IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大井電気株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-時刻同期装置 図1
  • 特開-時刻同期装置 図2
  • 特開-時刻同期装置 図3
  • 特開-時刻同期装置 図4
  • 特開-時刻同期装置 図5
  • 特開-時刻同期装置 図6
  • 特開-時刻同期装置 図7
  • 特開-時刻同期装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176057
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】時刻同期装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 7/00 20060101AFI20241212BHJP
   G04G 7/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H04L7/00 990
G04G7/00 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094266
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000204424
【氏名又は名称】大井電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 知己
【テーマコード(参考)】
2F002
5K047
【Fターム(参考)】
2F002AD07
2F002BB04
2F002FA16
2F002GA06
5K047AA03
5K047AA18
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、統計的な時刻同期処理を高精度に実行することである。
【解決手段】情報処理部12は、基準パルス信号およびローカルパルス信号についてのタイミング誤差および周波数誤差を求める誤差測定処理を時間経過と共に順次実行する。情報処理部12は、複数回に亘って実行された誤差測定処理による複数個のタイミング誤差と、複数回に亘って実行された誤差測定処理による複数個の周波数誤差とを母集団とする統計処理によって、ローカルパルス信号に対するタイミング制御値および周波数制御値を求める。情報処理部12は、基準パルス信号の精度またはローカルパルス信号の発生源の動作状況に基づいて、統計処理における母集団の大きさを決定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号を受信して得られる受信信号から基準パルス信号を抽出する受信部と、
ローカルパルス信号を生成するローカル時計と、
前記ローカル時計を制御する情報処理部と、を備え、
前記情報処理部は、
前記基準パルス信号が示すパルスタイミングと、前記ローカルパルス信号が示すパルスタイミングとの差異に基づくタイミング誤差と、
先の各前記パルスタイミングに対して求められた前記タイミング誤差と、後の各前記パルスタイミングに対して求められた前記タイミング誤差との差異に基づく周波数誤差と、を求める誤差測定処理を時間経過と共に順次実行し、
複数回に亘って実行された前記誤差測定処理による複数個の前記タイミング誤差と、複数回に亘って実行された前記誤差測定処理による複数個の前記周波数誤差とを母集団とする統計処理によって、タイミング制御値および周波数制御値を求め、
調整処理であって、前記ローカルパルス信号のパルスタイミングを前記タイミング制御値によって調整する処理、および前記ローカルパルス信号の周波数を前記周波数制御値によって調整する処理のうち少なくとも一方を前記ローカルパルス信号に対して実行する調整処理、を実行し、
前記基準パルス信号の精度に基づいて、前記統計処理における母集団の大きさを決定することを特徴とする時刻同期装置。
【請求項2】
請求項1に記載の時刻同期装置であって、
前記基準パルス信号の精度の他、前記ローカルパルス信号の発生源の動作状況に基づいて、前記統計処理における母集団の大きさを決定することを特徴とする時刻同期装置。
【請求項3】
無線信号を受信して得られる受信信号から基準パルス信号を抽出する受信部と、
ローカルパルス信号を生成するローカル時計と、
前記ローカル時計を制御する情報処理部と、を備え、
前記情報処理部は、
前記基準パルス信号が示すパルスタイミングと、前記ローカルパルス信号が示すパルスタイミングとの差異に基づくタイミング誤差と、
先の各前記パルスタイミングに対して求められた前記タイミング誤差と、後の各前記パルスタイミングに対して求められた前記タイミング誤差との差異に基づく周波数誤差と、を求める誤差測定処理を時間経過と共に順次実行し、
複数回に亘って実行された前記誤差測定処理による複数個の前記タイミング誤差と、複数回に亘って実行された前記誤差測定処理による複数個の前記周波数誤差とを母集団とする統計処理によって、タイミング制御値および周波数制御値を求め、
調整処理であって、前記ローカルパルス信号のパルスタイミングを前記タイミング制御値によって調整する処理、および前記ローカルパルス信号の周波数を前記周波数制御値によって調整する処理のうち少なくとも一方を前記ローカルパルス信号に対して実行する調整処理、を実行し、
前記ローカルパルス信号の発生源の動作状況に基づいて、前記統計処理における母集団の大きさを決定することを特徴とする時刻同期装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の時刻同期装置であって、
前記無線信号は、人工衛星から送信される信号であり、
前記受信部は、
前記基準パルス信号の精度を示す品質情報を前記受信信号に基づいて生成し、
前記情報処理部は、
前記品質情報が示す精度が良好でない程、より多くの回数に亘って実行された前記誤差測定処理に基づく前記統計処理を実行することを特徴とする時刻同期装置。
【請求項5】
請求項2または請求項3に記載の時刻同期装置であって、
温度センサを備え、
前記情報処理部は、
前記温度センサが示す温度に基づいて、温度勾配を求め、
前記温度勾配が小さい程、より多くの回数に亘って実行された前記誤差測定処理に基づく前記統計処理を実行することを特徴とする時刻同期装置。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の時刻同期装置であって、
前記情報処理部は、
過去に複数回に亘って実行された前記誤差測定処理による複数個の前記タイミング誤差と、過去に複数回に亘って実行された前記誤差測定処理による複数個の前記周波数誤差に対し、最新の前記調整処理におけるタイミング制御値および周波数制御値に基づく修正処理を施して、前記統計処理を実行することを特徴とする時刻同期装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は時刻同期装置に関し、特に、基準パルス信号を受信し、基準パルス信号に基づいて時刻同期を行う装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の基地局および複数の無線通信端末を備え、各無線通信端末がいずれかの基地局との間で通信を行う無線通信システムが広く用いられている。無線通信システムには、複数の無線通信端末のそれぞれが、いずれかの基地局との間で時分割で通信を行うものがある。各無線通信端末は、移動と共に通信先の基地局を変更する。基地局の変更を円滑に行うため、各基地局間では時刻同期が行われる。
【0003】
時刻同期を行う基地局は、衛星測位システム等の通信システムから信号を受信し、時刻(世界協定時刻等)に同期した基準信号を、受信した信号から抽出する。例えば、引用文献1に記載されている基地局は、GPS(Global Positioning System)の衛星(GPS衛星)から受信した信号から1PPS信号(1Pulse Per Second)を時刻に同期した基準信号として抽出し、1PPS信号を用いて時刻同期処理を行う。ここで、1PPS信号は、世界協定時刻に同期した1秒周期の信号である。基地局は、例えば、1PPS信号に同期したクロック信号を生成し、クロック信号に従うタイミングで動作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-88071号公報
【特許文献2】特開2022-167388号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】豊泉,源田,「GPSによる精密1PPS信号出力」,電学論C.125 125巻8号,2005,p1217~p1222.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1には、1PPS信号の周期の誤差に関する記載がある。一般に、1PPS信号には周期の揺らぎがあることが知られている。また、GPSとは異なる他の衛星測位システムから取得する基準信号も周期が揺らぐことが考えられる。近年では、無線通信システムを構成する各装置の動作が高速化されており、基準信号の周期(周波数)が揺らいだ場合には、無線通信システムの性能が十分に発揮されないことがある。
【0007】
そこで、特許文献2では、基準信号とクロック信号とのタイミング誤差を過去複数回に亘って取得し、複数回に亘って取得されたタイミング誤差の統計値に従って、クロック信号の周波数または位相を制御する技術が提案されている。しかし、このような統計的な同期処理では、統計値を求める際の母集団の選び方によっては、同期処理の精度が不十分となる場合がある。
【0008】
本発明の目的は、統計的な時刻同期処理を高精度に実行することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、無線信号を受信して得られる受信信号から基準パルス信号を抽出する受信部と、ローカルパルス信号を生成するローカル時計と、前記ローカル時計を制御する情報処理部と、を備え、前記情報処理部は、前記基準パルス信号が示すパルスタイミングと、前記ローカルパルス信号が示すパルスタイミングとの差異に基づくタイミング誤差と、先の各前記パルスタイミングに対して求められた前記タイミング誤差と、後の各前記パルスタイミングに対して求められた前記タイミング誤差との差異に基づく周波数誤差と、を求める誤差測定処理を時間経過と共に順次実行し、複数回に亘って実行された前記誤差測定処理による複数個の前記タイミング誤差と、複数回に亘って実行された前記誤差測定処理による複数個の前記周波数誤差とを母集団とする統計処理によって、タイミング制御値および周波数制御値を求め、調整処理であって、前記ローカルパルス信号のパルスタイミングを前記タイミング制御値によって調整する処理、および前記ローカルパルス信号の周波数を前記周波数制御値によって調整する処理のうち少なくとも一方を前記ローカルパルス信号に対して実行する調整処理、を実行し、前記基準パルス信号の精度に基づいて、前記統計処理における母集団の大きさを決定することを特徴とする。
【0010】
望ましくは、前記基準パルス信号の精度の他、前記ローカルパルス信号の発生源の動作状況に基づいて、前記統計処理における母集団の大きさを決定する。
【0011】
本発明は、無線信号を受信して得られる受信信号から基準パルス信号を抽出する受信部と、ローカルパルス信号を生成するローカル時計と、前記ローカル時計を制御する情報処理部と、を備え、前記情報処理部は、前記基準パルス信号が示すパルスタイミングと、前記ローカルパルス信号が示すパルスタイミングとの差異に基づくタイミング誤差と、先の各前記パルスタイミングに対して求められた前記タイミング誤差と、後の各前記パルスタイミングに対して求められた前記タイミング誤差との差異に基づく周波数誤差と、を求める誤差測定処理を時間経過と共に順次実行し、複数回に亘って実行された前記誤差測定処理による複数個の前記タイミング誤差と、複数回に亘って実行された前記誤差測定処理による複数個の前記周波数誤差とを母集団とする統計処理によって、タイミング制御値および周波数制御値を求め、調整処理であって、前記ローカルパルス信号のパルスタイミングを前記タイミング制御値によって調整する処理、および前記ローカルパルス信号の周波数を前記周波数制御値によって調整する処理のうち少なくとも一方を前記ローカルパルス信号に対して実行する調整処理、を実行し、前記ローカルパルス信号の発生源の動作状況に基づいて、前記統計処理における母集団の大きさを決定することを特徴とする。
【0012】
望ましくは、前記無線信号は、人工衛星から送信される信号であり、前記受信部は、
前記基準パルス信号の精度を示す品質情報を前記受信信号に基づいて生成し、前記情報処理部は、前記品質情報が示す精度が良好でない程、より多くの回数に亘って実行された前記誤差測定処理に基づく前記統計処理を実行する。
【0013】
望ましくは、温度センサを備え、前記情報処理部は、前記温度センサが示す温度に基づいて、温度勾配を求め、前記温度勾配が小さい程、より多くの回数に亘って実行された前記誤差測定処理に基づく前記統計処理を実行する。
【0014】
望ましくは、前記情報処理部は、過去に複数回に亘って実行された前記誤差測定処理による複数個の前記タイミング誤差と、過去に複数回に亘って実行された前記誤差測定処理による複数個の前記周波数誤差に対し、最新の前記調整処理におけるタイミング制御値および周波数制御値に基づく修正処理を施して、前記統計処理を実行する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、統計的な時刻同期処理を高精度に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】時刻同期装置の構成を示す図である。
図2】1PPS信号の時間波形と、ローカルパルス信号の時間波形の例を模式的に示す図である。
図3】最新のタイミング制御値および周波数制御値を求める処理を、概念的に示す図である。
図4】時間経過とタイミング誤差との関係の例を示す図である。
図5】ローカル時計が発する時刻信号およびローカルパルス信号についての、時間経過に対する周波数変動の例を示す図である。
図6】ローカル時計の周囲の温度が変化した場合における周波数変動の例を示す図である。
図7】母集団決定マップの例を概念的に示す図である。
図8】、母集団決定マップの具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1には、本発明の実施形態に係る時刻同期装置100の構成が示されている。時刻同期装置100は、例えば、無線通信システムの基地局に搭載され、基地局の動作を規定するクロック信号を出力する。時刻同期装置100は、受信部10、情報処理部12、ローカル時計14、時刻信号出力部16、メモリ18および温度センサ20を備えている。情報処理部12は、タイミング比較部22、制御部24および温度勾配取得部26を備えている。情報処理部12が備える構成要素(タイミング比較部22、制御部24および温度勾配取得部26)の全部または一部は、プログラムを実現することで演算処理を実行する1つまたは複数のプロセッサによって構成されてよい。
【0018】
受信部10は、人工衛星であるGPS衛星から送信された無線信号を受信する。受信部10は、無線信号を受信して得られる受信信号から1PPS信号を抽出し、タイミング比較部22に出力する。1PPS信号は、1秒ごとに立ち上がるパルスを含む基準パルス信号である。
【0019】
ローカル時計14は、等時間間隔でパルスが立ち上がることでタイミングを規定する時刻信号を生成し、時刻信号出力部16に出力する。時刻信号出力部16は、時刻信号が示すタイミングに同期したクロック信号を出力する。時刻信号出力部16は、時刻信号が示すタイミングに同期したタイミング信号を生成してもよい。タイミング信号は、搭載先の装置の動作タイミングを規定する信号である。ローカル時計14は、1秒ごとに立ち上がるパルスを含むローカルパルス信号を、時刻信号に基づいて生成し、タイミング比較部22に出力する。
【0020】
タイミング比較部22は、1PPS信号のパルスタイミングから、ローカルパルス信号のパルスタイミングを減算したタイミング誤差terrを、時間経過と共に順次求める。ここで、本実施形態におけるパルスタイミングとは、信号が立ち上がる時刻をいう。ローカルパルス信号のパルスタイミングが1PPS信号のパルスタイミングに対して遅れているときは、タイミング誤差は負となり、ローカルパルス信号のパルスタイミングが1PPS信号のパルスタイミングに対して進んでいるときは、タイミング誤差は正となる。
【0021】
図2には、1PPS信号の時間波形(a)と、ローカルパルス信号の時間波形(b)の例が模式的に示されている。図2に示されている例では、ローカルパルス信号が1PPS信号よりも遅れている。1PPS信号のj-1番目のパルスが立ち上がるタイミングに対して、タイミング比較部22はタイミング誤差terr(j-1)を求める。ただし、jは1以上の整数である。1PPS信号のj番目のパルスが立ち上がるタイミングに対して、タイミング比較部22は、タイミング誤差terr(j)を求める。
【0022】
ローカルパルス信号および1PPS信号のj番目のパルスタイミングに対して、タイミング比較部22は、周波数誤差ferr(j)を求める。周波数誤差ferr(j)は、ローカルパルス信号および1PPS信号のj番目のパルスが立ち上がるときのタイミング誤差terr(j)から、ローカルパルス信号および1PPS信号のj-1番目のパルスが立ち上がるタイミング誤差terr(j-1)を減算することで求められる。すなわち、ferr(j)=terr(j)-terr(j-1)である。周波数誤差ferr(j)は、ローカルパルス信号の周波数が増加するときに正となり、ローカルパルス信号の周波数が減少するときに負となる。
【0023】
図1のタイミング比較部22は、時間経過と共に順次、タイミング誤差terr(j)および周波数誤差ferr(j)の組であるTF誤差TF(j)=[terr(j),ferr(j)]を求め、時間経過と共に順次、制御部24に出力する。
【0024】
このように、タイミング比較部22は、基準パルス信号としての1PPS信号が示すパルスタイミングと、ローカルパルス信号が示すパルスタイミングとの差異に基づくタイミング誤差と、先の各パルスタイミングに対して求められたタイミング誤差terr(j-1)と、後の各パルスタイミングに対して求められたタイミング誤差terr(j)との差異に基づく周波数誤差ferr(j)とを求める誤差測定処理を時間経過と共に順次実行する。
【0025】
制御部24は、タイミング比較部22から出力されたTF誤差TF(j)を、時間経過と共に順次、メモリ18に記憶させる。メモリ18に記憶された各TF誤差TF(j)は、後述する統計処理を実行する際に、制御部24によって修正される。この修正は、修正前の値が修正後の値で置き換えられる上書き処理によって行われる。
【0026】
制御部24は、最新のTF誤差TF(i)と、最新のTF誤差TF(i)よりも前に求められたn個のTF誤差TF(i-n)~TF誤差TF(i-1)に対する統計処理によって、タイミング制御値t(i)および周波数制御値f(i)を求める。ここで、タイミング制御値t(i)は、ローカルパルス信号のパルスタイミングをどれだけ調整すべきかを示す値であり、周波数制御値f(i)は、ローカルパルス信号の周波数、すなわち、パルスタイミングの間隔をどれだけ調整すべきかを示す値である。以下、統計処理について説明する。
【0027】
制御部24は、最新の周波数誤差ferr(i)に対応する周波数制御値f(i)を次の(数1)に従って求め、最新のタイミング誤差terr(i)に対応するタイミング制御値t(i)を(数2)に従って求める。
【0028】
【数1】
【0029】
【数2】
【0030】
ここで、(数1)および(数2)に含まれる修正後タイミング誤差terr_c(k)(k=i-n~i)は、(数3)に従って求められる。
【0031】
【数3】
【0032】
(数3)における周波数修正値fad(h)およびタイミング修正値tad(h)は、それぞれ、(数4)および(数5)に従って求められる。
【0033】
【数4】
【0034】
【数5】
【0035】
制御部24は、ローカル時計14を制御して、ローカル時計14が出力するローカルパルス信号の周波数が、(数1)に示される周波数制御値f(i)だけ低くなり、ローカルパルス信号に含まれる各パルスの立ち上がりが、(数2)に示されるタイミング制御値t(i)だけ遅くなるように、ローカルパルス信号が同期する時刻信号のパルスタイミングを調整する。
【0036】
ここで、(数1)で求められる周波数制御値f(i)は、時間変数がi-nからiに至るまでのn段階の時間変化において、等しい刻みでタイミング誤差が変化すると仮定した場合におけるタイミング誤差の変化幅、すなわち、周波数誤差の平均値を示す。(数2)で求められるタイミング制御値t(i)は、時間変数がi-n+1~iに至るまでの、タイミング誤差の平均値を示す。
【0037】
また、(数3)~(数5)は、修正後タイミング誤差terr_c(k)が、元々のタイミング誤差terr(k)に、過去の時間刻みのそれぞれで求められた周波数制御値およびタイミング制御値が累積的に減算された値となることを示している。
【0038】
図3には、最新のタイミング制御値t(i)および周波数制御値f(i)を、(数1)~(数5)に従って求める処理が、概念的に示されている。図3に示された1つの矩形は、1つのTF誤差TF(j)=[terr(j),ferr(j)]を表している。時間軸上における最も右側の矩形は、最新のTF誤差TF(i)=[terr(i),ferr(i)]に相当する。
【0039】
最初のステップS0では、制御部24は、TF誤差TF(-n)~TF(0)に対する統計処理によって、最新のタイミング制御値t(0)および周波数制御値f(0)を求める。制御部24は、最新のTF誤差TF(0)を構成するタイミング誤差terr(0)および周波数誤差ferr(0)から、それぞれ、タイミング制御値t(0)および周波数制御値f(0)を減算して、修正後のTF誤差TF(0)を求める(修正処理SS0)。
【0040】
制御部24は、修正処理SS0を実行すると共にローカル時計14に対する調整処理を実行する。すなわち、制御部24はローカル時計14を制御して、ローカル時計14が出力するローカルパルス信号の周波数が周波数制御値f(0)だけ減少し、ローカルパルス信号のパルスタイミングがタイミング制御値t(0)だけ遅くなるように、ローカルパルス信号が同期する時刻信号のパルスタイミングを調整する。
【0041】
制御部24は、ステップS1において、TF誤差TF(-n+1)~TF(0)にそれぞれ含まれるタイミング誤差terr(-n+1)~terr(0)のそれぞれから、タイミング制御値t(0)を減算する。制御部24は、さらに、TF誤差TF(-n+1)~TF(0)にそれぞれ含まれる周波数誤差ferr(-n+1)~ferr(0)のそれぞれから、周波数制御値f(0)を減算する。これによって、修正後のTF誤差TF(-n+1)~TF(0)が求められる(修正処理ST0)。
【0042】
制御部24は、ステップS1において、TF誤差TF(-n+1)~TF(1)に対する統計処理によって、最新のタイミング制御値t(1)および周波数制御値f(1)を求める。制御部24は、最新のTF誤差TF(1)を構成するタイミング誤差terr(1)および周波数誤差ferr(1)から、それぞれ、タイミング制御値t(1)および周波数制御値f(1)を減算して、修正後のTF誤差TF(1)を求める(修正処理SS1)。
【0043】
制御部24は、修正処理SS1を実行すると共にローカル時計14に対する調整処理を実行する。すなわち、制御部24はローカル時計14を制御して、ローカル時計14が出力するローカルパルス信号の周波数が周波数制御値f(1)だけ減少し、ローカルパルス信号のパルスタイミングがタイミング制御値t(1)だけ遅くなるように、ローカルパルス信号が同期する時刻信号のパルスタイミングを調整する。
【0044】
制御部24は、ステップS2において、TF誤差TF(-n+2)~TF(1)にそれぞれ含まれるタイミング誤差terr(-n+2)~terr(1)のそれぞれから、タイミング制御値t(1)を減算する。制御部24は、さらに、TF誤差TF(-n+2)~TF(1)にそれぞれ含まれる周波数誤差ferr(-n+2)~ferr(1)のそれぞれから、周波数制御値f(1)を減算する。これによって、修正後のTF誤差TF(-n+2)~TF(1)が求められる(修正処理ST1)。
【0045】
制御部24は、ステップS2において、TF誤差TF(-n+2)~TF(2)に対する統計処理によって、最新のタイミング制御値t(2)および周波数制御値f(2)を求める。制御部24は、最新のTF誤差TF(2)を構成するタイミング誤差terr(2)および周波数誤差ferr(2)から、それぞれ、タイミング制御値t(2)および周波数制御値f(2)を減算して、修正後のTF誤差TF(2)を求める(修正処理SS2)。
【0046】
制御部24は、修正処理SS2を実行すると共にローカル時計14に対する調整処理を実行する。すなわち、制御部24はローカル時計14を制御して、ローカル時計14が出力するローカルパルス信号の周波数が周波数制御値f(2)だけ減少し、ローカルパルス信号のパルスタイミングがタイミング制御値t(2)だけ遅くなるように、ローカルパルス信号が同期する時刻信号のパルスタイミングを調整する。
【0047】
このように、制御部24は、ステップSjにおいて、TF誤差TF(-n+j)~TF(j-1)にそれぞれ含まれるタイミング誤差terr(-n+j)~terr(j-1)のそれぞれから、タイミング制御値t(j-1)を減算する。制御部24は、さらに、TF誤差TF(-n+j)~TF(j-1)にそれぞれ含まれる周波数誤差ferr(-n+j)~ferr(j-1)のそれぞれから、周波数制御値f(j-1)を減算する。これによって、修正後のTF誤差TF(-n+j)~TF(j-1)が求められる(修正処理SSj)。
【0048】
制御部24は、ステップSjにおいて、TF誤差TF(-n+j)~TF(j)に対する統計処理によって、最新のタイミング制御値t(j)および周波数制御値f(j)を求める。制御部24は、最新のTF誤差TF(j)を構成するタイミング誤差terr(j)および周波数誤差ferr(j)から、それぞれ、タイミング制御値t(j)および周波数制御値f(j)を減算して、修正後のTF誤差TF(j)を求める(修正処理SSj)。
【0049】
制御部24は、修正処理SSjを実行すると共にローカル時計14に対する調整処理を実行する。すなわち、制御部24はローカル時計14を制御して、ローカル時計14が出力するローカルパルス信号の周波数が周波数制御値f(j)だけ減少し、ローカルパルス信号のパルスがタイミング制御値t(j)だけ遅くなるように、ローカルパルス信号が同期する時刻信号のパルスタイミングを調整する。
【0050】
TF誤差TF(j)が生成されるステップSjでは、TF誤差TF(j)よりも前のTF誤差(-n+j)~TF誤差(j-1)のそれぞれが、先のステップSj-1における最新のTF誤差TF(j-1)に対して求められたタイミング制御値t(j-1)および周波数制御値f(j-1)によって、修正される(修正処理STj-1)。
【0051】
その上で、TF誤差(-n+j)~TF誤差(j)に基づく統計処理によって、TF誤差TF(j)に対応する最新のタイミング制御値t(j)および周波数制御値f(j)が求められる(修正処理SSj)。さらには、TF誤差TF(j)が、タイミング制御値t(j)および周波数制御値f(j)によって修正される。
【0052】
このように、制御部24は、過去に複数回に亘って実行された誤差測定処理による複数個のタイミング誤差と、過去に複数回に亘って実行された誤差測定処理による複数個の周波数誤差に対し、最新の調整処理におけるタイミング制御値および周波数制御値(タイミング誤差および周波数誤差)に基づく修正処理を施して、統計処理を実行する。
【0053】
仮に、修正処理STj-1が実行されない上で統計処理が実行された場合、異なるタイミング制御値および異なる周波数制御値によって修正されたTF誤差が混在する母集団に対して統計処理が実行されることとなる。そのため、最新のタイミング制御値および周波数制御値が適切な値とならない。図3に概念的に示される処理によれば、同一の条件によって修正されたTF誤差の母集団に対して統計処理が実行され、最新のタイミング制御値および周波数制御値が適切に求められる。
【0054】
上記のように、タイミング制御値t(i)および周波数制御値f(i)は、複数回(最新の処理を含めて過去に遡ってn+1回)に亘って実行された誤差測定処理による複数個のタイミング誤差と、複数回(最新の処理を含めて過去に遡ってn+1回)に亘って実行された誤差測定処理による複数個の周波数誤差とを母集団とする統計処理によって求められる。より具体的には、最新のTF誤差TF(i)に対応するタイミング制御値t(i)および周波数制御値f(i)は、最新のTF誤差TF(i)と、TF誤差TF(i)よりも前に取得され修正されたn個のTF誤差とを含むn+1個のTF誤差を母集団した統計処理によって求められる。
【0055】
本実施形態に係る時刻同期装置100では、1PPS信号の精度、およびローカルパルス信号の発生源であるローカル時計14の動作状況のうち少なくとも一方に基づいて、統計処理における母集団の大きさが決定される。具体的には、1PPS信号の精度を示す品質情報、およびローカル時計14の周囲の温度のうちの一方または両方に基づいて、統計処理に用いられるTF誤差の個数n+1が定められてよい。品質情報は、例えば、1つまたは複数のGPS衛星から送信される測位信号(無線信号)に基づいて受信部10が生成する。以下の説明では、統計処理に用いられるTF誤差の個数n+1は、統計処理の母集団の大きさN(N=n+1)と称されることがある。
【0056】
(数1)に示されているように、周波数誤差(周波数制御値)は、現時点からn回だけ遡ったタイミング誤差を、最新のタイミング誤差から減算した値をn等分割して求められる。(数2)に示されているように、タイミング誤差(タイミング制御値)は、現時点からn回だけ遡ったタイミング誤差から、n回に亘って一定の傾きで直線的にタイミング誤差が増加すると仮定した場合の積分値を、nで除して平均化したものである。この一定の傾きは、(数1)に従って求められる周波数誤差である。しかし、実際のタイミング誤差は、現時点からn回だけ遡ったタイミング誤差から直線的に増加しないことがある。
【0057】
図4は、時間経過とタイミング誤差との関係の例が示されている。横軸は、離散的な時間を示し、縦軸はタイミング誤差を示す。特性40は、現時点からn回だけ遡ったタイミング誤差から、n回に亘って等しい傾きで直線的に増加するタイミング誤差を示している。特性42は、時間経過と共に、傾きが変化するタイミング誤差を示している。(数1)および(数2)に従って特性40に対する時間積分を行って平均値を求め、周波数誤差を求めてしまったのでは、特性42の傾きから求められる周波数誤差との間で誤差が生じてしまう。この誤差は、周波数誤差を求める時間が長い程、すなわち、母集団の大きさNが大きい程大きくなる。
【0058】
一般に、統計処理の母集団の大きさNが大きい程、時間経過に対してタイミング誤差が曲線的に変化すると捉えることが適切となり、(数2)に示される直線近似が適切でなくなる。また、ローカル時計14の周囲の温度変化が大きい程、タイミング誤差の時間微分の変化が大きくなり、時間経過に対しタイミング誤差が曲線的に変化すると捉えることが適切となる。したがって、ローカル時計14の周囲の温度変化が大きい程、(数2)に示される直線近似が適切でなくなる。
【0059】
図5には、ローカル時計14が発する時刻信号およびローカルパルス信号についての、時間経過に対する周波数変動の例が示されている。横軸は時間[sec]を示し、縦軸は周波数変動[ppb]を示す。ただし、ローカル時計14の周囲の温度は一定である。図5に示されている例では、3600秒で0.02083ppbの周波数変動が認められる。
【0060】
図6には、ローカル時計14の周囲の温度が変化した場合における周波数変動が示されている。横軸は、温度勾配[°C/時間]を示し、縦軸は、周波数誤差検出値と真の周波数誤差との差異を示す。図6に示されている例では、温度勾配が大きい程、周波数誤差検出値が、真の周波数よりも大きくなる。
【0061】
このような周波数誤差の変動による影響を抑制するため、制御部24は、ローカル時計14の周囲の一定時間当たりの温度変化(温度勾配)が大きい程、Nを小さくする。そのような時刻同期装置100について図1に戻って説明する。温度センサ20は、ローカル時計14の周囲の温度を時間経過と共に順次測定し、測定値を時間経過と共に順次、温度勾配取得部26に出力する。温度センサ20は、ローカル時計14の周囲に設置されてよい。温度勾配取得部26は、温度センサ20から時間経過と共に順次、出力された測定値に基づいて、温度勾配[°C/時間]を求め、制御部24に出力する。制御部24は、温度勾配が大きい程、母集団の大きさNを小さくし、温度勾配が小さい程、母集団の大きさNを大きくする。
【0062】
上記のように、1PPS信号には周期の揺らぎがあることが知られている。1PPS信号が示すN個のパルスに対応するTF誤差を母集団とした場合、タイミング誤差を横軸に取り、出現頻度を縦軸に取った分布は正規分布となり、出現頻度が最も高いタイミング誤差が平均値となる。母集団の大きさNが大きい程、出現頻度が最も高いタイミング誤差、すなわち、タイミング誤差の平均値が、真のタイミング誤差となる可能性が高くなる。
【0063】
そこで、受信部10は、GPS衛星から送信された測位信号に基づいて、測位精度を示す品質情報を生成する。品質情報は、例えば、受信された測位信号のレベルを示す情報であってよい。また、品質情報は、DOP(Dilution of Precision)であってもよい。DOPは、複数のGPS衛星の配置状況を示す数値である。DOPが小さい程、配置状況が良好であり、測位精度が高くなる。また、各GPS衛星から送信される測位信号の受信状況が良好でない環境下に受信部10が置かれた場合、DOPが比較的大きくなり、測位精度や1PPS信号の精度が低くなる。
【0064】
時刻同期装置100では次のような処理が実行されてよい。受信部10は、GPS衛星から送信された測位信号に基づく受信信号から品質情報を生成し、品質情報を制御部24に出力する。制御部24は、品質情報が示す測位精度が低い程、母集団の大きさNを大きくし、品質情報が示す測位精度が高い程、母集団の大きさNを小さくする。受信部10は、例えば、複数のGPS衛星から送信された測位信号に基づく各受信信号から品質情報としてDOPを生成する。DOPが小さい程、測位精度が高くなり、1PPS信号のタイミング誤差が小さくなる。そして、DOPが大きい程、測位精度が低くなり、1PPS信号のタイミング誤差が大きくなる。
【0065】
図7には、母集団の大きさNを決定するための母集団決定マップの例が概念的に示されている。横軸はDOPを示し、縦軸は温度センサ20による測定値に基づいて得られる温度勾配を示す。母集団決定マップは、DOPおよび温度勾配の組に対して、母集団の大きさNが対応付けられたマップである。母集団決定マップは、制御部24またはメモリ18に記憶されてよい。母集団決定マップがメモリ18に記憶される場合、制御部24は、メモリ18に記憶された母集団決定マップを参照する。制御部24は、DOPおよび温度勾配に対応付けられた母集団の大きさNを取得し、母集団の大きさNに応じた統計処理を実行する。
【0066】
図8には、母集団決定マップの具体例が示されている。母集団決定マップでは、DOPが3未満の場合はDOPが小さいと特定される。DOPが2以上6未満の場合はDOPが中間の値であると特定される。DOPが6以上の場合はDOPが大きいと特定される。
【0067】
また、母集団決定マップでは、温度勾配が2[°C/時間]未満の場合は、温度勾配が小さいと特定される。温度勾配が2[°C/時間]以上8[°C/時間]未満の場合は、温度勾配が中間の値であると特定される。温度勾配が8[°C/時間]以上の場合は、温度勾配が大きいと特定される。DOPが、小さい場合、中間の値である場合および大きい場合の3つの場合のそれぞれについて、温度勾配が、小さい場合、中間の値である場合および大きい場合の3つの場合があり、合計9種類の母集団の大きさNが定められている。
【0068】
制御部24は、母集団決定マップを参照し、温度勾配取得部26から出力された温度勾配および受信部10から出力されたDOPに対応する母集団の大きさNを取得し、母集団の大きさNに応じた統計処理を実行する。
【0069】
母集団決定マップによれば、品質情報としてのDOPが示す精度が良好でない程、より多くの回数に亘って実行された誤差測定処理に基づく統計処理が実行される。また、母集団決定マップによれば、温度勾配が小さい程、より多くの回数に亘って実行された誤差測定処理に基づく統計処理が実行される。
【0070】
本実施形態に係る時刻同期装置100によれば、GPS衛星から送信された1PPS信号のパルスタイミングの精度と、ローカル時計14の温度特性に基づいて、統計処理に対する適切な母集団の大きさNが決定される。これによって、ローカル時計14が発する時刻信号およびローカルパルス信号を、1PPS信号に同期させる時刻同期処理が高精度に実行される。
【0071】
なお、上記では、ローカルパルス信号のタイミング誤差および周波数誤差の両者に対して調整処理が実行される実施形態が示された。調整処理は、タイミング誤差および周波数誤差のうち少なくとも一方に対して実行されてよい。この場合、過去に複数回に亘って実行された誤差測定処理による複数個のタイミング誤差と、過去に複数回に亘って実行された誤差測定処理による複数個の周波数誤差に対して実行される修正処理は、タイミング誤差および周波数誤差のうち調整処理が実行された一方または両方に対応して実行される。
【0072】
上記では、衛星測位システムとしてGPSを用いた実施形態が示された。衛星測位システムとしては、GLONASS(Global Navigation Satellite System)等、その他のシステムが用いられてもよい。
【0073】
[本発明の構成]
構成1:無線信号を受信して得られる受信信号から基準パルス信号を抽出する受信部と、
ローカルパルス信号を生成するローカル時計と、
前記ローカル時計を制御する情報処理部と、を備え、
前記情報処理部は、
前記基準パルス信号が示すパルスタイミングと、前記ローカルパルス信号が示すパルスタイミングとの差異に基づくタイミング誤差と、
先の各前記パルスタイミングに対して求められた前記タイミング誤差と、後の各前記パルスタイミングに対して求められた前記タイミング誤差との差異に基づく周波数誤差と、を求める誤差測定処理を時間経過と共に順次実行し、
複数回に亘って実行された前記誤差測定処理による複数個の前記タイミング誤差と、複数回に亘って実行された前記誤差測定処理による複数個の前記周波数誤差とを母集団とする統計処理によって、タイミング制御値および周波数制御値を求め、
調整処理であって、前記ローカルパルス信号のパルスタイミングを前記タイミング制御値によって調整する処理、および前記ローカルパルス信号の周波数を前記周波数制御値によって調整する処理のうち少なくとも一方を前記ローカルパルス信号に対して実行する調整処理、を実行し、
前記基準パルス信号の精度に基づいて、前記統計処理における母集団の大きさを決定することを特徴とする時刻同期装置。
構成2:
構成1に記載の時刻同期装置であって、
前記基準パルス信号の精度の他、前記ローカルパルス信号の発生源の動作状況に基づいて、前記統計処理における母集団の大きさを決定することを特徴とする時刻同期装置。
構成3:
無線信号を受信して得られる受信信号から基準パルス信号を抽出する受信部と、
ローカルパルス信号を生成するローカル時計と、
前記ローカル時計を制御する情報処理部と、を備え、
前記情報処理部は、
前記基準パルス信号が示すパルスタイミングと、前記ローカルパルス信号が示すパルスタイミングとの差異に基づくタイミング誤差と、
先の各前記パルスタイミングに対して求められた前記タイミング誤差と、後の各前記パルスタイミングに対して求められた前記タイミング誤差との差異に基づく周波数誤差と、を求める誤差測定処理を時間経過と共に順次実行し、
複数回に亘って実行された前記誤差測定処理による複数個の前記タイミング誤差と、複数回に亘って実行された前記誤差測定処理による複数個の前記周波数誤差とを母集団とする統計処理によって、タイミング制御値および周波数制御値を求め、
調整処理であって、前記ローカルパルス信号のパルスタイミングを前記タイミング制御値によって調整する処理、および前記ローカルパルス信号の周波数を前記周波数制御値によって調整する処理のうち少なくとも一方を前記ローカルパルス信号に対して実行する調整処理、を実行し、
前記ローカルパルス信号の発生源の動作状況に基づいて、前記統計処理における母集団の大きさを決定することを特徴とする時刻同期装置。
構成4:
構成1または構成2に記載の時刻同期装置であって、
前記無線信号は、人工衛星から送信される信号であり、
前記受信部は、
前記基準パルス信号の精度を示す品質情報を前記受信信号に基づいて生成し、
前記情報処理部は、
前記品質情報が示す精度が良好でない程、より多くの回数に亘って実行された前記誤差測定処理に基づく前記統計処理を実行することを特徴とする時刻同期装置。
構成5:
構成2または構成3に記載の時刻同期装置であって、
温度センサを備え、
前記情報処理部は、
前記温度センサが示す温度に基づいて、温度勾配を求め、
前記温度勾配が小さい程、より多くの回数に亘って実行された前記誤差測定処理に基づく前記統計処理を実行することを特徴とする時刻同期装置。
構成6:
構成1から構成5のいずれか1つに記載の時刻同期装置であって、
前記情報処理部は、
過去に複数回に亘って実行された前記誤差測定処理による複数個の前記タイミング誤差と、過去に複数回に亘って実行された前記誤差測定処理による複数個の前記周波数誤差に対し、最新の前記調整処理におけるタイミング制御値および周波数制御値に基づく修正処理を施して、前記統計処理を実行することを特徴とする時刻同期装置。
【符号の説明】
【0074】
10 受信部、12 情報処理部、14 ローカル時計、16 時刻信号出力部、18 メモリ、20 温度センサ、22 タイミング比較部、24 制御部、26 温度勾配取得部、40,42 特性、100 時刻同期装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8