(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176069
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】電動機の制御装置
(51)【国際特許分類】
H02P 21/14 20160101AFI20241212BHJP
【FI】
H02P21/14
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094288
(22)【出願日】2023-06-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 康司
(72)【発明者】
【氏名】木村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】岡本 健
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505BB07
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE41
5H505EE49
5H505FF05
5H505HB01
5H505JJ06
5H505JJ18
5H505LL22
5H505LL34
5H505LL40
5H505LL41
(57)【要約】
【課題】電動機を回転させることなく、かつ、過電流を通電することなく電動機の制御パラメータを決定する。
【解決手段】制御装置2は、電動機1のパラメータを同定するパラメータ同定部5と、パラメータ同定部5が同定したパラメータに基づいて電動機1の制御パラメータを決定し、電動機の電流を制御する電流制御部6と、を備える。パラメータ同定部5は、規定の直流電圧が電動機1に印加されたときに抵抗値を同定する抵抗同定部5aと、規定の直流電圧が電動機1に印加されたときに電気時定数を同定する時定数同定部5bと、規定の直流電圧が電動機1に印加されたときに電動機の磁極位置を同定する磁極位置同定部5cと、規定の交流電圧が電動機1に印加されたときに上記の同定した磁極位置を用いてdq軸のインダクタンスを同定するインダクタンス同定部5dと、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機のパラメータを同定するための電圧を当該電動機に印加するための電圧指令を電力変換装置に対して出力するパラメータ同定部と、
前記電動機の制御パラメータを決定し、前記電動機の電流を制御する電流制御部と、
を備え、
前記パラメータ同定部は、
前記電力変換装置から規定の直流電圧が前記電動機に印加されたときに前記電動機の抵抗値を同定する抵抗同定部と、
前記電力変換装置から前記規定の直流電圧が前記電動機に印加されたときに前記電動機の電気時定数を同定する時定数同定部と、
前記電力変換装置から前記規定の直流電圧が前記電動機に印加されたときに前記電動機の磁極位置を同定する磁極位置同定部と、
前記電力変換装置から規定の交流電圧が前記電動機に印加されたときに前記磁極位置を用いて前記電動機のdq軸のインダクタンスを同定するインダクタンス同定部と、
を有し、
前記電流制御部は、前記電動機の停止中に前記パラメータ同定部が同定したパラメータに基づいて、前記電動機の前記制御パラメータを決定することを特徴とする電動機の制御装置。
【請求項2】
前記パラメータ同定部は、前記電動機がブレーキによって制動された状態で前記電動機のパラメータの同定を実施する請求項1に記載の電動機の制御装置。
【請求項3】
前記抵抗同定部は、前記規定の直流電圧を前記電動機の電流が基準電流値に達するまで段階的に増加させ、前記直流電圧の変化量と前記電動機の電流の変化量とから前記抵抗値を同定する請求項1または請求項2に記載の電動機の制御装置。
【請求項4】
前記時定数同定部は、前期電動機の電流が基準電流値になるときの前記規定の直流電圧の電圧値を基準電圧値として記憶し、前記基準電圧値の電圧を前記規定の直流電圧としてステップ状に前記電動機に印加させ、前記電動機の電流が前記基準電流値の規定の割合に達する時間を計測することで前記電気時定数を同定する請求項1または請求項2に記載の電動機の制御装置。
【請求項5】
前記抵抗同定部および前記時定数同定部の少なくとも一方は、前記規定の直流電圧の符号に合わせて前記電力変換装置のデッドタイム補正を行う請求項1または請求項2に記載の電動機の制御装置。
【請求項6】
前記磁極位置同定部は、前記電気時定数から決定したパルス幅のパルス状電圧を前記電動機に印加するように電圧指令を出力し、前記電動機の電気角の異なる角度方向に間欠的に前記パルス状電圧を複数回印加したときの前記電動機の電流から前記磁極位置を同定する請求項1または請求項2に記載の電動機の制御装置。
【請求項7】
前記インダクタンス同定部は、前記磁極位置を用いて前記電動機のd軸またはq軸に高周波電圧を印加し、前記高周波電圧の振幅を前期電動機の電流が基準電流値に達するまで段階的に増加させ、前記高周波電圧と前期電動機の電流とからd軸またはq軸のインダクタンスを同定する請求項1または請求項2に記載の電動機の制御装置。
【請求項8】
前記磁極位置同定部は、前記インダクタンス同定部がインダクタンスの同定を完了した後に前記パルス幅を前記インダクタンス同定部が同定したインダクタンスを用いて再度決定して磁極位置の同定を再度行い、
前記インダクタンス同定部は、再度同定された前記磁極位置を用いてインダクタンス同定を再度行う請求項6に記載の電動機の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、永久磁石型同期電動機の電気的定数を自動的に計測する機能を有する制御装置が開示されている。この制御装置は、巻線抵抗を求める直流試験手段と、永久磁石の方向のインダクタンスを求め、永久磁石に対して垂直の方向のインダクタンスを求める交流試験手段と、永久磁石の磁束を求める回転試験手段と、各手段によって求めた電気的定数をメモリに記憶する設定記憶手段と、を具備するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の制御装置においては、巻線抵抗を求める直流試験手段は電動機あるいは電動機に電圧を印加する電力変換装置に対して、過電流を通電する可能性がある。また、インダクタンス同定手段は、回転子が回転できる状態でないとインダクタンスを求めることができない。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためのものである。本開示の目的は、電動機を回転させることなく、かつ、過電流を通電することなく電動機の制御パラメータを決定することができる電動機の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る電動機の制御装置は、電動機のパラメータを同定するための電圧を当該電動機に印加するための電圧指令を電力変換装置に対して出力するパラメータ同定部と、前記電動機の制御パラメータを決定し、前記電動機の電流を制御する電流制御部と、を備える。前記パラメータ同定部は、前記電力変換装置から規定の直流電圧が前記電動機に印加されたときに前記電動機の抵抗値を同定する抵抗同定部と、前記電力変換装置から前記規定の直流電圧が前記電動機に印加されたときに前記電動機の電気時定数を同定する時定数同定部と、前記電力変換装置から前記規定の直流電圧が前記電動機に印加されたときに前記電動機の磁極位置を同定する磁極位置同定部と、前記電力変換装置から規定の交流電圧が前記電動機に印加されたときに前記磁極位置を用いて前記電動機のdq軸のインダクタンスを同定するインダクタンス同定部と、を有する。前記電流制御部は、前記電動機の停止中に前記パラメータ同定部が同定したパラメータに基づいて、前記電動機の前記制御パラメータを決定する。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る電動機の制御装置によれば、電動機を回転させることなく、かつ、過電流を通電することなく電動機の制御パラメータを決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る電動機駆動システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1における抵抗同定部による抵抗値同定の処理例を示すフローチャートである。
【
図3】実施の形態1における抵抗同定部による抵抗値同定の際の電圧および電流の時間履歴の一例を示す図である。
【
図4】実施の形態1における抵抗同定部によるデッドタイム補正の処理例を示すフローチャートである。
【
図5】実施の形態1における時定数同定部による時定数同定の処理例を示すフローチャートである。
【
図6】実施の形態1における時定数同定部による時定数同定の際の電圧および電流の時間履歴の一例を示す図である。
【
図7】実施の形態1における磁極位置同定部による磁極位置同定の処理例を示すフローチャートである。
【
図8】実施の形態1における磁極位置同定部による磁極位置同定の際の電圧および電流の時間履歴の一例を示す図である。
【
図9】実施の形態1におけるインダクタンス同定部によるインダクタンス同定の処理例を示すフローチャートである。
【
図10】実施の形態1におけるインダクタンス同定部によるインダクタンス同定の際の電圧および電流の時間履歴の一例を示す図である。
【
図11】実施の形態1の変形例における磁極位置同定部とインダクタンス同定部の処理例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一または相当する部分には同一の符号を付している。本開示において、重複する説明は、適宜に簡略化または省略する。以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。なお、本開示は、以下に示す実施の形態およびその変形例に限定されることはない。以下の実施の形態およびその変形例で説明する任意の構成要素は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、自由な組み合わせ、変形または省略が可能である。
【0010】
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る電動機駆動システムの構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る電動機駆動システムは、
図1に示すように、電動機1、電動機1を制御するための制御装置2、電動機1を駆動させる電力変換装置3、電流センサ4およびブレーキ7から構成される。
【0011】
電動機1は、永久磁石型同期電動機である。電動機1には、表面磁石型と埋込磁石型とのいずれも適用可能である。制御装置2は、電力変換装置3に対して、電動機1に電圧を印加させるための電圧指令を出力する。電力変換装置3は、制御装置2から出力された電圧指令に応じて、電動機1に電圧を印加する。電力変換装置3は、例えば、PWMインバータである。電流センサ4は、電動機1に流れる電流を検出する。電流センサ4は、電動機1の3相分の電流を検出してもよいし、2相分の電流を検出してもよい。
【0012】
電動機1の制御装置2は、パラメータ同定部5と電流制御部6とを備える。パラメータ同定部5は、電動機1のパラメータを同定するものである。パラメータ同定部5は、電動機1のパラメータを同定するための電圧を電動機1に印加させる電圧指令を、電力変換装置3に対して出力する。電流制御部6は、電動機1の制御パラメータを決定して、電動機1の電流を制御する。
【0013】
パラメータ同定部5は、抵抗同定部5a、時定数同定部5b、磁極位置同定部5cおよびインダクタンス同定部5dを有する。パラメータ同定部5は、抵抗同定部5a、時定数同定部5b、磁極位置同定部5cおよびインダクタンス同定部5dのそれぞれに応じた電圧指令を出力する。一例として、パラメータ同定部5は、出力した電圧指令の情報と、電流センサ4の検出する電流の情報と、を入力データとして、電動機1のパラメータを同定する。電流制御部6は、パラメータ同定部5が同定したパラメータを用いて、制御パラメータを決定する。
【0014】
抵抗同定部5aは、電力変換装置3から規定の直流電圧が電動機1に印加されたときに電動機1の抵抗値を同定する。時定数同定部5bは、電力変換装置3から規定の直流電圧が電動機1に印加されたときに電動機1の時定数を同定する。磁極位置同定部5cは、電力変換装置3から規定の直流電圧が電動機1に印加されたときに電動機1の磁極位置を同定する。インダクタンス同定部5dは、電力変換装置3から規定の交流電圧が電動機1に印加されたときに上記の磁極位置を用いて電動機1のdq軸のインダクタンスを同定する。そして、電流制御部6は、電動機1の停止中にパラメータ同定部5の各部が同定した抵抗値と時定数と磁極位置とdq軸のインダクタンスとに基づいて、電動機1の制御パラメータを決定する。このような構成によれば、電動機1を回転させることなく、かつ、過電流を通電することなく電動機1の制御パラメータを決定することができる。
【0015】
ブレーキ7は、電動機1を制動するものである。ブレーキ7は、電動機1の軸をロックするために用いられる。電動機1のパラメータを同定する際、パラメータ同定部5は、パラメータを同定するための電圧指令を電力変換装置3に対して出力する。電力変換装置3は、電圧指令に応じて電動機1に電圧を印加する。この際、電圧指令あるいは電動機1の仕様等に依っては、電動機1の軸が回転することがあり得る。電動機1の軸が回転した場合には、磁極位置の同定精度が悪化する。また、誘起電圧が発生することによって、抵抗値、時定数およびインダクタンスの同定精度も悪化してしまう。このため、ブレーキ7によって電動機1を軸が回転しないように制動した状態で、電動機1のパラメータの同定を実施することがより好ましい。
【0016】
以降では、パラメータ同定部5を構成する抵抗同定部5a、時定数同定部5b、磁極位置同定部5cおよびインダクタンス同定部5dによるパラメータ同定の具体例について、より詳細に説明する。
【0017】
図2は、実施の形態1における抵抗同定部5aによる抵抗値同定の処理例を示すフローチャートである。パラメータ同定部5によって抵抗値の同定を開始すると、抵抗同定部5aは、電動機1へ印加される電圧が段階的に増加するように電圧指令を出力する(ステップS201)。
【0018】
一例として、抵抗同定部5aは、3相分の電圧を電動機1に印加するように電圧指令を出力する。なお、抵抗同定部5aは、1相分の電圧を電動機1に印加するように電圧指令を出力してもよいし、2相分の電圧を電動機1に印加するように電圧指令を出力してもよい。1相分の電圧を電動機1に印加した場合には、電圧を与えた相における抵抗値が同定できる。2相分の電圧を電動機1に印加した場合には、電圧を与えた2相における抵抗値が同定できる。3相分の電圧を電動機1に印加した場合には、全ての相における抵抗値が同定できる。
【0019】
ステップS201の処理の後、抵抗同定部5aは、電流センサ4で検出している電流値が抵抗値同定用のデータを取得する際の規定電流値に達しているか否かを判定する(ステップS202)。電流が規定電流値に達していない場合は、ステップS201の処理へ戻る。電流が規定電流値に達している場合、抵抗同定部5aは、抵抗値同定用のデータとして電圧および電流のデータを取得して保存する(ステップS203)。
【0020】
抵抗値同定用の電圧および電流のデータは、2点以上で取得されることが望ましい。つまり、抵抗値同定用のデータを取得する際の規定電流値は2つ以上設定されることが望ましい。これにより、電圧および電流の変化量を用いて抵抗値を同定することができる。このような抵抗値の同定方法であれば、電圧指令と電力変換装置3により実際に印加される電圧との間に存在する誤差の影響を排除することができ、同定精度を向上することができる。電圧および電流の変化量を用いた抵抗値の同定方法の詳細は、後述する。
【0021】
ステップS203の処理の後、抵抗同定部5aは、電流センサ4で検出している電流値が基準電流値以上か否かを判定する(ステップS204)。基準電流値は、例えば、電動機1の定格電流あるいは電力変換装置3の許容電流として設定される。
【0022】
ステップS201の処理によって電動機1へ印加される電圧を段階的に増加させると、電動機1の電流値も同様に段階的に増加する。このとき、過剰な電流が流れると、電動機1の減磁および焼損等の要因になり得る。また、過剰な電流が流れると、電力変換装置3の破損の要因にもなり得る。そこで、電動機1の定格電流あるいは電力変換装置3の基準電流を基準電流値として設定して印加する電圧を制御する。これにより、各ハードウェアの破損を防止するとよい。
【0023】
ステップS204において電流が基準電流値より小さい場合は、ステップS201の処理へ戻る。ステップS204において電流が基準電流値以上の場合は、電動機1への電圧の印加を停止する処理を実行する(ステップS205)。電圧の印加を停止すると、ステップS203で取得したデータを用いて抵抗値を同定する(ステップS206)。
【0024】
ここで、抵抗同定部5aによる抵抗値同定の原理について説明する。抵抗値同定用のデータとして取得した2点の電流値をI1およびI2とする。そのときの電圧指令における電圧値をV1およびV2とする。また、電力変換装置3により電動機1に実際に印加される電圧値をV1
*およびV2
*とする。
【0025】
電圧指令における電圧値と実際に印加される電圧値との間の関係式は次式(1)(2)で表される。また、オームの法則によって、抵抗値Rは次式(3)で計算することができる。なお、ΔVは、電圧指令と実際に印加される電圧との間に存在する誤差を意味する。
【0026】
【0027】
パラメータ同定部5の抵抗同定部5aで得られる電圧の情報は電圧指令の情報である。抵抗同定部5aは、電圧指令の情報を用いて抵抗同定値R*を求める。抵抗同定値R*は、電圧指令における電圧値V1および電圧値V2用いて、次式(4)で表すことができる
【0028】
【0029】
このように、電圧の差分と電流の差分とを用いて抵抗同定値R*を計算することで、電圧指令と実際の電圧との間に存在する誤差を相殺して精度よく抵抗値を同定することができる。
【0030】
図3は、実施の形態1における抵抗同定部5aによる抵抗値同定の際の電圧および電流の時間履歴の一例を示す図である。
図3における電圧は、電動機1の相電圧を示す。
図3における電流は電動機1の相電流を示す。なお、
図3では1相分の時間履歴を示している、抵抗値同定のために印加する電圧は、上述の通り、3相分でもよいし2相分でもよい。
【0031】
図3では、段階的な電圧指令としてランプ関数を用いた例を示している。電圧を段階的に増加させる電圧指令であれば、ランプ関数ではなく他の関数を用いてもよい。
【0032】
電圧を段階的に増加させると、それに伴い電流値も増加していく。電流が基準電流値に達するまで電圧を増加させる。この間に、2点以上、電圧指令および電流値のデータを取得する。
図3の例では、電圧指令の電圧値V
1およびV
2と電流値I
1およびI
2を取得している。
【0033】
ここで、電流が基準電流値に達したときの電圧指令の電圧値を、基準電圧値として記憶するとよい。この基準電圧値は、基準電流値を電動機1に通電するために必要な電圧値である。基準電圧値は、パラメータ同定部5が有する抵抗同定部5a以外の各部がパラメータを同定する際に用いることができる。
【0034】
電力変換装置3がPWMインバータである場合に、デッドタイムによる電圧降下が存在する。そこで、デッドタイム補正(Td補正)を行うことが好ましい。デッドタイム補正は、電流の符号に応じて行われる。電流が正であれば正のTd補正値を、負であれば負のTd補正値を、電圧指令に対して加算する。なお、電流がゼロとなる付近ではTd補正値がチャタリングすることがあり、正確な補正ができない可能性がある。そこで、電流がゼロとなる付近では、Td補正値が滑らかになるような処理を施してもよい。
【0035】
本実施の形態における抵抗同定部5aでは、段階的に増加する直流電圧によって抵抗値を同定するため、印加する電圧の符号は既知である。また、電流の符号も電圧の符号と同一で既知である。よって、印加する電圧の符号に合わせてデッドタイム補正をすることで、フィードフォワード的に簡素な構成で、電力変換装置3のデッドタイムによる電圧降下を補償することが可能となる。
【0036】
図4は、実施の形態1における抵抗同定部5aによるデッドタイム補正の処理例を示すフローチャートである。まず、抵抗同定部5aは、電圧指令が正か否かを判定する(ステップS401)。電圧指令が正の場合には正の電流が通電するため、正のTd補正値を電圧指令に加算する(ステップS402)。電圧指令が負の場合には負の電流が通電するため、負のTd補正値を電圧指令に加算する(ステップS403)。
【0037】
以上のように、パラメータ同定部5の抵抗同定部5aは、ハードウェアの破損を防止しながら電動機1の抵抗値を精度よく同定することができる。本実施の形態においては、電動機1の電流値を監視しながら段階的に電圧指令を上昇させることで、電動機1あるいは電力変換装置3の許容電流を超えない範囲での電圧印加が可能である。さらに、電圧および電流の差分を用いて抵抗値を同定することで、精度よく抵抗値を同定することができる。また、電圧の符号に応じてデッドタイム補正を行うことで、簡素な構成でデッドタイムによる電圧降下を補償することができる。
【0038】
次に、パラメータ同定部5の時定数同定部5bによる時定数の同定の具体例について説明する。時定数同定部5bによって同定される「時定数」とは、電動機1の抵抗値RとインダクタンスLとによって決まる電気時定数T=L/Rを意味する。
【0039】
電動機1の停止中においては、電動機1の電圧から電流までの伝達特性は、抵抗値RとインダクタンスLとが直列接続された等価回路によって表現できる。このとき、電圧をステップ状に印加すると、電流は1次遅れ系の応答となる。ここで、電流の収束値に対して規定の割合、例えば、63%の値にある時間を計測することで、時定数を同定することができる。
【0040】
図5は、実施の形態1における時定数同定部5bによる時定数同定の処理例を示すフローチャートである。時定数同定部5bは、抵抗同定部5aで取得した基準電圧値をステップ状に印加するように、電圧指令を出力する(ステップS501)。基準電圧値は、上述したように、基準電流値の電流が通電されたときの電圧値である。この基準電圧値を用いることで、電動機1あるいは電力変換装置3に過電流が流れることを防止できる。また、基準電圧値を用いることで、電動機1の電流値が事前に分かるため、時定数の同定が容易になる。
【0041】
ステップS501の処理の後、時定数同定部5bは、電圧印加からの時間の計測を開始する(ステップS502)。本実施の形態では、電動機1の電流が基準電流値の規定の割合である63%に達するまでの時間から時定数を同定する。ステップS502の処理の後、電動機1の電流が基準電流値の63%に達しているか否かを判定する(ステップS503)。基準電流値の63%に達していない場合には、電圧の印加および時間の計測を継続する。基準電流値の63%に達している場合には、時間の計測を停止する(ステップS504)。そして、計測した時間から時定数を同定する(ステップS505)。
【0042】
なお、基準電圧値の電圧を印加する例を示したが、任意の電圧値の電圧を印加することで時定数の同定を行ってもよい。この場合、例えば、任意の電圧指令に対してどれくらいの電流が流れるかを計測した後に、同じ電圧指令を印加して計測した電流の規定の割合に達するまでの時間を計測すればよい。
【0043】
抵抗同定部5aにより抵抗値が既に同定されている場合、時定数同定値Tと抵抗同定値R*を用いて、電動機1のインダクタンスLをL=T×R*として求めることが可能である。ただし、埋込磁石形の電動機1においてはdq軸のそれぞれでインダクタンスLが異なるため、この時点で正確なインダクタンスLを同定することは難しい。そこで、後述するようにして、インダクタンス同定部5dによる同定を行うとよい。
【0044】
図6は、実施の形態1における時定数同定部5bによる時定数同定の際の電圧および電流の時間履歴の一例を示す図である。上述したように、時定数同定部5bは基準電圧値の電圧がステップ状に印加されるように電圧指令を出力する。印加する電圧は、抵抗値同定の際と同様に、1相分でも良いし、2相分でも良いし、3相すべてでも良い。電圧の印加開始から時間を計測し、電流値が基準電流値の規定の割合である63%に達する時間Tを時定数同定値Tとして同定する。なお、ここでは時定数を同定する電流の基準を一般的な理論値である基準電流値の63%としたが、時定数を計測できればどのような値に設定してもよい。また、時定数同定部5bは、抵抗同定部5aと同様にデッドタイム補正を行い、Td補正値を加算した値を電圧指令値とするとよい。
【0045】
以上のように、パラメータ同定部5の時定数同定部5bは、抵抗同定部5aで求めた基準電圧値を用いることで、ハードウェアの破損を防止しながら電動機1の時定数を同定することができる。
【0046】
次に、パラメータ同定部5の磁極位置同定部5cによる磁極位置の同定の具体例について説明する。本実施の形態では、パルス電圧を電動機1に印加して、そのときの電流から磁極位置を同定する。
【0047】
パルス電圧を印加するとき、電動機1の回転子の磁極の位相と印加電圧の位相とが同じ向きの場合、印加電圧で生じる電流による磁束と回転子の磁石の磁束とが同じ向きとなる。このため、磁束合算値が大きくなり、電動機1の鉄芯に磁気飽和が生じる。磁気飽和時には、電動機1の巻線インダクタンスが小さくなり、電動機1の電流振幅が大きくなる。一方、回転子の磁極の位相と印加電圧の位相とが逆向きの場合、印加電圧で生じる電流による磁束と回転子の磁石磁束とが逆向きになる。このため、磁束合算値が小さくなり、電動機1の鉄芯に磁気飽和が生じない。磁気飽和が生じていない時、電動機1の巻線インダクタンスが大きくなり、電動機1の電流振幅は小さくなる。
【0048】
このように、回転子の磁極の位相と電圧印加の位相との関係によって、電動機1の鉄芯の磁気飽和の度合いが異なり、電動機1の電流振幅が変化する。この性質を利用して、磁極位置を同定する。
【0049】
図7は、磁極位置同定部5cによる磁極位置同定の処理例を示すフローチャートである。まず、パルス電圧のパルス幅を時定数同定部5bで同定した時定数を用いて決定する(ステップS701)。
【0050】
上述の通り、電動機1に磁気飽和が生じるように電流を流す必要がある。パルス電圧は、磁気飽和が生じる電流が電動機1に通電するように印加する必要がある。このための最も簡単な方法としては、印加できる最大の振幅の電圧を印加すればよい。ただし、最大振幅の電圧を長時間印加し続けると、電動機1あるいは電力変換装置3に、破損の要因となり得る過大な電流が流れてしまう可能性がある。そこで、同定した時定数を用いてパルス電圧のパルス幅を決定するとよい。印加したパルス電圧に対してどれくらいの電流が流れるか予め把握できるため、過電流を防止しつつ、磁気飽和が生じる電流を通電することができる。
【0051】
ステップS701の処理でパルス電圧のパルス幅を決定した後は、実際に電動機1に対しパルス電圧を印加する(ステップS702)。そして、パルス電圧を印加したときの電流を計測する(ステップS703)。パルス電圧は、位相を変えながら、電動機1の電気角の異なる角度方向に間欠的に複数回印加する。パルス電圧を複数回印加する都度、電流を計測する。ステップS702およびステップS703の処理の後、計測した電流を用いて磁極位置を同定する(ステップS704)。
【0052】
図8は、実施の形態1における磁極位置同定部5cによる磁極位置同定の際の電圧および電流の時間履歴の一例を示す図である。
図8では、電動機1のα軸およびβ軸で位相を変化させながら電圧を印加する例を示している。なお、電圧印加はαβ軸に限らず、初めから3相で印加するようにしてもよい。また、
図8では、パルス電圧を6回印加する例を示しているが、パルス電圧の印加の回数は磁極位置が同定できる回数であれば何回でもよい。
【0053】
磁極位置同定においては、パルス電圧を印加する度に電流を計測する。
図8の例では、Iα1~Iα6およびIβ1~Iβ6を計測している。これらの電流の振幅が磁気飽和によって大小することで、磁極位置を同定することができる。磁極位置同定の計算式は、次式(5)となる。ここで、θは、磁極位置を意味する。
【0054】
【0055】
以上のように、パラメータ同定部5の磁極位置同定部5cは、時定数同定部5bで求めた時定数を用いてパルス電圧の幅を適正にすることで、ハードウェアの破損を防止しながら、電動機1の磁極位置を同定することができる。
【0056】
次に、パラメータ同定部5のインダクタンス同定部5dによるインダクタンスLの同定の具体例について説明する。磁極位置同定部5cによって同定した電動機1の磁極位置を用いることで、電動機1のdq軸を確定できる。確定したdq軸に交流電圧を印加して、その応答である電流を計測することで、dq軸のインダクタンスLを同定することができる。
【0057】
電動機1の停止中においては、電動機1の電圧から電流までの伝達特性は、抵抗値RとインダクタンスLとが直列接続された等価回路によって表現できる。このとき、十分に周波数の高い高周波の交流電圧を印加すると、電圧に対する電流の応答はインダクタンスLのみに依存しているものとして考えることができ、電圧と電流との比率によりインダクタンスLを同定することが可能である。これにより、電動機1が埋込磁石形でもインダクタンスLが同定できる。
【0058】
この時、印加する交流電圧の振幅が大きすぎると、電動機1あるいは電力変換装置3に過剰な電流が通電する可能性がある。そこで、抵抗同定部5aと同様に、電圧振幅を段階的に増加させるように電圧指令を出力して、過電流を防止しながらインダクタンス同定を行うとよい。なお、交流電圧の周波数は任意であるが、電動機1がインダクタンス成分のみと見なせる周波数、一般的には数百Hz以上の周波数である必要がある。
【0059】
図9は、実施の形態1におけるインダクタンス同定部5dによるインダクタンス同定の処理例を示すフローチャートである。インダクタンス同定部5dは、インダクタンス同定のための交流電圧が振幅を段階的に増加しながら電動機1に印加されるように、電圧指令を出力する(ステップS901)。ステップS901の処理の次に、電動機1の電流が基準電流値以上か否かを判定する(ステップS902)。電流が基準値よりも小さい場合には、ステップS901に戻って交流電圧の振幅を段階的に増加させる。
【0060】
電動機1の電流が基準電流値以上であれば、交流電圧の振幅を固定する(ステップS903)。振幅を固定したら、インダクタンス同定用のデータを取得する(ステップS904)。インダクタンス同定用のデータは、電圧と電流の振幅の情報である。なお、電圧の振幅の情報には、電圧指令における電圧の振幅の情報を用いればよい。電流の振幅を取得する方法としては、フーリエ変換を用いてもよいし、電流の最大値および最小値を計測してもよいし、その他の任意の方法によって電流の振幅を計測してもよい。
【0061】
ステップS904の処理で取得したデータによって、インダクタンス同定を行う(ステップS905)。インダクタンスLの同定式は、次式(6)で表される。ここで、ωは交流電圧の周波数、Vaは電圧振幅、Iaaは電流振幅を意味する。
【0062】
【0063】
図10は、実施の形態1におけるインダクタンス同定部5dによるインダクタンス同定の際の電圧および電流の時間履歴の一例を示す図である。上述したように、電動機1の電流が基準電流値に達するまで電圧振幅を増加させ、電流が基準電流値に達すると電圧振幅を固定してインダクタンス同定用のデータである電圧と電流の振幅の情報を取得する。そして、取得したデータを用いて、インダクタンスLを式(6)により同定する。dq軸それぞれのインダクタンスLを同定する場合には、例えば、d軸のインダクタンス同定の後にq軸のインダクタンス同定を行うなど、各軸でのインダクタンス同定を独立して実施する。
【0064】
パラメータ同定部5のインダクタンス同定部5dは、電流値を監視しながら段階的に印加電圧を上昇させることで、電動機1あるいは電力変換装置3の許容電流を超えない範囲での電圧印加を行うことができる。これにより、ハードウェアの破損を防止しながら電動機1のインダクタンスLを同定することができる。
【0065】
パラメータ同定部5により同定された各パラメータの情報は、電流制御部6に送られる。電流制御部6は、同定された抵抗値RおよびインダクタンスL等を用いて制御ゲインを決定し、同定した磁極位置を用いてdq軸での制御をすることができる。また、同定した磁極位置を用いて、電流センサ4で検出する電動機1の電流をdq軸電流に変換する。これらの一連の制御により、パラメータが未知の電動機1でも、電流制御を実施できる。そして、上述の通り、電動機1を回転させることなく、かつ、過電流を通電することなくパラメータを同定して、制御パラメータを決定することができる。
【0066】
また、
図11は、実施の形態1の変形例における磁極位置同定部5cとインダクタンス同定部5dの処理例を示すフローチャートである。本変形例においては、磁極位置同定部5cによる磁極位置同定とインダクタンス同定部5dによるインダクタンス同定とを複数回繰り返し実施する事で、各パラメータの同定精度を向上させる。
【0067】
まず、磁極位置同定部5cにより磁極位置同定を行う(ステップS1101)。一度目のステップS1101では、上記の実施例と同様に、時定数同定部5bにより同定した時定数を用いて決定したパルス幅のパルス電圧を印加して磁極位置を同定する。ステップS1101の処理の次に、インダクタンス同定部5dによりインダクタンス同定を行う(ステップS1102)。
【0068】
次に、ステップS1102で同定したインダクタンスを用いて時定数を同定し直し、磁極位置同定のためのパルス電圧のパルス幅を再度決定する(ステップS1103)。ステップS1103の処理の後、パラメータ同定が規定回数実施されたか否かを判定する(ステップS1104)。同定が規定回数実施されていない場合には、ステップS1101に戻り、ステップS1103で決定したパルス幅のパルス電圧によって磁極位置を再度同定する。そして、再度同定した磁極位置を用いてdq軸を確立し、インダクタンスを再度同定する。さらに、再度同定したインダクタンスを用いて磁極位置同定用のパルス電圧のパルス幅を再決定する。そして、パラメータ同定を規定回数実施したか否かを判定する。
【0069】
このように磁極位置同定用のパルス電圧のパルス幅とインダクタンスとを繰り返し同定することで同定精度が向上し、信頼性の高いパラメータを得ることができる。ステップS1104において、規定回数同定が完了していると判定された場合には、最後に同定された磁極位置とインダクタンスとを最終的な同定値として決定して保存する(ステップS1105)。なお、本変形例においても、電動機1が回転しないようにブレーキ7により制動した状態でのパラメータ同定を実施する事が望ましい。
【0070】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0071】
(付記1)
電動機のパラメータを同定するための電圧を当該電動機に印加するための電圧指令を電力変換装置に対して出力するパラメータ同定部と、
前記電動機の制御パラメータを決定し、前記電動機の電流を制御する電流制御部と、
を備え、
前記パラメータ同定部は、
前記電力変換装置から規定の直流電圧が前記電動機に印加されたときに前記電動機の抵抗値を同定する抵抗同定部と、
前記電力変換装置から前記規定の直流電圧が前記電動機に印加されたときに前記電動機の電気時定数を同定する時定数同定部と、
前記電力変換装置から前記規定の直流電圧が前記電動機に印加されたときに前記電動機の磁極位置を同定する磁極位置同定部と、
前記電力変換装置から規定の交流電圧が前記電動機に印加されたときに前記磁極位置を用いて前記電動機のdq軸のインダクタンスを同定するインダクタンス同定部と、
を有し、
前記電流制御部は、前記電動機の停止中に前記パラメータ同定部が同定したパラメータに基づいて、前記電動機の前記制御パラメータを決定することを特徴とする電動機の制御装置。
(付記2)
前記パラメータ同定部は、前記電動機がブレーキによって制動された状態で前記電動機のパラメータの同定を実施する付記1に記載の電動機の制御装置。
(付記3)
前記抵抗同定部は、前記規定の直流電圧を前記電動機の電流が基準電流値に達するまで段階的に増加させ、前記直流電圧の変化量と前記電動機の電流の変化量とから前記抵抗値を同定する付記1または付記2に記載の電動機の制御装置。
(付記4)
前記時定数同定部は、前期電動機の電流が基準電流値になるときの前記規定の直流電圧の電圧値を基準電圧値として記憶し、前記基準電圧値の電圧を前記規定の直流電圧としてステップ状に前記電動機に印加させ、前記電動機の電流が前記基準電流値の規定の割合に達する時間を計測することで前記電気時定数を同定する付記1から付記3の何れかに記載の電動機の制御装置。
(付記5)
前記抵抗同定部および前記時定数同定部の少なくとも一方は、前記規定の直流電圧の符号に合わせて前記電力変換装置のデッドタイム補正を行う付記1から付記4の何れかに記載の電動機の制御装置。
(付記6)
前記磁極位置同定部は、前記電気時定数から決定したパルス幅のパルス状電圧を前記電動機に印加するように電圧指令を出力し、前記電動機の電気角の異なる角度方向に間欠的に前記パルス状電圧を複数回印加したときの前記電動機の電流から前記磁極位置を同定する付記1から付記5の何れかに記載の電動機の制御装置。
(付記7)
前記インダクタンス同定部は、前記磁極位置を用いて前記電動機のd軸またはq軸に高周波電圧を印加し、前記高周波電圧の振幅を前期電動機の電流が基準電流値に達するまで段階的に増加させ、前記高周波電圧と前期電動機の電流とからd軸またはq軸のインダクタンスを同定する付記1から付記6の何れかに記載の電動機の制御装置。
(付記8)
前記磁極位置同定部は、前記インダクタンス同定部がインダクタンスの同定を完了した後に前記パルス幅を前記インダクタンス同定部が同定したインダクタンスを用いて再度決定して磁極位置の同定を再度行い、
前記インダクタンス同定部は、再度同定された前記磁極位置を用いてインダクタンス同定を再度行う付記6に記載の電動機の制御装置。
【符号の説明】
【0072】
1 電動機、 2 制御装置、 3 電力変換装置、 4 電流センサ、 5 パラメータ同定部、 5a 抵抗同定部、 5b 時定数同定部、 5c 磁極位置同定部、 5d インダクタンス同定部、 6 電流制御部、 7 ブレーキ
【手続補正書】
【提出日】2024-01-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機のパラメータを同定するための電圧を当該電動機に印加するための電圧指令を電力変換装置に対して出力するパラメータ同定部と、
前記電動機の制御パラメータを決定し、前記電動機の電流を制御する電流制御部と、
を備え、
前記パラメータ同定部は、
前記電力変換装置から規定の直流電圧が前記電動機に印加されたときに前記電動機の抵抗値を同定する抵抗同定部と、
前記電力変換装置から前記規定の直流電圧が前記電動機に印加されたときに前記電動機の電気時定数を同定する時定数同定部と、
前記電力変換装置から前記規定の直流電圧が前記電動機に印加されたときに前記電動機の磁極位置を同定する磁極位置同定部と、
前記電力変換装置から規定の交流電圧が前記電動機に印加されたときに前記磁極位置を用いて前記電動機のdq軸のインダクタンスを同定するインダクタンス同定部と、
を有し、
前記電流制御部は、前記電動機の停止中に前記パラメータ同定部が同定したパラメータに基づいて、前記電動機の前記制御パラメータを決定することを特徴とする電動機の制御装置。
【請求項2】
前記パラメータ同定部は、前記電動機がブレーキによって制動された状態で前記電動機のパラメータの同定を実施する請求項1に記載の電動機の制御装置。
【請求項3】
前記抵抗同定部は、前記規定の直流電圧を前記電動機の電流が基準電流値に達するまで段階的に増加させ、前記直流電圧の変化量と前記電動機の電流の変化量とから前記抵抗値を同定する請求項1または請求項2に記載の電動機の制御装置。
【請求項4】
前記時定数同定部は、前記電動機の電流が基準電流値になるときの前記規定の直流電圧の電圧値を基準電圧値として記憶し、前記基準電圧値の電圧を前記規定の直流電圧としてステップ状に前記電動機に印加させ、前記電動機の電流が前記基準電流値の規定の割合に達する時間を計測することで前記電気時定数を同定する請求項1または請求項2に記載の電動機の制御装置。
【請求項5】
前記抵抗同定部および前記時定数同定部の少なくとも一方は、前記規定の直流電圧の符号に合わせて前記電力変換装置のデッドタイム補正を行う請求項1または請求項2に記載の電動機の制御装置。
【請求項6】
前記磁極位置同定部は、前記電気時定数から決定したパルス幅のパルス状電圧を前記電動機に印加するように電圧指令を出力し、前記電動機の電気角の異なる角度方向に間欠的に前記パルス状電圧を複数回印加したときの前記電動機の電流から前記磁極位置を同定する請求項1または請求項2に記載の電動機の制御装置。
【請求項7】
前記インダクタンス同定部は、前記磁極位置を用いて前記電動機のd軸またはq軸に高周波電圧を印加し、前記高周波電圧の振幅を前記電動機の電流が基準電流値に達するまで段階的に増加させ、前記高周波電圧と前記電動機の電流とからd軸またはq軸のインダクタンスを同定する請求項1または請求項2に記載の電動機の制御装置。
【請求項8】
前記磁極位置同定部は、前記インダクタンス同定部がインダクタンスの同定を完了した後に前記パルス幅を前記インダクタンス同定部が同定したインダクタンスを用いて再度決定して磁極位置の同定を再度行い、
前記インダクタンス同定部は、再度同定された前記磁極位置を用いてインダクタンス同定を再度行う請求項6に記載の電動機の制御装置。