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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176058
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】導電層付フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20241212BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20241212BHJP
【FI】
B32B27/00 B
B32B7/025
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094269
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹下 翔也
(72)【発明者】
【氏名】竹安 智宏
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA20
4F100AB17
4F100AK25
4F100AK42
4F100AR00A
4F100AR00C
4F100AT00B
4F100BA03
4F100BA07
4F100DE01
4F100DE01A
4F100EH46
4F100EH66
4F100EJ08
4F100EJ54
4F100GB48
4F100JB14
4F100JG01
4F100JG01C
4F100JL14A
4F100JN18
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】アンチブロッキング(AB)層のアンチブロッキング性を確保しつつ、当該AB層における点状欠点の発生を抑制するのに適した、導電層付フィルムを提供する。
【解決手段】本発明の導電層付フィルムFは、基材フィルム10と、AB層11と、導電層12とを備える。AB層11は、厚さ方向Hにおいて基材フィルム10に対して導電層12とは反対側、および/または、厚さ方向Hにおいて基材フィルム10と導電層12との間に配置されている。AB層11は、粒子を含有する。AB層11の厚さ方向Hの断面における粒子の面積割合Xは3%以上である。AB層11の厚さ方向Hの断面における、粒子の面積割合X(%)と、粒子間の距離の変動係数Yとが、下記の式(1)を満たす。
Y ≦ -0.029X+0.995 (1)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、アンチブロッキング層と、導電層とを備える導電層付フィルムであって、
前記アンチブロッキング層が、厚さ方向において前記基材フィルムに対して前記導電層とは反対側、および/または、前記厚さ方向において前記基材フィルムと前記導電層との間に配置され、
前記アンチブロッキング層が粒子を含有し、
前記アンチブロッキング層の前記厚さ方向の断面における、前記粒子の面積割合Xが3%以上であり、
前記アンチブロッキング層の前記厚さ方向の断面における、前記粒子の面積割合X(%)と、前記粒子間の距離の変動係数Yとは、下記の式(1)を満たす、導電層付フィルム。
Y ≦ -0.029X+0.995 (1)
【請求項2】
前記粒子の平均一次粒子径が10nm以上200nm以下である、請求項1に記載の導電層付フィルム。
【請求項3】
前記アンチブロッキング層における前記粒子の含有割合が3質量%以上30質量%以下である、請求項1または2に記載の導電層付フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電層付フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
導電パターン付フィルムとして、例えば、電波送受信用のアンテナフィルム、および、誘電泳動処理用の電極パターン付フィルムが知られている。導電パターン付フィルムは、導電層付フィルムから作製される。導電層付フィルムは、例えば、基材フィルムと、当該フィルム上の導電層とを備える。導電層付フィルムの導電層をパターニングして導電パターン(アンテナフィルムではアンテナコイル)を形成することにより、導電パターン付フィルムを作製できる。導電層付フィルムに関する技術については、例えば、下記の特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-159091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
導電層付フィルムをロールトゥロール方式で効率よく製造する方法は、例えば、次のとおりである。まず、ロールトゥロール方式において、長尺の基材フィルムの片面または両面にアンチブロッキング(AB)層を形成する。これにより、長尺のAB層付き基材フィルムを得る。AB層は、バインダ樹脂と粒子とを含有する。AB層の露出表面は、粒子の存在に起因する突部を有する。次に、ロールトゥロール方式において、AB層付き基材フィルムの片面に導電層を形成する。これにより、長尺の積層フィルムを得る。この積層フィルムは、基材フィルム(導電層側の表面AB層、および/または、基材フィルムに対して導電層とは反対側の背面AB層を有する)と、導電層とを有する。次に、ロールトゥロール方式でのウェットエッチングにより、積層フィルムにおける導電層をパターニングする。この後、積層フィルムから、プレス加工によって導電パターン付フィルムを切り出す。このような製造方法においては、AB層により、積層フィルムのロールにおけるフィルム間のブロッキング(貼り付き)が抑制される。
【0005】
AB層中の粒子は、アンチブロッキング性の観点からは、多い方がよく、また、大きい方がよい。具体的には、AB層中の粒子が多いほど、粒子の凝集体により、AB層の露出表面に大きな突部が形成されやすい。また、AB層中の粒子が大きいほど、AB層の露出表面に大きな突部が形成されやすい。また、突部が大きいほど、ブロッキングは抑制される。
【0006】
しかし、AB層表面の大きすぎる突部は、導電層から形成される上述の導電パターンの欠けおよび断線の原因となるため、点状欠点とされる。具体的には、表面AB層が大きすぎる突部を有し、且つ、表面AB層上において当該突部上を通る導体パターンが形成される場合、当該導体パターンは突部上では破れを有する。導電層付フィルムが配線供給材等として画素パネルの要素として用いられる場合、表面AB層または背面AB層の表面の大きすぎる突部は、点状の表示異常を招くので好ましない(特に近年、VR用途等で高精細化の要求が高まっており、従来では許容されていたサイズの欠点の無い超高品質が必要な場合がある)。このような不具合を招く点状欠点に関し、本発明者は次のような知見を得た。
【0007】
AB層における粒子の分散の均等性が高いほど、点状欠点の発生は抑制される。AB層中の粒子の割合に応じて、点状欠点を生じさせる粒子の偏在化および凝集の程度は異なる。そのため、AB層における粒子の割合と分散状態の調整は、点状欠点の抑制に役立つ。
【0008】
本発明は、アンチブロッキング(AB)層のアンチブロッキング性を確保しつつ、当該AB層における点状欠点の発生を抑制するのに適した、導電層付フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明[1]は、基材フィルムと、アンチブロッキング層と、導電層とを備える導電層付フィルムであって、前記アンチブロッキング層が、厚さ方向において前記基材フィルムに対して前記導電層とは反対側、および/または、前記厚さ方向において前記基材フィルムと前記導電層との間に配置され、前記アンチブロッキング層が粒子を含有し、前記アンチブロッキング層の前記厚さ方向の断面における、前記粒子の面積割合Xが3%以上であり、前記アンチブロッキング層の前記厚さ方向の断面における、前記粒子の面積割合X(%)と、前記粒子間の距離の変動係数Yとは、下記の式(1)を満たす、導電層付フィルムを含む。
Y ≦ -0.029X+0.995 (1)
【0010】
本発明[2]は、前記粒子の平均一次粒子径が10nm以上200nm以下である、上記[1]に記載の導電層付フィルムを含む。
【0011】
本発明[3]は、前記アンチブロッキング層における前記粒子の含有割合が3質量%以上30質量%以下である、上記[1]または[2]に記載の導電層付フィルムを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の導電層付フィルムは、上記のように、粒子を含有するアンチブロッキング(AB)層を基材フィルムの片面側または両面側に備え、且つ、当該AB層における粒子の上記面積割合Xが3%以上である。このような導電層付フィルムは、アンチブロッキング性を確保するのに適する。また、導電層付フィルムにおいては、上記のように、AB層の厚さ方向の断面における、粒子の面積割合X(%)と、粒子間の距離の変動係数Y(粒子間距離がすべて同一である場合(値0)からの、粒子間距離のバラつきを表す)とが、上記の式(1)を満たす。このような導電層付フィルムは、AB層における上述の点状欠点を抑制するのに適する。したがって、本発明の導電層付フィルムは、AB粒子を含有するAB層のアンチブロッキング性を確保しつつ、当該AB層における点状欠点の発生を抑制するのに適する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の導電層付フィルムの一実施形態の断面模式図である。
図2図1に示す導電層付フィルムの製造方法を表す。図2Aはアンチブロッキング層形成工程を表し、図2Bは導電層形成工程を表す。
図3】導電層付フィルムにおいて導電層がパターニングされた場合を表す。
図4図1に示す導電層付フィルムの一変形例の断面模式図である。本変形例では、アンチブロッキング層は、厚さ方向において基材フィルムと導電層との間に配置されている。
図5図1に示す導電層付フィルムの他の変形例の断面模式図である。本変形例では、アンチブロッキング層は、厚さ方向において基材フィルムに対して導電層とは反対側、および、厚さ方向において基材フィルムと導電層との間に配置されている。
図6】実施例および比較例の各導電層付フィルムの、アンチブロッキング層における粒子の面積割合X(%)および粒子間距離の変動係数Yの測定結果をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の導電層付フィルムの一実施形態の導電層付フィルムFは、図1に示すように、基材フィルム10と、AB層11(アンチブロッキング層)と、導電層12とを備える。導電層付フィルムFは、具体的には、AB層11と、基材フィルム10と、導電層12とを厚さ方向Hにこの順で備える。導電層付フィルムFは、厚さ方向Hと直交する方向(面方向)に広がる。導電層付フィルムFは、例えば、導電パターン付フィルムを作製するための積層フィルムである。導電パターン付フィルムとしては、例えば、誘電泳動処理用の電極パターン付基材フィルム、および、電波送受信用のアンテナフィルム(導電パターンとしてアンテナコイルを有する)が挙げられる。
【0015】
基材フィルム10は、導電層付フィルムFの強度を確保する基材である。基材フィルム10は、第1面10aと、当該第1面10aとは反対側の第2面10bとを有する。また、基材フィルム10は、例えば、可撓性を有する透明な樹脂フィルムである。基材フィルム10の材料としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース樹脂、およびポリスチレン樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、およびポリエチレンナフタレートが挙げられる。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびシクロオレフィンポリマーが挙げられる。アクリル樹脂としては、例えばポリメタクリレートが挙げられる。基材フィルム10の材料は、透明性および強度の観点から、好ましくはポリエステル樹脂であり、より好ましくはPETである。
【0016】
基材フィルム10の厚さは、導電層付フィルムFの強度を確保する観点から、好ましくは30μm以上、より好ましくは70μm以上、更に好ましくは100μm以上である。基材フィルム10の厚さは、ロールトゥロール方式における基材フィルム10の取り扱い性を確保する観点から、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは150μm以下である。
【0017】
基材フィルム10の全光線透過率(JIS K 7375-2008)は、基材フィルム10および導電層付フィルムFにおいて、良好な光透過性を確保する観点から、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上である。基材フィルム10の全光線透過率は、例えば100%以下である。
【0018】
基材フィルム10の第1面10aおよび/または第2面10bは、表面改質処理されていてもよい。表面改質処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、プライマー処理、グロー処理、およびカップリング剤処理が挙げられる。
【0019】
AB層11は、基材フィルム10の第1面10a側に配置されている。すなわち、AB層11は、厚さ方向Hにおいて、基材フィルム10に対して導電層12とは反対側に配置されている。AB層11は、本実施形態では、第1面10a上に配置されている。すなわち、AB層11は、本実施形態では第1面10aに接する。
【0020】
AB層11は、導電層付フィルムFのロールにおけるフィルム間のブロッキング(貼り付き)を抑制するためのアンチブロッキング層である。AB層11は、基材フィルム10とは反対側に表面11aを有する。表面11aは、導電層付フィルムFにおいては露出している。
【0021】
AB層11は、硬化性樹脂組成物の硬化物である。硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂と粒子(アンチブロッキング粒子)とを含有する。すなわち、AB層11は、硬化性樹脂と粒子とを含有する。
【0022】
硬化性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリル樹脂(アクリルウレタン樹脂を除く)、ウレタン樹脂(アクリルウレタン樹脂を除く)、アミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、およびメラミン樹脂が挙げられる。これら硬化性樹脂は、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。AB層11の高硬度の確保の観点からは、硬化性樹脂としては、好ましくは、アクリルウレタン樹脂およびアクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも一つが用いられる。
【0023】
また、硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型樹脂および熱硬化型樹脂が挙げられる。高温加熱せずに硬化可能であるために導電層付フィルムFの製造効率向上に役立つ観点から、硬化性樹脂としては、紫外線硬化型樹脂が好ましい。
【0024】
粒子としては、例えば、無機酸化物粒子および有機粒子が挙げられる。無機酸化物粒子の材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化カルシウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化カドミウム、および酸化アンチモンが挙げられる。有機粒子の材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリル・スチレン共重合体、ベンゾグアナミン、メラミン、およびポリカーボネートが挙げられる。粒子としては、好ましくは無機酸化物粒子が用いられ、より好ましくは、シリカ粒子および/またはジルコニア粒子が用いられる。
【0025】
粒子の平均一次粒子径(D50)は、AB層11のアンチブロッキング性の観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは25nm以上、更に好ましくは30nm以上である。AB層11のアンチブロッキング性は、表面11aにおける突部高さに依存する。AB層11の粒子が大きいほど、表面11aにおける突部高さは大きい傾向にある。粒子の平均一次粒子径は、表面11aにおける点状欠点(大きすぎる突部)を抑制する観点から、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下、更に好ましくは100nm以下、一層好ましくは70nm以下、より一層好ましくは50nm以下である。粒子の平均一次粒子径(D50)は、体積基準の粒度分布におけるメジアン径(小径側から体積累積頻度が50%に達する粒径)であり、例えば、レーザー回析・散乱法によって得られる粒度分布に基づいて求められる。
【0026】
AB層11(硬化性樹脂組成物の固形分)における粒子の割合は、AB層11のアンチブロッキング性の観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上である。AB層11における粒子の割合は、粒子の凝集を抑制して表面11aの点状欠点を抑制する観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは17質量%以下である。
【0027】
AB層11の厚さは、同層のアンチブロッキング性を確保する観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上、更に好ましくは0.5μm以上、特に好ましくは0.8μm以上である。AB層11の厚さは、AB層11の透明性を確保する観点からは、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、更に好ましくは3μm以下である。
【0028】
AB層11の表面11aにおける突部高さは、導電層付フィルムFのロールにおいてブロッキングを抑制する観点から、好ましくは50nm以上、より好ましくは60nm以上、更に好ましくは70nm以上である。表面11aにおける突部高さは、表面11aの点状欠点を抑制する観点から、好ましくは120nm以下、より好ましくは100nm以下、更に好ましくは90nm以下である。導電層付フィルムFにおいて、表面11aの突部が点状欠点になるかどうかは、導電層付フィルムFの用途に応じて異なり、具体的には導電層12の厚さに応じて異なる。また、突部高さとは、AB層11の表面11aにおける平坦面から、当該平坦面から突き出る突部の頂部までの、厚さ方向Hにおける距離である。このような突部高さは、例えば、次のようにして測定できる。
【0029】
まず、FIB(Focused Ion Beam)加工により、AB層11の表面11aの断面形状を観察可能な断面観察用サンプルを作製する。次に、当該サンプルについて、集束イオンビーム走査型電子顕微鏡(品名「Helios G4 UX」,FEI社製)により、断面SEM観察を行って撮像する。その観察において、加速電圧は1kVとし、観察像は二次電子像とし、観察視野が約2μm四方となるように直接倍率を70000倍とする。そして、画像解析ソフトウェア(品名「Image J」,Wayne Rasband社製)により、観察画像に突部(周りの平坦面から突き出る形状を有する突部)が含まれる場合の当該突部の高さを測定する。
【0030】
AB層11の、厚さ方向Hの断面における粒子の面積割合Xは、導電層付フィルムFのアンチブロッキング性の観点から、3%以上であり、より好ましくは5%以上、更に好ましくは7%以上、一層好ましくは9%以上である。粒子の面積割合Xは、粒子の凝集を抑制して、表面11における点状欠点を抑制する観点から、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、更に好ましくは26%以下である。AB層11における粒子の面積割合Xの測定方法は、実施例に関して後述するとおりである。粒子の面積割合Xの調整方法としては、例えば、硬化樹脂層11における粒子含有量の調整が挙げられる。
【0031】
AB層11の厚さ方向Hの断面における、粒子の面積割合X(%)と、粒子間の距離の変動係数Yとは、下記の式(1)を満たす。粒子間距離の変動係数Yは、粒子間距離がすべて同一である場合(値0)からの、粒子間距離のバラつきを表す。AB層11における粒子間距離の変動係数Yの測定方法は、実施例に関して後述するとおりである。粒子間距離の変動係数Yの調整方法としては、例えば、硬化樹脂層11形成用の樹脂組成物に含まれる溶剤の種類の選択および量の調整が挙げられる。粒子間距離の変動係数Yの調整方法としては、硬化樹脂層11形成用の樹脂組成物の塗工時のプロセス条件および塗工後の乾燥条件(乾燥温度など)の調整もが挙げられる。
【0032】
Y ≦ -0.029X+0.995 (1)
【0033】
導電層12は、基材フィルム10の第2面10b側に配置されている。導電層12は、本実施形態では、第2面10b上に配置されている。すなわち、導電層12は、本実施形態では第2面10bに接する。
【0034】
導電層12は、導電材料から形成された層である。導電材料としては、例えば、金属および金属酸化物が挙げられる。金属としては、例えば、銅、銀、ニッケル、クロム、鉄、チタン、および、これらの合金が挙げられる。金属酸化物としては、例えば、インジウム含有複合酸化物が挙げられる。導電材料は、好ましくは金属であり、より好ましくは銅である。
【0035】
導電層12の厚さは、導電層12の低抵抗化の観点、および、導電層12から形成される後述の導体パターン12が、表面11aの突部によって欠け・破断を生じるのを抑制する観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上、更に好ましくは30nm以上、特に好ましくは50nm以上である。導電層12の厚さは、導電層付フィルムFの反りの抑制の観点から、好ましくは1000nm以下、より好ましくは500nm以下、更に好ましくは300nm以下、特に好ましくは200nm以下である。
【0036】
導電層12の比抵抗は、低抵抗性を確保する観点から、好ましくは1×10-3Ω・cm以下、より好ましくは0.5×10-3Ω・cm以下、更に好ましくは0.1×10-3Ω・cm以下である。導電層12の比抵抗は、例えば1×10-8Ω・cm以上である。
【0037】
導電層付フィルムFの全光線透過率(JIS K 7375-2008)は、導電層付フィルムFにおいて、良好な光透過性を確保する観点から、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上である。導電層付フィルムFの全光線透過率は、例えば100%以下である。
【0038】
導電層付フィルムFは、ロールトゥロール方式において、例えば以下のように製造される。
【0039】
まず、図2Aに示すように、基材フィルム10の第1面10a上にAB層11を形成する(AB層形成工程)。本工程では、まず、AB層形成用の硬化性樹脂組成物を調製する。硬化性樹脂組成物は、上述の硬化性樹脂および粒子(アンチブロッキング粒子)と、溶剤とを含有する。溶剤としては、例えば、メチルイソブチルケトン(MIBK)、酢酸エチルおよびトルエンが挙げられる。溶剤としては、好ましくは、MIBKおよび/または酢酸エチルから選択される少なくとも一つが用いられ、より好ましくはMIBKが用いられる。硬化性樹脂組成物の固形分濃度は、硬化樹脂層10内の粒子の分散性を確保して上述の変動係数Yを低減する観点から、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上であり、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。硬化性樹脂組成物の固形分における粒子の割合は、AB層11のアンチブロッキング性の観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上である。硬化性樹脂組成物の固形分における粒子の割合は、硬化樹脂層10内の粒子の分散性を確保して上述の変動係数Yを低減する観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは17質量%以下である。
【0040】
本工程では、次に、基材フィルム10の第1面10a上に硬化性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成する。塗膜の厚さは、硬化樹脂層10内の粒子の分散性を確保して上述の変動係数Yを低減する観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上、更に好ましくは0.5μm以上、特に好ましくは0.8μm以上であり、また、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、更に好ましくは3μm以下である。
【0041】
次に、基材フィルム10上の塗膜を乾燥させる。乾燥温度は、硬化樹脂層10内の粒子の分散性を確保して上述の変動係数Yを低減する観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは75℃以上であり、また、好ましくは120℃未満、より好ましくは110℃以下、更に好ましくは105℃以下である。乾燥時間は、例えば20秒以上であり、例えば2分以下である。
【0042】
硬化性樹脂組成物が紫外線硬化型樹脂を含有する場合には、次に、紫外線照射によって塗膜を硬化させる。硬化性樹脂組成物が熱硬化型樹脂を含有する場合には、加熱によって前記塗膜を硬化させる。
【0043】
次に、図2Bに示すように、基材フィルム10上に導電層12を形成する(導電層形成工程)。具体的には、スパッタリング法により、基材フィルム10の第2面10b上に導電材料を成膜して導電層12を形成する。こうして形成される導電層12は、スパッタ膜である。
【0044】
以上のようにして、導電層付フィルムFを製造できる。
【0045】
導電層付フィルムFでは、図3に示すように、導電層12をパターニングすることによって導電パターン12’を形成できる。所定のエッチングマスクを介して導電層12をエッチング処理することにより、導電層12をパターニングできる。導電パターン12’としては、例えば、誘電泳動処理用の電極パターン、および、アンテナフィルムのアンテナコイルが挙げられる。
【0046】
導電層付フィルムFは、上述のように、アンチブロッキング粒子を含有するAB層11を備える(AB層11におけるAB粒子の上述の面積割合Xは3%以上である)。このような導電層付フィルムFは、アンチブロッキング性を確保するのに適する。
【0047】
また、導電層付フィルムFにおいては、上述のように、AB層11の厚さ方向Hの断面における、粒子の面積割合X(%)と、粒子間の距離の変動係数Yとが、上記式(1)を満たす。このような導電層付フィルムFは、上述の点状欠点を抑制するのに適する。具体的には、後記の実施例および比較例をもって示すとおりである。
【0048】
したがって、導電層付フィルムFは、アンチブロッキング粒子を含有するAB層11のアンチブロッキング性を確保しつつ、AB層11における点状欠点の発生を抑制するのに適する。
【0049】
AB層11は、図4に示すように、厚さ方向Hにおいて基材フィルム10と導電層12との間に配置されてもよい。本変形例において、AB層11は、基材フィルム10の第2面10b上に配置されている。すなわち、当該AB層11は、第2面10bに接する。導電層12は、AB層11の表面11a上に配置されている。すなわち、当該導電層12は、表面11aに接する。このようなAB層11も、導電層付フィルムFにおけるアンチブロッキング層として機能できる。
【0050】
導電層付フィルムFは、図5に示すように、AB層11としてAB層11A,11Bを備えてもよい。AB層11Aは、厚さ方向Hにおいて基材フィルム10に対して導電層12とは反対側に配置されたAB層11であり、図1に示すAB層11と同様である。AB層11Bは、厚さ方向Hにおいて基材フィルム10と導電層12との間に配置されたAB層11であり、図4に示すAB層11と同様である。導電層12は、AB層11Bの表面11a上に配置されている。すなわち、当該導電層12は、AB層11Bの表面11aに接する。AB層11A,11Bは、いずれも、導電層付フィルムFにおけるアンチブロッキング層として機能できる。
【実施例0051】
本発明について、以下に実施例を示して具体的に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。また、以下に記載されている配合量(含有量)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上述の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合量(含有量)、物性値、パラメータなどの上限(「以下」または「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」または「超える」として定義されている数値)に代替できる。
【0052】
〔実施例1〕
まず、紫外線硬化型アクリルウレタン樹脂組成物(品名「アイカアイトロン Z844-22-HL」,アイカ工業製)85質量部と、平均一次粒子径(D50)30nmのシリカ粒子(品名「CSZ9281」,CIKナノテック社製)15質量部と、溶剤としてのメチルイソブチルケトン(MIBK)とを混合して、固形分濃度30質量%の第1硬化性樹脂組成物を調製した。第1硬化性樹脂組成物の固形分における粒子の割合は、15質量%である。また、高屈折率層形成用の第2硬化性樹脂組成物を調製した。第2硬化性樹脂組成物は、平均一次粒子径40nmのジルコニア粒子51質量%を含むアクリル系紫外線硬化性樹脂組成物と、所定の溶剤とを含有する。
【0053】
次に、基材フィルムとしてのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(品名「ルミラー U483」,厚さ125μm,東レ製)の一方の面に、第1硬化性樹脂組成物を塗布して厚さ1.8μmの塗膜を形成した。次に、当該塗膜を乾燥させた。乾燥温度は100℃とし、乾燥時間は30秒間とした。次に、大気雰囲気化での紫外線照射によって当該塗膜を硬化させた。以上のようにして、厚さ1.8μmのアンチブロッキング層としての第1硬化樹脂層を形成した(AB層形成工程)。また、PETフィルムの他方面に、第2硬化性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成した後、当該塗膜を乾燥させて、厚さ1.0μmの第2硬化樹脂層(屈折率1.64の高屈折率層)を形成した(高屈折率層形成工程)。以上のようにして、硬化樹脂層付き基材フィルムを作製した。
【0054】
次に、スパッタリング法により、硬化樹脂層付き基材フィルムにおける第2硬化樹脂層上に、厚さ100nmのCu層を導電層として形成した(導電層形成工程)。スパッタリング法では、ロールトゥロール方式のスパッタ成膜装置(巻取式のDCマグネトロンスパッタリング装置)を使用した。スパッタ成膜装置は、ロールトゥロール方式で硬化樹脂層付き基材フィルムを走行させつつ成膜プロセスを実施できる成膜室を備える。スパッタ成膜の条件は、次のとおりである。
【0055】
スパッタ成膜装置の成膜室内を真空排気した後、成膜室内にスパッタリングガスとしてのArを導入し、成膜室内の気圧を3.0×10-3Torrとした。装置内での硬化樹脂層付き基材フィルムの走行速度は2.0m/分とした。ターゲットとしては、銅ターゲットを用いた。ターゲットに対する電圧印加のための電源としては、DC電源を用いた。DC電源の出力は3.7kWとした。成膜温度(Cu層が積層される硬化樹脂層付き基材フィルムの温度)は40℃とした。
【0056】
以上のようにして、実施例1の長尺の導電層付フィルム(ロールの形態をとる)を作製した。実施例1の導電層付フィルムは、アンチブロッキング層としての第1硬化樹脂層(厚さ1.8μm,シリカ粒子含有)と、基材フィルム(厚さ125μm)と、高屈折率層としての第2硬化樹脂層(厚さ1.0μm,ジルコニア粒子含有)と、Cu層(厚さ100nm)とが順に積層された積層構造を有する。
【0057】
〔比較例1〕
次のこと以外は実施例1の導電層付フィルムと同様にして、比較例1の導電層付フィルムを作製した。第1硬化性樹脂組成物の調製において、MIBKの添加量の調整により、第1硬化性樹脂組成物の固形分濃度を23質量%とした。AB層形成工程において、PETフィルム上に形成される第1硬化性樹脂組成物の塗膜の厚さを1.2μmとし、塗膜の乾燥温度80℃とし、形成される第1硬化樹脂層の厚さを1.2μmとした。
【0058】
〔実施例2〕
まず、紫外線硬化型アクリルウレタン樹脂組成物(品名「リオデュラス TYAB-M110-01」,シリカナノ粒子を5質量%含有,トーヨーケム社製)と、MIBKとを混合して、固形分濃度35質量%の第3硬化性樹脂組成物を調製した。第3硬化性樹脂組成物の固形分における粒子の割合は、5質量%である。
【0059】
次に、基材フィルムとしてのPETフィルム(ルミラー U483,厚さ125μm)の一方の面に、第3硬化性樹脂組成物を塗布して厚さ2.3μmの塗膜を形成した。次に、当該塗膜を乾燥させた。乾燥温度は80℃とし、乾燥時間は30秒間とした。次に、大気雰囲気化での紫外線照射によって当該塗膜を硬化させた。以上のようにして、厚さ2.3μmのアンチブロッキング層としての第1硬化樹脂層を形成した(AB層形成工程)。PETフィルムの他方面には、実施例1に関して上述したのと同様に、厚さ1.0μmの第2硬化樹脂層(屈折率1.64の高屈折率層)を形成した(高屈折率層形成工程)。以上のようにして、硬化樹脂層付き基材フィルムを作製した。
【0060】
この後、実施例1に関して上述した導電層形成工程と同様にして、硬化樹脂層付き基材フィルムにおける第1硬化樹脂層上に、厚さ100nmのCu層を導電層として形成した。以上のようにして、実施例2の導電層付フィルムを作製した。
【0061】
〔実施例3〕
次のこと以外は実施例2の導電層付フィルムと同様にして、実施例3の導電層付フィルムを作製した。第3硬化性樹脂組成物の調製において、MIBKの添加量の調整により、第3硬化性樹脂組成物の固形分濃度を23質量%とした。AB層形成工程において、PETフィルム上に形成される第3硬化性樹脂組成物の塗膜の厚さを1.1μmとし、形成される第1硬化樹脂層の厚さを1.1μmとした。
【0062】
〔実施例4〕
次のこと以外は実施例2の導電層付フィルムと同様にして、実施例4の導電層付フィルムを作製した。第3硬化性樹脂組成物の調製において、MIBKの添加量の調整により、第3硬化性樹脂組成物の固形分濃度を23質量%とした。AB層形成工程において、PETフィルム上に形成される第3硬化性樹脂組成物の塗膜の厚さを1.1μmとし、乾燥温度を120℃とし、形成される第1硬化樹脂層の厚さを1.1μmとした。
【0063】
〔比較例2〕
まず、紫外線硬化型アクリルウレタン樹脂組成物(品名「リオデュラス TYAB-M110-02」,シリカナノ粒子を2質量%含有,トーヨーケム社製)と、MIBKとを混合して、固形分濃度23質量%の第4硬化性樹脂組成物を調製した。第4硬化性樹脂組成物の固形分における粒子の割合は、2質量%である。
【0064】
次に、基材フィルムとしてのPETフィルム(ルミラー U483,厚さ125μm)の一方の面に、第4硬化性樹脂組成物を塗布して厚さ1.1μmの塗膜を形成した。次に、当該塗膜を乾燥させた。乾燥温度は80℃とし、乾燥時間は30秒間とした。次に、大気雰囲気化での紫外線照射によって当該塗膜を硬化させた。以上のようにして、厚さ1.1μmの第1硬化樹脂層を形成した。PETフィルムの他方面には、実施例1に関して上述したのと同様に、厚さ1.0μmの第2硬化樹脂層(屈折率1.64の高屈折率層)を形成した(高屈折率層形成工程)。以上のようにして、硬化樹脂層付き基材フィルムを作製した。
【0065】
この後、実施例1に関して上述した導電層形成工程と同様にして、硬化樹脂層付き基材フィルムにおける第1硬化樹脂層上に、厚さ100nmのCu層を導電層として形成した。以上のようにして、比較例2の導電層付フィルムを作製した。
【0066】
〈粒子の面積割合X〉
実施例1~4および比較例1,2の各導電層付フィルムについて、硬化樹脂層の厚さ方向の断面における粒子の面積割合Xを測定した。具体的には、次のとおりである。
【0067】
まず、FIB加工により、硬化樹脂層表面の断面形状を観察可能な断面観察用サンプルを作製した。次に、当該サンプルについて、集束イオンビーム走査型電子顕微鏡(品名「Helios 600」,Thermo Fisher Scientific社製)により、断面SEM観察を行って撮像した。その観察において、加速電圧は1kVとし、観察像は二次電子像とし、目的観察視野が20μm×25μm四方となるように直接倍率を5000倍とした。そして、画像解析ソフトウェア(品名「Image J」,Wayne Rasband社製)により、観察視野の幅方向における1pixel ごとに、硬化樹脂層の厚さ方向全体における粒子の面積割合を測定し、その測定値の観察視野の幅方向における平均値を粒子面積割合として算出した。その値を表1に示す。
【0068】
〈粒子間距離の変動係数Y〉
実施例1~4および比較例1の各導電層付フィルムについて、第1硬化樹脂層の厚さ方向の断面における粒子間距離の変動係数Yを測定した。具体的には、次のとおりである。
【0069】
まず、FIB加工により、第1硬化樹脂層表面の断面形状を観察可能な断面観察用サンプルを作製した。次に、当該サンプルについて、集束イオンビーム走査型電子顕微鏡(品名「Helios 600」,Thermo Fisher Scientific社製)により、断面SEM観察を行って撮像した。その観察において、加速電圧は1kVとし、観察像は二次電子像とし、目的観察視野が20μm×25μm四方となるように直接倍率を5000倍とした。そして、観察画像の画像解析により、粒子間距離の変動係数Yを求めた。画像解析には、画像解析ソフトウェア「Image J」(Wayne Rasband社製)を使用した。具体的には、次のとおりである。
【0070】
まず、硬化樹脂層における粒子(黒色)と樹脂領域(白色)とを二値化して分ける(第1ステップ)。次に、粒子間(樹脂領域)において任意に選択された点(画素)を中心とする円であって、粒子に接する円(内接円)を、描く(第2ステップ)。次に、第2ステップを樹脂領域内の全ての点(画素)について実行し、円どうしが重なる場合には、より大きい円を残し、より小さい円は残さない(ステップ3)。次に、残っている全ての円の直径について、階級を直径(μm)とし、階級幅を0.05(μm)とし、度数を頻度(%)として、ヒストグラムを生成する(ステップ4)。度数は、円の個数についての頻度である。次に、このヒストグラムに基づき、粒子間距離の平均値xと標準偏差σとを算出する(ステップ5)。次に、粒子間距離の標準偏差σを、粒子間距離の平均値xで除することにより、粒子間距離の変動係数Y(=σ/x)を求めた(ステップ6)。その値を表1に示す。
【0071】
図6は、実施例1~4および比較例1の各導電層付フィルムの、第1硬化樹脂層における粒子の面積割合X(%)および粒子間距離の変動係数Yの測定結果を、プロットしたグラフである。図6のグラフにおいて、横軸は、粒子の面積割合X(%)を表し、縦軸は、粒子間距離の変動係数Yを表す。図6において、プロットE1~E4は、実施例1~4の測定結果を表し、プロットC1は、比較例1の測定結果を表す。直線L1は、Y=-0.029X+0.995の直線である。プロットE1~E4(実施例1~4)は直線L1以下に位置し、プロットC1(比較例1)は直線L1より上に位置する。すなわち、実施例1~4の各導電層付フィルムは下記の式(1)を満たし、比較例1の導電層付フィルムは下記の式(1)を満たさなかった。そして、実施例1~4の導電層付フィルムは、後記の点状欠点の評価において、良好な結果を示した。これに対し、比較例1の導電層付フィルムは、点状欠点の評価において、良好な結果を示さなかった。
【0072】
Y ≦ -0.029X+0.995 (1)
【0073】
〈点状欠点〉
実施例1~4および比較例1,2の各導電層付フィルムについて、点状欠点の個数を調べた。具体的には、所定の欠点検査装置を使用し、下記の装置設定および検出欠点に関する設定において、導電層付フィルムの点状欠点の個数を調べた。そして、観察領域(2cm四方)における高さ3μm以上の突部を、点状欠点として計測した。その結果、実施例1~4の各導電層付フィルムにおける点状欠点の個数は0であり、比較例1の導電層付フィルムにおける点状欠点の個数は20であった。
【0074】
〔装置設定〕
撮影検査範囲:2cm×2cm
対物レンズの倍率:20倍
接眼レンズの倍率:10倍(対物レンズとの総合倍率200倍)
透過/反射:反射測定
撮影画像のピクセルサイズ(実効サイズ):0.7μm/ピクセル
スキャン速度:2.5mm/分
【0075】
〔検出欠点に関する設定〕
最大フェレ径の最小サイズ:1μm
最大フェレ径の最大サイズ:100μm
最小フェレ径の最小サイズ:1μm
最小フェレ径の最大サイズ:100μm
最小フェレ径に対する最大フェレ径の比率(最大フェレ径/最小フェレ径)の最小値:1
最小フェレ径に対する最大フェレ径の比率(最大フェレ径/最小フェレ径)の最大値:1.3
【0076】
〈アンチブロッキング性〉
実施例1~4および比較例1,2の各導電層付フィルムについて、アンチブロッキング性を評価した。具体的には、導電層付フィルムにおける第1硬化樹脂層側表面(導電層とは反対側の表面)にシクロオレフィンポリマー(COP)フィルム(厚さ100μm,ゼオン社製)を押し付けた場合のニュートンリング(この試験では、COPフィルムと導電層付フィルムとの界面での光学的な干渉の模様)の有無を観察した。そして、導電層付フィルムのアンチブロッキング(AB)性について、ニュートンリングが観察されなかった場合を“良”と評価し、ニュートンリングが観察された場合を“不良”と評価した。その結果を表1に示す。比較例2の導電層付フィルムは、第1硬化樹脂層における粒子の面積割合Xが2.23%であり、AB性が不良であった。
【0077】
[評価]
実施例1~4および比較例1,2の導電層付フィルムに関する、粒子の面積割合X、粒子間距離の変動係数Y、および点状欠点の計測数から、以下のことが分かる。アンチブロッキング(AB)層中の粒子の割合に応じて、点状欠点を生じさせる粒子の偏在化および凝集の程度は異なる。そのため、AB層における粒子の割合と分散状態の調整により、点状欠点を抑制できる。また、粒子含有の第1硬化樹脂層中の粒子が少なすぎると、同層においてアンチブロッキング性が得られない。
【0078】
【表1】
【符号の説明】
【0079】
F 導電層付フィルム
H 厚さ方向
10 基材フィルム
10a 第1面
10b 第2面
11 AB層(アンチブロッキング層)
11a 表面
12 導電層
図1
図2
図3
図4
図5
図6