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特開2024-176016残量予測システム、残量予測方法及び残量予測プログラム。
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  • 特開-残量予測システム、残量予測方法及び残量予測プログラム。 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176016
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】残量予測システム、残量予測方法及び残量予測プログラム。
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20230101AFI20241212BHJP
【FI】
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094197
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大渕 正博
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 睦博
(72)【発明者】
【氏名】浜辺 千佐子
(72)【発明者】
【氏名】牟田 恵美
(72)【発明者】
【氏名】杉内 章浩
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA04
5L049AA04
(57)【要約】
【課題】貯蔵された対象物の残量を予測する。
【解決手段】残量予測システム80は、生活用水及び燃料の少なくとも一方を含む対象物の残量を一定時間毎に取得する取得部11Aと、取得部11Aで取得された一定時間毎の残量から、対象物の消費速度を導出して所定時間経過後の予測残量を導出する導出部11Bと、予測残量を表示装置へ表示させる出力部11Cと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵された生活用水及び燃料の少なくとも一方を含む対象物の残量を一定時間毎に取得する取得部と、
前記取得部で取得された一定時間毎の前記残量から、前記対象物の消費速度を導出して所定時間経過後の予測残量を導出する導出部と、
前記予測残量を表示装置へ表示させる出力部と、
を備えた残量予測システム。
【請求項2】
前記導出部は、
前記残量を所定数以上取得してから前記予測残量を導出し、
前記出力部は、
前記予測残量の導出前は、仮予測残量を前記表示装置へ表示させる、
請求項1に記載の残量予測システム。
【請求項3】
前記導出部は、
取得された前記残量を用いて断続的に前記予測残量を修正する、
請求項1又は2に記載の残量予測システム。
【請求項4】
前記取得部は、
前記対象物の供給が遮断されたことに応じて、前記残量の取得を開始する、
請求項1又は2に記載の残量予測システム。
【請求項5】
生活用水及び燃料の少なくとも一方を含む対象物の残量を一定時間毎に取得する取得し、
取得された一定時間毎の前記残量から、前記対象物の消費速度を導出して所定時間経過後の予測残量を導出し、
前記予測残量を表示装置へ表示させる、
残量予測方法。
【請求項6】
コンピュータを、
生活用水及び燃料の少なくとも一方を含む対象物の残量を一定時間毎に取得する取得部と、
前記取得部で取得された一定時間毎の前記残量から、前記対象物の消費速度を導出して所定時間経過後の予測残量を導出する導出部と、
前記予測残量を表示装置へ表示させる出力部と、
して機能させる残量予測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、残量予測システム、残量予測方法及び残量予測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には被災時に、所在者の活動を継続できるように、活動に必要な資源の管理を支援するための災害時支援システム、災害時支援方法及び災害時支援プログラムが記載されている。この災害時支援システムでは、貯水タンク、燃料タンク、ガスタンク、備蓄品、排水槽等の各種設備の状況を検知する。また、館内の所在者の所在情報に応じて、館内設備の単位時間当たりの利用総量を予測する。そして、所在者が館内設備を利用できるように、館内設備の利用を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-029984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の災害時支援システムでは、館内の所在者の所在情報に応じて、館内設備の単位時間当たりの利用総量を予測する。この所在情報としては、所在位置、所在者人数、所在者属性が挙げられている。しかしながら、館内設備の使用量が、このような予測値と一致するとは限らない。この場合、想定より早く館内設備の備蓄量が枯渇する可能性がある。このため、貯蔵された生活用水や燃料などの対象物の残量を予測する方法が求められている。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、貯蔵された対象物の残量を予測することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の残量予測システムは、貯蔵された生活用水及び燃料の少なくとも一方を含む対象物の残量を一定時間毎に取得する取得部と、前記取得部で取得された一定時間毎の前記残量から、前記対象物の消費速度を導出して所定時間経過後の予測残量を導出する導出部と、前記予測残量を表示装置へ表示させる出力部と、を備える。
【0007】
請求項1の残量予測システムでは、貯蔵された生活用水及び燃料の少なくとも一方を含む対象物の残量が一定時間毎に取得される。そして、一定時間毎の残量から、対象物の消費速度が導出される。この消費速度から、対象物の予測残量が導出され表示装置に表示される。このように、本態様では、貯蔵された対象物の残量の実測値から対象物の予測残量が導出される。
【0008】
このため、建物の所在者の所在位置、所在者人数等から対象物の消費量の予測値を導出する場合と比較して、所定時間経過後における対象物の残量の予測精度が向上する。これにより、対象物が枯渇する時間や、一定期間枯渇させないために必要な補充量を検討し易い。
【0009】
請求項2の残量予測システムは、請求項1に記載の残量予測システムにおいて、前記導出部は、前記残量を所定数以上取得してから前記予測残量を導出し、前記出力部は、前記予測残量の導出前は、仮予測残量を前記表示装置へ表示させる。
【0010】
請求項2の残量予測システムでは、対象物の残量を所定数以上取得してから対象物の予測残量が導出される。これにより、所定数未満の取得値から予測する場合と比較して、対象物の残量の予測精度が向上する。
【0011】
また、予測残量の導出前は、仮予測残量を表示装置へ表示させる。このため、このような仮予測残量を表示させない場合と比較して、対象物の節約意識を高めやすい。
【0012】
請求項3の残量予測システムは、請求項1又は2に記載の残量予測システムにおいて、前記導出部は、取得された前記残量を用いて断続的に前記予測残量を修正する。
【0013】
請求項3の残量予測システムでは、取得された残量を用いて、断続的に予測残量が修正される。これにより、経過時間が長くなるほど、対象物の残量の予測精度が向上する。
【0014】
請求項4の残量予測システムは、請求項1又は2に記載の残量予測システムにおいて、前記取得部は、前記対象物の供給が遮断されたことに応じて、前記残量の取得を開始する。
【0015】
請求項4の残量予測システムでは、対象物の供給が遮断されたことに応じて、残量の取得が開始される。これにより、人為的な指示に応じて残量の取得が開始される場合と比較して、災害発生後、速やかに残量予測を開始できる。
【0016】
なお、請求項4の残量予測システムは、請求項1~3の何れか1項に記載の残量予測システムにおいて、前記取得部は、前記対象物の供給が遮断されたことに応じて、前記残量の取得を開始するものとしてもよい。
【0017】
請求項5の残量予測方法は、生活用水及び燃料の少なくとも一方を含む対象物の残量を一定時間毎に取得する取得し、取得された一定時間毎の前記残量から、前記対象物の消費速度を導出して所定時間経過後の予測残量を導出し、前記予測残量を表示装置へ表示させる。
【0018】
請求項5の残量予測方法では、請求項1の残量予測システムと同様の効果が得られる。
【0019】
請求項6の残量予測プログラムは、コンピュータを、生活用水及び燃料の少なくとも一方を含む対象物の残量を一定時間毎に取得する取得部と、前記取得部で取得された一定時間毎の前記残量から、前記対象物の消費速度を導出して所定時間経過後の予測残量を導出する導出部と、前記予測残量を表示装置へ表示させる出力部と、して機能させる。
【0020】
請求項6の残量予測プログラムでは、請求項1の残量予測システムと同様の効果が得られる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、貯蔵された対象物の残量を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る残量予測システム及び残量予測装置の機能構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係る残量予測装置の電気構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る表示装置の表示例を示す概念図である。
図4】本発明の実施形態に係る表示装置の表示例の変形例を示す概念図である。
図5】本発明の実施形態に係る残量予測処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る残量予測システム、残量予測方法及び残量予測プログラムについて、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0024】
また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本開示は以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において構成を省略する、異なる構成と入れ替える、一実施形態及び各種の変形例を組み合わせて用いる等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0025】
<残量予測システム>
図1に示す残量予測システム80は、地震などの災害時に、建物で電気が使えなくなったり生活用水が枯渇したりすることを抑制するためのシステムである。このシステムを用いることで、非常用燃料や生活用水の予測残量を表示装置に表示して、建物の利用者に節電や節水を促すことができる。
【0026】
なお、本発明における「システム」とは、複数の装置によって構成されたもの、単一の装置によって構成されたもの、上位の装置やシステム内に構築されたもの何れをも含む。例えば、本開示の残量予測システム80において、後述する残量予測装置10は、1つの装置として構築することに限定されず、複数の装置等に亘って構築してもよい。
【0027】
(予測対象物)
残量を予測する対象物としては、例えば非常用発電機30Aの燃料タンクに貯蔵された燃料、貯水槽30Bに貯蔵された生活用水が挙げられる。また、排水槽30Cの排水を対象物とすることもできる。排水槽30Cの排水を対象物とする場合、予測される排水の残量(以下、排水残量と称す場合がある)とは、排水槽に排水できる容量(排水槽の残容量)を示すものとする。排水槽30Cは、下水道へ連結された排水管へ排水ができなくなった場合に使用する非常用の貯水槽である。
【0028】
本発明においては、燃料及び生活用水の少なくとも一方を対象物とすればよいが、本明細書においては、燃料、生活用水及び排水残量を対象物とする場合について説明する。また、貯水槽30Bとしては、上水を溜める受水槽のほか、中水を溜める中水槽等が挙げられる。また、生活用水とは、上水及び中水を含む。本発明において生活用水を対象物とする場合は、上水及び中水の双方を対象物としてもよいし、何れか一方を対象物としてもよい。
【0029】
(対象物センサ)
非常用発電機30A、貯水槽30B及び排水槽30Cには、それぞれセンサ20A、20B、20Cが設けられている。センサ20Aは、非常用発電機30Aに貯められた燃料としての重油や軽油の量(残量)を測定することができる。同様に、センサ20Bは、貯水槽30Bに貯められた生活用水の量(残量)を測定することができる。また、センサ20Cは、排水槽30Cに貯められた汚水の量を測定することができる。これらのセンサ20A、20B及び20Cとしては、例えばレベルセンサが用いられる。
【0030】
(表示装置)
表示装置40は、例えば図3に示すように、所定時間経過後の対象物の予測残量を表示可能な画面40Aを備えた装置であり、例えば建物の防災センターや管理人室に設置される。
【0031】
画面40Aには、非常用発電機30Aに貯蔵された燃料の残量の履歴(実績値)がグラフK1で示され、予測値がグラフK2で示される。同様に、画面40Aには、貯水槽30Bに貯蔵された生活用水の残量の履歴(実績値)がグラフL1で示され、予測値がグラフL2で示される。また、画面40Aには、排水槽30Cの排水残量(実績値)がグラフM1で示され、予測値がグラフM2で示される。これらの実績値と予測値とは、現在時刻T1を境界線として表示される。
【0032】
また、画面40Aには、電力供給、水道水供給、排水状況についてのステータスを表示させることができる。
【0033】
具体的には、画面40Aには、例えば建物に対する電力系統からの電力供給が停止している場合に、「停電中」等と表示させることができる。同様に、画面40Aには、建物に対する水道管からの上水の供給が停止している場合に、「断水中」等と表示させることができる。また、画面40Aには、建物からの下水管へ汚水の排出が不可能な場合に「排水不可」等と表示させることができる。
【0034】
また、画面40Aには、非常用発電機30A、貯水槽30B及び排水槽30Cの現在時刻T1における残量を表示させることができる。
【0035】
具体的には、画面40Aには、非常用発電機30Aに貯蔵された燃料の残量を「燃料残り○○%(○○L)」等と表示させることができる。同様に、画面40Aには、貯水槽30Bに貯蔵された生活用水の残量を「貯水量残り○○%(○○L)」等と表示させることができる。また、画面40Aには、排水槽30Cの排水残量を「貯水容量残り○○%(○○L)」等と表示させることができる。
【0036】
また、画面40Aには、燃料残量、貯水残量、排水残量に応じて、残量予測システム80のユーザに対するメッセージを表示させることができる。
【0037】
具体的には、画面40Aには、例えば燃料残量に応じて、「残量30%を切りました。節電モード切替か燃料補給手配をしてください」等と表示させることができる。同様に、画面40Aには、例えば貯水残量に応じて、「残量50%を切りました。節水を呼び掛けてください」等と表示させることができる。また、画面40Aには、排水残量に応じて、「満水間近です。直ちに備蓄トイレに切り替えて下さい。」等と表示させることができる。
【0038】
<残量予測装置>
図1に示す残量予測装置10は、燃料残量、貯水残量、排水残量を予測し、所定時間経過後の予測値を表示装置40へ表示させるための装置である。
【0039】
(残量予測装置の電気的な構成)
図2に示すように、残量予測装置10は、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)11、一時記憶領域としてのメモリ12、不揮発性の記憶部13、キーボードとマウス等の入力部14、液晶ディスプレイ等の表示部15、媒体読み書き装置(R/W)16、通信インタフェース(I/F)部18及び外部I/F部19を備えている。CPU11、メモリ12、記憶部13、入力部14、表示部15、媒体読み書き装置16、通信I/F部18及び外部I/F部19はバスB1を介して互いに接続されている。媒体読み書き装置16は、記録媒体17に書き込まれている情報の読み出し及び記録媒体17への情報の書き込みを行う。
【0040】
(記憶部)
記憶部13はHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としての記憶部13には、残量予測プログラム13Aが記憶されている。残量予測プログラム13Aは、残量予測プログラム13Aが書き込まれた記録媒体17が媒体読み書き装置16にセットされ、媒体読み書き装置16が記録媒体17からの残量予測プログラム13Aの読み出しを行うことで、記憶部13へ記憶される。CPU11は、残量予測プログラム13Aを記憶部13から読み出してメモリ12に展開し、残量予測プログラム13Aが有するプロセスを順次実行する。この記憶部13には、後述する残量データベース13Bが記憶される。
【0041】
(入力部)
入力部14では、残量予測システム80を利用するユーザによって、残量予測プログラム13Aを開始及び終了するための操作が実行される。
【0042】
(表示部)
表示部15には、残量予測プログラム13Aを開始及び終了するための情報が表示される。なお、表示部15及び入力部14は、上述した表示装置40と一体的に形成してもよい。
【0043】
(残量予測装置の機能的な構成)
図1を参照して、本実施形態に係る残量予測装置10の機能的な構成について説明する。図1に示すように、残量予測装置10は、取得部11A、導出部11B及び出力部11Cを含む。残量予測装置10のCPU11は、残量予測プログラム13Aを実行することで、取得部11A、導出部11B及び出力部11Cとして機能する。
【0044】
(取得部)
取得部11Aは、生活用水及び燃料の少なくとも一方を含む対象物の残量を一定時間毎に取得する。
【0045】
より具体的には、取得部11Aは、非常用発電機30Aに貯蔵された燃料としての重油や軽油の量(残量)を、一定時間毎にセンサ20Aから取得する。同様に、取得部11Aは、貯水槽30Bに貯蔵された生活用水量(残量)を、一定時間毎にセンサ20Bから取得する。また、取得部11Aは、排水槽30Cに貯められた汚水等の量を、一定時間毎にセンサ20Cから取得する。「一定時間」としては、例えば1分、10分、1時間等任意の時間を設定できる。
【0046】
なお、取得部11Aは、電力系統からの電力供給の有無、水道管からの上水供給の有無、配水管への排水排出の可否を断続的に取得する。このため、取得部11Aは、対象物としての燃料及び生活用水の供給が遮断されたか否かを検出することができる。また、取得部11Aは、排水管へ対象物としての排水が排出できるか否かを検出することができる。
【0047】
(導出部の概要)
導出部11Bは、取得部11Aで取得された一定時間毎の燃料残量及び生活用水残量から、燃料及び生活用水の消費速度(実績値)を導出し、所定時間経過後の予測残量を導出する。また、導出部11Bは、取得部11Aで取得された一定時間毎の排水の量から、排水容量の消費速度(排水槽30Cの余剰容量を使用する速さの実績値)を導出し、所定時間経過後の予測残量(排水残量)を導出する。
【0048】
(導出部-消費速度実績値の導出)
まず導出部11Bは、一定時間毎(例えば時刻t、t)に取得された燃料残量(Kt、Kt)から、単位時間に消費された燃料の量、すなわち、燃料の消費速度を導出する。Ktは時刻tにおける燃料残量であり、Ktは時刻tにおける燃料残量である。これにより、燃料の消費速度実績値Vrealtが以下の通り導出される。
【0049】
realt=(Kt-Kt)/(t-t
【0050】
(導出部-消費速度予測値の導出)
次に、導出部11Bは、この消費速度実績値Vrealtを用いて、消費速度の予測値Vtを導出する。予測値Vtを導出するために、導出部11Bは、回帰分析、機械学習、ベイズ更新等の方法を用いることができる。回帰分析、機械学習、ベイズ更新によって消費速度の予測値Vtを導出する処理を実行するプログラムは、残量予測プログラム13Aに含まれている。
【0051】
なお、導出部11Bは、燃料の消費速度の予測値Vtを導出する際に、燃料残量を所定数以上取得する。「所定数」は予め設定される値で、様々な値を適用できるが、例えば所定数を「4」とした場合について説明する。
【0052】
このとき、導出部11Bは、一定時間毎、例えば時刻t、t、t3、t4に取得された燃料残量(Kt、Kt、Kt3、Kt4)から、燃料の消費速度実績値Vrealtを以下の通り複数導出する。
【0053】
real1=(Kt1-Kt2)/(t2-t1
real2=(Kt2-Kt3)/(t3-t2
real3=(Kt3-Kt4)/(t4-t3
【0054】
導出部11Bは、これら複数の消費速度実績値Vreal1、Vreal2、Vreal3から、消費速度の予測値Vtを導出する。
【0055】
なお、燃料が補給された場合、消費速度実績値Vrealtが負の値となる。導出部11Bは、消費速度実績値Vrealtが負の値となった場合、当該負の値は、消費速度の予測値Vtを導出するための値としては使用しない。
【0056】
(導出部-予測残量の導出)
次に、導出部11Bは、現在時刻における燃料の量Kと、この消費速度の予測値Vtと、を用いて、所定時間(T)経過後の燃料の予測残量K(T)を、以下の通り時間Tの関数として導出する。
【0057】
K(T)=K-Vt・T
【0058】
同様に、導出部11Bは、所定時間経過後の生活用水の予測残量と、所定時間経過後の予測排水残量と、を時間の関数として導出する。
【0059】
(導出部-仮予測残量)
導出部11Bは、予測残量が導出される前、すなわち、対象物残量の取得数が所定数未満の段階では、所定時間経過後の対象物の予測残量として、仮予測残量を用いる。
【0060】
残量予測システム80のユーザは、入力部14を介して、仮予測残量として任意の値を予め入力しておける。また、仮予測残量は、残量予測プログラム13Aに記憶された演算式から、導出部11Bが導出することもできる。
【0061】
演算式は、過去における対象物の残量の経時記録から、将来の消費量の予測値を予測する演算式である。過去における対象物の残量は、取得部11Aによって取得され、残量データベース13Bに記憶されている。
【0062】
(導出部-予測値の修正)
導出部11Bは、対象物の、取得部11Aによって取得された残量を用いて断続的に予測残量を修正する。例えば上述したように、対象物の残量を4回取得して対象物の消費速度の予測値を導出した後は、新たに対象物の残量を取得する毎に、消費速度の予測値を修正する。
【0063】
(出力部)
出力部11Cは、図4に示すように、導出部11Bによって導出された所定時間経過後の燃料の予測残量(グラフK2)、所定時間経過後の生活用水の予測残量(グラフL2)、及び所定時間経過後の予測排水残量(グラフM2)を、表示装置40へ表示させる。
【0064】
これらの予測残量は時間(T)の関数として示されるため、表示装置40には、非常用発電機30Aの燃料が枯渇する予想時間、貯水槽30Bの生活用水が枯渇する予想時間、排水槽30Cが満水となる予測時間も表示させることができる。
【0065】
また、出力部11Cは、図4に示すように、燃料の残量実績値(グラフK1)、生活用水の残量実績値(グラフL1)、及び排水残量実績値(グラフM1)を、表示装置40へ表示させる。
【0066】
(導出部及び出力部-複数の予測値の導出と表示)
導出部11Bは、所定時間経過後の対象物の予測残量として、同一の時間毎に複数の値を導出することができる。例えば、ベイズ更新によって対象物の消費速度の予測値を導出する場合は、予測に用いた複数の実績値の平均値と標準偏差から、例えば80%信頼区間を導出する。そして、80%信頼区間の下限及び上限の閾値を付加的に予測値として用いることもできる。
【0067】
この場合、出力部11Cは、図4に示すように、下限及び上限の閾値を、グラフK2A及びK2Bとして表示装置40へ表示させることができる。
【0068】
<残量予測処理>
図5を参照して、本実施形態に係る残量予測システム80における残量予測処理を説明する。ユーザからの入力部14を介した実行指示等に応じて、残量予測装置10のCPU11が残量予測プログラム13Aを実行することにより、図5に示す残量予測処理が実行される。
【0069】
残量予測プログラム13Aの実行が開始されると、ステップS102で、CPU11は、対象物の供給遮断待ちを実行する。CPU11は、対象物の供給が遮断されるまで、すなわち、燃料及び生活用水の少なくとも一方が遮断されるまで、ステップS102を繰り返し実行する。対象物の供給が遮断されると、ステップS104へ移行する。
【0070】
なお、排水槽30Cの排水を対象物とする場合、CPU11は、ステップS102で、下水道へ連結された排水管へ排水ができなくなったか否かを含めて判定する。この場合、燃料及び生活用水の少なくとも一方が遮断、又は、配水管へ排水ができなくなるまで、ステップ102を繰り返し実行する。対象物の供給が遮断されると、ステップS104へ移行する。
【0071】
ステップS104で、CPU11は、所定時間経過後における対象物の仮予測残量を導出あるいは読み出して、図3に示すグラフK2、L2及びM2として表示装置40へ表示させる。ステップS104の次は、ステップS106へ移行する。
【0072】
ステップS106で、CPU11は、対象物の残量を取得する。ステップS106の次は、ステップS108へ移行して、対象物の残量が所定回数取得されたか否かを判定する。ステップS108で否定判定された場合は、対象物の残量が所定回数取得されるまでステップS106を繰り返し実行する。ステップS108で肯定判定された場合は、ステップS110へ移行する。
【0073】
ステップS110で、CPU11は、所定時間経過後における対象物の予測残量を導出し、図3に示すグラフK2、L2及びM2を更新して表示装置40へ表示させる。また、CPU11は、測定された対象物の残量実績値を、グラフK1、L1及びM1として表示装置40へ表示させる。
【0074】
ステップS112で、CPU11は、所定時間の経過待ちを実行する。所定時間が経過したらステップS114へ移行する。
【0075】
ステップS114で、CPU11は、所定時間経過後における対象物の予測残量を導出して更新する。また、CPU11は、更新された予測残量を用いて図3に示すグラフK2、L2及びM2を更新して表示装置40へ表示させる。また、CPU11は、測定された対象物の残量実績値を、グラフK1、L1及びM1として表示装置40へ表示させる。ステップS114の次は、ステップS116へ移行する。
【0076】
ステップS116で、CPU11は、残量予測処理の終了タイミングが到来したか否かを判定し、肯定判定となった場合は残量予測処理を終了する。この終了タイミングは、一例として、ユーザの入力部14を介した残量予測処理の終了指示の入力によって到来する。ステップS116で否定判定となった場合はステップ112へ戻って、所定時間の経過待ちを実行する。
【0077】
<作用及び効果>
本発明の実施形態に係る残量予測システム80では、貯蔵された生活用水及び燃料の少なくとも一方を含む対象物の残量が一定時間毎に取得される。そして、一定時間毎の残量から、対象物の消費速度が導出される。この消費速度から、対象物の予測残量が導出され表示装置40に表示される。このように、本態様では、対象物の残量の「実測値」から対象物の予測残量が導出される。
【0078】
このため、建物の所在者の所在位置、所在者人数等から対象物の消費量の予測値を導出する場合と比較して、対象物の残量の予測精度が向上する。これにより、対象物が枯渇する時間や、一定期間枯渇させないために必要な補充量を検討し易い。
【0079】
また、本発明の実施形態に係る残量予測システム80では、対象物の残量を所定数以上取得してから対象物の予測残量が導出される。これにより、所定数未満の取得値から予測する場合と比較して、対象物の残量の予測精度が向上する。
【0080】
また、予測残量の導出前は、予め入力された仮予測残量を表示装置40へ表示させる。このため、このような仮予測残量を表示させない場合と比較して、対象物の節約意識を高めやすい。
【0081】
また、本発明の実施形態に係る残量予測システム80では、取得された残量を用いて、断続的に予測残量が修正される。これにより、経過時間が長くなるほど、対象物の残量の予測精度が向上する。
【0082】
また、本発明の実施形態に係る残量予測システム80では、対象物の供給が遮断されたことに応じて、対象物の残量の取得が開始される。これにより、人為的な指示に応じて残量の取得が開始される場合と比較して、災害発生後、速やかに残量予測を開始できる。
【0083】
<その他の実施形態>
上記実施形態においては、対象物の供給が遮断されたことの検知(ステップS102)に応じて、対象物の残量取得を開始(ステックS106)しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば残量予測システム80のユーザの入力部14等を介した指示に応じて対象物の残量取得を開始してもよいし、所定の震度、加速度又は変位以上の揺れを検知したことに応じて対象物の残量取得を開始してもよい。
【0084】
また、上記実施形態においては、対象物の残量を所定数以上取得してから予測残量を導出し、予測残量の導出前は、予め入力された仮予測残量を表示装置40に表示させるものとしたが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0085】
例えばこのような仮予測残量を表示装置40に表示させなくてもよい。仮予測残量を表示装置40に表示させなければ、対象物の残量の「実測値」のみに基づく対象物の予測残量を表示できる。このため、緊急時、かつ、直近の対象物の消費動向に即した予測残量を表示できる。
【0086】
また、上記実施形態において、例えば、取得部11A、導出部11B及び出力部11Cの各処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、前述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0087】
処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせや、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0088】
処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント及びサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0089】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。このように、本発明は様々な態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0090】
10 残量予測装置
11A 取得部
11B 導出部
11C 出力部
13A 残量予測プログラム(プログラム)
40 表示装置
80 残量予測システム
図1
図2
図3
図4
図5