IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社竹中工務店の特許一覧

<>
  • 特開-地中熱利用冷却構造 図1
  • 特開-地中熱利用冷却構造 図2
  • 特開-地中熱利用冷却構造 図3
  • 特開-地中熱利用冷却構造 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176023
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】地中熱利用冷却構造
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/74 20060101AFI20241212BHJP
   F24F 3/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
A47C7/74 A
F24F3/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094213
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】佐野 祐士
【テーマコード(参考)】
3B084
3L053
【Fターム(参考)】
3B084JE01
3L053BA01
(57)【要約】
【課題】冷却対象物を冷却しつつ、冷却対象物の冷却構造を単純化することを目的とする。
【解決手段】地中熱利用冷却構造は、地上に設けられる椅子10の座面54Tと、地中に埋設される地中部22を有し、地中熱を椅子10の座面54Tに伝導し、当該座面54Tを冷却する熱伝導部材20と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上に設けられる冷却対象物と、
地中に埋設される地中部を有し、地中熱を前記冷却対象物に伝導し、該冷却対象物を冷却する熱伝導部材と、
を備える地中熱利用冷却構造。
【請求項2】
前記冷却対象物は、前記熱伝導部材と熱伝達可能な伝熱位置と、前記熱伝導部材と断熱される断熱位置とを移動可能とされる、
請求項1に記載の地中熱利用冷却構造。
【請求項3】
前記熱伝導部材に設けられ、地中熱を蓄熱する潜熱蓄熱材を備え、
前記熱伝導部材は、前記潜熱蓄熱材を介して前記冷却対象物を冷却する、
請求項2に記載の地中熱利用冷却構造。
【請求項4】
前記熱伝導部材を被覆する断熱材を備え、
前記熱伝導部材は、地上に配置される地上部を有し、
前記断熱材は、前記熱伝導部材のうち、少なくとも前記地上部を被覆する、
請求項1に記載の地中熱利用冷却構造。
【請求項5】
前記冷却対象物は、椅子の座面を含む、
請求項1~請求項4の何れか1項に記載の地中熱利用冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中熱利用冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
座面に電気式の暖房パネルを備える暖房機能付ベンチが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、ヒータと、ヒータにより加熱される蓄熱材とを備える蓄熱式暖房敷具が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
さらに、地中熱を利用する冷暖房システムが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-336774号公報
【特許文献2】特開2000-184935号公報
【特許文献3】特開2010-019502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えば、暑熱対策として、屋外に設置されるベンチの座面等の冷却対象物を地下水や、ペルチェ素子(熱電素子)によって冷却することが考えられる。
【0007】
しかしながら、この場合、冷却対象物に対する地下水の供給機構や、ペルチェ素子に対する通電機構が必要となり、冷却構造が複雑化する可能性がある。
【0008】
本発明は、上記の事実を考慮し、冷却対象物を冷却しつつ、冷却対象物の冷却構造を単純化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の地中熱利用冷却構造は、地上に設けられる冷却対象物と、地中に埋設される地中部を有し、地中熱を前記冷却対象物に伝導し、該冷却対象物を冷却する熱伝導部材と、を備える。
【0010】
請求項1に係る地中熱利用冷却構造によれば、冷却対象物は、地上に設けられる。また、熱伝導部材は、地中に埋設される地中部を有する。この熱伝導部材は、地中熱を冷却対象物に伝導し、当該冷却対象物を冷却する。
【0011】
このように本発明では、熱伝導部材によって地中熱(冷熱)を冷却対象物に伝導することにより、当該冷却対象物を冷却する。そのため、本発明では、例えば、冷却対象物を地下水やペルチェ素子によって冷却する冷却構造と比較して、冷却対象物の冷却構造を単純化することができる。
【0012】
請求項2に記載の地中熱利用冷却構造は、請求項1に記載の地中熱利用冷却構造において、前記冷却対象物は、前記熱伝導部材と熱伝達可能な伝熱位置と、前記熱伝導部材と断熱される断熱位置とを移動可能とされる。
【0013】
請求項2に係る地中熱利用冷却構造によれば、冷却対象物は、熱伝導部材と熱伝達可能な伝熱位置と、熱伝導部材と断熱される断熱位置とを移動可能とされる。
【0014】
ここで、例えば、夏期等において、熱伝導部材によって冷却対象物が冷却されると、冷却対象物が結露する可能性がある。
【0015】
これに対して本発明では、前述したように、冷却対象物が、伝熱位置と断熱位置とを移動可能とされる。そして、冷却対象物が伝熱位置から断熱位置に移動すると、冷却対象物が熱伝導部材と断熱されるため、熱伝導部材による冷却対象物の冷却が停止される。そのため、本発明では、夏期等において、冷却対象物を伝熱位置から断熱位置に移動させることにより、冷却対象物の結露を抑制することができる。
【0016】
請求項3に記載の地中熱利用冷却構造は、請求項2に記載の地中熱利用冷却構造において、前記熱伝導部材に設けられ、地中熱を蓄熱する潜熱蓄熱材を備え、前記熱伝導部材は、前記潜熱蓄熱材を介して前記冷却対象物を冷却する。
【0017】
請求項3に係る地中熱利用冷却構造によれば、熱伝導部材には、潜熱蓄熱材が設けられる。潜熱蓄熱材は、熱伝導部材から伝導される地中熱(冷熱)を蓄熱する。そして、熱伝導部材は、潜熱蓄熱材を介して冷却対象物を冷却する。
【0018】
このように潜熱蓄熱材に地中熱(冷熱)を蓄熱することにより、冷却対象物を効率的に冷却することができる。
【0019】
また、前述したように、冷却対象物が伝熱位置から断熱位置に移動すると、冷却対象物が熱伝導部材と断熱される。そのため、潜熱蓄熱材に蓄熱された地中熱(冷熱)が、冷却対象物を介して放散されることが抑制される。
【0020】
したがって、本発明では、冷却対象物を伝熱位置から断熱位置に移動させることにより、熱伝導部材から伝達される地中熱(冷熱)を潜熱蓄熱材に効率的に蓄熱することができる。
【0021】
請求項4に記載の地中熱利用冷却構造は、請求項1に記載の地中熱利用冷却構造において、前記熱伝導部材を被覆する断熱材を備え、前記熱伝導部材は、地上に配置される地上部を有し、前記断熱材は、前記熱伝導部材のうち、少なくとも前記地上部を被覆する。
【0022】
請求項4に係る地中熱利用冷却構造によれば、熱伝導部材は、地上に配置される地上部を有する。そして、断熱材は、熱伝導部材のうち、少なくとも地上部を被覆する。これにより、熱伝導部材の地上部から地中熱(冷熱)が地上(外気)に放散されることが抑制される。したがって、冷却対象物を効率的に冷却することができる。
【0023】
請求項5に記載の地中熱利用冷却構造は、請求項1~請求項4の何れか1項に記載の地中熱利用冷却構造において、前記冷却対象物は、椅子の座面を含む。
【0024】
請求項5に係る地中熱利用冷却構造によれば、例えば、夏期等において、熱伝導部材によって椅子の座面を冷却することにより、椅子の使用感を高めることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、冷却対象物を冷却しつつ、冷却対象物の冷却構造を単純化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】(A)は、一実施形態に係る地中熱利用冷却構造が適用された椅子を示す平面図であり、(B)は、図1(A)の1B-1B線断面図である。
図2】椅子のクッションの待機状態を示す図1(B)の一部拡大断面図である。
図3】椅子のクッションの着座状態を示す図1(B)の一部拡大断面図である。
図4】シミュレーションに用いた熱伝導部材の解析モデルを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係る地中熱利用冷却構造について説明する。
【0028】
(椅子)
図1(A)及び図1(B)には、本実施形態に係る地中熱利用冷却構造が適用された椅子10が示されている。椅子10は、一例として、公園等の屋外に設置されている。また、椅子10は、一例として、背もたれがないスツールとされている。この椅子10は、熱伝導部材20と、潜熱蓄熱材40と、断熱材30と、クッション50とを備えている。
【0029】
なお、椅子10は、日射遮蔽材等の下に配置されてもよい。また、クッション50は、冷却対象物の一例である。
【0030】
(熱伝導部材)
熱伝導部材20は、図1(B)に矢印Fで示されるように、地盤Gの地中熱(冷熱)をクッション50に伝導する部材である。また、本実施形態の熱伝導部材20は、クッション50を支持する支持部材(椅子本体)としても機能する。
【0031】
熱伝導部材20は、例えば、高熱伝導性を有する材料によって形成されている。より具体的には、熱伝導部材20は、鉄やアルミ等の高熱伝導性金属、又はポリカーボネート樹脂や、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ナイロン樹脂等の高熱伝導性樹脂によって形成されている。
【0032】
熱伝導部材20は、一例として、円柱状に形成されており、長手方向を上下方向(深度方向)として配置されている。この熱伝導部材20は、上端側を地面G1から突出させた状態で、地盤Gに埋設されている。この熱伝導部材20は、地中(地盤G中)に埋設される地中部22と、地上に配置される地上部24とを有している。
【0033】
なお、熱伝導部材20の形状は、円柱状に限らず、例えば、角柱状や、壁状等でも良い。
【0034】
地中部22の下端側は、地中熱(冷熱)を受ける受熱部22L(領域L2)とされている。この受熱部22Lは、夏期等における地中温度(地温)が、所定温度以下となる地中深さに達している。本実施形態では、一例として、地中部22の受熱部22Lの下端(L1+L2)が、夏期等における地中温度が、約20℃以下となる地中深さ2.0mに達している。
【0035】
なお、夏期等における地温は、地中深さが深くなるに従って低下し、地中深さが約10mで年平均気温(東京で約17℃)に達する。そのため、地盤Gに埋設する受熱部22Lの地中深さは、例えば、深さ1~10mの範囲で設定される。
【0036】
(断熱材)
熱伝導部材20の外周面20Sは、断熱材30によって被覆されている。断熱材30は、熱伝導部材20と地盤G又は地上(外気)とを断熱し、熱伝導部材20の外周面20Sから地盤G又は地上への地中熱(冷熱)の拡散を抑制する部材である。
【0037】
断熱材30は、熱伝導部材20(地上部24及び地中部22)のうち、受熱部22L以外の部位(領域L1)の外周面20Sを被覆している。また、断熱材30は、後述する潜熱蓄熱材40の外周面40Sも被覆している。断熱材30は、例えば、ウレタンや、グラスウール等とされており、熱伝導部材20の外周面20Sに吹き付けられ、又は熱伝導部材20の外周面20Sに接着剤等によって張り付けられている。
【0038】
断熱材30の外周面は、防水材32によって被覆されている。防水材(遮水材)32は、塩化ビニル樹脂やゴム等によって膜状に形成されている。この防水材32によって、地下水や雨水等から熱伝導部材20が防水されている。なお、防水材32は、必要に応じて設ければよく、適宜省略可能である。
【0039】
(潜熱蓄熱材)
図2に示されるように、熱伝導部材20の地上部24の上端部には、潜熱蓄熱材40が設けられている。潜熱蓄熱材(PCM:Phase Change Material)40は、熱伝導部材20から伝導された地中熱(冷熱)を蓄熱する蓄熱材である。なお、潜熱蓄熱材40の蓄熱性能は、潜熱蓄熱材40の大きさ(体積)や、潜熱蓄熱材40の凝固温度により適宜調整される。
【0040】
潜熱蓄熱材40は、一例として、円盤状に形成されており、熱伝導部材20の地上部24の上端面に熱伝達可能(熱交換可能)に載置(接続)されている。また、潜熱蓄熱材40の外周面40Sは、前述した断熱材30によって被覆されている。この断熱材30によって、潜熱蓄熱材40の外周面40Sから地上(外気)への蓄熱(冷熱)の放散が抑制されている。なお、潜熱蓄熱材40は、熱伝導部材20の地上部24の上端面に接着剤等によって適宜固定されている。
【0041】
(クッション)
クッション50は、利用者が着座する椅子10の座部とされている。また、クッション50は、扁平な袋状に形成されており、内部に空気が充填されている。このクッション50は、固定伝熱部52と、可動伝熱部54と、弾性支持部56とを有している。
【0042】
固定伝熱部52及び可動伝熱部54は、熱伝導部材20と同様に、例えば、高熱伝導性を有する材料によって形成されている。より具体的には、熱伝導部材20は、鉄やアルミ等の高熱伝導性金属、又はポリカーボネート樹脂や、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ナイロン樹脂等の高熱伝導性樹脂によって形成されている。
【0043】
固定伝熱部52及び可動伝熱部54は、円盤状に形成されており、上下方向に互いに対向して配置されている。固定伝熱部52は、クッション50の下面側を構成しており、潜熱蓄熱材40の上に熱伝達可能(熱交換可能)に載置(接続)されている。この固定伝熱部52の上方には、可動伝熱部54が配置されている。
【0044】
なお、固定伝熱部52は、潜熱蓄熱材40の上端面に接着剤等によって適宜固定されている。また、固定伝熱部52及び可動伝熱部54の形状は、円盤状に限らず、矩形状でもよい。
【0045】
可動伝熱部54は、クッション50の上面側を構成している。また、可動伝熱部54の上面は、利用者が着座する座面54Tとされている。この可動伝熱部54は、弾性支持部56によって、上下方向に移動可能に支持(弾性支持)されている。これにより、可動伝熱部54は、固定伝熱部52と熱伝達可能な伝熱位置と、熱伝導部材20と断熱される断熱位置とを移動可能とされている。
【0046】
弾性支持部56は、クッション50の外周部を構成している。また、弾性支持部56は、弾性及び断熱性を有するゴム等の弾性体によって形成されている。この弾性支持部56は、平面視にて、リング状に形成されている。また、弾性支持部56は、その横断面形状がクッション50の中央側が開口されたU字形状とされている。
【0047】
弾性支持部56は、上下方向に互いに対向する下壁部56L及び上壁部56Uと、下壁部56L及び上壁部56Uの外周部同士を接続する側壁部56Sとを有している。下壁部56Lの内周部は、固定伝熱部52の外周部に接合されている。一方、上壁部56Uの内周部は、可動伝熱部54の外周部に接合されている。この弾性支持部56によって、固定伝熱部52及び可動伝熱部54が接続されるとともに断熱されている。
【0048】
ここで、図2に示されるように、弾性支持部56は、クッション50の座面54Tに利用者が着座する前の状態(自然状態、待機状態)において、固定伝熱部52の上方の断熱位置に位置するように、可動伝熱部54を支持している。これにより、可動伝熱部54と固定伝熱部52との間に介在する空気(断熱層)によって、可動伝熱部54と固定伝熱部52とが断熱される。
【0049】
一方、弾性支持部56は、クッション50の座面54Tに利用者が着座した状態で(弾性変形状態、着座状態)において、可動伝熱部54が固定伝熱部52に接触するまで、すなわち、可動伝熱部54が伝熱位置に位置するまで弾性変形する。これにより、可動伝熱部54が、固定伝熱部52と熱伝達可能となる。この際、可動伝熱部54と固定伝熱部52との間の空気がクッション50の外周部に押し出され、弾性支持部56がクッション50の外周側へ膨張(弾性変形)する。
【0050】
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。なお、以下では、夏期における椅子10の作用について説明する。
【0051】
図1(B)に示されるように、椅子10は、熱伝導部材20を備えている。熱伝導部材20は、地中に埋設される地中部22を有している。また、地中部22の下端側は、地中熱(冷熱)を受ける受熱部22Lとされている。この受熱部22Lの下端は、夏期における地中温度(地温)が、約20℃以下となる地中深さ2.0mに達している。
【0052】
一方、熱伝導部材20の地上部24の上端部には、潜熱蓄熱材40が設けられている。これにより、約20℃以下の地中熱(冷熱)が、矢印Fで示されるように、受熱部22Lから地中部22及び地上部24を介して潜熱蓄熱材40に伝導され、当該潜熱蓄熱材40に蓄熱される。また、潜熱蓄熱材40には、クッション50の固定伝熱部52が熱伝達可能に接続されている。
【0053】
ここで、図2には、待機状態のクッション50、すなわち弾性支持部56が自然状態のクッション50が示されている。この待機状態では、クッション50の可動伝熱部54が断熱位置に位置しており、可動伝熱部54と固定伝熱部52とが断熱されている。これにより、潜熱蓄熱材40に蓄熱された冷熱が、固定伝熱部52及び可動伝熱部54を介して外気に放散されることが抑制される。
【0054】
このクッション50の待機状態から、図3に示されるように、利用者がクッション50の座面54Tに着座すると、クッション50の弾性支持部56が弾性変形し、クッション50の可動伝熱部54が固定伝熱部52と接触する伝熱位置へ移動する。この状態で、利用者は、クッション50を介して潜熱蓄熱材40及び熱伝導部材20に支持される。
【0055】
これにより、矢印Fで示されるように、潜熱蓄熱材40に蓄熱された地中熱(冷熱)が、固定伝熱部52を介して可動伝熱部54に伝達される。したがって、クッション50の座面54Tが冷却される。
【0056】
このように本実施形態では、熱伝導部材20によって地中熱(冷熱)を椅子10の座面54Tに伝導することにより当該座面54Tを冷却する。そのため、本実施形態では、例えば、椅子10の座面54Tを地下水やペルチェ素子によって冷却する冷却構造と比較して、椅子10の座面54Tの冷却構造を単純化することができる。
【0057】
また、本実施形態では、熱伝導部材20に潜熱蓄熱材40が設けられている。潜熱蓄熱材40は、熱伝導部材20から伝導される地中熱(冷熱)を蓄熱し、クッション50の着座状態において、固定伝熱部52を介して可動伝熱部54(椅子10の座面54T)を冷却する。
【0058】
このように潜熱蓄熱材40に地中熱(冷熱)を蓄熱することにより、椅子10の座面54Tを効率的に冷却することができる。
【0059】
さらに、本実施形態では、前述したように、椅子10の座面54Tを形成する可動伝熱部54が、伝熱位置と断熱位置とを移動可能とされている。そして、クッション50の待機状態において、可動伝熱部54が伝熱位置から断熱位置に移動すると、可動伝熱部54が固定伝熱部52と断熱されるため、潜熱蓄熱材40による椅子10の座面54Tの冷却が停止される。
【0060】
したがって、本実施形態では、椅子10の座面54Tの結露を抑制することができる。この結果、利用者の衣服等が結露で濡れることが抑制されるため、利便性が向上する。
【0061】
また、前述したように、可動伝熱部54が伝熱位置から断熱位置に移動すると、椅子10の座面54Tが熱伝導部材20と断熱される。そのため、潜熱蓄熱材40に蓄熱された地中熱(冷熱)が、可動伝熱部54を介して放散されることが抑制される。
【0062】
したがって、本実施形態では、クッション50の待機状態において、熱伝導部材20から伝達される地中熱(冷熱)を潜熱蓄熱材40に効率的に蓄熱することができる。
【0063】
また、本実施形態では、熱伝導部材20の外周面20Sのうち、受熱部22Lの外周面20S以外は、断熱材30によって被覆されている。これにより、熱伝導部材20の地中部22から地中熱(冷熱)が地中に放散されることが抑制されるとともに、熱伝導部材20の地上部24から地中熱(冷熱)が地上(外気)に放散されることが抑制される。
【0064】
さらに、本実施形態では、潜熱蓄熱材40の外周面40Sも断熱材30によって被覆されている。これにより、潜熱蓄熱材40の外周面40Sから、地中熱(冷熱)が地上(外気)に放散されることが抑制される。したがって、本実施形態では、椅子10の座面54Tを効率的に冷却することができる。
【0065】
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0066】
上記実施形態では、熱伝導部材20の外周面20Sが断熱材30によって被覆されている。しかし、断熱材30は、熱伝導部材20の外周面20Sのうち、少なくとも地上部24の外周面20Sを被覆することが望ましい。熱伝導部材20の地上部24は、地中部22と比較して、外気によって加温され易いためである。さらに、断熱材30は、熱伝導部材20の地上部24に加えて、地中部22の上部の外周面20Sも被覆することがより望ましい。地盤Gの浅い領域では、地盤Gの深い領域と比較して地温が高いためである。
【0067】
また、熱伝導部材20の外周面20Sを被覆する断熱材30は、必要に応じて設ければよく、適宜省略可能である。これと同様に、潜熱蓄熱材40の外周面40Sを被覆する断熱材30は、必要に応じて設ければよく、適宜省略可能である。
【0068】
また、上記実施形態では、熱伝導部材20の上端部に潜熱蓄熱材40が設けられている。しかし、潜熱蓄熱材40は、熱伝導部材20の上端部に限らず、例えば、クッション50の内部に設けられてもよい。この場合、固定伝熱部52は、熱伝導部材20の上端部に熱伝達可能に載置(接続)される。また、可動伝熱部54は、潜熱蓄熱材40と熱伝達可能な伝熱位置と、潜熱蓄熱材40と断熱される断熱位置との間を移動可能とされる。
【0069】
さらに、潜熱蓄熱材40は、必要に応じて設ければよく、適宜省略可能である。なお、潜熱蓄熱材40を省略した場合は、例えば、熱伝導部材20の上端部に、クッション50の固定伝熱部52が熱伝達可能に載置(接続)される。
【0070】
また、上記実施形態では、クッション50に固定伝熱部52及び可動伝熱部54が設けられている。しかし、クッション50は、少なくとも熱伝導部材20から地中熱が伝導される座面54Tを有していればよく、固定伝熱部52及び可動伝熱部54は適宜省略可能である。なお、固定伝熱部52及び可動伝熱部54を省略した場合は、例えば、椅子の座面が、熱伝導部材20又は潜熱蓄熱材40に熱伝達可能に接続される。
【0071】
また、上記実施形態では、椅子10が一人掛け用のスツールとされている。しかし、椅子は、複数人掛け用のスツールでもよいし、ベンチでもよい。また、熱伝導部材20の形状や大きさは、冷却対象物としての椅子10の座面54Tの形状や大きさに応じて適宜変更可能である。
【0072】
また、上記実施形態では、熱伝導部材20が椅子10の座面54Tを支持する支持部材としても機能している。しかし、椅子10には、熱伝導部材20とは別に、座面54Tを支持する支持部材としての脚部を設けてもよい。この場合、熱伝導部材20は、座面54Tに熱伝導可能に接続されていればよく、座面54Tを支持してもよいし、支持しなくてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、冷却対象物が、椅子10の座面54Tとされている。しかし、冷却対象物は、椅子10の座面54Tに限らず、例えば、椅子の背もたれ、又はひじ掛け等でもよい。また、冷却対象物は、椅子やベンチに限らず、例えば、屋外に設置される手摺や、ルーバー等でもよい。例えば、熱伝導部材20によってルーバーを冷却することにより、ルーバーを通過する風が冷却されるため、冷風を形成することができる。また、冷却対象物は、屋外に限らず、屋内に設置されてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、夏期等において、熱伝導部材20を介して地中熱(冷熱)を椅子10の座面54Tに伝導することにより、当該座面54Tを冷却した。しかし、例えば、冬期等において、熱伝導部材20を介して地中熱(温熱)を椅子10の座面54Tに伝導することにより、当該座面54Tを加温することも可能である。
【0075】
(熱伝導部材の温度シミュレーション)
次に、上記実施形態における熱伝導部材20の温度シミュレーションについて説明する。
【0076】
(概要)
本温度シミュレーションでは、図4に示される熱伝導部材20の解析モデルMを用いて、熱伝導部材20の地上部24の上面24Uの温度を解析した。
【0077】
(解析条件)
解析ソフト :STAR-CCM+(登録商標、SIEMENS)
気温 :30℃(303.15k)
熱伝導率 :20W/mK
断熱部熱貫流率:1.0W/m
地中温度
浅部(地中深さ0.0~1.5m):25.0℃(298.15K)
深部(地中深さ1.5~2.0m):20.0℃(293.15K)
【0078】
(解析結果)
解析モデルMでは、熱伝導部材20の地上部24の上面24Uの温度が、気温(30℃)-6℃(=24℃)となり、地中熱によって当該地上部24の上面24Uが冷却されることが確認された。
【0079】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0080】
20 熱伝導部材
22 地中部
24 地上部
30 断熱材
40 潜熱蓄熱材
54T 座面(冷却対象物)
図1
図2
図3
図4