(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175999
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】搬送ロボット走行制御システム、搬送ロボット走行制御方法および搬送ロボット走行制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20241212BHJP
【FI】
G05D1/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094168
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】盛合 湧志
(72)【発明者】
【氏名】関原 弦
(72)【発明者】
【氏名】沖田 欣文
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301AA10
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301DD07
5H301DD17
5H301EE07
5H301EE12
5H301GG09
5H301HH10
5H301HH19
(57)【要約】
【課題】搬送ロボットの位置認識を容易かつ正確に行うことができ、搬送ロボットの走行を支援すること。
【解決手段】搬送ロボット走行制御システムは、搬送ロボットに設けられた撮像部で撮像された少なくとも一つの塗布形成された移動ラインを含む複数の画像データを取得し、前記複数の画像データのうち予め設定された特徴部分を有する画像データに基づいて位置情報を生成し、前記位置情報を用いて前記搬送ロボットの走行を指示する、制御部を有する。上記搬送ロボット走行制御システムにおいて、前記搬送ロボットは、クローラーを含んでもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ロボットに設けられた撮像部で撮像された少なくとも一つの塗布形成された移動ラインを含む複数の画像データを取得し、
前記複数の画像データのうち予め設定された特徴部分を有する画像データに基づいて位置情報を生成し、
前記位置情報を用いて前記搬送ロボットの走行を指示する、制御部を有する、
搬送ロボット走行制御システム。
【請求項2】
前記画像データに含まれる前記少なくとも一つの移動ラインが、前記搬送ロボットが走行する第1方向に延び第1色を有する第1移動ライン、および前記第1方向と交差する第2方向に延び前記第1色とは異なる第2色を有する第2移動ラインを有するとき、
前記制御部は、前記第2移動ラインを前記特徴部分に設定する、
請求項1に記載の搬送ロボット走行制御システム。
【請求項3】
前記画像データにおける前記第1移動ラインと前記第2移動ラインとが交差する部分には、前記第1移動ラインおよび前記第2移動ラインのいずれも塗布形成されないブランク部が設けられる、
請求項2に記載の搬送ロボット走行制御システム。
【請求項4】
前記画像データが、前記搬送ロボットが走行する第1方向に延びる第1移動ラインと、
前記第1方向と交差する第2方向に延びる第2移動ラインと、
前記第1移動ライン及び前記第2移動ラインのいずれかの近くに設けられたマーカーパターンを含むとき、
前記制御部は、前記マーカーパターンを前記特徴部分に設定する、
請求項3に記載の搬送ロボット走行制御システム。
【請求項5】
前記マーカーパターンは、前記第1色及び前記第2色とは異なる第3色を含む、
請求項4に記載の搬送ロボット走行制御システム。
【請求項6】
前記マーカーパターンは、識別可能な情報を含む、
請求項4に記載の搬送ロボット走行制御システム。
【請求項7】
前記搬送ロボットは、クローラーを含む、
請求項1に記載の搬送ロボット走行制御システム。
【請求項8】
コンピュータが
搬送ロボットに設けられた撮像部で撮像された少なくとも一つの塗布形成された移動ラインを含む複数の画像データを取得し、
前記複数の画像データのうち予め設定された特徴部分を有する画像データに基づいて位置情報を生成し、
前記位置情報を用いて前記搬送ロボットの走行を指示する、
搬送ロボット走行制御方法。
【請求項9】
コンピュータに、
搬送ロボットに設けられた撮像部で撮像された少なくとも一つの塗布形成された移動ラインを含む複数の画像データを取得し、
前記複数の画像データのうち予め設定された特徴部分を有する画像データに基づいて位置情報を生成し、
前記位置情報を用いて前記搬送ロボットの走行を指示することを実行させる、
搬送ロボット走行制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ロボット走行制御システム、搬送ロボット走行制御方法および搬送ロボット走行制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動搬送車(AGV:AutomaticGuidedVehicle)の技術開発が進み、さまざまな場面でAGVが利用され始めている。例えば、商品が保管された倉庫でAGVを利用すれば、多種多様な商品を自動で搬送することが可能となる。そのため、作業効率が向上し、コストを削減することができる。このようなAGVとして、特許文献1にはAGVが台車の下に潜り込み、AGVが台車を持ち上げて牽引する技術が開示されている。
【0003】
一方、自動搬送車が台車を持ち上げるためにはパワーを必要とするため、自動搬送車が大型化する。特に、建設現場の資材は重量が大きなものが多く、このような資材を積載した台車を持ち上げるためには、さらなるパワーを必要とし、自動搬送車はさらに大型化することになる。そのため、台車のキャスターを利用し、台車の下方で台車と連結し、台車を牽引することができるライントレース機能および自動追従機能を有する小型の自動搬送ロボットの開発が進められている。ライントレースの場合、作業現場に搬送ロボット専用の移動ライン(導線)を形成し、自動搬送ロボットが移動ラインを認識して目的地まで到達することができる。ライントレースの方法として、特許文献2では磁気テープ,特許文献3ではマーカーパターンとオドメトリ、特許文献4ではランドマーク画像投影装置またはSimultaneous Localization AND Mapping(以下SLAM)を用いた自己位置認識方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-59460号公報
【特許文献2】特開2019-204195号公報
【特許文献3】特開2021-144363号公報
【特許文献4】特開2022-093887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
AGVが移動するとき、建設現場では工場と異なり路面に段差が存在する。そのため、AGVの走行部には段差に強いクローラーが用いられる場合がある。しかしながら、クローラーは地面との摩擦が強いため、特許文献2に開示された磁気テープを用いた場合、旋回時に地面に貼られたテープを剥がしてしまうという課題がある。また、クローラーの場合、滑りが多く、タイヤほど正確に特許文献3に開示されたオドメトリを取得できないという課題がある。また、建設現場は、工場と異なり、周辺環境が頻繁に変わる。そのため、特許文献4に開示されたSLAMを用いる場合、地図の更新が頻繁に必要となる。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、搬送ロボットの位置認識を容易かつ正確に行うことができ、搬送ロボットの走行を支援することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、搬送ロボットに設けられた撮像部で撮像された少なくとも一つの塗布形成された移動ラインを含む複数の画像データを取得し、前記複数の画像データのうち予め設定された特徴部分を有する画像データに基づいて位置情報を生成し、前記位置情報を用いて前記搬送ロボットの走行を指示する、制御部を有する、搬送ロボット走行制御システムが提供される。
【0008】
上記搬送ロボット走行制御システムにおいて、前記画像データに含まれる前記少なくとも一つの移動ラインが、前記搬送ロボットが走行する第1方向に延び第1色を有する第1移動ライン、および前記第1方向と交差する第2方向に延び前記第1色とは異なる第2色を有する第2移動ラインを有するとき、前記制御部は、前記第2移動ラインを前記特徴部分に設定してもよい。
【0009】
上記搬送ロボット走行制御システムにおいて、前記画像データにおける前記第1移動ラインと前記第2移動ラインとが交差する部分には、前記第1移動ラインおよび前記第2移動ラインのいずれも塗布形成されないブランク部が設けられてもよい。
【0010】
上記搬送ロボット走行制御システムにおいて、前記画像データが、前記搬送ロボットが走行する第1方向に延びる第1移動ラインと、前記第1方向と交差する第2方向に延びる第2移動ラインと、前記第1移動ライン及び前記第2移動ラインのいずれかの近くに設けられたマーカーパターンを含むとき、前記制御部は、前記マーカーパターンを前記特徴部分に設定してもよい。
【0011】
上記搬送ロボット走行制御システムにおいて、前記マーカーパターンは、前記第1色及び前記第2色とは異なる第3色を含んでもよい。
【0012】
上記搬送ロボット走行制御システムにおいて、前記マーカーパターンは、識別可能な情報を含んでもよい。
【0013】
上記搬送ロボット走行制御システムにおいて、前記搬送ロボットは、クローラーを含んでもよい。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、コンピュータが搬送ロボットに設けられた撮像部で撮像された少なくとも一つの塗布形成された移動ラインを含む複数の画像データを取得し、前記複数の画像データのうち予め設定された特徴部分を有する画像データに基づいて位置情報を生成し、前記位置情報を用いて前記搬送ロボットの走行を指示する、搬送ロボット走行制御方法が提供される。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、コンピュータに、搬送ロボットに設けられた撮像部で撮像された少なくとも一つの塗布形成された移動ラインを含む複数の画像データを取得し、前記複数の画像データのうち予め設定された特徴部分を有する画像データに基づいて位置情報を生成し、前記位置情報を用いて前記搬送ロボットの走行を指示することを実行させる、搬送ロボット走行制御プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一実施形態を用いることにより、搬送ロボットが自己位置認識を容易かつ正確に行うことができ、搬送ロボットの走行を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る搬送ロボット走行制御システムの模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る搬送ロボットの斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る走行制御サーバの制御部の機能ブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る搬送ロボット走行制御方法のフローチャートである。
【
図5】搬送ロボット走行制御を行う建設現場の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の各実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、実施形態はあくまで一例にすぎず、当業者が、発明の主旨を保ちつつ適宜変更することによって容易
に想到し得るものについても、当然に本発明の範囲に含有される。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合がある。しかし、図示された形状はあくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0019】
本明細書において、各構成に付記される「第1」、「第2」などの文字は、各構成を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限り、それ以上の意味を有さない。
【0020】
本明細書および図面において、同一又は類似する複数の構成を総じて表記する際には同一の符号を用い、これら複数の構成のそれぞれを区別して表記する際には、大文字又は小文字のアルファベットを添えて表記する場合がある。また、一つの構成のうちの複数の部分を区別して表記する際には、ハイフン(-)と自然数を用いる場合がある。
【0021】
また、以下の各実施形態は、技術的な矛盾を生じない限り、互いに組み合わせることができる。
【0022】
<第1実施形態>
(1-1.搬送ロボット走行制御システムの構成)
図1に、搬送ロボット走行制御システム10の構成を示す。
図1に示すように、搬送ロボット走行制御システム10は、搬送ロボット100および走行制御サーバ200を含む。
【0023】
搬送ロボット100は、移動ラインを随時撮像する。搬送ロボット100は、作業場面において台車と連結し、指示された所定の場所まで台車を牽引しながら自動走行することができるロボットをいう。この場合のロボットとして、例えば車両が挙げられる。そのため、搬送ロボット100は、自動搬送車ともいうことができる。
【0024】
走行制御サーバ200は、撮像された画像データをもとに搬送ロボット100の位置を認識し、搬送ロボット100の走行を指示する。各構成について、以下に詳細に説明する。
【0025】
(1-2.搬送ロボット100の構成)
図1および
図2を用いて、搬送ロボット100について説明する。
【0026】
図2は、本発明の一実施形態に係る搬送ロボット100の模式図である。具体的には、
図2は、搬送ロボット100の上面側から眺めた搬送ロボット100の斜視図である。
【0027】
図1および
図2に示すように、搬送ロボット100は、ロボット本体部110、走行部120、および撮像部130を含む。ロボット本体部110は、2つの走行部120の間に位置している。また、搬送ロボット100は、夜間または暗い状況における走行および撮像のために、移動ラインを照らすための照明部を有してもよい。
【0028】
ロボット本体部110は、制御部111、記憶部113、および通信部115を有する。ロボット本体部110は、走行制御サーバ200からの指示を通信部115で受信する。通信部115には、無線モジュールなどの通信機器が用いられる。受信した指示情報は、記憶部113に記憶することができる。
【0029】
記憶部113には、SSD(Solid State Drive)の半導体メモリ等のほか、磁気記録媒体(磁気テープ、磁気ディスク等)、光記録媒体、光磁気記録媒体、記憶媒体である記憶可能な素子が用いられる。記憶部113は、撮像したデータを記憶する。
【0030】
制御部111は、コンピュータの一つであって、CPU(Central Processing Unit)が用いられる。制御部111は、走行制御サーバ200からの指示情報に基づいて、走行部120および撮像部130を制御することができる。
【0031】
搬送ロボット100は、電源部117としてバッテリーを含む。具体的には、電源部117には、リチウムイオンバッテリーが用いられる。また、ロボット本体部110には、走行部120を駆動するためのモータ、ブレーキなどが適宜設けられてもよい。
【0032】
走行部120は、ロボット本体部110の側方に設けられる。走行部120は、ロボット本体部110を走行させることができる。この例では、走行部120にクローラーが用いられる。本実施形態では、2つの走行部120を同じ方向に回転させることで、搬送ロボット100は、前進または後退することができる。また、2つの走行部120を異なる方向に回転させることで、搬送ロボット100は、その位置で回転(旋回)することができる。
【0033】
撮像部130は、搬送ロボット100の先頭部に下前方に向かって設けられる。撮像部130には、CCD(Charge Coupled Device)方式のカメラまたはCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)方式のカメラが用いられる。
【0034】
(1-3.走行制御サーバ200の構成)
図1に戻って説明する。走行制御サーバ200は、制御部210、記憶部220、通信部230、操作部240、表示部250、および出力部260を備える。
【0035】
制御部210は、コンピュータの一つであり、CPU、ASIC、FPGA、またはその他の演算処理回路を用いて、走行制御のソフトウェア(プログラム)に規定された命令に基づく処理を制御する。また、制御部210からの命令によって、走行制御プログラムを実行するためのユーザインターフェースが表示部250に提供される場合がある。
【0036】
記憶部220には、SSDの半導体メモリ等のほか、磁気記録媒体(磁気テープ、磁気ディスク等)、光記録媒体、光磁気記録媒体、記憶媒体である記憶可能な素子が用いられる。記憶部220は、走行制御プログラムで用いられる位置情報、地図情報、搬送ロボット100が自動で走行する道順等を記憶するデータベースとしての機能を有する。
【0037】
通信部230は、送受信機を有し、通信網を介して搬送ロボット100と自動搬送に関する情報の通信を行う。通信部230と、搬送ロボット100との通信は、無線LAN、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、インターネット等の無線通信を用いてなされる。
【0038】
操作部240は、コントローラー、ボタン、またはスイッチを含む。操作部240は、上下左右への移動、押圧、または回転などの動作がなされることにより、その動作に基づく情報が制御部210に送信される。なお、タッチセンサを有する表示装置(タッチパネル)である場合、表示部250と操作部240とが、同じ場所に配置されてもよい。
【0039】
表示部250は、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイなどの表示デバイスであって、制御部210から入力される信号により表示内容が制御される。
【0040】
出力部260は、スピーカーまたは照明装置などを含む。出力部260は、制御部210から入力される信号に基づき情報を外部に出力する。
【0041】
(1-4.制御部210の機能ブロック図)
次に、制御部210の機能構成について説明する。
図3は、制御部210の機能ブロック図である。制御部210は、撮像制御部2101、取得部2103、特徴部分検出部2105、位置認識部2107、および移動指示部2109を含む。
【0042】
撮像制御部2101は、撮像装置(搬送ロボット100)による撮像の開始、終了などの撮像を制御する機能を有する。
【0043】
取得部2103は、撮像部130で撮像された複数の画像データ、記憶部220に記憶された位置情報、特徴部分の情報など、各種情報を取得する機能を有する。
【0044】
特徴部分検出部2105は、複数の画像データがあらかじめ設定された特徴部分を含んでいるかを検出する機能を有する。
【0045】
位置認識部2107は、複数の画像データおよび特徴部分の情報に基づいて、搬送ロボットの現在位置を認識する(位置情報を生成する)機能を有する。
【0046】
移動指示部2109は、位置認識部2107で生成された位置情報に基づき搬送ロボット100の移動を指示する機能を有する。
【0047】
(1-5.搬送ロボットの走行制御方法)
図4は、本実施形態における搬送ロボットの走行制御方法を示すフローチャートである。
図5は、本実施形態における搬送ロボットの走行制御を行う建設現場の模式図である。
図5に示すように、建設現場の建造物50には、作業員または機械が作業を行う作業フロア51が設けられている。作業フロア51の床面51aには、資材53(この例では、棒状資材53-1、ブロック状資材53-2)が配置されるとともに、移動ライン55が設けられている。移動ライン55は、塗料などを用いて床面51aに形成されている。
図5に示すように、作業フロア51の床面51aには、複数の移動ライン55が交差して設けられている。この例では、移動ライン55-1は、搬送ロボット100の進行方向D1(第1方向ともいう)に対応する。移動ライン55-2は、進行方向D1と交差する方向(第2方向ともいう)。このとき、移動ライン55-1と、移動ライン55-2は直交するが、必ずしも直交に限定されない。また、移動ライン55-1および移動ライン55-2は、それぞれ異なる色で形成される。この例では、移動ライン55-1は、赤色(第1色)で形成される。移動ライン55-2は、移動ライン55-1とは異なる青色(第2色)で形成される。以下に、本実施形態における搬送ロボットの走行制御方法について詳細に説明する。
【0048】
まず、
図4および
図5に示すように、走行制御サーバ200は、搬送ロボット100を移動ライン55に沿って移動させるとともに移動ライン55を含む床面51aの撮像を指示する。搬送ロボット100は、走行制御サーバ200からの指示に基づき、搬送ロボット100の撮像部130は、移動ライン55を含む床面51aの撮像処理を行う。撮像された画像データは、走行制御サーバ200に送信される。走行制御サーバ200は、画像データを取得する(ステップS101)。
【0049】
次に、走行制御サーバ200は、画像データの分析を行う(ステップS102)。この例では、搬送ロボット100が移動ライン55-1に沿って第1方向D1に進む場合、走行制御サーバ200は、画像データにおける特徴部分の検知を行う(ステップS103)。本実施形態では、特徴部分として、移動ライン55-1と交差する移動ライン55-2が設定される。
図6および
図7は、取得された画像データ500の一例である。
図6に示す画像データ500(500-1)の場合、移動ライン55-1の両側に移動ライン55-2が配置されている。
図7に示す画像データ500(500-2)の場合、移動ライン55-2が第2方向D2に横一線に見える。特徴部分(移動ライン55-2)を検知しない場合(ステップS103;No)、走行制御サーバ200は、搬送ロボット100に直進指示を行う(ステップS104)。直進指示は移動ライン55-1が画面中央に見えていれば直進させること、画面右側に見えていれば少し右折させること、及び画面左側に見えていれば少し左折させることの少なくともいずれかを含む。このようにすることで,ロボットが常に移動ライン55-1を追従して走行できるようにしている。このとき、処理はステップS101に戻る。
【0050】
特徴部分(移動ライン55-2)を検知した場合(ステップS103;Yes)、走行制御サーバ200は、搬送ロボット100の位置認識を行う(位置情報を生成する)(ステップS105)。この例では、特徴部分(移動ライン55-2)の検知回数により搬送ロボット100の位置を認識する。つまり、10本の移動ライン55-2がある場合、10本の移動ライン55-2のうち検出した移動ラインの数に合わせて位置を認識してもよい。
【0051】
このとき、走行制御サーバ200は、位置情報に基づき搬送ロボット100が目的地に到達しているかを判定する(ステップS106)。目的地に到達した場合には(ステップS106;Yes)には、処理が終了となる。
【0052】
目的地に到達していない場合には(ステップS106;No)、走行制御サーバ200は、生成された位置情報に基づき、搬送ロボット100の走行(移動)を指示する。この場合、まず直進するかどうかを決定する(ステップS107)。直進する場合には(ステップS107;Yes)、走行制御サーバ200は、搬送ロボット100に対して直進指示を行う(ステップS115)。
【0053】
一方、搬送ロボット100を直進させない場合(ステップS107;No)、走行制御サーバ200は、搬送ロボット100を右折させるか決定する(ステップS109)。搬送ロボット100を右折させる場合には(ステップS109;Yes)、右折指示を行う(ステップS111)。搬送ロボット100を左折させる場合には(ステップS109;No)、左折指示を行う(ステップS113)。さらに、走行制御サーバ200は、右折又は左折した搬送ロボット100に対して直進指示を行う(ステップS115)。この場合、移動ライン55の直進方向を第1方向D1とし、交差する方向を第2方向D2とするように再設定してもよい。このとき、処理はステップS101に戻る。以上が、搬送ロボットの走行制御方法である。
【0054】
本実施形態の場合、塗料で塗布形成された移動ラインを用いるため、テープを用いて形成する場合と同様に移動ラインの形成も容易であるとともに、テープを用いて形成された場合に比べて移動ラインが搬送ロボット100の走行部(クローラ)によってはがれる心配が軽減される。
【0055】
また、本実施形態の場合、特徴部分が建設現場の位置を示す識別情報を有しているため、複数の画像データを用いずに搬送ロボットの位置を確実に認識することができる。
【0056】
また、移動ラインを撮像して位置認識するときに、取得された特徴部分(検知した交差する部分の数)の情報をもとに位置情報を生成するため、建設現場のように環境が時々刻々変化する場所においても、複雑な位置情報をあらかじめ生成・取得する必要もない。
【0057】
また、本実施形態の場合、特徴部分は撮像部で認識可能であるため、新たに専用のセンサを設ける必要もない。また、特徴部分は搬送ロボットの走行部および撮像部の近傍に配置されるため、暗い状況において搬送ロボットが有する照明で照らして撮像することにより位置認識を正確に行うことが出来る。さらに、あらかじめ取得した情報をもとに、直進・右折・左折・停止が決まるため、複雑な走行命令も不要である。つまり、本実施形態を用いることにより、搬送ロボットの位置認識を容易かつ正確に行うことができ、搬送ロボットの走行を支援することができる。
【0058】
<第2実施形態>
本実施形態では、第1実施形態と異なる搬送ロボットの走行制御方法について説明する。具体的には、移動ライン55A-1と、移動ライン55A-2が交差する部分には、塗布形成されないブランク部58が設けられる例について説明する。
【0059】
図8は、取得された画像データ500Aの一例である。
図8の画像データ500Aの場合、移動ライン55A-1と、移動ライン55A-2が交差する部分55ovには、いずれの移動ラインも塗布形成されないブランク部58が設けられる。これにより、
図6および
図7とは異なり、搬送ロボット100が、交差する移動ライン55Aのどちらを走行した場合においても、特徴部分(移動ライン55A-2)は、交差する部分55ovの両側に同じように検出される。したがって、本実施形態を用いることにより、特徴部分をより安定して検出しやすくなる。
【0060】
<第3実施形態>
本実施形態では、第1実施形態とは異なる搬送ロボット用移動ライン走行制御方法について説明する。具体的には、移動ライン55B-1と、移動ライン55B-2とは異なるマーカーパターン56が配置される例について説明する。
【0061】
図9は、取得された画像データ500Bの一例である。
図9に示すように、本実施形態では、移動ライン55-1Bと、移動ライン55B-2に加えてマーカーパターン56が配置される。この例では、マーカーパターン56は、移動ライン55B-1または移動ライン55B-2とは所定の距離を有して離隔して配置される。マーカーパターン56-1は、移動ライン55B-1に沿って配置される。マーカーパターン56のうち、マーカーパターン56-2は、移動ライン55B-2に沿って配置されている。このとき、マーカーパターン56は、矩形を有する。本実施形態の場合、走行制御サーバ200は、マーカーパターン56を特徴部分に設定する。走行制御サーバ200は、マーカーパターン56の検出回数により搬送ロボット100の位置を認識してもよい。
【0062】
マーカーパターン56の色は、移動ライン55B-1、移動ライン55B-2と同じでもよいが、異ならせてもよい。マーカーパターン56の色を変えることにより、より確実に特徴部分として認識しやすくなる。
【0063】
なお、本実施形態では、マーカーパターン56は、移動ライン55B-1または移動ライン55B-2とは所定の距離を有して離隔しながら、移動ライン55B-1または移動ライン55B-2沿って配置されている例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、マーカーパターン56は、移動ライン55B-1と、移動ライン55B-2との交点上に設けられてもよい。または、マーカーパターン56は、移動ライン55B-1と、移動ライン55B-2との交点の周りに設けられてもよい。
【0064】
<第4実施形態>
本実施形態では、第1実施形態とは異なる搬送ロボットの走行制御方法について説明する。具体的には、移動ライン55-1Cと、移動ライン55C-2とは異なる位置認識可能なマーカーパターン57が配置される例について説明する。
【0065】
図10は、取得された画像データ500Cの一例である。
図10に示すように、本実施形態では、移動ライン55C-1と、移動ライン55C-2に加えてマーカーパターン57が配置される。この例では、マーカーパターン57は、移動ライン55-1または移動ライン55C-2とは所定の距離を有して離隔して配置される。マーカーパターン57のうち、マーカーパターン57-1は、移動ライン55C-1に沿って配置される。マーカーパターン57-2は、移動ライン55C-2に沿って配置されている。マーカーパターン57は、位置を認識可能な形状を有する。本実施形態の場合、走行制御サーバ200は、マーカーパターン57を特徴部分に設定する。この例では、マーカーパターン57は、円形状を有する。走行制御サーバ200は、マーカーパターン57における円の数により搬送ロボット100の位置を認識してもよい。
【0066】
マーカーパターン57の色は、移動ライン55C-1、移動ライン55C-2と同じでもよいが、異ならせてもよい。マーカーパターン57の色を変えることにより、より確実に特徴部分として認識しやすくなり、搬送ロボット100の位置を認識しやすくなる。
【0067】
また、本実施形態では、マーカーパターン57は、移動ライン55C-1または移動ライン55C-2とは所定の距離を有して離隔しながら、移動ライン55C-1または移動ライン55C-2沿って配置されている例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、マーカーパターン57は、移動ライン55C-1と、移動ライン55C-2との交点上に設けられてもよい。または、マーカーパターン57は、移動ライン55C-1と、移動ライン55C-2との交点の周りに設けられてもよい。さらに、マーカーパターン57は、移動ライン55C-1または移動ライン55C-2上に設けられてもよい。
【0068】
また、本実施形態では、マーカーパターン57は円形状を有したが、本発明はこれに限定されない。例えば、マーカーパターン57は、数字やアルファベットの形状を設けられてもよい。または、マーカーパターン57は、AR(Augmented Reality:拡張現実)マーカーパターンであってもよい。本実施形態の場合、特徴部分が建設現場の位置を示す識別情報を有しているため、複数の画像データを用いずに搬送ロボット100の位置を確実に認識することができる。
【0069】
<第5実施形態>
本実施形態では、第2実施形態と異なる搬送ロボット用移動ライン走行制御方法について説明する。具体的には、移動ライン55D-1と、移動ライン55D-2が交差する部分には、塗布形成されないブランク部を有する例について説明する。
【0070】
図11Aは、取得された画像データ500D-1の一例である。
図11Bは、取得された画像データ500D-2の一例である。
図11Aの場合、移動ライン55D-1と、移動ライン55D-2が交差する部分55ovにおいて、第2実施形態よりも広いブランク部58Dが設けられる。ブランク部58は、移動ライン55D-1と、移動ライン55D-2とが交差しない部分にも設けられてもよい。
【0071】
本実施形態の場合、
図11Aに示すように、ブランク部58Dよりも奥側にも移動ライン55D-1が配置されるが、
図11Bの場合ブランク部58Dよりも奥側には移動ライン55D-1(55D-1B)が存在しない状態となる。この場合、走行制御サーバ200は、移動ライン55D-1を見失ったと判定し、エラー情報を生成し、出力してもよい。
【0072】
(変形例)
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0073】
上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【0074】
なお、本発明の第1実施形態では、走行制御サーバ200からの指示に基づき搬送ロボット100の走行制御を行う例を示したが、本発明はこれに限定されない。走行制御サーバの制御部210で行われる処理を搬送ロボット100の制御部111で行ってもよい。これにより、搬送ロボット100が自ら位置を認識して走行することができる。
【0075】
また、上記では、搬送ロボット100を含む搬送ロボット走行制御システムを説明したが、搬送ロボット走行制御システムは、搬送ロボット100に限られず、あらゆる自動搬送車に適用することができる。
【0076】
なお、本実施形態において、位置情報の認識とともに、移動ラインの劣化状態を評価してもよい。この場合、画像データ全体の面積(ドット数)に対する対象色の面積(ドット数)から面積割合を算出してもよい。これにより、移動ラインが消失する前に移動ラインの補修を行うことができるため、搬送ロボットの安定した走行を支援することができる。
【0077】
本発明の第1実施形態では、第1方向に延びる移動ライン55-1と、第2方向に延びる移動ライン55-2が配置される例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、移動ライン55-1,55-2に加えて、ほかの移動ラインが交差するように配置されてもよい。この場合、3つの移動ラインが交差する部分を特徴部分として認識してもよい。
【符号の説明】
【0078】
10・・・搬送ロボット走行制御システム,50・・・建造物,50・・・建造物,51・・・作業フロア,51a・・・床面,53・・・資材,53-1・・・棒状資材,53-2・・・ブロック状資材,55・・・移動ライン,55ov・・・部分,56・・・マーカーパターン,57・・・マーカーパターン,58・・・ブランク部,100・・・搬送ロボット,110・・・ロボット本体部,111・・・制御部,113・・・記憶部,115・・・通信部,117・・・電源部,120・・・走行部,130・・・撮像部,200・・・走行制御サーバ,210・・・制御部,220・・・記憶部,230・・・通信部,240・・・操作部,250・・・表示部,260・・・出力部,500・・・画像データ,2101・・・撮像制御部,2103・・・取得部,2105・・・特徴部分検出部,2107・・・位置認識部,2109・・・移動指示部