(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176049
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】歪み計測装置
(51)【国際特許分類】
G01B 5/30 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
G01B5/30
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094255
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】513278068
【氏名又は名称】株式会社ALFA
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 好孝
【テーマコード(参考)】
2F062
【Fターム(参考)】
2F062AA99
2F062BC42
2F062CC22
2F062EE01
2F062EE07
2F062EE66
2F062EE71
2F062GG11
2F062MM01
2F062MM07
(57)【要約】
【課題】車体の歪み計測の精度を向上させることが可能な歪み計測装置を提供する。
【解決手段】車体の正常側を計測するときの基準と、事故等で損傷した車体の歪み側を計測するときの基準とが同一である、すなわち、車体前後面の正常側を計測するときの基準と、車体前後面の歪み側を計測するときの基準とが同一(前後面計測基準パイプ11の中心線)であり、かつ車体側面の正常側を計測するときの基準と、車体側面の歪み側を計測するときの基準とが同一(側面計測基準パイプ51の中心線)であるので、高い精度で車体を計測することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車体の歪みを計測するための装置であって、
計測対象車両の車両中心線を含む鉛直面上に配置された中心線を有する前後面計測基準パイプと、
前記前後面計測基準パイプを中心線が車両中心線に対して平行になるように車体のルーフパネル上に固定する基準パイプ支持部と、
前記前後面計測基準パイプから左右方向へ延びるように前記前後面計測基準パイプに取り付けられ、前記前後面計測基準パイプに対して垂直にかつ相互に平行に配置された一対のルーフゲージと、
前記前後面計測基準パイプに固定され、前記前後面計測基準パイプの中心線に対して垂直に配置され、下向きに延びる垂直基準ゲージと、
前記前後面計測基準パイプから垂下され、前記垂直基準ゲージと並行して延びるゲージ用下げ振り糸と、
前記前後面計測基準パイプの前端部又は後端部に移動可能に挿入されるスライド軸部と、
前記スライド軸部の前記前後面計測基準パイプに対する移動を解除可能に拘束する拘束手段と、
前記スライド軸部に固定され、前記前後面計測基準パイプの中心線に対して垂直に配置され、下向きに延びる垂直アームと、
前記垂直アームの下端部によって保持され、前記垂直アームに対して垂直に配置される棒状の接触子と、
前記スライド軸部から垂下され、前記接触子を挟むように配置される一対の接触子用下げ振り糸と、
前記スライド軸部に固定され、中心点を前記前後面計測基準パイプの中心線が直交するように配置される分度器と、
を備えることを特徴とする歪み計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の歪み計測装置であって、
前記前後面計測基準パイプから左右方向へ延びるように前記前後面計測基準パイプに固定される側面計測基準パイプを備え、
前記側面計測基準パイプは、前記前後面計測基準パイプに対して垂直にかつ前記一対のルーフゲージに対して平行に配置され、
前記側面計測基準パイプの左端部又は右端部には、前記スライド軸部が摺動可能に挿入されることを特徴とする歪み計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体の歪みを計測するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、正常側の基準ポイントと正常側の測定ポイントとの距離に合わせて二点間を調整し、次に、歪み側の基準ポイントにセットされた吸着具のマグネットに先端球状シャフトの球状先端部分をセットし、先端尖状シャフトの円錐状先端部分が歪み側の測定ポイントから離れている度合いに基づいて車体の歪みを測定するようにした二点間拒理ゲージ(以下「従来の歪み計測装置」と称する)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の歪み計測装置では、車体の正常側を計測するときの基準と、事故等で損傷した車体の歪み側を計測するときの基準とが異なるため、正常側の基準ポイントと歪み側の基準ポイントとが車体の左右で対称でないとき、車体の歪みを正確に計測することができなかった。
【0005】
本発明は、車体の歪み計測の精度を向上させることが可能な歪み計測装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の歪み計測装置は、自動車の車体の歪みを計測するための装置であって、計測対象車両の車両中心線を含む鉛直面上に配置された中心線を有する前後面計測基準パイプと、前記前後面計測基準パイプを中心線が車両中心線に対して平行になるように車体のルーフパネル上に固定する基準パイプ支持部と、前記前後面計測基準パイプから左右方向へ延びるように前記前後面計測基準パイプに取り付けられ、前記前後面計測基準パイプに対して垂直にかつ相互に平行に配置された一対のルーフゲージと、前記前後面計測基準パイプに固定され、前記前後面計測基準パイプの中心線に対して垂直に配置され、下向きに延びる垂直基準ゲージと、前記前後面計測基準パイプから垂下され、前記垂直基準ゲージと並行して延びるゲージ用下げ振り糸と、前記前後面計測基準パイプの前端部又は後端部に移動可能に挿入されるスライド軸部と、前記スライド軸部の前記前後面計測基準パイプに対する移動を解除可能に拘束する拘束手段と、前記スライド軸部に固定され、前記前後面計測基準パイプの中心線に対して垂直に配置され、下向きに延びる垂直アームと、前記垂直アームの下端部によって保持され、前記垂直アームに対して垂直に配置される棒状の接触子と、前記スライド軸部から垂下され、前記接触子を挟むように配置される一対の接触子用下げ振り糸と、前記スライド軸部に固定され、中心点を前記前後面計測基準パイプの中心線が直交するように配置される分度器と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車体の歪み計測の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態の説明図であって、車体の前後面歪みを計測する時の状態を概念的に示す側面図である。
【
図2】本実施形態の説明図であって、車体の前後面歪みを計測する時の状態を概念的に示す平面図である。
【
図3】本実施形態の説明図であって、車体の前後面歪み計測時の状態を概念的に示す正面図である。
【
図4】計測対象車両の前面の歪みを計測する方法の説明図であって、接触子を正常側の基準ポイントに接触させている状態を示す側面図である。
【
図5】計測対象車両の前面の歪みを計測する方法の説明図であって、接触子を正常側の基準ポイントに接触させている状態を示す正面図である。
【
図6】計測対象車両の前面の歪みを計測する方法の説明図であって、接触子を歪み側の基準ポイントに接触させている状態を示す側面図である。
【
図7】計測対象車両の前面の歪みを計測する方法の説明図であって、接触子を歪み側の基準ポイントに接触させている状態を示す正面図である。
【
図8】本実施形態の説明図であって、車体の側面歪みを計測する時の状態を概念的に示す側面図である。
【
図9】本実施形態の説明図であって、車体の側面歪みを計測する時の状態を概念的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態を添付した図を参照して説明する。
なお、明細書中に記載された「方向」に関する記載は、計測対象車両1を基準としたものであり、
図1及び
図2における右方向及び左方向を「前方向」及び「後方向」、
図2における下方向及び上方向を「右方向」及び「左方向」、並びに
図1における上方向及び下方向をそのまま「上方向」及び「下方向」と称する。
【0010】
図1又は
図2に示されるように、歪み計測装置10は、計測対象車両1のルーフパネル2上を前後方向に延びる前後面計測基準パイプ11を有する。前後面計測基準パイプ11は、アルミニウム合金製の円形管が適用される。歪み計測装置10は、前後面計測基準パイプ11をルーフパネル2の中心線に対して平行に支持する基準パイプ支持部21を有する。基準パイプ支持部21は、前後面計測基準パイプ11が挿通される一対のスリーブ22,22と、各スリーブ22,22から左右両側へ延びる脚部23,23と、各脚部23,23の先端部に取り付けられた吸着部24(吸着パッド)とを有する。なお、前記ルーフパネル2の中心線は、ルーフパネル2の左右方向中央に位置し、車両中心線(車両の左右方向中央に位置する地上面上の直線)と平行に配置される直線である。
【0011】
歪み計測装置10は、前後面計測基準パイプ11をルーフパネル2の左右方向中央に配置する、換言すれば、前後面計測基準パイプ11を、ルーフパネル2の中心線を含む鉛直面上に配置するための一対のルーフゲージ26,26を有する。ルーフゲージ26,26は、前後面計測基準パイプ11から左右両側へ延びるようにしてスリーブ22,22に取り付けられる。換言すれば、ルーフゲージ26,26は、スリーブ22,22を介して前後面計測基準パイプ11に取り付けられる。ルーフゲージ26,26は、ルーフパネル2の中心線及び前後面計測基準パイプ11に対して垂直に配置される。ルーフゲージ26,26は、同一の水平面上に配置されるとともに相互に平行に配置される。
【0012】
歪み計測装置10は、上端部が前後面計測基準パイプ11に固定された棒状の垂直基準ゲージ12を有する。垂直基準ゲージ12は、前後面計測基準パイプ11から下向き(
図1における「下方向」)へ延び、前後面計測基準パイプ11に対して垂直に配置される。垂直基準ゲージ12は、基準パイプ支持部21よりも前後面計測基準パイプ11の前端側(
図1における「右側」)に配置される。歪み計測装置10は、前後面計測基準パイプ11から垂下されるゲージ用下げ振り糸13を有する。ゲージ用下げ振り糸13の先端には、下げ振り錘14が取り付けられる。ゲージ用下げ振り糸13は、垂直基準ゲージ12と並行するように延びる。
【0013】
歪み計測装置10は、計測対象車両1の前面を計測するときに前後面計測基準パイプ11の前端部15から伸縮可能に突出され、他方、計測対象車両1の後面を計測するときに前後面計測基準パイプ11の後端部16から伸縮可能に突出されるスライド軸部31を有する。ここでは、計測対象車両1の前面を計測するときの形態(
図1及び
図2参照)を説明する。
【0014】
スライド軸部31は、摺動部(
図1及び
図2における「左側部分」)が前後面計測基準パイプ11の前端部15に摺動可能に挿入されるスライドパイプ32と、後端部にスライドパイプ32の突出部(
図1及び
図2における「右側部分」)が挿入及び固定(接合)され、前端部にシャフト33が挿入されるアーム保持パイプ34とを有する。スライド軸部31、すなわち、スライドパイプ32、シャフト33、及びアーム保持パイプ34は、前後面計測基準パイプ11に対して同軸上に配置される。
【0015】
歪み計測装置10は、アーム保持パイプ34に取り付けられる垂直アーム41を有する。垂直アーム41は、スライド軸部31に対して垂直に配置される。垂直アーム41は、上端側がアーム保持パイプ34を貫通する保持穴35に挿通され、上下方向の任意の位置で固定される。垂直アーム41の下端部には、接触子保持部42が取り付けられる。接触子保持部42は、両端部が尖形に形成された棒状の接触子43を垂直アーム41に対して垂直に保持する。なお、本実施形態では、垂直アーム41は、形状を保持することが可能なステンレス製可とう管が適用される。
【0016】
歪み計測装置10は、スライドパイプ32の前端部(アーム保持パイプ34近傍部分)から垂下される下げ振り糸44(接触子用下げ振り糸)と、シャフト33の前端位置から垂下される下げ振り糸46(接触子用下げ振り糸)とを有する。下げ振り糸44,46の先端には、下げ振り錘45,47が取り付けられる。接触子43は、下げ振り糸44と下げ振り糸46との間を延びるように配置される。
【0017】
歪み計測装置10は、シャフト33の前端部に固定される分度器37を有する。分度器37は、シャフト33から垂下される下げ振り糸46に対向するように配置される。分度器37は、スライド軸部31の中心線、延いては前後面計測基準パイプ11の中心線に対して垂直に配置され、かつスライド軸部31の中心線が当該分度器37の中心点を通過するように配置される。なお、
図3に示されるように、垂直アーム41が鉛直に向けられているとき、すなわち、垂直アーム41と下げ振り糸44,46とが平行に配置されているとき、分度器37によって測定される下げ振り糸46の角度は0度であり、典型的な分度器に形成された目盛の90度である。
【0018】
歪み計測装置10は、計測対象車両1のルーフパネル2上を左右方向に延びる側面計測基準パイプ51を有する。側面計測基準パイプ51は、前後面計測基準パイプ11に固定される。側面計測基準パイプ51は、前後面計測基準パイプ11と同じアルミニウム合金製の円形管が適用される。側面計測基準パイプ51は、ルーフパネル2の中心線及び前後面計測基準パイプ11に対して垂直に配置される。側面計測基準パイプ51は、一対のルーフゲージ26,26間に配置され、かつルーフゲージ26,26に対して平行に配置される。計測対象車両1の側面の歪み計測時には、側面計測基準パイプ51の左端部52又は右端部53に、スライド軸部31のスライドパイプ32が摺動可能に挿入される。
【0019】
次に、歪み計測装置10を使用して計測対象車両1の歪みを計測する方法を説明する。
まず、歪み計測装置10を計測対象車両1のルーフパネル2にセットする。最初に、前後面計測基準パイプ11がスリーブ22,22に挿通された基準パイプ支持部21をルーフパネル2に載せる。そして、前後面計測基準パイプ11の中心線をルーフパネル2の左右方向中央に位置合わせする。
【0020】
ここでは、ルーフゲージ26,26によって測定されるスリーブ22,22の中心線からルーフパネル2の左右の端位置までの距離に基づき、前後面計測基準パイプ11の中心線をルーフパネル2の左右方向中央に位置合わせすることにより、前後面計測基準パイプ11は、中心線がルーフパネル2の中心線と平行に配置され、かつ中心線がルーフパネル2の中心線を含む鉛直面上に配置される。なお、ルーフゲージ26,26の前後間隔は、例えば、800mmに調整する。
【0021】
次に、計測対象車両1の各タイヤの空気圧を調整する等によって、前後面計測基準パイプ11に固定された垂直基準ゲージ12の向きを、下げ振り糸13(ゲージ用下げ振り糸)に対して平行となるように調整する。これにより、計測対象車両1が水平状態となり、前後面計測基準パイプ11、側面計測基準パイプ51、及びルーフパネル2の中心線が水平に保持される。
【0022】
次に、計測対象車両1の左側の前面3(
図3における右側の面、以下「歪み側の前面3L」と称する)の歪みを計測するため、前後面計測基準パイプ11の前端部15にスライド軸部31のスライドパイプ32(摺動部)を挿入する。前後面計測基準パイプ11に挿入されたスライド軸部31は、スライドパイプ32、シャフト33、及びアーム保持パイプ34が前後面計測基準パイプ11に対して同軸に配置される。また、アーム保持パイプ34によって保持された垂直アーム41は、前後面計測基準パイプ11に固定された垂直基準ゲージ12に対して平行に配置、すなわち鉛直に向けられる。
【0023】
次に、垂直アーム41の下端部(接触子保持部42)に保持された接触子43の水平方向の向きを、当該接触子43の中心線が下げ振り糸44,46(接触子用下げ振り糸)に垂直に交わるように調整する。これにより、接触子43中心線は、前後面計測基準パイプ11の中心線、スライド軸部31の中心線、ルーフパネル2の中心線、及び垂直アーム41の中心線を含む平面(鉛直面)上に配置される。
【0024】
次に、
図4又は
図5に示されるように、スライド軸部31を前後面計測基準パイプ11に対して右側の前面3(
図3における左側の面、以下「正常側の前面3R」と称する)の方向(
図5における時計回り方向)へ回転、及び軸方向(
図4における左右方向)へ移動させ、接触子43の尖端48を計測対象車両1の正常側の前面3Rの基準ポイントP0(以下「正常側基準ポイントP0」と称する)に接触させる。ここで、分度器37に投影される下げ振り糸46の角度A0(
図5参照)、すなわち、垂直アーム41と下げ振り糸46とがなす角度A0(以下「正常側基準角度A0」と称する)を記録する。
【0025】
次に、
図6又は
図7に示されるように、スライド軸部31を前後面計測基準パイプ11に対して歪み側の前面3Lの方向(
図7における「反時計回り方向」)へ回転させる。ここで、分度器37に投影される下げ振り糸46の角度A1、すなわち、垂直アーム41と下げ振り糸46とがなす角度A1(以下「歪み側基準角度A1」と称する)が、記録しておいた正常側基準角度A0と等しくなる(絶対値が等しくなる)ようにスライド軸部31の回転角度を調整する。
【0026】
換言すれば、垂直アーム41と下げ振り糸46とがなす角度が正常側基準角度A0のときの垂直アーム41(
図5参照)と、垂直アーム41と下げ振り糸46とがなす角度が歪み側基準角度A1のときの垂直アーム41(
図7参照)とが、正面視(
図3、
図5、
図7参照)において、下げ振り糸46を対称軸として線対称となるようにスライド軸部31の回転角度を調整する。これにより、接触子43の尖端48は、計測対象車両1の歪み側の前面3Lの基準ポイントP1(以下「歪み側基準ポイントP1」と称する)に位置決めされる。
【0027】
そして、拘束手段(図示省略)によってスライド軸部31を拘束して、スライド軸部31の前後面計測基準パイプ11に対する回転方向及び軸方向への移動を禁止することにより、接触子43の尖端48の位置を歪み側基準ポイントP1に固定する。ここで、計測対象車両1は左右対称である、すなわち、正常側の前面3Rと歪み側の前面3Lとは左右対称であるので、歪み側基準ポイントP1は、事故等で損傷する(凹む)前の歪み側基準ポイントの位置である。よって、歪み側基準ポイントP1に位置する接触子43の尖端48に車体が接するように部品交換や車体を修理することにより、車体を損傷前の状態に戻すことができる。
【0028】
次に、
図8及び
図9に基づき、計測対象車両1の左側の側面4(
図3における右側面、以下「歪み側の側面4L」と称する)の歪みを計測する方法を説明する。なお、前述した計測対象車両1の前面3の歪みを計測する手順と重複する説明を省略する。
【0029】
まず、ルーフパネル2上に水平に配置された側面計測基準パイプ51の右端部52に、スライド軸部31のスライドパイプ32(摺動部)を挿入する。側面計測基準パイプ51に挿入されたスライド軸部31は、スライドパイプ32、シャフト33、及びアーム保持パイプ34がルーフパネル2の中心線に対して垂直に配置される。次に、垂直アーム41の下端部(接触子保持部42)に保持された接触子43の水平方向の向きを、当該接触子43の中心線が下げ振り糸44,46(接触子用下げ振り糸)に垂直に交わるように調整する。これにより、接触子43の中心線は、側面計測基準パイプ51の中心線、スライド軸部31の中心線、及び垂直アーム41の中心線を含む平面(鉛直面)上に配置される。
【0030】
次に、スライド軸部31を側面計測基準パイプ51に対して移動させ、接触子43の尖端48を計測対象車両1の正常側の側面4Rの正常側基準ポイントP0に接触させる。ここで、分度器37に投影される下げ振り糸46の角度A0、すなわち、垂直アーム41と下げ振り糸46とがなす正常側基準角度A0と、スライド軸部31の側面計測基準パイプ51に対する軸方向相対位置(以下「正常側軸方向相対位置」と称する)、換言すれば、スライド軸部31の側面計測基準パイプ51の右端部52からの突出長さを記録する。
【0031】
次に、スライド軸部31を側面計測基準パイプ51の右端部52から抜き取った後、スライド軸部31を側面計測基準パイプ51の左端部53に挿入する。次に、垂直アーム41の下端部(接触子保持部42)に保持された接触子43の水平方向の向きを、当該接触子43の中心線が下げ振り糸44,46(接触子用下げ振り糸)に垂直に交わるように調整する。
【0032】
次に、分度器37に投影される下げ振り糸46の角度A1、すなわち、垂直アーム41と下げ振り糸46とがなす角度A1(歪み側基準角度A1)が、記録しておいた正常側基準角度A0と等しくなるように、かつスライド軸部31の側面計測基準パイプ51に対する軸方向相対位置(以下「歪み側軸方向相対位置」と称する)、換言すれば、スライド軸部31の側面計測基準パイプ51の左端部53からの突出長さが、記録しておいた正常側軸方向相対位置と等しくなるように、スライド軸部31を側面計測基準パイプ51に対して回転及び軸方向へ移動させる。これにより、接触子43の尖端48は、計測対象車両1の歪み側の側面4Lの歪み側基準ポイントP1に位置決めされる。
【0033】
そして、拘束手段(図示省略)によってスライド軸部31を拘束して、スライド軸部31の前後面計測基準パイプ11に対する回転方向及び軸方向への移動を禁止することにより、接触子43の尖端48の位置を歪み側基準ポイントP1に固定する。ここで、計測対象車両1は左右対称である、すなわち、正常側の側面4Rと歪み側の側面4Lとは左右対称であるので、歪み側基準ポイントP1は、事故等で損傷する(凹む)前の車体の位置である。よって、歪み側基準ポイントP1に位置する接触子43の尖端48に車体が接するように部品交換や車体を修理することにより、車体を損傷前の状態に戻すことができる。
【0034】
ここで、従来の歪み計測装置では、計測対象車両の車体の正常側を計測するときの基準と、事故等で損傷した車両の車体の歪み側を計測するときの基準とが異なるため、正常側の基準ポイントと歪み側の基準ポイントとが車体の左右で対称でないとき、車体の歪みを正確に計測することができなかった。
【0035】
これに対し、本実施形態では、車体の正常側を計測するときの基準と、事故等で損傷した車体の歪み側を計測するときの基準とが同一である、すなわち、車体前後面の正常側を計測するときの基準と、車体前後面の歪み側を計測するときの基準とが同一(前後面計測基準パイプ11の中心線)であり、かつ車体側面の正常側を計測するときの基準と、車体側面の歪み側を計測するときの基準とが同一(側面計測基準パイプ51の中心線)であるので、高い精度で車体を計測することができる。
【0036】
なお、実施形態は、前述した形態に限定されるものではなく、例えば、次のように構成することができる。
前述した実施形態では、車体側面を計測するとき、スライド軸部31を側面計測基準パイプ51に挿入するように構成したが、スライド軸部31が挿入された前後面計測基準パイプ11をルーフパネル2上で水平を保持した状態で90度旋回させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 計測対象車両、2 ルーフパネル、10 歪み計測装置、11 前後面計測基準パイプ、12 垂直基準ゲージ、13 下げ振り糸(ゲージ用下げ振り糸)、15 前端部、16 後端部、21 基準パイプ支持部、22 スリーブ、26 ルーフゲージ、31 スライド軸部、32 スライドパイプ、33 シャフト、34 アーム保持パイプ、37 分度器、41 垂直アーム、43 接触子、44 下げ振り糸(接触子用下げ振り糸)、46 下げ振り糸(接触子用下げ振り糸)