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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017605
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】車体後部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
B62D25/20 H
B62D25/20 E
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120354
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 真康
(72)【発明者】
【氏名】川辺 悟
(72)【発明者】
【氏名】宮永 啓世
(72)【発明者】
【氏名】立脇 正章
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 尚
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA31
3D203AA33
3D203BA16
3D203BA19
3D203BB06
3D203BB09
3D203BB12
3D203BB24
3D203BB25
3D203CA26
3D203CA28
3D203CA38
3D203CA42
3D203CA45
3D203DB05
(57)【要約】
【課題】バッテリフレームの剛性及び強度を必要以上に高めることなく、後方からの衝撃荷重の入力に対してバッテリを保護することができる車体後部構造を提供する。
【解決手段】車体後部構造は、バッテリ9と、バッテリフレーム12と、後部搭載部品と、補強ブロック20と、を備える。バッテリ9は、フロアの下方に配置される。バッテリフレーム12は、バッテリ9の周囲を覆い、少なくともバッテリ9の後方を覆う後フレーム部12rを有する。後部搭載部品は、後フレーム部12rの後方に配置され、少なくとも一部が後フレーム部12rと前後方向で重なる高さに配置される。補強ブロック20は、車両のいずれかのフレーム部材に支持されるとともに、後フレーム部12rと後部搭載部品の間に配置される。補強ブロック20は、後部搭載部品の前方側で後部搭載部品と対向する領域に、前方に向かって下方に傾斜する案内面20gを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアの下方に配置されるバッテリと、
前記バッテリの周囲を覆い、少なくとも前記バッテリの後方を覆う後フレーム部を有するバッテリフレームと、
前記後フレーム部の後方に配置され、少なくとも一部が前記後フレーム部と前後方向で重なる高さに配置された後部搭載部品と、
車両のいずれかのフレーム部材に支持されるとともに、前記後フレーム部と前記後部搭載部品の間に配置される補強ブロックと、を備え、
前記補強ブロックは、前記後部搭載部品の前方側で前記後部搭載部品と対向する領域に、前方に向かって下方に傾斜する案内面を備えていることを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
車両前後方向に沿って延びる左右一対のリヤサイドフレームと、
一対の前記リヤサイドフレームを連結するクロスメンバと、をさらに備え、
前記補強ブロックは、前部が前記後フレーム部に結合されるとともに、後部が前記クロスメンバ、若しくは、前記リヤサイドフレームに結合されていることを特徴とする請求項1に記載の車体後部構造。
【請求項3】
前記補強ブロックは、前記案内面に対して車両前方側に凸状に膨出する膨出領域を有する補強壁を備えていることを特徴とする請求項2に記載の車体後部構造。
【請求項4】
前記リヤサイドフレームの前部には、前方に向かって下方に屈曲、若しくは、湾曲する曲がり部が設けられ、
前記補強ブロック、若しくは、前記クロスメンバは、前記リヤサイドフレームの前記曲がり部の近傍に結合されていることを特徴とする請求項3に記載の車体後部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体後部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のフロアの下方にバッテリを搭載した車体構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の車体構造は、矩形枠状のバッテリフレームがフロア下の車体フレームに連結され、バッテリフレームの内側に複数のバッテリが配置されている。複数のバッテリは、バッテリフレームによって周囲を取り囲まれることにより、外部からの荷重入力に対してバッテリが保護されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-176751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の車体構造の場合、車両のバッテリフレームの搭載部の後方側には、スペアタイヤやサスペンション部品等の後部搭載部品が配置されている。このため、上記の車体構造において、車両後方から衝撃荷重が入力されて後部搭載部品が前方に大きく変位すると、後部搭載部品がバッテリフレームの後フレーム部(バッテリの後方側を覆うフレーム部)に当接し、後フレーム部を変形させることが懸念される。
このため、上記の車体構造では、車両後方からの衝撃荷重の入力時に後フレーム部が大きく前方に変形するのを防止するために、後フレーム部自体や後フレーム部の周囲の部材の剛性や強度を高める必要があった。しかし、これらの剛性や強度を高めることは、車体重量の増加や他部材のレイアウトの制限を招くことなる。
【0006】
そこで本発明は、バッテリフレームの剛性及び強度を必要以上に高めることなく、後方からの衝撃荷重の入力に対してバッテリを保護することができる車体後部構造を提供しようとするものである。そして、延いては、車両の衝突安全性を高め、持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る車体後部構造は、フロアの下方に配置されるバッテリ(例えば、実施形態のバッテリ9)と、前記バッテリの周囲を覆い、少なくとも前記バッテリの後方を覆う後フレーム部(例えば、実施形態の後フレーム部12r)を有するバッテリフレーム(例えば、実施形態のバッテリフレーム12)と、前記後フレーム部の後方に配置され、少なくとも一部が前記後フレーム部と前後方向で重なる高さに配置された後部搭載部品(例えば、実施形態のスペアタイヤ15)と、車両のいずれかのフレーム部材に支持されるとともに、前記後フレーム部と前記後部搭載部品の間に配置される補強ブロック(例えば、実施形態の補強ブロック20)と、を備え、前記補強ブロックは、前記後部搭載部品の前方側で前記後部搭載部品と対向する領域に、前方に向かって下方に傾斜する案内面(例えば、実施形態の案内面20g)を備えていることを特徴とする。
【0008】
上記の構成において、車両後部に衝撃荷重を受けて後部搭載部品が車両前方側に変位すると、後部搭載部品は前方の補強ブロックの案内面に直接、または、間接的に当接する。このとき、案内面は前方に向かって下方に傾斜しているため、後部搭載部品は案内面に案内されて後フレーム部の下方に誘導される。この結果、車両後方から後部搭載部品に入力された衝撃荷重は後フレーム部に対して曲げ荷重を作用させにくくなる。
【0009】
車体後部構造は、車両前後方向に沿って延びる左右一対のリヤサイドフレーム(例えば、実施形態のリヤサイドフレーム7)と、一対の前記リヤサイドフレームを連結するクロスメンバ(例えば、実施形態のクロスメンバ13)と、をさらに備え、前記補強ブロックは、前部が前記後フレーム部に結合されるとともに、後部が前記クロスメンバ、若しくは、前記リヤサイドフレームに結合されるようにしても良い。
【0010】
この場合、車両後部に衝撃荷重を受けて後部搭載部品が補強ブロックの案内面に当接すると、その当接荷重は、バッテリフレームの後フレーム部とリヤサイドフレームとに分散して支持されることになる。このため、補強ブロックは、後部搭載部品からの入力加重を高い剛性をもって受け止め、後部搭載部品を後フレーム部の下方に安定して誘導することになる。
また、補強ブロックは、クロスメンバを介して、若しくは、クロスメンバを介さずに直接、リヤサイドフレームと後フレーム部とを連結するため、車両後部からリヤサイドフレームに入力された衝撃荷重をバッテリフレームにも分散して伝達することが可能になる。このため、本構成を採用した場合には、車両後方からの衝撃荷重の入力時における車体後部の衝撃吸収性能をより高めることができる。
【0011】
前記補強ブロックは、前記案内面に対して車両前方側に凸状に膨出する膨出領域(例えば、実施形態の膨出領域21)を有する、補強壁(例えば、実施形態の側壁20s)を備えることが望ましい。
【0012】
この場合、車両後部に衝撃荷重を受けて後部搭載部品が補強ブロックの案内面に当接したときに、補強ブロックが車両前方側に屈曲変形するのを補強壁の膨出領域によって規制することができる。このため、本構成を採用した場合には、補強ブロックの案内面によって後部搭載部品を後フレーム部の下方により安定して誘導することができる。
【0013】
前記リヤサイドフレームの前部には、前方に向かって下方に屈曲、若しくは、湾曲する曲がり部(例えば、実施形態の曲がり部7b)が設けられ、前記補強ブロック、若しくは、前記クロスメンバは、前記リヤサイドフレームの前記曲がり部の近傍に結合されるようにしても良い。
【0014】
この場合、車両後方からリヤサイドフレームに衝撃荷重が入力されたときに、折れ起点となり易いリヤサイドフレームの曲がり部の近傍が、クロスメンバを介して、若しくは、クロスメンバを介さずに直接、補強ブロックによって補強される。このため、車両後方からリヤサイドフレームに衝撃荷重が入力されたときに、リヤサイドフレームが曲げ部を起点として上下方向に折れ変形するのを補強ブロックによって規制することができる。したがって、本構成を採用した場合には、車両後部からの衝撃荷重の入力時に、リヤサイドフレームを安定して圧壊させ車両後部の衝撃吸収性能をより高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様に係る車体後部構造は、補強ブロックのうちの、後部搭載部品の前方側で後部搭載部品と対向する領域に、前方に向かって下方に傾斜する案内面が設けられている。このため、車両後方から衝撃荷重が入力されたときに、補強ブロックの案内面によって後部搭載部品を後フレーム部の下方に誘導することができる。したがって、本構成を採用した場合には、バッテリフレームの剛性及び強度を必要以上に高めることなく、後方からの衝撃荷重の入力に対してバッテリを保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態の車両の後部の縦断面図である。
図2図2は、実施形態の車両の後部の下面図である。
図3図3は、実施形態の車両の後部の部分断面斜視図である。
図4図4は、実施形態の車両の後部の側面図である。
図5図5は、衝撃荷重の入力時における後部搭載部品(スペアタイヤ)の挙動を示す実施形態の車両の後部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、前後や上下、左右については、特別に断らない限り車両の前進方向に対しての向きを意味するものとする。また、図面の適所には、車両の前方を指す矢印FRと、車両の上方を指す矢印UPと、車両の左側方を指す矢印LHが記されている。
【0018】
図1は、本実施形態の車両1の後部を車幅方向と直交する方向で断面にした縦断面図である。また、図2は、車両1の後部の下面図であり、図3は、車両1の後部を車幅方向と直交する方向で断面にした部分断面斜視図である。図4は、車両1の後部の下部骨格部を左側方から見た図である。
車両1の乗員室2の下方にはフロントフロア3(フロア)が配置され、乗員室2の後方の荷室4の下方にはリヤフロア5が配置されている。乗員室2の下方の左右の側部には、車両前後方向に沿って延びる一対のサイドシル6(図2参照)が配置されている。
なお、図1中の符号8は、乗員室2内の後部に設置されたリヤシートであり、符号Wrは、車両1の後輪である。
【0019】
荷室4のリヤフロア5の下方には、車両前後方向に略沿って延びる左右一対のリヤサイドフレーム7が配置されている。一対のリヤサイドフレーム7は車幅方向(左右方向)に離間して配置されている。左右の各リヤサイドフレーム7の前部は、車両前方側に向かって車幅方向外側と下方に向かって湾曲し、左右の対応するサイドシル6の後端部に連結されている。リヤサイドフレーム7の前部のうちの、車両前方側に向かって下方に湾曲する部分(図4参照)については、以下、「曲がり部7b」と称する。
左右のリヤサイドフレーム7は、前部の曲がり部7bの近傍において、クロスメンバ13によって相互に連結されている。クロスメンバ13は、上方側に開口するハット型の断面が車幅方向に沿って延びている。リヤフロア5は、左右のリヤサイドフレーム7とクロスメンバ13に接合されている。
【0020】
図1に示すように、フロントフロア3の下方には、複数のバッテリ9がバッテリ制御機器10等とともに搭載されている。バッテリ9は、例えば、車両駆動用のモータを駆動するための高圧バッテリである。複数のバッテリ9は、バッテリ制御機器10等とともにケーシング11内に収納され、その状態で矩形枠状のバッテリフレーム12に支持されている。
なお、バッテリ9は、車両駆動用のモータを駆動するための高圧バッテリに限定されない。バッテリ9は、車両駆動用のモータ以外の補機類を駆動するためのモータであっても良い。
【0021】
バッテリフレーム12は、複数のバッテリ9の外側周囲を覆い、少なくともバッテリ9の後方を覆う後フレーム部12rを有する。後フレーム部12rは、車幅方向に沿って延び、バッテリフレーム12の左右の側部フレーム部12s(図2参照)に連結されている。バッテリフレーム12は、図示しない連結部材を介して左右のサイドシル6や図示しないフロントクロスメンバ等に連結されている。
【0022】
リヤフロア5の中央部には、下方に向かって凹状に窪むタイヤパン14が形成されている。タイヤパン14には、スペアタイヤ15が横置きにして収納可能とされている。本実施形態では、タイヤパン14の底面は、前方側に向かって下方に傾斜している。このため、タイヤパン14内に横置きにして収納されたスペアタイヤ15は、前部側が下方に傾斜した姿勢に維持される。こうしてタイヤパン14に収納されたスペアタイヤ15は、少なくとも一部(例えば、車幅方向の中央領域の前部)が、バッテリフレーム12の後フレーム部12rと前後方向で重なる高さ位置に配置されることになる。
【0023】
また、図3に示すように、バッテリフレーム12の後フレーム部12rの車両後方側には、後輪Wrを懸架するためのトーションビーム等のサスペンション部品16が配置されている。サスペンション部品16は、少なくとも一部がバッテリフレーム12の後フレーム部12rと前後方向で重なる高さ配置されている。
本実施形態では、スペアタイヤ15とサスペンション部品16が後部搭載部品を構成している。ただし、後部搭載部品はこれらに限定されない。後部搭載部品は、バッテリフレーム12よりも後方に配置され、車両後方からの衝撃荷重の入力時にリヤフロア5の変形とともに前方側に移動する重量部品であれば、他の部品であっても良い。
【0024】
ここで、バッテリフレーム12の後フレーム部12rは、左右のリヤサイドフレーム7を連結するクロスメンバ13の前方側下方に位置されている。後フレーム部12rとクロスメンバ13とは、車幅方向に離間して配置された一対の補強ブロック20によって連結されている。各補強ブロック20は、後部搭載部品であるスペアタイヤ15とサスペンション部品16に対して前後方向で少なくとも一部が重なる位置に配置されている。補強ブロック20は、後フレーム部12rと、後部搭載部品であるスペアタイヤ15やサスペンション部品16との間に配置されている。
なお、本実施形態では、補強ブロック20が一対(二つ)設けられているが、補強部材20の設置数は二つに限らず、一つや三つ以上であっても良い。
【0025】
図3に示すように、補強ブロック20は、前端部側が図示しない連結壁によって相互に連結された一対の側壁20sを備えている。一対の側壁20sは、車幅方向に一定幅に離間した状態で鉛直方向に起立している。一対の側壁20sは、前端部側の連結壁とともに略コ字状の水平断面形状を形成している。一対の側壁20sの下端側と上端側には、夫々下部締結壁20lと上部締結壁20uが連結されている。下部締結壁20lは、バッテリフレーム12の後フレーム部12r(例えば、後フレーム部12rの上壁)にボルト締結されている。また、上部締結壁20uは、クロスメンバ13(例えば、クロスメンバ13の下壁)にボルト締結されている。
なお、本実施形態では、下部締結壁20lがバッテリフレーム12の後フレーム部12rに直接ボルト締結されているが、後フレーム部12rに締結片を溶接等によって固定し、その締結壁に下部締結壁20lをボルト締結するようにしても良い。
また、後フレーム部12rやクロスメンバ13に対する補強ブロック20の固定はボルト締結に限定されない。補強ブロック20は、例えば、後フレーム部12rやクロスメンバ13に対して溶接やリベット止め等によって固定するようにしても良い。
【0026】
補強ブロック20の左右の側壁20sの後辺は、上端側から下方に向かって前方側に傾斜している。この傾斜した各後辺は、後部搭載部品(スペアタイヤ15やサスペンション部品16)と対向する領域において、前方に向かって下方に傾斜する案内面20gを構成している。車両後方からの衝撃荷重の入力時に、後部搭載部品(スペアタイヤ15やサスペンション部品16)が車両前方側に大きく変位したときには、後部搭載部品が補強ブロック20の案内面20gに対して、直接、または、間接的に当接する。
【0027】
また、補強ブロック20の左右の側壁20sは、下端から鉛直上方に延びる下部側前辺20sl(図3参照)と、下部側前辺20slの上端部からさらに上方に向かって後方に傾斜して延びる上部側前辺20su(図3参照)と、を備えている。左右の側壁20sは、下部側前辺20slと上部側前辺20suの境界部付近が、後辺である案内面20gに対して車両前方側に凸状に膨出する膨出領域21を構成している。側壁20sの膨出領域21は、補強ブロック20の案内面20gの前方側への屈曲変形を規制する屈曲規制部を構成している。
なお、膨出領域21を有する補強ブロック20の各側壁20sは、本実施形態における補強壁を構成している。補強ブロック20の左右の側壁20sは、後フレーム部12rの上面とクロスメンバ13の下面の間に延在し、バッテリ9やバッテリ制御機器10を収容するケーシング11の後面の上部領域(後フレーム部12rよりも上部領域)と前後で重なっている。
【0028】
図5は、車両1の後部に後方から衝撃荷重が入力されたときにおけるスペアタイヤ15の挙動を示す車両1の後部の縦断面図である。
つづいて、図5を参照して、車両1の後部に後方から衝撃荷重が入力されたときにおける各部の挙動とエネルギー吸収について説明する。なお、車両1の後部には、他の車両等の対象物50(図1参照)から衝撃荷重が入力されるものとする。
【0029】
車両後部に衝撃荷重が入力されると、その衝撃荷重はリヤバンパ等を介して最初にリヤサイドフレーム7やリヤフロア5の後部に伝達される。これにより、リヤサイドフレーム7とリヤフロア5が後部側から圧壊変形し、その間に衝撃荷重のエネルギーが吸収される。こうして、車両後方からの衝撃荷重の入力が続くと、タイヤパン14内のスペアタイヤ15やサスペンション部品16が後部から押され、車両前方側に向かって変位するようになる。
【0030】
このとき、スペアタイヤ15やサスペンション部品16は、所定量以上前方に変位すると、補強ブロック20の傾斜した案内面20gに当接し、、図5中の矢印で示すように、案内面20gに誘導されてバッテリフレーム12の後フレーム部12rの下方側に変位するようになる。この結果、スペアタイヤ15やサスペンション部品16は、後フレーム部12rに対して大きな曲げを作用させなくなる。一方、この間にリヤサイドフレーム7やリヤフロア5等の圧壊が進み、衝撃荷重のエネルギーが吸収される。
【0031】
以上のように、本実施形態の車体後部構造は、バッテリフレーム12の後フレーム部12rと後部搭載部品(スペアタイヤ15、サスペンション部品16)の間に補強ブロック20が配置されている。そして、補強ブロック20のうちの、後部搭載部品(スペアタイヤ15、サスペンション部品16)の前方側で後部搭載部品と対向する領域に、前方に向かって下方に傾斜する案内面20gが設けられている。このため、車両後方から衝撃荷重が入力されたときには、補強ブロック20の案内面20gによって後部搭載部品を後フレーム部12rの下方に誘導することができる。
したがって、本実施形態の車体後部構造を採用した場合には、バッテリフレーム12の剛性及び強度を必要以上に高めることなく、後方からの衝撃荷重の入力に対してバッテリ9を保護することができる。よって、本実施形態の車体後部構造を採用することにより、車両の衝突安全性を高め、持続可能な輸送システムの発展に寄与することができる。
【0032】
また、本実施形態の車体後部構造は、補強ブロック20の前部がバッテリフレーム12の後フレーム部12rに結合され、補強ブロック20の後部がクロスメンバ13に結合されている。このため、車両後部に衝撃荷重を受けて後部搭載部品(スペアタイヤ15、サスペンション部品16)が補強ブロック20の案内面20gに当接したときに、その当接荷重を、バッテリフレーム12の後フレーム部12rとリヤサイドフレーム7とに分散して支持させることができる。
したがって、補強ブロック20の前後を、後フレーム部12rとリヤサイドフレーム7とによって高い剛性をもって支持することができる。よって、本構成を採用した場合には、車両後方からの衝撃荷重の入力時に、後部搭載部品からの入力加重を補強ブロック20によって高い剛性をもって受け止め、後部搭載部品を後フレーム部12rの下方に安定して誘導することができる。
【0033】
さらに、本実施形態の車体後部構造では、補強ブロック20の前部がバッテリフレーム12の後フレーム部12rに結合され、補強ブロック20の後部がクロスメンバ13に結合されているため、補強ブロック20が、クロスメンバ13を介して、リヤサイドフレーム7と後フレーム部12rを連結することになる。
したがって、本構成を採用した場合には、車両後部からリヤサイドフレーム7に入力された衝撃荷重をバッテリフレーム12にも分散して伝達することができる。よって、本構成を採用することにより、車両後方からの衝撃荷重の入力時における車体後部の衝撃吸収性能をより高めることができる。
【0034】
また、本実施形態の車体後部構造は、補強ブロック20が補強壁である側壁20sを備え、その側壁20sに、側壁20sの後部の案内面20gに対して車両前方側に凸状に膨出する膨出領域21が設けられている。このため、車両後部に衝撃荷重を受けて後部搭載部品(スペアタイヤ15、サスペンション部品16)が補強ブロック20の案内面20gに当接したときに、補強ブロック20が車両前方側に屈曲変形するのを側壁20sの膨出領域21によって規制することができる。
したがって、本構成を採用した場合には、補強ブロック20の屈曲変形を招くことなく、案内面20gによって後部搭載部品を後フレーム部12rの下方により安定して誘導することができる。
【0035】
さらに、本実施形態の車体後部構造は、リヤサイドフレーム7の前部に、前方に向かって下方に屈曲、若しくは、湾曲する曲がり部7bが設けられ、補強ブロック20の後部が連結されるクロスメンバ13がリヤサイドフレーム7の曲がり部7bの近傍に結合されている。このため、車両後方からリヤサイドフレーム7に衝撃荷重が入力されたときに、折れ起点となり易いリヤサイドフレーム7の曲がり部7bの近傍がクロスメンバ13を介して補強ブロック20によって補強される。したがって、車両後方からリヤサイドフレーム7に衝撃荷重が入力されたときには、曲がり部7bを起点としたリヤサイドフレーム7の上下の折れ変形を規制することができる。
よって、本構成を採用した場合には、車両後部からの衝撃荷重の入力時に、リヤサイドフレーム7を後部から安定して圧壊させ、車両後部の衝撃吸収性能をより高めることができる。
【0036】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
例えば、上記の実施形態では、補強ブロック20の後部がクロスメンバ13に結合されている。しかし、補強ブロック20の後部は、クロスメンバ13以外の部材に結合されるようにしても良い。例えば、補強ブロック20を後フレーム部12fの車幅方向の外側領域に配置する場合には、補強ブロック20の後部は、リヤサイドフレーム7の曲げ部の近傍に直接結合するようにしても良い。
この場合、リヤサイドフレーム7の後方から衝撃荷重が入力されたときに、曲げ部7bを起点としたリヤサイドフレーム7の屈曲変形を、前下方に延びる補強ブロック20によって効率良く規制することができる。
【0037】
また、補強ブロック20は、必ずしもバッテリフレーム12の後フレーム部12rに結合しなくても良く、クロスメンバ13やリヤサイドフレーム7のみに結合するようにしても良い。さらに、補強ブロック20は、クロスメンバ13やリヤサイドフレーム7以外の車体フレーム(フレーム部材)に結合するようにしても良い。
【0038】
さらに、上記の実施形態では、補強ブロック20が左右の側壁20sと連結壁によって略コ状の断面形状に形成されているが、補強ブロック20の形状はこれに限定されない。補強ブロック20は、後部搭載部品の前方側で後部搭載部品と対向する領域に、前方に向かって下方に傾斜する案内面20gを備えるものであれば、他の形状であっても良い。また、補強ブロック20は、中実状のブロックであっても良い。
【0039】
また、上記の実施形態では、補強ブロック20の下端がバッテリフレーム12の後フレーム部12rの上壁に固定され、補強ブロック20の案内面20gが後フレーム部12rの上壁よりも上方側に位置している。しかし、補強ブロック20の案内面20gは、後フレーム部12rの後部面を後方側から覆う位置まで延ばすようにしても良い。
この場合、車両後方からの衝撃荷重の入力時に、後部搭載部材を後フレーム部12rの下方側によりスムーズに誘導することができる。
【符号の説明】
【0040】
3…フロントフロア(フロア)
7…リヤサイドフレーム
7b…曲がり部
9…バッテリ
12…バッテリフレーム
12r…後フレーム部
13…クロスメンバ
15…スペアタイヤ(後部搭載部品)
16…サスペンション部材(後部搭載部品)
20…補強ブロック
20g…案内面
20s…側壁(補強壁)
21…膨出領域
図1
図2
図3
図4
図5