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特開2024-176018劣化診断装置、劣化診断システム及び劣化診断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176018
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】劣化診断装置、劣化診断システム及び劣化診断方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 13/11 20060101AFI20241212BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
C01B13/11 Z
G05B23/02 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094204
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【弁理士】
【氏名又は名称】伊達 研郎
(74)【代理人】
【識別番号】100184022
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 美保
(72)【発明者】
【氏名】尾台 佳明
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 亮平
【テーマコード(参考)】
3C223
4G042
【Fターム(参考)】
3C223AA05
3C223BA01
3C223CC01
3C223DD01
3C223EB01
3C223EB02
3C223EB03
3C223FF02
3C223FF04
3C223FF05
3C223FF13
3C223FF52
3C223GG01
3C223HH02
3C223HH29
4G042CA01
4G042CB29
(57)【要約】
【課題】簡単な指標を用いてオゾン発生器の劣化診断ができる劣化診断装置、劣化診断システム及び劣化診断方法を提供する。
【解決手段】本開示に係る劣化診断装置は、オゾン発生器のガス系の入口と出口との差圧、入口圧力または出口圧力を含む運転状況である測定データを取得する測定部と、差圧、入口圧力又は出口圧力に基づいてオゾン発生器の劣化状況を診断する診断部とを備える。

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾン発生器のガス系の入口と出口との差圧、入口圧力または出口圧力を含む運転状況である測定データを取得する測定部と、
前記差圧、前記入口圧力又は前記出口圧力に基づいて前記オゾン発生器の劣化状況を診断する診断部とを備える劣化診断装置。
【請求項2】
前記オゾン発生器の一定の運転条件の情報を含む案件関連情報を取得する案件関連情報取得部とを備え、
前記診断部において、前記案件関連情報及び前記測定データに基づいて、前記差圧、前記入口圧力又は前記出口圧力の測定データを定格条件になったと仮定した場合の値へ補正し、この補正した差圧、入口圧力又は出口圧力を用いて前記オゾン発生器の劣化状況を診断する請求項1に記載の劣化診断装置。
【請求項3】
前記診断部において、前記差圧、前記入口圧力又は前記出口圧力の測定データを、それぞれの設計値又は初期値により規格化し、この規格化した差圧、入口圧力又は出口圧力を用いて前記オゾン発生器の劣化状況を診断する請求項1又は2に記載の劣化診断装置。
【請求項4】
前記診断部において、前記差圧、前記入口圧力又は前記出口圧力の測定データから、前記オゾン発生器の性能低下を示す性能低下指数を求め、この性能低下指数を用いて前記オゾン発生器の劣化状況を診断する請求項1又は2に記載の劣化診断装置。
【請求項5】
前記診断部であって、前記オゾン発生器の負荷状況を示す情報である負荷レベルを出力する診断部を備える請求項1又は2に記載の劣化診断装置。
【請求項6】
前記差圧又は前記入口圧力又は前記出口圧力を用いて前記オゾン発生器のメンテナンスの時期を判断する判断部とを備える請求項1又は2に記載の劣化診断装置。
【請求項7】
前記判断部であって、前記差圧又は前記入口圧力又は前記出口圧力の前記運転状況に応じた値により、前記オゾン発生器の将来の前記差圧又は前記入口圧力または前記出口圧力を予測し、前記オゾン発生器の前記メンテナンスの時期を判断する請求項6に記載の劣化診断装置。
【請求項8】
前記判断部であって、前記差圧又は前記入口圧力又は前記出口圧力と前記オゾン発生器の負荷状況を示す情報である負荷レベルを用いて前記オゾン発生器の前記メンテナンスの時期を判断する請求項6に記載の劣化診断装置。
【請求項9】
オゾン発生器と、
前記オゾン発生器のガス系の入口と出口との差圧、入口圧力または出口圧力を含む運転状況の測定データを取得する測定部と、
前記差圧、前記入口圧力または前記出口圧力に基づいて前記オゾン発生器の劣化状況を診断する診断部とを備える劣化診断システム。
【請求項10】
前記オゾン発生器が用いられる案件の運転状況を監視し、前記オゾン発生器を制御する監視制御装置とを備える請求項9に記載の劣化診断システム。
【請求項11】
オゾン発生器のガス系の入口と出口との差圧、入口圧力または出口圧力を含む運転状況の測定データを取得するステップと、
前記差圧、入口圧力または出口圧力に基づいて前記オゾン発生器の劣化状況を診断するステップとを備える劣化診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は無声放電式のオゾン発生器の現地における運用データを用いて、オゾン発生器の性能の劣化の診断を行う劣化診断装置、劣化診断システム及び劣化診断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無声放電式のオゾン発生器では、長期間使用するにしたがって、徐々にオゾン発生効率が低下していく場合が多い。そのため、通常、ある周期で開放点検や開放清掃、部品交換や修理等のメンテナンスを行うのが一般的である。しかし、一定周期でメンテナンスを行う場合、必要以上の頻度による無駄なメンテナンスや、メンテナンスが間に合わずに故障停止が発生するといった問題があるため、オゾン発生器の性能を監視しながら、性能低下時に警報を出し、メンテナンスの必要時期を知らせる方法が提案されている。
【0003】
オゾン発生器の劣化診断の指標として用いられるオゾン発生効率は、主に、オゾン発生器を冷却するための冷水の水温、オゾン濃度、電力密度(放電電力をオゾン発生器内の放電面積で割ったもの)の3つのパラメータに依存する。オゾン発生器の性能を正確に評価するには、これらのパラメータがオゾン発生器の運転状況によって変化することを考慮する必要がある。特許文献1では、現在の水温に対応させて電力原単位(オゾン発生効率と類似の指標)の初期値を求め、電力原単位の初期値と現在値を比較することで、初期の稼働時と現在の稼働時とで水温が異なる場合であっても、オゾン発生器の性能低下の検知を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-217415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、水温、オゾン濃度及び電力密度は現地でのオゾン発生器の運転状況により変化するため、電力原単位を用いて正確に劣化診断をするためにはこれら3つのパラメータに関する補正が必要であり、簡単な指標を用いたオゾン発生器の劣化診断が困難という課題があった。
【0006】
本開示は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、簡単な指標を用いてオゾン発生器の劣化診断ができる劣化診断装置、劣化診断システム及び劣化診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る劣化診断装置は、オゾン発生器のガス系の入口と出口との差圧、入口圧力または出口圧力を含む運転状況である測定データを取得する測定部と、差圧、入口圧力又は出口圧力に基づいてオゾン発生器の劣化状況を診断する診断部とを備える。
【0008】
本開示に係る劣化診断システムは、オゾン発生器と、オゾン発生器のガス系の入口と出口との差圧、入口圧力または出口圧力を含む運転状況の測定データを取得する測定部と、差圧、入口圧力または出口圧力に基づいてオゾン発生器の劣化状況を診断する診断部とを備える。
【0009】
本開示に係る劣化診断方法は、オゾン発生器のガス系の入口と出口との差圧、入口圧力または出口圧力を含む運転状況の測定データを取得するステップと、差圧、入口圧力または出口圧力に基づいてオゾン発生器の劣化状況を診断するステップとを備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る劣化診断装置、劣化診断システム及び劣化診断方法によれば、オゾン発生器の圧力又は差圧に基づいてオゾン発生器の劣化状況を診断することで、簡単な指標を用いたオゾン発生器の劣化診断が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施の形態1に係る劣化診断システムを示す概略構成図である。
図2】本開示の実施の形態1に係る劣化診断装置のハードウェアの構成を示す概略構成図である。
図3】本開示の実施の形態1に係る劣化診断装置の劣化診断方法を示すフローチャートである。
図4】本開示の実施の形態1に係る劣化診断装置の補正差圧及び放電電力の一例を示すグラフである。
図5】本開示の実施の形態2に係る劣化診断装置を示す概略構成図である。
図6】本開示の実施の形態2に係る劣化診断装置の補正差圧及び放電電力の一例を示すグラフである。
図7】本開示の実施の形態3に係る劣化診断装置の劣化診断方法を示すフローチャートである。
図8】本開示の実施の形態3に係る劣化診断装置の補正差圧倍率及び放電電力の一例を示すグラフである。
図9】本開示の実施の形態4に係る劣化診断装置のオゾン発生器と圧力の関係を示す概略図である。
図10】本開示の実施の形態5に係る劣化診断装置のオゾン発生器と圧力の関係を示す概略図である。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1に係る劣化診断システムを示す概略構成図である。図1に示すように、劣化診断システム100は、オゾン発生器10と劣化診断装置1を備える。劣化診断装置1は、案件関連情報取得部2と、測定部4と、診断部5を備える。図1では、劣化診断装置1は案件関連情報取得部2と案件固有情報計算部3を含んでいるが、これらが設けられていなくてもよく、劣化診断装置1の外部に設けられていてもよい。案件固有情報計算部3は案件関連情報取得部2に機能として含まれていてもよいし、診断部5の中に機能として含まれていてもよい。
【0013】
測定部4は、オゾン発生器10のガス系の入口と出口との差圧(以下、差圧)を含む運転状況の測定データ14を取得する。オゾン発生器10の入口とは、原料ガスが投入される部分を指す。また、オゾン発生器10の出口とは、オゾン含有ガスが吐出される部分を指す。以下、本願において、特に断りない場合も、圧力(入口圧力又は出口圧力又は差圧)はすべて、ガス系のものを指すものとする。ここで、圧力の測定位置はオゾン発生器10の直近が好ましいが、オゾン発生器10から測定位置までの配管等の圧力損失が無視できる程度の場合は、測定位置が離れていてもよいものとする。また、オゾン発生器10の運転状況とは、過去から現在に至るまでのオゾン発生器10の運転時の各データの変遷を示したものであり、例えばオゾン発生器10の運用時に取得可能なデータの初期値から現在値に至るまでのもの等である。診断部5は、オゾン発生器の差圧に基づいてオゾン発生器の劣化状況を診断する。この劣化状況とは、オゾン発生器10の性能低下の経年変化や性能低下の程度を示すものである。以下では、一例として、測定部4でオゾン発生器10の差圧を取得し、診断部5で差圧に基づいてオゾン発生器10の劣化状況を診断する場合を説明する。
【0014】
案件関連情報取得部2は、オゾン発生器10の一定の運転条件の情報を含む案件関連情報12を取得する。このオゾン発生器10の一定の運転条件とは、オゾン発生器10が導入されるときに一意的に決まる条件であり、例えばオゾン発生器10の定格原料ガス流量や定格オゾン濃度、定格水温、定格入口圧力や定格出口圧力や定格差圧などのいずれか又は複数の項目の予め定められた値である。案件固有情報計算部3は、案件関連情報12に基づいて案件固有情報13を算出する。
【0015】
オゾン発生器10は、例えば一般的な無声放電式のオゾン発生器である。オゾン発生器10は、酸素を含む原料ガスが投入されると、電源装置(図示しない)からオゾン発生器10へ電力が供給される。これにより、オゾン発生器10の内部では、無声放電が生じ、原料ガス中の酸素からオゾンが生成され、オゾン含有ガスとして吐出される。また、このときの放電によって熱が発生するため、オゾン発生器10を冷却するための冷水がオゾン発生器10を通過する。一般的にはオゾン発生器10に対して冷水入口温度より冷水出口温度が3乃至5℃程度上昇するように冷水流量が設定される。
【0016】
オゾン発生量は、オゾン濃度と原料ガス流量の積で表される。定格オゾン発生量は、オゾン発生器10の運用で想定される最も高いオゾン発生量である。以下では、定格オゾン発生量を得るために必要なオゾン濃度と原料ガス流量を定格オゾン濃度と定格原料ガス流量と呼ぶ。
【0017】
通常の運転では、オゾン発生器10は、定格オゾン発生量よりもオゾン発生量を下げて運転される場合が多い。以下では、このような運転を部分負荷運転と呼ぶ。部分負荷運転での制御方式としては、濃度一定・原料流量変化の方式と原料流量一定・濃度変化の方式の2種類がある。
【0018】
濃度一定・原料流量変化の方式は、オゾン濃度を定格オゾン濃度としたまま、原料ガス流量を下げる方法である。この手法は原料ガス流量が節約できるため、原料に液酸が使われる場合などに多く採用されている。
【0019】
原料流量一定・濃度変化の方式は、原料ガス流量は定格原料ガス流量のままで、オゾン濃度を下げる方法である。この手法は、原料ガス代(製造のための電気代含む)が比較的安く、原料ガス流量の削減が原料ガス代削減に大きくは寄与しない場合や原料供給装置が構造上、原料ガス流量の任意の変化に追従しにくい場合などに多く採用されている。具体的には、オゾン発生器100の原料ガスが空気原料の場合とPSA原料の場合である。原料ガスがVPSA原料の場合は、濃度一定・原料流量変化と原料流量一定・濃度変化のどちらも採用されている。
【0020】
実施の形態1では、濃度一定・原料流量変化の制御方式で部分負荷運転が実行される場合について述べる。
【0021】
図2は、本開示の実施の形態1に係る劣化診断装置のハードウェアの構成を示す概略構成図である。コンピュータ22は、例えば、CPU(Central Processing Unit)23、主記憶装置24、補助記憶装置25を備える。例えば、主記憶装置24はRAM、補助記憶装置25はハードディスク等の記憶媒体が考えられる。コンピュータ22の外部には入力装置21と出力装置28が設けられている。入力装置21は、例えば、マウスやキーボードである。また、出力装置28は、例えば、コンピュータ22からの出力結果を表示するディスプレイモニタ等が挙げられる。また、図2に示すように、コンピュータ22は、ネットワーク26を介して外部記憶装置27に接続され、外部の記録媒体から計算に必要な情報を取得する。また、コンピュータ22は、外部の記憶媒体に計算結果を保存できるようにしてもよい。
【0022】
案件関連情報取得部2、案件固有情報計算部3、測定部4及び診断部5は、コンピュータ22の内部演算処理としてCPU23及び主記憶装置24により実現される。すなわち、診断部5等における各処理は、メモリである主記憶装置24上に展開されたプログラムをプロセッサであるCPU23が実行することによって実現される。CPU23は、主記憶装置24上のデータを読み込み、各処理を行い、その結果を主記憶装置24に格納する。
【0023】
図3は、本開示の実施の形態1に係る劣化診断装置の劣化診断方法を示すフローチャートである。以下、図3に沿って劣化診断装置1がオゾン発生器10の劣化診断をする方法を説明する。なお、図3ではステップS101で案件関連情報12を取得し、ステップS102で案件固有情報13を算出しているが、これらの工程を含んでいなくてもよい。また、ステップS104で差圧を補正しているが、測定データ14から得た差圧を補正せずに直接オゾン発生器10の劣化診断に用いてもよい。
【0024】
まずステップS101において、案件関連情報取得部2が案件関連情報12を取得する処理を実行する。案件関連情報12は、例えば、劣化診断システムを適用する対象の案件に使われているオゾン発生器10の一定の運転条件などである。案件関連情報は、対象案件が決まれば一意に決まる。案件は、機場ごと、工事ごとに決まるものに限る必要はない。例えば、A浄水場B期工事と言う案件の中に2種類のオゾン発生器アとイが存在したとすれば、A浄水場B期工事アとA浄水場B期工事イという2つの案件があるものとしてもよい。
【0025】
案件関連情報12は、例えば原料タイプ、定格オゾン発生量Gr[kg/h]、定格オゾン濃度Crとその単位(単位は[g/m(N)]又は[wt%])、定格冷水温度tr[℃]、最大放電電力Emax[kW]、定格差圧Pr[Pa]等が含まれる。原料タイプには、例えば空気原料、液酸原料、(V)PSA原料等が含まれる。定格冷水温度は、オゾン発生器の原料の入り口における温度である。
【0026】
次に、ステップS102において、案件固有情報計算部3が案件関連情報12に基づいて、案件固有情報13を算出する処理を実行する。案件固有情報13は、例えば定格原料ガス流量fr[m/h(N)]等が含まれる。なお、ここでは案件固有情報13が案件関連情報12から算出される例を示したが、案件固有情報13は案件関連情報12として予め入力されていてもよい。
【0027】
定格原料ガス流量fr(単位は[m/h(N)]又は[kg/h])は、案件関連情報12に含まれる定格オゾン発生量Gr[kg/h]と、定格オゾン濃度Cr(単位は[g/m(N)]又は[wt%])から式(1)または式(2)のように求められる。
【0028】
【数1】
【0029】
(2)式のように、例えば定格オゾン濃度の単位に[wt%]が選ばれている場合は、定格原料ガス流量は[kg/h]単位と考える。その場合、現地にある原料ガス流量計は[kg/h]単位であり、測定データも[kg/h]単位となる。
【0030】
次に、ステップS103において、測定部4はオゾン発生器10の差圧を含む運転状況である測定データ14を取得する。測定データ14には、例えば、放電電力E(電源装置の出力電力)[kW]、オゾン濃度C(単位は[wt%]又は[g/m(N)])、原料ガス流量f(単位は[wt%]又は[m/h(N)])、オゾン発生器10の圧力[Pa]等が含まれる。オゾン発生器10の圧力には、入口圧力Pi[Pa]、あるいは出口圧力Po[Pa]、あるいは入口と出口との差圧P[Pa]が含まれる。なお、差圧Pを取得する際に、差圧計を用いてオゾン発生器10の差圧を直接測定してもよく、入口圧力Piと出口圧力Poを測定して減算することによって差圧を求めても良い。連続的なデータでなくても(離散的なデータでも)良いため、減算することによって差圧を求める場合は、1つの圧力計を使用し、ポートの切替え等によって、入口圧力Piと出口圧力Poを交互に測定しても良い。
【0031】
このときの測定データ14は、現地測定データのサンプリングの最小単位のデータでも良いが、適宜間引いたり、数秒、数分あるいは1時間程度の平均値を求めたりして、数秒、数分あるいは1時間程度毎に1セットのデータとしても良い。また、測定データ14は、対象評価期間の最初のデータを入力し、後述のステップS107までのループを繰り返して、対象評価期間の最後のデータまでを入力するものとする。なお、評価対象期間等は別途入力するなどにより、予め決まっていてもよい。
【0032】
次に、ステップS104において、診断部5で案件固有情報13及び測定データ14に基づいて差圧を補正した補正差圧を算出する。測定データ14の差圧は原料ガス流量が異なる場合は比較できないため、原料ガス流量が定格条件になったと仮定した場合の値へ補正することで、差圧の比較が可能となる。補正差圧P’[Pa]は、差圧P、案件固有情報13の定格原料ガス流量fr及び測定データ14の原料ガス流量fを用いて例えば式(3)のようになる。
【数2】
【0033】
なお、式(3)において、定格原料ガス流量frと原料ガス流量fの単位が同じであることが必要である。また、オゾン発生器の放電ギャップ内のガスの流れは層流であるため、式(3)においては、ガス流量と差圧とは比例するとしているが、より精密に補正しても良い。また、原料ガス流量とオゾン含有ガス流量は、kg/h単位の場合は同一だが、m/h(N)単位の場合は若干の差異がある。式(1)の左辺は、本実施の形態では、簡単化のため定格原料ガス流量としたが、より正確には式(1)の左辺は定格オゾン含有ガス流量である。オゾン含有ガス流量から原料ガス流量へ変換するには、オゾン濃度に応じた係数を掛ければ良い。この係数は1に近いため、本実施の形態では省略している。また、原料ガス流量ではなくオゾン含有ガス流量を測定している場合には、オゾン含有ガス流量の定格値と測定値を用いて差圧を補正することも可能である。
【0034】
次に、ステップS105において、対象評価期間の最後のデータまでの入力及び計算が完了したか判定する。完了するまで、各瞬時におけるデータに対してステップS103からステップS104を繰り返すものとする。なお、計算結果等は適宜保存されているものとする。
【0035】
図4は、本開示の実施の形態1に係る劣化診断装置の補正差圧及び放電電力の一例を示すグラフである。ステップS106では、診断部5が例えば図4のように横軸を時間(年月日)、縦軸を補正差圧としたグラフを描画し、出力装置28のような画面等に出力する。横軸は時間(年月日)、縦軸は補正差圧と放電電力(測定データ)を描画している。補正差圧は第一軸(左縦軸)、放電電力は第二軸(右縦軸)である。図4では、例えば現時点(グラフの最も右のポイント)において、補正差圧が約15kPaとなっており、初期から1.5倍になっている。ここで我々は、オゾン発生器10内のガス流路の差圧(原料ガス入口圧力とオゾン含有ガス出口圧力との差)が大きくなると、オゾン発生効率が低下していることを見い出した。そのため、図4の例ではオゾン発生器10が劣化していることがわかる。このように、オゾン発生器10の差圧を用いることで、オゾン発生器10の劣化状況を診断することができる。
【0036】
本実施の形態では案件関連情報取得部2と案件固有情報計算部3を備えた例を示したが、劣化診断装置1は測定部4と診断部5で構成されていてもよい。その場合、測定部4でオゾン発生器10の差圧を含む運転状況の測定データ14を取得し、診断部5で測定データ14のオゾン発生器10の差圧によりオゾン発生器10の劣化状況を診断する。
【0037】
また、本実施の形態では、オゾン発生器10の劣化を診断する際に差圧を用いた例を示したが、測定部4でオゾン発生器10の入口圧力及び出口圧力の少なくともいずれかを含む運転状況の測定データを取得し、診断部5でオゾン発生器10の入口圧力及び出口圧力の少なくともいずれかに基づいてオゾン発生器の劣化状況を診断してもよい。入口圧力及び出口圧力の少なくともいずれかを用いる例は、後の実施の形態でも述べる。
【0038】
上述のように、本実施の形態の劣化診断装置1は、オゾン発生器10の差圧を含む運転状況の測定データを取得する測定部4と、差圧に基づいてオゾン発生器10の劣化状況を診断する診断部5とを備えることで、オゾン発生器10の劣化を診断する。また、劣化診断システム100はオゾン発生器10と、劣化診断装置1を備える。このとき、劣化診断システム100は、オゾン発生器10の運転状況を監視し、オゾン発生器10を制御する監視制御装置(図示せず)とを備えていてもよい。あるいは、劣化診断装置1又は劣化診断システム100が、オゾンシステム全体を監視制御する監視制御装置に組み込まれていても良いし、浄水場や工場等の全体を監視制御する監視制御システムに組み込まれていてもよい。一方で、劣化診断装置1はオゾン発生器10とは遠く離れた場所に存在していても良く、その場合のオゾン発生器10の測定データ授受はオンラインでもオフラインでも良い。
【0039】
本開示に係る劣化診断装置1、劣化診断システム100及び劣化診断方法によれば、オゾン発生器10の差圧に基づいてオゾン発生器10の劣化状況を診断することで、簡単な指標を用いたオゾン発生器10の正確な劣化診断が可能となるという効果がある。
【0040】
また、本開示の劣化診断装置1、劣化診断システム100及び劣化診断方法によれば、差圧を原料ガス流量が定格条件になったと仮定した場合の値へ補正するため、原料ガス流量が常に変化するような運転方法においても、同じ条件で差圧の評価が可能となり、現地の状況に左右されずに正確にオゾン発生器10の劣化診断が出来るという効果がある。なお、本開示の実施の形態1では、差圧を原料ガス流量が定格条件になったと仮定した値へ補正したが、オゾン発生器10の入口圧力や出口圧力を補正して劣化状況を診断してもよい。
【0041】
また、本実施の形態では、濃度一定・原料流量変化運転の例を示したため原料ガス流量の補正を行ったが、原料流量一定・濃度変化運転であれば、必ずしも原料ガス流量の補正をする必要は無い。ただし、原料流量一定・濃度変化運転であっても、経年的に原料ガス流量が定格値(初期設定値)からずれてしまう場合もあるため、補正を行っても良い。また、原料ガス流量だけの補正ではなく、オゾン発生器の冷水温度、あるいはオゾン発生器の圧力も測定することにより、温度と圧力の補正も加えれば、より正確に評価することが可能となる。
【0042】
実施の形態2.
実施の形態2では、本開示の実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を使用し、同一または対応する部分についての説明は省略する。以下、図面を参照して、実施の形態2に係る劣化診断装置1b及び劣化診断システム100bについて説明する。
【0043】
図5は、本開示の実施の形態2に係る劣化診断装置を示す概略構成図である。図5に示すように、劣化診断装置1bは、劣化診断装置1の構成に加えて判断部6を備える。
【0044】
判断部6は、診断部5で算出された差圧又は補正差圧を用いてオゾン発生器10のメンテナンスの時期を判断する。例えば、図4のグラフにおいて、メンテ時期が必要となる閾値を設定しておき、補正差圧とこの閾値等と比較することでメンテナンス時期を判断することができる。具体的には、補正差圧の閾値を15[kPa]とした場合、図4のグラフが15[kPa]となった時点でメンテナンスが必要と判断できる。ここで、本開示におけるメンテナンス作業とは、オゾン発生器10の開放点検や開放清掃、部品交換や修理等である。
【0045】
また、判断部6は、差圧又は補正差圧とオゾン発生器10の負荷状況を示す情報である負荷レベルを用いてオゾン発生器10のメンテナンスの時期を判断する機能を有していてもよい。負荷レベルには放電電力、電源装置入力電力、電源装置の出力指令値等が含まれる。電源装置から見た場合に出力電力に相当する放電電力E[kW]、電源装置入力電力Ei[kW]は電源効率er[%]との間に以下の式(4)の関係が成り立つ。
【0046】
【数3】
【0047】
式(4)より、例えば、測定データ14の値として入力電力が得られた場合に、入力電力を負荷レベルとすることができる。この負荷レベルが大きければ負荷が高く、小さければ負荷が低かったことになる。このような、負荷を表す指標を同時に表示することによって、図示はしないものの、例えば、比較的高負荷が続いた期間の方が、低負荷が続いた期間よりも差圧の増加が早いといった傾向を見いだせる可能性が高い。よって、負荷を含めての性能低下の経年変化を観測することにより、例えば「今後は高負荷が予想されるため、現時点で性能低下の閾値に達していなくても早めのメンテが必要」や「今後は低負荷が予想されるため、性能低下の閾値に達しているがすぐにはメンテが不要」等と言った判断も可能となる。このような高度な判断は、例えば診断部5によって示されたグラフ(図4など)を見て、人間が判断すれば容易であるし、AI(人工知能)等を使えば、診断部6において自動的に行うことも可能である。また、負荷レベルを積算した値を使用すれば、単純な運転時間の積算値よりも、より実態に近い過去の使用状況が把握できる。
【0048】
図6は、本開示の実施の形態2に係る劣化診断装置の補正差圧及び放電電力の一例を示すグラフである。判断部6は、補正差圧又は性能低下指数の運転状況に応じた値によりオゾン発生器10の将来の差圧又は補正差圧を予測し、オゾン発生器10のメンテナンスの時期を判断する。例えば、図6に示すように、判断部6では、まず図4における補正差圧の現時点までの経年変化を表わすグラフに対して、近似曲線を追加する。近似曲線は、線形近似、二次関数、三次関数、・・・などから誤差が最も少なくなる最適なものが選択され、ここでは三次関数が選択されている。次に、図6では、現時点までの補正差圧の傾向を表した近似曲線を延長することにより、将来の補正差圧を予測している。このため、これまでの性能低下傾向が続くと仮定した場合の将来的な予測が可能となる。従って、例えば次回のメンテナンス時期が決まっているような場合においては、その時期まで近似曲線を延長することにより、次回のメンテナンス時期までにどこまで性能が低下するか予測することが出来る。
【0049】
また、近似曲線を正しく設定するため、例えば運転を停止していた期間、言い換えれば補正差圧が計算できない期間は、値をゼロとせずにブランクにしている。さらに、図6においては、例えばグラフは運用開始からの全期間を表示している場合、近似曲線の設定もグラフの全期間を対象にした近似を行っている。ところが、上記全期間で差圧増加傾向が同一とは限らない。例えば、運用開始(グラフの左端のポイント)から約2年間は差圧増加が全くなく、2年経過以降に差圧増加傾向が見られた場合などは、近似曲線を設定するとき、2年目以降だけを対象とした方がより正確な将来予測が可能となる。このような判断も、人がグラフを見て判断すれば容易であるし、システムによって自動的に行うのであればAI(人工知能)等を使えば可能である。
【0050】
上述のように、本実施の形態の劣化診断装置1bは、オゾン発生器10の差圧を含む運転状況の測定データを取得する測定部4と、オゾン発生器10の差圧に基づいてオゾン発生器10の劣化状況を診断する診断部5とを備えることで、オゾン発生器10の劣化を診断する。また、劣化診断システム100bはオゾン発生器10と、劣化診断装置1bを備える。このため、本実施の形態の劣化診断装置1b及び劣化診断システム100bも実施の形態1と同様に、簡単な指標でオゾン発生器の劣化診断が可能となる。
【0051】
さらに、本実施の形態では判断部6で差圧又は補正差圧を閾値と比較することでオゾン発生器10のメンテナンスの時期を判断することで、異常データや一時的な変動に左右されることなく、確かな傾向としての性能低下に基づいた正しいメンテ時期の判断が可能になるという効果がある。
【0052】
さらに、本実施の形態では判断部6はオゾン発生器10の差圧又は補正差圧とともに、オゾン発生器10の負荷状況を示す情報である負荷レベルを用いてオゾン発生器10のメンテナンスの時期を判断する機能を有するため、より実態に合った判断が出来るようになるという効果を奏する。
【0053】
さらに、診断部5において、オゾン発生器10の差圧又は補正差圧とともに、オゾン発生器10の負荷状況を示す情報である負荷レベルを用いてオゾン発生器10の劣化診断を行っても良く、その場合も同様に、より実態に合った判断が出来るようになるという効果を奏する。
【0054】
さらに、本実施の形態では、判断部6は、補正差圧又は性能低下指数の運転状況に応じた値によりオゾン発生器10の将来の補正差圧を予測し、オゾン発生器10のメンテナンスの時期を判断するため、将来の劣化状況やメンテナンス必要時期等を判断することが可能となるという効果がある。
【0055】
実施の形態3.
実施の形態3では、本開示の実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を使用し、同一または対応する部分についての説明は省略する。以下、図面を参照して、実施の形態3に係る劣化診断装置1c及び劣化診断システム100cについて説明する。
【0056】
本実施の形態の劣化診断装置1c及び劣化診断システムでは、実施の形態1と同様に、案件関連情報取得部2と、案件固有情報計算部3と、測定部4と、診断部5を備える。
【0057】
図7は、本開示の実施の形態3に係る劣化診断装置の劣化診断方法を示すフローチャートである。図7図3のフローチャートに対してステップS301とステップS302が追加されており、それ以外は同一となっている。まず、ステップS301では、診断部5で案件関連情報12及び補正差圧に基づいて、一定の運転条件の差圧に対する比である補正差圧倍率pを算出する。この補正差圧倍率pは補正差圧P’と定格差圧Prを用いて表され、式(5)のようになる。
【0058】
【数4】
【0059】
ここで、定格差圧とは、工場試験時あるいは現地調整時における定格運転条件におけるオゾン発生器のガス系差圧の測定値を用いても良いし、設計計算による値(設計値)を用いても良い。また、ここでは定格差圧をステップS101で入力する場合の例を示したが、これに限るものではない。ある基準に従って規格化できればよいので、運用開始後の初期の一定期間の平均を初期値として、定格差圧の代わりに採用しても良い。
【0060】
次に、ステップS302において、診断部5は、オゾン発生器の性能低下を示す性能低下指数を補正差圧倍率により求め、性能低下指数を用いて前記オゾン発生器の劣化状況を診断する。この性能低下指数αは補正差圧倍率pによって決まり、式(6)のようになる。なお、式(6)において、係数のa、b、c、はそれぞれ定数である。
【0061】
【数5】
【0062】
図8は、本開示の実施の形態3に係る劣化診断装置の性能低下指数、補正差圧倍率及び放電電力の一例を示すグラフである。図8では、a=0、b=20、c=―20のときの性能低下指数を描画している。性能低下指数、補正差圧倍率及び放電電力を比べることで、定格値あるいは初期値に対して相対的にどれだけ差圧が増加したかが分かり易く、また、補正差圧をそのまま使った場合のような案件による値そのものの違いがなくなるため、例えばメンテナンス時期を判断するための閾値を設ける場合にも、案件に依らず一定値にすることが可能となる。また、性能低下指数へ換算すると、初期は性能低下がゼロであり、徐々に性能低下が増えていく指標として扱うことができるため、オゾン発生器10の実際の性能低下イメージと一致させることができる。また、上記一例の値は一次関数のため、性能低下の程度は補正差圧倍率の増加と比例しているが、二次関数あるいは三次関数などを用いて、補正差圧の増加をより強調してもよい。このように性能低下指数を定義することで、補正差圧が増加すると性能低下指数の変化が顕著になるような指数として扱うことができるため、メーカーのノウハウに従った設定をすることができる。
【0063】
上述のように、本実施の形態の劣化診断装置1cは、オゾン発生器10の差圧を含む運転状況の測定データを取得する測定部4と、オゾン発生器10の差圧に基づいてオゾン発生器10の劣化状況を診断する診断部5とを備えることで、オゾン発生器10の劣化を診断する。また、劣化診断システム100cはオゾン発生器10と、劣化診断装置1cを備える。このため、本実施の形態の劣化診断装置1c及び劣化診断システム100cも実施の形態1と同様に、簡単な指標でオゾン発生器の劣化診断が可能となる。
【0064】
さらに、本実施の形態の劣化診断装置1cでは、診断部において、差圧を設計値又は初期値により規格化し、規格化した差圧を用いてオゾン発生器の劣化状況を診断することができる。このように診断することにより、補正差圧と同様の効果を奏するとともに、案件による値そのものの違いがなくなる。このため、例えばメンテナンス時期を判断するための閾値を設ける場合にも、案件に依らず一定値にすることが可能となるという効果がある。さらに、補正差圧を関数によって性能低下指数へ変換することにより、性能低下の実態に合った指標とすることも可能となるという効果がある。本実施の形態では、性能評価指数によるオゾン発生器10の劣化診断に関して説明したが、診断部5で補正差圧倍率を用いてオゾン発生器10の劣化状況を診断してもよい。また、本開示の実施の形態3では差圧を設計値または初期値により規格化し、規格化した差圧を用いてオゾン発生器10の劣化状況を診断する場合を示したが、入口圧力又は出口圧力を規格化してオゾン発生器10の劣化状況を診断してもよい。
【0065】
また、本実施の形態の劣化診断装置1cは実施の形態2と同様に判断部6を備えていてもよい。その場合、性能低下指数や補正差圧倍率に対して、近似曲線による予測や閾値を定める機能を設けることでオゾン発生器10のメンテナンスの時期を判断することも可能となる。
【0066】
実施の形態4.
実施の形態4では、本開示の実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を使用し、同一または対応する部分についての説明は省略する。以下、図面を参照して、実施の形態4に係る劣化診断装置1d及び劣化診断システム100dについて説明する。
【0067】
本実施の形態の劣化診断装置1d及び劣化診断システム100dでは、実施の形態1と同様に、案件関連情報取得部2と、案件固有情報計算部3と、測定部4と、診断部5を備える。なお、本実施の形態の劣化診断装置1d及び劣化診断システム100dは、原料ガス流量一定の場合に、差圧以外(入口圧力又は出口圧力)を利用して劣化診断を行う例である。オゾン発生器10の出口圧力に着目して説明するが、入口圧力でも良い。
【0068】
図9は、本開示の実施の形態4に係る劣化診断装置のオゾン発生器と圧力の関係を示す概略図である。コンプレッサ41は大気を吸引し、高圧力の圧縮空気にする。酸素製造装置42は、圧縮空気から窒素を除去し、酸素濃度90%~93%程度の酸素ガスを生成する、PSAと呼ばれる圧力スイング方式のものである。減圧弁43は圧力を下げてほぼ一定にする。圧力計45はオゾン発生器の出口側のガス圧力を測定する。流量計46はオゾン含有ガスの流量を測定する。手動流量調整弁47は流量を手動で調整することができる。
【0069】
次に、この系の圧力に着目して動作について説明する。ここでは、PSA原料のオゾン発生システムであるため、原料流量一定・濃度変化の運転を行う。まず、運用開始時の現地調整等により所定のガス流量が流れるように、手動流量調整弁47を調整し、以降はこの状態を保ったまま運用を続ける。原料ガス流量は一定のまま、電源装置(図示しない)からのオゾン発生器10への電力の調整により、発生するオゾン濃度が制御される。このときの系の圧力プロファイルを模式的に表したのが図9の下の図である。
【0070】
横軸の位置(距離)は、破線で示すように図9の上側の各機器に対応している。減圧弁43では、その名の通り大きく減圧されるとともに、二次側すなわち減圧後の圧力は略一定に保たれる。配管にも若干の圧力損失はあるが、機器における圧力損失と比べると無視できるため、この図において配管部分は圧力一定、すなわち水平としている。オゾン発生器10と流量計46にもわずかな圧力損失があるため圧力は降下し、手動流量調整弁47で大きく圧力が下がって、後段へ供給される。初期の圧力は実線で示しており、以降の運用中においても、原料ガス流量が一定であるため原則としてこの圧力プロファイルはほぼ変化しない。しかし、経年変化によりオゾン発生器10の中の圧力損失が増大した場合、流量が少し低下するとともに、圧力プロファイルは図の破線のように変化する。
【0071】
ここではオゾン発生器10の圧力損失が、単位流量当たり2倍強になった例を示している。系全体の圧力損失から見ると、圧力損失増加はわずかであるので、流量の低下はわずかである。オゾン発生器10では、単位流量当たり2倍強の圧力損失となるが、わずかに流量が減っているため、実際には2倍の圧力損失となっている。流量計46や手動流量調整弁47での圧力降下は、流量が減った分だけ少なくなる。また、後段への供給圧力(排出圧力)は、後段の使用形態によるが、水頭圧等(流量に依存しない一定な圧力損失)と機器等の圧力損失(流量に依存する圧力損失)の合算であるとして、わずかに低下する例を示した。以上より、オゾン発生器10の圧力損失(差圧)の増加が出口圧力の低下として表れる。したがって、オゾン発生器10の出口圧力を測定することで、診断部5でオゾン発生器10の出口圧力により、オゾン発生器10の圧力損失(差圧)の増加の程度、言い換えれば、オゾン発生器10の劣化の程度を診断することができる。
【0072】
上述のように、本実施の形態の劣化診断装置1dは、オゾン発生器10の出口圧力を含む運転状況の測定データを取得する測定部4と、オゾン発生器10の出口圧力に基づいてオゾン発生器10の劣化状況を診断する診断部5とを備えることで、オゾン発生器10の劣化を診断する。また、劣化診断システム100dはオゾン発生器10と、劣化診断装置1cを備える。このため、本実施の形態の劣化診断装置1d及び劣化診断システム100dも実施の形態1と同様に、簡単な指標でオゾン発生器の劣化診断が可能となる。
【0073】
さらに、原料流量一定・濃度変化の運用において、オゾン発生器10の入口側の圧力がほぼ一定に保たれる場合は、オゾン発生器の差圧の増加は出口圧力に表れるため、出口圧力の低下分をほぼ差圧の増加分と考えることが出来る。したがって、オゾン発生器10の出口圧力を測定することで、診断部5でオゾン発生器10の出口圧力により、オゾン発生器10の劣化状況を診断することができる。本実施の形態の劣化診断装置及び劣化診断システムにおいても、実施の形態2から3と同様に、例えば一定値以上低下したらメンテナンス時期と判断することもできる。それに加えて、本実施の形態においては、比較的高価である差圧計を用いなくてもよいため、低コストになるという効果がある。
【0074】
なお、上記実施に形態においては、出口圧力を用いる例を示したが、これに限らない。例えば、原料流量一定・濃度変化の運用において、出口側の圧力損失がほぼ水頭圧だけの場合のように、出口圧力が流量に依らずに一定に保たれる場合、言い換えれば、入口側に手動流量調整弁を設けて入口側で最初の流量調整を行う場合は、オゾン発生器の圧損が増加すると、流量が減った分だけオゾン発生器入口側の圧力が上昇する。よって、オゾン発生器の入口圧力の上昇に着目することによっても同様の効果を奏する。
【0075】
実施の形態5.
実施の形態5では、本開示の実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を使用し、同一または対応する部分についての説明は省略する。以下、図面を参照して、実施の形態5に係る劣化診断装置1e及び劣化診断システム100eについて説明する。
【0076】
本実施の形態の劣化診断装置1e及び劣化診断システム100eでは、実施の形態1と同様に、案件関連情報取得部2と、案件固有情報計算部3と、測定部4と、診断部5を備える。なお、本実施の形態の劣化診断装置1e及び劣化診断システム100eは、原料ガス流量の制御が可能な構成において、差圧以外(入口圧力又は出口圧力)を利用して劣化診断を行う例である。オゾン発生器10の入口圧力に着目して説明するが、出口圧力でも良い。
【0077】
図10は、本開示の実施の形態5に係る劣化診断装置のオゾン発生器と圧力の関係を示す概略図である。自動流量調整弁51は、流量計46の指示値が所定の値になるように自動的に流量を調整する。圧力計52は原料ガスのオゾン発生器入口圧力を測定する。背圧調整弁53は、常にオゾン発生器10の出口圧力を一定にするように働くもので、例えば機械式背圧弁、電子式背圧調整弁等である。なお、図9と重複する構成に関しては、説明を省略する。
【0078】
次に、この系の圧力に着目して動作について説明する。ここでは簡単化のため原料流量一定・濃度変化制御の場合について述べているが、オゾン発生器10の運転時の制御方式はこれに限らず、原料ガス流量が変化しても良い。運用中は背圧調整弁により、オゾン発生器10の出口側の圧力が常に一定に保たれる。ここでは、その後段の圧力損失がガス流量に依らない水頭圧だけの場合を示しているため、流量に依らず、オゾン発生器10の出口側以降の圧力がすべて同じに保たれる。なお、後段の圧力損失がガス流量に依らない水頭圧だけの場合で、かつオゾン発生器10の運転圧力に相当する水頭圧が常にかかっている場合は背圧調整弁53も不要となるが、ここでは、オゾン発生器10の出口圧力を水頭圧以上の適切な値に保つために、背圧調整弁53を設けている。運用開始の初期は、例えば実線のような圧力プロファイルとなる。これに対して、長期運用後、オゾン発生器の圧力損失つまり差圧が増加したとすると、ガス流量が減少し始めるため、これを防ぐように自動流量調整弁51の弁開度が大きくなり、同じ流量を流すことになる。その結果、自動流量調整弁51での圧力降下が小さくなり、図の破線のような圧力プロファイルとなり、オゾン発生器10の入口圧力が上昇する。つまり、オゾン発生器10の圧力損失(差圧)の増加が入口圧力の増加となって表れるため、オゾン発生器10の入口圧力を測定することで、診断部5でオゾン発生器10の入口圧力により、オゾン発生器10の圧力損失(差圧)の増加の程度、言い換えれば、オゾン発生器10の劣化の程度を診断することができる。
【0079】
上述のように、本実施の形態の劣化診断装置1eは、オゾン発生器10の入口圧力を含む運転状況の測定データを取得する測定部4と、オゾン発生器10の入口圧力に基づいてオゾン発生器10の劣化状況を診断する診断部5とを備えることで、オゾン発生器10の劣化を診断する。また、劣化診断システム100eはオゾン発生器10と、劣化診断装置1cを備える。このため、本実施の形態の劣化診断装置1e及び劣化診断システム100eも実施の形態1と同様に、簡単な指標でオゾン発生器の劣化診断が可能となる。
【0080】
さらに、本実施の形態の劣化診断装置1e及び劣化診断システム100eでは、オゾン発生器10の入口圧力の増加が差圧の増加となるため、オゾン発生器10の入口圧力を測定することで、診断部5でオゾン発生器10の入口圧力により、オゾン発生器10の劣化状況を診断することができる。本実施の形態の劣化診断装置及び劣化診断システムにおいても、実施の形態2から3と同様に、例えば一定値以上劣化したらメンテナンス時期と判断することもできる。それに加えて、本実施の形態においては、比較的高価である差圧計を用いなくてもよいため、低コストになるという効果がある。
【0081】
また、本実施の形態では、原料流量一定・濃度変化制御の場合について述べたが、自動流量調整弁により自動的に任意の流量になるような制御が行える系においては、濃度一定・原料流量変化制御においても、オゾン発生器入口圧力の監視だけで、オゾン発生器の差圧の監視と同様の効果が得られる。この場合、流量によってオゾン発生器の差圧が変わり、オゾン発生器の入口圧力も変わってしまうため、実施の形態1で述べた差圧の補正のような考え方を導入すれば、任意の流量の時に定格流量だと仮定した場合のオゾン発生器10の入口圧力が推定できる。
【0082】
さらに、本実施の形態では、自動流量調整弁が、オゾン発生器の上流側に存在する例を示したが、オゾン発生器の下流側にあっても良い。例えば、オゾン発生器の上流側に減圧弁があり、この減圧弁により、原料ガス流量が変化してもオゾン発生器の入口圧力がほぼ一定に保たれる場合、オゾン発生器の圧力損失(差圧)の増加は、オゾン発生器の出口圧力の低下となって表れるため、出口圧力を測定することによっても劣化診断が可能である。ただし、原料ガス流量が変化する場合は、実施の形態1で述べた差圧の補正のような考え方を導入することが好ましいことは、入口圧力を使用する場合と同様である。
【0083】
また、本開示におけるオゾン発生器10の劣化とは、不可逆なものとは限らず、例えば清掃や部品交換などのメンテナンスで回復するような場合も含むものとする。
【0084】
また、本開示では、基本的に性能評価指数の経年変化に着目している。特に明言されていないだけで、ここには時間の概念が入っており、運用期間中の積算時間等も影響していることになる。
【0085】
さらに、一般的には診断には判断が含まれる場合も多いが、本開示では判断と分けて、診断とは判断のためのデータ処理、データ出力等として使用している。
【0086】
なお、上記実施の形態1乃至5では、オゾン発生器の差圧、あるいは入口圧力あるいは出口圧力をオゾン発生器の負荷に関する指標と併せて劣化診断、メンテナンス時期判断を行う例を示したが、例えば、オゾン発生効率や電力原単位など、圧力関係とは全く別の性能を表わす指標と組み合わせても良い。以上の実施の形態に示した構成は、本開示の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能である。また本開示の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【0087】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
オゾン発生器のガス系の入口と出口との差圧、入口圧力または出口圧力を含む運転状況である測定データを取得する測定部と、
前記差圧、前記入口圧力又は前記出口圧力に基づいて前記オゾン発生器の劣化状況を診断する診断部とを備える劣化診断装置。(付記2)
前記オゾン発生器の一定の運転条件の情報を含む案件関連情報を取得する案件関連情報取得部とを備え、
前記診断部において、前記案件関連情報及び前記測定データに基づいて、前記差圧、前記入口圧力又は前記出口圧力の測定データを定格条件になったと仮定した場合の値へ補正し、この補正した差圧、入口圧力又は出口圧力を用いて前記オゾン発生器の劣化状況を診断する付記1に記載の劣化診断装置。
(付記3)
前記診断部において、前記差圧、前記入口圧力又は前記出口圧力の測定データを、それぞれの設計値又は初期値により規格化し、この規格化した差圧、入口圧力又は出口圧力を用いて前記オゾン発生器の劣化状況を診断する付記1又は2に記載の劣化診断装置。
(付記4)
前記診断部において、前記差圧、前記入口圧力又は前記出口圧力の測定データから、前記オゾン発生器の性能低下を示す性能低下指数を求め、この性能低下指数を用いて前記オゾン発生器の劣化状況を診断する付記1から3のいずれか一項に記載の劣化診断装置。
(付記5)
前記診断部であって、前記オゾン発生器の負荷状況を示す情報である負荷レベルを出力する診断部を備える付記1から4のいずれか一項に記載の劣化診断装置。
(付記6)
前記差圧又は前記入口圧力又は前記出口圧力を用いて前記オゾン発生器のメンテナンスの時期を判断する判断部とを備える付記1から5のいずれか一項に記載の劣化診断装置。
(付記7)
前記判断部であって、前記差圧又は前記入口圧力又は前記出口圧力の前記運転状況に応じた値により、前記オゾン発生器の将来の前記差圧又は前記入口圧力または前記出口圧力を予測し、前記オゾン発生器の前記メンテナンスの時期を判断する付記6に記載の劣化診断装置。
(付記8)
前記判断部であって、前記差圧又は前記入口圧力又は前記出口圧力と前記オゾン発生器の負荷状況を示す情報である負荷レベルを用いて前記オゾン発生器の前記メンテナンスの時期を判断する付記6又は7に記載の劣化診断装置。
(付記9)
オゾン発生器と、
前記オゾン発生器のガス系の入口と出口との差圧、入口圧力または出口圧力を含む運転状況の測定データを取得する測定部と、
前記差圧、前記入口圧力または前記出口圧力に基づいて前記オゾン発生器の劣化状況を診断する診断部とを備える劣化診断システム。
(付記10)
前記オゾン発生器が用いられる案件の運転状況を監視し、前記オゾン発生器を制御する監視制御装置とを備える請求項9に記載の劣化診断システム。
(付記11)
オゾン発生器のガス系の入口と出口との差圧、入口圧力または出口圧力を含む運転状況の測定データを取得するステップと、
前記差圧、入口圧力または出口圧力に基づいて前記オゾン発生器の劣化状況を診断するステップとを備える劣化診断方法。
【符号の説明】
【0088】
1 1b 1c 1d 1e 劣化診断装置、2 案件関連情報取得部、3 案件固有情報計算部、4 測定部、5 診断部、6 判断部、10 オゾン発生器、12 案件関連情報、13案件固有情報、14 測定データ、21 入力装置、22 コンピュータ、23 CPU、24 主記憶装置、25 補助記憶装置、26 ネットワーク、27 外部記憶装置、28 出力装置、41 コンプレッサ、42 酸素製造装置、43 減圧弁、45 52 圧力計、46流量計、47 手動流量調整弁、51 自動流量調整弁、53 背圧調整弁、100 100b 100c 100d 100e 劣化診断システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10