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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176061
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】繊維機械システム
(51)【国際特許分類】
   D01H 13/00 20060101AFI20241212BHJP
   B65H 63/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
D01H13/00 Z
D01H13/00 A
B65H63/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094273
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 正俊
(72)【発明者】
【氏名】小林 修一
(72)【発明者】
【氏名】志賀 正和
(72)【発明者】
【氏名】前浪 佑樹
【テーマコード(参考)】
3F115
4L056
【Fターム(参考)】
3F115AA01
3F115CA53
3F115CF39
3F115CG14
4L056AA01
4L056AA45
4L056EB30
4L056EC85
4L056ED01
4L056ED03
4L056ED07
4L056ED11
4L056FB17
(57)【要約】
【課題】優先的な対応が必要な保全情報を端末に表示させる。
【解決手段】繊維機械システム100は、繊維機械1と、管理装置2と、第1端末3~第3端末6と、を備える。繊維機械1は、糸Y1を巻き取ってパッケージP1を形成する巻取装置11を有する。管理装置2は、繊維機械1の稼働に関する稼働情報を管理し、稼働情報から求められる繊維機械1の保全に関する保全情報を第1リストLI1に記憶し、第1リストLI1を基に、保全作業の優先度に関する所定の条件に基づいて、保全作業の優先度が高い保全情報を第2リストLI2に記憶し、第2リストを第2端末4に表示させる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取装置を有する繊維機械と、
前記繊維機械の稼働に関する稼働情報を管理する管理装置と、
前記管理装置と通信可能な端末と、を備え、
前記管理装置は、
前記稼働情報から求められる前記繊維機械の保全に関する保全情報を第1リストに記憶し、
前記第1リストを基に、保全作業の優先度に関する所定の条件に基づいて、保全作業の優先度が高い前記保全情報を第2リストに記憶し、
前記第2リストを前記端末に表示させる、
繊維機械システム。
【請求項2】
前記繊維機械は、前記稼働情報を算出し、算出した前記稼働情報を前記管理装置に送信し、
前記管理装置は、
前記繊維機械から受信した前記稼働情報について異常の診断を行い、
前記診断の結果、異常と判断され保全が必要であると判断された前記稼働情報に基づいて前記保全情報を生成する、請求項1に記載の繊維機械システム。
【請求項3】
前記管理装置は、前記第1リストを前記端末に表示させ、
前記管理装置は、前記保全情報の項目に対して前記端末により入力された入力情報を受信し、
前記管理装置は、前記入力情報が入力された前記保全情報の項目を、前記保全情報の他の項目と異なる態様で表示し、
前記管理装置は、前記入力情報の内容を確定し、前記第1リストを更新し、前記入力情報の内容が確定された前記保全情報の項目を、前記保全情報の他の項目と同じ態様で表示する、
請求項1又は2に記載の繊維機械システム。
【請求項4】
前記管理装置は、前記第1リストを前記端末に表示させ、
前記端末に表示される前記第1リストの前記保全情報の項目数は、前記端末に表示される前記第2リストの前記保全情報の項目数よりも多い、請求項1~3のいずれかに記載の繊維機械システム。
【請求項5】
前記管理装置は、所定の期間内の前記稼働情報と、前記稼働情報に対する診断結果に関する情報と、前記稼働情報を取得した時間に関する情報と、を関連付けて過去データとして第3リストに記憶し、
管理装置は、前記第3リストに記憶された前記稼働情報の内容と前記第1リストに記憶された前記保全情報の内容に基づいて、それぞれの前記保全情報に対して、当該保全情報の基となった稼働情報が初めて異常と診断されたことを示す第1ステータス、当該保全情報の基となった稼働情報が過去に異常と診断され、それに対して保全作業が行われないまま再度異常と診断されたことを示す第2ステータス、又は、当該保全情報の基となった稼働情報が過去に異常と診断され、それに対して保全作業が行われたが再度異常と診断されたことを示す第3ステータスのいずれであるか、を判定する、請求項1~4のいずれかに記載の繊維機械システム。
【請求項6】
保全作業の優先度に関する前記所定の条件は、前記保全情報の生成数が多い前記繊維機械を優先するとの条件である、請求項1~5のいずれかに記載の繊維機械システム。
【請求項7】
保全作業の優先度に関する前記所定の条件は、過去に異常と診断された連続回数が多い稼働情報に基づいて生成された前記保全情報を優先するとの条件である、請求項5に記載の繊維機械システム。
【請求項8】
保全作業の優先度に関する前記所定の条件は、前記第2ステータスを有する前記保全情報、前記第1ステータスを有する前記保全情報、前記第3ステータスを有する前記保全情報の順で優先するとの条件である、請求項5に記載の繊維機械システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保全作業を行うために必要な情報を提供する繊維機械システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、保全作業を行うために必要な情報を提供するシステムが知られている。例えば、糸の巻取効率、糸欠陥の発生頻度等を解析した結果を保全情報として端末に送信するシステムが知られている(例えば、特許文献1を参照)。保全情報には、異常の発生箇所に関する情報、異常の内容に関する情報等が含まれている。このシステムでは、端末にて保全情報を確認した場合には、当該保全情報を解消する作業等の対応を繊維機械に対して行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-92707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のシステムでは、対応が不要、又は、対応の優先度が低い保全情報も含めて全ての保全情報が端末に表示されていた。このため、従来のシステムでは、対応が不要、又は、対応の優先度が低い保全情報に対する作業等がなされる一方で、対応の優先度が高い保全情報に対する作業等が遅れることがあった。
【0005】
本発明の目的は、繊維機械の保全情報を端末に表示させる繊維機械システムにおいて、対応が必要な保全情報を端末に表示させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一見地に係る繊維機械システムは、繊維機械と、管理装置と、端末と、を備える。繊維機械は、糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取装置を有する。管理端末は、繊維機械の稼働に関する稼働情報を管理する。端末は、管理装置と通信可能である。管理装置は、稼働情報から求められる繊維機械の保全に関する保全情報を第1リストに記憶し、第1リストを基に、保全作業の優先度に関する所定の条件に基づいて、保全作業の優先度が高い保全情報を第2リストに記憶し、第2リストを端末に表示させる。
【0007】
上記の繊維機械システムでは、稼働情報から求められる繊維機械の保全に関する保全情報、すなわち、繊維機械において稼働効率を低下させている要因に対し保全を行うための保全情報を第1リストに記憶しておき、第1リストを基に、保全作業の優先度に関する所定の条件に基づいて、保全作業の優先度が高い保全情報を第2リストに記憶し、第2リストを端末に表示している。このように、繊維機械システムでは、繊維機械において稼働効率を低下させている要因に対し保全を行うための保全情報のうち、保全作業の優先度が高い保全情報(すなわち、優先的な対応が必要な保全情報)のみを端末に表示できる。この結果、例えば、端末に表示された第2リストを参照して、保全作業が優先的に必要な保全情報に対して確実に保全作業を実行できる。
【0008】
上記の繊維機械システムにおいて、繊維機械が、稼働情報を算出し、算出した稼働情報を管理装置に送信してもよい。また、管理装置が、繊維機械から受信した稼働情報について異常の診断を行い、当該診断の結果、異常と判断され保全が必要であると判断された稼働情報に基づいて保全情報を生成してもよい。これにより、正確な保全情報を生成できる。また、繊維機械システムの効率的な運用が可能となる。
【0009】
上記の繊維機械システムにおいて、管理装置は、第1リストを端末に表示させ、保全情報の項目に対して端末により入力された入力情報を受信し、入力情報が入力された保全情報の項目を、保全情報の他の項目と異なる態様で表示してもよい。
さらに、管理装置は、入力情報の内容を確定し、第1リストを更新し、入力情報の内容が確定された保全情報の項目を、保全情報の他の項目と同じ態様で表示してもよい。これにより、端末を用いた保全情報の項目に対する入力がなされたこと、当該入力の内容が確定されたことを、表示画面において、視覚的に認識できる。
【0010】
第1リストの表示画面には、端末により入力された保全情報を確定させるための確定ボタンが設けられてもよい。この場合、ユーザが確定ボタンを押すことによって、管理装置は、端末により入力された保全情報を確定させてもよい。
【0011】
上記の繊維機械システムにおいて、管理装置は、第1リストを端末に表示させてもよい。この場合、端末に表示される第1リストの保全情報の項目数は、端末に表示される第2リストの保全情報の項目数よりも多くてもよい。これにより、より多くの項目が表示された第1リストを参照しつつ保全作業の優先度が高い保全情報を適切に抽出できる。また、保全作業の実行に最低限必要な少ない項目が表示された第2リストを参照することで、他の項目を参照することによる混乱を防止して、実行すべき保全作業をより明確に把握できる。
【0012】
上記の繊維機械システムにおいて、管理装置は、所定の期間内の稼働情報と、当該稼働情報に対する診断結果に関する情報と、稼働情報を取得した時間に関する情報と、を関連付けて過去データとして第3リストに記憶してもよい。また、管理装置は、第3リストに記憶された稼働情報の内容と第1リストに記憶された保全情報の内容に基づいて、それぞれの保全情報に対して、第1ステータス、第2ステータス、又は、第3ステータスのいずれであるかを判断してもよい。第1ステータスは、保全情報の基となった稼働情報が初めて異常と診断されたことを示す。第2ステータスは、保全情報の基となった稼働情報が過去に異常と診断され、それに対して保全作業が行われないまま再度異常と診断されたしたことを示す。第3ステータスは、保全情報の基となった稼働情報が過去に異常と診断され、それに対して保全作業が行われたが再度異常と診断されたことを示す。これにより、第1リストの保全情報がどのような状態であるかを把握できる。
【0013】
上記の繊維機械システムにおいて、保全作業の優先度に関する所定の条件は、保全情報の生成数が多い繊維機械を優先するとの条件であってもよい。これにより、保全情報の生成数が多い繊維機械に対して優先的に保全作業を行うと判断できる。
【0014】
上記の繊維機械システムにおいて、保全作業の優先度に関する所定の条件は、異常と診断された連続回数が多い稼働情報に基づいて生成された保全情報を優先するとの条件であってもよい。これにより、異常と診断された連続回数が多い稼働情報に基づいた保全情報に対して優先的に保全作業を行うと判断できる。
【0015】
上記の繊維機械システムにおいて、保全作業の優先度に関する所定の条件は、第2ステータスを有する保全情報、第1ステータスを有する保全情報、第3ステータスを有する保全情報の順で優先するとの条件であってもよい。これにより、ステータスの重要度が高い保全情報順に優先的に保全作業を行うと判断できる。
【発明の効果】
【0016】
繊維機械の保全に関する保全情報のうち、保全作業の優先度が高い保全情報のみを端末に表示できるので、保全作業が優先的に必要な保全情報に対して確実に保全作業を実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】繊維機械システムの構成を示す図。
図2】繊維機械の具体的構成を示す図。
図3】管理装置の具体的構成を示す図。
図4】第1表示画面の一例を示す図。
図5】第2表示画面の一例を示す図。
図6】第1リストの生成動作を示すフローチャート。
図7】第2リストの生成動作を示すフローチャート。
図8】入力操作を行ったセルの表示状態を異ならせたときの第1表示画面の他の例を示す図。
図9】入力情報を確定した後の第1表示画面の一例を示す図。
図10】第2リストを利用した保全作業の実行プロセスを示すフローチャート。
図11】入力操作を行ったセルの表示状態を異ならせたときの第2表示画面の一例を示す図。
図12】入力情報を確定した後の第2表示画面の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.第1実施形態
(1)繊維機械システムの概要
以下、繊維機械システム100を説明する。繊維機械システム100は、巻取装置から収集した情報に基づいて繊維機械1の稼働に関する稼働情報を生成し、生成した稼働情報について異常の診断を行い、異常と判断され保全が必要と判断された稼働情報に基づいて、繊維機械1の保全に関する保全情報を生成し第1リストLI1に記憶して管理する。ここでいう「異常」は、繊維機械1の稼働効率を低下させている要因となっている可能性がある異常を意味する。よって、以下の説明において、単に「異常」という場合、この「異常」は、繊維機械1の稼働効率の低下の要因となっている可能性がある異常を意味する。すなわち、保全情報は、繊維機械1において稼働効率を低下させている要因に対し保全を行うために用いられる情報である。
【0019】
また、繊維機械システム100では、保全作業の優先度に関する所定の条件に基づいて、保全作業の優先度が高い保全情報が第1リストLI1から抽出され、抽出された保全情報が第2リストLI2に記憶される。さらに、生成された第2リストLI2は、保全作業を行う作業担当者が使用する端末に表示される。これにより、作業担当者は、優先的に保全作業を行うべき保全情報を把握し、当該保全情報に対する保全作業を実行できる。
【0020】
(2)繊維機械システムの構成
図1を用いて、繊維機械システム100の構成を説明する。図1は、繊維機械システム100の構成を示す図である。繊維機械システム100は、繊維機械1と、管理装置2と、第1端末3と、第2端末4と、を主に備える。繊維機械1、管理装置2、第1端末3は、第2端末4は、例えば、紡績工場などの所定の施設Fに設けられる。
【0021】
繊維機械1は、巻取装置11(図2)から構成される。巻取装置は、ボビンから糸を巻き取ってパッケージを形成する装置である。つまり、巻取装置は、ボビンに巻き取られた糸を、ボビンから解舒してパッケージとして巻き取るための装置である。なお、繊維機械1は、施設F内に1つだけ設けられてもよいし、複数設けられてもよい。
【0022】
管理装置2は、CPU、記憶装置(RAM、ROM、HDD、SSDなど)、ネットワークインタフェースなどの各種インタフェースなどにて構成されるコンピュータシステムである。管理装置2は、施設F内のネットワーク(例えば、有線LAN、無線LAN)を介して繊維機械1と接続されており、繊維機械1と通信可能となっている。
【0023】
管理装置2は、繊維機械1が算出した当該繊維機械1の稼働に関する稼働情報を取得し、取得した稼働情報について異常の診断を行う。管理装置2は、稼働情報の診断の結果、異常と診断され保全が必要と判断した稼働情報に基づいて繊維機械1の保全に関する保全情報を生成し、第1リストLI1に記憶する。また、管理装置2は、第1リストLI1に記憶されている保全情報のうち、保全作業の優先度が高い保全情報を第1リストLI1から抽出して第2リストLI2を生成する。
【0024】
第1端末3は、CPU、記憶装置(RAM、ROM、HDD、SSDなど)、各種インタフェースなどにて構成されるコンピュータシステムである。第1端末3は、例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、携帯端末である。第1端末3は、施設F内のネットワークを介して管理装置2と接続されており、管理装置2と通信可能となっている。
【0025】
第1端末3のユーザは、例えば、施設Fの管理者である。施設Fの管理者であるユーザは、第1端末3を操作して管理装置2にアクセスすることで、管理装置2が生成した第1リストLI1を閲覧できる。また、第1端末3のユーザは、第1端末3の入力装置(例えば、キーボード、タッチパネル、マウスなど)を用いて、第1リストLI1に含まれる保全情報を編集可能である。
【0026】
なお、第1端末3は、Webブラウザにおいて管理装置2のアドレス(例えば、IPアドレス)を指定することでアクセスできる。その他、第1端末3は、専用のアプリケーション(ソフトウェア)により管理装置2にアクセスしてもよい。
【0027】
第2端末4は、CPU、記憶装置(RAM、ROM、HDD、SSDなど)、各種インタフェースなどにて構成されるコンピュータシステムである。第2端末4は、例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、携帯端末である。第2端末4は、施設F内のネットワークを介して管理装置2と接続されており、管理装置2と通信可能となっている。
【0028】
第2端末4のユーザは、例えば、施設Fの繊維機械1に対して保全作業を行う作業担当者である。作業担当者であるユーザは、第2端末4を操作して管理装置2にアクセスすることで、管理装置2が生成した第2リストLI2を閲覧できる。また、第2端末4のユーザは、第2端末4の入力装置(例えば、キーボード、タッチパネル、マウスなど)を用いて、第2リストLI2に含まれる保全情報を編集可能である。
【0029】
なお、第2端末4は、Webブラウザにおいて管理装置2のアドレス(例えば、IPアドレス)を指定することでアクセスできる。その他、第2端末4は、専用のアプリケーション(ソフトウェア)により管理装置2にアクセスしてもよい。
【0030】
繊維機械システム100は、クラウドサーバ5と、第3端末6と、をさらに備えてもよい。クラウドサーバ5と第3端末6は、施設Fの外に配置される。
【0031】
クラウドサーバ5は、CPU、記憶装置、各種インタフェースなどで構成されたコンピュータシステムである。なお、クラウドサーバ5は、上記ハードウェアをソフトウェア的に実現した仮想のコンピュータシステムであってもよい。クラウドサーバ5は、ネットワークN(例えば、インターネット)を介して、管理装置2と接続されて、管理装置2と通信可能となっている。クラウドサーバ5は、繊維機械1に関する各種情報を管理装置2から受信して管理する。
【0032】
第3端末6は、CPU、記憶装置(RAM、ROM、HDD、SSDなど)、各種インタフェースなどにて構成されるコンピュータシステムである。第3端末6は、例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、携帯端末である。第3端末6は、ネットワークNを介して管理装置2及びクラウドサーバ5と接続されており、管理装置2及びクラウドサーバ5と通信可能となっている。第3端末6のユーザは、クラウドサーバ5にアクセスして、クラウドサーバ5で管理された情報を閲覧できる。また、管理装置2にアクセスして、管理装置2で管理されている情報を閲覧できる。
【0033】
(3)繊維機械の具体的構成
以下、図2を用いて、繊維機械1の具体的構成を説明する。図2は、繊維機械1の具体的構成を示す図である。繊維機械1は、併設された複数の巻取装置11と、玉揚装置13と、機台コントローラ15と、を有する。
【0034】
(3-1)巻取装置
巻取装置11は、給糸ボビンB1から解舒された糸Y1を巻取管B2に巻き取ってパッケージP1を形成する。巻取装置11は、糸Y1の移動の上流から下流に向かって、給糸ボビンB1と、糸解舒補助装置111と、テンション付与装置112と、糸継装置113と、ヤーンクリアラ114と、下糸案内部材115と、上糸案内部材116と、綾振ドラム117と、クレードル118と、を有する。
【0035】
給糸ボビンB1は、パッケージP1を形成するための糸Y1を供給する。糸解舒補助装置111は、給糸ボビンB1の芯管に被さる規制部材を給糸ボビンB1からの糸Y1の解舒と連動して下降させることにより、給糸ボビンB1からの糸Y1の解舒を補助する。テンション付与装置112は、走行する糸Y1に所定のテンションを付与する。
【0036】
糸継装置113は、ヤーンクリアラ114が糸欠陥を検出して糸Y1を切断したとき、又は、給糸ボビンB1からの解舒中に糸Y1の糸切れが発生したときに、給糸ボビンB1側の下糸と、パッケージP1側の上糸とを糸継ぎする。糸継装置113としては、例えば、機械式のものや、圧縮空気等の流体を用いるもの等を使用できる。
【0037】
ヤーンクリアラ114は、糸Y1の太さや異物を検出し、検出結果に基づいて糸Y1に糸欠陥(糸の太さなどに異常がある箇所や糸に含まれる異物)があるかを判定する。ヤーンクリアラ114は、例えば、糸Y1に光を照射したときの当該光の透過量及び/又は反射量により糸Y1の太さ及び/又は異物を検出する光学式クリアラ、又は、電極間を糸Y1が通過しているときの当該電極間の静電容量に基づいて糸Y1の太さを検出する静電容量式クリアラである。
【0038】
ヤーンクリアラ114は、例えば、測定された糸Y1の太さが所定の太さ以上又は所定の太さ以下となっていることを検出すると、当該糸Y1に糸欠陥があると判定できる。糸Y1に糸欠陥があると判定されると、ヤーンクリアラ114に設けられているカッタが、糸Y1の糸欠陥が発生した箇所を切断する。
【0039】
下糸案内部材115(給糸側の案内部材)は、糸Y1が糸切れしたときに、給糸ボビンB1側の糸Y1(下糸)を捕捉して糸継装置113に案内する。下糸案内部材115の先端には吸引口が設けられ、この吸引口に吸引流を発生させて下糸を吸引捕捉できる。
【0040】
上糸案内部材116(パッケージ側の案内部材)は、糸Y1が糸切れしたときに、パッケージP1側の糸Y1(上糸)を捕捉して糸継装置113に案内する。上糸案内部材116の先端にはサクションマウスが設けられ、このサクションマウスに吸引流を発生させて上糸を吸引捕捉できる。
【0041】
糸欠陥を検出して糸Y1を切断した場合、又は、糸Y1の糸切れが発生した場合には、下糸案内部材115が給糸ボビンB1側の糸を捕捉して糸継装置113に案内し、上糸案内部材116がパッケージP1側の糸を捕捉して糸継装置113に案内する。その後、糸継装置113が、これら案内部材により案内された糸Y1を糸継ぎする。糸継装置113による糸継ぎ後に、糸Y1の巻き取りが再開される。
【0042】
綾振ドラム117は、巻取管B2の周面又はパッケージP1の周面に接触して従動回転可能な部材である。綾振ドラム117には、糸Y1を綾振りするための綾振溝が設けられている。綾振ドラム117は、巻取管B2又はパッケージP1の回転により従動回転するときに、綾振溝によって、糸Y1を巻取管B2又はパッケージP1の長手方向に沿って綾振りできる。
【0043】
本実施形態において、綾振ドラム117にはワインド数が異なる複数種類の溝が設けられ、パッケージP1の径に従って綾振りに使用する溝を切り替え可能となっている。これにより、パッケージP1におけるリボン巻きを抑制できる。
【0044】
クレードル118は、パッケージP1を形成するための巻取管B2を、所定の軸回りに回転可能かつ着脱可能に支持する。クレードル118は、回動軸を中心に回動可能となっている。これにより、クレードル118は、回動軸を中心に回動して、巻取管B2への糸Y1の巻取に伴うパッケージP1の径の増大を吸収できる。クレードル118には、クレードル118を回動軸周りに回動させる駆動機構が設けられる。
【0045】
(3-2)玉揚装置
繊維機械1の構成の説明に戻る。玉揚装置13は、各巻取装置11においてパッケージP1が満巻となった際に、当該巻取装置11まで走行し、満巻のパッケージP1を回収するとともに、空の巻取管B2を供給する。
【0046】
(3-3)機台コントローラ
機台コントローラ15は、CPU、記憶装置(RAM、ROM、HDD、SSDなど)、各種インタフェースにて構成されたコンピュータシステムである。機台コントローラ15は、各種情報を表示する表示装置151(例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどの表示装置)と、各種設定を行う入力装置152(例えば、タッチパネル、キーボード、操作板など)と、を有する。なお、表示装置151と入力装置152は、タッチパネルを備えた表示装置として実現されてもよい。繊維機械1においては、機台コントローラ15と管理装置2とが接続され通信可能となっている。
【0047】
機台コントローラ15は、繊維機械1毎に設けられている。機台コントローラ15は、入力装置152などを用いてユーザにより入力された設定値を記憶し、当該設定値を各巻取装置11のコントローラへ送信する。
【0048】
また、機台コントローラ15は、各巻取装置11のコントローラから巻取装置11に関する各種情報を収集する。例えば、各巻取装置11における糸欠陥の発生に関する情報、発生した各種イベントの発生に関する情報などを収集する。機台コントローラ15は、各巻取装置11から取得した各種情報に基づいて、1つの繊維機械1(1つの基台)の稼働に関する情報(稼働情報)を算出する。機台コントローラ15は、算出した稼働情報を管理装置2に出力する。
【0049】
稼働情報は、例えば、繊維機械1の機械効率、AD成功率、糸継ぎミス率、などの繊維機械1の稼働の状態を示す情報を含んでいる。
【0050】
(4)管理装置の具体的構成
以下、図3を用いて、管理装置2の具体的構成を説明する。図3は、管理装置2の具体的構成を示す図である。管理装置2は、情報処理部21と、記憶部23と、を有する。情報処理部21は、管理装置2のCPU、各種インタフェース、記憶装置の一部であり、管理装置2における各種情報処理を実行する。情報処理部21は、記憶装置(記憶部23)に記憶されたコンピュータプログラムを実行することで、管理装置2における各種情報処理を実行する。
【0051】
記憶部23は、上記コンピュータプログラム、各種パラメータ、各種情報を記憶する。記憶部23は、第1リストLI1と、第2リストLI2と、第3リストLI3と、第1表示画面GUI1と、第2表示画面GUI2と、を記憶する。
【0052】
第1リストLI1は、繊維機械1の保全に関する保全指示を表す保全情報を記憶する。第1リストLI1には、新しい全ての保全情報が記憶されている。保全情報には、例えば、保全作業の実行の優先度に関する情報、繊維機械1の識別情報、繊維機械1で稼働効率の低下の要因となっている異常が発生した場所に関する情報、稼働効率の低下の要因となっている異常の内容に関する情報、当該異常に対する保全作業の内容、保全情報のステータス、保全作業の状態、保全作業の完了日時、保全作業の担当者、保全作業を実際に行った作業者、が含まれる。
【0053】
保全作業の実行の優先度に関する情報は、保全情報に対する保全作業の実行の優先度を示す。保全作業の優先度に関する情報は、第1表示画面GUI1(図4)に存在するチェックボックスを用いて設定できる。チェックボックスにチェックを入れた場合には保全作業の実行の優先度が高い保全情報と設定でき、チェックを入れない場合には、保全作業の実行の優先度が低い保全情報と設定できる。保全作業の実行の優先度が高いと設定された保全情報は、第2リストLI2にも含まれている。
【0054】
繊維機械1の識別情報には、例えば、繊維機械1のグループを示す機台グループ名、繊維機械1の番号を示す機台番号、巻取装置11の種類を示す機種タイプ、繊維機械1の種類を示す機台タイプがある。異常が発生した場所に関する情報には、例えば、異常が発生した箇所の名称、当該箇所の識別情報(識別番号)がある。異常の内容に関する情報には、例えば、異常の具体的内容、異常と判定された項目の実際の値がある。
【0055】
保全情報のステータスは、保全情報の状態を表すものであり、第1ステータスと、第2ステータスと、第3ステータスと、を有する。第1ステータスは、対象の保全情報の基となった稼働情報が初めて異常と診断されたことを示す。具体的には、第1ステータスは、対象の保全情報の基となった稼働情報が過去に異常と診断されていなかったことを示す。第2ステータスは、対象の保全情報の基となった稼働情報が過去に異常と診断され、その異常に対して保全作業が行われないまま、再度異常と診断されたことを示す。具体的には、第2ステータスは、対象の保全情報の基となった稼働情報が過去にも異常と診断されていたが、その異常に対して保全作業がなされておらず、今回、再び異常と診断されたことを示す。第3ステータスは、対象の保全情報の基となった稼働情報が過去に異常と診断され、その異常に対して保全作業が行われたが、再度異常と診断されたことを示す。具体的には、第3ステータスは、対象の保全情報の基となった稼働情報が過去にも異常と診断され、その異常に対して保全作業がなされたが、今回、再び異常と診断されたことを示す。保全情報に上記のステータスを含めることにより、第1リストLI1の保全情報がどのような状態となっているかを把握できる。
【0056】
なお、第1リストLI1を表示する第1表示画面GUI1のステータスを表す箇所(図4で示す例では、情報表示部D1の列C11)において、第1ステータスは「異常」との文字で表され、第2ステータスは「再発」との文字で表され、第3ステータスは「継続」との文字で表され、それぞれの文字の横に表示態様(例えば、色)が異なる四角が表示される。これにより、第1表示画面GUI1において、各保全情報のステータスが視覚的に認識しやすくなる。
【0057】
保全情報に含まれる保全作業の状態は、当該保全情報に対して指示された保全作業の状態を示す。具体的には、保全作業の状態には、保全作業が完了したことを示す「完了」と、保全作業が途中であることを示す「途中」と、保全作業が未着手であることを示す「未着手」と、がある。
【0058】
第2リストLI2は、第1リストLI1に記憶された保全情報のうち、保全作業の優先度が高い保全情報を記憶する。
【0059】
第3リストLI3は、過去の所定の期間内に繊維機械1から取得した、繊維機械1の稼働に関する稼働情報を過去データとして記憶する。第3リストLI3においては、稼働情報と、当該稼働情報に対する診断結果に関する情報、当該稼働情報を取得した時間に関する情報(例えば、時刻)と、が関連付けて記憶されている。稼働情報に対する診断結果に関する情報は、例えば、稼働情報が異常と診断されたか否かに関する情報である。具体的には、第3リストLI3に記憶される、稼働情報に対する診断結果に関する情報は、対応する稼働情報に対して、異常と診断されたか、又は、異常と診断されていないか(正常であると診断されたか)のいずれかを示す。
【0060】
なお、上記の所定の期間よりもさらに前の稼働情報、当該稼働情報に対する診断結果に関する情報、及び/または当該稼働情報を取得した時間に関する情報は、クラウドサーバ5に記憶されていてもよい。クラウドサーバ5は、さらに前の稼働情報等だけでなく、上記所定の期間内の稼働情報等も記憶してもよい。
【0061】
後述するように、第3リストLI3は、上記の保全情報のステータスを決定する際に用いられる。第3リストLI3は、他の目的で使用することもできる。
【0062】
第1表示画面GUI1は、全ての保全情報を記憶する第1リストLI1を表示させるためのグラフィカルユーザインタフェース(GUI)である。第1表示画面GUI1は、例えば、図4に示すような外観を有する。図4は、第1表示画面GUI1の一例を示す図である。第1表示画面GUI1は、表示情報選択部L1と、条件設定部SE1と、更新ボタンBU1と、確定ボタンBU2と、キャンセルボタンBU3と、印刷ボタンBU4と、情報表示部D1と、を有する。
【0063】
なお、繊維機械システム100に複数の施設Fが含まれる場合などには、第1表示画面GUI1は、いずれの施設Fの第1リストLI1を表示させるかを選択可能となっていてもよい。
【0064】
表示情報選択部L1は、上記の巻取装置11とは異なる原理の装置(例えば、紡績装置)を有する繊維機械が存在する場合に、巻取装置11を有する繊維機械1に関する情報(第1リストLI1)を表示するか、原理が異なる装置を有する繊維機械に関する保全情報を表示するか、を選択するためのインタフェース(例えば、プルダウンメニュー)である。表示情報選択部L1において「巻取装置」が選択されると、情報表示部D1に第1リストLI1が表示される。
【0065】
条件設定部SE1は、第1リストLI1に含まれる保全情報の保全作業の優先度を決定するための基準を設定するためのインタフェース(例えば、複数のプルダウンメニュー)である。条件設定部SE1では、「異常多発機台順」、「連続回数順」、「再発項目順」、「重要項目順」を保全作業の優先度を決定する基準として設定できる。
【0066】
異常多発機台順は、第1リストLI1に含まれる保全情報のうち、保全情報の生成数が多い繊維機械1に関する保全情報ほど保全作業を優先するとの条件である。具体的には、条件設定部SE1において「異常多発機台順」が選択されると、第1リストLI1に記憶されている保全情報から、保全情報の生成数が多い繊維機械1の順に、保全作業の優先度が高い保全情報が選択される。「異常多発機台順」を選択することで、近い場所の保全作業をまとめてできるため、保全作業の作業効率を向上できる。
【0067】
連続回数順は、第1リストLI1に含まれる保全情報のうち、過去に異常と診断された連続回数が多い稼働情報に基づいて生成された保全情報ほど保全作業を優先するとの条件である。具体的には、条件設定部SE1において「連続回数順」が選択されると、第1リストLI1に含まれる保全情報から、保全情報の基となった稼働情報が過去に異常と診断された連続回数が多い順に、保全作業の優先度が高い保全情報が選択される。例えば、過去に3回連続して異常と診断された稼働情報に基づいて生成された保全情報は、過去に2回連続して異常と診断されたが、その後一旦正常と診断され、その後再度異常と診断された稼働情報に基づいて生成された保全情報よりも、保全作業の優先度が高いと判断される。つまり、保全情報の基となった稼働情報が過去に異常と診断された総回数が3で同じであっても、連続回数が多い保全情報が、優先度が高いと判断される。「連続回数順」を選択することで、稼働効率への影響度が大きい繊維機械1から優先して保全作業を実行できる。なお、上記の「連続回数」は、第3リストLI3を基に判断される。
【0068】
他の実施形態では、連続回数を、第3リストLI3だけでなく第1リストLI1も考慮して計数してもよい。つまり、過去に異常と診断された場合だけでなく、今回異常と診断された(つまり、保全情報が生成された)場合も、連続回数として計数してもよい。この場合には、例えば、特定の保全情報の基となった稼働情報について、直前に3回連続して異常と診断されている場合、当該特定の保全情報に対して算出される連続回数は4となる。なぜなら、当該特定の保全情報の基となった稼働情報は、直前に3回連続して異常と診断され、今回さらに異常と診断されているので、現在までに4回連続して異常と診断されているからである。
【0069】
また、他の実施形態では、第3リストLI3には、過去の所定の期間内の稼働情報等だけでなく、今回取得した(最新の)稼働情報等(すなわち、保全情報の基となった稼働情報)も記憶されてもよい。この場合には、上記の第3リストLI3と第1リストLI1とを考慮した連続回数の算出を、第3リストLI3のみを用いて実現できる。
【0070】
再発項目順は、第1リストLI1に含まれる保全情報のうち、ステータスの重要度が高い保全情報ほど保全作業の優先度が高いとの条件である。具体的には、条件設定部SE1において「再発項目順」が選択されると、第1リストLI1に記憶されている保全情報から、第2ステータスを有する保全情報、第1ステータスを有する保全情報、第3ステータスを有する保全情報が、この順番に、保全作業の優先度が高い保全情報として選択される。「再発項目順」を選択することで、第1ステータスを有する保全情報より第2ステータスを有する保全情報の保全作業の優先度を高めることができる。第2ステータスを有する保全情報は、過去に異常と診断され、それに対して保全作業が行われることなく、今回再度異常と診断された稼働情報に基づいて生成されたものであるため、今後も異常が再発する可能性が高い。一方、第1ステータスを有する保全情報は、過去に異常と診断されたことがなく今回初めて異常と診断された稼働情報に基づいて生成されたものであるため、今後異常が再発する可能性は第2ステータスよりも低い。そのため、第2ステータスを有する保全情報の保全作業を最優先することで、繊維機械1の稼働効率をより改善できる。また、第3ステータスを有する保全情報は、過去に異常と診断され、それに対して過去にすでに保全作業が行われたが、異常が改善することなく今回再度異常と診断された稼働情報に基づいて生成されたものである。そのため、今後も異常が改善する可能性が低いため、第3ステータスを有する保全情報の保全作業の優先度を低くできる。第3ステータスを有する保全情報に対しては、施設Fの外部に保全作業を求める場合がある。
【0071】
重要項目順は、第1リストLI1に含まれる保全情報のうち、異常の重要度(深刻度)が高い保全情報ほど保全作業の優先度が高いとの条件である。具体的には、条件設定部SE1において「重要項目順」が選択されると、第1リストLI1に記憶されている保全情報から、重要度の高い順に、保全作業の優先度が高い保全情報が選択される。
【0072】
なお、上記の「異常多発機台順」、「連続回数順」、「再発項目順」、「重要項目順」のうち複数の条件を組み合わせて、保全作業の優先度を決定する基準としてもよい。複数の条件を組み合わせるとは、2つの条件であってもよいし、3つ以上の条件を組み合わせてもよい。
【0073】
第1表示画面GUI1の説明に戻る。更新ボタンBU1は、情報表示部D1の表示状態を最新の第1リストLI1に対応するよう更新するためのインタフェース(例えば、ボタン)である。例えば、第1リストLI1を情報表示部D1に表示している間に第1リストLI1の更新がされた場合、情報表示部D1には更新前の第1リストLI1が表示されたままとなるが、更新ボタンBU1を押すことで、情報表示部D1に更新後の第1リストLI1の内容を表示できる。
【0074】
確定ボタンBU2は、第1リストLI1の保全情報に対して、当該保全情報の内容を変更する入力操作を第1端末3から受け付けた際に、その内容の変更を確定させるためのインタフェース(例えば、ボタン)である。なお、ここで「内容の変更」とは、既に存在する情報の内容を他の内容に変更することと、保全情報に新たな情報を追加することと、を含む。第1リストLI1に対して内容の変更が行われ確定ボタンBU2が押された場合には、その内容の変更は、第1リストLI1だけでなく第2リストLI2にも反映される。これにより、第1リストLI1と第2リストLI2との間で内容の矛盾が生じることを防止できる。
【0075】
キャンセルボタンBU3は、第1リストLI1の保全情報の項目に対してなされた内容の変更をキャンセルする(取り消す)ためのインタフェース(例えば、ボタン)である。印刷ボタンBU4は、情報表示部D1に表示されている第1リストLI1をPDFとして出力するためのインタフェース(例えば、ボタン)である。なお、印刷ボタンBU4が操作された際に、第1リストLI1を紙面に印刷してもよい。
【0076】
情報表示部D1は、第1リストLI1を表として表示するための領域である。情報表示部D1においては、例えば、各列に第1リストLI1の保全情報に含まれる各項目(情報)が表示される。情報表示部D1の各行には、1つの保全情報が表示される。情報表示部D1の行数は任意とできる。
【0077】
第1リストLI1を表示する情報表示部D1においては、各保全情報に含まれる全ての項目(情報)が表示される。このため、情報表示部D1は、例えば、15個の列C1~C15を有する。
【0078】
保全情報に含まれる項目のうち、保全作業の優先度に関する情報は、例えば、列C1のチェックボックスCHKに優先度の高低として表示される。具体的には、チェックボックスCHKにチェックされている保全情報は、保全作業の優先度が高いことを示す。繊維機械1の識別情報は、例えば、列C2~C5に表示される。繊維機械1で異常が発生した場所に関する情報は、例えば、列C6~C7に表示される。異常の内容に関する情報は、例えば、列C8~C9に表示される。異常に対する保全作業の内容は、例えば、列C10に表示される。保全情報のステータスは、例えば、列C11に表示される。保全作業の状態は、例えば、列C12に表示される。保全作業の完了日時は、例えば、列C13に表示される。保全作業の担当者は、例えば、列C14に表示される。保全作業を実際に行った作業者は、例えば、列C15に表示される。
【0079】
第1表示画面GUI1において、保全作業の状態が「未着手」である場合、第1表示画面GUI1において保全作業の状態を表す箇所(情報表示部D1の列C12)が空白となる。また、保全作業の状態が「途中」又は「未着手」である場合には、第1表示画面GUI1において保全作業の完了日時を表す箇所(情報表示部D1の列C13)が空白となる。
【0080】
さらに、第1表示画面GUI1において保全作業の担当者、保全作業を実際に行った作業者を表す箇所(情報表示部D1の列C14、C15)が空白であることは、担当者、作業者が決まっていないことを意味する。
【0081】
図4に示すように、情報表示部D1の列C1には、チェックボックスCHKが設けられている。チェックボックスCHKは、各保全情報について保全作業の優先度が高い保全情報か否かを設定するためのインタフェースである。チェックボックスCHKにチェックが入っている保全情報は、保全作業の優先度が高い保全情報であると設定できる。チェックボックスCHKにチェックが入っていない保全情報は、保全作業の優先度が低い保全情報であると設定できる。チェックボックスCHKにチェックが入っている保全情報は、第2リストLI2にも記憶される。
【0082】
第2表示画面GUI2は、保全作業の優先度が高い保全情報を記憶する第2リストLI2を表示させるためのグラフィカルユーザインタフェース(GUI)である。第2表示画面GUI2は、例えば、図5に示すような外観を有する。図5は、第2表示画面GUI2の一例を示す図である。第2表示画面GUI2は、表示情報選択部L2と、更新ボタンBU5と、確定ボタンBU6と、キャンセルボタンBU7と、印刷ボタンBU8と、情報表示部D2と、を有する。
【0083】
表示情報選択部L2は、上記の巻取装置11とは異なる原理の装置を有する繊維機械が存在する場合に、巻取装置11を有する繊維機械1に関する情報(第2リストLI2)を表示するか、原理が異なる装置を有する繊維機械に関する保全情報を表示するか、を選択するためのインタフェース(例えば、プルダウンメニュー)である。表示情報選択部L2において「巻取装置」が選択されると、情報表示部D2に第2リストLI2が表示される。
【0084】
なお、繊維機械システム100に複数の施設Fが含まれる場合などには、第2表示画面GUI2は、いずれの施設Fの第2リストLI2を表示させるかを選択可能となっていてもよい。
【0085】
更新ボタンBU5は、情報表示部D2の表示状態を最新の第2リストLI2に対応するよう更新するためのインタフェース(例えば、ボタン)である。例えば、第2リストLI2を情報表示部D2に表示している間に第2リストLI2の更新がされた場合、情報表示部D2には更新前の第2リストLI2が表示されたままとなるが、更新ボタンBU5を押すことで、情報表示部D2に更新後の第2リストLI2の内容を表示できる。
【0086】
確定ボタンBU6は、第2リストLI2の保全情報に対して、当該保全情報の項目の内容を変更する入力操作を第1端末3から受け付けた際に、その内容の変更を確定させるためのインタフェース(例えば、ボタン)である。第2リストLI2に対して内容の変更が行われ確定ボタンBU6が押された場合には、その内容の変更は、第2リストLI2だけでなく第1リストLI1にも反映される。これにより、第1リストLI1と第2リストLI2との間で内容の矛盾が生じることを防止できる。
【0087】
キャンセルボタンBU7は、第2リストLI2の保全情報の項目に対してなされた内容の変更をキャンセルするためのインタフェース(例えば、ボタン)である。印刷ボタンBU8は、情報表示部D2に表示されている第2リストLI2をPDFとして出力するためのインタフェース(例えば、ボタン)である。なお、印刷ボタンBU8が操作された際に、第2リストLI2を紙面に印刷してもよい。
【0088】
情報表示部D2は、第2リストLI2を表として表示するための領域である。情報表示部D2においては、例えば、各列に保全情報に含まれる各項目(情報)が表示される。情報表示部D2の各行には、1つの保全情報が表示される。情報表示部D2の行数は任意とできる。
【0089】
第2リストLI2を表示する情報表示部D2においては、各保全情報に含まれる項目(情報)のうち、保全作業に必要な項目のみが表示される。具体的には、保全情報に含まれる項目のうち、保全作業の要否、保全情報のステータス、保全作業の完了日時は、情報表示部D2には表示されない。このため、情報表示部D2は、第1リストLI1を表示する情報表示部D1が有する列数(15個)よりも少ない列数(12個)を有する。
【0090】
情報表示部D2においては、保全情報に含まれる項目のうち、繊維機械1の識別情報が、例えば、列C1~C4に表示される。繊維機械1で異常が発生した場所に関する情報が、例えば、列C5~C6に表示される。異常の内容に関する情報が、例えば、列C7~C8に表示される、異常に対する保全作業の内容が、例えば、列C9に表示される。保全作業の状態が、例えば、列C10に表示される。保全作業の担当者が、例えば、列C11に表示される。保全作業を実際に行った作業者が、例えば、列C12に表示される。
【0091】
第2表示画面GUI2において、保全作業の状態が「未着手」である場合、第2表示画面GUI2において保全作業の状態を表す箇所(情報表示部D2の列C10)が空白となる。また、第2表示画面GUI2において保全作業の担当者、保全作業を実際に行った作業者を表す箇所(情報表示部D1の列C11、C12)が空白であることは、担当者、作業者が決まっていないことを意味する。
【0092】
上記のように、第1表示画面GUI1に表示される第1リストLI1の保全情報の項目数を、第2表示画面GUI2に表示される第2リストLI2の保全情報の項目数よりも多くすることにより、より多くの項目が表示された第1リストLI1を参照しつつ保全作業が必要な保全情報を適切に抽出できる。また、保全作業の実行に最低限必要な少ない項目が表示された第2リストLI2を参照することで、他の項目を参照することによる混乱を防止して、実行すべき保全作業をより明確に把握できる。
【0093】
また、第1表示画面GUI1に表示される保全情報の項目数を多くすることで、第1表示画面GUI1を参照する管理者に対し、各保全情報の保全作業の優先度をより適切に判断するために十分な量の情報を提供できる。一方、第2表示画面GUI2を参照する作業担当者は、保全作業の優先度を決定する必要がないので、第2表示画面GUI2に表示される保全情報の項目数を第1表示画面GUI1に表示される項目数よりも少なくしても、保全作業を実行するために十分な量の情報を作業担当者に提供できる。
【0094】
(5)繊維機械システムの動作
(5-1)第1リストの生成動作
以下、上記の構成を有する繊維機械システム100の動作を説明する。まず、図6を用いて、第1リストLI1の生成動作を説明する。図6は、第1リストLI1の生成動作を示すフローチャートである。
【0095】
まず、管理装置2の情報処理部21が、繊維機械1の機台コントローラ15に対し、当該繊維機械1の稼働情報を生成し管理装置2に送信することを要求する(ステップS11)。この要求は、所定の時間毎(例えば、12時間毎、1日毎)になされる。
【0096】
その他、第1表示画面GUI1の更新ボタンBU1、第2表示画面GUI2の更新ボタンBU5が押された場合に、上記の要求がなされてもよい。また、第1表示画面GUI1の更新ボタンBU1、第2表示画面GUI2の更新ボタンBU5が押された場合に、上記要求に対して得られた稼働情報に基づいて生成された保全情報により、第1リストLI1と第2リストLI2の両方を更新してもよい。
【0097】
上記の要求を受信した機台コントローラ15は、当該機台コントローラ15が属する繊維機械1の稼働に関する稼働情報を生成し、管理装置2に送信する(ステップS12)。具体的には、以下の動作が実行される。まず、上記の要求を受信した機台コントローラ15は、当該機台コントローラ15が属する繊維機械1の巻取装置11から、稼働情報の生成に必要な巻取装置11に関する各種情報を収集する。収集する情報には、例えば、巻取装置11に備わる各種センサ(例えば、ヤーンクリアラ114)による測定値、巻取装置11及び/又は繊維機械1で発生したエラー等の各種イベントの発生に関する情報(例えば、発生したイベントの内容、発生日時など)などが含まれている。なお、機台コントローラ15は、当該機台コントローラ15が属する繊維機械1の巻取装置11から各種情報を常時収集し、上記の要求を受信した際に、既に収集した各種情報を基に稼働情報を生成してもよい。
【0098】
以下、稼働情報の生成について説明をする。機台コントローラ15は、取得した巻取装置11に関する各種情報を用いて、例えば、繊維機械1の機械効率、AD成功率 、糸継ぎミス率などの繊維機械1の稼働の状態を示す情報を算出し、算出した情報を全て含む稼働情報を生成する。機台コントローラ15は、生成した稼働情報を管理装置2に送信する。なお、算出した情報を1つの稼働情報として扱ってもよい。
【0099】
稼働情報を受信した管理装置2の情報処理部21は、受信した稼働情報に基づいて保全情報を生成し、第1リストLI1に記憶する(ステップS13)。具体的には、以下の処理が実行される。
【0100】
まず、情報処理部21は、受信した稼働情報について異常の診断を行う。具体的には、情報処理部21は、稼働情報に含まれる各情報の数値が所定の閾値を超えるか又は所定の閾値を下回っている場合に、当該稼働情報が異常であると判断し、その異常に対して保全作業が必要と判断する。
【0101】
異常と判断され保全が必要であると判断された稼働情報がある場合、情報処理部21は、当該稼働情報に基づいて、保全情報を生成して第1リストLI1に記憶する。具体的には、情報処理部21は、当該稼働情報に含まれる情報に基づいて、保全情報に含まれる情報のうち、異常の内容に関する情報、当該異常に対する保全作業の内容を決定する。また、情報処理部21は、当該稼働情報の送信元の情報等に基づいて、保全情報に含まれる情報のうち、繊維機械1の識別情報、繊維機械1で異常が発生した場所に関する情報を決定する。
【0102】
なお、この段階においては、第1リストLI1に記憶された保全情報の保全作業の優先度に関する情報は「優先度が低い」と設定され、保全作業の状態は「未着手」に設定され、保全作業の完了日時は空白(情報なし)に設定され、保全作業の担当者は「未定」に設定され、保全作業を実際に行った作業者は「未定」に設定される。
【0103】
次に、情報処理部21は、第3リストLI3に記憶された過去の所定の期間内に受信した稼働情報の内容と、第1リストLI1に記憶されている保全情報のそれぞれの内容と、を比較して、第1リストLI1に記憶されている保全情報の状態(ステータス)を決定し、これを第1リストLI1に記憶されている保全情報に関連付ける。
【0104】
具体的には、情報処理部21は、第1リストLI1の特定の保全情報について、当該特定の保全情報の基となった稼働情報が過去には異常と診断されておらず今回初めて異常と診断されていれば、当該特定の保全情報のステータスが第1ステータスと決定できる。より具体的には、第3リストLI3おいて、当該特定の保全情報の基となった稼働情報について、過去に異常と診断された記録がない場合には、当該特定の保全情報のステータスが第1ステータスであると決定できる。
【0105】
一方、第1リストLI1の特定の保全情報について、当該特定の保全情報の基となった稼働情報が今回だけでなく過去にも異常と診断されている場合には、当該特定の保全情報のステータスが第2ステータス又は第3ステータスと決定できる。より具体的には、第3リストLI3において、当該特定の保全情報の基となった稼働情報が過去に異常と診断された記録がある場合には、当該特定の保全情報のステータスが第2ステータス又は第3ステータスであると決定できる。
【0106】
今回だけでなく過去にも異常と診断された稼働情報に基づいて生成された保全情報のうち、当該異常に対して過去に保全作業が実行された記録がない保全情報のステータスを、第2ステータスと決定できる。一方、当該異常に対して過去に保全作業が実行された記録がある保全情報のステータスを、第3ステータスと決定できる。
【0107】
なお、第1表示画面GUI1において、第1ステータスは「異常」と表示され、第2ステータスは「再発」と表示され、第3ステータスは「継続」と表示される。
【0108】
上記の第1リストLI1の生成動作において、繊維機械1の機台コントローラ15が、稼働情報を算出し、算出した稼働情報を管理装置2に送信し、管理装置2が受信した稼働情報について異常の診断を行い、当該診断の結果、異常と判断され保全が必要であると判断された稼働情報に基づいて保全情報を生成することにより、正確な保全情報を生成できるとともに、繊維機械システム100の効率的な運用を実現できる。
【0109】
例えば、繊維機械1の機台コントローラ15が各巻取装置11の情報を収集して管理装置2に送信し、この情報を受信した管理装置2が、稼働情報の算出、稼働情報の診断、保全情報の生成と第1リストLI1への記憶を行うこともできる。上記の運用は、このような運用と比較して、管理装置2において稼働情報の算出をする必要がないので、管理装置2における情報処理負荷を軽減できる。また、稼働情報は、各巻取装置11の情報をまとめて生成された情報であり、その情報量は小さいので、繊維機械1(の機台コントローラ15)と管理装置2との通信負荷を軽減できる。
【0110】
また、例えば、繊維機械1の機台コントローラ15が、稼働情報の算出、稼働情報の診断、保全情報の生成までを行い、保全情報を管理装置2に送信し、管理装置2が受信した保全情報を第1リストLI1に記憶することもできる。上記の運用は、このような運用と比較して、例えば、繊維機械1毎に異なる診断基準が設定されることがない。すなわち、稼働情報の診断基準を管理装置2にて統一して管理できる。言い換えると、異なる診断基準によって保全情報が生成されることがない。
【0111】
(5-2)第2リストの生成動作
次に、図7を用いて、第2リストLI2の生成動作を説明する。図7は、第2リストLI2の生成動作を示すフローチャートである。まず、施設Fの管理者が、第1端末3を用いて管理装置2にアクセスし、第1端末3の表示装置に、第1リストLI1を表示する第1表示画面GUI1を表示させる(ステップS21)。
【0112】
その後、管理装置2の情報処理部21は、保全作業の優先度に関する所定の条件に基づいて、保全作業の優先度が高い保全情報を、第1表示画面GUI1に表示されている第1リストから抽出し、抽出した保全情報を第2リストLI2に記憶する。具体的には、以下のようにして第2リストLI2が生成される。
【0113】
まず、管理者が、第1表示画面GUI1の条件設定部SE1に対して第1端末3を用いて操作を行い、保全作業の優先度を決定する基準を設定する(ステップS22)。次に、管理装置2の情報処理部21が、条件設定部SE1で設定された保全作業の優先度を決定する基準に従って、第1リストLI1から保全作業の優先度が高い保全情報を抽出し、第2リストLI2に記憶する(ステップS23)。ステップS23において、情報処理部21は、第1表示画面GUI1において、抽出した保全情報のチェックボックスCHKにチェックを入れる。これにより、管理者は、どの保全情報が抽出されたかを視覚的に確認できる。
【0114】
例えば、保全作業の優先度を決定する基準を「異常多発機台順」に設定した場合には、保全情報の生成数が多い繊維機械1の保全情報に対して優先して保全作業を行うとの条件で、保全情報を選択できる。具体的には、例えば、保全情報の生成数が多い保全情報から所定の個数又は所定の閾値以上の繊維機械1の保全情報を選択できる。
【0115】
保全作業の優先度を決定する基準を「連続回数順」に設定した場合には、過去に異常と診断された連続回数が多い稼働情報に基づいて生成された保全情報に対して優先して保全作業を行うとの条件で、保全情報を選択できる。具体的には、情報処理部21は、第3リストLI3を参照し、第1リストLI1に記憶されている保全情報のそれぞれについて、当該特定の保全情報の基となった稼働情報に対して過去に連続して異常と診断された連続診断回数を計数する。その後、第1リストLI1に記憶されている保全情報のうち、異常の連続診断回数がより大きい稼働情報に基づいて生成された保全情報を、優先して保全作業を行う保全情報として選択する。
【0116】
保全作業の優先度を決定する基準を「再発項目順」に設定した場合には、第2ステータスを有する保全情報、第1ステータスを有する保全情報、第3ステータスを有する保全情報の順に優先して保全作業を行うとの条件で、保全情報を選択できる。具体的には、情報処理部21は、第2ステータスを有する保全情報、第1ステータスを有する保全情報、第3ステータスを有する保全情報の順に、所定個数の保全情報を、抽出する保全情報と決定できる。
【0117】
保全情報を「重要項目順」に表示した場合には、保全情報に含まれる異常の重要度が高い順に優先して保全作業を行うとの条件で、保全情報を選択できる。具体的には、情報処理部21は、保全情報の異常の内容に関する情報が重要度の高い異常を示している場合には、重要度の高い順に、所定個数の保全情報を、抽出する保全情報と決定できる。
【0118】
なお、管理者は、情報処理部21が決定した保全情報以外に、保全作業の優先度が高い保全情報を第1リストLI1から抽出してもよい。例えば、管理者が、第1表示画面GUI1において、保全作業を優先して行わせたい保全情報のチェックボックスCHKをチェックすることで、当該保全情報を保全作業の優先度が高い保全情報として抽出できる。
【0119】
その後、第1端末3を用いて確定ボタンBU2を押して、内容の変更を確定する確定操作を行うと、情報処理部21は、チェックが入れられた保全情報を、保全作業の優先度が高い保全情報として、第2リストLI2に記憶する。
【0120】
上記のように、第1表示画面GUI1の条件設定部SE1で設定した条件に従って、第1リストLI1から保全作業の優先度が高い保全情報を抽出することにより、保全作業の優先度に関する所定の条件に基づいて、保全作業の優先度が高い保全情報を第1リストLI1から抽出できる。
【0121】
保全作業の優先度が高い保全情報を選択するときに、管理者は、第1端末3を用いて、選択した保全情報について保全作業の担当者を設定する。この場合、チェックボックスCHKにチェックが入れられた保全情報(すなわち、保全作業の優先度が高い保全情報)に対し、第1端末3を用いて保全作業の担当者の設定がなされる。この場合、情報処理部21は、第1端末3から入力された保全作業の担当者の情報(担当者名)を受信し、図8に示すように、当該保全情報の保全作業の担当者を表示するセル(第3行目の列C14のセル)に、受信した担当者名を表示させるとともに、当該セルを列C14の他のセルとは異なる表示態様で表示させる。例えば、入力情報が入力されたセルを、他のセルとは異なる色で塗り潰す。また、確定ボタンBU2の表示態様が変化して、確定ボタンBU2が有効となる。図8は、入力操作を行ったセルの表示状態を異ならせたときの第1表示画面GUI1の他の例を示す図である。
【0122】
なお、チェックボックスCHKにチェックが入れられていない保全情報に対しても、保全作業の担当者の設定が可能となっていてもよい。
【0123】
その後、管理者が第1端末3を用いて確定ボタンBU2を押して、入力された担当者名を確定する確定操作を行うと、情報処理部21は、入力された担当者を第1リストLI1及び第2リストLI2の対応する保全情報に記録する。また、情報処理部21は、図9に示すように、確定ボタンBU2を押す前に表示形態が他とは異なっていたセル(すなわち、列C14の第3行目のセル)の表示態様を他のセルと同じとし、確定ボタンBU2を無効とする。図9は、入力情報を確定した後の第1表示画面GUI1の一例を示す図である。
【0124】
このように、第1端末3により保全情報の項目に対して入力されたときに、入力された入力情報を受信し、入力情報が入力された保全情報の項目(例えば、情報表示部D1のセル)を保全情報の他の項目とは異なる表示態様で表示させ、入力された入力情報の内容を確定したときには、その内容に従って第1リストLI1を更新し、入力情報の内容が確定された保全情報の項目を保全情報の他の項目と同じ表示態様で表示させることにより、第1端末3を用いた保全情報の項目に対して入力情報が入力されたこと、当該入力情報の内容が確定されたことを、視覚的に認識できる。
【0125】
(5-3)保全作業
以下、図10を用いて、繊維機械システム100を用いた繊維機械1の保全作業を説明する。図10は、第2リストを用いた保全作業の実行プロセスを示すフローチャートである。まず、保全作業を行う作業担当者が、第2端末4を用いて管理装置2にアクセスし、第2端末4の表示装置に、第2リストLI2を表示する第2表示画面GUI2を表示させる(ステップS31)。
【0126】
その後、作業担当者が、第2端末4に表示された第2リストLI2を参照して、実行する保全作業の選択と内容の把握を行い、選択した保全作業を実行する(ステップS32)。
【0127】
選択した保全作業を実行後、作業担当者は、第2端末4に表示された第2表示画面GUI2にて、作業結果と、実際に作業を行った担当者と、を設定する(ステップS33)。例えば、図11に示す第2表示画面GUI2の情報表示部D2の第2行目の保全情報に対する保全作業を実行し、保全作業が完了した場合には、第2行目の列C10のセルに「完了」を入力し表示し、第2行目の列C12のセルに作業担当者名(△△○)を入力し表示する。
【0128】
第1表示画面GUI1と同様、第2表示画面GUI2においても、図11に示すように、情報が入力された保全情報の項目(セル)を、保全情報の他の項目とは異なる表示態様で表示させる。具体的には、第2行目の列C10のセルと、第2行目の列C12のセルが、他のセルとは異なる色で塗り潰される。また、確定ボタンBU6の表示態様が変更され、確定ボタンBU6が有効となる。図11は、入力操作を行ったセルの表示状態を異ならせたときの第2表示画面GUI2の一例を示す図である。
【0129】
このあと、作業担当者が確定ボタンBU6を押して確定操作を行うと、情報処理部21は、情報表示部D2の第2行目に表示されている保全情報に対してなされた内容の変更を、第1リストLI1及び第2リストLI2に反映させる。具体的には、第1リストLI1及び第2リストLI2において、対応する保全情報の「保全作業の状態」を「完了」とし、「保全作業を実際に行った作業者」を「△△○」と変更する。また、保全情報の「保全作業の状態」を「完了」とした場合には、保全情報の「保全作業の完了日時」を確定ボタンBU6が押された日時とする。
【0130】
なお、ステップS32で保全作業を実行したが完了していない場合には、列C10のセルに「途中」を入力し、対応する保全情報の「保全作業の状態」を「途中」とする。この場合、保全情報の「保全作業の完了日時」は空白となる。
【0131】
その後、第2表示画面GUI2において、内容が確定された保全情報の項目を、保全情報の他の項目と同じ表示態様で表示させる。具体的には、図12に示すように、第2行目の列C10のセルと、第2行目の列C12のセルが、塗り潰されない。また、確定ボタンBU6が無効化される。図12は、入力情報を確定した後の第2表示画面GUI2の一例を示す図である。
【0132】
このように、第2表示画面GUI2を用いて行った保全情報の項目の内容の変更を、第2リストLI2だけでなく第1リストLI1にも反映させることで、第2表示画面GUI2を用いて行った保全情報の項目の内容の変更を、第1表示画面GUI1に第1リストLI1を表示させたときにも確認できる。この結果、例えば、施設Fの管理者は、第1端末3に第1表示画面GUI1を表示させて、保全作業を指示した保全情報について、保全作業がなされているか否か、保全作業をした担当者、保全作業が完了した日時などを確認できる。
【0133】
上記の繊維機械システム100では、繊維機械1の保全に関する保全情報を第1リストLI1に記憶しておき、保全作業の優先度に関する所定の条件に基づいて保全作業の優先度が高い保全情報を第1リストLI1から抽出し、抽出した保全情報から第2リストLI2を生成し、第2リストLI2を端末(第2端末4)に表示している。このように、繊維機械システム100では、繊維機械1に関する保全情報のうち、保全作業の優先度が高い保全情報(すなわち、優先的に対応が必要な保全情報)のみを第2端末4に表示できる。この結果、例えば、第2端末4に表示された第2リストLI2を参照して、保全作業が優先的に必要な保全情報に対して確実に保全作業を実行できる。
【0134】
2.他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
(A)上記の繊維機械システム100において、第1リストLI1の生成動作、第2リストLI2の生成動作、保全作業は、並列して実行されてもよい。また、図6図7図10に示すフローチャートの各ステップの処理内容、及び/又は各ステップの処理順は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更できる。
【0135】
(B)第1表示画面GUI1、第2表示画面GUI2において保全情報の項目に対して入力操作を行い、確定ボタンBU6を押して確定操作を行う前に更新ボタンBU1、B5などを押して情報表示部の表示内容が変更された場合には、上記入力操作による内容が削除されてもよい。
【0136】
(C)繊維機械1に含まれる巻取装置11は、綾振ドラム117により糸Y1を綾振りするものに限られない。すなわち、繊維機械1には、他の形式の巻取装置11を有してもよい。例えば、トラバースアームを往復運動させることで糸の綾振りを行う巻取装置が繊維機械1に設けられていてもよい。
【0137】
(D)上記の繊維機械システム100では、第1表示画面GUI1の条件設定部SE1で優先度の基準を設定した場合に、第1リストLI1に含まれる保全情報を、保全作業の優先度が高い順に情報表示部D1に表示するようにしてもよい。また、第1リストLI1に含まれる保全情報を保全作業の優先度が高い順に並び変えたものを第2リストLI2としてもよい。
【0138】
(E)繊維機械システム100には、巻取装置11とは異なる装置(例えば、紡績装置)が含まれる繊維機械が含まれていてもよい。この場合、当該異なる装置を含む繊維機械に対しても、上記の発明内容を適用できる。
【0139】
(F)上記の繊維機械システム100では、繊維機械1の機台コントローラ15が繊維機械1の稼働に関する稼働情報を算出し、管理装置2が稼働情報に基づいて保全情報を生成して第1リストLI1に記憶していた。しかし、これに限られず、機台コントローラ15が、各巻取装置11の情報を収集して管理装置2に送信し、この情報を受信した管理装置2が、稼働情報の算出、稼働情報の診断、保全情報の生成と第1リストLI1への記憶を行ってもよい。
【0140】
(G)または、機台コントローラ15が、稼働情報の算出、稼働情報の診断、保全情報の生成までを行い、保全情報を管理装置2に送信し、管理装置2が受信した保全情報を第1リストLI1に記憶してもよい。
【0141】
(H)第2リストLI2の生成において、保全作業の優先度を決定する基準を予め決めておき、管理装置2の情報処理部21が、最新の第1リストLI1が生成された後に、この基準に基づいて第1リストLI1から保全作業の優先度が高い保全情報を自動的に抽出してもよい。つまり、必ずしも第1リストLI1を表示しなくてもよい。
【0142】
(I)管理装置2は、施設Fの外に配置されていてもよい。または、管理装置2の機能の一部を、クラウドサーバ5などの外部の装置が有していてもよい。この場合、管理装置2、上記の外部の装置は、施設Fが存在する国の国外に存在してもよい。このように、管理装置2が施設F外(国外を含む)に配置されていても、例えば、第1端末3、第2端末4が、施設F内、又は、施設Fが存在する国内に存在していれば、繊維機械システム100の利用による効果を当該国内で奏することができる。
【0143】
3.実施形態の特徴
上記実施形態は、下記のようにも説明できる。
(1)繊維機械システム(例えば、繊維機械システム100)は、繊維機械(例えば、繊維機械1)と、管理装置(例えば、管理装置2)と、端末(例えば、第1端末3、第2端末4、第3端末6)と、を備える。繊維機械は、糸(例えば、糸Y1)を巻き取ってパッケージ(例えば、パッケージP1)を形成する巻取装置(例えば、巻取装置11)を有する。管理端末は、繊維機械の稼働に関する稼働情報を管理する。端末は、管理装置と通信可能である。管理装置は、稼働情報から求められる繊維機械の保全に関する保全情報を第1リスト(例えば、第1リストLI1)に記憶し、第1リストを基に、保全作業の優先度に関する所定の条件に基づいて、保全作業の優先度が高い保全情報を第2リスト(例えば、第2リストLI2)に記憶し、第2リストを端末(例えば、第2端末4)に表示させる。
【0144】
上記の繊維機械システムでは、繊維機械の保全に関する保全情報を第1リストに記憶しておき、保全作業の優先度に関する所定の条件に基づいて保全作業の優先度が高い保全情報を第1リストから抽出し、抽出した保全情報から第2リストを生成し、第2リストを端末に表示している。このように、繊維機械システムでは、繊維機械の保全に関する保全情報のうち、保全作業の優先度が高い保全情報(すなわち、優先的な対応が必要な保全情報)のみを端末に表示できる。この結果、例えば、端末に表示された第2リストを参照して、保全作業が優先的に必要な保全情報に対して確実に保全作業を実行できる。
【0145】
(2)上記(1)の繊維機械システムにおいて、繊維機械は、稼働情報を算出し、算出した稼働情報を管理装置に送信してもよい。また、管理装置は、繊維機械から受信した稼働情報について異常の診断を行い、診断の結果、異常と判断され保全が必要であると判断された稼働情報に基づいて保全情報を生成してもよい。これにより、正確な保全情報を生成できる。また、繊維機械システムの効率的な運用が可能となる。
【0146】
(3)上記(1)又は(2)の繊維機械システムにおいて、管理装置は、第1リストを端末に表示させ、保全情報の項目に対して端末により入力された入力情報を受信し、端末により入力情報が入力された保全情報の項目を、保全情報の他の項目と異なる態様で表示してもよい。
【0147】
さらに、管理装置は、端末により入力された入力情報の内容を確定し、第1リストを更新し、入力情報の内容が確定された保全情報の項目を、保全情報の他の項目と同じ態様で表示してもよい。これにより、端末を用いた保全情報の項目に対する入力がなされたこと、当該入力の内容が確定されたことを、視覚的に認識できる。
【0148】
(4)上記(1)~(3)のいずれかの繊維機械システムにおいて、管理装置は、第1リストを端末(例えば、第1端末3)に表示させてもよい。この場合、端末に表示される第1リストの保全情報の項目数は、端末に表示される第2リストの保全情報の項目数よりも多くてもよい。これにより、より多くの項目が表示された第1リストを参照しつつ保全作業の優先度が高い保全情報を適切に抽出できる。また、保全作業の実行に最低限必要な少ない項目が表示された第2リストを参照することで、他の項目を参照することによる混乱を防止して、実行すべき保全作業をより明確に把握できる。
【0149】
(5)上記(1)~(4)のいずれかの繊維機械システムにおいて、管理装置は、所定の期間内の稼働情報と、当該稼働情報に対する診断結果に関する情報と、稼働情報を取得した時間に関する情報と、を関連付けて過去データとして第3リスト(例えば、第3リストLI3)に記憶してもよい。また、管理装置は、第3リストに記憶された稼働情報の内容と第1リストに記憶された保全情報の内容に基づいて、それぞれの保全情報に対して、第1ステータス、第2ステータス、又は、第3ステータスのいずれかであるかを判断してもよい。第1ステータスは、保全情報の基となった稼働情報が初めて異常と診断されたことを示す。第2ステータスは、保全情報の基となった稼働情報が過去に異常と診断され、それに対して保全作業が行われないまま再度異常と診断されたことを示す。第3ステータスは、保全情報の基となった稼働情報が過去に異常と診断され、それに対して保全作業が行われたが再度異常と診断されたことを示す。これにより、第1リストの保全情報がどのような状態であるかを把握できる。
【0150】
(6)上記(1)~(5)のいずれかの繊維機械システムにおいて、保全作業の優先度に関する所定の条件は、保全情報の生成数が多い繊維機械を優先するとの条件であってもよい。これにより、保全情報の生成数が多い繊維機械に対して優先的に保全作業を行うと判断できる。
【0151】
(7)上記(5)の繊維機械システムにおいて、保全作業の優先度に関する所定の条件は、異常と診断された連続回数が多い稼働情報に基づいて生成された保全情報を優先するとの条件であってもよい。これにより、異常と診断された連続回数が多い稼働情報に基づいた保全情報に対して優先的に保全作業を行うと判断できる。
【0152】
(8)上記(5)の繊維機械システムにおいて、保全作業の優先度に関する所定の条件は、第2ステータスを有する保全情報、第1ステータスを有する保全情報、第3ステータスを有する保全情報の順で優先するとの条件であってもよい。これにより、ステータスの重要度が高い保全情報順に優先的に保全作業を行うと判断できる。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明は、糸のパッケージを製造する装置から各種情報を収集し、収集した情報の管理等を行う繊維機械システムに広く適用できる。
【符号の説明】
【0154】
100 :繊維機械システム
F :施設
N :ネットワーク
1 :繊維機械
11 :巻取装置
111 :糸解舒補助装置
112 :テンション付与装置
113 :糸継装置
114 :ヤーンクリアラ
115 :下糸案内部材
116 :上糸案内部材
117 :綾振ドラム
118 :クレードル
13 :玉揚装置
15 :機台コントローラ
151 :表示装置
152 :入力装置
B1 :給糸ボビン
B2 :巻取管
P1 :パッケージ
Y1 :糸
2 :管理装置
21 :情報処理部
23 :記憶部
3 :第1端末
4 :第2端末
5 :クラウドサーバ
6 :第3端末
GUI1 :第1表示画面
GUI2 :第2表示画面
L1 :表示情報選択部
L2 :表示情報選択部
BU1 :更新ボタン
BU2 :確定ボタン
BU3 :キャンセルボタン
BU4 :印刷ボタン
BU5 :更新ボタン
BU6 :確定ボタン
BU7 :キャンセルボタン
BU8 :印刷ボタン
D1、D2 :情報表示部
SE1 :条件設定部
LI1 :第1リスト
LI2 :第2リスト
LI3 :第3リスト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12