部13には、例えば車両40とやり取りした各種情報、バッテリ30の残存容量等に関する情報等が格納される。
【0020】
図2は、給電レーンについて説明するための図である。なお、本実施形態では、
図2に示すように、共通した機能を有していれば、車両の形状等が異なっていてもよい。
給電レーン20は、車両40に対して非接触で電力の供給を行うることが可能に構成されている。具体的には、給電レーン20は、車両40に対して電力を供給または受電するコイルを備える通電部21を備える。通電部21は、道路の車線内に埋め込まれている。
【0021】
バッテリ30は、定置式の蓄電装置である。このバッテリ30は、給電レーン20が送電レーンとして機能する場合、当該給電レーン20に対して電力を供給する。また、バッテリ30は、給電レーン20が受電レーンとして機能する場合、当該給電レーン20から電力を受け取り蓄電する。また、バッテリ30は、外部の発電設備から電力の供給を受けてもよく、外部の需要家設備に対して電力を供給してもよい。なお、
図1では、バッテリ30を一つのみ図示しているが、給電レーン20ごとにバッテリ30を設けてもよい。
【0022】
続いて、車両40の構成について
図1、
図3および
図4を参照して説明する。
図3は、実施形態に係る車両の制御装置が適用される車両の概略構成を示した図である。
図4は、実施形態における車両制御装置を車両の機能構成を説明するためのブロック図である。
車両40は、制御装置10によって管理される通電部21から供給される電力によってバッテリ61が充電される。
【0023】
車両40は、第1回転電機41(MG1)、第2回転電機42(MG2)およびエンジン43を備えたハイブリッド車両である。なお、
図1に示した車両40では、2つの回転電機を備えているが、これに限定されるものではなく、例えば、車両走行用の駆動力を出力可能な1つの回転電機と、エンジン43とを備えた構成であってもよい。言い換えると、実施形態に係る車両40は、少なくとも、回転電機からの駆動力(トルク)のみで走行可能、または、エンジン43からの駆動力(トルク)のみで走行可能に構成されていればよい。
【0024】
第1回転電機41および第2回転電機42はそれぞれ、回転磁界を発生させる三相巻線(コイル)を備えるステータ、および、その回転磁界との間の磁気力によってトルクを発生させる永久磁石を備えるロータ、を有する。第1回転電機41および第2回転電機42のそれぞれは、電動機として動作するとともに発電機として動作することも可能な所謂モータ・ジェネレータである。
【0025】
第1回転電機41は、主に発電機として用いられる。第1回転電機41は、さらに、エンジン43の始動時にエンジン43のクランキングを行う。なお、第1回転電機41が「エンジン43に対して作用するトルク」を発生させ、クランキングを行うことは(エンジン43のクランクシャフトを回転させる)ことは「モータリング」とも称呼される。
【0026】
第2回転電機42は、主に電動機として用いられ、車両40の駆動力(車両40を走行させるためのトルク)を発生することができる。
【0027】
エンジン43は、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関である。本実施形態では、エンジン43が、ガソリンエンジンである例について説明する。エンジン43も第2回転電機42と同様に、車両40の駆動力(車両40を走行させるためのトルク)を発生することができる。
【0028】
車両40は、動力分割機構51を有する。動力分割機構51は遊星歯車機構である。すなわち、動力分割機構51は、図示しないサンギア、このサンギアと同心円状に配置された図示しないリングギア、サンギアに噛合するとともにリングギアにも噛合する図示しない複数のピニオンギア、および、複数のピニオンギアを自転可能且つサンギアの回りに公転可能な状態で保持する図示しないピニオンキャリア、を備える。
【0029】
サンギアには第1回転電機41の出力軸がトルク伝達可能に連結されている。ピニオンキャリアにはエンジン43のクランクシャフトがトルク伝達可能に連結されている。リングギアには減速機構52を介して第2回転電機42の出力軸がトルク伝達可能に連結されている。更に、第2回転電機42の出力軸は、減速機構52を介して車軸53とトルク伝達可能に連結されている。車軸53は、ディファレンシャルギア54を介して駆動輪55とトルク伝達可能に連結されている。
【0030】
エンジン43と動力分割機構51との間にはトーショナルダンパ56が介装されている。トーショナルダンパ56は、エンジン43側の軸と動力分割機構51側の軸とを弾性体を介してそれぞれ回転可能に結合させ、エンジン43が発生するトルクの変動を吸収するようになっている。
【0031】
車両40は、さらに、バッテリ61、昇圧コンバータ62および電力変換器であるインバータ63を備えている。バッテリ61は、蓄電装置であって、例えば、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などの充放電が可能な二次電池である。バッテリ61の出力した直流電力は、昇圧コンバータ62により電圧変換(昇圧)される。その電圧変換された直流電力は、インバータ63でのスイッチング素子のスイッチング動作により交流電力に変換され、第1回転電機41および第2回転電機42へ供給される。
【0032】
一方、第1回転電機41と第2回転電機42との少なくとも一方が発電機として動作するとき、これらによって発電された交流電力はインバータ63でのスイッチング素子のスイッチング動作により直流電力に変換される。更に、その変換された直流電力は、昇圧コンバータ62により電圧変換(降圧)され、バッテリ61に供給される。この結果、バッテリ61が充電される。或いは、第1回転電機41が発電した交流電力は、インバータ63を介して第2回転電機42へと供給される。
【0033】
制御装置80は、第1回転電機41、第2回転電機42およびエンジン43を制御するとともに、制御装置10との通信や、車両40の走行モードの制御を行う。制御装置80は、送受信部81、通信部82、GPS(Global Positioning System)部83、入出力部84、算出部45、判定部85、記憶部87およびECU(Electronic Control Unit)48を備える。また、車両40には、各部に電力を供給するバッテリ61が設けられる。このバッテリ61は、蓄電装置であって、充電可能に構成される。車両40を制御する部品は、CPU、FPGA、ROM、およびRAM等からなる一つ又は複数のコンピュータ等を用いて構成される。
【0034】
送受信部81は、通電部21からの給電信号を受信する受信部として機能する。また、送受信部81は、通電部21に給電信号を送信する送信部として機能する。
【0035】
通信部82は、ネットワークNを介した無線通信によって、外部の各装置との間で通信を行う。通信部82は、外部の装置から、規制や渋滞等の道路交通情報、災害に関する情報を受信する。
【0036】
GPS部83は、GPS衛星からの電波を受信して、車両40の位置を検出する。検出された位置は、車両40の位置情報として、外部に出力されるか、又は記憶部に格納される。
【0037】
入出力部84は、タッチパネルディスプレイや、スピーカ、マイク等から構成される。入出力部84は、ECU88による制御に従って、タッチパネルディスプレイの画面上に文字や図形等を表示したり、スピーカから音を出力したりするなど、情報を出力可能に構成される。また、入出力部84は、車両40の利用者等がタッチパネルディスプレイを操作したり、マイクに向けて音声を発したりすることによって、ECU88に所定の情報を入力可能に構成される。
【0038】
判定部85は、再生エネルギーの余剰の有無の判定、ガソリン価格および電力価格の高低を判定、ならびに、EV(Electric Vehicle)走行およびHV(Hybrid Vehicle)走行における総CO2排出量の大小関係の判定を行う。
【0039】
選択部86は、判定部35の判定結果に基づいて、第2回転電機42によるEV走行と、エンジン43によるHV走行とのいずれかを選択する。
【0040】
記憶部87は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体を用いて構成され、各種プログラムおよび各種データが書き込みおよび読み出し可能に格納されている。この記録媒体としては、ハードディスクや半導体メモリ、光ディスク、フラッシュメモリ、磁気ディスク等の記憶媒体、およびこれらの記憶媒体のドライブ装置を有して構成される。記憶部87には、ECU88が車両40の各部の作動を統括的に制御するために必要なオペレーティングシステム(OS)や各種アプリケーションのプログラムが格納されている。
【0041】
ECU88は、CPU、FPGA、ROM、およびRAM等からなるマイクロコンピュータ等の情報処理装置によって構成されている。ECU88は、車両40の各部の電気的な動作を統括的に制御する。ECU88は、入力されたデータや予め記憶しているデータおよびプログラムを使用して演算を行い、その演算結果を制御指令信号として出力するように構成されている。
【0042】
車両40において、アクセル開度センサ71は、アクセルペダル72の操作量を検出し、この操作量を表す信号を出力するようになっている。制御装置80は、アクセルペダル72の操作量および車速などに基づいて、車両40を駆動するために、第1回転電機41、第2回転電機42およびエンジン43などを制御する。
なお、車両40の自動運転を行う場合は、ECU88の制御のもと、各部が指示信号に従って駆動する。
【0043】
ここで、本実施形態では、電力状況および価格状況や、環境負荷に基づいて、車両40の走行モードが制御される。この走行モードの設定処理について、
図5を参照して説明する。
図5は、実施形態における走行モードの設定処理の流れを示すフローチャートである。この走行モードの設定処理は、例えば、車両が走行を開始する直前までに実行される。
【0044】
この走行制御では、事前または処理の直前に、ECU88が、再生可能エネルギーの電力使用状況や、蓄電量の情報、ならびに、ガソリン価格および電力価格を取得する。再生可能エネルギーは、太陽光や風力、地熱といった地球資源の一部等の、自然界に存在するエネルギーである。また、ガソリン価格および電力価格は、ワイヤレス電力伝送システム1の制御下において設定されている価格である。
【0045】
まず、ECU88は、設定されている目的地の経路を、道路の種別、例えば、道路の傾斜角度や凹凸の有無等に応じて複数の区間に分け、区間番号N(N=1、2、・・・、NMAX)を付し、N=1に設定する(ステップS101)。
なお、道路の種別に変化が無ければ、NMAX=1としてもよい。
【0046】
そして、判定部85は、ワイヤレス電力伝送システム1の制御下(給電レーン20による電力供給エリア)において、再生可能エネルギーによる蓄電量に余剰があるか否かを判断する(ステップS102)。判定部85は、蓄電量と、予め設定されている閾値とを比較して、再生可能エネルギーによる蓄電量に余剰があるか否かを判定する。ECU88は、判定部85が、再生可能エネルギーによる蓄電量に余剰があると判断した場合(ステップS102:No)、ステップS106に移行する。一方、ECU88は、判定部85が、再生可能エネルギーによる蓄電量に余剰がないと判断した場合(ステップS102:Yes)、ステップS103に移行する。
【0047】
ステップS103において、判定部85は、ガソリン価格と電力価格とを比較して、ガソリン価格が電力価格よりも安いか否かを判定する。ECU88は、判定部85が、ガソリン価格が電力価格以上であると判定した場合(ステップS103:No)、ステップS106に移行する。これに対し、ECU88は、判定部85が、ガソリン価格が電力価格よりも安いと判定した場合(ステップS103:Yes)、ステップS104に移行する。
【0048】
ステップS104において、判定部85は、設定されている区間番号Nの走行において、HV走行を行った場合の総CO2排出量と、EV走行を行った場合の総CO2排出量とを比較して、EV走行を行った場合の総CO2排出量が、HV走行を行った場合の総CO2排出量よりも多いか否かを判定する。判定部85は、例えば、現在地から目的地までの経路を走行した際に、HV走行の場合に発生する総CO2排出量と、EV走行の場合に発生する総CO2排出量との大小関係を判定する。この際、道路の傾斜や凹凸の有無等によって、HV走行およびEV走行の総CO2排出量の大小関係が変化する。また、EV走行は、同じ距離を同じ速度で走行したとしても、再生可能エネルギーの種別に応じて総CO2排出量が変化する。例えば、再生可能エネルギーや原子力によって発電する場合と、火力を再生可能エネルギーとして発電する場合とでは、火力による発電の方が、総CO2排出量が多くなる。このため、判定部85は、走行経路において給電する際に使用する電力の発電方法を取得して、その方法に応じた係数を乗じるなどして総CO2排出量を算出する。例えば、この際に使用する係数は、再生可能エネルギーよりも火力の方が大きい値となる。
なお、判定部85は、制御装置10等の外部装置から総CO2排出量の情報を取得して判定するようにしてもよい。
【0049】
ECU88は、判定部85が、EV走行を行った場合の総CO2排出量が、HV走行を行った場合の総CO2排出量よりも多いと判定した場合(ステップS104:No)、ステップS106に移行する。ECU88は、判定部85が、EV走行を行った場合の総CO2排出量が、HV走行を行った場合の総CO2排出量以下であると判定した場合(ステップS104:Yes)、ステップS105に移行する。
【0050】
ステップS105において、選択部86は、当該区間番号Nの走行について、車両40の走行モードとして、HV走行による走行モードを選択する。
ECU88は、選択部86による走行モードの選択後、ステップS107に移行する。
【0051】
また、ステップS106において、選択部86は、当該区間番号Nの走行について、車両40の走行モードとして、EV走行による走行モードを選択する。このEV走行モードでは、例えば、給電レーン20からの電力供給によって、車両40が走行中に給電されながらEV走行する。
ECU88は、選択部86による走行モードの選択後、ステップS107に移行する。
【0052】
ステップS107において、ECU88は、区間番号Nを1増やす。
【0053】
そして、ECU88は、ステップS107において設定された区間番号Nが、NMAXより大きいか否かを判断する(ステップS108)。ECU88は、区間番号Nが、NMAXより大きいと判断した場合(ステップS108:Yes)、走行モードの設定処理を終了する。これに対し、ECU88は、区間番号Nが、NMAX以下であると判断した場合(ステップS108:No)、ステップS104に移行し、更新した区間番号Nの走行による総CO2排出量について判定を行う。
【0054】
これにより、ガソリン価格および電力価格を踏まえたうえで、総CO2排出量が最小となる走行モードが設定される。ECU88は、各区間番号に対して選択された走行モードにしたがって車両40の走行を制御する。
【0055】
以上説明した本実施形態では、再生可能エネルギーによる蓄電量の余剰の有無、かつ、ガソリン価格および電力価格の高低を踏まえたうえで、CO2排出量が少ない走行モードを走行区間ごとに選択することによって、環境面と経済面とを考慮した走行モードが設定される。本実施形態によれば、目的地までの経路を分割した各区間について、価格優位性を考慮したうえで、総CO2排出量に基づいて走行モードがそれぞれ設定されるため、経済的な走行と、環境負荷の低減とを両立することができる。
【0056】
(変形例)
次に、本実施形態の変形例について、
図6を参照して説明する。
図6は、変形例における走行モードの設定処理の流れを示すフローチャートである。システムの構成は、実施形態に係るワイヤレス電力伝送システム1と同じであるため、説明を省略する。
【0057】
変形例1に係る走行制御では、まず、ECU88は、ステップS101と同様にして、設定されている目的地の経路を、道路の種別、例えば、道路の傾斜や凹凸の有無等に応じて複数の区間に分け、区間番号N(N=1、2、・・・、NMAX)を付し、N=1に設定する(ステップS201)。
【0058】
そして、判定部85は、ステップS102と同様にして、再生可能エネルギーによる蓄電量に余剰があるか否かを判断する(ステップS202)。ECU88は、判定部85が、再生可能エネルギーによる蓄電量に余剰があると判断した場合(ステップS202:No)、ステップS207移行する。一方、ECU88は、判定部85が、再生可能エネルギーによる蓄電量に余剰がないと判断した場合(ステップS202:Yes)、ステップS203に移行する。
【0059】
ステップS203において、判定部85は、ステップS103と同様にして、ガソリン価格と電力価格とを比較して、ガソリン価格が電力価格よりも安いか否かを判定する。ECU88は、判定部85が、ガソリン価格が電力価格以上であると判定した場合(ステップS203:No)、ステップS207に移行する。これに対し、ECU88は、判定部85が、ガソリン価格が電力価格よりも安いと判定した場合(ステップS203:Yes)、ステップS204に移行する。
【0060】
ステップS204において、判定部85は、電力価格からガソリン価格を引いた価格差が、予め設定されている閾値以上であるか否かを判定する。ここでの閾値は、走行中給電には運転者が給電に要する手間がないため、運転者がガソリンを給油する際の手間を価格に換算した値に基づいて設定される。このため、ガソリン価格に給油の手間を含めたうえで、走行モードの選択が実行される。
【0061】
ECU88は、判定部85が、価格差が閾値未満であると判定した場合(ステップS204:No)、ステップS207に移行する。これに対し、ECU88は、判定部85が、価格差が閾値以上であると判定した場合(ステップS204:Yes)、ステップS205に移行する。
【0062】
ステップS205において、判定部85は、ステップS104と同様にして、設定されている区間番号Nの走行において、HV走行を行った場合の総CO2排出量と、EV走行を行った場合の総CO2排出量とを比較して、EV走行を行った場合の総CO2排出量が、HV走行を行った場合の総CO2排出量よりも多いか否かを判定する。ECU88は、判定部85が、EV走行を行った場合の総CO2排出量が、HV走行を行った場合の総CO2排出量よりも多いと判定した場合(ステップS205:No)、ステップS106に移行する。ECU88は、判定部85が、EV走行を行った場合の総CO2排出量が、HV走行を行った場合の総CO2排出量以下であると判定した場合(ステップS205:Yes)、ステップS105に移行する。
【0063】
ステップS206において、選択部86は、当該区間番号Nの走行について、車両40の走行モードとして、HV走行による走行モードを選択する。
ECU88は、選択部86による走行モードの選択後、ステップS208に移行する。
【0064】
また、ステップS207において、選択部86は、当該区間番号Nの走行について、車両40の走行モードとして、EV走行による走行モードを選択する。このEV走行モードでは、例えば、給電レーン20からの電力供給によって、車両40が走行中に給電されながらEV走行する。
ECU88は、選択部86による走行モードの選択後、ステップS208に移行する。
【0065】
ステップS208において、ECU88は、区間番号Nを1増やす。
【0066】
そして、ECU88は、ステップS208において設定された区間番号Nが、NMAXより大きいか否かを判断する(ステップS209)。ECU88は、区間番号Nが、NMAXより大きいと判断した場合(ステップS209:Yes)、走行モードの設定処理を終了する。これに対し、ECU88は、区間番号Nが、NMAX以下であると判断した場合(ステップS209:No)、ステップS205に移行し、更新した区間番号Nの走行による総CO2排出量について判定を行う。
【0067】
これにより、ガソリン価格および電力価格や、給油の手間を踏まえたうえで、総CO2排出量が最小となる走行モードが設定される。ECU88は、各区間番号に対して選択された走行モードにしたがって車両40の走行を制御する。
【0068】
以上説明した本変形例では、再生可能エネルギーによる蓄電量の余剰の有無、ガソリン価格および電力価格の高低、給油の手間を踏まえたうえで、CO2排出量が少ない走行モードを走行区間ごとに選択することによって、環境面と経済面とを考慮した走行モードが設定される。本変形例によれば、目的地までの経路を分割した各区間について、価格優位性を考慮したうえで、総CO2排出量に基づいて走行モードがそれぞれ設定されるため、経済的な走行と、環境負荷の低減とを両立することができる。
【0069】
更なる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、以上のように表わし、かつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。従って、添付のクレームおよびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 ワイヤレス電力伝送システム
10 制御装置
11 制御部
12 通信部
13、87 記憶部
20 給電レーン
21 通電部
30、61 バッテリ
40 車両
81 送受信部
82 通信部
83 GPS部
84 入出力部
85 判定部
86 選択部
88 ECU
N ネットワーク