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特開2024-176068パターン成形装置及びパターン成形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176068
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】パターン成形装置及びパターン成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/04 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
B29C59/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094287
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 光明
(72)【発明者】
【氏名】萩原 明彦
【テーマコード(参考)】
4F209
【Fターム(参考)】
4F209AA44
4F209AF01
4F209AG01
4F209AG03
4F209AG05
4F209AH73
4F209PA03
4F209PB02
4F209PJ06
4F209PN09
4F209PQ01
(57)【要約】
【課題】パターン成形における残膜を抑制する。
【解決手段】パターン成形装置100は、ベースフィルム1が掛け回される複数のロールを有し複数のロールによってベースフィルム1を搬送する搬送部10と、搬送部10によって搬送されるベースフィルム1の表面に樹脂5を供給する塗工ダイ30と、パターン2を構成する凹部21及び凸部22が外周に形成され樹脂5が供給されたベースフィルム1の表面に接触することでパターン2をベースフィルム1に転写するモールドロール20と、ベースフィルム1に光を照射して樹脂5を硬化させるランプ35と、を備え、塗工ダイ30は、複数のロールのうちの上流側ガイドロール13及び下流側ガイドロール14間を移動してロールに接触していない状態のベースフィルム1を押圧した状態でベースフィルム1に向けて樹脂5を供給する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の基材にパターンを成形するパターン成形装置であって、
前記基材が掛け回される複数のロールを有し前記複数のロールによって前記基材を搬送する搬送部と、
前記搬送部によって搬送される前記基材の表面に硬化性樹脂を供給する樹脂供給部と、
前記パターンを構成する凹部及び凸部が外周に形成され前記硬化性樹脂が供給された前記基材の表面に接触することで前記パターンを前記基材に転写するモールドロールと、
前記パターンが転写された前記基材上の前記硬化性樹脂を硬化させる硬化部と、を備え、
前記樹脂供給部は、前記複数のロールのうちの所定の一対の前記ロール間を移動して前記ロールに接触していない状態の前記基材を押圧した状態で前記基材に向けて前記硬化性樹脂を供給する、
パターン成形装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパターン成形装置であって、
前記樹脂供給部は、対向する前記基材の垂直方向に沿って移動可能に構成される、
パターン成形装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のパターン成形装置であって、
所定の前記一対のロールの少なくとも一方は、前記樹脂供給部による樹脂の吐出方向に沿って移動可能に構成される、
パターン成形装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のパターン成形装置であって、
前記樹脂供給部は、前記硬化性樹脂を吐出する吐出口が開口するダイリップが設けられる塗工ダイを有し、
前記ダイリップは、
当該ダイリップに対向する前記基材の搬送方向において前記吐出口の下流側に設けられ凸状の曲面を有する丸み部と、
前記基材の前記搬送方向において前記吐出口の上流側に設けられ、前記基材から離れるように形成される逃げ部と、を有する、
パターン成形装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のパターン成形装置であって、
所定の前記一対のロールのうち前記基材の搬送における下流側の前記ロールは、内側から外側の気体を吸引可能に構成されるサクションロールである、
パターン成形装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のパターン成形装置であって、
前記樹脂供給部による前記硬化性樹脂の供給位置よりも前記基材の搬送方向の上流側にある前記基材である第一基材部の張力を検出する第一張力検出部と、
前記樹脂供給部の前記供給位置よりも前記搬送方向の下流側であって前記モールドロールの上流側にある前記基材である第二基材部の張力を検出する第二張力検出部と、をさらに備え、
前記ロールは、
前記基材の前記第一基材部が掛け回され動力によって回転駆動される第一駆動ロールと、
前記基材の前記第二基材部が掛け回され動力によって回転駆動される第二駆動ロールと、を含み、
前記第一駆動ロール及び前記第二駆動ロールの回転速度は、前記第二張力検出部によって検出される張力が前記第一張力検出部によって検出される張力よりも低くなるようにそれぞれ制御される、
パターン成形装置。
【請求項7】
シート状の基材にパターンを成形するパターン成形方法であって、
複数のロールによって搬送される前記基材の表面に樹脂供給部から硬化性樹脂を供給する供給工程と、
前記パターンを構成する凹部及び凸部が外周に形成されるモールドロールを回転させながら前記基材の表面に押し付けて前記パターンを前記基材に転写する転写工程と、
前記パターンが転写された前記基材上の前記硬化性樹脂を硬化させる硬化工程と、を含み、
前記供給工程では、前記複数のロールのうちの所定の一対の前記ロール間を移動して前記ロールに接触していない状態の前記基材を押圧した状態で前記基材に向けて前記硬化性樹脂を供給する、
パターン成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン成形装置及びパターン成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、塗工用ダイ、支持ロール、ロール金型、押しロール、剥離ロール、紫外線照射装置を備え、基材フィルムに紫線硬化樹脂を塗工、成形、硬化し、フィルムを成形するフィルム製造装置が開示されている。このフィルム製造装置では、塗工用ダイに対面する位置に支持ロールが配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-142926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
いわゆるロールツーロール式のパターン成形では、特許文献1に開示されるフィルム製造装置のように、ロールによって支持された基材に対して硬化性樹脂が供給される。このような装置では、ロールの回転による振れが生じるため、ロールと塗工ダイとを干渉させないように塗工ダイと基材(ロール)との間には、ある程度の隙間が設けられる。
【0005】
一方、パターン成形では、モールドロールの凸部と基材との間で挟み込まれる樹脂材料が硬化した状態で基材上に残存することで残膜が生じる。このような残膜を除去するにはアッシング工程等が必要となり、工数やコストの増加を招くため、残膜を低減することが望まれている。
【0006】
残膜を低減する方法としては、塗工ダイと基材との間の隙間を小さくして基材上の硬化性樹脂の膜厚を薄くする方法がある。しかしながら、薄い膜厚によって硬化性樹脂を供給しようとすると、局所的に硬化性樹脂が供給されない箇所が生じ、基材上の樹脂には長手方向に沿ったスジが生じやすい。また、特許文献1に開示されるようなフィルム製造装置では、塗工ダイとロールとの干渉を避けるために両者の間にある程度の隙間を確保する必要があるため、塗工ダイを基材に近づけて基材上の硬化性樹脂の膜厚を薄くするにも限界がある。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、基材上の残膜を低減することができるパターン成形装置及びパターン成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様によれば、パターン成形装置は、基材が掛け回される複数のロールを有し複数のロールによって基材を搬送する搬送部と、搬送部によって搬送される基材の表面に硬化性樹脂を供給する樹脂供給部と、パターンを構成する凹部及び凸部が外周に形成され硬化性樹脂が供給された基材の表面に接触することでパターンを基材に転写するモールドロールと、パターンが転写された基材上の硬化性樹脂を硬化させる硬化部と、を備え、樹脂供給部は、複数のロールのうちの所定の一対のロール間を移動してロールに接触していない状態の基材を押圧した状態で基材に向けて硬化性樹脂を供給する。
【0009】
また、本発明のある態様によれば、パターン成形方法は、複数のロールによって搬送される基材の表面に硬化性樹脂を供給する供給工程と、パターンを構成する凹部及び凸部が外周に形成されるモールドロールを回転させながら基材の表面に押し付けてパターンを基材に転写する転写工程と、パターンが転写された基材上の硬化性樹脂を硬化させる硬化工程と、を含み、供給工程では、複数のロールのうちの所定の一対のロール間を移動してロールに接触していない状態の基材を押圧した状態で基材に向けて硬化性樹脂を供給する。
【発明の効果】
【0010】
これらの態様によれば、樹脂供給部は、ロール上の基材ではなく、ロールに接触していない状態の基材に向けて硬化性樹脂を供給するため、ロールとの干渉のおそれがなく、樹脂供給部は基材を押圧して硬化性樹脂を供給することができる。樹脂供給部によって基材を押圧しながら硬化性樹脂が供給されることで、基材と樹脂供給部との間の隙間を小さくすることができる。また、硬化性樹脂が樹脂供給部と基材とによって挟み込まれて所定の圧力が加えられながら基材上に供給されるため、局所的に硬化性樹脂が供給されない部位の発生を抑制でき、硬化性樹脂を所望の膜厚で安定して基材上に供給することができる。したがって、基材上の硬化性樹脂の膜厚を薄くすることができ、残膜を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るパターン成形装置の構成図である。
図2】本発明の実施形態に係るパターン成形装置のブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係るパターン成形装置の塗工ダイ周辺の構成を示す拡大図である。
図4】本発明の実施形態の実施例及び比較例の搬送速度と最小膜厚との関係を示すグラフ図であり、(a)は樹脂の粘度が60[mPa・S]、(b)は樹脂の粘度が100[mPa・S]の場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るパターン成形装置100及びパターン成形方法について説明する。なお、各図面においては、説明の便宜上、各構成の縮尺を適宜変更しており、必ずしも厳密に図示されたものではない。
【0013】
まず、図1を参照して、パターン成形装置100の構成について説明する。
【0014】
図1に示すように、パターン成形装置100は、いわゆるロールツーロール式であって、シート状の基材としてのベースフィルム1の一面(フィルム面)に、紫外線(UV)硬化性樹脂(以下、単に「樹脂」とも称する。)5によってパターン2を成形する装置である。以下では、図1の上下方向を鉛直方向としてパターン成形装置100について説明する。以下の説明において、特に断りのない限り、「上」及び「下」は、鉛直方向の上下、つまり、図面中の上下方向を指すものとする。
【0015】
ベースフィルム1は、平面状のフィルム面が所定長さに亘って連続する樹脂フィルムである。ベースフィルム1は、透光性を有する材質で形成される。なお、以下では、パターン2を形成する樹脂5が一体化したベースフィルム1を「パターンフィルム3」とも称する。
【0016】
パターン成形装置100は、図1に示すように、ベースフィルム1を長手方向に搬送する搬送部10と、所定のパターン2を構成する凹部21及び凸部22が外周に形成されるモールドロール20と、モールドロール20を回転駆動する駆動部としての電動モータ23(図2参照)と、ベースフィルム1のフィルム面に樹脂5を供給する樹脂供給部としての塗工ダイ30と、ベースフィルム1上の樹脂5を硬化させベースフィルム1と一体化させる硬化部としてのランプ35と、パターン成形装置100を制御するコントローラ50(図2参照)と、を備える。
【0017】
搬送部10は、ベースフィルム1が掛け回される複数のロールを有する。複数のロールには、ベースフィルム1を繰り出す繰出ロール11と、繰出ロール11から繰り出されるベースフィルム1を巻き取る巻取ロール12と、モールドロール20との間にベースフィルム1が挿入される押付ロール25と、パターンフィルム3をモールドロール20から剥離する剥離ロール26と、繰出ロール11と巻取ロール12との間で搬送されるベースフィルム1を支持する複数のガイドロールと、を有する。
【0018】
繰出ロール11及び巻取ロール12は、それぞれ電動モータ(図示省略)によって中心軸を中心として回転駆動される(図中矢印参照)。繰出ロール11の中心軸と巻取ロール12の中心軸とは、互いに平行に設けられる。繰出ロール11から繰り出されるベースフィルム1を巻取ロール12によって巻き取ることで、繰出ロール11と巻取ロール12との間でベースフィルム1が長手方向に搬送される。繰出ロール11と巻取ロール12とを回転させる電動モータは、撓みが生じないよう所定の張力を付与しながらベースフィルム1を所定の速度で搬送するようにコントローラ50によって制御される。以下では、繰出ロール11側を搬送方向の「上流」、巻取ロール12側を搬送方向の「下流」として説明する。
【0019】
複数のガイドロールには、繰出ロール11と巻取ロール12との間で搬送されるベースフィルム1が掛け回される。複数のガイドロールには、電動モータ等の駆動源(図示省略)からの動力によって回転駆動される駆動ロールと、ベースフィルム1の搬送に伴って従動回転する従動ロールと、が含まれる。複数のガイドロールによって、ベースフィルム1の搬送経路が形成される。複数のガイドロールは、特段の断りがない限り、駆動ロール及び従動ロールのいずれによって構成されてもよい。
【0020】
複数のガイドロールには、塗工ダイ30による樹脂5の供給位置の前後(ベースフィルム1の搬送の流れの前後)においてベースフィルム1を支持する上流側ガイドロール13及び下流側ガイドロール14と、上流側ガイドロール13と繰出ロール11との間においてベースフィルム1を支持するインフィードロール15aと、上流ガイドロールとインフィードロール15aとの間においてベースフィルム1を支持する第一センシングロール17と、下流側ガイドロール14と押付ロール25との間においてベースフィルム1を支持する第二センシングロール18と、が含まれる。
【0021】
上流側ガイドロール13と下流側ガイドロール14とは、鉛直方向上下に間隔をあけて並んでいる。よって、ベースフィルム1は、上流側ガイドロール13から下流側ガイドロール14へ向けて、鉛直方向に沿って下方から上方へと搬送される。上流側ガイドロール13及び下流側ガイドロール14が、特許請求の範囲における所定の一対のロールに相当する。
【0022】
上流側ガイドロール13は、後述する塗工ダイ30による樹脂5の吐出方向である水平方向(図1中左右方向)に沿って移動可能に構成されている(図1中矢印参照)。
【0023】
下流側ガイドロール14は、内側から外側の気体を吸引可能に構成されるサクションロールであり、動力によって回転駆動される駆動ロールでもある。下流側ガイドロール14は、内外を連通する通孔14bが形成されて気体の通過を許容するロール部14aと、ロール部14aの内側から負圧によって吸引する吸引部14cと、を有する。吸引部14cは、例えば、エアを吸引するポンプである。下流側ガイドロール14は、水平方向に移動不能に設けられている。なお、ロール部14aは、例えば、通孔14bが形成される構成に代えて、気体の通過を許容する多孔質材によって形成されてもよい。
【0024】
通常、樹脂5が塗工されたベースフィルム1は、ガイドロール及びニップロールによって両面を挟み込んで支持することはできない。これに対し、下流側ガイドロール14がサクションロールとして構成されることで、下流側ガイドロール14に掛け回されるベースフィルム1は、下流側ガイドロール14の内側から吸引部14cによって通孔14bを通じて吸引されることによって下流側ガイドロール14に押し付けられる。これにより、ニップロールを設けなくても、ベースフィルム1は下流側ガイドロール14に押し付けられて、ベースフィルム1と下流側ガイドロール14との滑りが抑制される。
【0025】
インフィードロール15aは、動力によって回転駆動される駆動ロールである。また、ベースフィルム1を挟んでインフィードロール15aに対向する位置には、ベースフィルム1をインフィードロール15aに押し付け、インフィードロール15aと共にベースフィルム1を支持するインフィードニップロール15bが設けられる。インフィードニップロール15bは、例えば、ゴム等の滑りにくい材質で形成されており、インフィードニップロール15bによってベースフィルム1がインフィードロール15aに押し付けられることで、ベースフィルム1とインフィードロール15aとの滑りが抑制される。インフィードニップロール15bは、ベースフィルム1の搬送に伴って従動回転する従動ロールである。
【0026】
第一センシングロール17と第二センシングロール18とは、それぞれ設けられる位置が異なるのみであり、具体的構成は互いに同様である。第一及び第二センシングロール17,18は、それぞれ従動ロールである。第一及び第二センシングロール17,18は、それぞれ支持しているベースフィルム1からの反力を測定する第一張力検出部としての第一荷重センサ17a及び第二張力検出部としての第二荷重センサ18aを有する。第一荷重センサ17a及び第二荷重センサ18aは、例えば、ロール軸受け等に取り付けられるロードセルである。第一荷重センサ17a及び第二荷重センサ18aは、ベースフィルム1から第一センシングロール17及び第二センシングロール18に作用する反力を測定することで、第一センシングロール17及び第二センシングロール18が設けられるそれぞれの位置におけるベースフィルム1の張力を測定することができる。第一及び第二センシングロール17,18の第一及び第二荷重センサ17a,18aの測定結果は、コントローラ50に入力される。
【0027】
また、複数のガイドロールは、剥離ロール26と巻取ロール12との間においてパターンフィルム3を支持するアウトフィードロール16と、剥離ロール26とアウトフィードロール16との間においてパターンフィルム3を支持する第三センシングロール19と、を含む。
【0028】
アウトフィードロール16は、下流側ガイドロール14と同様の構成である。つまり、アウトフィードロール16は、サクションロールかつ駆動ロールである。
【0029】
第三センシングロール19は、第一及び第二センシングロール17,18と同様、第三張力検出部としての第三荷重センサ19aを有してベースフィルム1からの反力を測定する。
【0030】
モールドロール20の中心軸は、繰出ロール11及び巻取ロール12の中心軸と平行に設けられる。モールドロール20の円筒状の外周面には、ベースフィルム1に成形するパターン2を構成する凹部21及び凸部22が形成される。モールドロール20の下部には、繰出ロール11から巻取ロール12に搬送されるベースフィルム1が巻きかけられる。
【0031】
電動モータ23(図2参照)は、中心軸を中心としてモールドロール20を回転駆動する。電動モータ23は、搬送部10によるベースフィルム1の搬送速度にモールドロール20の回転速度が同期するようにコントローラ50によって制御される。電動モータ23は、モールドロール20を回転させることで、モールドロール20の外周の凸部22及び凹部21を、ベースフィルム1のフィルム面に順次接触させる。これにより、ベースフィルム1のフィルム面上の樹脂5にモールドロール20の外周のパターンが転写される。
【0032】
押付ロール25は、その中心軸がモールドロール20の中心軸と平行となるように、モールドロール20に隣接して設けられる。押付ロール25は、その中心軸を中心として回転可能に設けられ、外周面にはモールドロール20の上流側にあるベースフィルム1が巻きかけられる。ベースフィルム1は、押付ロール25とモールドロール20の間に挿入され、押付ロール25の外周面は、ベースフィルム1を挟んでモールドロール20の外周面に対向する。よって、押付ロール25は、巻きかけられたベースフィルム1の搬送(移動)により自由回転する。
【0033】
また、押付ロール25は、アクチュエータ(図示省略)によって、モールドロール20に対して進退するように構成される。つまり、アクチュエータによって押付ロール25とモールドロール20との中心軸間距離を調整できる。本実施形態では、押付ロール25は、アクチュエータによって図1中左右方向に移動可能である。これにより、ベースフィルム1に対するモールドロール20の密着力が調整される。アクチュエータの作動は、コントローラ50によって制御される。
【0034】
剥離ロール26は、その中心軸がモールドロール20の中心軸と平行となるように、モールドロール20に隣接して設けられる。剥離ロール26は、その中心軸を中心として回転可能に設けられ、外周面にはモールドロール20の下流側にあるベースフィルム1が巻きかけられる。ベースフィルム1は、剥離ロール26とモールドロール20の間に挿入され、剥離ロール26の外周面は、ベースフィルム1を挟んでモールドロール20の外周面に対向する。剥離ロール26は、巻きかけられたベースフィルム1の搬送(移動)によって自由回転する。
【0035】
また、剥離ロール26は、アクチュエータ(図示省略)によって、モールドロール20に対して進退するように構成される。つまり、アクチュエータによって剥離ロール26とモールドロール20との中心軸間距離を調整できる。本実施形態では、剥離ロール26は、アクチュエータによって図1中左右方向に移動可能である。パターンフィルム3は、剥離ロール26によって案内されることで樹脂5と共にモールドロール20から剥離される。
【0036】
ランプ35は、紫外線を照射可能な光源であり、例えば、LEDランプが利用される。ランプ35の作動は、コントローラ50によって制御される。ランプ35は、モールドロール20とベースフィルム1との接触部分(図1では、モールドロール20の下部)に向けて紫外線を照射するように、モールドロール20の下方に設けられる。ランプ35から発せられる紫外線は、透光性を有するベースフィルム1を通じて、モールドロール20の凸部22及び凹部21が転写されたベースフィルム1上の樹脂5に対して照射される。これにより、ベースフィルム1上の樹脂5が硬化して、ベースフィルム1に一体化(固着)される。
【0037】
なお、ランプ35は、LEDランプに限定されるものではなく、紫外線を照射可能なものであれば、その他のものでもよい。また、透光性を有する材質によってモールドロール20を形成し、ランプ35をモールドロール20の内側に設けて、モールドロール20を通じてベースフィルム1上の樹脂5に紫外線を照射するように構成してもよい。
【0038】
塗工ダイ30は、ベースフィルム1のフィルム面に供給する未硬化の樹脂5を吐出して、ベースフィルム1のフィルム面に樹脂5の膜を形成する。塗工ダイ30の作動は、コントローラ50によって制御される。
【0039】
塗工ダイ30は、上流側ガイドロール13と下流側ガイドロール14との間を移動してガイドロールのいずれとも接触していない(支持されていない)位置にあるベースフィルム1に対し、ベースフィルム1に対して垂直な水平方向(図1中左右方向)に向けて吐出するようにして樹脂5を供給する。より具体的には、塗工ダイ30による樹脂5の鉛直方向の供給位置は、上流側ガイドロール13と下流側ガイドロール14との間の中央に相当する。このように、本実施形態は、ガイドロールによって支持されているベースフィルム1に対して樹脂5を塗工するオンロールコーティングではなく、ガイドロールによって支持されていない状態のベースフィルム1に対して樹脂5を塗工するオフロールコーティングによって樹脂5をベースフィルム1に塗工する。
【0040】
塗工ダイ30は、供給位置にあるベースフィルム1に向けて水平方向(図1中左右方向)に進退可能に構成される。
【0041】
塗工ダイ30は、図3に示すように、ベースフィルム1に対向する先端部として、ダイリップ31を有する。ダイリップ31には、塗工ダイ30の吐出方向に延び樹脂5を吐出する吐出口31aが開口する。ダイリップ31は、ベースフィルム1の搬送方向において吐出口31aの下流側(図中上側)に設けられる丸み部32と、ベースフィルム1の搬送方向において吐出口31aの上流側(図中下側)に設けられる逃げ部33と、を有する。丸み部32と逃げ部33とは、吐出口31aを挟んで鉛直方向の上下に設けられている。
【0042】
丸み部32は、凸状の曲面(R形状)によって形成される。逃げ部33は、搬送方向の上流に向けて吐出口31aから離れるにつれて、ベースフィルム1からも離れるように傾斜する傾斜面によって形成される。
【0043】
後述するように、塗工ダイ30は、吐出する樹脂5を介してベースフィルム1に接触するため、基本的にはベースフィルム1に対して直接接触しない。しかしながら、塗工ダイ30からの吐出圧の変動や意図しない外力等の影響により、塗工ダイ30がベースフィルム1に直接接触し、これによりベースフィルム1に傷等が生じる可能性は排除できない。これに対し、本実施形態では、ダイリップ31がベースフィルム1に接触しても、逃げ部33はベースフィルム1に接触せず、丸み部32のみがベースフィルム1に接触する。このため、ベースフィルム1での傷等の発生を抑制できる。
【0044】
パターン成形装置100は、塗工ダイ30をベースフィルム1に向けて進退させる第一駆動部としてのダイ駆動部40と、上流側ガイドロール13を進退させる第二駆動部としてのロール駆動部45と、をさらに備える。ダイ駆動部40及びロール駆動部45は、それぞれコントローラ50によって制御される。
【0045】
ダイ駆動部40は、塗工ダイ30を塗工ダイ30による樹脂5の供給方向に沿って直線状に移動させるアクチュエータである。ダイ駆動部40は、駆動源としての電動モータ41と、電動モータ41の回転によって直線運動するボールねじ機構(図示省略)と、を有する。
【0046】
ロール駆動部45は、上流側ガイドロール13を塗工ダイ30による樹脂5の供給方向に沿って直線状に移動させるアクチュエータである。ダイ駆動部40と同様、ロール駆動部45は、駆動源としての電動モータ46と、電動モータ46の回転によって直線運動するボールねじ機構(図示省略)と、を有する。ロール駆動部45による上流側ガイドロール13の駆動方向は、ダイ駆動部40の駆動方向と平行である。
【0047】
ダイ駆動部40及びロール駆動部45は、上記構成に限定されず、塗工ダイ30又は上流側ガイドロール13を直線状に移動させることが可能な構成であれば、公知の構成を採用することができる。
【0048】
コントローラ50は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは接続された機器との情報の入出力に使用される。コントローラ50は、複数のマイクロコンピュータで構成されてもよい。コントローラ50は、少なくとも、各実施形態や変形例に係る制御を実行するために必要な処理を実行可能にプログラムされている。なお、コントローラ50は一つの装置として構成されていても良いし、複数の装置に分けられ、各制御を当該複数の装置で分散処理するように構成されていてもよい。
【0049】
コントローラ50は、本明細書に記載のパターン成形方法を実行可能となるように、パターン成形装置100の各構成の作動を制御する。
【0050】
次に、図1を参照して、パターン成形装置100により実行されるパターン成形方法について説明する。
【0051】
本実施形態に係るパターン成形方法は、繰出ロール11から巻取ロール12へと搬送されるベースフィルム1の表面に樹脂5を供給する供給工程と、パターンを構成する凹部21及び凸部22が外周に形成されるモールドロール20を回転させながらベースフィルム1の表面に押し付けてパターンをベースフィルム1に転写する転写工程と、パターンが転写されたベースフィルム1上の樹脂5に向けて紫外線を照射してベースフィルム1上の樹脂5を硬化させる硬化工程と、モールドロール20からベースフィルム1を剥離する剥離工程と、を含む。以下、各工程について具体的に説明する。
【0052】
[供給工程]
供給工程では、搬送部10の繰出ロール11及び巻取ロール12をそれぞれ駆動する電動モータを所定の方向に所定の速度で回転させ、ベースフィルム1を所定の搬送速度で搬送する。また、電動モータ23を回転させ、モールドロール20を所定の回転方向に一定の速度で回転させる。モールドロール20の回転速度は、搬送部10によるベースフィルム1の搬送速度に対応するような速度に設定される。
【0053】
パターン成形の開始直後は、塗工ダイ30は、ベースフィルム1から離間するように退避され、樹脂5の性状が安定するまで樹脂5を吐出する。樹脂5の性状が安定すると、作業者による操作ボタン(図示省略)の操作等の信号に基づいて塗工ダイ30がベースフィルム1に向けて移動する。そして、供給位置にあるベースフィルム1のフィルム面(モールドロール20に臨む面)に対して、塗工ダイ30により樹脂5を連続的に塗工する。これにより、モールドロール20に臨むベースフィルム1の一面には、所定の膜厚を有する樹脂5の膜が形成される。
【0054】
供給工程においては、塗工ダイ30及び上流側ガイドロール13の位置制御と、搬送部10のロールの速度制御と、が行われる。これらの制御については、後に詳細に説明する。
【0055】
[転写工程]
供給工程により樹脂5が塗布されたベースフィルム1は、押付ロール25とモールドロール20の間を通過する。この際、ベースフィルム1の樹脂5には、モールドロール20の外周が押し付けられる。これにより、ベースフィルム1とモールドロール20の凸部22によって挟み込まれた樹脂5がモールドロール20の凹部21を充填するようにして流動する。このようにして、モールドロール20の外周の凸部22及び凹部21に対応するパターンがベースフィルム1上の樹脂5に転写される。回転に伴ってモールドロール20の外周が順次ベースフィルム1上の樹脂5に押し付けられることで、ベースフィルム1上には、長手方向に連続するパターン2が形成される。
【0056】
[硬化工程]
硬化工程では、まず、ランプ35を点灯させる。パターンが転写されたベースフィルム1がランプ35と対向する位置まで移動すると、ベースフィルム1上の樹脂5は、ランプ35からの紫外線が照射されて硬化し、ベースフィルム1に固着される。このようにして、モールドロール20の外周を搬送されるベースフィルム1上の樹脂5が、ベースフィルム1に対して順次一体化される。
【0057】
[剥離工程]
硬化工程で樹脂5が固着されたベースフィルム1(パターンフィルム3)は、剥離ロール26によってモールドロール20から離間するように案内(転向)されることでモールドロール20の外周から剥離される。
【0058】
以上のようにして、ベースフィルム1のフィルム面には、パターン2が成形され、パターンフィルム3が得られる。パターン2が成形されたパターンフィルム3は、巻取ロール12によって巻き取られる。
【0059】
次に、供給工程における塗工ダイ30及び上流側ガイドロール13の位置制御について説明する。
【0060】
本実施形態では、ベースフィルム1が塗工ダイ30によって押圧され、塗工ダイ30とは反対側(図1中右側)へ押し込まれた状態で、塗工ダイ30の樹脂5がベースフィルム1に塗工される。ベースフィルム1が塗工ダイ30によって押し込まれていない状態では、ベースフィルム1は、ベースフィルム1の搬送経路となる上流側ガイドロール13と下流側ガイドロール14との外周を直線で結んだ一つの共通接線L1(図3中一点鎖線)上を搬送経路として搬送される。この共通接線L1は、鉛直方向に沿った(平行な)直線である。
【0061】
これに対し、ベースフィルム1が押し込まれた状態とは、図3に示すように、塗工ダイ30によって押圧されていない状態から、塗工ダイ30によって押圧されることでベースフィルム1がたわみ、上流側ガイドロール13と下流側ガイドロール14との間の空間に進入した状態である。言い換えると、ベースフィルム1が押し込まれた状態は、押し込まれていない状態のベースフィルム1の搬送経路となる上流側ガイドロール13と下流側ガイドロール14との共通接線L1をベースフィルム1の一部が超えた状態である。
【0062】
ベースフィルム1の押し込み量は、塗工ダイ30と上流側ガイドロール13との水平方向(塗工ダイ30の吐出方向)の位置を制御することで調整される。塗工ダイ30がベースフィルム1側に向けて移動して図3中右側に位置するほど、また、上流側ガイドロール13が塗工ダイ30に向けて移動して図3中左側に位置するほど、ベースフィルム1の押し込み量は大きくなる。
【0063】
ここで、通常、塗工される樹脂5の膜厚を薄くするために、塗工ダイ30からの吐出量を減少させる、または、ベースフィルム1の搬送速度を増加させると、ベースフィルム1上で局所的な液切れ(局所的に樹脂5が塗工されない部分)が生じることがある。このような局所的な液切れは、ベースフィルム1の搬送に伴ってベースフィルム1の長手方向に延伸され、塗工された樹脂5に長手方向の縦スジを生じさせ、結果として塗工不良の原因となる。
【0064】
これに対し、本実施形態では、塗工ダイ30から吐出される樹脂5は、塗工ダイ30からの吐出圧とベースフィルム1の張力との圧力バランスに応じた膜厚によってベースフィルム1に塗工される。塗工される樹脂5は、塗工ダイ30とベースフィルム1によって所定の圧力によって保持されるため、局所的な液切れ等を起こしにくく、均一な膜厚で安定した状態で塗工することができる。よって、本実施形態では、ベースフィルム1上に樹脂5を薄く塗工することができる。
【0065】
なお、上述のように、塗工ダイ30とベースフィルム1との間には、吐出された樹脂5が挟持される。よって、基本的には、塗工ダイ30は、ベースフィルム1には直接接触せず、吐出した樹脂5を介して接触する。
【0066】
また、ベースフィルム1の張力は、塗工ダイ30の押し込み量と、搬送部10に含まれる駆動ロールの回転速度と、に応じて定められる。よって、塗工ダイ30の押し込み量を調整することで、樹脂5に作用する圧力バランスを調整でき、その結果、塗工される樹脂5の膜厚を調整することができる。一般には、樹脂5に作用する圧力が大きいほど、つまり、塗工ダイ30の押し込み量が大きくベースフィルム1の張力が大きいほど、樹脂5の膜厚を薄くすることができる。
【0067】
また、塗工ダイ30と上流側ガイドロール13との位置を制御することで、塗工ダイ30による樹脂5の供給位置に導かれるベースフィルム1の入射角θ1と供給位置から搬送される出射角θ2とを調整することができる。なお、本実施形態では、ベースフィルム1の入射角θ1及び出射角θ2は、塗工ダイ30によって押圧されていない状態のベースフィルム1、言い換えると、鉛直方向に沿った基準線L2(図3中破線)に対する鋭角側の角度(劣角の角度)である。
【0068】
ベースフィルム1の入射角θ1が大きくなると、樹脂5に作用する圧力が大きくなる。このため、一般には、ベースフィルム1の入射角θ1を大きくすることで、より薄い膜厚によって樹脂5を塗工することができる。
【0069】
次に、駆動ロールの速度制御について説明する。
【0070】
上述のように、ベースフィルム1の樹脂5の膜厚を薄くするには、ベースフィルム1の張力を高くすることが有効である。一方、ベースフィルム1の張力を高くすると、張力が低い場合と比較して相対的に長手方向に伸長しやすくなる。長手方向に伸長した状態でベースフィルム1上の樹脂5にパターン2が転写されると、その後張力が除去された際にベースフィルム1が収縮することで転写されたパターン形状が変化(変形)するおそれがある。
【0071】
このため、本実施形態のパターン成形では、搬送部10のロール中の駆動ロールの回転速度、ひいてはロール間の速度差を制御し、ベースフィルム1の張力を搬送中の位置に応じて制御することができる。
【0072】
本実施形態のパターン成形装置100では、第一、第二、及び第三センシングロール17、18、19によって測定した張力がそれぞれ所定の張力となるように、駆動ロールであるインフィードロール15a、下流側ガイドロール14、及びアウトフィードロール16の回転速度を制御する。以下、インフィードロール15a、下流側ガイドロール14、及びアウトフィードロール16の回転速度をそれぞれV1、V2、V3とする。
【0073】
第一センシングロール17によって測定したベースフィルム1の張力は、インフィードロール15aに掛け回され下流側ガイドロール14に搬送されるまでのベースフィルム1(第一基材部)の張力であり、樹脂5が塗工される位置の張力とみなすことができる。インフィードロール15aが第一駆動ロールに相当する。
【0074】
第二センシングロール18によって測定したベースフィルム1の張力は、下流側ガイドロール14に掛け回されてモールドロール20まで搬送されるベースフィルム1(第二基材部)の張力であり、モールドロール20によってパターン2が転写される前の状態のベースフィルム1の張力とみなすことができる。下流側ガイドロール14が第二駆動ロールに相当する。
【0075】
第三センシングロール19によって測定したベースフィルム1の張力は、モールドロール20に掛け回されアウトフィードロール16に搬送されるまでのベースフィルム1の張力であり、パターン2が転写されベースフィルム1に樹脂5が硬化される、パターン成形時のベースフィルム1(パターンフィルム3)の張力とみなすことができる。
【0076】
本実施形態では、モールドロール20が駆動ロールとして構成され、所定の速度によって定速で回転駆動される。このため、モールドロール20の回転速度と上流側ガイドロール13の回転速度V2との速度差を制御することで、上流側ガイドロール13とモールドロール20との間のベースフィルム1の張力(第二センシングロール18が測定する張力)が調整される。
【0077】
インフィードロール15aの回転速度V1と上流側ガイドロール13の回転速度V2との速度差を制御することで、樹脂5を塗工するベースフィルム1の張力(第一センシングロール17が測定する張力)を調整することができる。
【0078】
モールドロール20の回転速度とアウトフィードロール16の回転速度V3との速度差を制御することで、パターン2が成形されたモールドロール20とアウトフィードロール16との間のベースフィルム1の張力(第三センシングロール19が測定する張力。以下、「転写後張力」とも称する。)を調整することができる。
【0079】
そして、本実施形態では、第一センシングロール17によって測定される張力が、第二センシングロール18によって測定される張力よりも大きくなるように、インフィードロール15aの回転速度V1及び上流側ガイドロール13の回転速度V2(言い換えると両者の速度差)が制御される。これにより、樹脂5が塗工されるベースフィルム1の張力を高くしてより薄く樹脂5を塗工することを可能にしつつ、パターン2を転写する際には張力を低くして張力除去後のパターン2の変形を抑制することができる。
【0080】
また、アウトフィードロール16の回転速度V3と巻取ロール12の回転速度とを制御することで、転写後張力と、アウトフィードロール16と巻取ロール12との間のベースフィルム1(パターンフィルム3)の張力(以下、「巻取張力」とも称する。)と、を個別に調整することができる。言い換えると、アウトフィードロール16の回転速度V3及び巻取ロール12の回転速度を制御することで、転写後張力と巻取張力とを互いに異ならせることができる。アウトフィードロール16は、パターンフィルム3の形状を変形させずに保つために、転写後張力が予め定められる所定の張力となるように、回転速度V3が制御される。一方、巻取張力は、巻きずれや巻き締まり等を生じさせないように、巻取ロール12での巻き始めは張力を高くし、巻き終わりになるに従い張力を低くすることが望ましい。このような巻取張力の調整は、巻取ロール12による巻径が大きいほど有効である。よって、本実施形態のように、転写後張力と巻取張力とを個別に制御できる構成として、転写後張力は所定の張力に保ち、巻取張力は巻取状況に応じて調整することで、パターンフィルム3の形状を保しつつ巻取ロール12による巻取を安定して行うことができる。
【0081】
このようなベースフィルム1の張力の制御は、張力によって変形しやすい薄膜のベースフィルム1に対して特に有効である。
【0082】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0083】
図4は、実施例及び比較例における樹脂5の最小膜厚とベースフィルム1の搬送速度との関係を示したグラフ図である。ここでいう樹脂5の最小膜厚とは、局所的な液切れ(縦スジ)を生じることなく塗工できた最小の膜厚を意味する。
【0084】
実施例は、上記実施形態に対応するオフロールコーティングである。比較例は、下流側ガイドロール14に支持されているベースフィルム1に対して塗工ダイ30から樹脂5を塗工するオンロールコーティングである。実施例と比較例は、オンロール/オフロールの方式以外においては、同一条件である。
【0085】
塗工される樹脂5は、ラジカル重合タイプのアクリル系UV硬化性樹脂である。図4のグラフ図は、塗工幅を80[mm]で統一し、塗工ダイ30からの吐出量を変化させて搬送速度ごとに最小の塗工膜厚をプロットしたものである。図4(a)は、液粘度が60[Pa・S]、図4(b)は液粘度が100[Pa・S]の場合を示している。
【0086】
図4(a)に示すように、液粘度が60[Pa・S]の場合、実施例では、搬送速度が1[m/min]における最小膜厚が1[μm]、搬送速度が5[m/min]における最小膜厚が2[μm]であった。これに対し、比較例では、搬送速度が1[m/min]における最小膜厚が5[μm]、搬送速度が5[m/min]における最小膜厚が16[μm]であった。このように、実施例では、比較例と比較して、最小膜厚を薄くすることができ、その効果は搬送速度が速くなるほど顕著に表れた。つまり、実施例のほうが比較例よりも搬送速度の増加による最小膜厚の増加の割合が小さく、搬送速度が速いほど実施例と比較例との差が大きくなる。これは、図4(b)に示す液粘度が100[Pa・S]の場合にもみられる傾向であることから、樹脂5の液粘度が異なったとしても同様の傾向となるといえる。
【0087】
以上から、本実施形態は、オンロールコーティングと比較して、塗工する樹脂5の膜厚を減少させることができ、搬送速度も増加させやすいといえる。したがって、本実施形態によれば、膜厚を薄くして残膜を低減しつつ、搬送速度を増加させて生産性の向上を図ることができる。
【0088】
以上のようにして、塗工ダイ30及び上流側ガイドロール13の位置制御と、駆動ロールの速度制御(ベースフィルム1の張力制御)と、が行われる。これらの位置制御及び速度制御は、パターン成形装置100の構成の作動をセンシングした測定値と予め定めた設定値とを利用したプログラムによる自動制御であってもよいし、操作部等を通じた作業者からの操作入力に応じて制御する手動制御であってもよい。
【0089】
次に、本実施形態の変形例について説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、以下の変形例と上記実施形態の各構成とを組み合わせたり、以下の変形例同士を組み合わせたり、以下の変形例と他の実施形態とを組み合わせたりすることも可能である。また、各変形例において、上記実施形態と同様の構成については、同様の符号を付して説明を省略する。
【0090】
上記実施形態では、上流側ガイドロール13が塗工ダイ30の吐出方向に沿って移動可能に構成され、下流側ガイドロール14は移動不能に構成される。これに対し、上流側ガイドロール13が移動不能に構成され、下流側ガイドロール14が塗工ダイ30の吐出方向に沿って移動可能に構成されてもよい。また、上流側ガイドロール13及び下流側ガイドロール14の両方が塗工ダイ30の吐出方向に沿って移動可能に構成されてもよい。さらに、上流側ガイドロール13及び下流側ガイドロール14の少なくとも一方が塗工ダイ30の吐出方向に沿って移動可能に構成されることが望ましいが、両方とも移動不能に構成されてもよい。この場合であっても、塗工ダイ30が吐出方向に移動可能に構成されていれば、塗工ダイ30によってベースフィルム1を押圧しながら樹脂5を塗工することができる。
【0091】
また、上記実施形態では、インフィードロール15aが駆動ロールとして回転速度が制御され、樹脂5が塗工されるベースフィルム1の張力が制御される。また、アウトフィードロール16が駆動ロールとして回転速度が制御され、パターンフィルム3の張力が制御される。これに対し、インフィードロール15aを設けず、繰出ロール11を駆動ロールとして回転速度を制御してもよい。同様に、アウトフィードロール16を設けず、巻取ロール12を駆動ロールとして回転速度を制御してもよい。これらの場合であっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0092】
また、樹脂5が塗工されるベースフィルム1とパターン2が転写されるベースフィルム1との張力を互いに異なるように制御するという観点では、第三センシングロール19の構成とアウトフィードロール16の速度制御とは省略してもよい。さらに、上記実施形態における速度制御そのものの構成も必須ではなく、駆動ロールの速度制御(ベースフィルム1の張力制御)を行わなくてもよい。
【0093】
また、上記実施形態では、樹脂5が塗工されたベースフィルム1の滑りを抑止するために、サクションロール(下流側ガイドロール14、アウトフィードロール16)が設けられる。これに対し、ベースフィルム1の滑りが生じない場合には、下流側ガイドロール14及びアウトフィードロール16は、サクションロールでなくてもよい。同様に、インフィードロール15aが設けられる場合であっても、インフィードニップロール15bを設けなくてもよい。
【0094】
また、上記実施形態では、樹脂5は紫外線硬化性樹脂であり、硬化手段は紫外線を照射可能なランプ35である。これに対し、上記実施形態では、硬化性樹脂として、熱硬化性樹脂を利用してもよい。この場合には、パターン成形装置100には、硬化手段として硬化性樹脂を加熱するヒータを設ければよい。
【0095】
以下、実施形態の作用効果について説明する。
【0096】
シート状のベースフィルム1にパターン2を成形するパターン成形装置100は、ベースフィルム1が掛け回される複数のロールを有し複数のロールによってベースフィルム1を搬送する搬送部10と、搬送部10によって搬送されるベースフィルム1の表面に樹脂5を供給する塗工ダイ30と、パターン2を構成する凹部21及び凸部22が外周に形成され樹脂5が供給されたベースフィルム1の表面に接触することでパターン2をベースフィルム1に転写するモールドロール20と、ベースフィルム1に光を照射して樹脂5を硬化させるランプ35と、を備え、塗工ダイ30は、複数のロールのうちの上流側ガイドロール13及び下流側ガイドロール14間を移動してロールに接触していない状態のベースフィルム1を押圧した状態でベースフィルム1に向けて樹脂5を供給する。
【0097】
また、シート状のベースフィルム1にパターン2を成形する本実施形態のパターン成形方法は、複数のロールによって搬送されるベースフィルム1の表面に塗工ダイ30から樹脂5を供給する供給工程と、パターン2を構成する凹部21及び凸部22が外周に形成されるモールドロール20を回転させながらベースフィルム1の表面に押し付けてパターン2をベースフィルム1に転写する転写工程と、パターン2が転写されたベースフィルム1上の樹脂5を硬化させる硬化工程と、を含み、供給工程では、複数のロールのうちの上流側ガイドロール13及び下流側ガイドロール14間を移動してロールに接触していない状態のベースフィルム1を押圧した状態でベースフィルム1に向けて樹脂5を供給する。
【0098】
これらの構成によれば、塗工ダイ30は、ロール上のベースフィルム1ではなく、ロールに接触していない状態のベースフィルム1に向けて樹脂5を供給するため、ロールとの干渉のおそれがなく、塗工ダイ30はベースフィルム1を押圧しながら樹脂5を供給する。塗工ダイ30によってベースフィルム1を押圧しながら樹脂5が供給されることで、ベースフィルム1と塗工ダイ30との間の隙間を小さくすることができる。また、樹脂5が塗工ダイ30とベースフィルム1とによって挟み込まれて所定の圧力が加えられながらベースフィルム1上に供給されるため、局所的に樹脂5が供給されない部位の発生を抑制でき、樹脂5を所望の膜厚で安定してベースフィルム1上に供給することができる。したがって、ベースフィルム1上の樹脂5の膜厚を薄くすることができ、残膜を低減することができる。
【0099】
また、本実施形態では、オンロールコーティングと比較して、ベースフィルム1の搬送速度を増加させても、塗工可能な樹脂5の膜厚の増加は抑制される。よって、本実施形態によれば、残膜を低減しつつ、ベースフィルム1の搬送速度を高速化してパターンフィルム3の生産性を向上させることができる。
【0100】
また、塗工する樹脂5の膜厚を薄くして残膜を低減する残膜低減方法には、パターン成形装置100の各構成の精度向上を図る、塗工ダイ30の上流側にバキューム機構を設け上流側の空気を低減して液切れを抑制する、塗工する樹脂5の低粘度化する、などの方法がある。本実施形態によれば、オフロールコーティング方式を採用し、塗工ダイ30をベースフィルム1に押圧することで、これらの方法を用いなくても樹脂5の膜厚を薄くすることができる。よって、低コストによって残膜を低減させることができる。なお、本実施形態と上述の残膜低減方法との組み合わせは阻害されるものではなく、両者を組み合わせてもよい。
【0101】
また、パターン成形装置100では、塗工ダイ30は、対向するベースフィルム1の垂直方向に沿って移動可能に構成される。
【0102】
この構成によれば、ベースフィルム1に対する塗工ダイ30の押し込み量を調整できるため、製造条件に応じて所望の膜厚によって樹脂5をベースフィルム1に塗工することができる。
【0103】
また、パターン成形装置100では、上流側ガイドロール13は、塗工ダイ30による樹脂5の吐出方向に沿って移動可能に構成される。
【0104】
この構成によれば、上流側ガイドロール13を移動させることで、塗工ダイ30の押し込み量と供給位置へのベースフィルム1の入射角θ1を調整することができる。これにより、製造条件に応じて所望の膜厚によって樹脂5をベースフィルム1に塗工することができる。
【0105】
また、パターン成形装置100では、樹脂供給部は、樹脂5を吐出する吐出口31aが開口するダイリップ31が設けられる塗工ダイ30を有し、ダイリップ31は、当該ダイリップ31に対向するベースフィルム1の搬送方向において吐出口31aの下流側に設けられ凸状の曲面を有する丸み部32と、ベースフィルム1の搬送方向において吐出口31aの上流側に設けられ、ベースフィルム1から離間するように形成される逃げ部33と、を有する。
【0106】
この構成では、塗工ダイ30とベースフィルム1が直接接触する事態が生じても、塗工ダイ30は、ダイリップ31の丸み部32においてのみベースフィルム1に接触する。このため、塗工ダイ30とベースフィルム1との直接の接触によってベースフィルム1に傷等が生じることを抑制できる。
【0107】
また、パターン成形装置100では、下流側ガイドロール14は、内側から外側の気体を吸引可能に構成されるサクションロールである。
【0108】
この構成では、表面に樹脂5が供給されたベースフィルム1であっても、内側から吸引することでベースフィルム1を下流側ガイドロール14に押し付けることができる。これにより、下流側ガイドロール14におけるベースフィルム1の滑りを抑制することができる。
【0109】
また、パターン成形装置100は、樹脂供給部による樹脂5の供給位置よりも搬送方向の上流側にあるベースフィルム1である第一基材部の張力を検出する第一センシングロール17と、樹脂供給部の供給位置よりも搬送方向の下流側であってモールドロール20の上流側にあるベースフィルム1である第二基材部の張力を検出する第二センシングロール18と、をさらに備え、ロールは、ベースフィルム1の第一基材部が掛け回され動力によって回転駆動されるインフィードロール15aと、ベースフィルム1の第二基材部が掛け回され動力によって回転駆動される下流側ガイドロール14と、を含み、インフィードロール15a及び下流側ガイドロール14の回転速度は、第二センシングロール18によって検出される張力が第一センシングロール17によって検出される張力よりも低くなるようにそれぞれ制御される。
【0110】
この構成では、樹脂5が塗工される第一基材部の張力が相対的に高く、パターン2が転写される第二基材部の張力が相対的に低い。このため、張力を高くすることで塗工する膜厚を薄くすることができると共に、張力が除去された際のパターン2の変形を抑制することができる。
【0111】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0112】
100 パターン成形装置
1 ベースフィルム1(基材)
2 パターン
10 搬送部
11 繰出ロール
12 巻取ロール
13 上流側ガイドロール(一対のロール)
14 下流側ガイドロール(一対のロール、第二駆動ロール)
15a インフィードロール(第一駆動ロール)
16 アウトフィードロール(ロール)
17a 第一荷重センサ(第一張力検出部)
18a 第二荷重センサ(第二張力検出部)
20 モールドロール
21 凹部
22 凸部
30 塗工ダイ(樹脂供給部)
31 ダイリップ
31a 吐出口
32 丸み部
33 逃げ部
35 ランプ(硬化部)
図1
図2
図3
図4