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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176013
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】電気ボイラ
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/38 20060101AFI20241212BHJP
   F22B 1/28 20060101ALI20241212BHJP
   F22B 21/16 20060101ALI20241212BHJP
   F22B 37/47 20060101ALN20241212BHJP
【FI】
F22B37/38 B
F22B1/28 Z
F22B21/16
F22B37/47
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094194
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 裕介
(72)【発明者】
【氏名】藤原 慎太郎
(57)【要約】
【課題】水管の本数を増やした場合でも、少ない数の温度センサで適切な温度検出が可能な電気ボイラを提供すること。
【解決手段】電気ボイラ1は、複数の下部管寄せ(2a、2b)と、複数の下部管寄せ(2a、2b)の各々から上方に延びる複数の水管3と、複数の水管3の各々の内部に設けられた複数の電気ヒータ4と、複数の水管3の各々と上昇管5を介して接続された上部管寄せ6と、複数の下部管寄せ(2a、2b)に対して1つずつ設けられ、それぞれの下部管寄せ(2a、2b)のいずれかの水管3の電気ヒータ4に配置された複数の温度センサ(10a、10b)と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の下部管寄せと、
前記複数の下部管寄せの各々から上方に延びる複数の水管と、
前記複数の水管の各々の内部に設けられた複数の電気ヒータと、
前記複数の水管の各々と上昇管を介して接続された上部管寄せと、
前記複数の下部管寄せに対して1つずつ設けられ、それぞれの前記下部管寄せのいずれかの前記水管の前記電気ヒータに配置された複数の温度センサと、を備える、
電気ボイラ。
【請求項2】
前記複数の下部管寄せに接続された給水管をさらに備え、
前記給水管と少なくとも1つの前記下部管寄せとの接続位置に最も近い第1水管の前記電気ヒータに温度センサが設けられている、
請求項1に記載の電気ボイラ。
【請求項3】
前記上部管寄せに又はセパレータに接続され、分岐部で分岐して前記複数の下部管寄せの各々に接続された降水管をさらに備え、
前記降水管と少なくとも1つの前記下部管寄せとの接続位置に最も近い第2水管の前記電気ヒータに温度センサが設けられている、
請求項2に記載の電気ボイラ。
【請求項4】
前記複数の下部管寄せは、水平面内で第1方向に延びるとともに前記第1方向と直交する第2方向に並んで配置され、
前記降水管は、前記複数の下部管寄せの各々に、前記第1方向の一端部側に接続され、
前記給水管は、前記複数の下部管寄せの各々に、前記第1方向の中間位置に接続される、
請求項3に記載の電気ボイラ。
【請求項5】
水平面内で第1方向に延びる第1下部管寄せと、
前記水平面内で前記第1方向と直交する第2方向に並んで配置された第2下部管寄せと、
前記第1下部管寄せ及び前記第2下部管寄せの各々から上方に延びる複数の水管と、
前記複数の水管の各々の内部に設けられた複数の電気ヒータと、
前記第1下部管寄せ及び前記第2下部管寄せの各々と上昇管を介して接続された上部管寄せと、
前記上部管寄せに接続するされ、分岐部で分岐して前記第1下部管寄せ及び前記第2下部管寄せの各々に接続された降水管と、
前記第1下部管寄せ及び前記第2下部管寄せに接続された給水管と、を備え、
前記降水管と前記第1下部管寄せとの接続位置に最も近い第1水管の前記電気ヒータに配置された第1温度センサと、
前記給水管と前記第1下部管寄せとの接続位置に最も近い第2水管の前記電気ヒータに配置された第2温度センサと、を備える、
電気ボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、電気ボイラに関する。
【背景技術】
【0002】
電気ヒータで水を加熱する電気ボイラが知られている。特許文献1では、上部管寄せと下部管寄せとの間に上下方向に沿った3本の水管が配列され、各水管内に電気ヒータが設置されている。3本の水管は、円筒状の下部管寄せの長さ方向に沿って列状に配置されている。1つの電気ヒータに1つの温度センサが配置されており、演算処理装置が、温度センサの検出値に基づいて電気ヒータが過熱しているか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6958253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気ボイラの出力を増大するために、水管(及び電気ヒータ)の本数を増やすことが考えられる。特許文献1のように各水管の電気ヒータに1つずつ温度センサを設ける場合、水管の本数を増やすと温度センサの数も多くなるので、電気ボイラの構成及び制御の複雑化やコスト上昇につながる。
【0005】
そのため、水管(電気ヒータ)の本数に比べて温度センサの数を減らして、1つの温度センサの検出値で、付近の複数の水管の各電気ヒータの温度状態を代表させることが考えられる。しかし、水管の本数を増大させた場合、例えば、下部管寄せの一端部にある水管の状態と、他端部にある水管の状態との差異が大きくなる可能性がある。そのため、水管(電気ヒータ)の本数に比べて温度センサの数を少なくするとしても、いくつの温度センサを、どの位置に設ければよいかの指針は、特許文献1からは得られない。そのため、水管の本数を増やした場合でも、少ない数の温度センサで適切な温度検出を可能とすることが望まれる。
【0006】
本明細書で開示する技術は、水管の本数を増やした場合でも、少ない数の温度センサで適切な温度検出が可能な電気ボイラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、電気ボイラを開示する。電気ボイラは、複数の下部管寄せと、複数の下部管寄せの各々から上方に延びる複数の水管と、複数の水管の各々の管上端部に挿入された複数の電気ヒータと、複数の水管の各々と上昇管を介して接続した上部管寄せと、複数の下部管寄せに対して1つずつ設けられ、それぞれの下部管寄せのいずれかの水管に挿入された電気ヒータに配置された複数の温度センサと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本明細書で開示する技術によれば、水管の本数を増やした場合でも、少ない数の温度センサで適切な温度検出が可能な電気ボイラが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係る電気ボイラの缶体を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、本実施形態に係る電気ボイラの一例を模式的に示す側面図である。
図3図3は、本実施形態に係る電気ボイラの一例を模式的に示す上面図である。
図4図4は、本実施形態に係る電気ヒータの一例を示す側断面図である。
図5図5は、電気ヒータへの温度センサの取付の第1の例を説明する縦断面図(A)及び横断面図(B)である。
図6図6は、電気ヒータへの温度センサの取付の第2の例を説明する縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示は実施形態に限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0011】
本実施形態においては、3次元直交座標系を規定し、3次元直交座標系に基づいて各部の位置関係について説明する。水平面内で互いに直交する2つの方向を、それぞれX方向、Y方向とする。X方向の一方側をX1方向とし、X方向の他方側をX2方向とする。X方向及びY方向と直交する上下方向(鉛直方向)をZ方向とする。
【0012】
<電気ボイラ>
図1は、本実施形態に係る電気ボイラ1の缶体WSを模式的に示す斜視図である。図2は、本実施形態に係る電気ボイラ1の一例を模式的に示す側面図である。図3は、本実施形態に係る電気ボイラ1の一例を模式的に示す上面図である。なお、図2は、電気ボイラ1の一部を断面で示す。
【0013】
図1及び図2に示すように、電気ボイラ1は、複数の下部管寄せ(第1下部管寄せ2a、第2下部管寄せ2b)と、複数の水管3と、複数の水管3の各々の内部に設けられた複数の電気ヒータ4と、複数の水管3の各々と上昇管5を介して接続した上部管寄せ6と、複数の温度センサ(第1温度センサ10a、第2温度センサ10b、図3参照)と、を備える。図2の例では、電気ボイラ1は、給水装置20と、水管3の水位を検出する水位検出器30と、電気ボイラ1を制御する制御装置40と、電気ヒータ4に電力を供給する電源41と、報知情報を報知する報知装置42とを備える。
【0014】
第1下部管寄せ2a、第2下部管寄せ2b、各水管3、各上昇管5、及び上部管寄せ6の相互接続により、図1に示す缶体WSが構成される。缶体WSは、水の供給を受け入れ、蒸発させて、蒸気を導出するための収容体である。電気ボイラ1は、貫流式ボイラである。すなわち、複数の水管3の各々に電気ヒータ4が装着され、全ての水管3が上昇管5と接続する。
【0015】
(下部管寄せ)
図1の例では、第1下部管寄せ2a及び第2下部管寄せ2bは、水平面内でX方向(第1方向)に延びる。第2下部管寄せ2bは、水平面内でX方向(第1方向)と直交するY方向(第2方向)に並んで配置されている。第1下部管寄せ2a及び第2下部管寄せ2bは、両端が封止された円筒管からなり、直線状に延びる。第1下部管寄せ2a及び第2下部管寄せ2bの円筒部は、ほぼ同一寸法を有する。
【0016】
第1下部管寄せ2a及び第2下部管寄せ2bは、給水装置20(図2参照)から供給された水を収容する容器である。第1下部管寄せ2a及び第2下部管寄せ2bは、それぞれ水管3が設けられている。第1下部管寄せ2a及び第2下部管寄せ2bは、給水装置20から供給された水を複数の水管3に分配する。図1に示すように、第1下部管寄せ2a及び第2下部管寄せ2bは、排水管7及び降水管8と接続している。第1下部管寄せ2a及び第2下部管寄せ2bは、給水管9a、9bが1本ずつ接続している。
【0017】
(水管)
水管3は、複数の下部管寄せ(第1下部管寄せ2a及び第2下部管寄せ2b)の各々から上方に延びる。第1下部管寄せ2a及び第2下部管寄せ2bには、複数ずつ、水管3が設けられている。図1の例では、第1下部管寄せ2aには、6本の水管3がX方向に間隔を隔てて配列されている。第2下部管寄せ2bには、6本の水管3がX方向に間隔を隔てて配列されている。図3に示すように、X方向に隣り合う水管3の間隔(ピッチ)は、第1下部管寄せ2aと第2下部管寄せ2bとでほぼ等しい。第1下部管寄せ2aの各水管3と、第2下部管寄せ2bの各水管3とは、X方向において半ピッチ分ずれている。
【0018】
水管3は、下部管寄せ(第1下部管寄せ2aまたは第2下部管寄せ2b)からの水を流通させる。水管3は、水を流通させる円筒管であり、直線状に延びる。水管3は、水管3の中心軸とZ軸とが平行となるように配置されている。水管3の下端部が、下部管寄せ(第1下部管寄せ2aまたは第2下部管寄せ2b)の上部と連通している。
【0019】
このように、本実施形態に係る電気ボイラ1は、下部管寄せ毎の、複数の蒸気生成系統を別個に備える。すなわち、電気ボイラ1は、第1下部管寄せ2aに配置された6本の水管3を含む第1系統と、第2下部管寄せ2bに配置された6本の水管3を含む第2系統とを備える。
【0020】
(電気ヒータ)
図2に示すように、電気ヒータ4は、複数の水管3の各々の管上端から管内部に挿入されている。本実施形態では、合計12本の水管3に1つずつ、合計12個の電気ヒータ4が設けられている。電気ヒータ4は、直線棒状形状を有する。電気ヒータ4は、例えば、シーズヒータ、セラミックヒータ等である。電気ヒータ4の表面は、水管3の内面と間隙を介して対向する。電気ヒータ4の表面は、水管3の内部に供給された水と接触する。電気ヒータ4の表面と水とが接触することにより、水が加熱され、蒸気が生成される。電気ヒータ4は、制御装置40が電源41からの電力供給を制御することにより、動作(オンオフ及び発熱量)が制御される。
【0021】
電気ヒータ4は、通電により発熱する発熱領域FAと、非発熱領域NAとを有する。非発熱領域NAは、発熱領域FAよりも上方に配置される。発熱領域FAは、電気ヒータ4の下端部を含み、非発熱領域NAよりもZ方向の長さが大きい。非発熱領域NAは、電気ヒータ4の上端部を含む。
【0022】
(温度センサ)
第1温度センサ10a及び第2温度センサ10b(図3参照)は、複数の下部管寄せ(第1下部管寄せ2a及び第2下部管寄せ2b)に対して1つずつ設けられる。本実施形態では下部管寄せが2本であるので、第1温度センサ10aと第2温度センサ10bとの2つの温度センサが設けられる。第1温度センサ10aは、第1下部管寄せ2aのいずれかの水管3に挿入された電気ヒータ4に配置される。第2温度センサ10bは、第2下部管寄せ2bのいずれかの水管3に挿入された電気ヒータ4に配置される。第1温度センサ10a及び第2温度センサ10bは、例えば熱電対、サーミスタなどである。第1温度センサ10a及び第2温度センサ10bの設置位置については、後述する。
【0023】
(上昇管および上部管寄せ)
図1に示すように、上昇管5は、水管3と上部管寄せ6とを接続する。上昇管5は、蒸気の流路を有する円筒管である。上昇管5は、水管3で生成された蒸気を流通させる。上昇管5の下端部が水管3の上部に接続される。上昇管5の上端部が上部管寄せ6の下部に接続される。水管3で生成された蒸気は、上昇管5を介して上部管寄せ6に供給される。上昇管5は、複数の水管3に1本ずつ(すなわち、合計12本)設けられる。複数の上昇管5のそれぞれの上端部が、1本の上部管寄せ6に接続される。
【0024】
上昇管5は、下端部が曲げられており、水管3の上部の側面と接続される。上昇管5の上端部は、上部管寄せ6の下部と接続される。第1下部管寄せ2aの6本の水管3と第2下部管寄せ2bの6本の水管3とからそれぞれ延びた12本の上昇管5の各上端部は、X方向(第1方向)に沿って直線状に並んで上部管寄せ6の下部に接続している。
【0025】
上部管寄せ6は、上昇管5から供給された蒸気を収容する。上部管寄せ6は、両端が封止された円筒管からなり、蒸気を収容する容器である。本実施形態では、上部管寄せ6は、複数の下部管寄せ(2a、2b)に対して1本だけ設けられている。上部管寄せ6は、複数設けられてもよい。上部管寄せ6は、複数の上昇管5のそれぞれから供給された蒸気を受け入れて集合させる。
【0026】
図2に示すように、上部管寄せ6の上部に蒸気管11が接続される。蒸気管11には蒸気弁12が配置される。蒸気弁12が開くことにより、上部管寄せ6に収容されている蒸気の少なくとも一部が、蒸気管11を介して排出される。
【0027】
上部管寄せ6は、水平面内で第1方向(X方向)に延びる。図1に示すように、上部管寄せ6は、第1下部管寄せ2a及び第2下部管寄せ2bの各々に対してY方向にずれた位置に配置される。
【0028】
(給水管)
給水管9a、9b(図1参照)は、複数の下部管寄せ(第1下部管寄せ2a及び第2下部管寄せ2b)に接続されている。給水管9a、9bは、複数の下部管寄せ(2a、2b)に対して個別に接続するように複数(2本)設けられている。
【0029】
図2(特に給水管9bを例示している)に示すように、給水管9a、9bは複数の下部管寄せ(2a、2b)の各々に、X方向(第1方向)の中間位置に接続される。ここで、中間位置とは、水管3の配列における中間位置である。具体的には、給水管9bは、第2下部管寄せ2bの6本の水管3を3本ずつに区分する位置(中間位置)に接続している。同じく、給水管9aは、第1下部管寄せ2aの6本の水管3を3本ずつに区分する位置(中間位置)に接続している。給水管9aの接続位置に対してX方向の一端側(X1側)と他端側(X2側)とに、それぞれ3本ずつの水管3が配置される。なお、第1下部管寄せ2a又は第2下部管寄せ2bにおける水管3の本数が奇数(2N+1)の場合、中間位置は、水管3が一端側と他端側とでN本とN+1本とに分かれる位置である。
【0030】
給水管9a、9bは、第1下部管寄せ2a、第2下部管寄せ2bのX方向(第1方向)の内部においてX方向(第1方向)の一端側と他端側とに向いた給水口SP1、SP2を有する。具体的には、第2下部管寄せ2bの内部に、T字型の管継手9cが配置されていて、給水管9a、9bの先端が管継手9cの入口に接続している。T字状に分岐した管継手9cの2つの開口が、X方向の一端側(X1側)と他端側(X2側)とに向けられており、それぞれ一対の給水口SP1、SP2を構成する。これにより、給水口SP1が、一端側の3本の水管3に向けて給水し、給水口SP2が、他端側の3本の水管3に向けて給水する。図2では給水管9bの給水口SP1、SP2のみを図示しているが、給水管9aについても同様である。
【0031】
給水管9a、9bは、給水装置20に接続している。給水装置20は、給水管9a、9bと接続する給水分岐部21と、給水ポンプ22と、給水分岐部21と給水ポンプ22との間に設けられた給水弁23とを有する。
【0032】
給水ポンプ22は、給水弁23、給水分岐部21、各給水管9a、9bを介して、水を各第1下部管寄せ2a及び第2下部管寄せ2bへ吐出する。これにより、各水管3に水が供給される。給水装置20は、制御装置40が給水ポンプ22の回転数を制御することにより、単位時間当たりの給水量を調整可能である。給水弁23は、給水分岐部21への水の供給経路を開閉する。なお、給水弁23が流量調整弁として機能する場合、給水弁23によって、単位時間当たりの給水量が調整されてもよい。
【0033】
(排水管)
図1に示すように、排水管7は、第1下部管寄せ2aおよび第2下部管寄せ2bの各々の下部に接続している。排水管7は、第1下部管寄せ2aおよび第2下部管寄せ2bのX方向の一端部(各水管3よりもX1側)に接続(図2参照)している。
【0034】
排水管7は、第1下部管寄せ2a及び第2下部管寄せ2bの各々を連通させる連通部7aを有する。排水管7は、第1下部管寄せ2aおよび第2下部管寄せ2bからそれぞれ下方に延びた後、Y方向に互いに近づくように屈曲した管部7b、7cを有し、管部7b、7cがそれぞれ連通部7aに接続している。連通部7aはT字型の管継手である。排水管7は、連通部7aから延びて合流させた水を排出する管部7dを有する。管部7dには排水弁13(図2参照)が配置される。排水弁13が開くことにより、第1下部管寄せ2aおよび第2下部管寄せ2bに収容されている水の少なくとも一部は、排水管7を介して排出(ブローと呼ばれる)される。
【0035】
連通部7aは、第1下部管寄せ2a側の第1系統と、第2下部管寄せ2b側の第2系統とを互いに連通させる。これにより、連通部7aは、系統毎の蒸気生成量や水の分配量にばらつきが生じた場合でも、各水管3の水位をそろえる機能を果たす。
【0036】
(降水管)
図1に示すように、降水管8は、上部管寄せ6に接続され、分岐部8aで分岐して第1下部管寄せ2a及び第2下部管寄せ2bの各々に接続する。上部管寄せ6に流入する蒸気は、気水混合の湿り飽和蒸気であり、降水管8は、上部管寄せ6内に流入した水を、第1下部管寄せ2a及び第2下部管寄せ2bへ戻す。本実施形態に係る電気ボイラ1では、セパレータ(気液分離器、図示せず)を設置していないため降水管8は、上部管寄せ6に直接接続しているが、上部管寄せ6と降水管8との間にセパレータを設け、降水管8をセパレータに接続してもよい。
【0037】
降水管8は、複数の下部管寄せ(第1下部管寄せ2a及び第2下部管寄せ2b)の各々に、X方向(第1方向)の一端部側(X1側)に接続される。具体的には、降水管8は、上部管寄せ6のX方向の一端部(各上昇管5よりもX1側)と、第1下部管寄せ2aおよび第2下部管寄せ2bのX方向の一端部(各水管3よりもX1側)とを接続する。
【0038】
降水管8は、分岐部8aと、管部8b~8dとで構成される、管部8bの上端部は、上部管寄せ6の下部に接続している。管部8bは、上部管寄せ6からZ方向下側に延びたあと、屈曲して分岐部8aに接続する。分岐部8aは、T字型の管継手であり、第1下部管寄せ2a側と第2下部管寄せ2b側とに向けて降水管8をY方向に2分岐させる。管部8cは、分岐部8aから下向きに屈曲して第1下部管寄せ2aの上部に接続する。管部8dは、分岐部8aから下向きに屈曲して第2下部管寄せ2bの上部に接続する。この構成により、分岐部8aは、排水管7と同様、第1下部管寄せ2aおよび第2下部管寄せ2bの内部を互いに連通させる機能を有する。
【0039】
降水管8は、上部管寄せ6と分岐部8aとの間に、濃縮排水口14を有する。濃縮排水口14は、濃縮排水弁15(図2参照)に接続する。濃縮排水弁15を開くことで、降水管8内の水を外部へ排出(濃縮ブローと呼ばれる)できる。給水管9a、9bからの給水と、濃縮排水口14からの排水とによって、缶体WS内の不純物濃度が低下する。
【0040】
降水管8は、分岐部8aと濃縮排水口14との間に、水質計測部16(図2参照)を有する。水質計測部16は、分岐部8aと濃縮排水口14との間に設けられた接続口8e(図1参照)に接続される。水質計測部16は、例えば、管内の水の電気伝導度を計測する電気伝導度センサを有する。水質計測部16により缶体WS内の水の電気伝導度を監視することで、缶体WS内の水の濃縮具合を把握することができる。そして、電気ボイラ1の運転に伴い、缶体WS内の水が所定より濃縮した場合、濃縮排水弁15を開けて濃縮ブローが実施される。
【0041】
(水位検出器)
図2に示すように、水位検出器30は、上部管寄せ6と、第1下部管寄せ2aとに、検出器接続管31を介して接続されている。本実施形態では、水位検出器30は、第1下部管寄せ2aのみに接続(図3参照)しているが、第2下部管寄せ2bのみに接続してもよいし、両方に接続してもよい。検出器接続管31は、水位検出器30の上端部と上部管寄せ6とを接続する上部連通管31aと、水位検出器30の下端部と第1下部管寄せ2aとを接続する下部連通管31bと、を含む。なお、図1では、水位検出器30および検出器接続管31の図示を省略している。
【0042】
検出器接続管31は、第1下部管寄せ2aにおけるX方向の一端側に配置されている。そのため、検出器接続管31と、降水管8と、排水管7とが、共に、第1下部管寄せ2aにおけるX方向(第1方向)の一端側に配置されている。検出器接続管31と、降水管8と、排水管7とは、複数(12本)の水管3よりもX方向の一端側(X1側)に配置されている。
【0043】
水位検出器30は、検出容器32と、検出容器32に配置される複数の電極棒33とを有する。検出容器32は、上面および下面が上部連通管31aおよび下部連通管31bとそれぞれ接続し、内部に水が収容される。検出容器32の水位と各水管3の水位とは、実質的に等しい。水位検出器30は、検出容器32の水位を検出することによって、水管3の水位を検出することができる。水位とは、Z軸方向における水の表面の位置をいう。
【0044】
複数の電極棒33は、検出容器32の内部に配置される。本実施形態において、電極棒33は、3本の電極棒33A、33B、33Cを含む。なお、電極棒33は、2本または4本以上設けられてもよい。
【0045】
電極棒33は、導電性材料で形成された棒状の部材である。電極棒33の上端部は、絶縁性部材(図示せず)を介して検出容器32の上蓋に保持される。電極棒33の下端部は、検出容器32の内面から離れている。
【0046】
電極棒33A、33B、33Cは、それぞれの下端部のZ軸方向の位置が異なる。本実施形態においては、電極棒33A、33B、33Cのうち、電極棒33Aの下端部が最も高い位置に配置され、電極棒33Aの下端部に次いで電極棒33Bの下端部が高い位置に配置され、電極棒33Cの下端部が最も低い位置に配置される。
【0047】
検出容器32は、導電性材料で形成される。検出容器32は、複数の電極棒33の共通電極として機能する。検出容器32に収容されている水と電極棒33の下端部とが接触することにより、検出容器32と電極棒33とは水を介して通電される。
【0048】
水位検出器30は、複数の電極棒33のそれぞれを流れる電流の有無に基づいて、検出容器32中の水位を検出する。Z軸方向において、電極棒33Cの下端部の位置と電気ヒータ4の発熱領域FAの上端部(境界EG)の位置とは、実質的に同一である。
【0049】
電極棒33B、33Cが水を検出し、電極棒33Aが水を検出しない場合、制御装置40は、給水ポンプ22を作動させて給水を実施する。電極棒33A、33B、33Cの全部が水を検出した場合、制御装置40は、給水ポンプ22の作動を停止して給水を停止する。これにより、水管3の水位は、電極棒33Aの下端部と電極棒33Bの下端部との間の位置に維持される。水管3の水位が電極棒33Aの下端部と電極棒33Bの下端部との間に維持されることにより、電気ヒータ4の発熱領域FAの全部が水に浸かることができる。電極棒33Cが水を検出しないとき、制御装置40は、電気ヒータ4の発熱領域FAの上端部を含む少なくとも一部が水管3の水に浸かっていないと判定する。制御装置40は、電極棒33Cが水を所定時間検出しない場合、電気ヒータ4への電力供給を停止してもよい。
【0050】
<温度センサ>
上記の通り、第1温度センサ10a及び第2温度センサ10bは、複数の下部管寄せ(第1下部管寄せ2a及び第2下部管寄せ2b)に1つずつ設けられている。
【0051】
これにより、第1温度センサ10aの検出値は、第1系統、すなわち第1下部管寄せ2aに設けられた複数(6本)の水管3における各電気ヒータ4の温度状態を代表する。第2温度センサ10bの検出値は、第2系統、すなわち第2下部管寄せ2bに設けられた複数(6本)の水管3における各電気ヒータ4の温度状態を代表する。
【0052】
言い換えると、本実施形態では、1本の下部管寄せに設けられる水管3(電気ヒータ4)の本数は、1つの温度センサによって系統内の全ての電気ヒータ4の温度状態を代表できる範囲内の本数に設定される。本実施形態では、1つの温度センサが系統内の6本の水管3の電気ヒータ4を代表するが、1つの温度センサが代表できる水管3(電気ヒータ4)の本数は6本に限られず、電気ヒータ4や缶体WSの仕様、寸法等に応じて適切に設定される。
【0053】
例えば、電気ボイラ1に要求される総出力から、水管3(電気ヒータ4)の総本数がA本に設計されたと仮定する。1つの温度センサの検出値が代表可能な水管3(電気ヒータ4)の数がB本であると仮定する。この場合、系統数C(下部管寄せの本数)を、C≧A/Bとする。これにより、1つの温度センサで代表可能なB本の水管3が設けられた下部管寄せをCセット設けることにより、C個の温度センサだけで、合計A本の水管3(電気ヒータ4)を備えた電気ボイラ1を構築できる。
【0054】
(温度センサの設置位置)
次に、図3を参照して、温度センサの設置位置について説明する。本実施形態では、降水管8と少なくとも1つの下部管寄せとの接続位置に最も近い第2水管P2の電気ヒータ4に温度センサが設けられている。図3に示すように、降水管8の接続位置は、各下部管寄せのX1側の端部であるので、第2水管P2は、第1下部管寄せ2a及び第2下部管寄せ2bのX1側の端にある水管3である。図3の例では、第1温度センサ10aが、第1下部管寄せ2aの第2水管P2の電気ヒータ4に設けられている。
【0055】
また、本実施形態では、給水管と少なくとも1つの下部管寄せとの接続位置に最も近い第1水管P1の電気ヒータ4に温度センサが設けられている。図3では、給水管9a、9bの接続位置(つまり、図2の管継手9cの位置)を、破線で示している。上記の通り、給水管9a、9bの接続位置は、下部管寄せの中間位置である。そのため、第1水管P1は、第1下部管寄せ2a及び第2下部管寄せ2bにおいて、6本中、中央の2本の水管3である。温度センサが設置される第1水管P1は、2本のうちどちらでもよい。図3の例では、第2温度センサ10bが、第2下部管寄せ2bの第1水管P1(X1側から数えて4番目の水管3)の電気ヒータ4に設けられている。
【0056】
(温度センサの取付構造)
図4は、本実施形態に係る電気ヒータの一例を示す側断面図である。図4図6は第1温度センサ10aを例示するが、第2温度センサ10bの取付構造も図4図6で示した第1温度センサ10a同様である。図4に示すように、第1温度センサ10a(及び第2温度センサ10b)は、水管3内で、電気ヒータ4の発熱領域FAの上端部に配置されている。第1温度センサ10a及び第2温度センサ10bは、発熱領域FAの上部の温度を検出する。
【0057】
図4の例では、電気ヒータ4が、U字状の3本のヒータ構成体4a、4b、4cを備えており、第1温度センサ10aが、そのうちの1本のヒータ構成体4aに取付具50によって取り付けられている。第1温度センサ10aおよび各ヒータ構成体4a、4b、4cは、水管3(図2参照)の上端部に装着される端子ユニット4dから下向きに突出するように設けられる。第1温度センサ10aは、端子ユニット4dを介して制御装置40(図2参照)と接続される。各ヒータ構成体4a、4b、4cは端子ユニット4dを介して電源41(図2参照)と接続される。
【0058】
図5は、電気ヒータ4への温度センサ(第1温度センサ10a)の取付の第1の例を説明する縦断面図(A)及び横断面図(B)である。図5の例では、第1温度センサ10aとヒータ構成体4aの直線部とが、スリーブ状の金属製の取付具50によって束ねられている。取付具50は、第1温度センサ10aの測温部をヒータ構成体4aの外周面に密着した状態で固定する。図5では、第1温度センサ10aは、接触式温度センサであり、保護管内に収容された熱電対を有する。
【0059】
図6は、電気ヒータ4への温度センサ(第1温度センサ10a)の取付の第2の例を説明する縦断面図である。図6の例では、第1温度センサ10aとヒータ構成体4aの直線部とが金属製の線材51によって束ねられている。線材51の数は特に限定されない。線材51は、第1温度センサ10aをヒータ構成体4aの外周面に密着した状態で固定する。
【0060】
図5の例と図6の例との相違は、第1温度センサ10aの直径である。図6の第1温度センサ10aは、直径が小さく曲がりやすいため、測温部がヒータ構成体4aの外周面から離れやすい。そのため、図6の例では、第1温度センサ10aとヒータ構成体4aとを線材51により複数個所で結束することにより密着状態を確保する。図5のように第1温度センサ10aの直径が大きく変形しにくい場合、スリーブ状の取付具50により固定してもよいし、線材51で結束してもよい。第1温度センサ10aの直径が大きいほど、測温部の表面積が大きくなり、ヒータ構成体4aとの非接触箇所からの放熱が大きくなるので、第1温度センサ10aの直径は小さい方が好ましい。この他、温度センサの取付方法としては、第1温度センサ10aとヒータ構成体4aとを、ロウ付けなどにより一体化させてもよい。
【0061】
[制御に関わる構成]
図2に示すように、制御装置40は、コンピュータシステムを含む。すなわち、制御装置40は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサと、RAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリ及びROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリを含む記憶装置と、信号又はデータを送受信可能な入出力回路を含む入出力インターフェース(I/F)とを有する。
【0062】
制御装置40は、複数の第1温度センサ10a及び第2温度センサ10bの各検出値に基づいて、各下部管寄せにおける電気ヒータ4が過熱しているか否かを判定する。本実施形態では、系統毎に1つの第1温度センサ10a及び第2温度センサ10bが設けられているので、制御装置40は、系統毎に過熱の判定を行う。
【0063】
電気ヒータ4の過熱には、2種類の要因が挙げられる。1つは、電気ヒータ4の表面にスケール(不純物の析出物)が付着したことである。電気ヒータ4の発熱領域FAにスケールが付着すると、発熱領域FAから水への放熱が阻害される。その結果、電気ヒータ4が通常よりも温度上昇する。他の1つは、水管3内の水位低下により電気ヒータ4の表面の一部が水と接触せずに露出したことである。電気ヒータ4の発熱領域FAが水と接触しない場合、表面が乾いて(水が蒸発しきって)その部分が通常よりも温度上昇する。制御装置40は、第1温度センサ10a及び第2温度センサ10bの検出値に基づいて、電気ヒータ4の表面にスケールが付着しているか否かを判定する。また、制御装置40は、第1温度センサ10a及び第2温度センサ10bの検出値に基づいて、電気ヒータ4の露出(水位低下)が発生しているか否かを判定する。
【0064】
制御装置40は、第1温度センサ10a及び第2温度センサ10bの検出値と所定の閾値との比較により、要因毎の過熱判定を行う。
【0065】
具体的には、制御装置40は、第1温度センサ10a又は第2温度センサ10bの検出値が第1閾値T1未満である場合、電気ヒータ4の表面にスケールが付着していないと判定し、第1温度センサ10a又は第2温度センサ10bの検出値が第1閾値T1以上である場合、電気ヒータ4の表面にスケールが付着していると判定する。ここで、所定の運転条件での、電気ヒータ4の発熱領域FAにスケールが付着しているときの電気ヒータ4の温度、及び電気ヒータ4の発熱領域FAにスケールが付着していないときの電気ヒータ4の温度(第1閾値T1)は、実験またはシミュレーションにより予め取得することができ、既知データである。例えば、通常の運転条件で電気ヒータ4の温度が170[℃]に制御される場合、第1閾値T1は、185[℃]に設定される。
【0066】
また、制御装置40は、第1温度センサ10a又は第2温度センサ10bの検出値が第2閾値T2未満である場合、水位低下による電気ヒータ4の露出が発生していないと判定し、第1温度センサ10a又は第2温度センサ10bの検出値が第2閾値T2以上である場合、電気ヒータ4の露出が発生していると判定する。ここで、所定の運転条件での、電気ヒータ4の発熱領域FAに水が接触しているときの電気ヒータ4の温度、及び電気ヒータ4の発熱領域FAに水が接触していないときの電気ヒータ4の温度(第2閾値T2)は、実験またはシミュレーションにより予め取得することができ、既知データである。第2閾値T2は、第1閾値T1よりも高い。例えば、通常の運転条件で電気ヒータ4の温度が170[℃]に制御される場合、第2閾値T2は、200[℃]に設定される。
【0067】
制御装置40は、例えば、第1温度センサ10aの検出値が上記の閾値以上になる場合に、第1系統、すなわち第1下部管寄せ2aに設けられた6本の電気ヒータ4のうち1本以上が過熱していると判定し、検出値が所定の閾値未満である場合に、第1系統の電気ヒータ4がすべて過熱していないと判定する。制御装置40は、例えば、第2温度センサ10bの検出値が上記の閾値以上になる場合に、第2系統、すなわち第2下部管寄せ2bに設けられた6本の電気ヒータ4のうち1本以上が過熱していると判定し、検出値が所定の閾値未満である場合に、第2系統の電気ヒータ4がすべて過熱していないと判定する。
【0068】
制御装置40は、いずれかの系統の電気ヒータ4が過熱していると判定した場合、作業者に対して過熱が発生している旨を報知する処理を行う。制御装置40は、報知装置42を制御することにより、報知を行う。
【0069】
報知装置42は、電気ボイラ1の使用者に報知情報を報知する。報知装置42として、表示装置、発光装置、及び音出力装置の少なくとも一つが例示される。表示装置は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)又は有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electroluminescence Display)のようなフラットパネルディスプレイを含む。発光装置は、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)のような光源を含む。音出力装置は、警告音を発生可能なサイレン又は音声出力装置を含む。報知装置42は、表示装置に表示される表示データ(文字または画像)、発光装置から射出される光、及び音出力装置から出力される音の少なくとも一つを使って、電気ボイラ1の使用者に報知情報を報知する。報知情報は、系統(第1下部管寄せ2a、第2下部管寄せ2bのいずれか)を特定する情報と、その系統の1つ以上の電気ヒータ4に過熱が発生していることを示す情報と、を含んでもよい。
【0070】
制御装置40は、過熱原因として、電気ヒータ4の発熱領域FAにスケールが付着していると判定したとき、報知装置42を制御して、例えば電気ヒータ4の表面にスケールが付着している可能性があることを示す表示データを表示させたり、スケールが付着している可能性があることを示す光または音声を出力させたりする。制御装置40は、過熱原因として、電気ヒータ4の露出が発生していると判定したとき、例えば電気ヒータ4の作動を停止させる制御信号を電源41に出力する。制御装置40は、第1温度センサ10a及び第2温度センサ10bの検出値が第1閾値T1及び第2閾値T2を下回り、電気ヒータ4が過熱していないと判定した場合、報知や電気ヒータ4の停止を行わずに検出値の監視を継続する。
【0071】
第1温度センサ10a及び第2温度センサ10bの各検出値に基づく制御装置40の処理は、一例であり、特に限定されない。制御装置40は、報知や電気ヒータ4の停止に代えて、電気ヒータ4への供給電力の調整や給水処理などの他の処理を行ってもよい。
【0072】
また、第1閾値T1、第2閾値T2は、複数段階で設定されてもよい。例えば、スケール付着は経年的に進行するので、スケール付着の進行度合いに応じて第1閾値T1を、複数段階設定してもよい。スケールの付着量が増大するほど電気ヒータ4の放熱が阻害され電気ヒータ4が温度上昇しやすくなるため、スケール付着の進行度合いを温度検出値に基づいて判定することができる。
【0073】
また、第1温度センサ10a及び第2温度センサ10bの検出値と閾値(第1閾値T1、第2閾値T2)との比較に代えて、あるいは検出値と閾値との比較に追加して、電気ボイラ1の運転中の第1温度センサ10a及び第2温度センサ10bの検出値の上昇率(つまり、単位時間当たりの温度勾配)を考慮してもよい。
【0074】
すなわち、電気ヒータ4の表面にスケールが付着しているとき、スケールにより電気ヒータ4の放熱が阻害されるため、電気ヒータ4の温度は、相対的にゆっくりと上昇する。一方、電気ヒータ4の発熱領域FAが水と接触せず露出しているとき、電気ヒータ4の温度は、スケール付着と比較して急激に上昇する。そのため、制御装置40は、第1温度センサ10a又は第2温度センサ10bの検出値の上昇率が第3閾値以上第4閾値未満のとき、すなわち、電気ヒータ4の温度がゆっくりと上昇していると判定したとき、電気ヒータ4の表面にスケールが付着していると判定することができる。また、制御装置40は、第1温度センサ10a又は第2温度センサ10bの検出値の上昇率が第4閾値以上であるとき、すなわち、電気ヒータ4の温度が急激に上昇していると判定したとき、電気ヒータ4が過熱していると判定することができる。
【0075】
[効果]
以上説明したように、本実施形態の電気ボイラ1は、複数の下部管寄せ(2a、2b)と、複数の下部管寄せ(2a、2b)の各々から上方に延びる複数の水管3と、複数の水管3の各々の内部に設けられた複数の電気ヒータ4と、複数の水管3の各々と上昇管5を介して接続された上部管寄せ6と、複数の下部管寄せ(2a、2b)に対して1つずつ設けられ、それぞれの下部管寄せ(2a、2b)のいずれかの水管3の電気ヒータ4に配置された複数の温度センサ(10a、10b)と、を備える。これにより、水管3(及び電気ヒータ4)の本数を増やして電気ボイラ1の出力を増大させる場合に、水管3を複数の下部管寄せ(2a、2b)に分けて配置することにより、1つの下部管寄せのサイズや設置する水管3の数を、水質や温度分布の均質性が確保できる範囲に制限できる。その上で、複数の下部管寄せ(2a、2b)に対して1つずつ温度センサ(10a、10b)を設けるので、1つの下部管寄せに設けた全ての電気ヒータ4の温度を、1つの温度センサの検出値によって代表させることができる。これにより、水管3の本数に比べて温度センサの個数を効果的に低減できる。以上により、水管3の本数を増やした場合でも、少ない数の温度センサで適切な温度検出が可能な電気ボイラ1を提供できる。
【0076】
また、本実施形態において、電気ボイラ1は、複数の下部管寄せ(2a、2b)に接続された給水管9a、9bをさらに備え、給水管9a、9bと少なくとも1つの下部管寄せ(2a、2b)との接続位置に最も近い第1水管P1の電気ヒータ4に温度センサ(第2温度センサ10bが設けられている。給水管9a、9bからは、缶体WS内に貯留されていない新たな水が供給されるため、第1水管P1は、同一系統内で、供給される水の水質(硬度成分濃度)の変動に最も影響されやすい水管3である。例えば水の硬度成分濃度が上昇すると、電気ヒータ4の表面にスケールが形成されやすくなる。給水管9a、9bを流通する水の供給源は同一であるので、いずれの系統の第1水管P1でも水質変動の影響は同等と考えられる。そこで、いずれかの系統の温度センサ(第1温度センサ10aまたは第2温度センサ10b)を第1水管P1の電気ヒータ4に設置することで、供給される水の水質変動に起因する電気ヒータ4の過熱を早期に検出できる。したがって、温度センサの数を低減した場合でも、水質変動による影響を早期に検出できる。
【0077】
また、本実施形態において、電気ボイラ1は、上部管寄せ6に又はセパレータに接続され、分岐部8aで分岐して複数の下部管寄せ(2a、2b)の各々に接続された降水管8をさらに備え、降水管8と少なくとも1つの下部管寄せ(2a、2b)との接続位置に最も近い第2水管P2の電気ヒータ4に温度センサ(第1温度センサ10a)が設けられている。降水管8からは、不純物が濃縮された水が下部管寄せ(2a、2b)に戻されるので、第2水管P2は、同一系統内で、管内の水の不純物濃度が最も上昇しやすい水管3である。水の不純物濃度が上昇すると、電気ヒータ4の表面にスケール(不純物の析出物)が形成される。スケールは電気ヒータ4の伝熱性能を低下させるため、電気ヒータ4の過熱が生じやすくなる。そこで、降水管8を分岐させて、降水管8からの濃縮された水を分岐部8aにより各系統へ分配させた上で、いずれかの系統の温度センサ(第1温度センサ10aまたは第2温度センサ10b)を第2水管P2の電気ヒータ4に設置することで、不純物濃度の上昇に起因する電気ヒータ4の過熱を早期に検出できる。したがって、温度センサの数を低減した場合でも、不純物濃度の上昇による影響を早期に検出できる。
【0078】
また、本実施形態において、複数の下部管寄せ(2a、2b)は、水平面内でX方向(第1方向)に延びるとともにX方向(第1方向)と直交するY方向(第2方向)に並んで配置され、降水管8は、複数の下部管寄せ(2a、2b)の各々に、X方向(第1方向)の一端部側(X1側)に接続され、給水管9a、9bは、複数の下部管寄せ(2a、2b)の各々に、X方向(第1方向)の中間位置に接続される。つまり、第2水管P2は系統内の一端部の水管3であり、第1水管P1は系統内の中央側の水管3である。これにより、第1温度センサ10a及び第2温度センサ10bによって、別々の系統ではあるが、下部管寄せの端部の温度と中央部の温度とをそれぞれ取得できる。水質や温度分布の均質性が確保できるように1つの下部管寄せに設置する水管3の数を制限(分割)したことにより、系統毎の温度分布を同等または類似するとみなせる場合、端部と中央部とのそれぞれの検出値から、系統内の温度分布を推測できる。つまり、系統毎には1つの温度センサだけを設置していても、各系統の第1温度センサ10a及び第2温度センサ10bの検出値を総合することで、系統内の状況把握に有用な情報が得られる。
【0079】
<変形例>
実施形態では、第1温度センサ10aを第1下部管寄せ2aの第2水管P2に設け、第2温度センサ10bを第2下部管寄せ2bの第1水管P1に設けた例を示したが、これに限られない。第1温度センサ10aを第1水管P1に設け、第2温度センサ10bを第2水管P2に設けてもよい。各温度センサは、第2水管P2および第1水管P1以外の他の水管3に設けてもよい。
【0080】
実施形態では、下部管寄せを2本設けた例を示したが、下部管寄せを3本以上設けてもよい。また、各下部管寄せ(2a、2b)に設ける水管3の本数は、特に限定されず、任意である。
【0081】
また、実施形態では、排水管7に連通部7aを設けた例を示したが、排水管7に連通部7aを設けずに、各下部管寄せ(2a、2b)に排水管7を個別に設けてもよい。同様に、降水管8に分岐部8aを設けた例を示したが、降水管8に分岐部8aを設けずに、各下部管寄せ(2a、2b)に降水管8を個別に設けてもよい。これらの場合に、各下部管寄せ(2a、2b)を連通させる連通管を、排水管7および降水管8とは別に設けてもよい。
【0082】
また、実施形態では、給水管9a、9bを、それぞれ下部管寄せ(2a、2b)のX方向の中間位置に接続した例を示したが、X方向の端部側に接続してもよいし、複数個所(例えばX方向の一端と他端)に接続してもよい。また、給水管を第1下部管寄せ2a及び第2下部管寄せ2bの一方のみに設けつつ、第1下部管寄せ2aと第2下部管寄せ2bとを相互に連通させることで、1本の給水管によって両方の下部管寄せに給水してもよい。また、給水管9a、9bの給水口は1つでもよい。
【符号の説明】
【0083】
1…電気ボイラ、2a…第1下部管寄せ(下部管寄せ)、2b…第2下部管寄せ(下部管寄せ)、3…水管、4…電気ヒータ、4a、4b、4c…ヒータ構成体、4d…端子ユニット、5…上昇管、6…上部管寄せ、7…排水管、7a…連通部、7b、7c、7d…管部、8…降水管、8a…分岐部、8b、8c、8d…管部、8e…接続口、9a、9b…給水管、9c…管継手、10a…第1温度センサ(温度センサ)、10b…第2温度センサ(温度センサ)、11…蒸気管、12…蒸気弁、13…排水弁、14…濃縮排水口、15…濃縮排水弁、16…水質計測部、20…給水装置、21…給水分岐部、22…給水ポンプ、23…給水弁、30…水位検出器、31…検出器接続管、31a…上部連通管、31b…下部連通管、32…検出容器、33(33A、33B、33C)…電極棒、40…制御装置、41…電源、42…報知装置、50…取付具、51…線材、EG…境界、FA…発熱領域、NA…非発熱領域、P1…第1水管、P2…第2水管、SP1…給水口、SP2…給水口、WS…缶体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6