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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176030
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】車両制御方法及び車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/02 20120101AFI20241212BHJP
【FI】
B60W30/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094224
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮腰 祐篤
(72)【発明者】
【氏名】初津 堅一
(72)【発明者】
【氏名】土屋 大
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA18
3D241CA03
3D241CC15
3D241DB42Z
(57)【要約】
【課題】適温に対するタイヤの温度の乖離を抑制して車両の挙動を安定させる車両制御方法及び車両制御装置を提供する
【解決手段】車両制御装置100は、プロセッサ10を用いて、車両1の前輪21及び後輪22に発生する力の配分を制御し、プロセッサ10は、前輪21の温度を取得し、後輪22の温度を取得し、前輪21の温度及び後輪22の温度が、各々、タイヤの特性に応じた適温であるか否かを判定し、前輪21の温度及び後輪22の温度の少なくともいずれか一方が適温でない場合は、前輪21及び後輪22のうち、温度が高い方に配分される力を減らし、他方に配分される力を増やす。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを用いて、車両の前輪及び後輪に発生する前後力及び横力のいずれか一方又は両方を含む力の配分を制御する車両制御方法であって、
前記プロセッサは、
前記前輪の温度を取得し、
前記後輪の温度を取得し、
前記前輪の温度及び前記後輪の温度が、各々、タイヤの特性に応じた適温であるか否かを判定し、
前記前輪の温度及び前記後輪の温度の少なくともいずれか一方が前記適温でない場合は、前記前輪及び前記後輪のうち、温度が高い方に配分される前記力を減らし、他方に配分される前記力を増やす、車両制御方法。
【請求項2】
前記適温は、前記タイヤの特性に応じた所定の適温範囲内の温度である、請求項1に記載の車両制御方法。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記前輪及び前記後輪が、各々、前記適温より高い温度である高温状態か否かを判定し、
前記前輪及び前記後輪のうちの一方が高温状態であり、他方が高温状態でないと判定した場合は、
高温状態である方に配分される前記力を減らし、他方に配分される前記力を増やす、請求項1に記載の車両制御方法。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記前輪及び前記後輪が、各々、前記適温より低い温度である低温状態か否かを判定し、
前記前輪及び前記後輪のうちの一方が低温状態であり、他方が低温状態でないと判定した場合は、
低温状態である方に配分される前記力を増やし、他方に配分される前記力を減らす、請求項1に記載の車両制御方法。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記前輪及び前記後輪が、各々、前記適温より高い温度である高温状態か否かを判定し、
前記前輪及び前記後輪が、各々、前記適温より低い温度である低温状態か否かを判定し、
前記前輪及び前記後輪のうちの一方が高温状態であり、他方が低温状態であると判定した場合は、
高温状態である方に配分される前記力を減らし、低温状態である方に配分される前記力を増やす、請求項1に記載の車両制御方法。
【請求項6】
前記プロセッサは、
前記前輪又は前記後輪を構成する左右一対の前記タイヤのうち少なくともいずれか一方のタイヤ温度が前記適温より高い場合に、前記前輪又は前記後輪が高温状態であると判定する、請求項2又は4に記載の車両制御方法。
【請求項7】
前記プロセッサは、
前記前輪又は前記後輪を構成する左右一対の前記タイヤのうち少なくともいずれか一方のタイヤ温度が前記適温より低い場合に、前記前輪又は前記後輪が低温状態であると判定する、請求項3又は4に記載の車両制御方法。
【請求項8】
前記プロセッサは、
前記力を減らす方の前記前輪又は前記後輪を構成する左右一対の前記タイヤのうち、少なくともいずれか一方のタイヤ温度が前記適温より高い場合は、前記左右一対のタイヤのうち、前記タイヤ温度が高い方の前記力の減少量を、他方の前記減少量よりも大きくする、請求項1に記載の車両制御方法。
【請求項9】
前記プロセッサは、
前記力を増やす方の前記前輪又は前記後輪を構成する左右一対の前記タイヤのうち、少なくともいずれか一方のタイヤ温度が前記適温より低い場合は、前記左右一対のタイヤのうち、前記タイヤ温度が低い方の前記力の増加量を、他方の前記増加量よりも大きくする、請求項1に記載の車両制御方法。
【請求項10】
前記プロセッサは、
前記前輪が、前記前輪の特性に応じて設定された第1適温範囲内の温度である適温状態か否かを判定し、
前記後輪が、前記後輪の特性に応じて設定された第2適温範囲内の温度である適温状態か否かを判定し、
前記前輪及び前記後輪の少なくともいずれか一方が適温状態でない場合は、前記第1適温範囲の所定の基準温度に対する前記前輪の温度の相対温度と前記第2適温範囲の所定の基準温度に対する前記後輪の温度の相対温度とを比較し、
前記前輪及び前記後輪のうち、前記相対温度が高い方に配分される前記力を減らし、他方に配分される前記力を増やす、請求項1に記載の車両制御方法。
【請求項11】
車両の前輪及び後輪に発生する前後力及び横力のいずれか一方又は両方を含む力の配分を制御する車両制御装置であって、
前記前輪の温度を取得する前輪温度取得部と、
前記後輪の温度を取得する後輪温度取得部と、
前記前輪の温度及び前記後輪の温度が、各々、タイヤの特性に応じた適温であるか否かを判定するタイヤ状態判定部と、
前記前輪の温度及び前記後輪の温度の少なくともいずれか一方が前記適温でない場合は、前記前輪及び前記後輪のうち、温度が高い方に配分される前記力を減らし、他方に配分される前記力を増やすタイヤ力分配部とを備える、車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御方法及び車両制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のタイヤに発生する力の特性はタイヤ温度によって変わるため、特許文献1に記載の車両運動制御装置は、車両のタイヤ温度に基づいて車両の走行を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-71678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の車両運動制御装置は、タイヤの特性に応じた適温に対するタイヤ温度の乖離を抑制するための制御を行っていないため、タイヤ温度が適温でない場合は車両の挙動が安定しない可能性がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、適温に対するタイヤの温度の乖離を抑制して車両の挙動を安定させる車両制御方法及び車両制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前輪の温度及び後輪の温度の少なくともいずれか一方が適温でない場合は、前輪及び後輪のうち、温度が高い方に配分される力を減らし、他方に配分される力を増やすことによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、適温に対するタイヤの温度の乖離を抑制して車両の挙動を安定させるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る車両制御装置の構成を示すブロック図である。
図2】車両の前輪及び後輪の低温範囲、適温範囲及び高温範囲を示すグラフで有り、図2(a)は、前輪の低温範囲、適温範囲及び高温範囲を示し、図2(b)は、後輪の低温範囲、適温範囲及び高温範囲を示す。
図3】タイヤの温度とタイヤのコーナリングパワーとの関係を示すグラフである。
図4図1に示すタイヤ温度推定装置が実行するタイヤ温度推定方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、車両1は、車両1の前輪21及び後輪22に発生する力(タイヤ力)の配分を制御するための車両制御装置100を有する。なお、車両制御装置100が制御する力は、タイヤに発生する前後力(制動力及び駆動力)及び横力のいずれか一方又は両方を含む。また、車両1は、舵角センサ31、加速度センサ32、車速センサ33、駆動力センサ34、前輪温度センサ35及び後輪温度センサ36を有する。また、車両1は、車両1の運転を制御するための運転制御装置40を有する。
【0010】
舵角センサ31は、車両1のタイヤ2の舵角を検出する。
加速度センサ32は、車両1にかかる縦方向の加速度(縦G)及び横方向の加速度(横G)を検出する。なお、縦方向とは車両1の前後方向であり、横方向とは車両1の幅方向である。
車速センサ33は、車両1の車速を検出する。
駆動力センサ34は、エンジンや電動モータ等の駆動源から入力される駆動力の大きさを検出する。
【0011】
前輪温度センサ35は、前輪21を構成する左右一対のタイヤである右側前輪タイヤ21a及び左側前輪タイヤ21bの各々に取り付けられて、右側前輪タイヤ21a及び左側前輪タイヤ21bの温度を検出する。
後輪温度センサ36は、後輪22を構成する左右一対のタイヤである右側後輪タイヤ22a及び左側後輪タイヤ22bの各々に取り付けられて、右側後輪タイヤ22a及び左側後輪タイヤ22bの温度を検出する。
【0012】
運転制御装置40は、車両制御装置100が設定した各タイヤの力の配分に基づいて車両1の運転を制御する。たとえば、運転制御装置40は、各タイヤの力の配分に基づいて、加減速度および車速を調整するための駆動機構の動作及びブレーキ動作を制御する。なお、駆動機構は、エンジン自動車にあっては内燃機関、電気自動車系にあっては走行用モータ、ハイブリッド自動車にあっては内燃機関及び走行用モータである。
【0013】
車両制御装置100は、プロセッサ10を有する。プロセッサ10は、プログラムが格納されたROM(Read Only Memory)と、ROMに格納されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)とを備える。プロセッサ10は、タイヤ力算出部11、前輪温度取得部12、後輪温度取得部13、タイヤ状態判定部14及びタイヤ力分配部15を有する。プロセッサ10は、ROMに格納されたプログラムをCPUにより実行することにより、タイヤ力算出部11、前輪温度取得部12、後輪温度取得部13、タイヤ状態判定部14及びタイヤ力分配部15の各機能を実行する。
【0014】
以下、プロセッサ10の各構成について詳細に説明する。
タイヤ力算出部11は、舵角センサ31から車両1の舵角を取得する。また、タイヤ力算出部11は、加速度センサ32から車両1にかかる縦方向の加速度(縦G)及び横方向の加速度(横G)を取得する。また、タイヤ力算出部11は、車速センサ33から車両1の車速を取得する。また、タイヤ力算出部11は、駆動力センサ34から駆動力の大きさを取得する。タイヤ力算出部11は、車両1の舵角、車両1にかかる縦方向の加速度(縦G)、横方向の加速度(横G)、車両1の車速及び車両1の駆動力の大きさに基づいて、右側前輪タイヤ21a、左側前輪タイヤ21b、右側後輪タイヤ22a及び左側後輪タイヤ22bの各々に発生する力(前後力及び横力)を算出する。
【0015】
前輪温度取得部12は、前輪温度センサ35の検出結果に基づいて、前輪21の温度である前輪温度Tfを取得する。前輪温度Tfは、右側前輪タイヤ21a及び左側前輪タイヤ21bのいずれか一方の温度であってもよく、右側前輪タイヤ21a及び左側前輪タイヤ21bの平均温度であってもよい。また、前輪温度取得部12は、右側前輪タイヤ21a及び左側前輪タイヤ21bの発熱量及び放熱量に基づいて右側前輪タイヤ21a及び左側前輪タイヤ21bの推定温度を算出することにより、前輪温度Tfを取得してもよい。
【0016】
後輪温度取得部13は、後輪温度センサ36の検出結果に基づいて、後輪22の温度である後輪温度Trを取得する。後輪温度Trは、右側後輪タイヤ22a及び左側後輪タイヤ22bのいずれか一方の温度であってもよく、右側後輪タイヤ22a及び左側後輪タイヤ22bの平均温度であってもよい。また、後輪温度取得部13は、前輪温度取得部12と同様に、右側後輪タイヤ22a及び左側後輪タイヤ22bの発熱量及び放熱量に基づいて右側後輪タイヤ22a及び左側後輪タイヤ22bの推定温度を算出することにより、後輪温度Trを取得してもよい。
【0017】
タイヤ状態判定部14は、前輪21及び後輪22が、各々、適温状態、高温状態又は低温状態のいずれの状態であるかを判定する。適温状態とは、前輪温度Tf又は後輪温度Trがタイヤの特性に応じた適温である状態である。なお、タイヤの適温とは、車両1の走行中において各々のタイヤが最も高い性能を発揮できるタイヤ温度である。すなわち、前輪21及び後輪22が適温状態のときに、車両1の挙動は最も安定する。また、適温は、タイヤの特性に応じた所定の適温範囲内の温度であるが、これに限定されず、タイヤの特性に応じて設定された所定の温度であってもよい。また、高温状態とは、前輪温度Tf又は後輪温度Trが所定の適温範囲より高い状態である。すなわち、高温状態とは、前輪温度Tf又は後輪温度Trが適温よりも高い状態である。低温状態とは、前輪温度Tf又は後輪温度Trが所定の適温範囲より低い状態である。すなわち、低温状態とは、前輪温度Tf又は後輪温度Trが適温よりも低い状態である。
【0018】
具体的には、図2(a)に示すように、前輪21の適温状態とは、前輪温度Tfが前輪21の特性に応じて設定された適温の範囲、すなわち、第1適温範囲RS1内の温度である状態である。なお、第1適温範囲RS1の上限温度は、第1適温上限温度Tfs1である。また、第1適温範囲RS1の下限温度は、第1適温下限温度Tfs2である。すなわち、前輪21が適温状態であるときは、前輪温度Tfは、第1適温下限温度Tfs2以上、かつ、第1適温上限温度Tfs1以下の温度である。
また、前輪21の高温状態とは、前輪温度Tfが第1適温範囲RS1より高い状態である。前輪21が高温状態であるときは、前輪温度Tfは第1高温範囲RH1内の温度、すなわち、第1適温上限温度Tfs1より高い温度である。
また、前輪21の低温状態とは、前輪温度Tfが第1適温範囲RS1より低い状態である。前輪21が低温状態であるときは、前輪温度Tfは第1低温範囲RL1内の温度、すなわち、第1適温下限温度Tfs2より低い温度である。
【0019】
一方、図2(b)に示すように、後輪22の適温状態とは、後輪温度Trが後輪22の特性に応じて設定された適温の範囲、すなわち、第2適温範囲RS2内の温度である状態である。なお、第2適温範囲RS2の上限温度は、第2適温上限温度Trs1である。また、第2適温範囲RS2の下限温度は、第2適温下限温度Trs2である。すなわち、後輪22が適温状態であるときは、後輪温度Trは、第2適温下限温度Trs2以上、かつ、第2適温上限温度Trs1以下の温度である。
また、後輪22の高温状態とは、後輪温度Trが第2適温範囲RS2より高い状態である。後輪22が高温状態であるときは、後輪温度Trは第2高温範囲RH2内の温度、すなわち、第2適温上限温度Trs1より高い温度である。
また、後輪22の低温状態とは、後輪温度Trが第2適温範囲RS2より低い状態である。後輪22が低温状態であるときは、後輪温度Trは第2低温範囲RL2内の温度、すなわち、第2適温下限温度Trs2より低い温度である。
【0020】
第1適温範囲RS1及び第2適温範囲RS2の設定基準の例を図3に示す。
図3に示すように、第1適温範囲RS1及び第2適温範囲RS2は、各々、前輪21及び後輪22に発生するコーナリングパワー(CP)に基づいて設定される。すなわち、第1適温範囲RS1及び第2適温範囲RS2は、コーナリングパワー(CP)が最も高くなる最適温度Tmを含む温度範囲である。なお、第1適温範囲RS1及び第2適温範囲RS2は、コーナリングパワー(CP)のみならず、その他のタイヤ特性に基づいて設定されてもよい。また、第1適温範囲RS1及び第2適温範囲RS2は、前輪21の特性及び後輪22の特性に応じて設定されるため、図2に示すように、第1適温範囲RS1と第2適温範囲RS2とは互いに異なる温度範囲である。具体的には、第1適温範囲RS1の中央値である第1適温中央温度Tfs0は、第2適温範囲R2の中央値である第2適温中央温度Trs0よりも高い。また、一般的に前輪温度Tfの最高温度Tfmaxは後輪温度Trの最高温度Trmaxよりも高く、前輪21の方が後輪22よりも温度変化が大きいため、第1適温範囲RS1の幅は第2適温範囲RS2の幅よりも大きい。なお、第1適温範囲RS1と第2適温範囲RS2とは互いに同じ温度範囲であってもよい。
【0021】
なお、タイヤ状態判定部14は、前輪21を構成する左右一対のタイヤ(右側前輪タイヤ21a,左側前輪タイヤ21b)のうち少なくともいずれか一方のタイヤ温度が第1適温範囲RS1より高い場合に、前輪21が高温状態であると判定する。また、タイヤ状態判定部14は、後輪22を構成する左右一対のタイヤ(右側後輪タイヤ22a,左側後輪タイヤ22b)のうち少なくともいずれか一方のタイヤ温度が第2適温範囲RS2より高い場合に、後輪22が高温状態であると判定する。
【0022】
また、タイヤ状態判定部14は、前輪21を構成する左右一対のタイヤ(右側前輪タイヤ21a,左側前輪タイヤ21b)のうち少なくともいずれか一方のタイヤ温度が第1適温範囲RS1より低い場合に、前輪21が低温状態であると判定する。また、タイヤ状態判定部14は、後輪22を構成する左右一対のタイヤ(右側後輪タイヤ22a,左側後輪タイヤ22b)のうち少なくともいずれか一方のタイヤ温度が第2適温範囲RS2より低い場合に、後輪22が低温状態であると判定する。
【0023】
図1に示すタイヤ力分配部15は、タイヤ力算出部11の算出結果及びタイヤ状態判定部14の判定結果に基づいて前輪21及び後輪22に配分される力を制御する。すなわち、タイヤ力分配部15は、前輪21及び後輪22のタイヤ状態(適温状態、高温状態、低温状態)に基づいて、右側前輪タイヤ21a、左側前輪タイヤ21b、右側後輪タイヤ22a及び左側後輪タイヤ22bの各々に発生する力(縦力及び横力)の配分を調整する。なお、タイヤ力分配部15は、右側前輪タイヤ21a、左側前輪タイヤ21b、右側後輪タイヤ22a及び左側後輪タイヤ22bの各々の制御ゲイン又は制御介入閾値を制御することにより、各々のタイヤに配分される力を制御する。
【0024】
タイヤ力分配部15は、前輪温度Tf及び後輪温度Trの少なくともいずれか一方が適温でない場合(前輪21及び後輪22の少なくともいずれか一方が適温状態でない場合)は、前輪21及び後輪22のうち、適温に対する相対温度、すなわち、適温相対温度が高い方に配分される力を減らし、他方に配分される力を増やす。なお、タイヤ力分配部15は、前輪温度Tf及び後輪温度Trの少なくともいずれか一方が適温でない場合は、適温相対温度に関わらず、前輪21及び後輪22のうち、温度が高い方に配分される力を減らし、他方に配分される力を増やしてもよい。
【0025】
なお、適温相対温度は、第1適温範囲RS1又は第2適温範囲RS2について各々設定された所定の基準温度に対する相対温度である。例えば、第1適温範囲RS1の基準温度は、第1適温中央温度Tfs0であり、第2適温範囲RS2の基準温度は第2適温中央温度Trs0である。また、基準温度は、第1適温範囲RS1及び第2適温範囲RS2の各々において、コーナリングパワー(CP)が最も高くなる最適温度Tmであってもよい。また、前輪21及び/又は後輪22が高温状態であるときは、第1適温範囲RS1の基準温度は、第1適温上限温度Tfs1であり、第2適温範囲RS2の基準温度は第2適温上限温度Trs1であってもよい。また、前輪21及び/又は後輪22が低温状態であるときは、第1適温範囲RS1の基準温度は、第1適温下限温度Tfs2であり、第2適温範囲RS2の基準温度は第2適温下限温度Trs2であってもよい。すなわち、前輪21及び/又は後輪22が高温状態であるときは、適温相対温度が高い程、タイヤ温度の適温範囲(第1適温範囲RS1及び第2適温範囲RS2)に対する乖離が大きい。また、前輪21及び/又は後輪22が低温状態であるときは、適温相対温度が低い程、タイヤ温度の適温範囲(第1適温範囲RS1及び第2適温範囲RS2)に対する乖離が大きい。
なお、タイヤ温度が基準温度よりも高いときは、適温相対温度は正の値となり、タイヤ温度が基準温度よりも低いときは、適温相対温度は負の値となる。また、適温相対温度は、タイヤの状態を判定するための状態係数として機能する。
【0026】
より具体的には、タイヤ力分配部15は、前輪21及び後輪22のうちの一方が高温状態であり、他方が高温状態でないと判定した場合は、高温状態である方に配分される力を減らし、他方に配分される力を増やす。また、タイヤ力分配部15は、前輪21及び後輪22のうちの一方が低温状態であり、他方が低温状態でないと判定した場合は、低温状態である方に配分される力を増やし、他方に配分される力を減らす。また、タイヤ力分配部15は、前輪21及び後輪22のうちの一方が高温状態であり、他方が低温状態であると判定した場合は、高温状態である方に配分される力を減らし、低温状態である方に配分される力を増やす。また、タイヤ力分配部15は、前輪21及び後輪22の両方が高温状態であるときは、前輪21及び後輪22のうち、適温相対温度が高い方に配分される力を減らし、他方に配分される力を増やす。また、同様に、タイヤ力分配部15は、前輪21及び後輪22の両方が低温状態であるときは、前輪21及び後輪22のうち、適温相対温度が高い方に配分される力を減らし、他方に配分される力を増やす。
【0027】
また、タイヤ力分配部15は、力を減らす方の前輪21又は後輪22を構成する左右一対のタイヤのうち、少なくともいずれか一方のタイヤ温度が適温範囲(第1適温範囲RS1又は第2適温範囲RS2)より高い場合は、左右一対のタイヤのうち、タイヤ温度が高い方の力の減少量を、他方の減少量よりも大きくする。なお、車両1が旋回走行を行っており、かつ、左右一対のタイヤのうち旋回外側のタイヤの温度のみが適温範囲よりも高い場合は、タイヤ力分配部15は、左右一対のタイヤが同じ温度である場合よりも制御量(モーメント力)が大きくなるように、各タイヤに発生する力の分配を制御する。これにより、車両制御装置100は、温度が高い方のタイヤの負荷を低減させ、車両1の旋回挙動を改善することができる。
【0028】
また、タイヤ力分配部15は、力を増やす方の前輪21又は後輪22を構成する左右一対のタイヤのうち、少なくともいずれか一方のタイヤ温度が適温範囲(第1適温範囲RS1又は第2適温範囲RS2)より低い場合は、左右一対のタイヤのうち、タイヤ温度が低い方の力の増加量を、他方の増加量よりも大きくする。なお、車両1が旋回走行を行っており、かつ、左右一対のタイヤのうち旋回外側のタイヤの温度のみが適温範囲よりも低い場合は、タイヤ力分配部15は、左右一対のタイヤが同じ温度である場合よりも制御量(モーメント力)が小さくなるように、各タイヤに発生する力の分配を制御する。これにより、車両制御装置100は、温度が高い方のタイヤの負荷を低減させることができる。
【0029】
また、タイヤ力分配部15は、前輪21及び後輪22が適温状態である場合は、前輪21及び後輪22の力の配分を変更せずに、前輪21及び後輪22が適温状態を維持するように各タイヤに発生する力を制御する。
【0030】
タイヤ力分配部15は、各タイヤの力の配分に関する制御情報を含む制御指令を運転制御装置40に出力する。すなわち、タイヤ力分配部15は、運転制御装置40を介して、車両1の前輪21及び後輪22の各々のタイヤ(右側前輪タイヤ21a,左側前輪タイヤ21b,右側後輪タイヤ22a,左側後輪タイヤ22b)に発生する力の配分を制御する。具体的には、タイヤ力分配部15は、高温状態のタイヤについては、当該タイヤの仕事量を減らし発熱量を抑えるように、タイヤに発生する力を制御する。一方、タイヤ力分配部15は、低温状態のタイヤについては、当該タイヤのグリップの限界(摩擦円)を超えない範囲で大きな力を発生させて発熱量を増やすように、タイヤに発生する力を制御する。
【0031】
具体的な各制御のシーンにおける各タイヤに発生する力の配分の制御方法の例を以下に説明する。
まず、運転制御装置40が旋回ブレーキアシスト制御を実行する場合における各タイヤに対する力の配分の制御方法について説明する。当該制御は、車両1がコーナーを旋回するときに、車両1のライントレース性を向上させ、車両1の走行軌道が外側に膨らむことを防止するための制御である。運転制御装置40は、車両1の操舵角及び車速に基づいて目標車速を算出し、目標車速と実車速とから目標減速度を算出し、4輪(前輪21のタイヤ21a,21b及び後輪22のタイヤ22a,22b)にブレーキをかけて制動力を付加する。このとき、タイヤ力分配部15は、前輪21の前輪温度Tf及び後輪22の後輪温度Trの少なくともいずれか一方が適温でない場合は、前輪21及び後輪22のうち、温度が高い方に配分される制動力を減らし、他方に配分される制動力を増やす。具体的には、タイヤ力分配部15は、前輪21及び後輪22のうち、温度が高い方の制御ゲインを他方の制御ゲインより低くする。これにより、前輪温度Tf及び後輪温度Trの適温からの乖離が抑制され、グリップの限界が高められ、車両1のコーナー進入時のアンダーステアが抑制される。
【0032】
次に、運転制御装置40が旋回内輪ブレーキ制御を実行する場合における各タイヤに対する力の配分の制御方法について説明する。当該制御は、車両1がコーナーを旋回するときに、旋回内側のタイヤにブレーキを利かせて制動力を付加し、旋回加速によるステア特性の変化を少なくすることによって、車両1のライントレース性を向上させる。このとき、タイヤ力分配部15は、前輪21の前輪温度Tf及び後輪22の後輪温度Trの少なくともいずれか一方が適温でない場合は、前輪21及び後輪22の制御ゲインを制御することにより、前輪21及び後輪22のうち、適温に対する温度が高い方に配分される制動力を減らし、他方に配分される制動力を増やす。これにより、前輪温度Tf及び後輪温度Trの適温からの乖離が抑制されるとともに、旋回内側のタイヤのスリップやドリフト状態等、タイヤ温度の急激な変化を起こす要素が抑えられ、車両1の挙動が安定する。
【0033】
次に、運転制御装置40が回頭性アシスト制御を実行する場合における各タイヤに対する力の配分の制御方法について説明する。当該制御は、車両1が障害物を避けて迂回するときや車線変更を行うときに、左右のタイヤに交互にブレーキを利かせて制動力を付加する制御である。これにより、ヨーレイトの初期応答が向上し、巻き込みが抑制されることで、車両1のロールダンピングが向上する。このとき、タイヤ力分配部15は、前輪21の前輪温度Tf及び後輪22の後輪温度Trの少なくともいずれか一方が適温でない場合は、前輪21及び後輪22の制御ゲインを制御することにより、前輪21及び後輪22のうち、適温に対する温度が高い方に配分される制動力を減らし、他方に配分される制動力を増やす。これにより、前輪温度Tf及び後輪温度Trの適温からの乖離が抑制され、アンダーステアとオーバーステアとの間の過渡特性が適温状態に戻り、車両1の挙動が安定する。
【0034】
次に、運転制御装置40がヨーレイトフィードバック制御を実行する場合における各タイヤに対する力の配分の制御方法について説明する。当該制御は、目標ヨーレイトと実ヨーレイトとの偏差を無くすように、ブレーキを利かせてタイヤに制動力を付加し、モーメント力を発生させるフィードバック制御である。このとき、タイヤ力分配部15は、前輪21の前輪温度Tf及び後輪22の後輪温度Trの少なくともいずれか一方が適温でない場合は、ヨーレイト偏差の制御介入閾値を制御することにより、前輪21及び後輪22のうち、適温に対する温度が高い方に配分される制動力を減らし、他方に配分される制動力を増やす。これにより、前輪温度Tf及び後輪温度Trの適温からの乖離が抑制され、車両1の挙動が安定する。
【0035】
次に、運転制御装置40が前後駆動力配分制御を実行する場合における各タイヤに対する力の配分の制御方法について説明する。当該制御は、車両1のヨーレイトが理想状態となるように、前輪21及び後輪22の駆動力の比を定める制御である。このとき、タイヤ力分配部15は、前輪21の前輪温度Tf及び後輪22の後輪温度Trの少なくともいずれか一方が適温でない場合は、前輪21及び後輪22の制御ゲインを制御することにより、前輪21及び後輪22のうち、適温に対する温度が高い方に配分される駆動力を減らし、他方に配分される駆動力を増やす。これにより、前輪温度Tf及び後輪温度Trの適温からの乖離が抑制され、車両1の挙動が安定する。すなわち、タイヤ力分配部15は、低温状態であるタイヤに対しては積極的に仕事量を増やすように駆動力を増やす。一方、タイヤ力分配部15は、高温状態であるタイヤに対しては、スリップやドリフト状態等、タイヤ温度の急激な変化を起こす要素を抑えるように、駆動力を減らす。
【0036】
次に、運転制御装置40が駆動トルク抑制制御を実行する場合における各タイヤに対する力の配分の制御方法について説明する。当該制御は、駆動力要求を各タイヤの摩擦円を超えないように制限する制御であり、摩擦円超過による余計なスリップを抑制し、各タイヤの横力低下及び加速度低下を抑制する。これにより、車両1のドライバは、摩擦係数の低い路面(低μ路面)でも、特にアクセルに気を遣わずに安心して車両1を運転することができる。このとき、タイヤ力分配部15は、前輪21の前輪温度Tf及び後輪22の後輪温度Trの少なくともいずれか一方が適温でない場合は、前輪21及び後輪22の制御ゲインを制御することにより、前輪21及び後輪22のうち、適温に対する温度が高い方に配分される駆動力を減らし、他方に配分される駆動力を増やす。これにより、前輪温度Tf及び後輪温度Trの適温からの乖離が抑制され、タイヤ温度の急激な変化を起こす要素(例えば、スリップ)を抑えることができる。
【0037】
図4を用いて、車両制御装置100が実行する車両制御方法の手順について説明する。
まず、ステップS1において、前輪温度取得部12は、前輪温度Tfを取得する。
また、ステップS2において、後輪温度取得部13は、後輪温度Trを取得する。
なお、ステップS1の処理は、ステップS2の処理の後に実行されてもよく、ステップS1の処理とステップS2の処理とは同時に実行されてもよい。
【0038】
次に、ステップS3において、タイヤ状態判定部14は、前輪21及び後輪22が両方、適温状態であるか否かを判定する。前輪21及び後輪22が両方、適温状態である場合は、処理は終了する。
【0039】
一方、ステップS3において「前輪21及び後輪22のいずれか一方又は両方が適温状態でない」と判定された場合は、ステップS4において、タイヤ状態判定部14は、前輪21の適温相対温度(適温に対する温度)は後輪22の適温相対温度より高いか否かを判定する。なお、前輪21の適温相対温度が後輪22の適温相対温度より高い場合とは、前輪21が高温状態であり、かつ、後輪22が高温状態でない場合、又は、後輪22が低温状態であり、かつ、前輪21が低温状態でない場合である。
【0040】
そして、ステップS4で「前輪21の適温相対温度は後輪22の適温相対温度より高い」と判定された場合は、ステップS5において、タイヤ力分配部15は、前輪21に配分される力を減らし、後輪22に配分される力を増やす。
【0041】
一方、ステップS4で「前輪21の適温相対温度は後輪22の適温相対温度より高くない」と判定された場合は、ステップS6において、タイヤ状態判定部14は、後輪22の適温相対温度は前輪21の適温相対温度より高いか否かを判定する。なお、後輪22の適温相対温度が前輪21の適温相対温度より高い場合とは、後輪22が高温状態であり、かつ、前輪21が高温状態でない場合、又は、前輪21が低温状態であり、かつ、後輪22が低温状態でない場合である。
【0042】
ステップS6で「後輪22の適温相対温度は前輪21の適温相対温度より高くない」と判定された場合、すなわち、後輪22の適温相対温度と前輪21の適温相対温度とが同じ温度である場合は、処理は終了する。
【0043】
一方、ステップS6で「後輪22の適温相対温度は前輪21の適温相対温度より高い」と判定された場合は、ステップS7において、タイヤ力分配部15は、後輪22に配分される力を減らし、前輪21に配分される力を増やす。
【0044】
なお、図4のフローチャートにおいて、ステップS4の処理は、ステップS6の処理の後に実行されてもよい。
【0045】
以上より、本実施形態に係る車両制御装置100は、前輪21の温度(前輪温度Tf)及び後輪22の温度(後輪温度Tr)が、各々、タイヤの特性に応じた適温であるか否かを判定し、前輪21の温度及び後輪22の温度の少なくともいずれか一方が適温でない場合は、前輪21及び後輪22のうち、温度が高い方に配分される力を減らし、他方に配分される力を増やす。これにより、車両制御装置100は、前輪21及び後輪22のうち、温度が低い方の仕事量を増やして発熱量を増やし、タイヤ温度を上昇させる。また、車両制御装置100は、前輪21及び後輪22のうち、温度が高い方の仕事量を減らして発熱量を抑え、タイヤ温度を低下させる。これにより、車両制御装置100は、適温に対するタイヤの温度の乖離を抑制して車両1の挙動を安定させることができる。
【0046】
また、上記適温は、タイヤの特性に応じた所定の適温範囲内の温度である。これにより、車両制御装置100は、各タイヤが適温であるか否かを適切に判定できる、
【0047】
また、車両制御装置100は、前輪21及び後輪22のうちの一方が高温状態であり、他方が高温状態でないと判定した場合は、高温状態である方に配分される力を減らし、他方に配分される力を増やす。これにより、車両制御装置100は、高温状態のタイヤの仕事量を減らして発熱量を抑え、タイヤ温度を低下させる。よって、高温状態のタイヤは適温状態に近づくため、コーナリングパワー等のタイヤの性能が高くなり、車両1の挙動が安定する。
【0048】
また、車両制御装置100は、前輪21及び後輪22のうちの一方が低温状態であり、他方が低温状態でないと判定した場合は、低温状態である方に配分される力を増やし、他方に配分される力を減らす。これにより、車両制御装置100は、低温状態のタイヤの仕事量を増やして発熱量を増やし、タイヤ温度を上昇させる。よって、低温状態のタイヤは適温状態に近づくため、コーナリングパワー等のタイヤの性能が高くなり、車両1の挙動が安定する。
【0049】
また、車両制御装置100は、前輪21及び後輪22のうちの一方が高温状態であり、他方が低温状態であると判定した場合は、高温状態である方に配分される力を減らし、低温状態である方に配分される力を増やす。これにより、車両制御装置100は、高温状態のタイヤの仕事量を減らして発熱量を抑え、タイヤ温度を低下させる。また、車両制御装置100は、低温状態のタイヤの仕事量を増やして発熱量を増やし、タイヤ温度を上昇させる。よって、高温状態のタイヤ及び低温状態のタイヤは適温状態に近づくため、コーナリングパワー等のタイヤの性能が高くなり、車両1の挙動が安定する。
【0050】
また、車両制御装置100は、前輪21又は後輪22を構成する左右一対のタイヤのうち少なくともいずれか一方のタイヤ温度が適温より高い場合に、前輪21又は後輪22が高温状態であると判定する。これにより、車両制御装置100は、前輪21又は後輪22の左右一対のタイヤのうち、高温状態のタイヤを適温状態に近づけるよう、各タイヤに発生する力の配分を制御できる。
【0051】
また、車両制御装置100は、前輪21又は後輪22を構成する左右一対のタイヤのうち少なくともいずれか一方のタイヤ温度が適温より低い場合に、前輪21又は後輪22が低温状態であると判定する。これにより、車両制御装置100は、前輪21又は後輪22の左右一対のタイヤのうち、低温状態のタイヤを適温状態に近づけるよう、各タイヤに発生する力の配分を制御できる。
【0052】
また、車両制御装置100は、力を減らす方の前輪21又は後輪22を構成する左右一対のタイヤのうち、少なくともいずれか一方のタイヤ温度が適温より高い場合は、左右一対のタイヤのうち、タイヤ温度が高い方の力の減少量を、他方の減少量よりも大きくする。これにより、車両制御装置100は、前輪21又は後輪22の左右一対のタイヤのうち、高温状態のタイヤを適温状態に近づけることができ、車両1の挙動を安定させることができる。
【0053】
また、車両制御装置100は、力を増やす方の前輪21又は後輪22を構成する左右一対のタイヤのうち、少なくともいずれか一方のタイヤ温度が適温より低い場合は、左右一対のタイヤのうち、タイヤ温度が低い方の力の増加量を、他方の増加量よりも大きくする。これにより、車両制御装置100は、前輪21又は後輪22の左右一対のタイヤのうち、低温状態のタイヤを適温状態に近づけることができ、車両1の挙動を安定させることができる。
【0054】
また、車両制御装置100は、前輪21が、前輪21の特性に応じて設定された第1適温範囲RS1内の温度である適温状態か否かを判定し、後輪22が、後輪22の特性に応じて設定された第2適温範囲RS2内の温度である適温状態か否かを判定する。そして、前輪21及び後輪22の少なくともいずれか一方が適温状態でない場合は、第1適温範囲RS1の所定の基準温度に対する前輪21の温度の相対温度と第2適温範囲RS2の所定の基準温度に対する後輪23の温度の相対温度とを比較し、前輪21及び後輪22のうち、相対温度が高い方に配分される力を減らし、他方に配分される力を増やす。これにより、車両制御装置100は、前輪21と後輪22とで各々異なる適温範囲に基づいて、前輪21及び後輪22が、各々、適温範囲か否かを判定する。従って、車両制御装置100は、前輪21及び後輪22の各々のタイヤ特性に基づいてタイヤの状態を判定した上で、各々のタイヤを各々のタイヤ特性に基づく適温状態に近づけるため、車両1の挙動を安定させることができる。
【符号の説明】
【0055】
100…車両制御装置
1…車両
10…プロセッサ
12…前輪温度取得部
13…後輪温度取得部
14…タイヤ状態判定部
15…タイヤ力分配部
21…前輪
22…後輪
RS1…第1適温範囲
RS2…第2適温範囲
Tf…前輪温度
Tr…後輪温度
図1
図2
図3
図4