(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176000
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】DC/DCコンバータおよびそのコントローラ回路
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
H02M3/155 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094173
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】福島 瞬
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS05
5H730BB13
5H730DD04
5H730EE13
5H730EE58
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD38
5H730FD51
5H730FF06
5H730FG11
(57)【要約】
【課題】改良された電流モードのDC/DCコンバータのコントローラ回路を提供する。
【解決手段】エラーアンプ210は、DC/DCコンバータ100の出力電圧VOUTとその目標電圧の誤差を増幅して誤差信号EOUTを生成する。電流モードのパルス変調器220は、誤差信号EOUTとDC/DCコンバータ100のコイル電流ILを示す電流検出信号CSNSとにもとづいて、パルス信号TONを生成する。電流リップル検出回路240は、コイル電流ILのピークを示すピーク電流検出信号PEAKおよびコイル電流ILのボトムを示すバレー電流検出信号VALLEYを生成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DC/DCコンバータのコントローラ回路であって、
前記DC/DCコンバータの出力電圧とその目標電圧の誤差を増幅して誤差信号を生成するエラーアンプと、
前記誤差信号と前記DC/DCコンバータのコイル電流を示す電流検出信号とにもとづいて、パルス信号を生成する電流モードのパルス変調器と、
前記コイル電流のピークを示すピーク電流検出信号および前記コイル電流のボトムを示すバレー電流検出信号を生成する電流リップル検出回路と、
を備える、コントローラ回路。
【請求項2】
前記パルス変調器は、前記誤差信号に前記ピーク電流検出信号と前記バレー電流検出信号の差分にもとづくリップル検出信号の所定係数倍の信号を合成した信号が、前記電流検出信号と等しくなると、前記パルス信号を第1レベルとし、所定時間の経過後に前記パルス信号を第2レベルとする、請求項1に記載のコントローラ回路。
【請求項3】
前記DC/DCコンバータは、ハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを含む同期整流型の降圧コンバータであり、
前記電流リップル検出回路は、
前記パルス信号が前記ハイサイドトランジスタのオンを指示するオンレベルからオフを指示するオフレベルに遷移したことをトリガーとして、前記コイル電流を示す電流検出信号をサンプルホールドして前記ピーク電流検出信号を生成し、
前記パルス信号が前記オフレベルから前記オンレベルに遷移したことをトリガーとして、前記電流検出信号をサンプルホールドして前記バレー電流検出信号を生成する、請求項1に記載のコントローラ回路。
【請求項4】
前記電流リップル検出回路は、
前記パルス信号が前記オンレベルから前記オフレベルに遷移した後、所定時間の間、アサートされる第1サンプルホールド信号と、前記パルス信号が前記オフレベルから前記オンレベルに遷移した後、所定時間の間、アサートされる第2サンプルホールド信号を生成するタイミング発生器と、
前記第1サンプルホールド信号に応じて前記電流検出信号をサンプルホールドして前記ピーク電流検出信号を生成する第1サンプルホールド回路と、
前記第2サンプルホールド信号に応じて前記電流検出信号をサンプルホールドして前記バレー電流検出信号を生成する第2サンプルホールド回路と、
を含む、請求項3に記載のコントローラ回路。
【請求項5】
前記電流リップル検出回路は、
前記第1サンプルホールド回路の後段に接続された少なくともひとつのスイッチドキャパシタフィルタと、
前記第2サンプルホールド回路の後段に接続された少なくともひとつのスイッチドキャパシタフィルタと、
をさらに含む、請求項4に記載のコントローラ回路。
【請求項6】
前記DC/DCコンバータは、ハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを含む同期整流型の降圧コンバータであり、
前記電流リップル検出回路は、
前記パルス信号が前記ハイサイドトランジスタのオンを指示するオンレベルからオフを指示するオフレベルに遷移したことをトリガーとして、前記コイル電流を示す電流検出信号をサンプルホールドして前記ピーク電流検出信号を生成し、
前記パルス信号が前記オフレベルである区間において前記電流検出信号をトラックし、前記パルス信号が前記オンレベルに遷移するとホールドして前記バレー電流検出信号を生成する、請求項1に記載のコントローラ回路。
【請求項7】
前記電流リップル検出回路は、
前記パルス信号が前記オンレベルから前記オフレベルに遷移した後、所定時間の間、アサートされる第1サンプルホールド信号と、前記パルス信号が前記オフレベルである区間においてアサートされる第2サンプルホールド信号を生成するタイミング発生器と、
前記第1サンプルホールド信号に応じて前記電流検出信号をサンプルホールドして前記ピーク電流検出信号を生成する第1サンプルホールド回路と、
前記第2サンプルホールド信号に応じて前記電流検出信号をトラックホールドして前記バレー電流検出信号を生成する第2サンプルホールド回路と、
を含む、請求項6に記載のコントローラ回路。
【請求項8】
前記電流リップル検出回路は、
前記第1サンプルホールド回路の後段に接続されたスイッチドキャパシタフィルタと、
前記第2サンプルホールド回路の後段に接続されたスイッチドキャパシタフィルタと、
をさらに含む、請求項7に記載のコントローラ回路。
【請求項9】
前記パルス変調器は、
前記誤差信号を差動電流に変換するgmアンプと、
前記gmアンプの第1出力と、コイル電流の経路上に設けられたインピーダンス素子の一端との間に接続される第1抵抗と、
前記gmアンプの第2出力と、前記インピーダンス素子の他端との間に接続される第2抵抗と、
前記gmアンプの前記第1出力と前記第2出力と、前記ピーク電流検出信号および前記バレー電流検出信号と、を受け、前記gmアンプの前記第1出力と前記第2出力の差分電圧と、前記ピーク電流検出信号と前記バレー電流検出信号の差分の1/2倍の信号と、を比較可能に構成された比較回路と、
を含む、請求項2に記載のコントローラ回路。
【請求項10】
前記比較回路は、
インバータと、
それぞれの出力が前記インバータと共通に接続された複数のgmアンプと、
を含む、請求項9に記載のコントローラ回路。
【請求項11】
ひとつの半導体基板に一体集積化される、請求項1から10のいずれかに記載のコントローラ回路。
【請求項12】
請求項1から10のいずれかに記載のコントローラ回路を備える、DC/DCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、DC/DCコンバータ(スイッチングレギュレータ)に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートホンや、タブレットコンピュータなどの民生機器、車載機器、OA機器、産業機器をはじめとするさまざまな電子機器には、電池電圧や外部電源電圧よりも低い、または高い電源電圧を必要とする回路部品が搭載される。このような回路部品に適切な電源電圧を供給するために、降圧DC/DCコンバータ(Buckコンバータ)や昇圧DC/DCコンバータが利用される。
【0003】
DC/DCコンバータの制御方式のひとつとして電流モード制御がある。電流モード制御では、DC/DCコンバータの出力電圧と目標電圧の誤差をエラーアンプによって増幅し、コイル電流をエラーアンプの出力電圧(誤差電圧という)で決まる電流量の近傍に安定化する。つまり、誤差電圧は、コイル電流の目標値を示しており、DC/DCコンバータの負荷電流に応じて変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、電流モードのDC/DCコンバータにおいて、COT(Constant-On-Time)制御あるいは一定オフ時間制御(Constant-Off-Time)を導入するにあたり、以下の課題を認識するに至った。
【0006】
ここでは、電流モードの降圧コンバータにCOT制御を組み合わせる場合を例として説明する。
【0007】
COT制御では、スイッチングトランジスタがオフである期間(オフ区間)、コイル電流の検出値VCSが、エラーアンプの出力である誤差電圧EOUTと比較される。コイル電流の検出値VCSが誤差電圧EOUTより低くなると、スイッチングトランジスタがターンオンする。そして一定のオン時間の経過後に、スイッチングトランジスタがターンオフする。
【0008】
この制御では、誤差電圧EOUTは、コイル電流のボトムレベル(バレー電流)を規定していることになる。したがって電流モードのコンバータでは、誤差電圧EOUTをクランプすることにより、電流制限をかけることが可能である。
【0009】
ここでコイル電流はリップルをもち、リップル幅は、DC/DCコンバータの入力電圧、出力電圧に依存して変化する。したがって、誤差電圧EOUTをある電圧レベルVCLにてクランプした場合に、バレー電流は、電圧レベルVCLに応じた電流レベルに制限されることとなるが、そのときのコイル電流の平均値(実効値)は、リップル幅によって変化してしまい、アプリケーションの設計を困難としている。
【0010】
本開示は係る状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、改良された電流モードのDC/DCコンバータのコントローラ回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示のある態様は、DC/DCコンバータのコントローラ回路に関する。コントローラ回路は、DC/DCコンバータの出力電圧とその目標電圧の誤差を増幅して誤差信号を生成するエラーアンプと、誤差信号とDC/DCコンバータのコイル電流を示す電流検出信号とにもとづいて、パルス信号を生成する電流モードのパルス変調器と、コイル電流のピークを示すピーク電流検出信号およびコイル電流のボトムを示すバレー電流検出信号を生成する電流リップル検出回路と、を備える。
【0012】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、構成要素や表現を方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0013】
本開示のある態様によれば、改良された電流モードのDC/DCコンバータのコントローラ回路が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、比較技術に係るDC/DCコンバータの回路図である。
【
図2】
図2は、
図1のDC/DCコンバータの動作波形図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るコントローラ回路を備えるDC/DCコンバータのブロック図である。
【
図4】
図4は、
図3のDC/DCコンバータの動作波形図である。
【
図5】
図5は、電流リップル検出回路のブロック図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るコントローラ回路を備える電流モードのCOT方式のDC/DCコンバータの回路図である。
【
図7】
図7は、一実施例に係るコントローラ回路の一部の回路図である。
【
図8】
図8は、
図7の電流リップル検出回路の動作波形図である。
【
図9】
図9は、変形例1に係る電流リップル検出回路の構成例を示す回路図である。
【
図10】
図10は、変形例1に係る電流リップル検出回路の動作波形図である。
【
図11】
図11は、変形例2に係る電流リップル検出回路の回路図である。
【
図12】
図12は、変形例3に係るコントローラ回路の回路図である。
【
図14】
図14は、変形例4に係るDC/DCコンバータの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。またこの概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、実施形態の欠くべからざる構成要素を限定するものではない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0016】
この概要は、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。その唯一の目的は、後で提示するより詳細な説明の前置きとして、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化した形で提示することである。
【0017】
一実施形態に係るDC/DCコンバータのコントローラ回路は、DC/DCコンバータの出力電圧とその目標電圧の誤差を増幅して誤差信号を生成するエラーアンプと、誤差信号とDC/DCコンバータのコイル電流を示す電流検出信号とにもとづいて、パルス信号を生成する電流モードのパルス変調器と、コイル電流のピークを示すピーク電流検出信号およびコイル電流のボトムを示すバレー電流検出信号を生成する電流リップル検出回路と、を備える。
【0018】
この態様によると、ピーク電流検出信号とバレー電流検出信号を生成することで、それらの差分であるリップル電流の情報を、DC/DCコンバータの制御に利用することができる。
【0019】
一実施形態において、パルス変調器は、誤差信号にピーク電流検出信号とバレー電流検出信号の差分にもとづくリップル検出信号の所定係数倍の信号を合成した信号が、電流検出信号と等しくなると、パルス信号を第1レベルとし、所定時間の経過後にパルス信号を第2レベルとしてもよい。この構成によれば、誤差信号にもとづいて、コイル電流の平均値を制御することができる。
【0020】
一実施形態において、DC/DCコンバータは、ハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを含む同期整流型の降圧コンバータであってもよい。電流リップル検出回路は、パルス信号がハイサイドトランジスタのオンを指示するオンレベルからオフを指示するオフレベルに遷移したことをトリガーとして、コイル電流を示す電流検出信号をサンプルホールドしてピーク電流検出信号を生成し、パルス信号がオフレベルからオンレベルに遷移したことをトリガーとして、電流検出信号をサンプルホールドしてバレー電流検出信号を生成してもよい。
【0021】
一実施形態において、電流検出信号は、検出対象の電流の経路上に設けられたインピーダンス素子の第1端に発生する第1電圧と、第2端に発生する第2電圧と、を含んでもよい。
【0022】
一実施形態において、電流リップル検出回路は、パルス信号がオンレベルからオフレベルに遷移した後、所定時間の間、アサートされる第1サンプルホールド信号と、パルス信号がオフレベルからオンレベルに遷移した後、所定時間の間、アサートされる第2サンプルホールド信号を生成するタイミング発生器と、第1サンプルホールド信号に応じて電流検出信号をサンプルホールドしてピーク電流検出信号を生成する第1サンプルホールド回路と、第2サンプルホールド信号に応じて電流検出信号をサンプルホールドしてバレー電流検出信号を生成する第2サンプルホールド回路と、を含んでもよい。
【0023】
一実施形態において、電流リップル検出回路は、第1サンプルホールド回路の後段に接続された少なくともひとつのスイッチドキャパシタフィルタと、第2サンプルホールド回路の後段に接続された少なくともひとつのスイッチドキャパシタフィルタと、をさらに含んでもよい。
【0024】
一実施形態において、DC/DCコンバータは、ハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを含む同期整流型の降圧コンバータであってもよい。電流リップル検出回路は、パルス信号がハイサイドトランジスタのオンを指示するオンレベルからオフを指示するオフレベルに遷移したことをトリガーとして、コイル電流を示す電流検出信号をサンプルホールドしてピーク電流検出信号を生成し、パルス信号がオフレベルである区間において電流検出信号をトラックし、パルス信号がオンレベルに遷移するとホールドしてバレー電流検出信号を生成してもよい。
【0025】
一実施形態において、電流リップル検出回路は、パルス信号がオンレベルからオフレベルに遷移した後、所定時間の間、アサートされる第1サンプルホールド信号と、パルス信号がオフレベルである区間においてアサートされる第2サンプルホールド信号を生成するタイミング発生器と、第1サンプルホールド信号に応じて電流検出信号をサンプルホールドしてピーク電流検出信号を生成する第1サンプルホールド回路と、第2サンプルホールド信号に応じて電流検出信号をトラックホールドしてバレー電流検出信号を生成する第2サンプルホールド回路と、を含んでもよい。
【0026】
一実施形態において、電流リップル検出回路は、第1サンプルホールド回路の後段に接続されたスイッチドキャパシタフィルタと、第2サンプルホールド回路の後段に接続されたスイッチドキャパシタフィルタと、をさらに含んでもよい。
【0027】
一実施形態において、パルス変調器は、誤差信号を差動電流に変換するgmアンプと、gmアンプの第1出力と、コイル電流の経路上に設けられたインピーダンス素子の一端との間に接続される第1抵抗と、gmアンプの第2出力と、インピーダンス素子の他端との間に接続される第2抵抗と、gmアンプの第1出力と第2出力と、ピーク電流検出信号およびバレー電流検出信号と、を受け、gmアンプの第1出力と第2出力の差分電圧と、ピーク電流検出信号とバレー電流検出信号の差分の1/2倍の信号と、を比較可能に構成された比較回路と、を含んでもよい。
【0028】
一実施形態において、比較回路は、インバータと、それぞれの出力がインバータと共通に接続された複数のgmアンプと、を含んでもよい。
【0029】
一実施形態において、コントローラ回路は、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0030】
(実施形態)
以下、本開示を、好適な実施形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、発明あるいは開示を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明あるいは開示の本質的なものであるとは限らない。
【0031】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0032】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に接続された状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0033】
はじめに、比較技術を参照して、電流モードのDC/DCコンバータに、COT(固定オン時間)制御を組み入れたときの問題点を説明する。
【0034】
図1は、比較技術に係るDC/DCコンバータ100Rの回路図である。DC/DCコンバータ100Rは、入力ライン102の入力電圧VINを降圧し、目標電圧レベルに安定化された出力電圧VOUTを出力ライン104に発生する同期整流型の降圧コンバータである。
【0035】
DC/DCコンバータ100Rは、コントローラ回路600とその周辺回路を含む。周辺回路は、インダクタL1、出力キャパシタC1、抵抗R11,R12を含む。
【0036】
抵抗R11,R12は、出力電圧VOUTを分圧し、フィードバックピンFBに供給する。エラーアンプ610は、FBピンの電圧(フィードバック電圧FB)と基準電圧VREF1の誤差を増幅し、誤差信号EOUTを生成する。
【0037】
パルス変調器620は、誤差信号EOUTと、インダクタL1に流れるコイル電流ILを示す電流検出信号CSNSと、にもとづいて、COT制御によってパルス信号TONを生成する。パルス変調器620は、コンパレータ622およびワンショット回路624を含みうる。コンパレータ622は、誤差信号EOUTと電流検出信号CSNSを比較し、電流検出信号CNSが誤差信号EOUTまで低くなると、比較信号COMPをアサートする。ワンショット回路624は、比較信号COMPにもとづいてパルス信号TONを生成する。パルス信号TONは、比較信号COMPのアサートに応答して、M1のオン、M2のオフを指示するオンレベルに遷移し、所定オン時間の経過後に、M1のオフ、M2のオンを指示するオフレベルに遷移する。
【0038】
ドライバ回路630は、パルス信号TONにもとづいて、ハイサイドトランジスタM1およびローサイドトランジスタM2を駆動する。
【0039】
図2は、
図1のDC/DCコンバータ100Rの動作波形図である。
図2には、入力電圧VIN、コイル電流IL、パルス信号TONが示される。電流モードのCOT制御では、コイル電流ILのボトムレベル(バレー電流Ivalley)が、誤差信号EOUTによって規定される。誤差信号EOUTは、出力電圧VOUTが目標レベルに近づくようにフィードバック制御されている。この例では、オン区間の長さtonは、パルス信号TONの周波数が一定となるように入力電圧VINに応じて調節されているが、入力電圧VINによらない一定であってもよい。
【0040】
ここでコイル電流ILはリップルをもち、リップル幅は、DC/DCコンバータの入力電圧VINに依存して変化する。したがって、コイル電流ILの平均値Idcは、誤差電圧EOUTのみでなく、入力電圧VINにも依存する。この性質が、アプリケーションの設計を複雑なものとしている。
【0041】
たとえば電流モードのCOT制御では、誤差電圧EOUTは、コイル電流のボトムレベル(バレー電流)を規定するため、誤差電圧EOUTをクランプすることにより、電流制限をかけることが可能である。ところが、入力電圧VINが変化すると、コイル電流ILの平均値Idcおよびピークが変化するため、コイル電流ILの実質的なクランプレベルを設定することができない。
【0042】
さらに、誤差信号EOUTが、コイル電流の平均値Idcを示すように回路が構成されていれば、誤差信号EOUTにもとづく電流制限が正確かつ容易となろう。あるいは、誤差信号EOUTにもとづいて負荷電流(DC/DCコンバータの出力電流)を正確にモニターすることができよう。
【0043】
続いて、実施形態に係るコントローラ回路200について説明する。
【0044】
図3は、実施形態に係るコントローラ回路200を備えるDC/DCコンバータ100のブロック図である。コントローラ回路200は、エラーアンプ210、パルス変調器220、ドライバ回路230、電流リップル検出回路240を備える。
【0045】
抵抗R11,R12は、出力電圧VOUTを分圧し、フィードバックピンFBに供給する。エラーアンプ210は、FBピンの電圧(フィードバック電圧FB)と基準電圧VREF1の誤差を増幅し、誤差信号EOUTを生成する。エラーアンプ210は、gmアンプ(トランスコンダクタンスアンプ)212および位相補償回路214を含みうる。
【0046】
パルス変調器220は、誤差信号EOUTと、インダクタL1に流れるコイル電流ILを示す電流検出信号CSNSと、にもとづいて、COT制御によってパルス信号TONを生成する。
【0047】
ドライバ回路230は、パルス信号TONにもとづいて、ハイサイドトランジスタM1およびローサイドトランジスタM2を駆動する。
【0048】
電流リップル検出回路240は、電流検出信号CSNSのピーク(ピーク電流)を示すピーク電流検出信号PEAKと、電流検出信号CSNSのボトム(バレー電流)を示すバレー電流検出信号VALLEYと、を生成する。ピーク電流検出信号PEAKとバレー電流検出信号VALLEYの差分は、コイル電流ILのリップル幅Irippleを示す。つまり電流リップル検出回路240は、コイル電流ILのリップル情報RIPPLEを生成可能となっている。このリップル情報RIPPLEは、パルス変調器220の制御に利用される。電流リップル検出回路240は、ピーク電流検出信号PEAKとバレー電流検出信号VALLEYの差分を計算して、電流リップル情報RIPPLEを生成し、パルス変調器220に供給してもよい。あるいは、電流リップル検出回路240は、ピーク電流検出信号PEAKとバレー電流検出信号VALLEYをパルス変調器220に供給し、パルス変調器220において、ピーク電流検出信号PEAKとバレー電流検出信号VALLEYの差分を計算して、電流リップル情報RIPPLEを生成してもよい。
【0049】
パルス変調器220は、誤差信号EOUTを電流リップル情報RIPPLEの所定係数(α<1)倍の信号RIPPLE×αと合成した信号が、電流検出信号CSNSと等しくなると、パルス信号TONを第1レベルに遷移させ、所定時間の経過後に第2レベルに遷移させる。
【0050】
パルス変調器220は、電流モードのCOT制御(ボトム検出オン時間固定制御)を行ってもよい。その場合、パルス変調器220は、誤差信号EOUTから信号RIPPLE×αを減算した値が、電流検出信号CSNSの値と等しくなると、パルス信号TONを、ハイサイドトランジスタM1のオンを指示する第1レベル(オンレベル)に遷移させ、所定時間tonの経過後に、ハイサイドトランジスタM1のオフを指示する第2レベル(オフレベル)に遷移させる。所定時間tonは、一定の長さであってもよいし、入力電圧VINに応じて変化してもよい。αは、好ましくは1/2であるが、1/2からずれた値を用いてもよい。
【0051】
つまり、パルス変調器220は、3つの信号EOUT,CSNS,RIPPLEにもとづいて、下の関係式が成り立ったかを監視し、この関係式が成り立つと、パルス信号TONをオンレベルに遷移させる。
EOUT-RIPPLE×α>CSNS …(1)
【0052】
したがって、パルス変調器220は、(i)EOUT-RIPPLE×αとCSNSを比較してもよいし、(ii)EOUTを、RIPPLE×α+CSNSを比較してもよいし、(iii)CSNS-EOUTを、-RIPPLE×αと比較してもよいし、(iv)EOUT-CSNSを、RIPPLE×αと比較してもよい。これらはすべて等価である。
【0053】
以上がコントローラ回路200の構成である。続いてその動作を説明する。
【0054】
図4は、
図3のDC/DCコンバータ100の動作波形図である。コントローラ回路200においては、関係式(1)が成り立つタイミングで、パルス信号TONがオンレベルとなり、ハイサイドトランジスタM1がターンオンする。α=1/2である場合、誤差信号EOUTよりも1/2×Iripple相当低い信号EOUT2が、バレー電流Ivalleyを規定することとなる。このとき、元の誤差信号EOUTは、コイル電流ILの平均値Idcを示すこととなる。つまり、誤差信号EOUTによって、コイル電流ILの平均値Idcを制御することができる。
【0055】
これにより、たとえば誤差信号EOUTを所定レベルにクランプすることにより、電流制限をかける場合に、クランプレベルを、コイル電流ILの平均値に対して定めることができる。
【0056】
あるいは、誤差信号EOUTが、コイル電流ILの平均値を示すことになるため、誤差信号EOUTにもとづいて、負荷電流IOUTを間接的にモニターすることが可能となる。
【0057】
続いて、電流リップル検出回路240の構成について説明する。
【0058】
図5は、電流リップル検出回路240のブロック図である。電流リップル検出回路240は、タイミング発生器242、第1サンプルホールド回路244、第2サンプルホールド回路246を備える。
【0059】
電流リップル検出回路240は、パルス信号TONがオンレベルからオフレベルに遷移したことをトリガーとして電流検出信号CSNSをサンプルホールドしてピーク電流検出信号PEAKを生成する。また電流リップル検出回路240は、パルス信号TONがオフレベルからオンレベルに遷移したことをトリガーとして、電流検出信号CSNSをサンプルホールドして、バレー電流検出信号VALLEYを生成する。
【0060】
この例に電流検出信号CSNSは、検出対象の電流の経路上に設けられたインピーダンス素子RSNSの第1端に発生する第1電圧CSPと、第2端に発生する第2電圧CSNと、を含む。インピーダンス素子RSNSは、インダクタL1と直列に接続されたセンス抵抗であってもよいし、ローサイドトランジスタM2と直列に接続されたセンス抵抗であってもよい。あるいはローサイドトランジスタM2のオン抵抗を、インピーダンス素子RSNSとして利用してもよい。
【0061】
タイミング発生器242は、パルス信号TONにもとづいて、第1サンプルホールド信号SH1および第2サンプルホールド信号SH2を生成する。具体的にはタイミング発生器242は、パルス信号TONがオンレベルからオフレベルに遷移した後、所定時間の間、第1サンプルホールド信号SH1をアサートする。またパルス信号TONがオフレベルからオンレベルに遷移した後、所定時間の間、第2サンプルホールド信号SH2をアサートする。
【0062】
第1サンプルホールド回路244は、第1サンプルホールド信号SH1に応じて電流検出信号CSNSをサンプルホールドしてピーク電流検出信号PEAKを生成する。第2サンプルホールド回路246は、第2サンプルホールド信号SH2に応じて電流検出信号CSNSをサンプルホールドしてバレー電流検出信号VALLEYを生成する。
【0063】
続いてパルス変調器220の構成例を説明する。
【0064】
図6は、実施形態に係るコントローラ回路200を備える電流モードのCOT方式のDC/DCコンバータ100の回路図である。この例では電流検出用のインピーダンス素子(センス抵抗)RSNSは、インダクタL1と直列に接続されている。コントローラ回路200のCSPピン、CSNピンは、センス抵抗RSNSの両端と接続されている。
【0065】
パルス変調器220は、コンパレータ222およびワンショット回路224を備える。コンパレータ222は、3つの信号EOUT,CSNS,RIPPLEにもとづいて、関係式(1)が成り立ったかを監視し、この関係式が成り立つと、比較信号COMPをアサートする。
EOUT-RIPPLE×α>CSNS …(1)
【0066】
ワンショット回路224は、比較信号COMPがアサートされてから、オン時間tonの間、オンレベル(たとえばハイ)となるパルス信号TONを生成する。
【0067】
コンパレータ222は、EOUT-CSNSを、RIPPLE×αと比較する。
【0068】
コンパレータ222は、gmアンプ226、抵抗R21,R22、比較回路228を備える。gmアンプ226は、誤差信号EOUTを差動電流Idiffに変換する。抵抗R21は、gmアンプ226の一方の出力とCPSピンの間に接続され、抵抗R22は、gmアンプ226の他方の出力とCPNピンの間に接続される。抵抗R21,R22の抵抗値は等しくRである。
【0069】
gmアンプ226の出力には、EOUT-CSNSに相当する差分電圧ΔVが発生する。比較回路228は、差分電圧ΔVと、電流リップル情報RIPPLEを受け、差分電圧ΔVがRIPPLE/2と等しくなると、比較信号COMPをアサートする。
【0070】
続いて電流リップル検出回路240および比較回路228の構成例を説明する。
【0071】
図7は、一実施例に係るコントローラ回路200Aの一部の回路図である。
【0072】
電流リップル検出回路240Aを参照する。第1サンプルホールド回路244Aは、キャパシタC1P,C1NおよびスイッチSW1P,SW1Nを含む。スイッチSW1P,SW1Nは、第1サンプルホールド信号SH1がアサートされる期間、オンとなり、ネゲートされる期間、オフとなる。第2サンプルホールド回路246Aは、キャパシタC2P,C2NおよびスイッチSW2P,SW2Nを含む。スイッチSW2P,SW2Nは、第2サンプルホールド信号SH2がアサートされる期間、オンとなり、ネゲートされる期間、オフとなる。
【0073】
図8は、
図7の電流リップル検出回路240Aの動作波形図である。キャパシタC1Pの電圧INP1と、キャパシタC1Nの電圧INN1の差分が、ピーク電流検出信号PEAKとなる。キャパシタC2Pの電圧INP2とキャパシタC2Nの電圧INN2の差分が、バレー電流検出信号VALLEYとなる。
【0074】
図7に戻る。比較回路228Aは、第1gmアンプgm1、第2gmアンプgm2、第3gmアンプgm3およびバッファ(インバータ)229を含む。第1gmアンプgm1は、差分電圧ΔVに応じた電流信号Igm1を生成する。第2gmアンプgm2は、ピーク電流検出信号PEAKに応じた電流信号Igm2を生成する。第3gmアンプgm3は、バレー電流検出信号VALLEYに応じた電流信号Igm3を生成する。gmアンプgm1およびgm3には、入力が逆極性で入力されており、電流信号Igm1およびIgm3は、gm2と逆向きに流れる。第2gmアンプgm2および第3gmアンプgm3のトランスコンダクタンスは、第1gmアンプgm1のトランスコンダクタンスの1/2倍に設定される。
【0075】
CMOSバッファ229の入力ノードには、3つのgmアンプgm1~gm3の出力電流Igm1,Igm2,Igm3の量に応じた電圧が発生する。具体的には-Igm1+(Igm2-Igm3)/2が正であるとき、CMOSバッファ229の入力電圧は上昇し、CMOSバッファ229のしきい値電圧より高くなり、比較信号COMPがハイレベル(アサート)に遷移する。Igm1は、ΔV=EOUT-CSNSに対応しており、Igm2-Igm3は、RIPPLEに対応している。つまり、比較回路228Aによれば、EOUT-CSNSと、RIPPLE/2を比較することができる。
【0076】
続いてコントローラ回路200の変形例を説明する。
【0077】
(変形例1)
図8の制御では、ローサイドトランジスタM2がオフの期間においても、インピーダンス素子RSNSに電流が流れている必要がある。したがって、インピーダンス素子RSNSの配置箇所に制約があり、ローサイドトランジスタM2と直列にインピーダンス素子RSNSを設けたり、ローサイドトランジスタM2のオン抵抗を、インピーダンス素子RSNSとして利用したりすることができない。
【0078】
ローサイドトランジスタM2と直列にインピーダンス素子RSNSを設けたり、ローサイドトランジスタM2のオン抵抗を、インピーダンス素子RSNSとして利用したい場合には、変形例1を採用することができる。
【0079】
図9は、変形例1に係る電流リップル検出回路240Bの構成例を示す回路図である。電流リップル検出回路240Bは、パルス信号TONがオフレベルである区間において電流検出信号CSNSをトラックし、パルス信号TONがオンレベルに遷移するとホールドしてバレー電流検出信号VALLEYを生成する。この変形例では、タイミング発生器242Bは、パルス信号TONがオフレベルである区間において、第2サンプルホールド信号SH2をアサートする。
【0080】
電流リップル検出回路240Bは、第1サンプルホールド回路244B、第2サンプルホールド回路246Bに加えて、スイッチドキャパシタフィルタ248Bを含む。スイッチドキャパシタフィルタ248は、第2サンプルホールド信号SH2の反転信号/SH2に応じて制御される。
【0081】
図10は、変形例1に係る電流リップル検出回路240Bの動作波形図である。スイッチドキャパシタフィルタ248のキャパシタの容量値を、第2サンプルホールド回路246のキャパシタの容量値に比べて十分に小さくすることにより、スイッチドキャパシタフィルタ248の出力の差分INP2-INN2は、バレー電流検出信号VALLEYを示す。
【0082】
(変形例2)
これまで説明した電流リップル検出回路240(240A,240B)が生成するピーク電流検出信号PEAKおよびバレー電流検出信号VALLEYは、直前のサイクルにおける電流にもとづいたものであった。こうして得られた電流情報にもとづいてパルス信号TONを発生すると、DC/DCコンバータの応答に対して非常に大きな補正が繰り返されることとなり、回路動作が不安定となる場合もある。
【0083】
そこで、第1サンプルホールド回路244、第2サンプルホールド回路246の後段に、検出信号を平滑化するフィルタを挿入するとよい。フィルタは、RCフィルタのようなアナログフィルタや、スイッチドキャパシタフィルタを用いることができる。
【0084】
図11は、変形例2に係る電流リップル検出回路240Cの回路図である。電流リップル検出回路240Cは、第1サンプルホールド回路244、第2サンプルホールド回路246、スイッチドキャパシタフィルタ250,252,254,256を備える。スイッチドキャパシタフィルタ250,254は、第2サンプルホールド信号SH2の反転信号/SH2によって制御され、スイッチドキャパシタフィルタ252,256は、第2サンプルホールド信号SH2によって制御される。フィルタ回路のカットオフ周波数は、スイッチドキャパシタフィルタの段数を増やすほど低くなり、また最終段のスイッチドキャパシタフィルタ252,256のキャパシタの容量値を大きくするほど低くなる。
【0085】
(変形例3)
図12は、変形例3に係るコントローラ回路200Dの回路図である。電流リップル検出回路240Dの基本構成は、
図11の電流リップル検出回路240Cと同様であるが、サンプルホールド回路およびスイッチドキャパシタフィルタの構成が異なっている。具体的にはサンプルホールド回路244Dは、1個のキャパシタC21および2個のスイッチSW1P,SW1Nを含む。スイッチドキャパシタフィルタ250Dは、1個のキャパシタC22および2個のスイッチSW2P,SW2Nを含む。スイッチドキャパシタフィルタ252Dは、1個のキャパシタC22および1個のスイッチSW2Pを含む。第2サンプルホールド回路246D、スイッチドキャパシタフィルタ254D、256Dも、同様に構成される。
【0086】
比較回路228Dは、第1gmアンプgm1、第4gmアンプgm4、CMOSバッファ229を含む。第4gmアンプgm4は、
図7の第2gmアンプgm2および第3gmアンプgm3を1個にまとめたものである。
【0087】
図13は、
図12のコントローラ回路200Dの動作波形図である。CSP-CSNは、電流検出信号CSNSに相当する。また、INN2-INP2は、ΔV=EOUT-CSNSに相当する。またINN1-INP1は、リップル情報RIPPLE(=PEAK-VALLEY)に相当する。
【0088】
コイル電流ILは、センス抵抗RSNSにおいて電圧に変換され、電圧降下CSP-CSNが発生する。抵抗R21およびR22に流れる電流の差は、gmアンプ226のトランスコンダクタンスgm0に比例し、
gm0×(EOUT-VREF2)
となる。したがって、
INN2-INP2=CSP-CNS-gm0×(EOUT-VREF2)
となる。この信号と、0.5×(INP1-INN1)が比較されるため、
(INN2-INP2)+0.5×(INP1-INN1)<0
より、
gm0×R×(EOUT-VREF2)>(CSP-CNS)+0.5×(INN1-INP1)
を満たすと、比較信号COMPがアサートされ、パルス信号TONがオンレベルとなる。これにより、ハイサイドトランジスタM1がオン、ローサイドトランジスタM2がオフとなり、スイッチングノードSWがハイになり、コイル電流ILが上昇する。
【0089】
スイッチングノードSWがローからハイになるタイミングでは、CSP-CSNにバレー電流の情報が、INN1-INP1には、リップル電流Irippleを平滑化した情報が保存されているため、EOUT-VREF2の差電圧によって、コイル電流の平均電流を制御できることがわかる。
【0090】
(変形例4)
図14は、変形例4に係るDC/DCコンバータ100Eの回路図である。変形例4に係るコントローラ回路200Eでは、センス抵抗RSNSが、ローサイドトランジスタM2と直列に接続されている。その他は、
図6と同様である。
【0091】
(変形例5)
これまでの説明では、ボトム検出オン時間固定制御を説明したが、本開示はそれに限定されず、ピーク検出オフ時間固定制御にも適用可能である。また、降圧コンバータのみでなく、昇圧コンバータや昇降圧コンバータにも適用可能である。またハイサイドトランジスタM1およびローサイドトランジスタM2は、外付けのディスクリート部品であってもよい。
【0092】
実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにさまざまな変形例が存在すること、またそうした変形例も本開示に含まれ、また本発明の範囲を構成しうることは当業者に理解されるところである。
【0093】
(付記)
本明細書には以下の技術が開示される。
【0094】
(項目1)
DC/DCコンバータのコントローラ回路であって、
前記DC/DCコンバータの出力電圧とその目標電圧の誤差を増幅して誤差信号を生成するエラーアンプと、
前記誤差信号と前記DC/DCコンバータのコイル電流を示す電流検出信号とにもとづいて、パルス信号を生成する電流モードのパルス変調器と、
前記コイル電流のピークを示すピーク電流検出信号および前記コイル電流のボトムを示すバレー電流検出信号を生成する電流リップル検出回路と、
を備える、コントローラ回路。
【0095】
(項目2)
前記パルス変調器は、前記誤差信号に前記ピーク電流検出信号と前記バレー電流検出信号の差分にもとづくリップル検出信号の所定係数倍の信号を合成した信号が、前記電流検出信号と等しくなると、前記パルス信号を第1レベルとし、所定時間の経過後に前記パルス信号を第2レベルとする、項目1に記載のコントローラ回路。
【0096】
(項目3)
前記DC/DCコンバータは、ハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを含む同期整流型の降圧コンバータであり、
前記電流リップル検出回路は、
前記パルス信号が前記ハイサイドトランジスタのオンを指示するオンレベルからオフを指示するオフレベルに遷移したことをトリガーとして、前記コイル電流を示す電流検出信号をサンプルホールドして前記ピーク電流検出信号を生成し、
前記パルス信号が前記オフレベルから前記オンレベルに遷移したことをトリガーとして、前記電流検出信号をサンプルホールドして前記バレー電流検出信号を生成する、項目1に記載のコントローラ回路。
【0097】
(項目4)
前記電流リップル検出回路は、
前記パルス信号が前記オンレベルから前記オフレベルに遷移した後、所定時間の間、アサートされる第1サンプルホールド信号と、前記パルス信号が前記オフレベルから前記オンレベルに遷移した後、所定時間の間、アサートされる第2サンプルホールド信号を生成するタイミング発生器と、
前記第1サンプルホールド信号に応じて前記電流検出信号をサンプルホールドして前記ピーク電流検出信号を生成する第1サンプルホールド回路と、
前記第2サンプルホールド信号に応じて前記電流検出信号をサンプルホールドして前記バレー電流検出信号を生成する第2サンプルホールド回路と、
を含む、項目3に記載のコントローラ回路。
【0098】
(項目5)
前記電流リップル検出回路は、
前記第1サンプルホールド回路の後段に接続された少なくともひとつのスイッチドキャパシタフィルタと、
前記第2サンプルホールド回路の後段に接続された少なくともひとつのスイッチドキャパシタフィルタと、
をさらに含む、項目4に記載のコントローラ回路。
【0099】
(項目6)
前記DC/DCコンバータは、ハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを含む同期整流型の降圧コンバータであり、
前記電流リップル検出回路は、
前記パルス信号が前記ハイサイドトランジスタのオンを指示するオンレベルからオフを指示するオフレベルに遷移したことをトリガーとして、前記コイル電流を示す電流検出信号をサンプルホールドして前記ピーク電流検出信号を生成し、
前記パルス信号が前記オフレベルである区間において前記電流検出信号をトラックし、前記パルス信号が前記オンレベルに遷移するとホールドして前記バレー電流検出信号を生成する、項目1に記載のコントローラ回路。
【0100】
(項目7)
前記電流リップル検出回路は、
前記パルス信号が前記オンレベルから前記オフレベルに遷移した後、所定時間の間、アサートされる第1サンプルホールド信号と、前記パルス信号が前記オフレベルである区間においてアサートされる第2サンプルホールド信号を生成するタイミング発生器と、
前記第1サンプルホールド信号に応じて前記電流検出信号をサンプルホールドして前記ピーク電流検出信号を生成する第1サンプルホールド回路と、
前記第2サンプルホールド信号に応じて前記電流検出信号をトラックホールドして前記バレー電流検出信号を生成する第2サンプルホールド回路と、
を含む、項目6に記載のコントローラ回路。
【0101】
(項目8)
前記電流リップル検出回路は、
前記第1サンプルホールド回路の後段に接続されたスイッチドキャパシタフィルタと、
前記第2サンプルホールド回路の後段に接続されたスイッチドキャパシタフィルタと、
をさらに含む、項目7に記載のコントローラ回路。
【0102】
(項目9)
前記パルス変調器は、
前記誤差信号を差動電流に変換するgmアンプと、
前記gmアンプの第1出力と、コイル電流の経路上に設けられたインピーダンス素子の一端との間に接続される第1抵抗と、
前記gmアンプの第2出力と、前記インピーダンス素子の他端との間に接続される第2抵抗と、
前記gmアンプの前記第1出力と前記第2出力と、前記ピーク電流検出信号および前記バレー電流検出信号と、を受け、前記gmアンプの前記第1出力と前記第2出力の差分電圧と、前記ピーク電流検出信号と前記バレー電流検出信号の差分の1/2倍の信号と、を比較可能に構成された比較回路と、
を含む、項目2に記載のコントローラ回路。
【0103】
(項目10)
前記比較回路は、
インバータと、
それぞれの出力が前記インバータと共通に接続された複数のgmアンプと、
を含む、項目9に記載のコントローラ回路。
【0104】
(項目11)
ひとつの半導体基板に一体集積化される、項目1から10のいずれかに記載のコントローラ回路。
【0105】
(項目12)
項目1から11のいずれかに記載のコントローラ回路を備える、DC/DCコンバータ。
【符号の説明】
【0106】
100 DC/DCコンバータ
102 入力ライン
104 出力ライン
M1 ハイサイドトランジスタ
M2 ローサイドトランジスタ
L1 インダクタ
C1 出力キャパシタ
200 コントローラ回路
210 エラーアンプ
212 gmアンプ
214 位相補償回路
220 パルス変調器
222 コンパレータ
224 ワンショット回路
226 gmアンプ
R21,R22 抵抗
228 比較回路
230 ドライバ回路
240 電流リップル検出回路
242 タイミング発生器
244 第1サンプルホールド回路
246 第2サンプルホールド回路
248,250,252,254 スイッチドキャパシタフィルタ