(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176046
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】車両用シートロック装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/20 20060101AFI20241212BHJP
B60N 2/22 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B60N2/20
B60N2/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094250
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺岡 孝
(72)【発明者】
【氏名】宮川 正純
(72)【発明者】
【氏名】近藤 誠人
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BD01
3B087BD03
3B087DA06
3B087DA10
(57)【要約】
【課題】ストライカがラッチ位置でガタつくことを防止しつつ、操作性に優れ、小型化を図ることができる車両用シートロック装置を提供する。
【解決手段】車両用シートロック装置4は、第1回動軸411を軸に回動可能なラッチ42とウェッジ43とを備え、ウェッジ43は第1方向にスライド可能である。ラッチボディ部421とウェッジボディ部431とは、軸方向から見て少なくとも一部が互いに重なる位置に配置され、ラッチ溝422とウェッジ溝432とは、軸方向から見て少なくとも一部が互いに重なる位置に形成されている。第1ウェッジ支持壁432aの径方向の外側端部432dは、軸方向から見てラッチボディ部421と重なる位置に位置し、ウェッジ43は、ストライカ5が第1ラッチ位置P1に近づくほど、第1ウェッジ支持壁432aが周方向において第1ラッチ支持壁422aに近づくように第1方向にスライドする。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体及びシートバックの一方に取り付けられ、前記車体及び前記シートバックの他方に取り付けられたストライカと係合可能な車両用シートロック装置であって、
前記車両用シートロック装置は、
第1ラッチ位置で前記ストライカを保持可能、且つ、前記第1ラッチ位置とは異なる第2ラッチ位置で前記ストライカと保持可能であり、
前記シートバックの動作に伴って前記ストライカが進入及び退避するストライカ進入溝が設けられたベースプレートと、
前記ベースプレートに設けられた第1回動軸と、
前記第1回動軸に軸支され、前記第1回動軸を軸に回動可能なラッチと、
前記第1回動軸の軸方向に垂直な第1方向にスライド可能に前記第1回動軸に軸支され、前記第1回動軸を軸に回動可能なウェッジと、を備え、
前記ラッチは、
ラッチボディ部と、前記軸方向から見て前記ラッチボディ部の外周縁から窪んだ凹形状を有し、前記ストライカが進入及び退避するラッチ溝と、を有し、
第1保持位置にあるときに、前記ストライカを前記ラッチ溝に係合した状態で前記第1ラッチ位置に保持し、
第2保持位置にあるときに、前記ストライカを前記第2ラッチ位置に保持し、
前記ウェッジは、
ウェッジボディ部と、前記軸方向から見て前記ウェッジボディ部の外周縁から窪んだ凹形状を有し、前記ストライカが進入及び退避するウェッジ溝と、を有し、
前記ラッチと前記ウェッジとは、一体に回動し、
前記ラッチボディ部と前記ウェッジボディ部とは、前記軸方向から見て少なくとも一部が互いに重なる位置に配置され、
前記ラッチ溝と前記ウェッジ溝とは、前記軸方向から見て少なくとも一部が互いに重なる位置に形成されており、
前記ラッチ溝は、前記ラッチボディ部によって形成された、前記第1回動軸の周方向における前記ストライカの退避側で前記第1回動軸の径方向に延在する第1ラッチ支持壁と、前記周方向における前記ストライカの係合側で前記径方向に延在する第2ラッチ支持壁と、前記第1ラッチ支持壁の前記径方向の内側端部と前記第2ラッチ支持壁の前記径方向の内側端部とを接続するラッチ底壁部と、によって囲まれた空間であり、
前記ウェッジ溝は、前記ウェッジボディ部によって形成された、前記周方向における前記ストライカの退避側で前記径方向に延在する第1ウェッジ支持壁と、前記周方向における前記ストライカの係合側で前記径方向に延在する第2ウェッジ支持壁と、前記第1ウェッジ支持壁の前記径方向の内側端部と前記第2ウェッジ支持壁の前記径方向の内側端部とを接続するウェッジ底壁部と、によって囲まれた空間であり、
前記第1ウェッジ支持壁の前記径方向の外側端部は、前記軸方向から見て、前記ラッチボディ部と重なる位置に位置し、
前記ウェッジは、前記ストライカの前記ウェッジ溝への進退に伴って前記第1方向にスライドし、前記ストライカが前記第1ラッチ位置に近づくほど、前記第1ウェッジ支持壁が前記周方向において前記第1ラッチ支持壁に近づくように前記第1方向にスライドする、
車両用シートロック装置。
【請求項2】
車体及びシートバックの一方に取り付けられ、前記車体及び前記シートバックの他方に取り付けられたストライカと係合可能な車両用シートロック装置であって、
前記車両用シートロック装置は、
第1ラッチ位置で前記ストライカを保持可能、且つ、前記第1ラッチ位置とは異なる第2ラッチ位置で前記ストライカと保持可能であり、
前記シートバックの動作に伴って前記ストライカが進入及び退避するストライカ進入溝が設けられたベースプレートと、
前記ベースプレートに設けられた第1回動軸と、
前記第1回動軸に軸支され、前記第1回動軸を軸に回動可能なラッチと、
前記ベースプレートに設けられ、前記第1回動軸と平行に延在する第2回動軸と、
前記第2回動軸に軸支され、前記第2回動軸を軸に回動可能なリンクレバーと、
前記ベースプレートに設けられ、前記第1回動軸及び前記第2回動軸と平行に延在する第3回動軸と、
前記第3回動軸に軸支され、前記第3回動軸を軸に回動可能なラチェット及びカムと、を備え、
前記ラッチは、
ラッチボディ部と、
前記第1回動軸の軸方向から見て前記ラッチボディ部の外周縁から窪んだ凹形状を有し、前記ストライカが進入及び退避するラッチ溝と、
前記軸方向から見て前記ラッチボディ部の外周縁から窪んだ凹形状を有し、第1保持位置にあるときに前記ラチェットが係合する第1ラチェット係合溝と、
前記軸方向から見て前記ラッチボディ部の外周縁から窪んだ凹形状を有し、第2保持位置にあるときに前記ラチェットが係合する第2ラチェット係合溝と、を備え、
前記第1保持位置にあるときに、前記ストライカを前記ラッチ溝に係合した状態で前記第1ラッチ位置に保持し、
前記第2保持位置にあるときに、前記ストライカを前記第2ラッチ位置に保持し、
前記ラッチボディ部は、
前記ラッチが前記第2保持位置にあるときに、前記ストライカに当接して前記ストライカを前記第2ラッチ位置に保持するストライカ当接部と、
前記ラッチが前記第1保持位置から前記第2保持位置に向かって第2方向に回動することによって前記カムが当接するカム当接部と、を有し、
前記リンクレバーは、
前記第2回動軸の径方向に延在し、前記ストライカと当接可能であり、前記ストライカが前記第2ラッチ位置にあるときに、前記ラッチの前記ストライカ当接部とともに前記ストライカを挟持して、前記ストライカを前記第2ラッチ位置に保持するストライカ保持アームを備え、
前記ラチェットは、
前記ラッチの前記第1ラチェット係合溝に係合して、前記ラッチを前記第1保持位置に保持可能であるとともに、前記ラッチの前記第2ラチェット係合溝に係合して、前記ラッチを前記第2保持位置に保持可能であり、
前記カムは、
前記ラッチの前記カム当接部に当接して、前記第2保持位置を超える位置まで前記ラッチを前記第2方向に回動可能で、前記第2保持位置を超える方向に向かって前記ラッチを前記第2方向に押圧可能であり、
前記車両用シートロック装置は、
前記ストライカが前記リンクレバーの前記ストライカ保持アームに当接することで、前記リンクレバーが前記第2回動軸を軸に回動し、
前記ストライカが前記ストライカ保持アームに当接して前記リンクレバーが前記第2回動軸を軸に回動することで、前記ラッチを前記第2保持位置に向かって前記第2方向に回動させ、
前記ラッチが前記第2方向に回動することで、前記カムが前記ラッチの前記カム当接部に当接して、前記第2保持位置を超える位置まで前記ラッチを前記第2方向に回動させた後、前記ラッチを前記第2保持位置で前記第2方向に押圧し、
前記リンクレバーの前記ストライカ保持アームと前記ラッチの前記ストライカ当接部とで前記ストライカを挟持して、前記ストライカを前記第2ラッチ位置に保持する、
車両用シートロック装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用シートロック装置であって、
前記ラッチボディ部には、前記軸方向において前記ウェッジが配置されている側に突出するスライドピンが設けられており、
前記ウェッジボディ部には、前記軸方向から見て前記第1方向を長手方向とする長孔形状を有し、前記軸方向に貫通するピン摺動孔が形成されており、
前記スライドピンは、前記第1方向にスライド可能に前記ピン摺動孔を挿通しており、
前記軸方向から見て、前記第1回動軸の軸心と前記スライドピンの中心とを結ぶ第3方向において、前記ラッチ溝は、前記第1回動軸の軸心と前記スライドピンの中心との間に設けられている、
車両用シートロック装置。
【請求項4】
請求項2に記載の車両用シートロック装置であって、
前記リンクレバーは、前記第2回動軸の径方向に延在し、前記ラッチと当接可能なラッチ駆動アームを備え、
前記ラッチ駆動アームは、
前記第2回動軸の径方向に延在し、前記ラッチと当接可能な第1アーム部と、
前記第1アーム部と前記第2回動軸の周方向で対向して前記第2回動軸の径方向に延在する第2アーム部と、
前記第1アーム部と前記第2アーム部との間で、前記第2回動軸の径方向に延在するスリット空間部と、を有する、
車両用シートロック装置。
【請求項5】
請求項2に記載の車両用シートロック装置であって、
前記リンクレバーには、前記リンクレバーを前記第2方向と反対方向に付勢するねじりコイルばねが係合しており、
前記ねじりコイルばねは、
前記第2回動軸を取り囲んで巻回するコイル部と、
前記コイル部から前記第2回動軸の径方向外側に延出して前記ベースプレートに係止される第1脚部と、
前記コイル部から前記第2回動軸の径方向外側に延出して前記リンクレバーに係止される第2脚部と、を備え、
前記ストライカが前記ストライカ保持アームに当接して前記リンクレバーが前記第2回動軸を軸に回動し、前記ラッチを前記第2保持位置に向かって前記第2方向に回動させる際に、前記第2脚部が前記ラッチと当接して前記ラッチを弾性的に前記第2保持位置に向かって前記第2方向に回動させるように配置されている、
車両用シートロック装置。
【請求項6】
車体及びシートバックの一方に取り付けられ、前記車体及び前記シートバックの他方に取り付けられたストライカと係合可能な車両用シートロック装置であって、
前記車両用シートロック装置は、
第1ラッチ位置で前記ストライカを保持可能、且つ、前記第1ラッチ位置とは異なる第2ラッチ位置で前記ストライカと保持可能であり、
前記シートバックの動作に伴って前記ストライカが進入及び退避するストライカ進入溝が設けられたベースプレートと、
前記ベースプレートに設けられた第1回動軸と、
前記第1回動軸に軸支され、前記第1回動軸を軸に回動可能なラッチと、
前記第1回動軸の軸方向に垂直な第1方向にスライド可能に前記第1回動軸に軸支され、前記第1回動軸を軸に回動可能なウェッジと、
前記ベースプレートに設けられ、前記第1回動軸と平行に延在する第2回動軸と、
前記第2回動軸に軸支され、前記第2回動軸を軸に回動可能なリンクレバーと、
前記ベースプレートに設けられ、前記第1回動軸及び前記第2回動軸と平行に延在する第3回動軸と、
前記第3回動軸に軸支され、前記第3回動軸を軸に回動可能なラチェット及びカムと、を備え、
前記ラッチは、
ラッチボディ部と、
前記軸方向から見て前記ラッチボディ部の外周縁から窪んだ凹形状を有し、前記ストライカが進入及び退避するラッチ溝と、
前記軸方向から見て前記ラッチボディ部の外周縁から窪んだ凹形状を有し、第1保持位置にあるときに前記ラチェットが係合する第1ラチェット係合溝と、
前記軸方向から見て前記ラッチボディ部の外周縁から窪んだ凹形状を有し、第2保持位置にあるときに前記ラチェットが係合する第2ラチェット係合溝と、を備え、
前記第1保持位置にあるときに、前記ストライカを前記ラッチ溝に係合した状態で前記第1ラッチ位置に保持し、
前記第2保持位置にあるときに、前記ストライカを前記第2ラッチ位置に保持し、
前記ラッチボディ部は、
前記ラッチが前記第2保持位置にあるときに、前記ストライカに当接して前記ストライカを前記第2ラッチ位置に保持するストライカ当接部と、
前記ラッチが前記第1保持位置から前記第2保持位置に向かって第2方向に回動することによって前記カムが当接するカム当接部と、を有し、
前記ウェッジは、
ウェッジボディ部と、前記軸方向から見て前記ウェッジボディ部の外周縁から窪んだ凹形状を有し、前記ストライカが進入及び退避するウェッジ溝と、を有し、
前記ラッチと前記ウェッジとは、一体に回動し、
前記ラッチボディ部と前記ウェッジボディ部とは、前記軸方向から見て少なくとも一部が互いに重なる位置に配置され、
前記ラッチ溝と前記ウェッジ溝とは、前記軸方向から見て少なくとも一部が互いに重なる位置に形成されており、
前記ラッチ溝は、前記ラッチボディ部によって形成された、前記第1回動軸の周方向における前記ストライカの退避側で前記第1回動軸の径方向に延在する第1ラッチ支持壁と、前記周方向における前記ストライカの係合側で前記径方向に延在する第2ラッチ支持壁と、前記第1ラッチ支持壁の前記径方向の内側端部と前記第2ラッチ支持壁の前記径方向の内側端部とを接続するラッチ底壁部と、によって囲まれた空間であり、
前記ウェッジ溝は、前記ウェッジボディ部によって形成された、前記周方向における前記ストライカの退避側で前記径方向に延在する第1ウェッジ支持壁と、前記周方向における前記ストライカの係合側で前記径方向に延在する第2ウェッジ支持壁と、前記第1ウェッジ支持壁の前記径方向の内側端部と前記第2ウェッジ支持壁の前記径方向の内側端部とを接続するウェッジ底壁部と、によって囲まれた空間であり、
前記第1ウェッジ支持壁の前記径方向の外側端部は、前記軸方向から見て、前記ラッチボディ部と重なる位置に位置し、
前記ウェッジは、前記ストライカの前記ウェッジ溝への進退に伴って前記第1方向にスライドし、前記ストライカが前記第1ラッチ位置に近づくほど、前記第1ウェッジ支持壁が前記周方向において前記第1ラッチ支持壁に近づくように前記第1方向にスライドし、
前記リンクレバーは、
前記第2回動軸の径方向に延在し、前記ストライカと当接可能であり、前記ストライカが前記第2ラッチ位置にあるときに、前記ラッチの前記ストライカ当接部とともに前記ストライカを挟持して、前記ストライカを前記第2ラッチ位置に保持するストライカ保持アームを備え、
前記ラチェットは、
前記ラッチの前記第1ラチェット係合溝に係合して、前記ラッチを前記第1保持位置に保持可能であるとともに、前記ラッチの前記第2ラチェット係合溝に係合して、前記ラッチを前記第2保持位置に保持可能であり、
前記カムは、
前記ラッチの前記カム当接部に当接して、前記第2保持位置を超える位置まで前記ラッチを前記第2方向に回動可能で、前記第2保持位置を超える方向に向かって前記ラッチを前記第2方向に押圧可能であり、
前記車両用シートロック装置は、
前記ストライカが前記リンクレバーの前記ストライカ保持アームに当接することで、前記リンクレバーが前記第2回動軸を軸に回動し、
前記ストライカが前記ストライカ保持アームに当接して前記リンクレバーが前記第2回動軸を軸に回動することで、前記ラッチを前記第2保持位置に向かって前記第2方向に回動させ、
前記ラッチが前記第2方向に回動することで、前記カムが前記ラッチの前記カム当接部に当接して、前記第2保持位置を超える位置まで前記ラッチを前記第2方向に回動させた後、前記ラッチを前記第2保持位置で前記第2方向に押圧し、
前記リンクレバーの前記ストライカ保持アームと前記ラッチの前記ストライカ当接部とで前記ストライカを挟持して、前記ストライカを前記第2ラッチ位置に保持する、
車両用シートロック装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用シートロック装置であって、
前記第1回動軸、前記第2回動軸、及び、前記第3回動軸はそれぞれ、前記軸方向から見て前記ストライカ進入溝と重ならない位置で、前記ストライカ進入溝の上方、又は、前記ストライカ進入溝の下方に設けられている、
車両用シートロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートロック装置に関し、特には、シートバックの角度を2段階に変更可能とした車両用シートロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両用シートのシートバックの角度を2段階に変更可能な車両用シートロック装置が知られている。シートバックの角度を2段階に変更可能な車両用シートロック装置は、車体及びシートバックの一方に取り付けられており、車体及びシートバックの他方に取り付けられたストライカに係合可能なラッチを備える。そして、ラッチは、第1保持位置でストライカを第1ラッチ位置に保持可能であるとともに、第2保持位置でストライカを第2ラッチ位置に保持可能となっている。
【0003】
この種の車両用シートロック装置においては、ストライカを第1ラッチ位置又は第2ラッチ位置に保持した状態において、ストライカとラッチとの間にガタつきが生じやすいという課題がある。ストライカとラッチとの間にガタつきが生じると、車両走行中にシートバックがガタついてしまうこととなり、乗員が不快に感じる場合がある。
【0004】
ストライカとラッチとの間にガタつきが生じやすいという課題に対応するために、例えば、特許文献1には、ラッチにスライドウェッジを設け、ストライカをスライドウェッジに積極的に当接させる事で、ラッチ位置においてストライカとラッチとの間に生じるガタつきを抑制する構造が記載されている。
【0005】
また、例えば、特許文献2には、ラッチに設けられている被当接部に対して、噛合い補助レバーを当接させる事で、ラッチを第1保持位置から第2保持位置に向かって動作させる構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許3387877号公報
【特許文献2】特開2022-189571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された車両用シートロック装置は、ラッチ状態からアンラッチに切り替える際に、ストライカがスライドウェッジから抜けにくくなり、操作が重くなる虞があった。また、特許文献2に記載された車両用シートロック装置は、ストライカによって、ラッチが過剰に押し込まれた場合に備えて、噛合い補助レバーのストライカが当接するアームのクッションを大きくとる必要があり、車両用シートロック装置の前後寸法が大きくなってしまうという課題があった。
【0008】
本発明は、ストライカがラッチ位置でガタつくことを防止しつつ、操作性に優れ、小型化を図ることができる車両用シートロック装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様は、
車体及びシートバックの一方に取り付けられ、前記車体及び前記シートバックの他方に取り付けられたストライカと係合可能な車両用シートロック装置であって、
前記車両用シートロック装置は、
第1ラッチ位置で前記ストライカを保持可能、且つ、前記第1ラッチ位置とは異なる第2ラッチ位置で前記ストライカと保持可能であり、
前記シートバックの動作に伴って前記ストライカが進入及び退避するストライカ進入溝が設けられたベースプレートと、
前記ベースプレートに設けられた第1回動軸と、
前記第1回動軸に軸支され、前記第1回動軸を軸に回動可能なラッチと、
前記第1回動軸の軸方向に垂直な第1方向にスライド可能に前記第1回動軸に軸支され、前記第1回動軸を軸に回動可能なウェッジと、を備え、
前記ラッチは、
ラッチボディ部と、前記軸方向から見て前記ラッチボディ部の外周縁から窪んだ凹形状を有し、前記ストライカが進入及び退避するラッチ溝と、を有し、
第1保持位置にあるときに、前記ストライカを前記ラッチ溝に係合した状態で前記第1ラッチ位置に保持し、
第2保持位置にあるときに、前記ストライカを前記第2ラッチ位置に保持し、
前記ウェッジは、
ウェッジボディ部と、前記軸方向から見て前記ウェッジボディ部の外周縁から窪んだ凹形状を有し、前記ストライカが進入及び退避するウェッジ溝と、を有し、
前記ラッチと前記ウェッジとは、一体に回動し、
前記ラッチボディ部と前記ウェッジボディ部とは、前記軸方向から見て少なくとも一部が互いに重なる位置に配置され、
前記ラッチ溝と前記ウェッジ溝とは、前記軸方向から見て少なくとも一部が互いに重なる位置に形成されており、
前記ラッチ溝は、前記ラッチボディ部によって形成された、前記第1回動軸の周方向における前記ストライカの退避側で前記第1回動軸の径方向に延在する第1ラッチ支持壁と、前記周方向における前記ストライカの係合側で前記径方向に延在する第2ラッチ支持壁と、前記第1ラッチ支持壁の前記径方向の内側端部と前記第2ラッチ支持壁の前記径方向の内側端部とを接続するラッチ底壁部と、によって囲まれた空間であり、
前記ウェッジ溝は、前記ウェッジボディ部によって形成された、前記周方向における前記ストライカの退避側で前記径方向に延在する第1ウェッジ支持壁と、前記周方向における前記ストライカの係合側で前記径方向に延在する第2ウェッジ支持壁と、前記第1ウェッジ支持壁の前記径方向の内側端部と前記第2ウェッジ支持壁の前記径方向の内側端部とを接続するウェッジ底壁部と、によって囲まれた空間であり、
前記第1ウェッジ支持壁の前記径方向の外側端部は、前記軸方向から見て、前記ラッチボディ部と重なる位置に位置し、
前記ウェッジは、前記ストライカの前記ウェッジ溝への進退に伴って前記第1方向にスライドし、前記ストライカが前記第1ラッチ位置に近づくほど、前記第1ウェッジ支持壁が前記周方向において前記第1ラッチ支持壁に近づくように前記第1方向にスライドする。
【0010】
本発明の第2態様は、
車体及びシートバックの一方に取り付けられ、前記車体及び前記シートバックの他方に取り付けられたストライカと係合可能な車両用シートロック装置であって、
前記車両用シートロック装置は、
第1ラッチ位置で前記ストライカを保持可能、且つ、前記第1ラッチ位置とは異なる第2ラッチ位置で前記ストライカと保持可能であり、
前記シートバックの動作に伴って前記ストライカが進入及び退避するストライカ進入溝が設けられたベースプレートと、
前記ベースプレートに設けられた第1回動軸と、
前記第1回動軸に軸支され、前記第1回動軸を軸に回動可能なラッチと、
前記ベースプレートに設けられ、前記第1回動軸と平行に延在する第2回動軸と、
前記第2回動軸に軸支され、前記第2回動軸を軸に回動可能なリンクレバーと、
前記ベースプレートに設けられ、前記第1回動軸及び前記第2回動軸と平行に延在する第3回動軸と、
前記第3回動軸に軸支され、前記第3回動軸を軸に回動可能なラチェット及びカムと、を備え、
前記ラッチは、
ラッチボディ部と、
前記第1回動軸の軸方向から見て前記ラッチボディ部の外周縁から窪んだ凹形状を有し、前記ストライカが進入及び退避するラッチ溝と、
前記軸方向から見て前記ラッチボディ部の外周縁から窪んだ凹形状を有し、第1保持位置にあるときに前記ラチェットが係合する第1ラチェット係合溝と、
前記軸方向から見て前記ラッチボディ部の外周縁から窪んだ凹形状を有し、第2保持位置にあるときに前記ラチェットが係合する第2ラチェット係合溝と、を備え、
前記第1保持位置にあるときに、前記ストライカを前記ラッチ溝に係合した状態で前記第1ラッチ位置に保持し、
前記第2保持位置にあるときに、前記ストライカを前記第2ラッチ位置に保持し、
前記ラッチボディ部は、
前記ラッチが前記第2保持位置にあるときに、前記ストライカに当接して前記ストライカを前記第2ラッチ位置に保持するストライカ当接部と、
前記ラッチが前記第1保持位置から前記第2保持位置に向かって第2方向に回動することによって前記カムが当接するカム当接部と、を有し、
前記リンクレバーは、
前記第2回動軸の径方向に延在し、前記ストライカと当接可能であり、前記ストライカが前記第2ラッチ位置にあるときに、前記ラッチの前記ストライカ当接部とともに前記ストライカを挟持して、前記ストライカを前記第2ラッチ位置に保持するストライカ保持アームを備え、
前記ラチェットは、
前記ラッチの前記第1ラチェット係合溝に係合して、前記ラッチを前記第1保持位置に保持可能であるとともに、前記ラッチの前記第2ラチェット係合溝に係合して、前記ラッチを前記第2保持位置に保持可能であり、
前記カムは、
前記ラッチの前記カム当接部に当接して、前記第2保持位置を超える位置まで前記ラッチを前記第2方向に回動可能で、前記第2保持位置を超える方向に向かって前記ラッチを前記第2方向に押圧可能であり、
前記車両用シートロック装置は、
前記ストライカが前記リンクレバーの前記ストライカ保持アームに当接することで、前記リンクレバーが前記第2回動軸を軸に回動し、
前記ストライカが前記ストライカ保持アームに当接して前記リンクレバーが前記第2回動軸を軸に回動することで、前記ラッチを前記第2保持位置に向かって前記第2方向に回動させ、
前記ラッチが前記第2方向に回動することで、前記カムが前記ラッチの前記カム当接部に当接して、前記第2保持位置を超える位置まで前記ラッチを前記第2方向に回動させた後、前記ラッチを前記第2保持位置で前記第2方向に押圧し、
前記リンクレバーの前記ストライカ保持アームと前記ラッチの前記ストライカ当接部とで前記ストライカを挟持して、前記ストライカを前記第2ラッチ位置に保持する。
【0011】
本発明の第3態様は、
車体及びシートバックの一方に取り付けられ、前記車体及び前記シートバックの他方に取り付けられたストライカと係合可能な車両用シートロック装置であって、
前記車両用シートロック装置は、
第1ラッチ位置で前記ストライカを保持可能、且つ、前記第1ラッチ位置とは異なる第2ラッチ位置で前記ストライカと保持可能であり、
前記シートバックの動作に伴って前記ストライカが進入及び退避するストライカ進入溝が設けられたベースプレートと、
前記ベースプレートに設けられた第1回動軸と、
前記第1回動軸に軸支され、前記第1回動軸を軸に回動可能なラッチと、
前記第1回動軸の軸方向に垂直な第1方向にスライド可能に前記第1回動軸に軸支され、前記第1回動軸を軸に回動可能なウェッジと、
前記ベースプレートに設けられ、前記第1回動軸と平行に延在する第2回動軸と、
前記第2回動軸に軸支され、前記第2回動軸を軸に回動可能なリンクレバーと、
前記ベースプレートに設けられ、前記第1回動軸及び前記第2回動軸と平行に延在する第3回動軸と、
前記第3回動軸に軸支され、前記第3回動軸を軸に回動可能なラチェット及びカムと、を備え、
前記ラッチは、
ラッチボディ部と、
前記軸方向から見て前記ラッチボディ部の外周縁から窪んだ凹形状を有し、前記ストライカが進入及び退避するラッチ溝と、
前記軸方向から見て前記ラッチボディ部の外周縁から窪んだ凹形状を有し、第1保持位置にあるときに前記ラチェットが係合する第1ラチェット係合溝と、
前記軸方向から見て前記ラッチボディ部の外周縁から窪んだ凹形状を有し、第2保持位置にあるときに前記ラチェットが係合する第2ラチェット係合溝と、を備え、
前記第1保持位置にあるときに、前記ストライカを前記ラッチ溝に係合した状態で前記第1ラッチ位置に保持し、
前記第2保持位置にあるときに、前記ストライカを前記第2ラッチ位置に保持し、
前記ラッチボディ部は、
前記ラッチが前記第2保持位置にあるときに、前記ストライカに当接して前記ストライカを前記第2ラッチ位置に保持するストライカ当接部と、
前記ラッチが前記第1保持位置から前記第2保持位置に向かって第2方向に回動することによって前記カムが当接するカム当接部と、を有し、
前記ウェッジは、
ウェッジボディ部と、前記軸方向から見て前記ウェッジボディ部の外周縁から窪んだ凹形状を有し、前記ストライカが進入及び退避するウェッジ溝と、を有し、
前記ラッチと前記ウェッジとは、一体に回動し、
前記ラッチボディ部と前記ウェッジボディ部とは、前記軸方向から見て少なくとも一部が互いに重なる位置に配置され、
前記ラッチ溝と前記ウェッジ溝とは、前記軸方向から見て少なくとも一部が互いに重なる位置に形成されており、
前記ラッチ溝は、前記ラッチボディ部によって形成された、前記第1回動軸の周方向における前記ストライカの退避側で前記第1回動軸の径方向に延在する第1ラッチ支持壁と、前記周方向における前記ストライカの係合側で前記径方向に延在する第2ラッチ支持壁と、前記第1ラッチ支持壁の前記径方向の内側端部と前記第2ラッチ支持壁の前記径方向の内側端部とを接続するラッチ底壁部と、によって囲まれた空間であり、
前記ウェッジ溝は、前記ウェッジボディ部によって形成された、前記周方向における前記ストライカの退避側で前記径方向に延在する第1ウェッジ支持壁と、前記周方向における前記ストライカの係合側で前記径方向に延在する第2ウェッジ支持壁と、前記第1ウェッジ支持壁の前記径方向の内側端部と前記第2ウェッジ支持壁の前記径方向の内側端部とを接続するウェッジ底壁部と、によって囲まれた空間であり、
前記第1ウェッジ支持壁の前記径方向の外側端部は、前記軸方向から見て、前記ラッチボディ部と重なる位置に位置し、
前記ウェッジは、前記ストライカの前記ウェッジ溝への進退に伴って前記第1方向にスライドし、前記ストライカが前記第1ラッチ位置に近づくほど、前記第1ウェッジ支持壁が前記周方向において前記第1ラッチ支持壁に近づくように前記第1方向にスライドし、
前記リンクレバーは、
前記第2回動軸の径方向に延在し、前記ストライカと当接可能であり、前記ストライカが前記第2ラッチ位置にあるときに、前記ラッチの前記ストライカ当接部とともに前記ストライカを挟持して、前記ストライカを前記第2ラッチ位置に保持するストライカ保持アームを備え、
前記ラチェットは、
前記ラッチの前記第1ラチェット係合溝に係合して、前記ラッチを前記第1保持位置に保持可能であるとともに、前記ラッチの前記第2ラチェット係合溝に係合して、前記ラッチを前記第2保持位置に保持可能であり、
前記カムは、
前記ラッチの前記カム当接部に当接して、前記第2保持位置を超える位置まで前記ラッチを前記第2方向に回動可能で、前記第2保持位置を超える方向に向かって前記ラッチを前記第2方向に押圧可能であり、
前記車両用シートロック装置は、
前記ストライカが前記リンクレバーの前記ストライカ保持アームに当接することで、前記リンクレバーが前記第2回動軸を軸に回動し、
前記ストライカが前記ストライカ保持アームに当接して前記リンクレバーが前記第2回動軸を軸に回動することで、前記ラッチを前記第2保持位置に向かって前記第2方向に回動させ、
前記ラッチが前記第2方向に回動することで、前記カムが前記ラッチの前記カム当接部に当接して、前記第2保持位置を超える位置まで前記ラッチを前記第2方向に回動させた後、前記ラッチを前記第2保持位置で前記第2方向に押圧し、
前記リンクレバーの前記ストライカ保持アームと前記ラッチの前記ストライカ当接部とで前記ストライカを挟持して、前記ストライカを前記第2ラッチ位置に保持する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ストライカがラッチ位置でガタつくことを防止しつつ、小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態の車両用シートロック装置4を装着したシートの斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態の車両用シートロック装置4を斜め上方から見た斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態の車両用シートロック装置4を、第1回動軸、第2回動軸、第3回動軸、及び、引張コイルばねを省略した状態で斜め下方から見た斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態の車両用シートロック装置4Aにおいて、ラッチがアンラッチ位置にあるときの状態を左方向から見た側面図である。
【
図5】本発明の一実施形態の車両用シートロック装置4Aにおいて、ラッチがアンラッチ位置から第1保持位置に遷移しているときの状態を左方向から見た側面図である。
【
図6】本発明の一実施形態の車両用シートロック装置4Aにおいて、ラッチが第1保持位置にあるときの状態を左方向から見た側面図である。
【
図7】本発明の一実施形態の車両用シートロック装置4Aにおいて、ラッチが第1保持位置にあるときに、操作部材が操作されたときの状態を左方向から見た側面図である。
【
図8】本発明の一実施形態の車両用シートロック装置4Aにおいて、ラッチが第1保持位置から第2保持位置に遷移しているときであって、ストライカがリンクレバーのストライカ保持アームに当接したときの状態を左方向から見た側面図である。
【
図9】本発明の一実施形態の車両用シートロック装置4Aにおいて、ラッチが第1保持位置から第2保持位置に遷移しているときであって、ねじりコイルばねの第2脚部がラッチに当接したときの状態を左方向から見た側面図である。
【
図10】本発明の一実施形態の車両用シートロック装置4Aにおいて、ラッチが第1保持位置から第2保持位置に遷移しているときであって、カムによって、ラッチが第2保持位置を超える位置まで回動した状態を左方向から見た側面図である。
【
図11】本発明の一実施形態の車両用シートロック装置4Aにおいて、ラッチが第2保持位置にあるときの状態を左方向から見た側面図である。
【
図12】本発明の一実施形態の車両用シートロック装置4Aにおける、リンクレバーの変形例を左方向から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の車両用シートロック装置の一実施形態を、添付図面に基づいて説明する。なお、図面は、符号の向きに見るものとする。また、本明細書等では説明を簡単且つ明確にするために、前後、左右、上下の各方向は、車両の運転者から見た方向に従って記載し、図面には、車両の前方をFr、後方をRr、左方をL、右方をR、上方をU、下方をD、として示す。
【0015】
[車両用シートロック装置周辺の構成]
図1に示すように、本実施形態の車両用シートロック装置4は、車両に設けられたリヤシート2の左側面に取り付けられている。
【0016】
リヤシート2は、乗員が着座可能なシートクッション3Aと、シートクッション3Aの後端下部に設けられた左右方向に延在する不図示のヒンジ軸により、ヒンジ軸を軸に前後方向に起倒可能に支持されるシートバック3Bと、を備える。
【0017】
車体には、ストライカ5が取り付けられている。ストライカ5は、シートバック3Bの左側面に対向する略コの字型形状を有する。ストライカ5は、前側で左右方向に延在する第1脚部51と、第1脚部51の所定距離後方で左右方向に延在する第2脚部52と、を備える。
【0018】
シートバック3Bは、車両用シートロック装置4がストライカ5と係合することで、シートバック3Bを、
図1に実線で示す第1位置と、第1位置より後傾した
図1に二点鎖線で示す第2位置と、で保持可能である。このようにして、車両用シートロック装置4は、ストライカ5と係合することで、シートバック3Bを2段階の角度で切替可能に保持することができる。
【0019】
また、シートバック3Bは、前述したように第1位置又は第2位置のいずれかの位置に選択的に保持されるとともに、シートバック3Bの肩部に設けられた操作部材6を操作することによって、車両用シートロック装置4とストライカ5との係合が解除され、
図1に示す2点鎖線で示すように、前方へ倒伏した倒伏位置に移動させることも可能である。
【0020】
[車両用シートロックの構成]
図2から
図3に示すように、車両用シートロック装置4は、シートバック3Bに固定されるベースプレート41を備える。ベースプレート41には、シートバック3Bの動作に伴ってストライカ5が進入及び退避するストライカ進入溝41aが設けられている。ストライカ進入溝41aは、前後方向に延在して後方が開口している。そして、シートバック3Bの起倒動作に伴って、ストライカ5の第1脚部51及び第2脚部52が後方からストライカ進入溝41aに進入及び退避可能であるとともに、ストライカ進入溝41aの内部を前後方向に移動可能となっている。
【0021】
車両用シートロック装置4は、第1ラッチ位置P1でストライカ5を保持可能、且つ、第1ラッチ位置P1よりも後方の第2ラッチ位置P2でストライカ5を保持可能である。
【0022】
ベースプレート41には、車幅方向内側、すなわち、右方向から見て、ストライカ進入溝41aと重ならない位置で、ストライカ進入溝41aの下方に左右方向を軸方向とする第1回動軸411が設けられている。ベースプレート41には、車幅方向内側、すなわち、右方向から見て、ストライカ進入溝41aと重ならない位置で、ストライカ進入溝41aよりも上方、且つ、第1回動軸411よりも後方に左右方向を軸方向とする第2回動軸412が設けられている。ベースプレート41には、車幅方向内側、すなわち、右方向から見て、ストライカ進入溝41aと重ならない位置で、ストライカ進入溝41aよりも上方、且つ、第1回動軸411よりも前方に左右方向を軸方向とする第3回動軸413が設けられている。
【0023】
これにより、車両用シートロック装置4の前後寸法を短くすることができるので、厚さが薄いシートバック3Bにも容易に取り付けることができる。
【0024】
第1回動軸411には、ラッチ42とウェッジ43とが支持されている。第2回動軸412には、リンクレバー44が軸支されている。第3回動軸413には、ラチェット45とカム46とが軸支されている。
【0025】
ラッチ42は、第1回動軸411に軸支され、第1回動軸411を軸に回動可能となっている。ラッチ42は、第1保持位置にあるときに、ストライカ5を第1ラッチ位置P1に保持し、第2保持位置にあるときに、ストライカ5を第2ラッチ位置P2に保持する。
【0026】
ラッチ42は、ラッチボディ部421と、第1回動軸411の軸方向から見てラッチボディ部421の外周縁から窪んだ凹形状を有し、ストライカ5が進入及び退避するラッチ溝422と、第1回動軸411の軸方向から見てラッチボディ部421の外周縁から窪んだ凹形状を有し、第1保持位置にあるときにラチェット45が係合する第1ラチェット係合溝423と、第1回動軸411の軸方向から見てラッチボディ部421の外周縁から窪んだ凹形状を有し、第2保持位置にあるときにラチェット45が係合する第2ラチェット係合溝424と、を備える。
【0027】
車幅方向内側、すなわち、右方向から見て、ラッチ42には、ラッチ溝422の時計回り方向側に第1ラチェット係合溝423が設けられており、ラッチ溝422の反時計回り方向側に第2ラチェット係合溝424が設けられている。
【0028】
ラッチボディ部421には、第1回動軸411が挿通する挿通孔421aが設けられている。挿通孔421aは、第1回動軸411が挿通可能且つ第1回動軸411と略同径の左右方向に貫通する丸穴である。
【0029】
ラッチボディ部421には、右方向に突出するスライドピン421bが設けられている。スライドピン421bは、第1回動軸411の軸方向から見て、第1回動軸411の軸心とスライドピン421bの中心とを結ぶ第1仮想線VL1方向(
図4参照)において、第1回動軸411の軸心とスライドピン421bの中心との間にラッチ溝422が位置するように設けられている。スライドピン421bは、ラッチボディ部421から略円柱状に右方向に突出している。
【0030】
ラッチ溝422は、ラッチボディ部421によって形成された、第1回動軸411の周方向におけるストライカ5の退避側、すなわち後方側で第1回動軸411の径方向に延在する第1ラッチ支持壁422aと、第1回動軸411の周方向におけるストライカ5の係合側、すなわち前方側で第1回動軸411の径方向に延在する第2ラッチ支持壁422bと、第1ラッチ支持壁422aにおける第1回動軸411の径方向の内側端部と第2ラッチ支持壁422bにおける第1回動軸411の径方向の内側端部とを接続するラッチ底壁部422cと、によって囲まれた空間となっている。
【0031】
ラッチボディ部421は、ラッチ42が第2保持位置にあるときに、ストライカ5に当接してストライカ5を第2ラッチ位置P2に保持するストライカ当接部421cと、ラッチ42が第1保持位置にあるときにカム46が当接する第1カム当接部421d1と、ラッチ42が第2保持位置にあるときにカム46が当接する第2カム当接部421d2と、を有する。
【0032】
ストライカ当接部421cは、第1回動軸411の周方向において、ラッチ溝422と第2ラチェット係合溝424との間のラッチボディ部421の外周縁に形成される。第1カム当接部421d1は、ラッチ溝422の第2ラッチ支持壁422bにおける第1回動軸411の径方向外側端部近傍に形成される。第2カム当接部421d2は、第1回動軸411の周方向において、車幅方向内側、すなわち、右方向から見て、第2ラチェット係合溝424よりも反時計回り方向側のラッチボディ部421の外周縁に形成される。
【0033】
ラッチ42は、ねじりコイルばね425によって、車幅方向内側、すなわち、右方向から見て、第1回動軸411の反時計回り方向に付勢されている。
【0034】
ウェッジ43は、ラッチ42の右側に配置され、第1回動軸411の軸方向に垂直な第1方向にスライド可能に軸支され、第1回動軸411を軸に回動可能となっている。第1方向は、車幅方向内側、すなわち、右方向から見て、ラッチ42のラッチ溝422の窪み方向に対して、時計回り方向に5度から30度程度傾斜した方向である。
【0035】
ウェッジ43は、ウェッジボディ部431と、第1回動軸411の軸方向から見てウェッジボディ部431の外周縁から窪んだ凹形状を有し、ストライカ5が進入及び退避するウェッジ溝432と、を有する。
【0036】
ラッチ42とウェッジ43とは、一体に回動し、ラッチボディ部421とウェッジボディ部431とは、第1回動軸411の軸方向から見て少なくとも一部が互いに重なる位置に配置されている。ラッチ溝422とウェッジ溝432とは、第1回動軸411の軸方向から見て少なくとも一部が互いに重なる位置に形成されている。
【0037】
これにより、車両用シートロック装置4の上下方向又は前後方向から見た寸法を小さくすることができ、車両用シートロック装置4を小型化できる。
【0038】
ウェッジボディ部431には、第1回動軸411の軸方向から見て第1方向を長手方向とする長孔形状を有し、第1回動軸411の軸方向に貫通する回動軸摺動孔431aが形成されている。回動軸摺動孔431aには、第1回動軸411が第1方向にスライド可能に挿通している。
【0039】
ウェッジボディ部431には、第1回動軸411の軸方向から見て第1方向を長手方向とする長孔形状を有し、第1回動軸411の軸方向に貫通するピン摺動孔431bが形成されている。ピン摺動孔431bには、ラッチ42に設けられたスライドピン421bが第1方向にスライド可能に挿通している。
【0040】
このようにして、ウェッジ43は、第1回動軸411及びラッチ42に対して第1方向にスライド可能に係合している。
【0041】
ウェッジ溝432は、ウェッジボディ部431によって形成された、第1回動軸411の周方向におけるストライカ5の退避側、すなわち後方側で第1回動軸411の径方向に延在する第1ウェッジ支持壁432aと、第1回動軸411の周方向におけるストライカ5の係合側、すなわち前方側で第1回動軸411の径方向に延在する第2ウェッジ支持壁432bと、第1ウェッジ支持壁432aにおける第1回動軸411の径方向の内側端部と第2ウェッジ支持壁432bにおける第1回動軸411の径方向の内側端部とを接続するウェッジ底壁部432cと、によって囲まれた空間となっている。
【0042】
第1ウェッジ支持壁432aにおける第1回動軸411の径方向の外側端部432dは、第1回動軸411の軸方向から見て、ラッチボディ部421と重なる位置に位置している。
【0043】
ウェッジ43は、第1方向に延在する圧縮コイルばね433によってラッチ42に対して第1方向に付勢されている。圧縮コイルばね433は、第1回動軸411を挟んでラッチ溝422及びウェッジ溝432の反対側に取り付けられている。第1回動軸411の径方向外側に位置する圧縮コイルばね433の一端部はラッチ42に当接し、第1回動軸411の径方向内側に位置する圧縮コイルばね433の他端部はウェッジ43に当接する。そして、ウェッジ43は、圧縮コイルばね433によって、ラッチ42に対して、第1方向のラッチ溝422が位置する側に付勢されている。
【0044】
リンクレバー44は、第2回動軸412に軸支され、第2回動軸412を軸に回動可能である。
【0045】
リンクレバー44は、第2回動軸412の径方向に延在するストライカ保持アーム441と、車幅方向内側、すなわち、右方向から見て、第2回動軸412を軸としてストライカ保持アーム441の反時計回り方向側に設けられ、第2回動軸412の径方向に延在するラッチ駆動アーム442と、を備える。
【0046】
ストライカ保持アーム441は、ストライカ5と当接可能であり、ストライカ5が第2ラッチ位置P2にあるときに、ラッチ42のストライカ当接部421cとともにストライカ5を挟持して、ストライカ5を第2ラッチ位置P2に保持する。
【0047】
リンクレバー44には、車幅方向内側、すなわち、右方向から見て、リンクレバー44を第2回動軸412の時計回り方向に付勢するねじりコイルばね443が係合している。
【0048】
ねじりコイルばね443は、第2回動軸412を取り囲んで巻回するコイル部443aと、コイル部443aから第2回動軸412の径方向外側に延出してベースプレート41に係止する第1脚部443b1と、コイル部443aから第2回動軸412の径方向外側に延出してリンクレバー44のラッチ駆動アーム442の先端部に係止される第2脚部443b2と、を備える。
【0049】
ラチェット45は、第3回動軸413に軸支され、第3回動軸413を軸に回動可能である。
【0050】
ラチェット45は、ラチェットボディ部451と、ラッチ42の第1ラチェット係合溝423及び第2ラチェット係合溝424に係合する係合アーム452と、を備える。
【0051】
ラチェットボディ部451は、第3回動軸413から後方に向かって、第3回動軸413の径方向外側に延出する。
【0052】
ラチェットボディ部451には、第3回動軸413が挿通する挿通孔451aが設けられている。挿通孔451aは、第3回動軸413が挿通可能且つ第3回動軸413と略同径の左右方向に貫通する丸穴である。
【0053】
ラチェットボディ部451には、第3回動軸413の周方向に延在し、第3回動軸413の軸方向に貫通するピン摺動孔451bが形成されている。
【0054】
係合アーム452は、ラチェットボディ部451から第3回動軸413の径方向外側に向かって延出しており、径方向外側端部には、ラッチ42に向かって周方向に突出する係合部452aが形成されている。したがって、係合アーム452は、第3回動軸413の軸方向から見て、係合部452aが円弧状に湾曲した略L字状となっている。
【0055】
ラチェット45は、係合アーム452の係合部452aが第1ラチェット係合溝423に係合することによって、ラッチ42を第1保持位置に保持可能であるとともに、係合アーム452の係合部452aがラッチ42の第2ラチェット係合溝424に係合することによって、ラッチ42を第2保持位置に保持可能である。
【0056】
ラチェット45は、ねじりコイルばね453によって、車幅方向内側、すなわち、右方向から見て、第3回動軸413の時計回り方向に付勢されている。
【0057】
カム46は、ラチェット45の右側に配置されて第3回動軸413に軸支され、第3回動軸413を軸に回動可能である。
【0058】
カム46は、カムボディ部461を有する。カムボディ部461は、第3回動軸413から後方に向かって、第3回動軸413の径方向外側に延出する。
【0059】
カムボディ部461には、第3回動軸413が挿通する挿通孔461aが設けられている。挿通孔461aは、第3回動軸413が挿通可能且つ第3回動軸413と略同径の左右方向に貫通する丸穴である。
【0060】
カムボディ部461には、第3回動軸413の軸方向から見て、少なくとも一部がラチェット45のピン摺動孔451bと重なる位置に、第3回動軸413の周方向に延在して第3回動軸413の軸方向に貫通するピン摺動孔461bが形成されている。
【0061】
カムボディ部461は、ラッチ42が第1保持位置にあるときに、ラッチ42の第1カム当接部421d1に当接する。カムボディ部461は、ラッチ42が第2保持位置にあるときに、ラッチ42の第2カム当接部421d2に当接する。
【0062】
カム46は、ねじりコイルばね462によって、車幅方向内側、すなわち、右方向から見て、第3回動軸413の時計回り方向に付勢されている。
【0063】
第3回動軸413には、さらに、解除レバー47が、カム46の右側に第3回動軸413を軸に回動可能に軸支されている。解除レバー47は、第3回動軸413から前方斜め上方に向かって、第3回動軸413の径方向外側に延出する。
【0064】
解除レバー47は、少なくとも一部がラチェット45のピン摺動孔451b及びカム46のピン摺動孔461bと重なるようにして、第3回動軸413から第3回動軸413の径方向外側に延在している。
【0065】
解除レバー47には、左方向に突出するスライドピン47aが設けられている。スライドピン47aは、略円柱状に左方向に突出しており、ラチェット45のピン摺動孔451bとカム46のピン摺動孔461bとを挿通している。
【0066】
解除レバー47には、第3回動軸413の径方向先端近傍に、右方向に突出する係合ピン47bが設けられている。係合ピン47bは、略円柱状に右方向に突出している。
【0067】
解除レバー47は、引張コイルばね471によって、車幅方向内側、すなわち、右方向から見て、第3回動軸413の時計回り方向に付勢されている。
【0068】
解除レバー47の係合ピン47bには、操作部材6の駆動レバー61が係合している。
【0069】
[操作部材の構成]
本実施形態では、操作部材6は、ベースプレート41の上部に取り付けられており、駆動レバー61は、上下方向に延在している。
【0070】
駆動レバー61は、操作部材6が乗員等によって操作されると、車幅方向内側、すなわち、右方向から見て、時計回り方向に回動する。
【0071】
駆動レバー61には、上下方向に延在して左右方向に貫通する係合孔61aが形成されている。係合孔61aには、解除レバー47の係合ピン47bが挿通しており、これにより、解除レバー47の係合ピン47bが駆動レバー61に係合している。
【0072】
[車両用シートロック装置の動作]
続いて、
図4から
図11を参照して、車両用シートロック装置4Aの動作について説明する。車両用シートロック装置4Aは、車両に設けられたリヤシート2の右側面に取り付けられるものであり、左右方向に垂直な面を対称面として、車両用シートロック装置4と鏡像関係(対称)となる形状及び構造となっている。車両用シートロック装置4Aの構成要素については、車両用シートロック装置4の対応する構成要素と同一の符号を付して説明を省略又は簡略化する。
【0073】
(アンラッチ位置)
図4に示すように、シートバック3Bが第1位置及び第2位置以外の位置にあって、ストライカ5がベースプレート41のストライカ進入溝41aに進入していない場合、ラッチ42は、アンラッチ位置に停止している。ラッチ42がアンラッチ位置にあるとき、車幅方向内側、すなわち、左方向から見て、ラッチ溝422の第2ラッチ支持壁422bの少なくとも一部がストライカ進入溝41aに位置している。さらに、ラッチ42がアンラッチ位置にあるとき、ウェッジ43は、第1回動軸411の周方向において、ウェッジ溝432の第1ウェッジ支持壁432aがラッチ溝422の第1ラッチ支持壁422aよりもラッチ溝422の第2ラッチ支持壁422bに近い位置、すなわち、第1回動軸411の軸方向から見て、ウェッジ溝432の第1ウェッジ支持壁432aがラッチ溝422の内部に位置するように配置されている。
【0074】
(アンラッチ位置から第1保持位置への遷移)
図5に示すように、シートバック3Bを起立させると、それに伴ってストライカ5の第1脚部51が後方からストライカ進入溝41aに進入する。そして、ストライカ5の第1脚部51は、後方からラッチ溝422の第2ラッチ支持壁422bに当接して、ねじりコイルばね425の付勢力に抗って、車幅方向内側、すなわち、左方向から見て、反時計回り方向にラッチ42を回動させる。さらに、ラッチ42の回動とともに、ウェッジ43も車幅方向内側、すなわち、左方向から見て、反時計回り方向に回動する。
【0075】
第1脚部51がストライカ進入溝41aにさらに前方へ進入すると、ラッチ42及びウェッジ43の回動とともに、第1脚部51は、ラッチ溝422の第1ラッチ支持壁422a及びウェッジ溝432の第1ウェッジ支持壁432aよりも第1回動軸411の径方向内側に進入する。
【0076】
このとき、第1ウェッジ支持壁432aの径方向の外側端部432dは、第1回動軸411の軸方向から見て、ラッチボディ部421と重なる位置に位置しているので、第1脚部51が、ラッチ溝422の第1ラッチ支持壁422a及びウェッジ溝432の第1ウェッジ支持壁432aよりも第1回動軸411の径方向内側に進入する際に、第1ウェッジ支持壁432aの径方向の外側端部432dに引っ掛かることを防止できる。
【0077】
また、第1ウェッジ支持壁432aは、第1ラッチ支持壁422aよりもラッチ溝422の第2ラッチ支持壁422bに近い位置、すなわち、第1回動軸411の軸方向から見てラッチ溝422の内部に位置しているので、第1脚部51は、第1ウェッジ支持壁432aに当接する。そして、第1脚部51が当接した第1ウェッジ支持壁432aは、第1脚部51を第2ラッチ支持壁422bに近づく方向に押圧するとともに、第1脚部51が当接したウェッジ43は、第1脚部51によって押圧されて、第1ウェッジ支持壁432aが第1回動軸411の周方向において第1ラッチ支持壁422aに近づくように第1方向にスライドする。
【0078】
このように、ウェッジ43は、ストライカ5によって第1ウェッジ支持壁432aを押圧されることによって、ストライカ5がストライカ進入溝41aのより前方に進入して、第1ラッチ位置P1に近づくほど、第1ウェッジ支持壁432aが第1回動軸411の周方向において第1ラッチ支持壁422aに近づくように第1方向にスライドする。このようにウェッジを第1方向にスライドすることで、第1ウェッジ支持壁432aが第1回動軸411の周方向において第1ラッチ支持壁422aに近づかないように第1方向にスライドさせるよりもスライド量を低減することができるため、第1ウェッジ支持壁432aの径方向の外側端部432dは、第1回動軸411の軸方向から見て、ラッチボディ部421と重なる位置に位置させることができる。
【0079】
このとき、前述したように、スライドピン421bは、第1回動軸411の軸方向から見て、第1回動軸411の軸心とスライドピン421bの中心とを結ぶ第1仮想線VL1方向(
図4参照)において、第1回動軸411の軸心とスライドピン421bの中心との間にラッチ溝422が位置するように設けられているので、ラッチ42のラッチ溝422に対して、ウェッジ43を精度よく第1方向にスライドさせることができるとともに、ストライカ5の第1脚部51がラッチ42のラッチ溝422及びウェッジ43のウェッジ溝432に噛み合いさせる時に邪魔にならないため、容易にウェッジ43を設けることができる。
【0080】
(第1保持位置)
ストライカ5が第1ラッチ位置P1に近づくと、ラッチ42の外周縁に当接していたカム46が、ラッチ42の回動によってラッチ溝422に落ち込むように左方向から見て反時計回り方向に回動してラッチ42の第1カム当接部421d1に当接し、ラッチ42を左方向から見て反時計回り方向に押圧する。続いて、係合部452aがラッチ42の外周縁に当接していたラチェット45が、ラッチ42の回動によって第1ラチェット係合溝423に落ち込むように左方向から見て反時計回り方向に回動して、係合部452aがラッチ42の第1ラチェット係合溝423に係合する。
【0081】
そして、ラッチ42は、第1保持位置に保持され、ストライカ5をラッチ溝422に係合した状態で第1ラッチ位置P1に保持する。これにより、シートバック3Bは、第1位置に保持される。このとき、ラッチ42は、カム46によって左方向から見て反時計回り方向に押圧されているので、ラッチ42がガタつくことを防止できる。さらに、ストライカ5は、ウェッジ43の第1ウェッジ支持壁432aに当接しており、ウェッジ43によって左方向から見て反時計回り方向に押圧されている。これにより、ストライカ5は、ラッチ溝422の第2ラッチ支持壁422bに押圧されて、第1ラッチ位置P1に保持されるので、第1ラッチ位置P1でガタつくことを防止できる。
【0082】
さらに、ウェッジ43は、ストライカ5が第1ラッチ位置P1でガタつくことを小さな移動量で防止することができるので、車両用シートロック装置4Aの小型化を図ることができる。
【0083】
また、圧縮コイルばね433は収縮されるので、ウェッジ43は、圧縮コイルばね433の付勢力によって、第1ウェッジ支持壁432aに当接する第1脚部51を、ラッチ溝422及びウェッジ溝432から第1回動軸の径方向外側に押し出す方向に付勢する。
【0084】
(第1保持位置から第2保持位置への遷移)
図7に示すように、ラッチ42が第1保持位置にあるときに、乗員等が操作部材6を操作すると、駆動レバー61が左方向から見て反時計回りに回動する。駆動レバー61が左方向から見て反時計回りに回動すると、係合ピン47bが駆動レバー61の係合孔61aに係合している解除レバー47は、左方向から見て時計回りに回動する。解除レバー47が左方向から見て時計回りに回動すると、スライドピン47aがピン摺動孔451bに挿通しているラチェット45、及び、スライドピン47aがピン摺動孔461bに挿通しているカム46は、いずれも左方向から見て時計回りに回動する。
【0085】
ラチェット45が左方向から見て時計回りに回動すると、ラチェット45の係合部452aがラッチ42の第1ラチェット係合溝423から外れる。また、カム46が左方向から見て時計回りに回動すると、カム46がラッチ42の第1カム当接部421d1から離れる。これにより、ラッチ42は、第1保持位置での保持状態が解除され、回動可能な状態となる。したがって、シートバック3Bは、第1位置から第2位置又は前方へ倒伏した倒伏位置へとリクライニング可能な状態となる。
【0086】
この状態でシートバック3Bを第1位置から第2位置に向かってリクライニングさせると、ストライカ5の第1脚部51は、ラッチ溝422の第2ラッチ支持壁422bを左方向から見て反時計回り方向に押圧して、ラッチ42を左方向から見て反時計回り方向に回動させながら、ストライカ進入溝41aをさらに前方へ進入する。
【0087】
このとき、ウェッジ43は、圧縮コイルばね433の付勢力によって、第1ウェッジ支持壁432aに当接する第1脚部51を、ラッチ溝422及びウェッジ溝432から第1回動軸の径方向外側に押し出す方向に付勢しているので、ラッチ溝422に係合した状態で第1ラッチ位置P1に保持されていたストライカ5を、ラッチ溝422から抜けやすくすることができ、操作性に優れる。
【0088】
図8に示すように、第1脚部51は、ストライカ進入溝41aをさらに前方へ進入すると、リンクレバー44のストライカ保持アーム441に当接する。そして、第1脚部51は、ストライカ保持アーム441を左方向から見て時計回り方向に押圧し、ねじりコイルばね443の付勢力に抗ってリンクレバー44を左方向から見て反時計回り方向に回動させながら、ストライカ進入溝41aをさらに前方へ進入する。
【0089】
図9に示すように、第1脚部51がストライカ進入溝41aをさらに前方へ進入すると、リンクレバー44が左方向から見て時計回り方向に回動し、ねじりコイルばね443の第2脚部443b2が、ラッチ42のスライドピン421bに当接する。そして、ねじりコイルばね443は、ラッチ42のスライドピン421bを左方向から見て反時計回り方向に押圧し、ラッチ42を左方向から見て反時計回り方向に弾性的に回動させる。ラッチ42が左方向から見て反時計回り方向にさらに回動すると、第1脚部51がラッチ溝422から退避し、ラッチ42が左方向から見て反時計回り方向にさらに回動すると、ラッチ42のストライカ当接部421cが第1脚部51に当接する(
図10参照)。そして、リンクレバー44のストライカ保持アーム441とラッチ42のストライカ当接部421cとによって、第1脚部51を挟持する。
【0090】
このように、ねじりコイルばね443が、ラッチ42のスライドピン421bに当接し、ラッチ42を左方向から見て反時計回り方向に弾性的に回動させることによって、リンクレバー44の耐久性を向上させることができる。
【0091】
図10に示すように、第1脚部51がストライカ進入溝41aをさらに前方へ進入し、ラッチ42が第2保持位置まで左方向から見て反時計回り方向に回動すると、ラッチ42の外周縁に当接していたカム46が、ラッチ42の回動によって左方向から見て反時計回り方向に回動してラッチ42の第2カム当接部421d2に当接し、ラッチ42を左方向から見て反時計回り方向に押圧する。これにより、ラッチ42は、左方向から見て第2保持位置を超える位置まで時計回り方向に回動する。このようにラッチ42が、左方向から見て第2保持位置を超える位置まで反時計回り方向に回動した時においても、前述のように、ねじりコイルばね443が、ラッチ42のスライドピン421bに当接し、ラッチ42を左方向から見て反時計回り方向に弾性的に回動させることによって、リンクレバー44の耐久性を向上させることができるとともに、リンクレバー44のストライカ保持アーム441にクッション部を大きく設けずに済むため、車両用シートロック装置4Aの前後寸法を短くすることができるので、厚さが薄いシートバック3Bにも容易に取り付けることができる。
【0092】
同時に、係合部452aがラッチ42の外周縁に当接していたラチェット45が、ラッチ42の回動によって第2ラチェット係合溝424に落ち込むように左方向から見て反時計回り方向に回動して、係合部452aがラッチ42の第2ラチェット係合溝424に係合する。
【0093】
(第2ラッチ位置)
図11に示すように、その後、ラッチ42は、ラッチ42を付勢するねじりコイルばね425の付勢力と、リンクレバー44を付勢するねじりコイルばね443の付勢力との釣り合いによってわずかに揺り戻しされ、第2保持位置に保持される。この状態において、カム46は、ラッチ42の第2カム当接部421d2に当接して、左方向から見て反時計回り方向に向かってラッチ42を前方向に押圧する。このようにして、リンクレバー44のストライカ保持アーム441とラッチ42のストライカ当接部421cとで第1脚部51を挟持して、ストライカ5を第2ラッチ位置P2に保持する。
【0094】
このように、ラッチ42を左方向から見て第2保持位置を超える位置まで反時計回り方向に回動させ、カム46がラッチ42の第2カム当接部421d2に当接した状態でリンクレバー44のストライカ保持アーム441とラッチ42のストライカ当接部421cとで第1脚部51を挟持して、ストライカ5を第2ラッチ位置P2に保持することによって、ストライカ5が第2ラッチ位置P2でガタつくことを防止できる。また、リンクレバー44のストライカ保持アーム441とラッチ42のストライカ当接部421cとで第1脚部51を挟持して、ストライカ5を第2ラッチ位置P2に保持するので、車両用シートロック装置4Aの動作時に第1脚部51の引っ掛かり等が生じにくく、操作性に優れる。
【0095】
図示は省略するが、ラッチ42が第2保持位置にあるときに、乗員等が操作部材6を操作すると、駆動レバー61が左方向から見て反時計回りに回動する。駆動レバー61が左方向から見て反時計回りに回動すると、係合ピン47bが駆動レバー61の係合孔61aに係合している解除レバー47は、左方向から見て反時計回りに回動する。解除レバー47が左方向から見て反時計回りに回動すると、スライドピン47aがピン摺動孔451bに挿通しているラチェット45、及び、スライドピン47aがピン摺動孔461bに挿通しているカム46は、いずれも左方向から見て時計回りに回動する。
【0096】
ラチェット45が左方向から見て時計回りに回動すると、ラチェット45の係合部452aがラッチ42の第2ラチェット係合溝424から外れる。また、カム46が左方向から見て時計回りに回動すると、カム46がラッチ42の第2カム当接部421d2から離れる。これにより、ラッチ42は、第2保持位置での保持状態が解除され、回動可能な状態となる。したがって、シートバック3Bは、第2位置から第1位置又は前方へ倒伏した倒伏位置へとリクライニング可能な状態となる。
【0097】
[リンクレバーの変形例]
ここで、車両用シートロック装置4Aにおけるリンクレバー44の変形例について
図12を参照して説明する。なお、以下の説明において、前述したリンクレバー44と同一の構成要素については同一の符号を付して説明を省略又は簡略化する。
【0098】
本変形例において、ラッチ駆動アーム442は、ラッチ42及びウェッジ43の少なくとも一方と当接可能である。本変形例では、ラッチ駆動アーム442は、ラッチ42のスライドピン421bと当接可能である。
【0099】
ラッチ駆動アーム442は、第2回動軸412の径方向に延在して、ラッチ42のスライドピン421bと当接可能な第1アーム部442aと、車幅方向内側、すなわち、左方向から見て、第2回動軸412の周方向時計回り側で第1アーム部442aと対向して第2回動軸412の径方向に延在する第2アーム部442bと、第1アーム部442aと第2アーム部442bとの間で、第2回動軸412の径方向に延在するスリット空間部442cと、を有する。
【0100】
そして、ラッチ42が第1ラッチ位置から第2ラッチ位置へと遷移する際、前述した実施形態では、第1脚部51がストライカ進入溝41aをさらに前方へ進入すると、リンクレバー44が左方向から見て時計回り方向に回動し、ねじりコイルばね443の第2脚部443b2が、ラッチ42のスライドピン421bに当接したが、本変形例では、第1脚部51がストライカ進入溝41aをさらに前方へ進入すると、リンクレバー44が左方向から見て時計回り方向に回動し、第1アーム部442aがラッチ42のスライドピン421bに当接する。
【0101】
そして、第1アーム部442aは、第2アーム部442bに近づく方向に第2回動軸412の周方向に弾性変形しながら、ラッチ42のスライドピン421bを左方向から見て反時計回り方向に押圧し、ラッチ42を左方向から見て反時計回り方向に弾性的に回動させる。
【0102】
このように、第1アーム部442aが弾性変形しながらラッチ42のスライドピン421bに当接し、ラッチ42を左方向から見て反時計回り方向に弾性的に回動させることによって、リンクレバー44の耐久性を向上させることができる。
【0103】
また、第1アーム部442aは、第2アーム部442bに近づく方向に第2回動軸412の周方向に所定量以上弾性変形すると、第2アーム部442bに当接するので、第1アーム部442aが座屈することを防止できる。
【0104】
以上、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0105】
例えば、本実施形態では、車両用シートロック装置4、4Aがリヤシート2に取り付けられており、ストライカ5が車体に取り付けられているものとしたが、車両用シートロック装置4、4Aが車体に取り付けられており、ストライカ5がリヤシート2に取り付けられていてもよい。
【0106】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を一例として示しているが、これに限定されるものではない。
【0107】
(1) 車体及びシートバック(シートバック3B)の一方に取り付けられ、前記車体及び前記シートバックの他方に取り付けられたストライカ(ストライカ5)と係合可能な車両用シートロック装置(車両用シートロック装置4、4A)であって、
前記車両用シートロック装置は、
第1ラッチ位置(第1ラッチ位置P1)で前記ストライカを保持可能、且つ、前記第1ラッチ位置とは異なる第2ラッチ位置(第2ラッチ位置P2)で前記ストライカと保持可能であり、
前記シートバックの動作に伴って前記ストライカが進入及び退避するストライカ進入溝(ストライカ進入溝41a)が設けられたベースプレート(ベースプレート41)と、
前記ベースプレートに設けられた第1回動軸(第1回動軸411)と、
前記第1回動軸に軸支され、前記第1回動軸を軸に回動可能なラッチ(ラッチ42)と、
前記第1回動軸の軸方向に垂直な第1方向にスライド可能に前記第1回動軸に軸支され、前記第1回動軸を軸に回動可能なウェッジ(ウェッジ43)と、を備え、
前記ラッチは、
ラッチボディ部(ラッチボディ部421)と、前記軸方向から見て前記ラッチボディ部の外周縁から窪んだ凹形状を有し、前記ストライカが進入及び退避するラッチ溝(ラッチ溝422)と、を有し、
第1保持位置にあるときに、前記ストライカを前記ラッチ溝に係合した状態で前記第1ラッチ位置に保持し、
第2保持位置にあるときに、前記ストライカを前記第2ラッチ位置に保持し、
前記ウェッジは、
ウェッジボディ部(ウェッジボディ部431)と、前記軸方向から見て前記ウェッジボディ部の外周縁から窪んだ凹形状を有し、前記ストライカが進入及び退避するウェッジ溝(ウェッジ溝432)と、を有し、
前記ラッチと前記ウェッジとは、一体に回動し、
前記ラッチボディ部と前記ウェッジボディ部とは、前記軸方向から見て少なくとも一部が互いに重なる位置に配置され、
前記ラッチ溝と前記ウェッジ溝とは、前記軸方向から見て少なくとも一部が互いに重なる位置に形成されており、
前記ラッチ溝は、前記ラッチボディ部によって形成された、前記第1回動軸の周方向における前記ストライカの退避側で前記第1回動軸の径方向に延在する第1ラッチ支持壁(第1ラッチ支持壁422a)と、前記周方向における前記ストライカの係合側で前記径方向に延在する第2ラッチ支持壁(第2ラッチ支持壁422b)と、前記第1ラッチ支持壁の前記径方向の内側端部と前記第2ラッチ支持壁の前記径方向の内側端部とを接続するラッチ底壁部(ラッチ底壁部422c)と、によって囲まれた空間であり、
前記ウェッジ溝は、前記ウェッジボディ部によって形成された、前記周方向における前記ストライカの退避側で前記径方向に延在する第1ウェッジ支持壁(第1ウェッジ支持壁432a)と、前記周方向における前記ストライカの係合側で前記径方向に延在する第2ウェッジ支持壁(第2ウェッジ支持壁432b)と、前記第1ウェッジ支持壁の前記径方向の内側端部と前記第2ウェッジ支持壁の前記径方向の内側端部とを接続するウェッジ底壁部(ウェッジ底壁部432c)と、によって囲まれた空間であり、
前記第1ウェッジ支持壁の前記径方向の外側端部(外側端部432d)は、前記軸方向から見て、前記ラッチボディ部と重なる位置に位置し、
前記ウェッジは、前記ストライカの前記ウェッジ溝への進退に伴って前記第1方向にスライドし、前記ストライカが前記第1ラッチ位置に近づくほど、前記第1ウェッジ支持壁が前記周方向において前記第1ラッチ支持壁に近づくように前記第1方向にスライドする、
車両用シートロック装置。
【0108】
(1)によれば、ラッチボディ部とウェッジボディ部とは、軸方向から見て少なくとも一部が互いに重なる位置に配置されているので、車両用シートロック装置を小型化できる。
また、第1ウェッジ支持壁の径方向の外側端部が、第1回動軸の軸方向から見て、ラッチボディ部と重なる位置に位置しているので、ストライカがラッチ溝及びウェッジ溝に進入する際に、第1ウェッジ支持壁の径方向の外側端部に引っ掛かることを防止できる。
また、ストライカがラッチ溝に係合された状態で第1ラッチ位置に保持されているとき、ストライカは、ウェッジに押圧されて第1ウェッジ支持壁に当接しているので、ラッチ溝の第2ラッチ支持壁に押圧されて、第1ラッチ位置に保持されるので、第1ラッチ位置でガタつくことを防止できる。加えて、ウェッジは、ストライカが第1ラッチ位置でガタつくことを小さな移動量で防止することができるので、車両用シートロック装置の小型化を図ることができる。
さらに、ウェッジは、第1ウェッジ支持壁に当接するストライカを、ラッチ溝及びウェッジ溝から第1回動軸の径方向外側に押し出す方向に付勢することができるので、ラッチ溝に係合した状態で第1ラッチ位置に保持されていたストライカを、ラッチ溝から抜けやすくすることができ、操作性に優れる。
【0109】
(2) 車体及びシートバック(シートバック3B)の一方に取り付けられ、前記車体及び前記シートバックの他方に取り付けられたストライカ(ストライカ5)と係合可能な車両用シートロック装置(車両用シートロック装置4、4A)であって、
前記車両用シートロック装置は、
第1ラッチ位置(第1ラッチ位置P1)で前記ストライカを保持可能、且つ、前記第1ラッチ位置とは異なる第2ラッチ位置(第2ラッチ位置P2)で前記ストライカと保持可能であり、
前記シートバックの動作に伴って前記ストライカが進入及び退避するストライカ進入溝(ストライカ進入溝41a)が設けられたベースプレート(ベースプレート41)と、
前記ベースプレートに設けられた第1回動軸(第1回動軸411)と、
前記第1回動軸に軸支され、前記第1回動軸を軸に回動可能なラッチ(ラッチ42)と、
前記ベースプレートに設けられ、前記第1回動軸と平行に延在する第2回動軸(第2回動軸412)と、
前記第2回動軸に軸支され、前記第2回動軸を軸に回動可能なリンクレバー(リンクレバー44)と、
前記ベースプレートに設けられ、前記第1回動軸及び前記第2回動軸と平行に延在する第3回動軸(第3回動軸413)と、
前記第3回動軸に軸支され、前記第3回動軸を軸に回動可能なラチェット(ラチェット45)及びカム(カム46)と、を備え、
前記ラッチは、
ラッチボディ部(ラッチボディ部421)と、
前記軸方向から見て前記ラッチボディ部の外周縁から窪んだ凹形状を有し、前記ストライカが進入及び退避するラッチ溝(ラッチ溝422)と、
前記軸方向から見て前記ラッチボディ部の外周縁から窪んだ凹形状を有し、第1保持位置にあるときに前記ラチェットが係合する第1ラチェット係合溝(第1ラチェット係合溝423)と、
前記軸方向から見て前記ラッチボディ部の外周縁から窪んだ凹形状を有し、第2保持位置にあるときに前記ラチェットが係合する第2ラチェット係合溝(第2ラチェット係合溝424)と、を備え、
前記第1保持位置にあるときに、前記ストライカを前記ラッチ溝に係合した状態で前記第1ラッチ位置に保持し、
前記第2保持位置にあるときに、前記ストライカを前記第2ラッチ位置に保持し、
前記ラッチボディ部は、
前記ラッチが前記第2保持位置にあるときに、前記ストライカに当接して前記ストライカを前記第2ラッチ位置に保持するストライカ当接部(ストライカ当接部421c)と、
前記ラッチが前記第1保持位置から前記第2保持位置に向かって第2方向に回動することによって前記カムが当接するカム当接部(第2カム当接部421d2)と、を有し、
前記リンクレバーは、
前記第2回動軸の径方向に延在し、前記ストライカと当接可能であり、前記ストライカが前記第2ラッチ位置にあるときに、前記ラッチの前記ストライカ当接部とともに前記ストライカを挟持して、前記ストライカを前記第2ラッチ位置に保持するストライカ保持アーム(ストライカ保持アーム441)を備え、
前記ラチェットは、
前記ラッチの前記第1ラチェット係合溝に係合して、前記ラッチを前記第1保持位置に保持可能であるとともに、前記ラッチの前記第2ラチェット係合溝に係合して、前記ラッチを前記第2保持位置に保持可能であり、
前記カムは、
前記ラッチの前記カム当接部に当接して、前記第2保持位置を超える位置まで前記ラッチを前記第2方向に回動可能で、前記第2保持位置を超える方向に向かって前記ラッチを前記第2方向に押圧可能であり、
前記車両用シートロック装置は、
前記ストライカが前記リンクレバーの前記ストライカ保持アームに当接することで、前記リンクレバーが前記第2回動軸を軸に回動し、
前記ストライカが前記ストライカ保持アームに当接して前記リンクレバーが前記第2回動軸を軸に回動することで、前記ラッチを前記第2保持位置に向かって前記第2方向に回動させ、
前記ラッチが前記第2方向に回動することで、前記カムが前記ラッチの前記カム当接部に当接して、前記第2保持位置を超える位置まで前記ラッチを前記第2方向に回動させた後、前記ラッチを前記第2保持位置で前記第2方向に押圧し、
前記リンクレバーの前記ストライカ保持アームと前記ラッチの前記ストライカ当接部とで前記ストライカを挟持して、前記ストライカを前記第2ラッチ位置に保持する、
車両用シートロック装置。
【0110】
(2)によれば、第2保持位置を超える位置までラッチを回動させ、カムがラッチのカム当接部に当接した状態でリンクレバーのストライカ保持アームとラッチのストライカ当接部とでストライカを挟持して、ストライカを第2ラッチ位置に保持することによって、ストライカが第2ラッチ位置でガタつくことを防止できる。また、リンクレバーのストライカ保持アームとラッチのストライカ当接部とでストライカを挟持して、ストライカを第2ラッチ位置に保持するので、車両用シートロック装置の動作時にストライカの引っ掛かり等が生じにくく、操作性に優れる。
【0111】
(3) (1)に記載の車両用シートロック装置であって、
前記ラッチボディ部には、前記軸方向において前記ウェッジが配置されている側に突出するスライドピン(スライドピン421b)が設けられており、
前記ウェッジボディ部には、前記軸方向から見て前記第1方向を長手方向とする長孔形状を有し、前記軸方向に貫通するピン摺動孔(ピン摺動孔431b)が形成されており、
前記スライドピンは、前記第1方向にスライド可能に前記ピン摺動孔を挿通しており、
前記軸方向から見て、前記第1回動軸の軸心と前記スライドピンの中心とを結ぶ第3方向において、前記ラッチ溝は、前記第1回動軸の軸心と前記スライドピンの中心との間に設けられている、
車両用シートロック装置。
【0112】
(3)によれば、スライドピンは、軸方向から見て、第1回動軸の軸心とスライドピンの中心とを結ぶ第3方向において、第1回動軸の軸心とスライドピンの中心との間にラッチ溝が位置するように設けられているので、ラッチのラッチ溝に対して、ウェッジを精度よく第1方向にスライドさせることができるとともに、ストライカがラッチのラッチ溝及びウェッジのウェッジ溝に噛み合いさせる時に邪魔にならないため、容易にウェッジを設けることができる。
【0113】
(4) (2)に記載の車両用シートロック装置であって、
前記リンクレバーは、前記第2回動軸の径方向に延在し、前記ラッチと当接可能なラッチ駆動アーム(ラッチ駆動アーム442)を備え、
前記ラッチ駆動アームは、
前記第2回動軸の径方向に延在し、前記ラッチと当接可能な第1アーム部(第1アーム部442a)と、
前記第1アーム部と前記第2回動軸の周方向で対向して前記第2回動軸の径方向に延在する第2アーム部(第2アーム部442b)と、
前記第1アーム部と前記第2アーム部との間で、前記第2回動軸の径方向に延在するスリット空間部(スリット空間部442c)と、を有する、
車両用シートロック装置。
【0114】
(4)によれば、第1アーム部が弾性変形しながらラッチのスライドピンに当接し、ラッチを弾性的に回動させることが可能となり、リンクレバーの耐久性を向上させることができる。
【0115】
(5) (2)に記載の車両用シートロック装置であって、
前記リンクレバーには、前記リンクレバーを前記第2方向と反対方向に付勢するねじりコイルばね(ねじりコイルばね443)が係合しており、
前記ねじりコイルばねは、
前記第2回動軸を取り囲んで巻回するコイル部(コイル部443a)と、
前記コイル部から前記第2回動軸の径方向外側に延出して前記ベースプレートに係止される第1脚部(第1脚部443b1)と、
前記コイル部から前記第2回動軸の径方向外側に延出して前記リンクレバーに係止される第2脚部(第2脚部443b2)と、を備え、
前記ストライカが前記ストライカ保持アームに当接して前記リンクレバーが前記第2回動軸を軸に回動し、前記ラッチを前記第2保持位置に向かって前記第2方向に回動させる際に、前記第2脚部が前記ラッチと当接して前記ラッチを弾性的に前記第2保持位置に向かって前記第2方向に回動させるように配置されている、
車両用シートロック装置。
【0116】
(5)によれば、ねじりコイルばねが、ラッチのスライドピンに当接し、ラッチを弾性的に回動させることによって、リンクレバーの耐久性を向上させることができる。
【0117】
(6) 車体及びシートバック(シートバック3B)の一方に取り付けられ、前記車体及び前記シートバックの他方に取り付けられたストライカ(ストライカ5)と係合可能な車両用シートロック装置(車両用シートロック装置4、4A)であって、
前記車両用シートロック装置は、
第1ラッチ位置(第1ラッチ位置P1)で前記ストライカを保持可能、且つ、前記第1ラッチ位置とは異なる第2ラッチ位置(第2ラッチ位置P2)で前記ストライカと保持可能であり、
前記シートバックの動作に伴って前記ストライカが進入及び退避するストライカ進入溝(ストライカ進入溝41a)が設けられたベースプレート(ベースプレート41)と、
前記ベースプレートに設けられた第1回動軸(第1回動軸411)と、
前記第1回動軸に軸支され、前記第1回動軸を軸に回動可能なラッチ(ラッチ42)と、
前記第1回動軸の軸方向に垂直な第1方向にスライド可能に前記第1回動軸に軸支され、前記第1回動軸を軸に回動可能なウェッジ(ウェッジ43)と、
前記ベースプレートに設けられ、前記第1回動軸と平行に延在する第2回動軸(第2回動軸412)と、
前記第2回動軸に軸支され、前記第2回動軸を軸に回動可能なリンクレバー(リンクレバー44)と、
前記ベースプレートに設けられ、前記第1回動軸及び前記第2回動軸と平行に延在する第3回動軸(第3回動軸413)と、
前記第3回動軸に軸支され、前記第3回動軸を軸に回動可能なラチェット(ラチェット45)及びカム(カム46)と、を備え、
前記ラッチは、
ラッチボディ部(ラッチボディ部421)と、
前記軸方向から見て前記ラッチボディ部の外周縁から窪んだ凹形状を有し、前記ストライカが進入及び退避するラッチ溝(ラッチ溝422)と、
前記軸方向から見て前記ラッチボディ部の外周縁から窪んだ凹形状を有し、第1保持位置にあるときに前記ラチェットが係合する第1ラチェット係合溝(第1ラチェット係合溝423)と、
前記軸方向から見て前記ラッチボディ部の外周縁から窪んだ凹形状を有し、第2保持位置にあるときに前記ラチェットが係合する第2ラチェット係合溝(第2ラチェット係合溝424)と、を備え、
前記第1保持位置にあるときに、前記ストライカを前記ラッチ溝に係合した状態で前記第1ラッチ位置に保持し、
前記第2保持位置にあるときに、前記ストライカを前記第2ラッチ位置に保持し、
前記ラッチボディ部は、
前記ラッチが前記第2保持位置にあるときに、前記ストライカに当接して前記ストライカを前記第2ラッチ位置に保持するストライカ当接部(ストライカ当接部421c)と、
前記ラッチが前記第1保持位置から前記第2保持位置に向かって第2方向に回動することによって前記カムが当接するカム当接部(第2カム当接部421d2)と、を有し、
前記ウェッジは、
ウェッジボディ部(ウェッジボディ部431)と、前記軸方向から見て前記ウェッジボディ部の外周縁から窪んだ凹形状を有し、前記ストライカが進入及び退避するウェッジ溝(ウェッジ溝432)と、を有し、
前記ラッチと前記ウェッジとは、一体に回動し、
前記ラッチボディ部と前記ウェッジボディ部とは、前記軸方向から見て少なくとも一部が互いに重なる位置に配置され、
前記ラッチ溝と前記ウェッジ溝とは、前記軸方向から見て少なくとも一部が互いに重なる位置に形成されており、
前記ラッチ溝は、前記ラッチボディ部によって形成された、前記第1回動軸の周方向における前記ストライカの退避側で前記第1回動軸の径方向に延在する第1ラッチ支持壁(第1ラッチ支持壁422a)と、前記周方向における前記ストライカの係合側で前記径方向に延在する第2ラッチ支持壁(第2ラッチ支持壁422b)と、前記第1ラッチ支持壁の前記径方向の内側端部と前記第2ラッチ支持壁の前記径方向の内側端部とを接続するラッチ底壁部(ラッチ底壁部422c)と、によって囲まれた空間であり、
前記ウェッジ溝は、前記ウェッジボディ部によって形成された、前記周方向における前記ストライカの退避側で前記径方向に延在する第1ウェッジ支持壁(第1ウェッジ支持壁432a)と、前記周方向における前記ストライカの係合側で前記径方向に延在する第2ウェッジ支持壁(第2ウェッジ支持壁432b)と、前記第1ウェッジ支持壁の前記径方向の内側端部と前記第2ウェッジ支持壁の前記径方向の内側端部とを接続するウェッジ底壁部(ウェッジ底壁部432c)と、によって囲まれた空間であり、
前記第1ウェッジ支持壁の前記径方向の外側端部は、前記軸方向から見て、前記ラッチボディ部と重なる位置に位置し、
前記第1ウェッジ支持壁の前記径方向の外側端部(外側端部432d)は、前記軸方向から見て、前記ラッチボディ部と重なる位置に位置し、
前記ウェッジは、前記ストライカの前記ウェッジ溝への進退に伴って前記第1方向にスライドし、前記ストライカが前記第1ラッチ位置に近づくほど、前記第1ウェッジ支持壁が前記周方向において前記第1ラッチ支持壁に近づくように前記第1方向にスライドし、
前記リンクレバーは、
前記第2回動軸の径方向に延在し、前記ストライカと当接可能であり、前記ストライカが前記第2ラッチ位置にあるときに、前記ラッチの前記ストライカ当接部とともに前記ストライカを挟持して、前記ストライカを前記第2ラッチ位置に保持するストライカ保持アーム(ストライカ保持アーム441)を備え、
前記ラチェットは、
前記ラッチの前記第1ラチェット係合溝に係合して、前記ラッチを前記第1保持位置に保持可能であるとともに、前記ラッチの前記第2ラチェット係合溝に係合して、前記ラッチを前記第2保持位置に保持可能であり、
前記カムは、
前記ラッチの前記カム当接部に当接して、前記第2保持位置を超える位置まで前記ラッチを前記第2方向に回動可能で、前記第2保持位置を超える方向に向かって前記ラッチを前記第2方向に押圧可能であり、
前記車両用シートロック装置は、
前記ストライカが前記リンクレバーの前記ストライカ保持アームに当接することで、前記リンクレバーが前記第2回動軸を軸に回動し、
前記ストライカが前記ストライカ保持アームに当接して前記リンクレバーが前記第2回動軸を軸に回動することで、前記ラッチを前記第2保持位置に向かって前記第2方向に回動させ、
前記ラッチが前記第2方向に回動することで、前記カムが前記ラッチの前記カム当接部に当接して、前記第2保持位置を超える位置まで前記ラッチを前記第2方向に回動させた後、前記ラッチを前記第2保持位置で前記第2方向に押圧し、
前記リンクレバーの前記ストライカ保持アームと前記ラッチの前記ストライカ当接部とで前記ストライカを挟持して、前記ストライカを前記第2ラッチ位置に保持する、
車両用シートロック装置。
【0118】
(6)によれば、ラッチボディ部とウェッジボディ部とは、軸方向から見て少なくとも一部が互いに重なる位置に配置されているので、車両用シートロック装置を小型化できる。
また、第1ウェッジ支持壁の径方向の外側端部が、第1回動軸の軸方向から見て、ラッチボディ部と重なる位置に位置しているので、ストライカがラッチ溝及びウェッジ溝に進入する際に、第1ウェッジ支持壁の径方向の外側端部に引っ掛かることを防止できる。
また、ストライカがラッチ溝に係合された状態で第1ラッチ位置に保持されているとき、ストライカは、ウェッジに押圧されて第1ウェッジ支持壁に当接しているので、ラッチ溝の第2ラッチ支持壁に押圧されて、第1ラッチ位置に保持されるので、第1ラッチ位置でガタつくことを防止できる。加えて、ウェッジは、ストライカが第1ラッチ位置でガタつくことを小さな移動量で防止することができるので、車両用シートロック装置の小型化を図ることができる。
さらに、ウェッジは、第1ウェッジ支持壁に当接するストライカを、ラッチ溝及びウェッジ溝から第1回動軸の径方向外側に押し出す方向に付勢することができるので、ラッチ溝に係合した状態で第1ラッチ位置に保持されていたストライカを、ラッチ溝から抜けやすくすることができ、操作性に優れる。
また、第2保持位置を超える位置までラッチを回動させ、カムがラッチのカム当接部に当接した状態でリンクレバーのストライカ保持アームとラッチのストライカ当接部とでストライカを挟持して、ストライカを第2ラッチ位置に保持することによって、ストライカが第2ラッチ位置でガタつくことを防止できる。また、リンクレバーのストライカ保持アームとラッチのストライカ当接部とでストライカを挟持して、ストライカを第2ラッチ位置に保持するので、車両用シートロック装置の動作時にストライカの引っ掛かり等が生じにくく、操作性に優れる。
【0119】
(7) (6)に記載の車両用シートロック装置であって、
前記第1回動軸、前記第2回動軸、及び、前記第3回動軸はそれぞれ、前記軸方向から見て前記ストライカ進入溝と重ならない位置で、前記ストライカ進入溝の上方、又は、前記ストライカ進入溝の下方に設けられている、
車両用シートロック装置。
【0120】
(7)によれば、車両用シートロック装置の前後寸法を短くすることができるので、厚さが薄いシートバックにも容易に取り付けることができる。
【符号の説明】
【0121】
3B シートバック
4、4A 車両用シートロック装置
41 ベースプレート
41a ストライカ進入溝
411 第1回動軸
412 第2回動軸
413 第3回動軸
42 ラッチ
421 ラッチボディ部
421b スライドピン
421c ストライカ当接部
421d2 第2カム当接部(カム当接部)
422 ラッチ溝
422a 第1ラッチ支持壁
422b 第2ラッチ支持壁
422c ラッチ底壁部
423 第1ラチェット係合溝
424 第2ラチェット係合溝
43 ウェッジ
431 ウェッジボディ部
431b ピン摺動孔
432 ウェッジ溝
432a 第1ウェッジ支持壁
432b 第2ウェッジ支持壁
432c ウェッジ底壁部
432d 外側端部
44 リンクレバー
441 ストライカ保持アーム
442 ラッチ駆動アーム
442a 第1アーム部
442b 第2アーム部
442c スリット空間部
443 ねじりコイルばね
443a コイル部
443b1 第1脚部
443b2 第2脚部
45 ラチェット
46 カム
5 ストライカ
P1 第1ラッチ位置
P2 第2ラッチ位置