(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176048
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】精穀装置
(51)【国際特許分類】
B02B 3/00 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
B02B3/00 104
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094253
(22)【出願日】2023-06-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】川野 博幸
(72)【発明者】
【氏名】古谷 健太
【テーマコード(参考)】
4D043
【Fターム(参考)】
4D043AA01
4D043AA05
4D043DA03
4D043DG01
4D043DG23
4D043DG26
4D043DH02
4D043DH68
(57)【要約】
【課題】精穀装置における交換部品の交換手間やコストを低減することが可能な精穀装置を提供すること。
【解決手段】複数に分割された多孔壁部11が連設されて筒状に構成された筒状ケーシング10と、前記筒状ケーシング10内に回転可能に配置された精穀ロール30とを備えて、前記筒状ケーシング10の内周面と前記精穀ロール30の外周面との間で精穀室15が形成される精穀装置100であって、前記筒状ケーシング10の内周面には穀物が接触する研削部13が設けられ、前記研削部13は、前記筒状ケーシング10の内周面に突出する複数の凸部1311を備え、前記凸部1311は、前記研削部13に形成された嵌合穴1312に突起部材1313が着脱可能に構成されていることを特徴とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数に分割された多孔壁部が連設されて筒状に構成された筒状ケーシングと、前記筒状ケーシング内に回転可能に配置された精穀ロールとを備えて、前記筒状ケーシングの内周面と前記精穀ロールの外周面との間で精穀室が形成される精穀装置であって、
前記筒状ケーシングの内周面には穀物が接触する研削部が設けられ、
前記研削部は、前記筒状ケーシングの内周面に突出する複数の凸部を備え、
前記凸部は、前記研削部に形成された嵌合穴に突起部材が着脱可能に構成されている
ことを特徴とする精穀装置。
【請求項2】
前記研削部は、二つの前記多孔壁部の間に配置されるとともに前記筒状ケーシング内に複数配置される
請求項1に記載の精穀装置。
【請求項3】
前記筒状ケーシングは、該筒状ケーシングの上端部と下端部とを支持する複数の柱部を備え、
前記研削部は、前記柱部に配置されている
請求項2に記載の精穀装置。
【請求項4】
前記研削部は、上下に分割されて上側研削部と下側研削部とから成り、
前記上側研削部と前記下側研削部は互いに異なる研削面を有する
請求項1乃至3に記載の精穀装置。
【請求項5】
前記凸部は、スプリングピンが嵌合されている
請求項1乃至3に記載の精穀装置。
【請求項6】
前記凸部は、スプリングピンが嵌合されている
請求項4に記載の精穀装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀物の胚芽や果皮を除去することが可能な精穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、精穀装置でトウモロコシの胚芽や果皮を除去することが行われており、例えば特許文献1には、多孔壁部(篩部)とやすり面(突起)を有する研磨ドラム内にロータを配設し、上記研磨ドラムとロータとの間隙を胚芽除去室(作業室)に形成した装置が開示されている。
【0003】
そして上記研磨ドラムの内面は、上記ロータの回転方向に対して、篩区間となる多孔壁部と、やすり区間となるやすり面が交互に設けられる構成となっている。このような構成とすることで、やすり区間で形成されたトウモロコシの摩耗片を、その形成後直ちに篩区間で前記胚芽除去室から排出することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来の装置は、装置の稼働時間に比例して、上記やすり面に複数設けた突起が摩耗するので、やすり面の全体を交換する必要がある。したがって、やすり面の交換に要する手間や交換するやすり面の費用がかさんでしまう。
【0006】
そこで、本発明は上記した問題点に鑑み、精穀装置における交換部品の交換手間やコストを低減することが可能な精穀装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)に係る発明は、複数に分割された多孔壁部が連設されて筒状に構成された筒状ケーシングと、前記筒状ケーシング内に回転可能に配置された精穀ロールとを備えて、前記筒状ケーシングの内周面と前記精穀ロールの外周面との間で精穀室が形成される精穀装置であって、前記筒状ケーシングの内周面には穀物が接触する研削部が設けられ、前記研削部は、前記筒状ケーシングの内周面に突出する複数の凸部を備え、前記凸部は、前記研削部に形成された嵌合穴に突起部材が着脱可能に構成されていることを特徴とする精穀装置である。
【0008】
(2)に係る発明は、前記研削部は、二つの前記多孔壁部の間に配置されるとともに前記筒状ケーシング内に複数配置される上記(1)に記載の精穀装置である。
【0009】
(3)に係る発明は、前記筒状ケーシングは、該筒状ケーシングの上端部と下端部とを支持する複数の柱部を備え、前記研削部は、前記柱部に配置されている上記(2)に記載の精穀装置である。
【0010】
(4)に係る発明は、前記研削部は、上下に分割されて上側研削部と下側研削部とから成り、前記上側研削部と前記下側研削部は互いに異なる研削面を有する上記(1)乃至(3)に記載の精穀装置である。
【0011】
(5)、(6)に係る発明は、前記凸部は、スプリングピンが嵌合されている上記1乃至4に記載の精穀装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、精穀装置の筒状ケーシングの内周面に研削部を設けるとともに、当該研削部に着脱可能な複数の凸部を備えたことで、研削部全体を交換することなく、摩耗した凸部のみを交換することが可能となり、精穀装置のメンテナンスに係るコストを従来よりも大幅に軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態における、精穀装置の概略断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態における、精穀部の分解斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態における、精穀部の断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態における、精穀部の筒状ケーシングの斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態における、研削部の配置態様を示した筒状ケーシングの斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態における、研削部の平面図及び側面図である。
【
図7】本発明の一実施形態における、研削部へのスプリングピンの設置態様を示した研削部の斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態における、スプリングピンの側面図及びスプリングピンの寸法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の精穀装置の一実施形態を図面とともに説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態における精穀装置100の概略断面図が示されており、とうもろこし等の穀類において胚芽や果皮を除去することが可能となっている。すなわち、
図2に示される精穀部1の精穀ロール30を回転駆動するための駆動モータ40や、精穀部1に送風を行う送風装置50、穀類が精穀部1へ供給される供給部60、穀類の胚芽が排出される排出部20などを少なくとも備えている。
なお、精穀装置100は、米、麦などの精穀を行うことも可能である。
【0016】
図2には、本実施形態における精穀部1の分解斜視図が示されている。精穀ロール30は、複数に分割された多孔壁部となるスクリーン11が連設されて筒状に構成された筒状ケーシング10で囲繞されている。当該筒状ケーシング10の外周には上記スクリーン11を覆うフレーム12が配置されている。
【0017】
図3は精穀部1を上方から見た断面図が図示され、
図4には筒状ケーシング10の斜視図が図示されている。図示されるように、筒状ケーシング10の内周面と精穀ロール30の外周面との間には精穀室15(
図3参照)が形成され、矢印で示されるように穀物が流動しながら精穀される。
【0018】
本実施形態の筒状ケーシング10の内周面には、前述したスクリーン11に加えて、穀物に研削作用を与える研削部となるアブレーシブプレート13が設けられている。当該アブレーシブプレート13は、
図3及び
図4に示されるように、二つのスクリーン11の間に配置されるとともに筒状ケーシング10内に複数配置されている。
【0019】
図示される実施形態では、筒状ケーシング10の上端部と下端部とを支持する4本の柱部14を備えており、前述したアブレーシブプレート13が柱部14に配置されている。
図5には、筒状ケーシング10の4本の柱部14にアブレーシブプレート13が取り付けられた態様が示されており、本実施形態では上下に分割されて上側アブレーシブプレート131(上側研削部)と下側アブレーシブプレート132(下側研削部)とから構成されている。
【0020】
図5の拡大図、及び、
図6のアブレーシブプレート13の平面図及び側面図に示されるように、アブレーシブプレート13には、筒状ケーシング10の内周面に突出する複数の凸部1311が形成されている。
【0021】
より詳細に説明すると、
図7に示されるように、アブレーシブプレート13の研削面には複数の嵌合穴1312が形成されており、当該嵌合穴1312に、プレート表面から0.5~3mm突出するようにして、突起部材であるスプリングピン1313が挿入されている。
【0022】
本実施形態のアブレーシブプレート13は、平板状のプレートに所定の大きさの嵌合穴1312が削孔され、当該嵌合穴1312に
図8に示されるようなスプリングピン1313が挿入されることで、凸部1311が形成されている。すなわち、スプリングピン1313を嵌合穴1312に叩き込むことでスプリングピン1313の外径が縮まり、その反発力によってスプリングピン1313が固定されるように構成されている。
【0023】
上記したように、スプリングピン1313は嵌合穴1312に叩き込まれて固定されている。したがって、スプリングピン1313の全部又は一部が摩耗寿命を迎えた場合は、アブレーシブプレート13を交換することなく、交換対象のスプリングピン1313のみを交換することが可能となる。このような構成により、メンテナンスに係るコストを従来よりも大幅に軽減することが可能となる。
【0024】
なお、スプリングピン1313の大きさは特に限定されるものではなく、例えば
図8に示されるような外径2~5mmのスプリングピン1313を使用することが可能である。
【0025】
上記したようなスプリングピン1313による凸部1311がアブレーシブプレート13に形成されることで、アブレーシブプレート13の研削作用により、例えばトウモロコシの胚乳部分と胚芽・果皮を効果的に分離することが可能となる。
【0026】
すなわち、上記のような構成により、精穀室15においてスプリングピン1313の突出部がトウモロコシ粒の胚芽部分に衝突する機会が増えるため、精穀室15の内部圧力を低圧にしながらも胚芽を胚乳部分から効率的に分離することが可能となる。また、精穀室15の内部圧力を低圧化できることにより、粒同士の摩擦力が低下して胚乳部分の粉砕化を低減でき、粉状質の発生を抑えることが可能となる。
【0027】
加えて、精穀室15の外側に排出される粉状質の量を低減できるので、製品歩留まりが向上する。また、スプリングピン1313の突出部が胚乳表面に研削作用を与え、果皮も胚乳部分から分離されるため、精穀品質の低下を抑制することが可能となる。
【0028】
さらに、前述したように精穀室15の内部圧力を低圧化できることにより、筒状ケーシング10の内周面に配置されたスクリーン11やアブレーシブプレート13などの構成部品の摩耗寿命を延ばすことが可能となる。
【0029】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について図面に基づいて説明したが、本発明の精穀装置は必ずしも前述した実施形態に限定されるものではない。
【0030】
例えば、アブレーシブプレート13に設置されるスプリングピン1313の数は特に限定されるものではない。図示される上側アブレーシブプレート131及び下側アブレーシブプレート132はそれぞれ250cm2の研削面を有するが、それぞれ100~300本のスプリングピン1313を設置して凸部1311を形成することが好ましい。すなわち、研削面における単位面積あたりのスプリングピン1313の設置本数は0.4~1.2本/cm2となる。
【0031】
また、前述した実施形態では、アブレーシブプレート13を4箇所の柱部14に配置したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、アブレーシブプレート13を筒状ケーシング10内に3箇所、又は、5箇所配置することも可能である。
【0032】
また、前述した実施形態では、アブレーシブプレート13を上下に分割して上側アブレーシブプレート131と下側アブレーシブプレート132とから構成したが、必ずしも分割することは必須ではなく、単一のアブレーシブプレート13とすることができる。さらに、上記したアブレーシブプレート13の分割は、前述したような2分割に限定されず、3分割以上に分割することも可能である。加えて、アブレーシブプレート13の分割は、必ずしも前述したような上下方向の分割に限定されるものではなく、精穀ロール30の回転方向に対して分割してもよい。
【0033】
加えて、前述した実施形態では、
図5等に示されるように、上側アブレーシブプレート131と下側アブレーシブプレート132は同じ研削面からなるものを使用しているが、上下で互いに異なる研削面を有するように構成することも可能である。すなわち、原料である穀物の種類や精穀条件に応じて、研削効果の異なる上側アブレーシブプレート131及び下側アブレーシブプレート132を配置することで、対象穀物に最適な研削効果を得ることが可能となる。
【0034】
前述した実施形態では、凸部1311としてスプリングピン1313を挿入する実施形態を最も好ましい例として示した。しかし、必ずしもスプリングピン1313に限定されるものではなく、丸棒や、その他引っ掛かりのある形状のものを使用することが可能であり、着脱して交換が可能なものであれば利用することができる。
【0035】
以上、本発明の一実施形態、及び、その他の実施形態について説明したが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、又は、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲及び明細書に記載された各構成要素の組み合わせ、又は、省略が可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 精穀部
10 筒状ケーシング
11 スクリーン(多孔壁部)
12 フレーム
13 アブレーシブプレート(研削部)
131 上側アブレーシブプレート(上側研削部)
132 下側アブレーシブプレート(下側研削部)
1311 凸部
1312 嵌合穴
1313 スプリングピン(突起部材)
14 柱部
15 精穀室
20 排出部
30 精穀ロール
40 駆動モータ
50 送風装置
60 供給部
100 精穀装置
【手続補正書】
【提出日】2024-02-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数に分割された多孔壁部が連設されて筒状に構成された筒状ケーシングと、前記筒状ケーシング内に回転可能に配置された精穀ロールとを備えて、前記筒状ケーシングの内周面と前記精穀ロールの外周面との間で精穀室が形成される精穀装置であって、
前記筒状ケーシングの内周面には穀物が接触する研削部が設けられ、
前記研削部は、該研削部の内周面側に研削面を有するとともに、該研削面には前記筒状ケーシングの周方向及び回転軸方向に、該研削面よりも内周側に突出する複数の凸部を備え、
前記凸部は、前記研削面に形成された嵌合穴に突起部材が着脱可能に構成されている
ことを特徴とする精穀装置。
【請求項2】
前記研削部は、二つの前記多孔壁部の間に配置されるとともに前記筒状ケーシング内に複数配置される
請求項1に記載の精穀装置。
【請求項3】
前記筒状ケーシングは、該筒状ケーシングの上端部と下端部とを支持する複数の柱部を備え、
前記研削部は、前記柱部に配置されている
請求項2に記載の精穀装置。
【請求項4】
前記研削部は、上下に分割されて上側研削部と下側研削部とから成り、
前記上側研削部と前記下側研削部は互いに異なる研削面を有する
請求項1乃至3に記載の精穀装置。
【請求項5】
前記凸部は、スプリングピンが嵌合されている
請求項1乃至3に記載の精穀装置。
【請求項6】
前記凸部は、スプリングピンが嵌合されている
請求項4に記載の精穀装置。