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特開2024-176060生産管理装置、基板処理装置、生産管理方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176060
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】生産管理装置、基板処理装置、生産管理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/00 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
H05K13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094272
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】岡 直希
(72)【発明者】
【氏名】馬渡 道明
(72)【発明者】
【氏名】森田 敬太
(72)【発明者】
【氏名】竹中 裕斗
【テーマコード(参考)】
5E353
【Fターム(参考)】
5E353AA02
5E353CC01
5E353CC21
5E353DD20
5E353EE62
5E353EE90
5E353GG01
5E353HH30
5E353JJ21
5E353JJ48
5E353LL03
5E353LL04
5E353MM04
5E353MM08
5E353QQ11
5E353QQ23
(57)【要約】
【課題】基板処理装置で発生した問題を短時間で解決することができる生産管理装置を提供する。
【解決手段】生産管理装置2は、基板に対して実装関連作業を実行する実行部を備える基板処理装置1から取得された実装関連作業の結果を示す情報に基づいて、装置品質の悪化を検出する状態監視部231と、装置品質の悪化に対処する悪化対処処理を基板処理装置1に実行させる製造指示部260と、悪化対処処理を実行した基板処理装置1による実装関連作業の結果が良化したか否かを確認する効果検証部240と、悪化対処処理として、実行部による実装関連作業の動作条件を変更する動作条件変更処理を実行した基板処理装置1の実装関連作業の結果が良化しない場合、基板処理装置1に他の悪化対処処理を実行させる前に、変更後の動作条件が示す値を変更前の値に戻すロールバック処理を実行させるロールバック処理部250と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対して実装関連作業を実行する実行部を備える基板処理装置から取得された前記実装関連作業の結果を示す情報に基づいて、装置品質の悪化を検出する状態監視部と、
装置品質の悪化に対処する悪化対処処理を前記基板処理装置に実行させる製造指示部と、
悪化対処処理を前記基板処理装置が実行した後、当該悪化対処処理を実行した前記基板処理装置による前記実装関連作業の結果が良化したか否かを確認する効果検証処理を行う効果検証部と、
悪化対処処理として、前記実行部による前記実装関連作業の動作条件を変更する動作条件変更処理を実行した前記基板処理装置の前記実装関連作業の結果が良化しない場合、前記製造指示部が前記基板処理装置に他の悪化対処処理を実行させる前に、変更後の動作条件が示す値を変更前の値に戻すロールバック処理を実行させるロールバック処理部と、を備える、
生産管理装置。
【請求項2】
前記実行部は、複数の作業ユニットを備え、
前記生産管理装置は、前記動作条件変更処理により前記実装関連作業の結果が良化しない場合に、前記ロールバック処理が終了するまで前記動作条件変更処理に関連する前記複数の作業ユニットに対して他の悪化対処処理を実行することを禁止する調停部を備える、
請求項1に記載の生産管理装置。
【請求項3】
前記状態監視部は、前記実行部を構成する複数の作業ユニットそれぞれの装置品質の悪化を検出し、
前記製造指示部は、装置品質の悪化が検出された作業ユニットが関連する前記実装関連作業の動作条件が変更されていた場合に、前記動作条件変更処理を実行させる、
請求項1に記載の生産管理装置。
【請求項4】
前記製造指示部は、装置品質の悪化が検出された作業ユニットが実行した前記実装関連作業の動作条件として、基板に実装すべき部品に関する部品関連情報、ハンドリング条件、および、当該部品の前記実装関連作業に使用される前記実行部を構成する複数の作業ユニットそれぞれに設定される作業ユニット関連情報のいずれかが変更されていた場合、前記動作条件変更処理を実行させる、
請求項3に記載の生産管理装置。
【請求項5】
前記動作条件変更処理は、基板に実装すべき部品に関する部品関連情報、ハンドリング条件、および、当該部品の前記実装関連作業に使用される前記実行部を構成する複数の作業ユニットそれぞれに設定される作業ユニット関連情報のいずれかを変更する処理である、
請求項1に記載の生産管理装置。
【請求項6】
装置品質の悪化は、前記基板処理装置の前記実行部を構成する複数の作業ユニットそれぞれの前記実装関連作業の結果に基づく不良率の悪化を含む、
請求項1に記載の生産管理装置。
【請求項7】
装置品質の悪化は、前記基板処理装置のエラーに起因して発生する非稼働時間の増加を含む、
請求項1に記載の生産管理装置。
【請求項8】
前記基板処理装置は、前記実装関連作業として基板のランドに半田を印刷する印刷装置、および、前記実装関連作業として半田が印刷された基板の所定位置に部品を実装する実装装置のいずれかであり、
装置品質の悪化は、半田の印刷状態あるいは部品の実装状態を検査する検査部から取得される不良率の悪化を含む、
請求項1に記載の生産管理装置。
【請求項9】
基板に対して実装関連作業を行う実行部と、
前記実行部の動作を制御する動作制御部と、
前記実行部を構成する複数の作業ユニットそれぞれの前記実装関連作業の結果に関する情報を外部の装置に通知し、請求項1に記載の生産管理装置からの前記動作条件変更処理および前記ロールバック処理の指示を受信する通知部と、を備え、
前記動作制御部は、受信した指示が示す前記動作条件変更処理および前記ロールバック処理を実行する、
基板処理装置。
【請求項10】
基板に対して実装関連作業を実行する実行部を備える基板処理装置から取得された前記実装関連作業の結果を示す情報に基づいて、装置品質の悪化を検出する状態監視ステップと、
装置品質の悪化に対処する悪化対処処理を前記基板処理装置に実行させる製造指示ステップと、
悪化対処処理を前記基板処理装置が実行した後、当該悪化対処処理を実行した前記基板処理装置による前記実装関連作業の結果が良化したか否かを確認する効果検証処理を行う効果検証ステップと、
悪化対処処理として、前記実行部による前記実装関連作業の動作条件を変更する動作条件変更処理を実行した前記基板処理装置の前記実装関連作業の結果が良化しない場合、前記製造指示ステップで前記基板処理装置に他の悪化対処処理を実行させる前に、変更後の動作条件が示す値を変更前の値に戻すロールバック処理を実行させるロールバック処理ステップと、を含む、
生産管理方法。
【請求項11】
請求項10に記載の生産管理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板に対して実装関連作業を実行する基板処理装置を管理する生産管理装置などに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、生産装置に問題が発生した際に、その問題に対する対処方法を更新しながら対処方法に応じた作業指示を出力し、出力された作業指示により問題が解決されるまで、優先順位の高い作業指示から順に出力する技術が開示されている。これにより、短時間で、生産装置で発生した問題を解決できる可能性が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/142604号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術では、問題の発生原因が部品エラーだった場合、実装関連作業の動作条件を変更する処理が優先的に作業指示として出力され得る。しかしながら、この作業指示により問題が解決されなかった場合、実装関連作業を実行する基板処理装置には変更後の動作条件が設定された状態となっている。このため、その状態で次の作業指示による作業が行われた場合、変更後の動作条件の影響を受けて、問題の真因への到達が困難になり、問題の解決に要する時間が長くなるおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は、基板処理装置で発生した問題を短時間で解決することができる生産管理装置などを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る生産管理装置は、基板に対して実装関連作業を実行する実行部を備える基板処理装置から取得された前記実装関連作業の結果を示す情報に基づいて、装置品質の悪化を検出する状態監視部と、装置品質の悪化に対処する悪化対処処理を前記基板処理装置に実行させる製造指示部と、悪化対処処理を前記基板処理装置が実行した後、当該悪化対処処理を実行した前記基板処理装置による前記実装関連作業の結果が良化したか否かを確認する効果検証処理を行う効果検証部と、悪化対処処理として、前記実行部による前記実装関連作業の動作条件を変更する動作条件変更処理を実行した前記基板処理装置の前記実装関連作業の結果が良化しない場合、前記製造指示部が前記基板処理装置に他の悪化対処処理を実行させる前に、変更後の動作条件が示す値を変更前の値に戻すロールバック処理を実行させるロールバック処理部と、を備える。
【0007】
なお、これらの包括的または具体的な側面は、システム、装置、方法、記録媒体、または、コンピュータプログラムで実現されてもよく、システム、装置、方法、記録媒体、および、コンピュータプログラムの任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る生産管理装置などによれば、基板処理装置で発生した問題を短時間で解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係る生産管理装置が適用される実装ラインを示す図である。
図2】実施の形態に係る生産管理装置の一例を示す構成図である。
図3】実施の形態に係る基板処理装置の一例を示す構成図である。
図4】実施の形態に係る生産管理装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。
【0011】
(実施の形態)
以下、図1から図4を用いて実施の形態に係る生産管理装置および基板処理装置について説明する。
【0012】
図1は、実施の形態に係る生産管理装置が適用される実装ライン40を示す図である。
【0013】
実装ライン40には、基板に対して実装関連作業を実行する実行部を備える基板処理装置が複数備えられている。実装ライン40は、基板に部品(電子部品)を実装して実装基板を生産する機能を有しており、実装対象の基板をそれぞれ供給、受渡し、および、回収する機能を有している。
【0014】
例えば、実装ライン40では、基板供給装置M1と、基板受渡装置M2と、印刷装置M3と、実装装置M4、M5と、リフロー装置M6と、基板回収装置M7と、検査装置M8とが、この並び順で直列に連結されている。基板供給装置M1から検査装置M8までの各装置は、通信ネットワーク30を介してライン管理装置50に接続されている。
【0015】
例えば、印刷装置M3、実装装置M4およびM5ならびに検査装置M8は、実装ライン40に沿って搬送される基板に対して実装関連作業を実行する実行部を備える基板処理装置1(図3参照)の一例である。印刷装置M3が行う実装関連作業は半田印刷作業であり、実装装置M4およびM5が行う実装関連作業は部品実装作業であり、検査装置M8が行う実装関連作業は基板検査作業である。
【0016】
基板供給装置M1によって供給された基板は、基板受渡装置M2を介して印刷装置M3に搬入される。印刷装置M3は、搬入された基板に対して、部品接合用の半田をスクリーン印刷する半田印刷作業を行う。
【0017】
半田印刷された基板は、実装装置M4およびM5に順次受渡される。実装装置M4およびM5は、半田印刷後の基板に対して部品を実装する部品実装作業を実行する。
【0018】
実装装置M4およびM5は、基台、基板搬送部、部品供給装置、および、実装ヘッドなどを備えている。基台には、基板が配置される。基板搬送部は、上流側装置から受け渡された基板を下流側装置へ搬送することができる。部品供給装置は、実装ヘッドに対して部品を供給することができる。部品供給装置には、実装ヘッドに対して部品を供給するための複数のテープフィーダが設けられている。実装ヘッドは、テープフィーダから部品を吸着して取り出し、基板の上方に移動して部品を基板の実装位置に搭載することができる。実装ヘッドには、部品を吸着して保持し個別に昇降可能な吸着ノズルが装着されている。このような実装装置M4およびM5により、部品実装作業が実行される。
【0019】
部品実装後の基板は、リフロー装置M6に搬入され、所定の加熱プロファイルに従って加熱される。これにより、加熱された基板に印刷されている部品接合用の半田が溶融固化する。こうして部品が基板に半田接合されることで、基板に部品を実装した実装基板が完成する。完成した実装基板は、基板回収装置M7に回収される。
【0020】
検査装置M8は、部品が実装された基板の基板検査作業を行う。例えば、検査装置M8は、基板の外観検査を行い、具体的には、半田ブリッジなどの有無の検査や、基板上のゴミの有無の検査などを、カメラなどを用いて行う。また、例えば、検査装置M8は、基板の導通検査などを行ってもよい。
【0021】
次に、生産管理装置2の構成について図2を用いて説明する。
【0022】
図2は、実施の形態に係る生産管理装置2の一例を示す構成図である。なお、図2には、生産管理装置2の他に、基板処理装置1、記憶装置3、通信部4およびデータ作成装置5が示されている。
【0023】
生産管理装置2は、基板処理装置1などの状態を管理する装置である。生産管理装置2が適用された生産フロアには、例えば、実装ライン40、在庫倉庫、準備エリアおよびメンテナンスエリアなどが含まれる。実装ライン40には、上述したように、実装装置M4およびM5、印刷装置M3ならびに検査装置M8などの基板処理装置1が配置される。在庫倉庫には、部品、はんだ、スクリーンマスクなどの材料が保管される。準備エリアでは、台車、フィーダ、ノズルおよびヘッド、ノズルチェンジャなどの作業ユニットおよび基板処理装置1で使用される部品などの実装関連部材、はんだやマスクなどの印刷関連部材の準備が行われる。メンテナンスエリアでは、作業ユニットおよび治具などのメンテナンスが行われる。例えば、作業ユニットはヘッドおよびフィーダなどであり、メンテナンス対象はヘッドを構成するヘッド本体、ヘッド本体が備える1以上のスピンドル、1以上のスピンドルの各々に着脱可能に装着される1以上のノズルおよびフィーダなどである。また、ここで言う治具とは、フィーダ、ノズル、ヘッドなどの調整を行うものであり、その他に設備のヘッド移動機構や搬送機構の調整を行うものであってもよい。作業者は、生産フロアにおける各エリアにおいて生産、準備およびメンテナンスなどの作業を行ったり、各エリア間で部品および作業ユニットの移送の作業を行ったりする。例えば、生産管理装置2は、生産フロアに配置されるコンピュータである。例えば、生産管理装置2が有する機能は、ライン管理装置50に備えられていてもよい。なお、生産管理装置2は、1つの筐体内に設けられたコンピュータであってもよいし、2つ以上の筐体に分けられ、2つ以上のコンピュータによって実現されてもよい。また、生産管理装置2は、生産フロアに配置されなくてもよく、生産フロアの外部に設けられたサーバなどのコンピュータであってもよい。なお、作業者は人に限定されず、上述の作業を行うロボット、作業機構、および自動搬送車を含む。
【0024】
生産管理装置2は、基板処理装置1などの状態に応じて、生産フロアにおける作業者または基板処理装置1などに対して作業指示を出力する装置である。生産管理装置2は、制御部210、記憶制御部220、対策分析部230、効果検証部240、ロールバック処理部250、製造指示部260および取得部270を備える。生産管理装置2は、プロセッサ、メモリなどを含むコンピュータにより実現される。メモリは、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などであり、プロセッサにより実行されるプログラムを記憶することができる。制御部210、記憶制御部220、対策分析部230、効果検証部240、ロールバック処理部250、製造指示部260および取得部270は、プロセッサがメモリに記憶されたプログラムに従って動作することにより実現される。なお、記憶装置3は、生産管理装置2に備えられていてもよい。
【0025】
記憶装置3には、装置品質情報、問題発見ルール、要因推定ルールおよびアクションリストが記憶される。装置品質情報は、基板処理装置1から取得される。
【0026】
制御部210は、生産管理装置2全体の制御を行う処理部であり、記憶制御部220、対策分析部230、効果検証部240、ロールバック処理部250、製造指示部260および取得部270を制御する。
【0027】
記憶制御部220は、取得部270が記憶装置3から装置品質情報を取得したり、対策分析部230などが記憶装置3に記憶された問題発見ルール、要因推定ルールおよびアクションリストなどを用いて処理を行ったりするために記憶装置3を制御する。
【0028】
取得部270は、基板処理装置1などの状態を監視するために用いられる情報を取得する。例えば、取得部270は、基板処理装置1の装置品質情報(具体的には生産性、品質または仕損の有無など)を記憶装置3から取得する。装置品質情報は、基板に対して実装関連作業を実行する実行部を備える基板処理装置1から取得された実装関連作業の結果を示す情報の一例である。装置品質情報は、センサによるセンシング履歴記録であってもよいし、人によって入力されたデータであってもよい。
【0029】
対策分析部230は、状態監視部231、対策決定部232および調停部233を備える。
【0030】
状態監視部231は、装置品質情報に基づいて、装置品質の悪化を検出する。状態監視部231の動作の詳細については後述する。
【0031】
対策決定部232は、状態監視部231が検出した装置品質の悪化の要因を推定し、装置品質の悪化に対処する悪化対処処理(対策)を決定する。対策決定部232の動作の詳細については後述する。
【0032】
調停部233は、実装ライン40において、2以上の問題が同時期に発生する場合に、各問題を解消するための対策に必要なリソース(作業ユニット)が重複するときには、2以上の対策を同時期に実行し、個別に対策の効果を検証することが難しいため、2以上の対策の調停を行う。例えば、調停部233は、2以上の対策のうちの1つの対策が、あるリソースを用いて実行されている間は、当該リソースを用いる他の対策が実行されないように、当該リソースをロックする。
【0033】
製造指示部260は、装置品質の悪化に対処する悪化対処処理を基板処理装置1に実行させる。つまり、製造指示部260は、対策決定部232により決定された対策を基板処理装置1に実行させる。
【0034】
効果検証部240は、悪化対処処理を基板処理装置1が実行した後、当該悪化対処処理を実行した基板処理装置1による実装関連作業の結果が良化したか否かを確認する効果検証処理を行う。効果検証部240の動作の詳細については後述する。
【0035】
ロールバック処理部250は、悪化対処処理として、実行部による実装関連作業の動作条件を変更する動作条件変更処理を実行した基板処理装置1の実装関連作業の結果が良化しない場合、製造指示部260が基板処理装置1に他の悪化対処処理を実行させる前に、変更後の動作条件が示す値を変更前の値に戻すロールバック処理を実行させる。ロールバック処理部250の動作の詳細については後述する。
【0036】
通信部4は、基板処理装置1と生産管理装置2と記憶装置3とデータ作成装置5との通信を行うための通信インタフェースである。
【0037】
データ作成装置5は、基板処理装置1が基板に対して実装関連作業を実行するために用いる生産データを作成する。生産データは、基板に実装すべき部品に関する部品関連情報(部品の形状や寸法を示す情報、いわゆる部品外形)、基板処理装置1(実装装置)によって実装関連作業を行う際のハンドリング条件(基板における部品の装着位置を示す装着位置情報、吸着位置情報、部品を吸着するノズルの形状や寸法、ノズルを備える実装ヘッドの移動速度や加速度)、および、当該部品の実装関連作業に使用される実行部を構成する複数の作業ユニットそれぞれに設定される作業ユニット関連情報などである。
【0038】
次に、基板処理装置1の構成について図3を用いて説明する。
【0039】
図3は、実施の形態に係る基板処理装置1の一例を示す構成図である。なお、図3には、実装ライン40における複数の基板処理装置1(ここでは2つの基板処理装置1)が示されている。また、図3には、ライン管理装置50も示されている。例えば、基板処理装置1は、実装関連作業として基板のランドに半田を印刷する印刷装置M3、および、実装関連作業として半田が印刷された基板の所定位置に部品を実装する実装装置M4またはM5、のいずれかである。
【0040】
基板処理装置1は、主制御部111、動作制御部112、画像処理部113、実行部114、表示部115および通知部116を備える。基板処理装置1は、プロセッサ、メモリなどを含むコンピュータにより実現される。メモリは、ROMおよびRAMなどであり、プロセッサにより実行されるプログラムを記憶することができる。主制御部111、動作制御部112、画像処理部113、実行部114、表示部115および通知部116は、プロセッサがメモリに記憶されたプログラムに従って動作することにより実現される。
【0041】
主制御部111は、基板処理装置1全体の制御を行う処理部であり、動作制御部112、画像処理部113、表示部115および通知部116を制御する。
【0042】
実行部114は、基板に対して実装関連作業を行う。基板処理装置1が印刷装置M3の場合、実行部114は、複数の作業ユニットとして、スキージユニット、ステージ、マスク認識カメラおよび基板認識カメラなどを備え、実装関連作業として半田印刷作業を行う。基板処理装置1が実装装置M4またはM5の場合、実行部114は、複数の作業ユニットとして、水平移動機構、昇降移動機構および基板認識カメラなどを備え、実装関連作業として部品実装作業を行う。
【0043】
動作制御部112は、実行部114の動作を制御する。基板処理装置1が印刷装置M3の場合、動作制御部112は、スキージユニットおよびステージなどの動作を制御する。基板処理装置1が実装装置M4またはM5の場合、動作制御部112は、水平移動機構および昇降移動機構などを制御する。
【0044】
画像処理部113は、基板処理装置1が備えるカメラにより撮影された画像を処理する。基板処理装置1が印刷装置M3の場合、画像処理部113は、マスク認識カメラおよび基板認識カメラなどにより撮影された画像を処理する。基板処理装置1が実装装置M4またはM5の場合、画像処理部113は、基板認識カメラなどにより撮影された画像を処理する。
【0045】
表示部115は、基板処理装置1の現在の状況または基板処理装置1に対して作業を行う作業者への指示などを表示する。
【0046】
通知部116は、実行部114を構成する作業ユニット毎の実装関連作業の結果(具体的には吸着ミス、認識ミス、装着ミス、センサの異常などのトラブルの有無やトラブルの発生頻度を示す情報)に関する情報を外部の装置(例えば生産管理装置2または記憶装置3)に通知し、生産管理装置2からの動作条件変更処理およびロールバック処理の指示を受信する。ここで言う、作業ユニット毎の実装関連作業の結果は、作業ユニットを構成する最小単位の構成物(例えばスピンドル)毎の実装関連作業の結果であってもよい。
【0047】
動作制御部112は、受信した指示が示す動作条件変更処理およびロールバック処理を実行する。具体的には、動作制御部112は、動作条件変更処理の指示を受信することで、実行部114による実装関連作業の動作条件を変更する。また、動作制御部112は、ロールバック処理の指示を受信することで、変更後の動作条件が示す値を変更前の値に戻す処理を実行する。
【0048】
次に、生産管理装置2の動作の詳細について、図4を用いて説明する。
【0049】
図4は、実施の形態に係る生産管理装置2の動作の一例を示すフローチャートである。
【0050】
まず、取得部270は、実装関連作業の結果(基板処理装置1の装置品質情報(具体的には生産性、品質または仕損などの生産指標を示す情報、またはトラブルに関する情報))を取得する(ステップS11)。ここで言う、実装関連作業の結果は、作用ユニット毎であってもよいし、作業ユニットを構成する最小単位の構成物(例えばスピンドル)毎の実装関連作業の結果であってもよい。
【0051】
次に、状態監視部231は、装置品質情報に基づいて、装置品質の悪化を検出する(ステップS12)。例えば、状態監視部231は、装置品質情報を問題発見ルールに照合することで、装置品質の悪化を検出する。例えば、状態監視部231は、基板処理装置1の実行部114を構成する複数の作業ユニット(例えば設備ステージ、設備テーブル、フィーダ台車、ノズル、特定の部品、ヘッド(スピンドル)、フィーダなど)のそれぞれについて、装置品質の悪化があるかを検出する。
【0052】
例えば、装置品質の悪化は、基板処理装置1の実行部114を構成する複数の作業ユニットそれぞれの実装関連作業の結果に基づく不良率の悪化を含んでいてもよいし、基板処理装置1のエラーに起因して発生する非稼働時間の増加(言い換えると稼働率の悪化)を含んでいてもよいし、半田の印刷状態あるいは部品の実装状態を検査する検査部(例えば検査装置M8)から取得される不良率(例えば印刷状態の不良率、実装状態の不良率など)の悪化を含んでいてもよい。また、例えば、装置品質の悪化は、タクトロスの悪化(例えばサイクルタイムまたはスループットの悪化)を含んでいてもよい。
【0053】
例えば、状態監視部231は、装置品質情報が示す、複数の作業ユニットそれぞれの仕損率(実装不良率、印刷不良率など)が、問題発見ルールが示す、複数の作業ユニットそれぞれの仕損率に対して定められた閾値を超えるか否かに応じて、装置品質の悪化を検出してもよい。仕損率は、例えば、吸着ミス回数/総吸着回数、装着ミス回数/総吸着回数、総ミス回数/総吸着回数などにより算出することができる。また、例えば、状態監視部231は、装置品質情報が示す検査装置M8の検査結果のNG率が、問題発見ルールが示す当該NG率に対して定められた閾値を超えるか否かに応じて、装置品質の悪化を検出してもよい。ここで言う、作業ユニットそれぞれの仕損率は、作業ユニットを構成する最小単位の構成物(例えばスピンドル)毎の仕損率であってもよい。
【0054】
次に、生産管理装置2は、悪化対処処理ループを開始する(ステップS13)。具体的には、生産管理装置2は、ステップS14からステップS17までの処理を、ステップS15で「良化」となるまで繰り返す。
【0055】
製造指示部260は、装置品質の悪化に対処する悪化対処処理を基板処理装置1に実行させる(ステップS14)。装置品質の悪化に対処する悪化対処処理(対策)は、対策決定部232により決定される。
【0056】
例えば、対策決定部232は、検出された装置品質の悪化、ならびに、記憶装置3に記憶された要因推定ルールおよびアクションリストに基づいて、対策を決定する。例えば、要因推定ルールには複数の要因が含まれており、アクションリストには複数の対策が含まれており、複数の要因のそれぞれと、複数の対策のそれぞれとは対応付けられている。例えば、1つの要因に複数の対策が対応付けられている場合、複数の対策に優先度が設定される。
【0057】
例えば、要因推定ルールに含まれる、特定ノズルに対して仕損が高い傾向があるという要因と、アクションリストに含まれる、特定ノズルを清掃するという対策、および、特定ノズルを交換するという対策が対応付けられているとする。例えば、装置品質の悪化が特定ノズルの仕損率が高いことを示す場合、上記2つの対策のうち、優先度が高い対策が決定される。
【0058】
例えば、要因推定ルールに含まれる、特定フィーダに対して仕損が高い傾向があるという要因と、アクションリストに含まれる、特定フィーダの確認指示および対策指示という対策、特定フィーダの不調確認指示および対策指示という対策、特定フィーダを清掃するという対策、ならびに、特定フィーダを交換するという対策が対応付けられているとする。例えば、装置品質の悪化が特定フィーダの仕損率が高いことを示す場合、上記4つの対策のうち、優先度が高い対策が決定される。
【0059】
例えば、要因推定ルールに含まれる、特定台車に対して仕損が高い傾向があるという要因と、アクションリストに含まれる、特定台車の取り付け確認指示という対策が対応付けられているとする。例えば、装置品質の悪化が特定台車の仕損率が高いことを示す場合、上記対策が決定される。
【0060】
例えば、要因推定ルールに含まれる、装置品質が悪化した基板処理装置1の動作条件(生産データ)が直近で変更されたという要因と、アクションリストに含まれる、生産データ(部品関連情報、ハンドリング条件など)が変更されたため変更前のものに修正するという対策、生産データが変更されたためデータを見直すという対策、吸着位置情報が変更されたため変更前のものに修正するという対策、および、吸着位置情報が変更されたため吸着位置ティーチを行うという対策が対応付けられているとする。なお、ハンドリング条件とは、基板処理装置1(実装装置)によって部品を吸着および装着する際の制御パラメータを示す情報である。吸着位置情報は、ノズルによって部品を吸着する際の位置(水平方向の位置や高さ方向の位置)を示す情報であり、制御パラメータの一例である。ハンドリング条件は、部品を吸着するノズルの種類(吸着ノズルやチャック)、ノズルの形状や寸法、ノズルを備えた実装ヘッドの移動速度や加速度、吸着位置情報の少なくとも一つを含む。例えば、装置品質の悪化した基板処理装置1の生産データが変更されていた場合、生産データを変更前のものに修正するという対策、および、生産データのデータを見直すという対策のうち、優先度が高い対策が決定される。優先度が高い対策を実行してから対策の効果検証処理がされるまで、後述するリソースロックの観点から、フィーダ、ヘッド(ノズル)、生産データのうち生産データに対する他の対策は実行できないようにする。また、当該生産データに従って実装関連作業を行う複数の作業ユニットに対しても他の対策を実行できないようにしてもよい。
【0061】
例えば、要因推定ルールに含まれる、装置品質が悪化した基板処理装置1の動作条件(ユニットパラメータ:作業ユニット関連情報)が直近で変更されたという要因と、アクションリストに含まれる、ヘッド(ノズル)に関するユニットパラメータ(ヘッドオフセット、吸着位置オフセット、基準点、基準マーク、原点位置、荷重係数など)が変更されたため変更前のものに修正するという対策、および、ヘッド(ノズル)に関するユニットパラメータが変更されたためキャリブレーション指示を行うという対策が対応付けられているとする。例えば、装置品質の悪化した基板処理装置1のヘッド(ノズル)に関するユニットパラメータが変更されていた場合、上記2つの対策のうち、優先度が高い対策が決定される。優先度が高い対策を実行してから対策の効果検証処理がされるまで、後述するリソースロックの観点から、フィーダ、ヘッド(ノズル)、生産データのうちヘッド(ノズル)に対する他の対策は実行できないようにする。
【0062】
例えば、要因推定ルールに含まれる、装置品質が悪化した基板処理装置1の動作条件(フィーダユニットに関するユニットパラメータ)が直近で変更されたという要因と、アクションリストに含まれる、フィーダユニットに関するユニットパラメータ(第1原点、XY地点など)が変更されたためフィーダユニットの調整作業(例えば、フィーダユニットが備えるスプロケットにより部品テープを送る際のテープ送り方向におけるピッチを調整する作業)をするという対策、および、フィーダユニットに関するユニットパラメータ(第2原点)が変更されたため、ノズルによって部品を吸着する際の吸着位置の補正をするという対策が対応付けられているとする。例えば、装置品質の悪化した基板処理装置1のフィーダユニットに関するユニットパラメータ(例えば第1原点および第2原点の少なくとも一方)が変更されていた場合、上記2つの対策(フィーダ送りピッチ調整と吸着位置の補正)のうち、優先度が高い対策が決定される。優先度が高い対策を実行してから対策の効果検証処理がされるまで、後述するリソースロックの観点から、フィーダ、ヘッド(ノズル)、生産データのうちフィーダに対する他の対策は実行できないようにする。
【0063】
ここで、吸着位置の補正とは、ノズルを備える実装ヘッドを位置制御する際の目標位置を補正することである。目標位置は、実装ヘッドが移動する移動平面を表現する座標系(例えば、XY座標系)における位置である。例えば、実装ヘッドにより吸着された部品を含む画像を取得し、当該画像の解析により吸着された部品における所定位置(例えば中心位置)と、ノズルの所定位置(例えば中心位置)とのずれ量を取得し、ずれ量に基づいて目標位置を補正する。ここでのずれ量は、テープフィーダにおけるテープ送り方向におけるずれ量と、テープ送り方向と交差する方向におけるずれ量を含む。第2原点のデータ変更によりずれ量が所定値以上になったとしても、上記で説明した吸着位置の補正により当該ずれ量を所定値未満にすることができ、その結果装置品質の悪化が改善されることがある。
【0064】
例えば、基板処理装置1は、データ作成装置5により作成された生産データに基づいて実装関連作業を実行するが、作業者などにより実装関連作業の動作条件が変更される場合がある。そこで、例えば、製造指示部260は、装置品質の悪化が検出された作業ユニットが関連する実装関連作業の動作条件が変更されていた場合に、後述する動作条件変更処理を実行させる。例えば、装置品質の悪化が検出された作業ユニットが関連する実装関連作業の動作条件が第1条件から第2条件に変更されていた場合、第1条件から第2条件への変更が装置品質の悪化の原因の可能性があるとして、動作条件変更処理が実行され、動作条件が第2条件から第1条件へと変更される。これにより、第1条件から第2条件への変更が装置品質の悪化の原因だった場合には、実装関連作業の結果が良化し得る。
【0065】
例えば、製造指示部260は、装置品質の悪化が検出された作業ユニットが実行した実装関連作業の動作条件として、基板に実装すべき部品に関する部品関連情報、ハンドリング条件、および、当該部品の実装関連作業に使用される実行部114を構成する複数の作業ユニットそれぞれに設定される作業ユニット関連情報のいずれかが変更されていた場合、後述する動作条件変更処理を実行させる。このように、動作条件が示す値を戻すことができ、かつ、動作条件が示す値を戻すことで実装関連作業の結果が良化し得る部品関連情報、ハンドリング条件、作業ユニット関連情報のいずれかが変更されていた場合に、動作条件変更処理が実行されてもよい。
【0066】
次に、効果検証部240は、悪化対処処理を基板処理装置1が実行した後、当該悪化対処処理を実行した基板処理装置1の実行部114による実装関連作業の結果が良化したか否かを確認する効果検証処理を行う(ステップS15)。つまり、効果検証部240は、悪化対処処理を基板処理装置1が実行した後に取得された装置品質情報に基づいて、装置品質の悪化が改善されたか否かを確認する。例えば、効果検証部240は、悪化対処処理を基板処理装置1が実行した後に取得された装置品質情報を問題発見ルールに照合することで、装置品質の悪化が改善されたか否かを確認することができる。
【0067】
基板処理装置1による実装関連作業の結果が良化しないことが確認された場合(ステップS15で「良化していない」)、ロールバック処理部250は、基板処理装置1に実行させた悪化対処処理が動作条件変更処理であるか否かを判定する(ステップS16)。
【0068】
動作条件変更処理は、実行部114による実装関連作業の動作条件を変更する処理である。例えば、動作条件変更処理は、基板に実装すべき部品に関する部品関連情報、および、当該部品の実装関連作業に使用される実行部114を構成する複数の作業ユニットそれぞれに設定される作業ユニット関連情報のいずれかを変更する処理である。具体的には、動作条件変更処理は、生産データ(部品外形、吸着位置情報など)が変更されたため変更前のものに修正するという悪化対処処理(対策)、生産データが変更されたためデータを見直すという悪化対処処理、吸着位置情報が変更されたため変更前のものに修正するという悪化対処処理、作業ユニット関連情報(ヘッドオフセット、吸着位置オフセット、基準点、基準マーク、原点位置、荷重係数など)が変更されたため変更前のものに修正するという悪化対処処理などである。
【0069】
例えば、動作条件変更処理によって、生産データが変更されてもよいし、生産データの元データが変更されてもよいし、生産データに基づいてヘッドまたはフィーダを制御するドライバに、変更に応じた補正量が出力されてもよい。
【0070】
なお、作業ユニット(例えばスピンドル、ノズル、ノズルが装着されるヘッド本体、フィーダなど)の異常を発見するためのセンサによる異常発見に伴う悪化対処処理は、動作条件変更処理の対象とはならない。例えば、作業ユニットの異常(例えばノズルの不調(例えば、ノズル詰まり、ノズルの曲がり、ノズルの汚れなど))がセンサによって発見された場合、作業ユニットの清掃または交換などの悪化対処処理が行われるが、清掃または交換などの悪化対処処理は、動作条件の変更(具体的には部品関連情報、ハンドリング条件、作業ユニット関連情報の変更)の処理ではないためである。
【0071】
ロールバック処理部250は、基板処理装置1に実行させた悪化対処処理が動作条件変更処理でないと判定した場合(ステップS16でNo)、問題の真因へ到達するために、ステップS15で基板処理装置1による実装関連作業の結果が良化することが確認されるまで、他の悪化対処処理について、ステップS14以降の処理が行われる。
【0072】
ロールバック処理部250は、基板処理装置1に実行させた悪化対処処理が動作条件変更処理であると判定した場合(ステップS16でYes)、製造指示部260が基板処理装置1に他の悪化対処処理を実行させる前にロールバック処理を実行させる(ステップS17)。ロールバック処理は、動作条件変更処理による変更後の動作条件が示す値を変更前の値に戻す処理である。
【0073】
例えば、動作条件が作業者などによって第1条件から第2条件に変更されていた場合に、第1条件から第2条件への変更が装置品質の悪化の原因の可能性があるとして、動作条件変更処理が実行され、動作条件が第2条件から第1条件へと変更されたとする。この動作条件変更処理によって、実装関連作業の結果が良化しなかった場合には、第1条件から第2条件への変更が装置品質の悪化の原因ではなかったとして、ロールバック処理が実行され、例えば、動作条件が第1条件から第2条件へ戻される。
【0074】
なお、基板処理装置1が実行した動作条件変更処理に関連する作業ユニットが複数ある場合に、ロールバック処理が終了するまでに当該複数の作業ユニットのいずれかが他の悪化対処処理を実行すると、問題の真因へ到達が困難になるおそれがある。そこで、調停部233は、動作条件変更処理により実装関連作業の結果が良化しない場合に、ロールバック処理が終了するまで動作条件変更処理に関連する複数の作業ユニットに対して他の悪化対処処理を実行することを禁止してもよい。つまり、調停部233は、ロールバック処理が実行されたときに、動作条件変更処理に関連する複数の作業ユニットをロックし、ロールバック処理が終了するまで、当該複数の作業ユニットのロックを継続する。ロールバック処理が終了するまでは、当該複数の作業ユニットに対して他の悪化対処処理を実行することを禁止することで、動作条件が変更された状態で他の悪化対処処理が実行されることを抑制でき、問題の真因へ到達しやすくなる。
【0075】
そして、問題の真因へ到達するために、ステップS15で基板処理装置1による実装関連作業の結果が良化することが確認されるまで、他の悪化対処処理について、ステップS14以降の処理が行われる。
【0076】
基板処理装置1による実装関連作業の結果が良化したことが確認された場合(ステップS15で「良化」)、生産管理装置2は、悪化対処処理ループを終了する(ステップS18)。
【0077】
以上説明した通り、動作条件変更処理を実行した基板処理装置1の実装関連作業の結果が良化しない場合には、ロールバック処理が行われるため、変更後の動作条件が設定された状態の基板処理装置1が変更前の動作条件が設定された状態の基板処理装置1に戻る。変更前の動作条件が設定された状態に戻ってから他の悪化対処処理が行われるため、変更後の動作条件の影響を受けることを抑制できる。このため、問題の真因へ到達しやすくなり、基板処理装置で発生した問題を短時間で解決することができる。
【0078】
(その他の実施の形態)
以上、本開示の生産管理装置2および基板処理装置1について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したもの、および、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の範囲内に含まれる。
【0079】
例えば、上記実施の形態では、生産管理装置2が調停部233を備える例を説明したが、生産管理装置2は、調停部233を備えていなくてもよい。
【0080】
例えば、本開示は、生産管理装置2として実現できるだけでなく、生産管理装置2を構成する構成要素が行うステップ(処理)を含む生産管理方法として実現できる。
【0081】
生産管理方法は、図4に示されるように、基板に対して実装関連作業を実行する実行部114を備える基板処理装置1から取得された実装関連作業の結果を示す情報に基づいて、装置品質の悪化を検出する状態監視ステップ(ステップS11)と、装置品質の悪化に対処する悪化対処処理を基板処理装置1に実行させる製造指示ステップ(ステップS14)と、悪化対処処理を基板処理装置1が実行した後、当該悪化対処処理を実行した基板処理装置1による実装関連作業の結果が良化したか否かを確認する効果検証処理を行う効果検証ステップ(ステップS15)と、悪化対処処理として、実行部114による実装関連作業の動作条件を変更する動作条件変更処理を実行した基板処理装置1の実装関連作業の結果が良化しない場合(ステップS15で「良化していない」、かつ、ステップS16でYes)、製造指示ステップで基板処理装置1に他の悪化対処処理を実行させる前に、変更後の動作条件が示す値を変更前の値に戻すロールバック処理を実行させるロールバック処理ステップ(ステップS17)と、を含む。
【0082】
例えば、本開示は、生産管理方法に含まれるステップを、コンピュータ(プロセッサ)に実行させるためのプログラムとして実現できる。さらに、本開示は、そのプログラムを記録したCD-ROM等である非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体として実現できる。
【0083】
例えば、本開示が、プログラム(ソフトウェア)で実現される場合には、コンピュータのCPU、メモリおよび入出力回路などのハードウェア資源を利用してプログラムが実行されることによって、各ステップが実行される。つまり、CPUがデータをメモリまたは入出力回路などから取得して演算したり、演算結果をメモリまたは入出力回路などに出力したりすることによって、各ステップが実行される。
【0084】
なお、上記実施の形態において、生産管理装置2および基板処理装置1に含まれる各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0085】
上記実施の形態に係る生産管理装置2および基板処理装置1の機能の一部または全ては典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。また、集積回路化はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、またはLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0086】
さらに、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて、生産管理装置2および基板処理装置1に含まれる各構成要素の集積回路化が行われてもよい。
【0087】
その他、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素および機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【0088】
(付記)
以上の実施の形態の記載により、下記の技術が開示される。
【0089】
(技術1)基板に対して実装関連作業を実行する実行部を備える基板処理装置から取得された前記実装関連作業の結果を示す情報に基づいて、装置品質の悪化を検出する状態監視部と、装置品質の悪化に対処する悪化対処処理を前記基板処理装置に実行させる製造指示部と、悪化対処処理を前記基板処理装置が実行した後、当該悪化対処処理を実行した前記基板処理装置による前記実装関連作業の結果が良化したか否かを確認する効果検証処理を行う効果検証部と、悪化対処処理として、前記実行部による前記実装関連作業の動作条件を変更する動作条件変更処理を実行した前記基板処理装置の前記実装関連作業の結果が良化しない場合、前記製造指示部が前記基板処理装置に他の悪化対処処理を実行させる前に、変更後の動作条件が示す値を変更前の値に戻すロールバック処理を実行させるロールバック処理部と、を備える、生産管理装置。
【0090】
これによれば、動作条件変更処理を実行した基板処理装置の実装関連作業の結果が良化しない場合には、ロールバック処理が行われるため、変更後の動作条件が設定された状態の基板処理装置が変更前の動作条件が設定された状態の基板処理装置に戻る。変更前の動作条件が設定された状態に戻ってから他の悪化対処処理が行われるため、変更後の動作条件の影響を受けることを抑制できる。このため、問題の真因へ到達しやすくなり、基板処理装置で発生した問題を短時間で解決することができる。
【0091】
(技術2)前記実行部は、複数の作業ユニットを備え、前記生産管理装置は、前記動作条件変更処理により前記実装関連作業の結果が良化しない場合に、前記ロールバック処理が終了するまで前記動作条件変更処理に関連する前記複数の作業ユニットに対して他の悪化対処処理を実行することを禁止する調停部を備える、技術1に記載の生産管理装置。
【0092】
基板処理装置が実行した動作条件変更処理に関連する作業ユニットが複数ある場合に、ロールバック処理が終了するまでに当該複数の作業ユニットのいずれかが他の悪化対処処理を実行すると、問題の真因へ到達が困難になるおそれがある。したがって、ロールバック処理が終了するまでは、当該複数の作業ユニットに対して他の悪化対処処理を実行することを禁止することで、動作条件が変更された状態で他の悪化対処処理が実行されることを抑制でき、問題の真因へ到達しやすくなる。
【0093】
(技術3)前記状態監視部は、前記実行部を構成する複数の作業ユニットそれぞれの装置品質の悪化を検出し、前記製造指示部は、装置品質の悪化が検出された作業ユニットが関連する前記実装関連作業の動作条件が変更されていた場合に、前記動作条件変更処理を実行させる、技術1または2に記載の生産管理装置。
【0094】
例えば、装置品質の悪化が検出された作業ユニットが関連する実装関連作業の動作条件が第1条件から第2条件に変更されていた場合、第1条件から第2条件への変更が装置品質の悪化の原因の可能性があるとして、動作条件変更処理が実行され、動作条件が第2条件から第1条件へと変更されてもよい。そして、この動作条件変更処理によって、実装関連作業の結果が良化しなかった場合には、第1条件から第2条件への変更が装置品質の悪化の原因ではなかったとして、ロールバック処理が実行され、例えば、動作条件が第1条件から第2条件へ戻される。
【0095】
(技術4)前記製造指示部は、装置品質の悪化が検出された作業ユニットが実行した前記実装関連作業の動作条件として、基板に実装すべき部品に関する部品関連情報、ハンドリング条件、および、当該部品の前記実装関連作業に使用される前記実行部を構成する複数の作業ユニットそれぞれに設定される作業ユニット関連情報のいずれかが変更されていた場合、前記動作条件変更処理を実行させる、技術3に記載の生産管理装置。
【0096】
このように、動作条件が示す値を戻すことができ、かつ、動作条件が示す値を戻すことで実装関連作業の結果が良化し得る部品関連情報、ハンドリング条件、および作業ユニット関連情報が変更されていた場合に、動作条件変更処理が実行されてもよい。
【0097】
(技術5)前記動作条件変更処理は、基板に実装すべき部品に関する部品関連情報、および、ハンドリング条件、当該部品の前記実装関連作業に使用される前記実行部を構成する複数の作業ユニットそれぞれに設定される作業ユニット関連情報のいずれかを変更する処理である、技術1~4のいずれかに記載の生産管理装置。
【0098】
このように、動作条件変更処理は、部品関連情報、ハンドリング条件、および作業ユニット関連情報を変更する処理であってもよい。
【0099】
(技術6)装置品質の悪化は、前記基板処理装置の前記実行部を構成する複数の作業ユニットそれぞれの前記実装関連作業の結果に基づく不良率の悪化を含む、技術1~5のいずれかに記載の生産管理装置。
【0100】
これによれば、不良率が悪化した場合に、悪化対処処理を実行させることができる。
【0101】
(技術7)装置品質の悪化は、前記基板処理装置のエラーに起因して発生する非稼働時間の増加を含む、技術1~6のいずれかに記載の生産管理装置。
【0102】
これによれば、非稼働時間の増加した場合、悪化対処処理を実行させることができる。
【0103】
(技術8)前記基板処理装置は、前記実装関連作業として基板のランドに半田を印刷する印刷装置、および、前記実装関連作業として半田が印刷された基板の所定位置に部品を実装する実装装置のいずれかであり、装置品質の悪化は、半田の印刷状態あるいは部品の実装状態を検査する検査部から取得される不良率の悪化を含む、技術1~7のいずれかに記載の生産管理装置。
【0104】
これによれば、基板処理装置として、印刷装置または実装装置で発生した問題を短時間で解決することができる。
【0105】
(技術9)基板に対して実装関連作業を行う実行部と、前記実行部の動作を制御する動作制御部と、前記実行部を構成する複数の作業ユニットそれぞれの前記実装関連作業の結果に関する情報を外部の装置に通知するとともに、技術1~8のいずれかに記載の生産管理装置からの前記動作条件変更処理および前記ロールバック処理の指示を受信する通知部と、を備え、前記動作制御部は、受信した指示が示す前記動作条件変更処理および前記ロールバック処理を実行する、基板処理装置。
【0106】
これによれば、基板処理装置で発生した問題を短時間で解決することができる基板処理装置を提供することができる。
【0107】
(技術10)基板に対して実装関連作業を実行する実行部を備える基板処理装置から取得された前記実装関連作業の結果を示す情報に基づいて、装置品質の悪化を検出する状態監視ステップと、装置品質の悪化に対処する悪化対処処理を前記基板処理装置に実行させる製造指示ステップと、悪化対処処理を前記基板処理装置が実行した後、当該悪化対処処理を実行した前記基板処理装置による前記実装関連作業の結果が良化したか否かを確認する効果検証処理を行う効果検証ステップと、悪化対処処理として、前記実行部による前記実装関連作業の動作条件を変更する動作条件変更処理を実行した前記基板処理装置の前記実装関連作業の結果が良化しない場合、前記製造指示ステップで前記基板処理装置に他の悪化対処処理を実行させる前に、変更後の動作条件が示す値を変更前の値に戻すロールバック処理を実行させるロールバック処理ステップと、を含む、生産管理方法。
【0108】
これによれば、基板処理装置で発生した問題を短時間で解決することができる生産管理方法を提供することができる。
【0109】
(技術11)技術10に記載の生産管理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【0110】
これによれば、基板処理装置で発生した問題を短時間で解決することができるプログラムを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本開示は、基板処理装置の管理に利用できる。
【符号の説明】
【0112】
1 基板処理装置
2 生産管理装置
3 記憶装置
4 通信部
5 データ作成装置
30 通信ネットワーク
40 実装ライン
50 ライン管理装置
111 主制御部
112 動作制御部
113 画像処理部
114 実行部
115 表示部
116 通知部
210 制御部
220 記憶制御部
230 対策分析部
231 状態監視部
232 対策決定部
233 調停部
240 効果検証部
250 ロールバック処理部
260 製造指示部
270 取得部
M1 基板供給装置
M2 基板受渡装置
M3 印刷装置
M4、M5 実装装置
M6 リフロー装置
M7 基板回収装置
M8 検査装置
図1
図2
図3
図4