(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000176
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】立坑内はしご
(51)【国際特許分類】
E06C 1/34 20060101AFI20231225BHJP
【FI】
E06C1/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098786
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】515267507
【氏名又は名称】株式会社ディッグ
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】磯上 章太
【テーマコード(参考)】
2E044
【Fターム(参考)】
2E044AA01
2E044BA12
2E044BB07
2E044BC02
2E044BC12
2E044BC22
2E044BC24
2E044CA01
2E044CB03
2E044CC01
2E044DA01
2E044DB01
2E044EE12
2E044EE13
(57)【要約】
【課題】はしごの設置作業にかかる時間と労力を軽減する。
【解決手段】立坑内はしご1は、坑壁にライナープレート2が設置された立坑3内に、上下方向に沿って配置された2本の支柱5と、前記支柱5間に上下方向に適宜の間隔で架設された複数のステップ6とを備えたはしご部材7が、上下方向に複数連続して配置されている。前記はしご部材7は、前記支柱5より上方に延びる部分の上端部に屈曲部を有し、この屈曲部を上段側のはしご部材7の最下段のステップ6に掛止することにより、前記はしご部材7が上下方向に連結可能とされるフック部11を備えるとともに、前記支柱5から前記ライナープレート2側に延び、先端に前記ライナープレート2の連結ボルト2aに固定可能な固定部13が形成された取付金具12を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
坑壁にライナープレートが設置された立坑内に、上下方向に沿って配置された2本の支柱と、前記支柱間に上下方向に適宜の間隔で架設された複数のステップとを備えたはしご部材が、上下方向に複数連続して配置されて成る立坑内はしごであって、
前記はしご部材は、前記支柱より上方に延びる部分の上端部に屈曲部を有し、この屈曲部を上段側のはしご部材の最下段のステップに掛止することにより、前記はしご部材が上下方向に連結可能とされるフック部を備えるとともに、
前記支柱から前記ライナープレート側に延び、先端に前記ライナープレートの連結ボルトに固定可能な固定部が形成された取付金具を備えていることを特徴とする立坑内はしご。
【請求項2】
前記フック部は、前記支柱と、該フック部が備えられる前記はしご部材の最上段の前記ステップとの隅部を通り、前記支柱と平行して延びるとともに、上端の前記屈曲部の先端が前記はしご部材の幅方向中央側を向くように斜めに設けられている請求項1記載の立坑内はしご。
【請求項3】
前記取付金具は、前記支柱に固定するためのクランプが備えられている請求項1記載の立坑内はしご。
【請求項4】
前記取付金具は、前記支柱から上方又は下方に湾曲する支持部材の先端に前記固定部が設けられている請求項1記載の立坑内はしご。
【請求項5】
前記取付金具は、前記支柱からほぼ垂直に真っ直ぐに延びる支持部材の先端部に前記固定部が形成されている請求項1記載の立坑内はしご。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、坑壁にライナープレートが設置された立坑内を作業者が昇降するため、上下方向に沿って配置された立坑内はしごに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、都市部や山岳地帯での橋梁基礎工事などに際して、深礎工法が用いられている。この深礎工法は、ライナープレートなどにより坑壁の土留めを行いながら、人力または小型バックホウなどの掘削機械で掘削して立坑を構築し、所定の支持地盤に到達したら内部に配筋を行い、コンクリートを打設して基礎を構築する工法である。前記ライナープレートは、鋼製波板の周囲4辺にフランジが設けられ、このフランジに連結用のボルトを挿通する複数の開孔が形成されたものである。
【0003】
前記ライナープレートの内周面には、立坑内を作業者が昇降できるように、上下方向に沿ってはしごが設けられている。
【0004】
前記はしごの固定構造としては、前記ライナープレートの連結用ボルトに固定される形態が多く、例えば、下記特許文献1には、はしご部が、ステップと、このステップを支える支持部とを有し、その支持部の基端が折り曲げられてライナープレートのフランジとの当接部が形成され、この当接部にボルトを通す孔が形成され、この孔にボルトを通して締め付けて、はしご部をフランジに取り付ける構造が開示されている。この特許文献1に記載されたはしご部は、上下方向に隣り合うライナープレートのフランジに対して、上下にそれぞれ取り付けられ、上下に取り付けられた2つで対を成すものである。
【0005】
また、下記特許文献2には、立坑内の上下方向に沿って配置される2本の軸棒が所定間隔を開けて配置され、2本の軸棒の間で長手方向に沿って適宜間隔を開けて複数本の横棒が設けられ、2本の軸棒の両端部にそれぞれ立坑の内周面に係止される取付金具が突設されて梯子部材が構成されたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平6-47599号公報
【特許文献2】特開平10-25888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載のはしごでは、各はしご部が、1本のステップの両端に支持部が形成されて構成されているため、必要なステップの数だけはしご部を設置しなければならず、はしごの設置作業に多大な時間と労力を要していた。
【0008】
また、上記特許文献2記載のはしごでは、各梯子部材の上部及び下部にそれぞれ2本の取付金具が延びており、各取付金具の先端をライナープレートの連結用ボルトに固定する構造となっているため、各梯子部材で合計4箇所のボルト締結作業が必要となり、はしごの設置作業に多大な時間と労力を要していた。
【0009】
そこで本発明の主たる課題は、はしごの設置作業にかかる時間と労力を低減した立坑内はしごを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、坑壁にライナープレートが設置された立坑内に、上下方向に沿って配置された2本の支柱と、前記支柱間に上下方向に適宜の間隔で架設された複数のステップとを備えたはしご部材が、上下方向に複数連続して配置されて成る立坑内はしごであって、
前記はしご部材は、前記支柱より上方に延びる部分の上端部に屈曲部を有し、この屈曲部を上段側のはしご部材の最下段のステップに掛止することにより、前記はしご部材が上下方向に連結可能とされるフック部を備えるとともに、
前記支柱から前記ライナープレート側に延び、先端に前記ライナープレートの連結ボルトに固定可能な固定部が形成された取付金具を備えていることを特徴とする立坑内はしごが提供される。
【0011】
上記請求項1記載の発明では、支柱間に複数のステップが設けられたはしご部材を上下方向に複数連続して配置して成る立坑内はしごにおいて、前記はしご部材は、前記支柱より上方に延びる部分の上端部に屈曲部を有し、この屈曲部を上段側のはしご部材の最下段のステップに掛止することにより、該はしご部材が上下方向に連結可能とされるフック部を備えるとともに、前記支柱から前記ライナープレート側に延び、先端に前記ライナープレートの連結ボルトに固定可能な固定部が形成された取付金具を備えている。
【0012】
このように、前記フック部を上段側のはしご部材のステップに掛止することにより、はしご部材の上端部が上段側のはしご部材に連結されるとともに、前記取付金具の先端に設けられた固定部をライナープレートの連結ボルトに固定することにより、はしご部材がライナープレートに固定されるため、はしご部材の固定が取付金具先端の2本の連結ボルトを固定するだけで完了し、はしごの設置作業にかかる時間と労力が大幅に低減できるようになる。
【0013】
請求項2に係る本発明として、前記フック部は、前記支柱と、該フック部が備えられる前記はしご部材の最上段の前記ステップとの隅部を通り、前記支柱と平行して延びるとともに、上端の前記屈曲部の先端が前記はしご部材の幅方向中央側を向くように斜めに設けられている請求項1記載の立坑内はしごが提供される。
【0014】
上記請求項2記載の発明では、前記フック部を上段側のはしご部材のステップに掛止しやすくするとともに、掛止後の安定性を増して安全性を高めるため、前記フック部の基端が支柱とステップとの隅部を通り、支柱と平行して延びるとともに、上端の屈曲部の先端が、はしご部材の幅方向中央側を向くように斜めに設けられるようにしている。
【0015】
請求項3に係る本発明として、前記取付金具は、前記支柱に固定するためのクランプが備えられている請求項1記載の立坑内はしごが提供される。
【0016】
上記請求項3記載の発明では、前記取付金具を支柱に対して任意の位置に固定できるようにするため、取付金具の支柱との連結側の端部にクランプを設け、このクランプによって支柱に固定できるようにしている。
【0017】
請求項4に係る本発明として、前記取付金具は、前記支柱から上方又は下方に湾曲する支持部材の先端に前記固定部が設けられている請求項1記載の立坑内はしごが提供される。
【0018】
上記請求項4記載の発明は、前記取付金具の第1形態例であり、支柱から上方又は下方に湾曲する支持部材の先端に前記固定部を設けたものである。支持部材を湾曲させることにより、ライナープレートに補強リングを設けた場合でも、この補強リングに干渉することなく、取付金具が設置できるようになる。
【0019】
請求項5に係る本発明として、前記取付金具は、前記支柱からほぼ垂直に真っ直ぐに延びる支持部材の先端部に前記固定部が形成されている請求項1記載の立坑内はしごが提供される。
【0020】
上記請求項5記載の発明は、前記取付金具の第2形態例であり、支柱からほぼ垂直に真っ直ぐに延びる支持部材の先端部に前記固定部が形成されるようにしたものである。本形態は、ライナープレートの補強リングが設けられない箇所などでの固定に好適である。
【発明の効果】
【0021】
以上詳説のとおり本発明によれば、立坑内はしごにおいて、はしごの設置作業にかかる時間と労力が大幅に低減できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る立坑内はしご1を示す、(A)は側面図、(B)は正面図である。
【
図2】はしご部材7を示す、(A)は正面図、(B)は上面図、(C)は(A)のC-C線矢視図である。
【
図3】(A)、(B)は、はしご部材7の連結要領を示す正面図である。
【
図4】変形例に係るはしご部材7を示す、(A)は正面図、(B)は上面図、(C)は(A)のC-C線矢視図である。
【
図5】(A)ははしご部材7の連結部の拡大図、(B)は(A)のB-B線矢視拡大図、(C)は(A)のC-C線矢視拡大図である。
【
図6】第1形態例に係る取付金具12を示す、(A)は正面図、(B)は上面図である。
【
図7】変形例に係る取付金具12を示す、(A)は正面図、(B)は上面図である。
【
図8】取付金具12による固定方法(その1)を示す側面図である。
【
図9】取付金具12による固定方法(その2)を示す側面図である。
【
図10】第2形態例に係る取付金具12を示す、(A)は正面図、(B)は上面図である。
【
図11】取付金具12による固定方法(その3)を示す側面図である。
【
図12】坑口はしご部材8を示す、(A)は正面図、(B)は上面図、(C)は側面図である。
【
図13】手摺り9を示す、(A)は側面図、(B)は上面図、(C)は正面図、(D)は(A)のD-D線矢視図である。
【
図14】坑口はしご部材8に手摺り9を設置した状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0024】
本発明に係る立坑内はしご1は、
図1に示されるように、坑壁の周方向及び上下方向に沿って複数のライナープレート2が設置された立坑3内に上下方向に沿って配置された、作業者が昇降するためのはしごである。前記立坑内はしご1は、上下方向に沿うとともに、所定の離隔幅で平行して配置された2本の支柱5、5と、前記支柱5、5間に上下方向に適宜の間隔で架設された複数のステップ6とを備えたはしご部材7が、上下方向に複数連続して配置されて構成される。また、前記立坑内はしご1の坑口側の端部には、両側に手摺り9を備えた坑口はしご部材8が設けられている。更に、前記立坑内はしご1には、上下方向に適宜の間隔で複数の背もたれ10が配置されている。
【0025】
前記はしご部材7は、詳細には
図2に示されるように、前記支柱5の上端より上方に延び、その上端がU字状に屈曲し、この屈曲部を上段側のはしご部材7の最下段のステップ6に掛止することにより、前記はしご部材7が上下方向に連結可能(
図3参照。)とされるフック部11を備えている。なお、
図2における符号5aは、管材からなる支柱5の上下端部の開口を閉塞する蓋体である。
【0026】
また、前記はしご部材7は、
図1に示されるように、前記支柱5から前記ライナープレート2側に延び、先端にライナープレート2の連結ボルト2aに固定可能な固定部13が形成された取付金具12を備えている。
【0027】
以下、更に具体的に説明すると、
前記はしご部材7は、鉄やアルミニウムなどの金属製である。前記支柱5は、円管、角管、山形鋼などの形鋼材などからなる上下方向に長い長手部材である。
【0028】
前記ステップ6は、断面が円形、半円形又は多角形などで形成された中実の細長い棒材などからなり、その両端部をそれぞれ前記支柱5に設けられた開孔に挿入した状態で、その接続部を溶接することにより、前記支柱5に固定されている。前記ステップ6は、支柱5の上端から下方向に所定距離だけ離隔した位置から、上下方向に所定の間隔で複数設けられている。
【0029】
前記ステップ6は、立坑内はしご1の全長に亘って上下方向にほぼ一定の間隔で配置され、その間隔は、好ましくは300~400mm程度である。上下方向に連結されたはしご部材7、7同士の間においても、隣り合うステップ6の間隔が一定となるように、前記フック部11の長さが調整されている。
【0030】
図2に示されるはしご部材7の高さ(全長)は約2mであり、支柱5、5間に6本のステップ6が配置されるようになっている。この変形例として、
図4に示されるように、はしご部材7の高さ(全長)を約1mとし、支柱5、5間に3本のステップ6が配置されるようにしてもよい。はしご部材7の高さを高くした方が、1回の設置作業で長い距離のはしごが設置でき、設置作業にかかる時間及び労力がより低減できるので好ましいが、あまり長くし過ぎると、前記取付金具12にかかる負荷が過大になり、取付金具12の破損や固定不良などの不具合が生じやすくなるため、
図2に示される2m程度までとするのが良い。
図4に示される約1mのはしご部材7は、坑底部などの半端な部分にはしごを設置する場合などに特に好適である。
【0031】
前記フック部11は、断面が円形又は多角形などで形成された中実の細長い棒材などからなり、
図2(C)に示されるように、支柱5の外面に接続して支柱5と平行して延びる基端部11aと、支柱5の上端より上方に突出する上方延在部11bとを有している。前記上方延在部11bの上端部は、逆U字状や逆V字状、コの字状などに屈曲する折り曲げ加工が施されることにより、上段側のはしご部材7のステップ6に掛止可能な屈曲部を形成している。前記基端部11aは、支柱5と接続して平行配置される部分が、ほぼ全長に亘って連続的又は断続的に支柱5に溶接固定されている。
【0032】
前記フック部11は、
図5に示されるように、支柱5に固定される基端部11aが、支柱5と、該フック部11が備えられるはしご部材7の最上段のステップ6との隅部を通り、支柱5と軸方向が平行するように配置されている。また、前記フック部11の上方延在部11bは、上端の屈曲部の先端がはしご部材7の幅方向中央側を向くように斜めに設けられている。上端の屈曲部の先端がはしご部材7の幅方向中央側を向くように斜めに設けられるとは、
図2(B)及び
図4(B)に示されるように、はしご部材7を上面側から見たときに、支柱5からライナープレート2側に突出するように配置された左右のフック部11の相互の離隔幅が、突出側にいくに従って徐々に小さくなるように配置されることを意味する。
【0033】
本発明に係る立坑内はしご1では、フック部11の基端部11aが支柱5とステップ6との隅部を通る位置で支柱5と軸方向が平行するように配置されているため、
図5に示されるように、はしご部材7を上段側のはしご部材7に掛止した状態で、下段側のはしご部材7から延びる左右のフック部11の上方延在部11bがそれぞれ、上段側のはしご部材7の支柱5と最下段のステップ6との隅部に係合して、上段側のはしご部材7と下段側のはしご部材7とのガタ付きが防止できる。また、フック部11上端の屈曲部の先端が、はしご部材7の幅方向中央側を向くように斜めに設けられているため、上段側のはしご部材7のステップ6に掛止する際、フック部11が上段側のはしご部材7の左右の支柱5、5間にスムーズに挿入でき、上段側のはしご部材7のステップ6に掛止する作業がしやすくなる。更に、フック部11をステップ6に掛止した際の安定性が増し、安全性を高めることができる。具体的には、仮にフックの先端が支柱5に対して垂直に突出するように設けられているとすると、
図5(B)に示されるように、丸棒からなるフック部11の幅方向外側部と、円管からなる支柱5の幅方向内側部とが若干ラップするラップ部Wを有しているため、フック部11が上段側のはしご部材7の支柱5に当接して安定性が悪くなるのに対して、本発明のように、フックの先端が幅方向中央側を向くように斜めに設けた場合は、フック部11をステップ6に掛止した状態で、フック部11と上段側のはしご部材7の支柱5との衝突が回避でき、ガタ付くことなく安定して掛止できるようになる。
【0034】
上述の通り、フック部11の基端部は、支柱5と接続する部分がほぼ全長に亘って支柱5に対して固定されているが、この固定部の長さ(支柱5に接続して平行配置されるフック部11の下端部の長さ)は、支柱5の上端から当該はしご部材7の最上段のステップ6より下側に延在する長さとするのが好ましい。このとき、
図2(C)及び
図4(C)のはしご部材7の側面図に示されるように、前記ステップ6が支柱5の上下方向中心線上(軸線上)に配置されている関係上、前記フック部11の基端部11aは、ステップ6に対してライナープレート2側(坑壁側)又はその反対側(立坑3の中心側)にずれた位置において、支柱5の中心軸とフック部11の基端部の中心軸とがほぼ平行するように配置される。このとき、
図2(C)及び
図4(C)に示されるように、フック部11の基端部11aは、ステップ6に対してライナープレート2と反対側(立坑3の中心側)の位置に配置した方が、上段側のはしご部材7との中心線が一致しやすくなり、連結された複数のはしご部材7が上下方向に真っ直ぐに配置されやすくなるので好ましい。
【0035】
前記フック部11を上段側のはしご部材7のステップ6に掛止した際、少なくとも前記ステップ6と接触する部分の前記フック部11に、ステップ6とのズレを防止し、両者の馴染みをよくする、滑り止め用のゴムを被覆しても良い。
【0036】
次いで、前記取付金具12について説明する。前記取付金具12は、はしご部材7の各支柱5をライナープレート2に固定するためのステーである。前記取付金具12は、一端がはしご部材7の支柱5に固定され、他端の前記固定部13がライナープレート2同士を連結する連結ボルト2aに固定される。取付金具12を支柱5に固定する位置は任意であるが、はしご部材7の上端部が前記フック部11によって上段側のはしご部材7のステップ6に掛止されているため、はしご部材7の設置時の安定性を高める観点から、はしご部材7の上下方向の中央位置より下方側であるのが好ましい。
【0037】
前記取付金具12は、後述する所定形状の支持部材の一方側の端部に、前記支柱5との連結のためのクランプ14が備えられ、その他方側の端部に、ライナープレート2の連結ボルト2aに固定可能な固定部13が備えられている。前記クランプ14としては、一般的な単管クランプが用いられる。前記単管クランプは、仮設足場の組み立て現場等で従来から使用される部材であり、パイプの外周を挟持することによってパイプに固定されるように構成されたものである。前記固定部13には、前記連結ボルト2aが挿通可能な開孔15が形成されている。
【0038】
各端部にそれぞれ上記のクランプ14又は固定部13が設けられる支持部材としては、以下に挙げる第1形態例又は第2形態例を用いることができる。前記取付金具12の第1形態例は、
図6及び
図7に示されるように、前記支柱5から上方または下方に湾曲する支持部材16の各端部に、前記固定部13又はクランプ14が設けられて構成されている。第1形態例に係る支持部材16は、湾曲する細長い棒状の部材であり、具体的には断面円形の中実丸棒やPC鋼棒が好適に用いられる。前記支持部材16は、所定の半径を有する略四半円形状に形成され、前記クランプ14が設けられる一端と、前記固定部13が設けられる他端との接線方向が互いに略直交するように形成されている。なお、前記支持部材16は、ライナープレート2と立坑内はしご1との離隔距離に応じて、
図6に示されるように、略四半円形状に湾曲した形状のみで形成してもよいし、
図7に示されるように、略四半円形状に湾曲した湾曲部16aと、この湾曲部16aのクランプ14が設けられる側の端部に連続して接線方向に延びる直線部16bとで形成してもよい。
【0039】
第1形態例に係る取付金具12によってはしご部材7を支持するには、
図8及び
図9に示されるように、ライナープレート2の連結ボルト2aを固定部13の開孔15に挿通するとともに、ライナープレート2の連結ボルト挿通用の開孔に挿通した上でナットで固定することにより、取付金具12の固定部13をライナープレート2に固定するとともに、前記クランプ14を支柱5に固定する。第1形態例に係る取付金具12では、支持部材16が所定形状に湾曲しているため、
図8に示されるように、ライナープレート2の連結部とほぼ同じ高さ位置にステップ6が配置される場合でも、このステップ6が設けられない位置にクランプ14を固定することができる。また、
図9に示されるように、ライナープレート2に補強リング20が設けられる場合、支持部材16が真っ直ぐに延びた形状では、前記補強リング20に干渉して補強リング20を加工しなければ取付金具12が取り付けられないが、支持部材16が所定形状に湾曲しているため、補強リング20に干渉せずに取付金具12が設置できるようになる。補強リング20との干渉を防止する観点から、支持部材16の湾曲部分の半径は、補強リング20のH形鋼のサイズに応じて適宜調整できるが、好ましくは150~250mm、特に200mm程度とするのがよい。前記支持部材16が湾曲する方向は、
図8に示されるように、支柱5から上方に湾曲するように配置してもよいし、
図9に示されるように、支柱5から下方に湾曲するように配置してもよい。
【0040】
前記取付金具12の第2形態例としては、
図10に示されるように、前記支柱5からほぼ垂直方向にライナープレート2側に向けて真っ直ぐに延びる支持部材17の各端部に、前記固定部13又はクランプ14が設けられて構成されている。第2形態例に係る支持部材17は、真っ直ぐな、ある程度の曲げ剛性を備えた部材であり、具体的には山形鋼や溝形鋼などの形鋼材が好適に用いられる。前記支持部材17の一端には、ライナープレート2の連結ボルトが挿通可能な開孔15が形成されることにより、前記固定部13が形成されている。
【0041】
第2形態例に係る取付金具12によってはしご部材7を支持するには、
図11に示されるように、ライナープレート2の連結ボルト2aを固定部13の開孔15に挿通するとともに、ライナープレート2の連結ボルト挿通用の開孔に挿通した上でナットで固定することにより、取付金具12の固定部13をライナープレート2に固定するとともに、前記クランプ14を支柱5に固定する。第2形態例に係る取付金具12では、支持部材17が真っ直ぐに延びているため、補強リングが設けられない箇所などに使用するのが好ましい。
【0042】
本発明に係る立坑内はしご1では、
図1に示されるように、立坑3の坑口側の端部に、坑口はしご部材8が配置されるとともに、その両側に手摺り9が設けられている。
【0043】
前記坑口はしご部材8は、
図12に示されるように、上下方向に沿うとともに、所定の離隔幅で平行して配置された円管などからなる2本の支柱18、18と、前記支柱18、18間に上下方向に適宜の間隔で架設された複数のステップ6とを備えている。前記支柱18の上端部には、直径方向に対向する位置にそれぞれ、上端縁から所定深さで形成された溝部18aが設けられている。
【0044】
前記手摺り9は、
図13に示されるように、支柱9aと、この支柱9aの上部に設けられる手摺り部材9bと、前記手摺り部材9bより下方部において、前記支柱9aの直径方向に対向する位置で直径方向に突出する突起部9c、9cとから構成されている。
【0045】
前記坑口はしご部材8に手摺り9を取り付けるには、
図14に示されるように、坑口はしご部材8の支柱18の上端開口に手摺り9の支柱9aを差し込み、手摺り9の突起部9cを坑口はしご部材8の溝部18aに嵌合させる。これにより、手摺り9が回転することなく支柱9aに取り付けられる。
【0046】
前記手摺り9が取り付けられる坑口はしご部材8をライナープレート2に固定するには、
図1に示されるように、前記取付金具12によって、坑口はしご部材8の各支柱18の上部及び下部をそれぞれライナープレート2に固定する。
【0047】
次に、立坑内はしご1の上下方向に適宜の間隔で設けられる背もたれ10は、
図15に示されるように、円弧状の帯材又は板材からなる背もたれ本体10aと、その両端に設けられたクランプ10bとからなり、左右のクランプ10bをはしご部材7の左右の支柱5にそれぞれ固定することにより、作業者が立坑内はしご1を昇降するときの安全性を確保している。
【0048】
なお、図示しないが、立坑内はしご1には、万一の転落時における安全確保のため、一定間隔毎に踊り場が設けられ、はしごの位置を変更して組み立てられている。
【符号の説明】
【0049】
1…立坑内はしご、2…ライナープレート、3…立坑、5…支柱、6…ステップ、7…はしご部材、8…坑口はしご部材、9…手摺り、10…背もたれ、11…フック部、12…取付金具、13…固定部、14…クランプ、15…開孔、16・17…支持部材