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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176029
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】電池装置及び電池装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/244 20210101AFI20241212BHJP
   H01M 50/588 20210101ALI20241212BHJP
   H01M 50/593 20210101ALI20241212BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20241212BHJP
   H01M 50/289 20210101ALI20241212BHJP
【FI】
H01M50/244 A
H01M50/588
H01M50/593
H01M50/249
H01M50/289
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094223
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三上 武文
(72)【発明者】
【氏名】堀 裕光
(72)【発明者】
【氏名】近藤 栄一
【テーマコード(参考)】
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5H040AA03
5H040AS07
5H040AY06
5H040AY12
5H043AA19
5H043GA23
5H043GA26
5H043JA02
(57)【要約】
【課題】電池パックを含む電池装置に関して、電池パックの組み付けや交換の容易性を向上させることができる技術を提供する。
【解決手段】電池装置は、支持部材を備えるラックと、ラックの支持部材上に設置された電池ユニットとを備える。電池ユニットは、電池トレイと、電池トレイ上に搭載された電池パックとを含む。電池トレイの外周部は、支持部材上で電池ユニットをスライドさせるためのローラー治具と嵌合するように構成された嵌合部を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材を備えるラックと、
前記ラックの前記支持部材上に設置された電池ユニットと
を備え、
前記電池ユニットは、電池トレイと、前記電池トレイ上に搭載された電池パックとを含み、
前記電池トレイの外周部は、前記支持部材上で前記電池ユニットをスライドさせるためのローラー治具と嵌合するように構成された嵌合部を有する
電池装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電池装置であって、
第1方向は、前記支持部材上で前記電池ユニットがスライドする方向と平行であり、
第2方向は、前記第1方向と直交する方向であり、
前記電池ユニットは、前記第1方向と前記第2方向で規定される面上に設置され、
前記電池トレイの前記外周部は、前記第1方向に平行な第1外周部を含み、
前記第1外周部が前記嵌合部を有する
電池装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電池装置であって、
前記第1方向に直交する面における前記嵌合部の断面形状は、前記第2方向において前記電池トレイの外側に向かって開口するC字形状である
電池装置。
【請求項4】
請求項2に記載の電池装置であって、
前記嵌合部は、更に、前記電池ユニットをジャッキアップするためのジャッキ治具と嵌合するように構成されている
電池装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電池装置であって、
前記嵌合部の上面には、前記嵌合部と前記ジャッキ治具とを固定するピンが挿入される貫通孔が存在する
電池装置。
【請求項6】
請求項4に記載の電池装置であって、
前記電池トレイの前記外周部は、前記第2方向に平行な第2外周部を含み、
前記第2外周部は、前記第1外周部の前記嵌合部に対応する位置において前記第2外周部を前記第1方向に貫通する貫通孔を有する
電池装置。
【請求項7】
請求項2に記載の電池装置であって、
前記ラックの前記支持部材は、前記第1方向に延在するレールであり、
前記電池トレイの前記第1外周部が前記レール上に設置されている
電池装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電池装置であって、
前記電池トレイの下板は、前記レールの側面に沿って移動するカムフォロアが取り付けられる穴を有する
電池装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の電池装置であって、
前記電池パックは、車載用の電池パックである
電池装置。
【請求項10】
請求項9に記載の電池装置であって、
前記電池トレイと前記車載用の電池パックとの間に絶縁碍子が介在する
電池装置。
【請求項11】
電池装置を製造する電池装置製造方法であって、
前記電池装置は、
支持部材を備えるラックと、
前記ラックの前記支持部材上に設置される電池ユニットと
を備え、
前記電池ユニットは、電池トレイと、前記電池トレイ上に搭載された電池パックとを含み、
前記電池トレイの外周部は嵌合部を有し、
前記電池装置製造方法は、
前記支持部材上で前記電池ユニットをスライドさせるためのローラー治具を前記電池トレイの前記嵌合部に取り付けることと、
前記ローラー治具が取り付けられた前記電池ユニットを前記支持部材上でスライドさせ、前記電池ユニットを前記ラック内に設置することと
を含む
電池装置製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の電池製造方法であって、
前記電池ユニットをジャッキアップするためのジャッキ治具を前記嵌合部に取り付けることと、
前記ジャッキ治具を用いて前記電池ユニットをジャッキアップした後に、前記ローラー治具が取り付けられた前記電池ユニットを前記支持部材上でスライドさせることと
を更に含む
電池装置製造方法。
【請求項13】
請求項11に記載の電池製造方法であって、
第1方向は、前記支持部材上で前記電池ユニットがスライドする方向と平行であり、
前記ラックの前記支持部材は、前記第1方向に延在するレールであり、
前記電池製造方法は、
前記レールの側面に沿って移動するカムフォロアを前記電池トレイの下面に取り付けることと、
前記カムフォロアが前記レールの前記側面に沿って移動するように、前記ローラー治具が取り付けられた前記電池ユニットを前記支持部材上でスライドさせることと
を更に含む
電池装置製造方法。
【請求項14】
請求項11乃至13のいずれかに記載の電池製造方法であって、
ケースの中の台の上に前記電池ユニットを置くことと、
前記ケースに設けられたチェーンブロックを前記台に接続することと、
前記チェーンブロックを操作して、前記電池ユニットが置かれた台を水平に保ちながら、前記電池ユニットを前記ラック内に移動させることと
を更に含む
電池装置製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池装置及び電池装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電力貯蔵装置を開示している。電力貯蔵装置は、蓄電池盤と、支持板の上に配置される電池パックとを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/129385号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池パックを含む電池装置について考える。電池パックが大型化してその重量が増加するにつれて、電池パックの組み付けや交換が困難になる。
【0005】
本開示の1つの目的は、電池パックを含む電池装置に関して、電池パックの組み付けや交換の容易性を向上させることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の観点は、電池装置に関する。
電池装置は、
支持部材を備えるラックと、
ラックの支持部材上に設置された電池ユニットと
を備える。
電池ユニットは、電池トレイと、電池トレイ上に搭載された電池パックとを含む。
電池トレイの外周部は、支持部材上で電池ユニットをスライドさせるためのローラー治具と嵌合するように構成された嵌合部を有する。
【0007】
第2の観点は、電池装置を製造する電池装置製造方法に関する。
電池装置は、支持部材を備えるラックと、ラックの支持部材上に設置される電池ユニットとを備える。電池ユニットは、電池トレイと、電池トレイ上に搭載された電池パックとを含む。電池トレイの外周部は嵌合部を有する。
電池装置製造方法は、
支持部材上で電池ユニットをスライドさせるためのローラー治具を電池トレイの嵌合部に取り付けることと、
ローラー治具が取り付けられた電池ユニットを支持部材上でスライドさせ、電池ユニットをラック内に設置することと
を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、電池ユニットの電池トレイの外周部は、ローラー治具と嵌合するように構成された嵌合部を有する。その嵌合部にローラー治具が取り付けられる。ローラー治具が取り付けられた電池ユニットは、支持部材上で容易にスライドさせることができる。すなわち、電池ユニットの“動かしやすさ”が向上する。従って、電池ユニットを容易にラック内に設置(収容)することができる。また、電池ユニットを容易にラックから引き出すこともできる。すなわち、電池ユニットの組み付けや交換の容易性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】電池装置の構成例を示す概略図である。
図2】電池ユニットの構成例を示す図である。
図3】電池装置の構成例を示す図である。
図4】治具と嵌合部を説明するための図である。
図5】ジャッキ治具の例を説明するための図である。
図6】ジャッキ治具の他の例を説明するための図である。
図7】ローラー治具の例を説明するための図である。
図8】レールの位置合わせの例を説明するための図である。
図9】レールの位置合わせの例を説明するための図である。
図10】横方向の位置合わせの例を説明するための図である。
図11】奥行方向の位置合わせの例を説明するための図である。
図12】電池ユニットの搬送の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付図面を参照して、本開示の実施の形態を説明する。
【0011】
1.電池装置の概要
図1は、本実施の形態に係る電池装置1の構成例を示す概略図である。電池装置1は、少なくとも1つの電池ユニット10と、電池ユニット10を収納するラック100とを含んでいる。電池ユニット10は、交換可能である。つまり、電池ユニット10をラック100の外から中に入れることができ、また、電池ユニット10をラック100の中から外に取り出すこともできる。
【0012】
まず、座標系について説明する。XY面は、ラック100内において電池ユニット10が載置される面である。Z方向は、XY面に垂直な方向である。典型的には、XY面は水平面であり、Z方向は鉛直方向である。X方向(第1方向)は、奥行き方向である。Y方向(第2方向)は、X方向と直交する横方向である。後に説明されるように、電池ユニット10の組み付け及び交換時、電池ユニット10はX方向に平行に動かされる。つまり、電池ユニット10は、X方向に沿って、ラック100に挿入される、又は、ラック100から取り出される。
【0013】
ラック100は、電池ユニット10を収納する収納スペース110を有している。より詳細には、ラック100は、Z方向に延びる複数の支柱120と、XY面に平行な支持部材130とを備えている。支持部材130は、複数の支柱120に固定されている。支持部材130は、電池ユニット10を支持する。言い換えれば、電池ユニット10は、支持部材130の上に設置される。従って、支持部材130の上の空間が収納スペース110となる。収納スペース110をスロットと呼ぶこともできる。ラック100の材料は、例えば鋼である。ラック100は、図示されない天板や扉を備えていてもよい。
【0014】
典型的には、電池装置1は、複数の電池ユニット10を含んでいる。その場合、ラック100は、複数の電池ユニット10のそれぞれを収納するための複数の収納スペース110(スロット)を有する。より詳細には、複数の収納スペース110は、Z方向に配置される、すなわち、レイヤ状に配置される。複数の収納スペース110に対応するように、複数の支持部材130が設けられる。複数の電池ユニット10は、複数の支持部材130のそれぞれの上に設置される。その結果、複数の電池ユニット10も、レイヤ状に配置される。複数の電池ユニット10は、電気的に互いに接続されてもよい。図1に示される例では、収納スペース110及び電池ユニット10の数は6である。但し、数は6に限定されない。
【0015】
後に詳しく説明されるように、電池ユニット10は、支持部材130の上でX方向に沿って移動(スライド)する。電池ユニット10がX方向に沿って移動(スライド)できる限りにおいて、支持部材130の形状は特に限定されない。図1に示される例では、支部部材130は、X方向に延在する細長いレールである。より詳細には、1つの電池ユニット10を支持する支持部材130は、一組のレール130L、130Rを含んでいる。左レール130Lは、図1中の左側の支柱120に固定されている。一方、右レール130Rは、図1中の右側の支柱120に固定されている。左レール130Lと右レール130Rは、平行であり、共にX方向に延びている。1つの電池ユニット10は、一組のレール130L、130Rの上に設置される。
【0016】
以下の説明では、支持部材130が図1で示されるような一組のレール130L、130Rである場合について考える。便宜上、一組のレール130L、130Rをまとめて「レール130」と呼ぶ。一般化する場合には、「レール130」を「支持部材130」で置き換えるものとする。
【0017】
図2は、電池ユニット10の構成例を示す図である。電池ユニット10は、電池パック20と電池トレイ30を含んでいる。電池パック20は、蓄電池としての機能を備える。電池トレイ30は、電池パック20の受け皿である。つまり、電池パック20は、電池トレイ30の上に搭載される。
【0018】
図2に示されるように、電池トレイ30は、フレーム40、下板50、及び支持部材60を含んでいる。
【0019】
フレーム40を、電池トレイ30の「外周部」と呼ぶこともできる。フレーム40は、X方向に平行な第1フレーム41(第1外周部)と、Y方向に平行な第2フレーム42(第2外周部)を含んでいる。第1フレーム41は、左フレーム41Lと右フレーム41Rを含んでいる。第2フレーム42は、前フレーム42Fと後フレーム42Bを含んでいる。フレーム40の材料は、例えば鋼である。
【0020】
下板50は、フレーム40に囲まれており、電池トレイ30の下面を形成する。
【0021】
支持部材60は、電池パック20を支持するための部材であり、フレーム40上に設置されている。図2に示される例では、支持部材60は、第1フレーム41上に設置されている。電池パック20は、この支持部材60上に設置される。例えば、支持部材60は、電池パック20を固定するためのブラケット61を含んでいる。支持部材60は、更に、電池パック20とフレーム40との間を絶縁するための絶縁碍子62を含んでいてもよい。絶縁碍子62は、フレーム40とブラケット61との間に介在する。
【0022】
電池パック20を電池トレイ30の上に固定することによって、電池ユニット10が構成される。そのような電池ユニット10を「電池サブアセンブリ」と呼ぶこともできる。
【0023】
図3は、電池ユニット10(電池サブアセンブリ)がラック100のレール130上に設置された状態を示すXY平面図及びYZ断面図である。YZ断面図は、XY平面図内の線A-A’に沿ったYZ断面を示している。X方向に平行な第1フレーム41は、X方向に平行なレール130上に設置されている。より詳細には、左フレーム41Lが左レール130L上に設置されており、右フレーム41Rが右レール130R上に設置されている。
【0024】
以上に説明された電池装置1の用途は特に限定されない。例えば、電池装置1は、定置型蓄電池として利用される。電池装置1は、エネルギーインフラに組み込まれてもよい。電池装置1は、バックアップ電源として設置されてもよい。
【0025】
尚、本実施の形態に係る電池装置1に利用される電池パック20は、車載用電池パックであってもよい。ここで、車載用電池パックとは、電気自動車やハイブリッド自動車の動力として開発、生産された電池パックを意味する。そのような車載用電池パックが、電池装置1の電池パック20として“転用(repurpose)”される。
【0026】
例えば、車両において使用された後の車載用電池パックが電池装置1の電池パック20として再利用される。車載用電池パックの出力及び性能は元々非常に高いため、使用済みの車載用電池パックであっても、車両以外の用途には十分使用可能である。車載用電池パックの生産数及び使用数は今後ますます増加することが期待される。そのような豊富な車載用電池パックを電池装置1の電池パック20として再利用することは、環境にとって好ましいだけでなく、エネルギー確保の観点からも好ましい。
【0027】
他の例として、車載用電池パックの新品が電池装置1の電池パック20として最初から利用されてもよい。車載用電池パックの生産数は非常に多いため、その生産コストは低い。つまり、車載用電池パックは、数及びコストの面から優れている。そのような豊富で低コストな車載用電池パックを転用することは、エネルギー確保の観点から好ましい。
【0028】
尚、車載用電池パックが電池装置1の電池パック20として利用される場合、耐圧設計の観点から、車載用電池パックをフレーム40から絶縁することが望ましい。そのために、車載用電池パックとフレーム40との間に絶縁碍子62(図2参照)が介在することが望ましい。
【0029】
2.電池ユニットの動かしやすさの向上
図3に示されるように、電池パック20を含む電池ユニット10は、レール130上に設置される。電池ユニット10の組み付け及び交換時、電池ユニット10は、レール130上でX方向に沿って移動(スライド)する。電池パック20が大型化してその重量が増加するにつれて、電池パック20を含む電池ユニット10を動かしづらくなり、組み付けや交換が困難になる。
【0030】
そこで、本実施の形態は、電池ユニット10の組み付けや交換の容易性を向上させることができる技術を提案する。まず、電池ユニット10の“動かしやすさ”を向上させるための工夫について説明する。
【0031】
本実施の形態によれば、電池ユニット10の組み付け及び交換時、電池ユニット10の動かしやすさを向上させるための治具200が、電池ユニット10に取り付けられる。電池ユニット10の動かしやすさを向上させるための治具200は、ジャッキ治具210とローラー治具220とを含む。ジャッキ治具210は、電池ユニット10をジャッキアップするための治具である。ローラー治具220は、レール130上で電池ユニット10をスライドさせるための治具である。ジャッキ治具210とローラー治具220の具体例を説明する前に、治具200を取り付けるための電池ユニット10側の構造について説明する。
【0032】
本実施の形態によれば、電池ユニット10の電池トレイ30のフレーム40(外周部)が、治具200と嵌合するように構成された「嵌合部45」を有する。例えば、X方向に平行な第1フレーム41(第1外周部)が、嵌合部45を有する。図3に示される例では、YZ面における嵌合部45の断面形状は、Y方向において電池トレイ30の外側に向かって開口するC字形状である。例えば、図3中の左フレーム41Lの嵌合部45Lの断面形状は、左方向に向かって開口するC字形状である。一方、右フレーム41Rの嵌合部45Rの断面形状は、右方向に向かって開口するC字形状である。
【0033】
図4は、治具200が第1フレーム41の嵌合部45に取り付けられた状態を示している。図4のフォーマットは、図3と同様である。図4に示されるように、治具200の一部が嵌合部45に挿入され、それにより治具200と嵌合部45(第1フレーム41)が嵌合する。図4に示される例では、治具200は、レール130上に置かれており、レール130とフレーム40との間に介在している。
【0034】
図5は、電池ユニット10をジャッキアップするためのジャッキ治具210の例を説明するための図である。ジャッキ治具210は、第1部材211と第2部材212を含んでいる。第1部材211と第2部材212は、接触面213において接触している。接触面213は斜面である。より詳細には、接触面213は、第1部材211から見ると斜め上向きの斜面であり、第2部材212から見ると斜め下向きの斜面である。第1部材211の下面は、レール130に接触している。第2部材212の一部が第1フレーム41の嵌合部45に挿入され、それによりジャッキ治具210が嵌合部45に取り付けられる。
【0035】
ジャッキ治具210が嵌合部45から抜けないように、ジャッキ治具210と嵌合部45がピン214によって固定されてもよい。この場合、図5に示されるように、嵌合部45の上面には、ピン214が挿入される貫通孔44が存在する。ジャッキ治具210の第2部材212が嵌合部45に挿入された後、ピン214が貫通孔44に挿入される。そのピン214がジャッキ治具210(第2部材212)と嵌合部45とを固定する。
【0036】
また、ボルト215(例:六角ボルト)が、水平方向に第1部材211を貫通して、第1部材211と第2部材212をつないでいる。図5に示される例では、ボルト215がY方向に第1部材211を貫通している。レンチ(例:六角レンチ)でボルト215を回すことによって、ボルト215を締め付けたり緩めたりすることができる。ボルト215が締め付けられると、水平方向の力が接触面213(斜面)を介してZ方向の力に変換され、それにより第2部材212が押し上げられる。第2部材212がZ方向に押し上げられることによって、第1フレーム41すなわち電池ユニット10がジャッキアップされる。つまり、レンチでボルト215を回すだけで、電池ユニット10を容易にジャッキアップすることが可能である。
【0037】
図6は、ジャッキ治具210の他の例を説明するための図である。図6に示される例では、第1部材211と第2部材212の配置が、図5の場合と比較して90度回転している。ボルト215は、X方向に第1部材211を貫通している。第2フレーム42は、第2フレーム42をX方向に貫通する貫通孔43を有している。貫通孔43の位置は、第1フレーム41の嵌合部45に対応する位置である。特に、貫通孔43の位置は、嵌合部45に取り付けられるジャッキ治具210のボルト215に対応する位置である。レンチは、第2フレーム42の手前から貫通孔43に挿入され、ジャッキ治具210のボルト215に到達する。そして、レンチでボルト215を回すことによって、電池ユニット10がジャッキアップされる。図6に示される構成は、電池装置1のサイドスペースが狭い場合に特に好適である。電池装置1のサイドスペースが狭い場合であっても、正面あるいは後面からレンチを挿入することによってジャッキ治具210を容易に操作することが可能となる。
【0038】
図7は、レール130上で電池ユニット10をスライドさせるためローラー治具220の例を説明するための図である。図7のフォーマットは、既出の図3図4と同様である。図7に示されるように、ローラー治具220の一部が嵌合部45に挿入され、それによりローラー治具220が嵌合部45に取り付けられる。また、ローラー治具220のうち嵌合部45に挿入されない部分は、レール130と接触するローラーボール222を有している。このローラーボール222がレール130上を転がる。これにより、ローラー治具220が取り付けられた電池ユニット10が、レール130上でX方向に平行にスライドする。レール130の上面に、ローラーボール222が転がる溝がX方向に平行に形成されていてもよい。
【0039】
尚、ジャッキ治具210とローラー治具220は、別々に用意されてもよいし、一体的に構成されてもよい。ジャッキ治具210とローラー治具220が別々に用意される場合、まず、ジャッキ治具210が嵌合部45に取り付けられる。そして、ジャッキ治具210を用いて電池ユニット10がジャッキアップされる。ジャッキアップの後、ローラー治具220が嵌合部45に取り付けられる。ローラー治具220が取り付けられた後、ジャッキ治具210は取り外されてもよい。一方、一体型治具の場合、一体型治具が嵌合部45に取り付けられ、ジャッキアップが行われる。いずれの場合であっても、ローラー治具220が取り付けられた電池ユニット10がレール130上でスライドする。
【0040】
電池ユニット10がラック100内に設置(収納)された後、治具200は取り外されてもよいし、そのまま残されてもよい。
【0041】
<効果>
以上に説明されたように、本実施の形態によれば、電池ユニット10の電池トレイ30のフレーム40は、ローラー治具220と嵌合するように構成された嵌合部45を有する。その嵌合部45にローラー治具220が取り付けられる。ローラー治具220が取り付けられた電池ユニット10は、レール130上で容易にスライドさせることができる。すなわち、電池ユニット10の“動かしやすさ”が向上する。従って、電池ユニット10を容易にラック100内に設置(収容)することができる。また、電池ユニット10を容易にラック100から引き出すこともできる。すなわち、電池ユニット10の組み付けや交換の容易性が顕著に向上する。電池ユニット10の組み付けや交換をより効率的に行うことが可能となる。
【0042】
また、ローラー治具220を用いることによって電池ユニット10をレール130上でスライドさせることができるため、電池ユニット10をレール130上で引き摺る必要がない。よって、レール130の塗装面が傷つくことが抑制される。このことは、レール130の耐久性及び防水性能の確保の観点から好ましい。
【0043】
電池パック20が大型化してその重量が増加するにつれて、本実施の形態により得られる効果はより顕著となる。
【0044】
3.位置合わせ
次に、電池ユニット10の組み付けや交換時の位置合わせに関連する工夫について説明する。
【0045】
3-1.レールの位置合わせ
図8及び図9は、レール130の位置合わせの例を説明するための図である。電池ユニット10の組み付け及び交換時、ラック100の外の補助レール300が、ラック100側のレール130に接続される。電池ユニット10がラック100内に挿入される際には、補助レール300の上の電池ユニット10がラック100側のレール130の方に向かってスライドする。逆に、電池ユニット10がラック100から引き出される際には、ラック100側のレール130の上の電池ユニット10が補助レール300の方に向かってスライドする。
【0046】
電池ユニット10をスムーズにスライドさせるためには、ラック100側のレール130とラック100の外の補助レール300との位置合わせが重要である。そのために、位置合わせピン310が用いられる。例えば、図8に示されるように、ラック100側のレール130の端部には、位置合わせピン310が挿入される位置合わせ穴131が形成されている。位置合わせピン310が位置合わせ穴131に挿入されるように、レール130と補助レール300が接続される。その接続状態で、レール130と補助レール300の上面及び横位置が一致する。逆に言えば、レール130と補助レール300の上面及び横位置が一致するように、位置合わせ穴131が形成されている。
【0047】
このように、位置合わせピン310によって、レール130と補助レール300の位置合わせが精度良く行われる。従って、レール130と補助レール300との間で電池ユニット10をスムーズにスライドさせることが可能となる。このことも、電池ユニット10の組み付けや交換の容易性の向上に寄与する。
【0048】
3-2.横方向の位置合わせ
図10は、横方向(Y方向)の位置合わせの例を説明するための図である。図10のフォーマットは、既出の図3図4図7と同様である。電池トレイ30の下板50には、カムフォロア400が取り付けられる。そのために、電池トレイ30の下板50は、カムフォロア400が取り付けられる穴51を有している。その穴51にカムフォロア400のボルトが挿入される。カムフォロア400のローラは、レール130の側面132と接触し、レール130の側面132に沿ってX方向と平行に移動する。逆に言えば、カムフォロア400のローラがレール130の側面132と接触するように、電池トレイ30の下板50にカムフォロア400取り付け用の穴51が形成されている。
【0049】
典型的には、左レール130Lの側面132Lに接触する左カムフォロア400Lと、右レール130Rの側面132Rに接触する右カムフォロア400Rが別々に設けられる。左カムフォロア400Lと右カムフォロア400Rは、それぞれ、左レール130Lの側面132Lと右レール130Rの側面132Rに沿って移動する。
【0050】
このようなカムフォロア400によって、電池ユニット10が横方向にぶれることが防止される。つまり、電池ユニット10の横方向位置を所定位置に維持することが可能となる。従って、電池ユニット10をX方向に沿ってスムーズにスライドさせることが可能となる。このことも、電池ユニット10の組み付けや交換の容易性の向上に寄与する。
【0051】
尚、電池ユニット10がラック100内に設置(収納)された後、カムフォロア400は取り外されてもよいし、そのまま残されてもよい。
【0052】
3-3.奥行方向の位置合わせ
図11は、奥行方向(X方向)の位置合わせの例を説明するための図である。レール130上の所定位置には、位置決めピン500が設置されている。レール130上をX方向にスライドしてきた電池ユニット10は、その位置決めピン500と接触して停止する。作業員は、電池ユニット10が位置決めピン500に接触して停止するまで電池ユニット10を押すだけでよい。このことも、電池ユニット10の組み付けの容易性の向上に寄与する。
【0053】
4.水平性の確保
図12は、電池ユニット10の搬送の例を説明するための図である。図12に示される例では、電池ユニット10は、リフトによってラック100近傍まで搬送される。そして、電池ユニット10は、リフトによって所望の高さまで持ち上げられ、ラック100内に挿入される。
【0054】
より詳細には、電池ユニット10を収容するためのケース600(やぐら)が用意される。ケース600は、電池ユニット10が置かれる台610を含んでいる。台610は、補助レール300を含んでいてもよい。また、ケース600には、台610と接続されるチェーンブロック620が設けられている。典型的には、チェーンブロック620は、ケース600の四隅に設けられている。
【0055】
電池ユニット10は、ケース600内の台610の上に置かれる。また、チェーンブロック620が台610に接続される。電池ユニット10が収容されたケース600は、リフトによってラック100近傍まで搬送される。更に、ケース600は、リフトによって所望の高さまで持ち上げられる。そして、電池ユニット10がケース600の中からラック100内に移動させられる。
【0056】
ここで、リフトが存在する地面の傾きや状態によっては、ケース600が水平面から傾く可能性がある。そのような場合であっても、ケース600に設けられたチェーンブロック620を操作することによって、電池ユニット10が置かれた台610を水平に保つことが可能である。作業員は、電池ユニット10が置かれた台610を水平に保ちながら、電池ユニット10をラック100内に移動させることができる。このことも、電池ユニット10の組み付けの容易性の向上に寄与する。
【0057】
尚、ケース600の搬送及び持ち上げに、リフトの代わりにクレーンが用いられてもよい。
【0058】
5.電池装置の製造方法(組み立て方法)
電池装置1の製造方法(組み立て方法)の概要は、次の通りである。
【0059】
作業員は、リフトを用いることによって、電池ユニット10が収容されたケース600をラック100近傍まで搬送する。また、作業員は、リフトを用いることによって、ケース600を所望の高さまで持ち上げる。このとき、作業員は、チェーンブロック620を操作することによって、電池ユニット10を水平に保ってもよい(セクション4参照)。
【0060】
作業員は、補助レール300をラック100側のレール130と接続する。このとき、作業員は、位置合わせピン310によって、レール130と補助レール300の位置合わせを行ってもよい(セクション3-1参照)。
【0061】
作業員は、ジャッキ治具210を電池トレイ30の嵌合部45に取り付ける。作業員は、ジャッキ治具210を用いて電池ユニット10をジャッキアップする。ジャッキアップの後、作業員は、ローラー治具220を嵌合部45に取り付ける。あるいは、ジャッキ治具210とローラー治具220は、一体的に構成されていてもよい。作業員は、ローラー治具220が取り付けられた電池ユニット10をレール130上でスライドさせ、電池ユニット10をラック100内に設置(収納)する(セクション2参照)。
【0062】
作業員は、電池トレイ30の下板50にカムフォロア400を取り付けてもよい。この場合、作業員は、カムフォロア400がレール130の側面132に沿って移動するように、ローラー治具220が取り付けられた電池ユニット10をレール130上でスライドさせるセクション3-2参照)。
【0063】
作業員は、電池ユニット10が位置決めピン500に接触して停止するまで電池ユニット10を押す。
【0064】
このようにして、電池ユニット10がラック100内に設置され、電池装置1が完成する。
【符号の説明】
【0065】
1 電池装置
10 電池ユニット
20 電池パック
30 電池トレイ
40 フレーム
41 第1フレーム
42 第2フレーム
45 嵌合部
100 ラック
110 収納スペース
130 支持部材、レール
200 治具
210 ジャッキ治具
220 ローラー治具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12