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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176003
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】共振電流制御形直流電源
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20241212BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H02M3/28 Q
H02M3/155 Q
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094178
(22)【出願日】2023-06-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】594170185
【氏名又は名称】大西 徳生
(72)【発明者】
【氏名】大 西 徳 生
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA15
5H730AA18
5H730AS04
5H730AS05
5H730AS11
5H730BB13
5H730BB14
5H730BB43
5H730BB61
5H730CC01
5H730EE02
5H730EE07
5H730EE08
5H730EE10
5H730FG05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】共振形DCDCコンバータを構成する上で、少なくとも共振用スイッチと出力制御用スイッチが必要としていたが、回路構成の更なる簡単化と効率向上が課題となる。
【解決手段】共振電流制御形DCDCコンバータ200は、フライバックDCDCコンバータ230-2が、スイッチSがオン期間に共振キャパシタCrの充電電圧から電流をインダクタLdに流し、オフ信号により、インダクタLdの電流は継続して負荷側に流すが、共振キャパシタCrからの電流はオフに移す共通した電流制御動作により、次の共振電流動作を開始する。共振動作と出力制御動作を兼ね備えることにより、更なる回路構成の簡単化と効率改善ができると共に、交流電源の全波整流出力を直流電源に用いることにより、交流電流波形改善、力率改善も改善する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源に、必要に応じて逆流防止ダイオードを介して、共振インダクタLrと必要に応じて逆充電防止用ダイオードを逆並列に接続した共振キャパシタCrを直列接続したLC共振回路を接続し、前記共振キャパシタCrの両端にスイッチSとインダクタLdおよびダイオードで構成される昇降圧チョッパ回路あるいは降圧チョッパ回路を用いたDC-DCコンバータを接続して、前記DC-DCコンバータの出力に平滑キャパシタCdが並列接続された直流負荷を接続する回路構成において、
前記LC共振回路の共振周期に同期して前記スイッチSのスイッチングパルス幅を制御することにより、1個のスイッチだけで前記LC共振電流の制御と前記直流負荷への電圧、電流制御を可能とすることを特徴とする共振電流制御形直流電源。
【請求項2】
請求項1記載の共振電流制御形電源における前記DC-DCコンバータを構成とする前記昇降圧チョッパ回路を、前記共振キャパシタCrの両端に、変圧器の一次巻線と前記スイッチを直列接続して接続し、前記変圧器の二次巻線の一端に逆流防止ダイオードを介して前記平滑用キャパシタCdに接続し、前記平滑用キャパシタCdの他端に前記変圧器の二次巻線の他端を接続し、前記平滑用キャパシタCdの両端に直流負荷を接続するフライバック形DCDCコンバータの回路構成とし、
前記降圧チョッパ回路は、前記共振キャパシタCrの両端に、変圧器の一次巻線と前記スイッチを直列接続して接続し、前記変圧器の二次巻線の一端に逆流防止ダイオードにフリーフォイーリングダイオードと平滑用インダクタLdを介して平滑用キャパシタCdに接続し、前記平滑用キャパシタCdおよび前記フリーフォイーリングダイオードの他端を前記変圧器の二次巻線の他端に接続し、前記平滑用キャパシタCdの両端に直流負荷を接続するフォワード形DCDCコンバータの回路構成とし、
変圧器を用いた構成とすることにより、大幅な電圧制御と前記直流電源から絶縁した直流出力を得ることを可能とすることを特徴とする共振電流制御形直流電源。
【請求項3】
請求項1から請求項2記載の共振電流制御形電源における前記直流電源を、交流電源から全波整流回路を介して構成し、前記スイッチによるスイッチングパルス幅制御により、
前記交流電源が単相正弦波の場合は、前記全波整流回路の交流側に前記共振電流に対する共振周波数成分を除去する交流フィルタ回路を介することにより交流電流波形を正弦波状とし、
前記交流電源が三相平衡正弦波の場合は、前記全波整流回路の直流出力側に共振周波数成分を除去する交流フィルタ回路を介することにより、120度通流幅の方形波状の交流電流波形とし、
前記直流負荷への電圧、電流制御を可能とすることを特徴とする共振電流制御形直流電源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源としてのLED照明器具用電源から比較的容量の大きなインバータエアコンなど比較的容量の大きな応用分野の電気エネルギーを消費する負荷に対する直流電源の電源品質改善と小型化、軽量化、低価格化に貢献する技術である。
【背景技術】
【0002】
LED照明は、本来の低消費電力や長寿命の特徴に加えて省エネ化への期待や制御機能の向上が図られるため、近年の照明器具の低価格化と共に広く普及してきた。
【0003】
LED照明電源は、電気エネルギーを一方的に需要要求に応じて消費する負荷であるため、極めて簡単な回路構成でも実用に供することができるが、市販される台数が極めて多いため、比較的簡単な回路構成で必要とする特性を有することが求められている。
【0004】
一般的なLED照明用電源は、交流電源を整流して電解コンデンサで平滑した後、スイッチ回路で調光制御しており、ハードスイッチング損失、スイッチングノイズ、電解コンデンサによる寿命等の課題に加えて、力率改善対策としてPFC(Power Factor Correction:力率改善)整流回路を付加したものは、LED照明用駆動電源としては動作電圧が高くなり、その後段に電圧を下げるためにDC-DCコンバータを接続する2段構成となるなど、回路構成がさらに複雑化するなどの課題があった。
【0005】
一方、インバータエアコンなどのインバータの直流電源の構成においては、LED照明用電源に比べて比較的動作電圧が高く、動作電流も大きいので、整流動作における電流波形ひずみによる周辺機器への影響も大きい。
【0006】
このため、インバータエアコン用の直流電源構成においてもPFCコンバータが用いられており、主回路構成が複雑化するだけでなく、スイッチング損失、高周波ノイズが課題となるため、種々の改善策も講じられている。
【0007】
こうした課題に対し、スイッチング損失やスイッチングノイズの低減に有効なソフトスイッチング技術による共振形整流制御動作と、それに接続するDCDCコンバータによる電流制御動作を組み合わせた制御により、極めて簡単な回路構成ではあるが、優れた流入電流特性のもと、DCDCコンバータの課題に対し、イッチング制御で出力電圧電流制御を実現することができる共振形AC-DC電源が発明されている。
【0008】
この電源は、第一のスイッチング素子をオンすることにより、零電流ソフトスイッチングで共振キャパシタを充電することができ、共振キャパシタに接続されたDC-DCコンバータの第二のスイッチング素子をオン、オフする通流幅制御をかけることにより、整流回路の出力電圧電流制御と流入電流波形の改善を一定のスイッチング周波で行うことができる。
【0009】
本発明は、第一のスイッチング素子を用いることなく、第二のスイッチング素子のオン、オフ制御だけで、共振電流による共振キャパシタへの充電と、DC-DCコンバータの出力電圧電流制御を行わせることができ、主回路構成の更なる簡単化とスイッチング素子での通電損失を無くすことができ効率の更なる改善も期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特願1990-97272:「一石式共振形コンバータ」
【特許文献2】特願1995-213050:「共振形コンバータ」
【特許文献3】特願2007-28829:「共振電流制御方法」
【特許文献4】特許第6667750:「DC-DCコンバータ」
【特許文献5】特許第6775745:「AC-DCコンバータ」
【特許文献6】特許第7137260:「AC-DC電源」
【特許文献7】特願2023-0470731:「共振形AC-DC電源」
【0011】
パワーエレクトロニクス機器は、理想的なスイッチング制御ができれば、原理的には損失を伴わないことから、スイッチング素子の高速化に向けた開発が進み、近年では従来からのシリコン半導体に代わり、SiC半導体、GaN半導体が利用可能となってきており、この傾向は今後も急速に進むものと思われる。
【0012】
そして、スイッチング周波数を高くすることで、インダクタ、キャパシタ、変圧器などが小型化でき、効率改善と装置の小型軽量化が急速に進んでいる。
【0013】
一方で、ハードスイッチング制御によるものは、スイッチング特性が高速化できても、スイッチングの伴うスイッチング損失やスイッチングノイズの発生の問題は残る。
【0014】
これに対して、スイッチング素子にかかる電圧か電流が零の時にスイッチング制御できれば、これらの問題が解決でき、ソフトスイッチング制御として実用に供しているが、ソフトスイッチング制御をさせるための回路構成や制御システムが複雑化することが課題となっている。
【0015】
(特許文献1)は、フライバックDCDCコンバータの変圧器の二次側で共振動作をさせることにより、変圧器の磁束リセットの課題を解決しようとするもので、1個のスイッチで構成制御でき、回路構成は簡単であるが、スイッチング周波数の制御が課題となる。
【0016】
(特許文献2)は、LC共振制御と出力制御に用いる2個のスイッチング素子のスイッチングタイミングを制御するDCDCコンバータの方式であり、共振動作をさせるが、スイッチング周波数が一定にできる特徴があるが、スイッチングタイミング制御が複雑化するなどの課題がある。
【0017】
(特許文献3)は、LC共振回路と2個のスイッチング素子を用いており、(特許文献2)と類似しているが、共振電流の大きさが負荷の軽重に応じて変えられることを特徴としている。
【0018】
(特許文献4)は、高周波方形波電圧形インバータを用いたソフトスイッチング制御による絶縁型DCDCコンバータであり、共振電流が負荷電流に応じて変化するので、(特許文献3)と同様に軽負荷時の共振電流による通電損失を抑制できるが、主回路構成は多少複雑化する。
【0019】
以上は、共振制御技術をDCDCコンバータに適用したときの制御手法であるが、直流電源を交流電源から得るAC-DCコンバータの場合には、整流回路の流入電流特性改善が求められる。
【0020】
(特許文献5)は、(特許文献4)の共振電流が負荷電流に応じて変化することを活かした共振回路動作をAC-DCコンバータへ適用したもので、共振電流の振幅が交流電源電圧に比例するため、高周波フィルタを接続するだけで、流入電流波形を正弦波状にすることができる。
【0021】
しかしながら、直流負荷として一定の順方法電圧降下を有するLEDや、直流出力に平滑キャパシタが接続される場合は、正弦波形とはならない。
【0022】
(特許文献6)は、この課題を克服するために、共振キャパシタと平滑用キャパシタが接続された直流負荷の間に、昇圧形DCDCコンバータを挿入してスイッチング制御により、LED等の負荷が接続されても流入電流波形をほぼ正弦波に改善することができる。
【0023】
しかし、出力制御に応じてスイッチング動作周波数を変化させることが必要となり、大幅な主直電圧電流制御が課題となる。
【0024】
(特許文献7)は、この課題を克服するため、共振キャパシタと直流負荷間に昇降圧形DCDCコンバータを挿入し、共振キャパシタを充電させる共振電流が零になった時点以降に、昇降圧形DCDCのスイッチの通流幅を制御する手法により、一定のスイッチング動作周波数で、直流出力電圧、電流制御が、ほぼ正弦波の流入電流で可能とすることができる。
【0025】
(特許文献7)は、DCDCコンバータにフライバックコンバータを用いることにより、変圧器の変圧比により絶縁した任意の出力電圧を得ることができる。
【0026】
また、二つのスイッチをチャージポンプ構成とすることによりドライブ回路も簡単化できる。
【0027】
本発明は、このような優れた特徴を有する(特許文献7)の共振形AC-DC電源の更なる簡単化と効率向上を目指すものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
(特許文献7)は、LC共振回路の共振動作をさせるための逆流防止機能を有する第一のスイッチ回路と、共振電流で共振キャパシタに充電された電圧に対しDCDCコンバータを介して、直流負荷に給電し、直流出力電圧、電流を制御するための第二のスイッチ回路で構成制御するため、主回路構成と二つのスイッチのドライブ回路等が幾分複雑化するなどが課題となっている。
【0029】
また、第一のスイッチは共振電流により零電流でソフトスイッチング制御されるためスイッチング損失は低く抑えられるが、共振電流の大きさに比例した通電損失が効率の低下につながる。
【0030】
本発明は、第一のスイッチを使わずに、第二のスイッチだけで(特許文献7)の優れた特徴を有する共振電流制御電源を実現するものである。
【0031】
図1は、(特許文献7)の共振形AC-DC電源のLC共振回路部と昇降圧形DC-DCコンバータ部で構成した共振電流制御形DCDCコンバータ回路である。
【0032】
直流電源Esに対して、逆流防止機能を有する第一のスイッチ回路により制御されるLC共振回路の共振電流により充電された共振キャパシタCrの電圧を昇降圧形DCDCコンバータの第二のスイッチの通流幅Tonを制御することにより、直流出力電圧、電流を制御できる。
【0033】
図2は、第一のスイッチと第二のスイッチのスイッチング信号に対する共振電流ir,共振キャパシタの共振電圧erと、共振キャパシタCrから第二のスイッチに流れる電流id1と第二のスイッチがオフ時に負荷回路に流れる電流id2の波形を示している。
【0034】
ここで、共振電流irは、第一のスイッチS1をオンした時点での、直流電源電圧Esと共振キャパシタCrの充電電圧の差電圧ΔEに比例した共振電流irが流れる。
【0035】
このため、負荷電流が小さいと共振キャパシタCrの電圧低下は引いので差電圧ΔEは小さく共振電流irも小さくなるが、負荷電流が大きくなると共振キャパシタCrの電圧低下は大きくなり、零電圧に達するようになり、共振電流irは最大となる。
【0036】
図3は、第一のスイッチS1をオン状態とし、第二のスイッチをLC共振回路の共振周期に同期して、通流幅制御する1スイッチ共振電流制御形DCDCコンバータ回路である。
【0037】
図4は、このDCDCコンバータ回路において、第一のスイッチS1をオン状態のもと、第二のスイッチS2の通流幅制御したときの各部のスイッチング動作波形を示している。
【0038】
同図で、第二のスイッチS2をオンすることにより、共振キャパシタCrの電圧が低下し、通流幅Ton後にオフした時点での直流電源電圧Esと共振キャパシタCrの電圧erとの差電圧ΔEに比例した共振電流irが流れることを示している。
【0039】
LC共振回路に共振電流が流れ始めるタイミングは異なるが、第二のスイッチS2の通流幅制による負荷電流の大小によって生じる差電圧ΔEに比例した共振電流irが流れることが分かる。
【0040】
すなわち、第一のスイッチS1による共振電流制御によらないでも、第一のスイッチを用いることなく第二のスイッチS2のだけで、共振電流制御と出力電圧電流制御が行うことができることから、第一のスイッチを用いる場合に比べて、主回路構成を簡単化できるだけでなく、第一のスイッチS1での通電損失およびソフトスイッチング動作によるもののスイッチング損失やスイッチングノイズの発生を無くすことができる。
【0041】
図5は、図3のDCDCコンバータ部に変圧器を用いたフライバックコンバータに置き換えたもので、変圧器を用いることにより、変圧比の設定で電圧制御範囲の制限をなくし、直流電源から絶縁した直流出力が得られる。
【0042】
次に、図6は、図3の昇降圧形DCDCコンバータ回路を降圧形DCDCコンバータ回路に置き換えた共振電流制御形降圧DCDCコンバータ回路である。
【0043】
また、図7は、図5のフライバックDCDCコンバータをフォワードDCDCコンバータに置き換えた共振電流制御形フォワードコンバータ回路である。
【0044】
これら共振電流制御形DCDCコンバータは、昇降圧形DCDCコンバータや降圧形DCDCコンバータ、フライバックDCDCコンバータおよびフォワードDCDCコンバータのいずれも、スイッチSがオン期間に共振キャパシタCrの充電電圧から電流をインダクタLdに流し、オフ信号により、インダクタLdの電流は継続して負荷側に流すが、共振キャパシタCrからの電流はオフに移す共通した電流制御動作により、次の共振電流動作が開始する動作となっている。
【0045】
図8は、共振キャパシタCrからの電流をオン、オフ制御するDCDCコンバータの基本動作を模式図で表現した共振電流制御形DCDCコンバータの基本回路構成である。
【0046】
図9に、共振電流制御形DCDCコンバータのスイッチSの通流幅Ton1,Ton2(>Ton1)を変えたときの動作波形を示しており、通流幅のオフ時点から共振キャパシタCrに共振電流irが流れ込みa)通流幅が小さいときは共振キャパシタCrの電圧低下による差電圧ΔEは小さく、共振電流irおよびスイッチSがオフ時点で負荷側に流れ込むパルス電流id2と祖穂平均電流ioも小さくなるが、b)通流幅が大きくなると、共振電流irおよび負荷電流Ioいずれも大きくなることを示している。
【0047】
本発明の共振電流制御形直流電源は、直流電源あるいは交流電源から直接でなく、LC共振回路を介してからDCDCコンバータに接続する回路構成としているが、その効果を述べる。
【0048】
図10は、直流電源から必要とする直流電圧に変換する共振電流制御形直流電源の構成模式図を示しており、図11は直流電源側の電圧Esと共振電流irおよび電源電流波形isの波形を示している。
【0049】
LC共振回路を用いることで、DCDCコンバータのスイッチング制御によるパルス状の電流波形が電源側に流れず、LC共振回路の共振電流irが流れ、小さなLCによる直流電源フィルタにより、流入電流isは共振振動電流の平均電流となる。
【0050】
図12は、交流電源から整流して必要とする直流電圧に変換する共振電流制御形直流電源の構成模式図を示しており、図13は交流電源側の電圧esと共振電流irおよび電源電流波形isの波形を示している。
【0051】
この場合、整流した電圧波形は正弦波交流電源電圧の絶対値波形となり、その電圧振幅に比例した共振電流irが流れるが、交流側の電流isは、小さなLCによる交流電源フィルタにより、
特別なPFC制御によることなく、交流電源電圧と同じ波形の正弦波電流にすることができる。
【0052】
交流電源から整流した電圧を、LC共振回路を介することなくDCDCコンバータに直接接続した場合は、DCDCコンバータのスイッチング制御によるパルス状の電流が交流ラインに直接流れることとなる。
【0053】
図14は、三相平衡交流電圧を三相ブリッジ回路で整流し、小さなLCフィルタ回路を通した電圧出力を必要とする直流電圧に変換する共振電流制御形直流電源の構成模式図であり、この場合の交流電源電流isは、図示するような120度通流幅の方形波に近い電流波形となる
【0054】
この他、LC共振回路を用いることにより、通常は直流側の電源電圧と共振キャパシタの電圧の差電圧に比例した電流が流れるが、過大な電流は電源電圧とLC共振回路定数で決まる電流に抑制することができる。
【0055】
さらに、DCDCコンバータのスイッチ素子にかかる電圧も、共振キャパシタの電圧が低くなったときにスイッチをオフするために、低く抑えることができるなどの効果が期待できる。
【発明の効果】
【0056】
(特許文献7)は、共振用と出力制御用の2個のスイッチ動作により
1)電源電流波形、特性を改善しながら任意の直流出力電圧、電流の制御が可能で、
2)LC共振回路周期付近の固定周波数でスイッチの通流幅制御だけで出力制御ができ、
3)昇降圧形DCDCコンバータを用いた場合は、ワールドワイドな交流電源電圧に対しても、出力制御に特別な支障を伴うことなく動作させることができる。
4)フライバック形DCDCコンバータを用いた構成においては変圧器を用いるため、任意の出力電圧制御範囲を設定ができ、低電圧の小型スイッチング電源としても適用が容易で、
5)電源電圧に対して絶縁出力を得ることができ、さらに、
6)LC共振回路動作により共振用スイッチを零電流でソフトスイッチさせることによりスイッチング損失抑えることができ、
7)LC共振回路によるDCDCコンバータ部での先鋭化するスイッチング成分電流の電源側への流出を防ぐことができ、EMIノイズ対策にも有効で、
8)共振キャパシタ電圧が低くなる時点でスイッチオフ制御できるため、スイッチ素子耐圧を抑えることができ、
9)LC共振回路を通すことにより過大電流を抑制することができ、
10)共振用スイッチに対し出力制御用スイッチによるブートストラップ充電ができる回路構成とすることにより、ドライブ回路を簡単化することができる
【0057】
本発明は、(特許文献7)のこれらの優れた特徴に加えて、6)の共振用スイッチ部での損失の低減に対して、共振用スイッチを用いないで構成でき、スイッチとしての損失そのものを無くすことができ、9)の主回路構成およびドライブ回路構成をさらに簡単化することができる。
【0058】
本発明は、降圧形DCDCコンバータコンバータやフォワードコンバータを用いて構成することができ、適用分野によっては出力制御特性の改善も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】共振電流制御形昇降圧DCDCコンバータ回路
図2】共振電流制御形昇降圧DCDCコンバータ回路のスイッチング動作波形
図3】1スイッチ共振電流制御形昇降圧DCDCコンバータ回路
図4】1スイッチ共振電流制御形昇降圧DCDCコンバータ回路のスイッチング制御動作波形
図5】共振電流制御形フライバックDCDCコンバータ回路
図6】共振電流制御形降圧DCDCコンバータ回路
図7】共振電流制御形フォワードDCDCコンバータ回路
図8】共振電流制御形DCDCコンバータの基本回路
図9】共振電流制御形昇降圧DCDCコンバータのスイッチング制御動作波形
図10】共振電流制御形直流電源の主回路構成
図11】共振電流制御形直流電源の流入電流波形
図12】単相共振電流制御形直流電源の主回路構成
図13】単相共振電流制御形直流電源の流入電流波形
図14】三相共振形直流電源の主回路構成
図15】共振電流制御形直流電源の動作波形(Ton=5usec)
図16】昇降圧直接制御直流電源の動作波形(Ton=5usec)
図17】共振電流制御形降圧直流電源の動作波形(Ton=5usec)
図18】共振電流制御形フライバックコンバータ直流電源の動作波形(Ton=5usec)
図19】単相共振形フライバック直流電源の動作波形(Va=100V,N1/N2=1, LED)
図20】単相共振形フライバック直流電源の動作波形(Va=200V,N1/N2=1, LED)
図21】単相共振形フライバック直流電源の動作波形(Va=100V, N1/N2= 20、R=10 ohm)
図22】三相共振形フライバック直流電源の動作波形
【発明を実施するための形態】
【0060】
本発明を実施する上で、図8に示す共振電流制御形直流電源として、DCDCコンバータ部に(1)昇降圧形DCDCコンバータ、(2)降圧形DCDCコンバータ、(3)フライバックDCDCコンバータ、(4)フォワードコンバータを適用したときの直流電源の入出力制御動作を、直流電源と交流電源の全波整流電源を接続したケースに対して、いくつかのシミュレーション解析結果により確認する。
【0061】
シミュレーション解析では、以下の動作条件で行った。
共振電流制御形直流電源に加える直流電源電圧Es=100V, 交流電源は周波数fa=60Hzで、電圧(実効値)Es(=Ea)=100 V または 200Vとし、電源側のLCフィルタは、La=0.5mH, Ca=2uF
共振インダクタンスは、Lr=100 uH,共振キャパシタンスは、Cr=0.1 uF,DCDCコンバータに接続するインダクタンスLd=100uH,フライバック用変圧器のインダクタンスLmは共にLm=100uH、変圧器の変圧比N1/N2=1とし、共振動作をよび出力制御するスイッチのスイッチング周波数は、fs=70 kHz、スイッチのオン時間TonはTon=0^5 usec とした。
【0062】
なお、直流負荷回路として、平滑キャパシタCdはCd=1000 uFを負荷端に接続し、LED1 (抵抗rF=10 ohm,電圧降下 VF=165 V )またはLED2 (抵抗rF=5 ohm,電圧降下 VF=86 V)を接続してシミュレーション解析を行った。
【0063】
また、低圧の直流電源動作確認においては、フライバックコンバータの変圧比はN1/N2=20とし、平滑キャパシタCdはCd=4000 uF として抵抗R=10 ohmを接続してシミュレーション解析を行った。
【実施例0064】
(1)昇降圧形DCDCコンバータ動作
図15は、直流電源電圧Es(vad)=100Vに対して、昇降圧形DCDCコンバータで構成した共振電流制御形直流電源のスイッチのオン期間をTon=5usecとし、LED1 負荷を接続したときの動作波形である。
【0065】
スイッチの電流波形id1に対して、スイッチがオフになった時に、電源電圧vadと共振キャパシタの電圧vrの差電圧による共振動作により共振電流irが流れて、スイッチの通流時間により出力電圧が制御され、出力電流に比例した直流入力電流isが流れており、LC共振回路により、直流出力電流0.87Aに対し、電源電流はピーク値が3.14Aの共振電流が流れていることが確認される
【0066】
図16は、比較のためにLC共振回路を除いてDCDCコンバータ動作をさせたときの動作波形であり、スイッチがオンすることにより直線的に電流が流れ込むため、直流出力電流0.74Aに対し、電源電流はピーク値が4.86Aと大きな電流が流れていることが確認される。
【実施例0067】
(2)降圧形DCDCコンバータ動作
図17は、直流電源電圧Es(vad)=100Vに対して、降圧形DCDCコンバータで構成した共振電流制御形直流電源のスイッチのオン期間をTon=5usecとし、LE2 負荷を接続したときの動作波形である。
【0068】
この場合も、スイッチの電流波形id1に対して、スイッチがオフになった時に、電源電圧vadと共振キャパシタの電圧vrの差電圧による共振動作により共振電流irが流れているが、降圧形動作のために、直流負荷としては低い動作電圧のLED2を接続したときの動作波形である。
【実施例0069】
(3)フライバックDCDCコンバータ動作
図18は、直流電源電圧Es(vad)=100Vに対して、変圧比N1/N2=1の変圧器を用いたフライバックDCDCコンバータで構成した共振電流制御形直流電源のスイッチのオン期間をTon=5usecとし、LED1 負荷を接続したときの動作波形である。
【0070】
なお、実回路で変圧器を用いる場合は、変圧器の漏れインダクタンスがあることにより、スイッチをオフしたときに生じるサージ電圧吸収回路を負荷するとともに、変圧器が飽和しないように配慮することは勿論である。
【0071】
この場合は、変圧比N1/N2=1に設定しているため、上述した(1)昇降圧形DCDCコンバータ動作の結果と変わらないが、直流電源とは絶縁した直流出力が得られている。
【実施例0072】
(4)単相共振形フライバック直流電源動作
図19は、交流電源電圧Es(vad)=100Vの交流電源からLCフィルタ回路を介して単相全波整流電圧波形を加え、変圧比N1/N2=1、スイッチのオン期間をTon=5usecとし、LED1 負荷を接続したときのACDCコンバータとしての動作波形である。
【0073】
同図 (a)は、共振電流制御形ACDCコンバータとしての動作波形であり、同図(b)はスイッチング動作を確認するために交流電源電圧が最大値付近を拡大した波形を示しており、1個のスイッチのオン期間制御だけで、共振電流制御irと直流出力電圧vo、電流ioが制御でき、同時に、電源電流isは綺麗な正弦波となっていることが確認される。
【0074】
図20は、交流電源電圧をEs(vad)=200Vとして、スイッチのオン期間をTon=3usecとして出力を絞ったときの動作波形であり、電源電圧が高くなったことにより、同じ出力に対するスイッチの電流id1が小さくなるので、共振キャパシタCrの電圧低下は少なく脈動幅が低下すると同時に、共振電流irの振幅も小さくなり、共振キャパシタの電圧も低くなり、スイッチ素子にかかる電圧も低くすることができる。
【実施例0075】
(5)単相共振形フライバック低圧直流電源動作
図21は、共振電流制御形直流電源を低い直流電源として働かせるため、交流電源電圧をEs(vad)=100Vとして、変圧比N1/N2=20、平滑用キャパシタCdを4000uFとし、スイッチのオン期間をTon=3usecとしたときの動作波形を示している。
【0076】
本発明の共振電流制御形直流電源は、1個のスイッチのみでLC共振動作と必要とする直流電圧、電流制御と同時に、電源装置の流入電流波形も正弦波にできるので、通常の直流電源としてだけでなく、低圧大電流電源としても優れた特性が期待できる。
【実施例0077】
(6)三相共振形フライバック直流電源動作
図22は、交流電源としてEs-200Vの三相交流電源から三相全波整流回路で整流してLCフィルタ回路を介した電圧を共振電流制御形DCDCコンバータに加えた図14の構成による電源装置としての動作波形であり、この場合は交流電流波形は、三相整流回路の直流出力に抵抗負荷が接続されたときと電流波形と同様の120度通流幅の方形波に近い電流波形となり、墾田さインプット形整流回路の場合に比べて大幅な力率改善ができる。
【符号の説明】
【0078】
100 …電源
100 -1…直流電源
100 -2…単相交流電源
100 -3…三相交流電源
110 … フィルタ回路
110 -1…交流フィルタ
110 -2…直流フィルタ
120 … ダイオードブリッジ回路
120 -1…単相ダイオードブリッジ回路
120 -2…三相ダイオードブリッジ回路
200 … 共振形DC-DCコンバータ
210 … 方向性スイッチ回路
210 -1…スイッチ
210 -2…ダイオード
220 … LC共振回路
120 -1…共振インダクタLr
120 -2…共振キャパシタCr
120 -3…逆充電防止用ダイオード
230 … インダクタ電流スイッチ回路
230 -1…昇降圧チョッパ回路
230 -2…フライバックDC-DCコンバータ回路
230 -3…降圧チョッパ回路
230 -4…フォワードDC-DCコンバータ回路
240 … 変圧器回路
240 -1…変圧器
240 -2…スナバ回路
300 … 直流負荷回路
300-1…平滑コンデンサ
300-2…直流負荷(抵抗、LED)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
【手続補正書】
【提出日】2023-06-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源に、必要に応じて逆流防止ダイオードを介して、共振インダクタLrと必要に応じて逆充電防止用ダイオードを逆並列に接続した共振キャパシタCrを直列接続したLC共振回路を接続し、前記共振キャパシタCrの両端にスイッチSとインダクタLdおよびダイオードで構成される昇降圧チョッパ回路あるいは降圧チョッパ回路を用いたDC-DCコンバータを接続して、前記DC-DCコンバータに平滑キャパシタCdが並列接続された直流負荷を接続する回路構成において、
前記LC共振回路の共振周期に同期して前記スイッチSのスイッチングパルス幅を制御することにより、1個のスイッチだけで前記LC共振回路の共振電流の制御と前記直流負荷への電圧、電流制御を可能とすることを特徴とする共振電流制御形直流電源。
【請求項2】
請求項1記載の共振電流制御形電源における前記DC-DCコンバータを構成とする
前記昇降圧チョッパ回路として、前記共振キャパシタCrの両端に、変圧器の一次巻線と前記スイッチを直列接続して接続し、前記変圧器の二次巻線の一端に逆流防止ダイオードを介して平滑用キャパシタCd1に接続し、前記平滑用キャパシタCd1の他端に前記変圧器の二次巻線の他端を接続し、前記平滑用キャパシタCd1の両端に直流負荷を接続するフライバック形DCDCコンバータの回路構成とし
前記降圧チョッパ回路としては、前記共振キャパシタCrの両端に、変圧器の一次巻線と前記スイッチを直列接続して接続し、前記変圧器の二次巻線の一端に逆流防止ダイオードにフリーフォイーリングダイオードと平滑用インダクタLdを介して平滑用キャパシタCd2に接続し、前記平滑用キャパシタCd2および前記フリーフォイーリングダイオードの他端を前記変圧器の二次巻線の他端に接続し、前記平滑用キャパシタCd2の両端に直流負荷を接続するフォワード形DCDCコンバータの回路構成とし、
いずれも変圧器を用いた構成とすることにより、大幅な電圧制御と前記直流電源から絶縁した直流出力を得ることを可能とすることを特徴とする共振電流制御形直流電源。
【請求項3】
請求項1から請求項2記載の共振電流制御形電源における前記直流電源を、交流電源から全波整流回路を介して構成し、前記スイッチによるスイッチングパルス幅制御により、
前記交流電源が単相正弦波の場合は、前記全波整流回路の交流側に前記共振電流共振周波数成分を除去する交流フィルタ回路を介することにより交流電流波形を正弦波状とし、
前記交流電源が三相平衡正弦波の場合は、前記全波整流回路の直流出力側に共振周波数成分を除去する直流フィルタ回路を介することにより、120度通流幅の方形波状の交流電流波形とし、
前記直流負荷への電圧、電流制御を可能とすることを特徴とする共振電流制御形直流電源。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源としてのLED照明器具用電源から比較的容量の大きなインバータエアコンなど比較的容量の大きな応用分野の電気エネルギーを消費する負荷に対する直流電源の電源品質改善と小型化、軽量化、低価格化に貢献する技術である。
【背景技術】
【0002】
LED照明は、本来の低消費電力や長寿命の特徴に加えて省エネ化への期待や制御機能の向上が図られるため、近年の照明器具の低価格化と共に広く普及してきた。
【0003】
LED照明電源は、電気エネルギーを一方的に需要要求に応じて消費する負荷であるため、極めて簡単な回路構成でも実用に供することができるが、市販される台数が極めて多いため、比較的簡単な回路構成で必要とする特性を有することが求められている。
【0004】
一般的なLED照明用電源は、交流電源を整流して電解コンデンサで平滑した後、スイッチ回路で調光制御しており、ハードスイッチング損失、スイッチングノイズ、電解コンデンサによる寿命等の課題に加えて、力率改善対策としてPFC(Power Factor Correction:力率改善)整流回路を付加したものは、LED照明用駆動電源としては動作電圧が高くなり、その後段に電圧を下げるためにDC-DCコンバータを接続する2段構成となるなど、回路構成がさらに複雑化するなどの課題があった。
【0005】
一方、インバータエアコンなどのインバータの直流電源の構成においては、LED照明用電源に比べて比較的動作電圧が高く、動作電流も大きいので、整流動作における電流波形ひずみによる周辺機器への影響も大きい。
【0006】
このため、インバータエアコン用の直流電源構成においてもPFCコンバータが用いられており、主回路構成が複雑化するだけでなく、スイッチング損失、高周波ノイズが課題となるため、種々の改善策も講じられている。
【0007】
こうした課題に対し、スイッチング損失やスイッチングノイズの低減に有効なソフトスイッチング技術による共振形整流制御動作と、それに接続するDCDCコンバータによる電流制御動作を組み合わせた制御により、極めて簡単な回路構成ではあるが、優れた流入電流特性のもと、DCDCコンバータの課題に対し、二つのスイッチング素子を用いたスイッチング制御で出力電圧電流制御を実現することができる共振形AC-DC電源(特許文献7)が発明されている。
【0008】
この電源は、第一のスイッチング素子をオンすることにより、零電流ソフトスイッチングで共振キャパシタを充電することができ、共振キャパシタに接続されたDC-DCコンバータの第二のスイッチング素子をオン、オフする通流幅制御をかけることにより、整流回路の出力電圧電流制御と流入電流波形の改善を一定のスイッチング周波で行うことができる。
【0009】
本発明は、さらに第一のスイッチング素子を用いることなく、第二のスイッチング素子のオン、オフ制御だけで、共振電流による共振キャパシタへの充電と、DC-DCコンバータの出力電圧電流制御を実現しようとするもので、主回路構成の更なる簡単化とスイッチング素子での通電損失を無くすことができ効率の更なる改善も期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特願1990-97272:「一石式共振形コンバータ」
【特許文献2】特願1995-213050:「共振形コンバータ」
【特許文献3】特願2007-28829:「共振電流制御方法」
【特許文献4】特許第6667750:「DC-DCコンバータ」
【特許文献5】特許第6775745:「AC-DCコンバータ」
【特許文献6】特許第7137260:「AC-DC電源」
【特許文献7】特願2023-0470731:「共振形AC-DC電源」
【0011】
パワーエレクトロニクス機器は、理想的なスイッチング制御ができれば、原理的には損失を伴わないことから、スイッチング素子の高速化に向けた開発が進み、近年では従来からのシリコン半導体に代わり、SiC半導体、GaN半導体が利用可能となってきており、この傾向は今後も急速に進むものと思われる。
【0012】
そして、スイッチング周波数を高くすることで、インダクタ、キャパシタ、変圧器などが小型化でき、効率改善と装置の小型軽量化が急速に進んでいる。
【0013】
一方で、ハードスイッチング制御によるものは、スイッチング特性が高速化できても、スイッチングの伴うスイッチング損失やスイッチングノイズの発生の問題は残る。
【0014】
これに対して、スイッチング素子にかかる電圧か電流が零の時にスイッチング制御できれば、これらの問題が解決でき、ソフトスイッチング制御として実用に供しているが、ソフトスイッチング制御をさせるための回路構成や制御システムが複雑化することが課題となっている。
【0015】
(特許文献1)は、フライバックDCDCコンバータの変圧器の二次側で共振動作をさせることにより、変圧器の磁束リセットの課題を解決しようとするもので、1個のスイッチで構成制御でき、回路構成は簡単であるが、スイッチング周波数の制御が必要で、これが課題となる。
【0016】
(特許文献2)は、LC共振制御と出力制御に用いる2個のスイッチング素子間のスイッチングタイミングを制御するDCDCコンバータの方式であり、共振動作をさせるスイッチング周波数が一定にできる特徴があるが、スイッチングタイミング制御が複雑化するなどの課題がある。
【0017】
(特許文献3)は、LC共振回路と2個のスイッチング素子を用いており、(特許文献2)と類似しているが、共振電流の大きさが負荷の軽重に応じて変えられることを特徴としている。
【0018】
(特許文献4)は、高周波方形波電圧形インバータを用いたソフトスイッチング制御による絶縁型DCDCコンバータであり、共振電流が負荷電流に応じて変化するので、(特許文献3)と同様に軽負荷時の共振電流による通電損失を抑制できるが、主回路構成は複雑化する。
【0019】
以上は、共振制御技術をDCDCコンバータに適用したときの制御手法であるが、直流電源を交流電源から得るAC-DCコンバータの場合には、整流回路の流入電流特性改善が求められる。
【0020】
(特許文献5)は、(特許文献4)の共振電流が負荷電流に応じて変化することを活かした共振回路動作をAC-DCコンバータへ適用したもので、共振電流の振幅が交流電源電圧に比例するため、高周波フィルタを接続するだけで、流入電流波形を正弦波状にすることができる。
【0021】
しかしながら、直流負荷として一定の順方法電圧降下を有するLEDや、直流出力に平滑キャパシタが接続される場合は、正弦波形とはならない。
【0022】
(特許文献6)は、この課題を克服するために、共振キャパシタと平滑用キャパシタの間に、昇圧形DCDCコンバータを挿入してスイッチング制御により、LED等の負荷が接続されても流入電流波形をほぼ正弦波に改善することができるようにしたものである
【0023】
しかし、(特許文献6)では、出力電圧制御するためには、スイッチング動作周波数を変化させることが必要となり、特に大幅な電圧電流制御が課題となる。
【0024】
(特許文献7)は、この課題を克服するため、共振キャパシタと直流負荷間に昇降圧形DCDCコンバータを挿入し、共振キャパシタを充電させる共振電流が零になった時点以降に、昇降圧形DCDCのスイッチの通流幅を制御する手法により、一定のスイッチング動作周波数で、直流出力電圧、電流制御、ほぼ正弦波の流入電流で可能としたものである
【0025】
また、(特許文献7)は、DCDCコンバータにフライバックコンバータを用いることにより、変圧器の変圧比により絶縁した任意の出力電圧を得ることができる。
【0026】
さらに、二つのスイッチをチャージポンプ構成とすることによりドライブ回路も簡単化できる特徴がある
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明は、このような優れた特徴を有する(特許文献7)の共振形AC-DC電源の更なる簡単化と効率向上を目指すものである。
【0028】
(特許文献7)は、LC共振回路の共振動作をさせるための逆流防止機能を有する第一のスイッチ回路と、共振電流で共振キャパシタに充電された電圧に対しDCDCコンバータを介して、直流負荷に給電し、直流出力電圧、電流を制御するための第二のスイッチ回路で構成制御するため、主回路構成と二つのスイッチのドライブ回路等が幾分複雑化するなどが課題となっている。
【0029】
また、第一のスイッチは共振電流により零電流でソフトスイッチング制御されるためスイッチング損失は低く抑えられるが、共振電流の大きさに比例した通電損失が効率の低下につながる。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明は、第一のスイッチを使わずに、第二のスイッチだけで構成することにより、これらの課題を克服するもので、(特許文献7)の優れた特徴に加えて、第一のスイッチング素子を除いて構成できるため、主回路構成、制御システムの簡単化と、第一のスイッチング素子による無駄なスイッチング制御ノイズの発生や、通電損失を無くすことができ、さらなるノイズ低減と効率改善が可能な共振電流制御直流電源を実現することができる。
【0031】
図1は、(特許文献7)の共振形AC-DC電源のLC共振回路部と昇降圧形DC-DCコンバータ部で構成した共振電流制御形DCDCコンバータ回路である。
【0032】
直流電源Esに対して、逆流防止機能を有する第一のスイッチ回路により制御されるLC共振回路の共振電流により充電された共振キャパシタCrの電圧を昇降圧形DCDCコンバータの第二のスイッチの通流幅Tonを制御することにより、直流出力電圧、電流を制御できる。
【0033】
図2は、第一のスイッチと第二のスイッチのスイッチング信号に対する共振電流ir,共振キャパシタの共振電圧erと、共振キャパシタCrから第二のスイッチに流れる電流id1と第二のスイッチがオフ時に負荷回路に流れる電流id2の波形を示している。
【0034】
ここで、共振電流irは、第一のスイッチS1をオンした時点で直流電源電圧Esと共振キャパシタCrの充電電圧の差電圧ΔEに比例した共振電流irが流れる。
【0035】
このため、負荷電流が小さいと共振キャパシタCrの電圧低下は引いので差電圧ΔEは小さく共振電流irも小さくなるが、負荷電流が大きくなると共振キャパシタCrの電圧低下は大きくなり、零電圧に達するようになり、共振電流irは最大となる。
【0036】
図3は、第一のスイッチS1をオン状態とし、第二のスイッチをLC共振回路の共振周期に同期して、通流幅制御する1スイッチ共振電流制御形DCDCコンバータの回路図である。
【0037】
図4は、このDCDCコンバータ回路において、第一のスイッチS1をオン状態のもと、第二のスイッチS2の通流幅制御したときの各部のスイッチング動作波形を示している。
【0038】
同図で、第二のスイッチS2をオンすることにより、共振キャパシタCrの電圧が低下し、通流幅Ton後にオフした時点での直流電源電圧Esと共振キャパシタCrの電圧erとの差電圧ΔEに比例した共振電流irが流れることを示している。
【0039】
LC共振回路に共振電流が流れ始めるタイミングは異なるが、第二のスイッチS2の通流幅制による負荷電流の大小によって生じる差電圧ΔEに比例した共振電流irが流れることが分かる。
【0040】
すなわち、第一のスイッチS1による共振電流制御によらないでも、第一のスイッチを用いることなく第二のスイッチS2だけで、共振電流制御と出力電圧電流制御が行うことができることから、第一のスイッチを用いる場合に比べて、主回路構成を簡単化できるだけでなく、第一のスイッチS1での通電損失およびソフトスイッチング動作によるスイッチング損失やスイッチングノイズの発生を無くすことができる。
【0041】
図5は、図3のDCDCコンバータ部に変圧器を用いたフライバックコンバータに置き換えたもので、変圧器を用いることにより、変圧比の設定で電圧制御範囲の制限をなくし、直流電源から絶縁した直流出力が得られる。
【0042】
次に、図6は、図3の昇降圧形DCDCコンバータ回路を降圧形DCDCコンバータ回路に置き換えた共振電流制御形降圧DCDCコンバータ回路である。
【0043】
図7は、図5のフライバックDCDCコンバータをフォワードDCDCコンバータに置き換えた共振電流制御形フォワードコンバータ回路である。
【0044】
これら共振電流制御形DCDCコンバータは、昇降圧形DCDCコンバータや降圧形DCDCコンバータ、フライバックDCDCコンバータおよびフォワードDCDCコンバータのいずれも、スイッチSがオン期間に共振キャパシタCrの充電電圧から電流をインダクタLdに流し、オフ信号により、インダクタLdの電流は継続して負荷側に流すが、共振キャパシタCrからの電流がオフになった時点で、次の共振電流動作を開始させることができる
【0045】
図8は、共振キャパシタCrからの電流をオン、オフ制御するDCDCコンバータの基本動作を模式図で表現した共振電流制御形DCDCコンバータの基本回路構成である。
【0046】
図9に、共振電流制御形DCDCコンバータのスイッチSの通流幅Ton1,Ton2(>Ton1)を変えたときの動作波形を示しており、通流幅のオフ時点から共振キャパシタCrに共振電流irが流れ込みa)通流幅が小さいときは共振キャパシタCrの電圧低下による差電圧ΔEは小さく、共振電流irおよびスイッチSがオフ時点で負荷側に流れ込むパルス電流id2と祖穂平均電流ioも小さくなるが、b)通流幅が大きくなると、共振電流irおよび負荷電流Ioいずれも大きくなることを示している。
【発明の効果】
【0047】
本発明の共振電流制御形直流電源は、直流電源あるいは交流電源から直接でなくLC共振回路を介してからDCDCコンバータに接続する回路構成としているが、その効果を述べる。
【0048】
図10は、直流電源から必要とする直流電圧に変換する共振電流制御形直流電源の構成模式図を示しており、図11は直流電源側の電圧Esと共振電流irおよび電源電流波形isの波形を示している。
【0049】
LC共振回路を用いることで、DCDCコンバータのスイッチング制御によるパルス状の電流が電源側に流れず、LC共振回路の滑らかな波形の共振電流irが流れるため、小さなLCによる直流電源フィルタを挿入することで、流入電流isはノイズの少ない共振振動電流の平均電流となる。
【0050】
図12は、交流電源から整流して必要とする直流電圧に変換する共振電流制御形直流電源の構成模式図を示しており、図13は交流電源側の電圧esと共振電流irおよび電源電流波形isの波形を示している。
【0051】
この場合、整流した電圧波形は正弦波交流電源電圧の絶対値波形となり、その電圧振幅に比例した共振電流irが流れるが、交流側の電流isは、小さなLCによる交流電源フィルタにより、
特別なPFC制御によることなく、交流電源電圧と同じ波形の正弦波電流にすることができる。
【0052】
交流電源から整流した電圧を、LC共振回路を介することなくDCDCコンバータに直接接続した場合は、DCDCコンバータのスイッチング制御によるパルス状の電流が交流ラインに直接流れることとなる。
【0053】
図14は、三相平衡交流電圧を三相ブリッジ回路で整流し、小さなLCフィルタ回路を通した電圧出力を必要とする直流電圧に変換する共振電流制御形直流電源の構成模式図であり、この場合の交流電源電流isは、図示するような120度通流幅の方形波に近い電流波形となる
【0054】
この他、LC共振回路を用いることにより、通常は直流側の電源電圧と共振キャパシタの電圧の差電圧に比例した電流が流れ、過大な電流は電源電圧とLC共振回路定数で決まる電流に抑制することができる。
【0055】
さらに、DCDCコンバータのスイッチ素子にかかる電圧も、共振キャパシタの電圧が低くなったときにスイッチをオフするために、低く抑えることができるなどの効果が期待できる。
【0056】
以上のように、本発明は、(特許文献7)の優れた特徴に加えて、共振用スイッチを用いないで構成できるため、スイッチとしての損失やノイズの発生そのものを無くすことができ、主回路構成およびドライブ回路構成もさらに簡単化することができる。
【0057】
ここで、本発明による共振電流制御形直流電源の特徴を以下にまとめて列記する。
【0058】
1)1個のスイッチによる固定周波数でスイッチの通流幅制御だけで、電源電流波形、特性を改善しながら任意の直流出力電圧、電流の制御が可能で、
2)主回路構成およびドライブ回路を含め制御システムが極めて簡単となり、
3)2個のスイッチ制御で構成制御する(特許文献7)の電源に比べて、スイッチングノイズ、スイッチング損失を大幅に低減することができ、
4)DCDCコンバータ部を昇降圧形DCDCコンバータとした場合は、電圧制御範囲が広いため、ワールドワイドな交流電源電圧に対しても、容易に対応することができ、
5)さらに、フライバック形DCDCコンバータを用いた構成においては変圧器を用いるため、絶縁した直流出力を得ることができ、
6)変圧比の設計によって、低電圧、大電流の小型スイッチング電源としても適用が容易で、
7)LC共振回路を通すことにより、DCDCコンバータ部での先鋭化するスイッチング成分電流の電源側への流出を防ぐことができ、EMIノイズ対策にも有効で、
8)DCDCコンバータ部のスイッチングは、共振キャパシタ電圧を放電し低下させた時点で、スイッチオフ制御できるため、スイッチ素子耐圧を抑えることができ、
9)直流電源部にLC共振回路を用いているため、LC共振回路の特性インピーダンスにより、過大電流を抑制することができ、
10)DCDCコンバータ部を降圧形DCDCコンバータとした場合は、出力電圧制御範囲に制約を伴うが、DCDCコンバータ部での電流ピーク値が抑えられ、効率向上も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】共振電流制御形昇降圧DCDCコンバータ回路
図2】共振電流制御形昇降圧DCDCコンバータ回路のスイッチング動作波形
図3】1スイッチ共振電流制御形昇降圧DCDCコンバータ回路
図4】1スイッチ共振電流制御形昇降圧DCDCコンバータ回路のスイッチング制御動作波形
図5】共振電流制御形フライバックDCDCコンバータ回路
図6】共振電流制御形降圧DCDCコンバータ回路
図7】共振電流制御形フォワードDCDCコンバータ回路
図8】共振電流制御形DCDCコンバータの基本回路
図9】共振電流制御形昇降圧DCDCコンバータのスイッチング制御動作波形
図10】共振電流制御形直流電源の主回路構成
図11】共振電流制御形直流電源の流入電流波形
図12】単相共振電流制御形直流電源の主回路構成
図13】単相共振電流制御形直流電源の流入電流波形
図14】三相共振形直流電源の主回路構成
図15】共振電流制御形直流電源の動作波形(Es=100V,LED1,Ton=5us)
図16】昇降圧直接制御直流電源の動作波形(Es=100V,LED1,Ton=5us)
図17】共振電流制御形降圧直流電源の動作波形(Es=100V,LED2,Ton=5us)
図18】共振電流制御形フライバック直流電源の動作波形(Es=100V, N1/N2=1,LED1,Ton=5us)
図19】単相共振形フライバック直流電源の動作波形(Va=100V,N1/N2=1, LED1,Ton=5us)
図20】単相共振形フライバック直流電源の動作波形(Va=200V,N1/N2=1, LED1,Ton=3us)
図21】単相共振形フライバック直流電源の動作波形(Va=100V, N1/N2= 20、R=10 ohm,Ton=3us)
図22】三相共振形フライバック直流電源の動作波形(Va=200V,N1/N2=1, LED1,Ton=3us)
【発明を実施するための形態】
【0060】
本発明を実施する上で、図8に示す共振電流制御形直流電源として、DCDCコンバータ部に(1)昇降圧形DCDCコンバータ、(2)降圧形DCDCコンバータ、(3)フライバックDCDCコンバータ、(4)フォワードコンバータを適用したときの直流電源の入出力制御動作を、直流電源と交流電源の全波整流電源を接続したケースに対して、いくつかのシミュレーション解析結果により確認する。
【0061】
シミュレーション解析では、以下の動作条件で行った。
共振電流制御形直流電源に加える直流電源電圧Esは、Es=100V, 交流電源を加える場合は、交流電源周波数fa=60Hzで、交流電圧(実効値)Es(=Ea)は、Es=100 V または 200Vとし、電源側のLCフィルタは、La=0.5mH, Ca=2uF、共振インダクタンスLrは、Lr=100 uH, 共振キャパシタンスCrは、Cr=0.1 uF, DCDCコンバータに接続するインダクタンスLdは、Ld=100uH, フライバック用変圧器のインダクタンスLmは、Lm=100uH、変圧器の変圧比は、N1/N2=1とし、共振動作および出力制御するスイッチのスイッチング周波数fsは、fs=70 kHz、また、スイッチのオン時間Tonは、Ton=0から5 usec とした。
【0062】
なお、直流負荷回路として、負荷端に接続する平滑キャパシタCdは、Cd=1000 uF、負荷には、LED1 (抵抗rF=10 ohm,電圧降下VF=165 V )またはLED2 (抵抗rF=5 ohm,電圧降下VF=86 V)を接続してシミュレーション解析を行った。
【0063】
また、低圧の直流電源動作確認においては、フライバックコンバータの変圧比は、N1/N2=20とし、平滑キャパシタCdは、Cd=4000 uF として抵抗Rは、R=10 ohm を接続してシミュレーション解析を行った。
【実施例0064】
(1)昇降圧形DCDCコンバータ動作
図15は、直流電源電圧Es(vad)=100Vに対して、昇降圧形DCDCコンバータで構成した共振電流制御形直流電源のスイッチのオン期間をTon=5usecとし、LED1 負荷を接続したときの動作波形である。
【0065】
スイッチの電流波形id1に対して、スイッチがオフになった時に、電源電圧vadと共振キャパシタの電圧vrの差電圧による共振動作により共振電流irが流れて、スイッチの通流時間により出力電圧が制御され、出力電流に比例した直流入力電流isが流れており、LC共振回路により、この場合の直流出力電流0.87Aに対し、電源電流はピーク値が3.14A (直流出力電流の3.61倍)の共振電流が流れていることが確認される
【0066】
図16は、比較のためにLC共振回路を除いてDCDCコンバータ動作をさせたときの動作波形であり、スイッチがオンすることにより直線的に電流が流れ込むため、この場合の直流出力電流0.74Aに対し、電源電流はピーク値が4.86A (直流出力電流の6.56倍)と大きな電流が流れていることが確認される。
【実施例0067】
(2)降圧形DCDCコンバータ動作
図17は、直流電源電圧Es(vad)=100Vに対して、降圧形DCDCコンバータで構成した共振電流制御形直流電源のスイッチのオン期間をTon=5usecとし、低い動作電圧のLED2 負荷を接続したときの動作波形である。
【0068】
スイッチがオフとなり電流波形id1が零となる時点で、電源電圧vadと共振キャパシタの電圧vrの差電圧による共振動作により共振電流irが流れていることが確認される。
【実施例0069】
(3)フライバックDCDCコンバータ動作
図18は、直流電源電圧Es(vad)=100Vに対して、変圧比N1/N2=1の変圧器を用いたフライバックDCDCコンバータで構成した共振電流制御形直流電源のスイッチのオン期間をTon=5usecとし、LED1 負荷を接続したときの動作波形である。
【実施例0070】
(4)単相共振形フライバック直流電源動作
この場合は、変圧比N1/N2=1に設定しているため、上述した(1)昇降圧形DCDCコンバータ動作の結果と変わらないが、直流電源とは絶縁した直流出力が得られている。
【0071】
図19は、交流電源電圧Es(vad)=100Vの交流電源からLCフィルタ回路を介して単相全波整流電圧波形を加え、変圧比N1/N2=1、スイッチのオン期間をTon=5usecとし、LED1 負荷を接続したときのACDCコンバータとしての動作波形である。
【0072】
同図 (a)は、共振電流制御形ACDCコンバータとしての動作波形であり、同図(b)はスイッチング動作を確認するために交流電源電圧が最大値付近を拡大した波形を示しており、1個のスイッチのオン期間制御だけで、共振電流制御irと直流出力電圧vo、電流ioが制御でき、同時に、電源電流isは綺麗な正弦波となっていることが確認される。
【0073】
図20は、交流電源電圧をEs(vad)=200Vとして、スイッチのオン期間をTon=3usecとして出力を絞ったときの動作波形であり、電源電圧が高くなったことにより、同じ出力に対するスイッチの電流id1が小さくなるので、共振キャパシタCrの電圧低下は少なく脈動幅が低下すると同時に、共振電流irの振幅も小さくなり、共振キャパシタの電圧も低くなり、スイッチ素子にかかる電圧も低くすることが確認できる。
【実施例0074】
(5)単相共振形フライバック直流電源動作
図21は、共振電流制御形直流電源を低い直流電源として働かせるため、交流電源電圧をEs(vad)=100Vとして、変圧比N1/N2=20、平滑用キャパシタCdを4000uFとし、スイッチのオン期間をTon=3usecとしたときの動作波形を示している。
【0075】
本発明の共振電流制御形直流電源は、1個のスイッチのみでLC共振動作と必要とする直流電圧、電流制御と同時に、電源装置の流入電流波形も正弦波にできるので、通常の直流電源としてだけでなく、低圧大電流電源としても優れた特性が期待できる。
【実施例0076】
(6)三相共振形フライバック直流電源動作
図22は、交流電源としてEs=200Vの三相交流電源から三相全波整流回路で整流してLCフィルタ回路を介した電圧を共振電流制御形DCDCコンバータに加えた図14の構成による電源装置としての動作波形であり、この場合の交流電流波形は、三相整流回路の直流出力に抵抗負荷が接続されたときと電流波形と同様の120度通流幅の方形波に近い電流波形となり、コンデンサインプット形整流回路の場合に比べて大幅な力率改善ができることが確認できる
【実施例0077】
(7)フォワードACDCコンバータ動作
交流電源から全波整流した出力を、図7に示した共振電流制御形フォワードDCDCコンバータ回路の直流電源部として加えることにより、フォワードACDCコンバータ動作をさせることができ、変圧器を介することにより絶縁出力を得ることができる。
【0078】
ただし、降圧形動作となるためにLED負荷や直流負荷に平滑用キャパシタが接続された負荷に対しては、交流電流波形は電源電圧が低い区間は流れず、逆バイアスされた電流波形となるが高い基本波力率で動作することが確認されている。

【符号の説明】
【0079】
100 …電源
100 -1…直流電源
100 -2…単相交流電源
100 -3…三相交流電源
110 … フィルタ回路
110 -1…交流フィルタ
110 -2…直流フィルタ
120 … ダイオードブリッジ回路
120 -1…単相ダイオードブリッジ回路
120 -2…三相ダイオードブリッジ回路
200 … 共振形DC-DCコンバータ
210 … 方向性スイッチ回路
210 -1…スイッチ
210 -2…ダイオード
220 … LC共振回路
120 -1…共振インダクタLr
120 -2…共振キャパシタCr
120 -3…逆充電防止用ダイオード
230 … インダクタ電流スイッチ回路
230 -1…昇降圧チョッパ回路
230 -2…フライバックDC-DCコンバータ回路
230 -3…降圧チョッパ回路
230 -4…フォワードDC-DCコンバータ回路
240 … 変圧器回路
240 -1…変圧器
240 -2…スナバ回路
300 … 直流負荷回路
300-1…平滑コンデンサ
300-2…直流負荷(抵抗、LED)