(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176076
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ポリエステル系フィルムの回収方法、ポリエステル系フィルムの処理装置およびポリエステル製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29B 17/02 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
B29B17/02 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094300
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】池山 敬子
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 仁
(72)【発明者】
【氏名】西崎 大起
(72)【発明者】
【氏名】山本 啓太
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA22
4F401AD02
4F401AD07
4F401CA02
4F401CA04
4F401CA32
4F401CA41
4F401CA48
4F401CA49
4F401CA79
4F401CA91
4F401CB18
4F401DC04
4F401EA07
4F401EA46
4F401EA59
4F401EA79
(57)【要約】
【課題】長尺状のポリエステル系フィルム上に少なくとも1層の塗布膜を有する長尺状ポリエステル系フィルム基材から純度の高いポリエステル系フィルムを、採算性良く、短時間で効率的に回収する方法を提供すること。
【解決手段】長尺状のポリエステル系フィルム上の少なくとも一部に少なくとも1層の塗布膜を有してなる長尺状ポリエステル系フィルム基材から塗布膜を除去してポリエステル系フィルムを回収する方法であって、複数の該長尺状ポリエステル系フィルム基材を同時に溶媒に接触させる工程(1)を含む方法とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状のポリエステル系フィルム上の少なくとも一部に少なくとも1層の塗布膜を有してなる長尺状ポリエステル系フィルム基材から、前記塗布膜を除去して前記ポリエステル系フィルムを回収する方法であって、下記工程(1)を含む方法。
(1)複数の前記長尺状ポリエステル系フィルム基材を同時に溶媒に接触させる工程
【請求項2】
前記工程(1)において、前記溶媒がアルカリ性の処理液である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程(1)の後に、下記工程(4)を含む、請求項2に記載の方法。
(4)水により前記長尺状ポリエステル系フィルム基材を洗浄する工程
【請求項4】
前記工程(1)の前に、下記工程(2)を含む、請求項3に記載の方法。
(2)界面活性剤、アルコールまたは界面活性剤若しくはアルコールを溶解した水溶液に前記長尺状ポリエステル系フィルム基材を接触させる工程
【請求項5】
前記工程(1)の前に、下記工程(3)を含む、請求項4に記載の方法。
(3)コロナ放電処理、プラズマ処理、グロー放電処理、火焔処理及び紫外線処理から選ばれる少なくとも1の表面改質処理を行う工程
【請求項6】
複数の長尺状ポリエステル系フィルム基材をローラー上に並べて搬送し、溶媒と接触させるにあたり、前記長尺状ポリエステル系フィルム基材の蛇行走行防止機能及び斜行走行防止機能を備えたポリエステル系フィルムの処理装置。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法または請求項6に記載の処理装置で回収したポリエステル系フィルムを、押し出し成形してポリエステル製品を製造するポリエステル製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル系フィルム上の少なくとも一部に少なくとも1層の塗布膜を有してなるポリエステル系フィルム基材からポリエステル系フィルムを回収する方法、ポリエステル系フィルムの処理装置およびポリエステル製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル系フィルムは、その機械的、物理的、化学的性能が優れているため、多様な用途で用いられている。これらポリエステル系フィルムの多くの表面には、片面または両面に、種々の機能を有する塗布膜が積層されている。
【0003】
上記ポリエステル系フィルムが多様な用途で使用されていることに伴い、発生する廃棄対象物、使用済み品も多量になりつつあるのが現状であり、地球環境の悪化につながる。この問題を解消して、ポリエステル系フィルムのリサイクルを図るためには、ポリエステル系フィルム基材から塗布膜を除去することで、再びポリエステル系フィルムとして利用することが好ましい。
【0004】
このような技術として、例えば特許文献1、特許文献2および特許文献3が挙げられる。これらの特許文献には、塗布膜を有する長尺状のポリエステル系フィルム基材を、長尺状のままアルカリ性処理液に接触させて前記塗布膜を除去することで、ポリエステル系フィルムを回収する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-90094号公報
【特許文献2】特開2022-31256号公報
【特許文献3】特開2022-36124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、セラミック電子部品の製造時に使用するグリーンシート成形用工程紙、偏光板、光学フィルター等のフラットパネルディスプレイ製造時に使用する光学部材の粘着セパレータなどに使用される離型フィルムは、大面積のフィルムを所定サイズのフィルム幅に裁断して使用されている。そのため、特許文献1、特許文献2および特許文献3に記載の方法では、フィルム幅の狭いポリエステル系フィルム基材をリサイクルする際は1系列の装置にて回収可能なフィルム量が少なく採算性が低いことから、回収方法のさらなる改善が求められている。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その課題は、長尺状のポリエステル系フィルムに少なくとも1層の塗布膜を有してなる長尺状ポリエステル系フィルム基材から純度の高いポリエステル系フィルムを、採算性良く、短時間で効率的に回収する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記の課題を解決すべく検討を行った結果、複数の長尺状ポリエステル系フィルム基材を同時に搬送し、溶媒に接触させる技術を用いるに至った。このような技術によれば、フィルム幅の狭い長尺状ポリエステル系フィルム基材を複数同時に溶媒に接触させることができるため、1系列の装置にて回収可能なフィルム量を大幅に増大でき、所期の目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
ポリエステル系フィルムの回収において、フィルム幅の狭いポリエステル系フィルム基材をリサイクルする際に、複数の長尺状ポリエステル系フィルム基材を同時に溶媒に接触させる工程を含むことで、1系列の装置にて回収可能なフィルム量を増大でき、採算性良く回収できる。
【0010】
また、ポリエステル系フィルムの回収において、長尺状ポリエステル系フィルム基材をローラー上に並べて搬送し、溶媒と接触させるにあたり、該長尺状ポリエステル系フィルム基材の蛇行走行防止機能及び斜行走行防止機能を備えることで、溶媒処理の際にフィルム基材同士が重なり処理性が悪化することを防ぎ、純度の高いポリエステル系フィルムを、採算性良く、短時間で効率的に回収できる。
【0011】
本発明の構成は以下のとおりである。
1.長尺状のポリエステル系フィルム上の少なくとも一部に少なくとも1層の塗布膜を有してなる長尺状ポリエステル系フィルム基材から、前記塗布膜を除去して前記ポリエステル系フィルムを回収する方法であって、下記工程(1)を含む方法。
(1)複数の前記長尺状ポリエステル系フィルム基材を同時に溶媒に接触させる工程
2.前記工程(1)において、前記溶媒がアルカリ性の処理液である、前記1に記載の方法。
3.前記工程(1)の後に、下記工程(4)を含む、前記2に記載の方法。
(4)水により前記長尺状ポリエステル系フィルム基材を洗浄する工程
4.前記工程(1)の前に、下記工程(2)を含む、前記3に記載の方法。
(2)界面活性剤、アルコールまたは界面活性剤若しくはアルコールを溶解した水溶液に前記長尺状ポリエステル系フィルム基材を接触させる工程
5.前記工程(1)の前に、下記工程(3)を含む、前記4に記載の方法。
(3)コロナ放電処理、プラズマ処理、グロー放電処理、火焔処理及び紫外線処理から選ばれる少なくとも1の表面改質処理を行う工程
6.複数の長尺状ポリエステル系フィルム基材をローラー上に並べて搬送し、溶媒と接触させるにあたり、前記長尺状ポリエステル系フィルム基材の蛇行走行防止機能及び斜行走行防止機能を備えたポリエステル系フィルムの処理装置。
7.前記1~5のいずれか1に記載の方法または前記6に記載の処理装置で回収したポリエステル系フィルムを、押し出し成形してポリエステル製品を製造するポリエステル製品の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリエステル系フィルムの回収方法によれば、長尺状のポリエステル系フィルム上の少なくとも一部に少なくとも1層の塗布膜を有してなる長尺状ポリエステル系フィルム基材から塗布膜を効率的に除去できるので、従来廃棄されていた使用済みポリエステル系フィルムから、採算性良く、純度の高いポリエステル系フィルムを回収し得る。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
なお、本明細書において数値範囲を示す「~」とは、特段の定めがない限り、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0014】
本実施形態の長尺状のポリエステル系フィルムを回収する方法(以下、本実施形態の方法とも略す)は、長尺状のポリエステル系フィルムと長尺状のポリエステル系フィルムの少なくとも一部に設けられた少なくとも1層の塗布膜とを含む長尺状ポリエステル系フィルム基材から塗布膜を除去して長尺状のポリエステル系フィルムを回収する方法であって、複数の長尺状ポリエステル系フィルム基材を同時に搬送し、溶媒に接触させる工程(1)を有する。
【0015】
〈ポリエステル系フィルム〉
本実施形態におけるポリエステル系フィルムはポリエステル組成物を含んで形成される。ポリエステル組成物としては特に限定されるものではないが、例えば、ジカルボン酸成分とジオール成分とを重縮合して得られるポリエステルが挙げられる。
【0016】
前記ジカルボン酸成分としては、例えば、芳香族ジカルボン酸、鎖状脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸など種々のジカルボン酸成分が挙げられる。具体的には、例えば、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、フタル酸などが挙げられる。
【0017】
前記ジオール成分としては、脂肪族グリコールが好ましく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。またジオール以外にもトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの多官能アルコールも用いることができる。
【0018】
ポリエステル系フィルムは、ホモポリエステル系フィルムであっても、共重合ポリエステル系フィルムであってもよい。また、ポリエステル系フィルムは、ジカルボン酸成分、ジオール成分以外の第3成分を共重合成分として含んでもよい。
【0019】
ポリエステル系フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートを主たる構成成分とするポリエステル系フィルムが好ましく用いられる。より好ましくは、ポリエチレンテレフタレートである。また、これらは、共重合ポリエステルであってもよい。
【0020】
ポリエステル系フィルムは、ポリエステル組成物からなるものであってもよいし、組成物中にポリエステル以外の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、末端封鎖剤、酸化防止剤、難燃剤、蛍光増白剤、艶消剤、可塑剤もしくは消泡剤等が挙げられる。
【0021】
ポリエステル系フィルムは、市販のものを用いてもよいし、製造する場合は、例えば、以下の方法で作製できる。
例えば、ポリエステル系フィルムを真空乾燥した後、押し出し機に供給し、260~300℃で溶解し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度10~60℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて、冷却固化させて未延伸ポリエステル系フィルムを作製する。未延伸ポリエステル系フィルムを70~130℃に加熱されたロール間で縦方向に2.5~5倍延伸する。引き続き、連続的に70~150℃の加熱された熱風ゾーンで幅方向に2.5~5倍延伸し、続いて190~240℃の熱処理ゾーンに導き、5~40秒間の熱処理を施し、100~200℃の冷却ゾーンを経て結晶配向を完了させ、ポリエステル系フィルムを得る。また、上記熱処理中に必要に応じて幅方向あるいは長手方向に0.1~12%の弛緩処理を施してもよい。
【0022】
本実施形態において、ポリエステル系フィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、強度、剛性等といった取扱い性などを考慮すると、5μm以上500μm以下であることが好ましい。ポリエステル系フィルムの厚みは、より好ましくは10μm以上200μm以下、特に好ましくは20μm以上100μm以下である。
【0023】
なお、本実施形態では、後記するポリエステル系フィルムの回収におけるポリエステル系フィルム基材は長尺状のポリエステル系フィルム基材とする。本明細書において、「長尺状」とは平面視で長辺の長さが短辺の長さ(幅)の2倍程度以上長いことをいう。ポリエステル系フィルム基材が長尺状であれば、その長さは、例えば使用する装置などの種類などによっても相違するが、おおむね100m以上10000m以内とすることができ、破砕するなどせずに直接回収処理できる。
【0024】
本実施形態の方法によれば、複数の長尺状に巻き取られたポリエステル系フィルム基材(長尺状ポリエステル系フィルム基材)を同時に搬送し、複数同時に溶媒に接触させることができ、該長尺状ポリエステル系フィルム基材から効率良く塗布膜を除去できる。好ましくは、複数の長尺状ポリエステル系フィルム基材を同時に搬送し、後記する溶媒と接触させた後、後記する次工程(水洗、乾燥)にそのまま導入して、ロール状で巻き取ること、すなわちロールツーロール方式を行うことが推奨される。
【0025】
ロールツーロール方式は、複数のガイドロールを介して、ロール状に巻き取ったフレキシブルな基材を連続的に搬送し、搬送中に所定の処理を行い、再びロール状態に巻き取る巻出巻取式の搬送方法である。複数の長尺状のポリエステル系フィルム基材をロールツーロール方式で処理することで、一連の塗布膜除去工程の1系列の装置にて回収可能なポリエステル系フィルム量を増大した上で、連続して短時間で行うことができ、非常に効率的である。
【0026】
〈塗布膜〉
本実施形態におけるポリエステル系フィルム基材において、ポリエステル系フィルムは、その少なくとも一部に少なくとも1層の塗布膜を有している。ここで塗布膜とは、ポリエステル系フィルムに種々の機能を付与し得る膜であり、例えば、離型膜、粘着膜、ハードコート膜、易接着膜、帯電防止膜などが挙げられる。ポリエステル系フィルム基材において、これらの塗布膜は、ポリエステル系フィルムの少なくとも片面に有していればよく、両面に有していてもよい。さらに、ポリエステル系フィルム基材において、塗布膜は単独で含まれていてもよいし、2種以上が積層されていてもよい。また、上記塗布膜は、単一の機能だけでなく複数の機能を有するものであってもよい。
【0027】
前記離型膜を構成する樹脂は、離型膜に一般に使用される樹脂であれば特に限定されず、例えば、ポリジメチルシロキサンなどのシリコーン系樹脂、メラミン樹脂や尿素樹脂などのアミノ樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂などが挙げられる。また、これらの樹脂は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、上記離型膜は、例えば、シリコーン、ワックスといった離型剤を含有してもよい。
【0028】
前記粘着膜を構成する樹脂は、粘着膜に一般に使用される粘着剤を含む。前記粘着剤の種類は特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられる。また、前記粘着膜は、タッキファイヤー(粘着付与樹脂)などを更に含有してもよい。
【0029】
前記ハードコート膜を構成する樹脂は、ハードコート膜に一般に使用される樹脂であれば特に限定されず、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
前記易接着膜を構成する樹脂は、易接着膜に一般に使用される樹脂であれば特に限定されず、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記帯電防止膜を構成する樹脂は、帯電防止膜に一般に使用される樹脂であれば特に限定されない。上記帯電防止膜は、さらに帯電防止剤を含有することが好ましい。該帯電防止剤としては、例えば、ノニオン系、カチオン系、アニオン系または両性の界面活性剤(ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性高分子、金属酸化物フィラー、カーボン系物質)などが挙げられる。これらの帯電防止剤は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
ポリエステル系フィルム基材に対する塗布膜の形成方法は、特に限定されないが、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ワイヤーバーコート法、ダイコート法、スプレーコート法などを用い、ポリエステル系フィルムに形成できる。
【0033】
塗布膜の厚み(複数の機能膜を有する場合は、これらの合計厚み)は、0.005μm以上50μm以下であることが好ましい。所定の機能を有効に発揮させるためには、より好ましくは0.01μm以上である。一方、塗布膜の厚みが厚すぎると、塗布膜の除去に時間を要する場合がある。
【0034】
〈ポリエステル系フィルムの回収〉
本実施形態の方法は、複数の長尺状ポリエステル系フィルム基材を同時に溶媒に接触させる工程(1)を含むことに特徴がある。工程(1)においては、複数の長尺状ポリエステル系フィルム基材を同時に搬送し、該長尺状ポリエステル系フィルム基材の少なくとも塗布膜を有する面に、溶媒を接触させることが好ましい。
【0035】
また、本実施形態の方法に用いる処理装置は、複数の長尺状ポリエステル系フィルム基材をローラー上に並べて搬送し、溶媒と接触させるにあたり、該長尺状ポリエステル系フィルム基材同士の重なりを防ぐため、該長尺状ポリエステル系フィルム基材の蛇行防止機能及び斜行走行防止機能を備えたものであってもよい。
【0036】
(複数の長尺状ポリエステル系フィルム基材の同時搬送)
複数の長尺状ポリエステル系フィルム基材から各々のフィルム端を引き出し、同一のローラー上に並べて搬送させることで、1系列の装置にて複数の長尺状ポリエステル系フィルム基材を同時に処理することが可能となる。
【0037】
複数の長尺状ポリエステル系フィルム基材を同時に搬送する方法としては、2ロール以上の長尺状ポリエステル系フィルム基材を、同一のローラー上に並べて搬送できれば特に限定されない。蛇行走行防止、斜行走行防止の観点から、2ロール以上10ロール以下の長尺状ポリエステル系フィルム基材を同一のローラー上に並べて搬送することが好ましい。また、2ロール以上の長尺状ポリエステル系フィルム基材を搬送する搬送速度の上限は、特に限定されないが、蛇行走行防止、斜行走行防止の観点から、250m/分以下とすることが好ましく、より好ましくは230m/分以下、さらに好ましくは200m/分以下である。搬送速度の下限は特に制限されないが、搬送速度が遅いと大きさが同一の処理装置における処理量が少なくなる、または処理量を同じにするためには処理装置の大きさが大きくなる観点から、通常10m/分以上とすることが好ましく、より好ましくは50m/分以上、さらに好ましくは70m/分以上である。
【0038】
2ロール以上の長尺状ポリエステル系フィルム基材を巻出す方法としては、例えば、巻出部において同一軸で巻出す方法、巻出部においてロール毎に別軸で巻出す方法などが挙げられる。また、2ロール以上の長尺状ポリエステル系フィルム基材を巻取る方法としては、例えば、巻取部において同一軸で巻取る方法、巻取部においてロール毎に別軸で巻取る方法などが挙げられる。これらのうち、蛇行走行防止、斜行走行防止の観点から、ロール毎に別軸で巻出す方法、およびロール毎に別軸で巻取る方法が好ましい。
【0039】
本実施形態の方法は、複数の長尺状ポリエステル系フィルム基材を同時に搬送したのち、該ポリエステル系フィルム基材の少なくとも塗布膜を有する面に、溶媒を接触させる工程を有することから、該長尺状ポリエステル系フィルム基材同士に重なりが生じると処理性が悪くなる。このため、本実施形態の方法に用いる処理装置は、蛇行走行防止機能及び斜行走行防止機能を備えていることが好ましい。蛇行走行防止機能及び斜行走行防止機能としては、特に限定はされないが、例えば、搬送ロールの少なくとも片側に板を設置しガイドする方法、フィルム搬送ロールを円錐面状とし、傾斜により長尺状ポリエステル系フィルム基材を片寄せする方法、搬送ロールやベルトに溝や削り込み加工、山部を設ける方法、または2つ以上の駆動装置間の回転数を調整することで長尺状ポリエステル系フィルム基材に掛かる張力を一定にする方法などが挙げられる。
【0040】
〔長尺状ポリエステル系フィルム基材を溶媒に接触させる工程(1)〕
本実施形態の方法は、複数の長尺状ポリエステル系フィルム基材を同時に搬送し、該長尺状ポリエステル系フィルム基材の少なくとも塗布膜を有する面に、溶媒を接触させる工程(1)を含むことで、一連の塗布膜除去工程の1系列の装置にて回収可能なポリエステル系フィルム量を増大した上で、連続して短時間で行うことができ、非常に効率的である。
【0041】
本実施形態の方法における工程(1)で使用する溶媒としては、特に限定はされないが、アルカリ性の処理液が挙げられる。上記溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、界面活性剤やウルトラファインバブルやアルコールなどを含んでいてもよい。
【0042】
工程(1)において、溶媒処理は1つの槽で行ってもよいし、複数の槽で実施してもよい。また、複数の槽で処理する場合は、用いる溶媒の種類が異なってもよいし、同じでもよい。
【0043】
工程(1)に用いられるアルカリ性の処理液としては、アルカリ性物質を溶解させた溶液が挙げられる。アルカリ性物質としては、特に限定されるものではないが、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化リチウム;ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸アンモニウム;第二燐酸ナトリウム、第二燐酸カリウム、第二燐酸アンモニウム;重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸アンモニウム;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム;ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム等の無機アルカリ剤が挙げられる。これらのうちで好ましいのは、水酸化アルカリ金属塩であり、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムがより好ましい。上記アルカリ性物質は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
アルカリ性物質を溶解させる溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、水が挙げられる。
【0045】
前記アルカリ性の処理液におけるアルカリ性物質の濃度は、0.01質量%以上15質量%以下であるのが好ましく、0.04質量%以上15質量%以下がより好ましく、1質量%以上10質量%以下がさらに好ましい。アルカリ性物質の濃度が高すぎる場合、ポリエステル系フィルムがダメージを受けやすくなる傾向があり、該濃度が低すぎる場合、塗布膜を充分除去できない虞がある。アルカリ性物質の含有量が前記範囲であると、塗布膜の除去効果が得られ、かつポリエステル系フィルムへのダメージを抑制できる。
【0046】
溶媒は、除去された塗布膜の再付着を防止し、塗布膜の除去効率を高めるため、助剤として界面活性剤やウルトラファインバブルを含んでいてもよい。界面活性剤としては、特に制限はないが、例えば、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤などが挙げられる。界面活性剤は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0048】
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルピリジニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。
【0049】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステルナトリウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸ナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム塩などが挙げられる。
【0050】
溶媒には、本発明の効果を妨げない範囲でその他の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、pH調整剤、消泡剤等が挙げられる。
【0051】
溶媒の温度は、100℃未満であることが好ましく、65℃以上100℃未満がより好ましく、65~95℃がさらに好ましい。溶媒の温度が65℃以上であると、ポリエステル系フィルムの物理化学特性に変化を生じさせることがなく、また過剰な時間をかけずに不純物の少ない高品質のポリエステル系フィルムを得ることができるので好ましい。また、溶媒の温度が100℃未満とすることにより、常圧での達成を可能とし設備の大型化を防ぎ、加熱によるポリエステル系フィルムの加水分解や溶解などの発生を抑制し得る。
【0052】
溶媒と長尺状ポリエステル系フィルム基材との接触時間は、0秒間超700秒間未満であるのが好ましく、0秒間超600秒間以下がより好ましく、0秒間超180秒間以下がさらに好ましく、0秒間超120秒間以下が特に好ましい。処理時間が長すぎる場合、ポリエステル系フィルムがダメージを受けやすくなる傾向がある上、ポリエステル系フィルムがアルカリ性の処理液に溶出するためアルカリ性の処理液を排水処理する際の負荷が大きくなる虞がある。溶媒との処理時間は、塗布膜が十分に溶解、膨潤できればよく、処理時間が短すぎる場合は塗布膜を充分除去できない虞があるので、1秒間以上がより好ましく、5秒間以上がさらに好ましい。溶媒での処理時間が前記範囲であると、塗布膜の除去効果が得られ、かつポリエステル系フィルムへのダメージを抑制できる。
【0053】
工程(1)において、溶媒での処理は、長尺状ポリエステル系フィルムや塗布膜の種類、厚みなどに応じて適宜適切に選択し得るが、不純物の少ない高品質のポリエステル系フィルムを得るためには、具体的には例えば、100℃未満の温度に加熱された濃度0.01~15質量%のアルカリ性の処理液に、0秒間超700秒間未満の間、長尺状ポリエステル系フィルム基材を接触させることが好ましく、温度65℃以上100℃未満かつアルカリ濃度0.04質量%以上15質量%以下のアルカリ性の処理液を用いて、ポリエステル系フィルム基材に1秒間以上180秒間以下で接触させるのがより好ましい。
【0054】
〔界面活性剤、アルコール又は界面活性剤若しくはアルコールを溶解した水溶液に接触させる工程(2)〕
本実施形態の方法は、長尺状ポリエステル系フィルム基材を溶媒に接触させる工程(1)の前に、該長尺状ポリエステル系フィルム基材の少なくとも塗布膜を有する面に、界面活性剤、アルコール又は界面活性剤若しくはアルコールを溶解した水溶液を接触させる工程(2)を含んでもよい。界面活性剤、アルコール又は界面活性剤若しくはアルコールを溶解した水溶液を接触させて長尺状ポリエステル系フィルム基材の塗布膜に入り込ませることで、当該ポリエステル系フィルム基材の表面を親水化する。予め長尺状ポリエステル系フィルム基材の表面を親水化した状態で、溶媒を接触させることで、溶媒の浸透が促進され、当該ポリエステル系フィルム基材から塗布膜を、短時間で効率良く、除去しやすくなる。
【0055】
界面活性剤、アルコール又は界面活性剤若しくはアルコールを溶解した水溶液を接触させる方法は、長尺状ポリエステル系フィルム基材の少なくとも塗布膜を有する面が接触できれば特に限定されない。例えば、界面活性剤、アルコール又は界面活性剤若しくはアルコールを溶解した水溶液の入った洗浄槽に長尺状ポリエステル系フィルム基材を浸漬する方法、塗布する方法、噴霧する方法などが挙げられる。これらのうち、塗布膜への界面活性剤、アルコール又は界面活性剤若しくはアルコールを溶解した水溶液の浸透性の点から、浸漬する方法が好ましい。
【0056】
アルコールとしては、特に制限はなく、1価アルコールでも多価アルコールでもよく、低級アルコールでも高級アルコールでもよい。
【0057】
1価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノニルノール、デシルノール、ウンデシルノール、ドデシルノール、メトキシエタノール、メトキシプロパノール、メトキシブタノール、メトキシエトキシエタノール、エトキシエタノール、エトキシエトキシエタノール、エトキシプロパノール、エトキシブタノール、ブトキシエタノール、ブトキシプロパノール、ブトキシブタノールなどが挙げられる。
【0058】
多価アルコール系溶媒としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、グリセリン、ポリオキシアルキレンポリオールなどが挙げられる。
【0059】
これらの中でも、メタノール、エタノール、1-プロパノール(ノルマルプロパノール)、2-プロパノール(イソプロパノール)のような1価の低級アルコールがより好ましく、メタノール、エタノール、1-プロパノール及び2-プロパノールからなる群から選択される少なくとも1種がさらに好ましく、メタノール、エタノールが特に好ましい。
アルコールは、単独で使用してもよく、2種以上を併用することもできる。
【0060】
アルコールまたはアルコールを溶解した水溶液の濃度としては、0.1質量%~100質量%であるのが好ましく、下限は30質量%以上がより好ましい。アルコール濃度が低すぎる場合、塗布膜を充分除去できない虞がある。アルコールまたはアルコールを溶解した水溶液の濃度が30質量%以上であると、充分な塗布膜の除去効果が得られる。
【0061】
アルコールまたはアルコールを溶解した水溶液の温度としては、使用するアルコールによって調整すればよいが、50℃以下であることが好ましく、5~30℃の常温が更に好ましい。アルコールまたはアルコールを溶解した水溶液の温度が高すぎる場合、アルコールが沸騰する虞がある。アルコールまたはアルコールを溶解した水溶液の温度が50℃以下であると、アルコールの沸点以下であるため、塗布膜の除去効果が促進される。
【0062】
界面活性剤としては、特に制限はないが、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤及び陰イオン性界面活性剤からなる群から選ばれた少なくとも1種の界面活性剤などを挙げることができる。特に、非イオン性界面活性剤が好ましい。界面活性剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用することもできる。
【0063】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテルや、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルや、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルや、ポリエチレングリコールモノラウレートなどのポリオキシエチレン脂肪酸エステルや、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエートなどのソルビタン脂肪酸エステルや、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモレオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルや、ステアリン酸モノグリセライドなどのグリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0064】
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルピリジニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。
【0065】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステルナトリウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸ナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム塩などが挙げられる。
【0066】
界面活性剤または界面活性剤を溶解した水溶液の濃度としては、0.00001質量%~100質量%であるのが好ましく、0.0001質量%~100質量%がより好ましく、0.001質量%~50質量%がさらに好ましく、0.01質量%~1質量%が特に好ましい。界面活性剤濃度が低すぎる場合、塗布膜を充分除去できない虞がある。界面活性剤または界面活性剤を溶解した水溶液の濃度が0.00001質量%~100質量%であると、充分な塗布膜の除去効果が得られるため好ましい。
【0067】
界面活性剤または界面活性剤を溶解した水溶液の温度としては、使用する界面活性剤によって調整すればよいが、50℃以下であることが好ましい。界面活性剤または界面活性剤を溶解した水溶液の温度が50℃以下であると、界面活性剤を高濃度とし得るため、塗布膜の除去効果が促進される。なお、非イオン性の界面活性剤では温度が高すぎると水に溶けなくなるので、界面活性剤の曇点以下の温度で処理するのが好ましい。
【0068】
長尺状ポリエステル系フィルム基材と界面活性剤、アルコール、界面活性剤またはアルコールを溶解した水溶液との接触時間としては、120秒間以内であることが好ましく、0.001~60秒間がより好ましく、0.001~10秒間がさらに好ましく、0.1~10秒間が特に好ましい。長尺状ポリエステル系フィルム基材との接触時間が短すぎると塗布膜を充分除去できない虞があり、該接触時間が長過ぎると、装置サイズが大きくなり、経済性、操作性が悪化する虞がある。ポリエステル系フィルム基材との接触時間が120秒間以内であると、経済性、操作性がよく、塗布膜の除去効果を高めることができる。
【0069】
上記界面活性剤、アルコール、界面活性剤またはアルコールを溶解した水溶液は、塗布膜の除去効率を高めるため、助剤としてウルトラファインバブルを含んでいてもよい。また、アルコールまたはアルコールを溶解した水溶液は前記界面活性剤を含んでいてもよいし、界面活性剤または界面活性剤を溶解した水溶液は前記アルコールを含んでいてもよい。
【0070】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0071】
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルピリジニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。
【0072】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステルナトリウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸ナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム塩などが挙げられる。
【0073】
〔表面改質処理を行う工程(3)〕
本実施形態の方法は、工程(1)の前に、界面活性剤、アルコール又は界面活性剤若しくはアルコールを溶解した水溶液、さらに前記溶媒との親和性を高める目的で、長尺状ポリエステル系フィルム基材における塗布膜の表面に対して表面改質処理を行なう工程(3)を含んでもよい。表面改質処理は特に限定されるものではなく、公知の方法を採用でき、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、グロー放電処理、火焔処理又は紫外線処理などが挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1つの処理を行うのが好ましい。
【0074】
表面改質処理を実施するのは、長尺状ポリエステル系フィルム基材を溶媒に接触させる工程(1)の実施前であればよいが、界面活性剤、アルコール又は界面活性剤若しくはアルコールを溶解した水溶液との親和性を高めるために、界面活性剤、アルコール又は界面活性剤若しくはアルコールを溶解した水溶液と接触させる工程(2)の前で実施することがより好ましい。
【0075】
表面改質処理後のX線光電子分光法における分析にて、C-C結合、C-H結合の割合が0.1%以上減少していれば、界面活性剤、アルコール又は界面活性剤若しくはアルコールを溶解した水溶液、あるいはアルカリ性の処理液との親和性を高める効果を得ることができる。
【0076】
コロナ放電処理であれば処理強度は、10~1000Wmin/m2以上であることが好ましく、20~200Wmin/m2がより好ましく、40~120Wmin/m2が更に好ましい。処理強度が高くなりすぎると、ポリエステル系フィルムがダメージを受けやすくなる傾向があり、処理強度が弱すぎるとアルカリ処理の時間が長くなり、ポリエステル系フィルムがダメージを受けやすくなる傾向がある。また、使用するコロナ放電機の電力密度は、好ましくは4~20W/cm2であれば、均一に表面処理を施すことができる。
【0077】
紫外線処理であれば照射強度は0.5~40mW/cm2であることが好ましく、10~40mW/cm2がより好ましく、15~40mW/cm2が更に好ましい。照射強度が高すぎると、ポリエステル系フィルムがダメージを受けやすくなる傾向があり、照射強度が弱すぎるとアルカリ処理の時間が長くなり、ポリエステル系フィルムがダメージを受けやすくなる傾向がある。紫外線の照射時間は、3~210秒であることが好ましく、30~100秒がより好ましく、50~70秒が更に好ましい。紫外線の照射時間が長くなり過ぎると、装置のサイズを大きくする必要があるので製造コストが高くなり、またポリエステル系フィルムがダメージを受けやすくなる傾向がある。紫外線の照射時間が短すぎると塗布膜を充分除去できない虞がある。また、照射する紫外線の波長は、10~400nm、即ち可視光線より短く軟X線より長い不可視光線の電磁波を使用することが好ましい。紫外線の発生源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプ等の公知のランプが挙げられ、低圧水銀灯が好ましい。
【0078】
〔水洗処理を行う工程(4)〕
本実施形態の方法は、長尺状ポリエステル系フィルム基材を溶媒に接触させる工程(1)の後、水により前記長尺状ポリエステル系フィルム基材を洗浄する工程(4)を含むことが好ましい。水による洗浄は、工程(1)の後におけるポリエステル系フィルムに微量に残留した塗布膜を除去し、上記処理後ポリエステル系フィルムに残留する溶媒を除去するために行われる。
【0079】
工程(4)における水洗処理の温度は特に限定されるものではないが、例えば、約40℃以上100℃以内の温水で水洗すると、上記効果が一層有効に発揮される。
【0080】
水洗の方法としては、塗布膜を除去したポリエステル系フィルムに対して水を噴霧する方法、ポリエステル系フィルムを水槽に浸漬する方法などが挙げられる。水洗処理の際、ロールブラシ、マイクロバブル、水流などの物理洗浄を実施してもよい。
【0081】
〔乾燥処理〕
水洗の後には、ポリエステル系フィルム上に残存した水を除去するために、乾燥処理を実施することが好ましい。
【0082】
乾燥時間は、好ましくは10秒間以上5分間以下である。乾燥時間が10秒間以上であることにより、乾燥が十分となり、ブロッキングを抑制できる。より好ましくは30秒間以上である。また、乾燥時間が5分間以下であると、ポリエステル系フィルムの変形を防止できる。
【0083】
乾燥方法については特には限定されず、例えば熱風を吹き付ける熱風乾燥や非接触式のヒーターで加熱する加熱乾燥などが挙げられる。
【0084】
(複数回処理)
上記の工程(1)~(3)は、複数回行ってもよい。これらの処理を複数回行うことで、ポリエステル系フィルムが固有粘度の低下などのダメージを受けることなく、短時間での処理が可能となる。
【0085】
〈回収したポリエステル系フィルムの成形〉
本実施形態のポリエステル製品の製造方法は、本実施形態の方法で回収したポリエステル系フィルムを押し出し成形し、ポリエステル製品を製造することを含む。
【0086】
具体的には、回収したポリエステル系フィルムは一旦ペレット化した後、溶融押出し等によって、ポリエステルフィルムなどの各種のポリエステル製品に成形し得る。
【0087】
ポリエステル製品としては特に限定されるものではなく、通常のポリエステル用途に用いることができ、例えば、ポリエステルフィルム、ペットボトル、ポリエステル繊維、ポリエステルシート、ポリエステル容器などを製造できる。具体的には例えば、ポリエステルフィルムとして使用できる。
【0088】
ポリエステルフィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、通常は10~50μmの範囲内で適宜設定できる。また、必要に応じて塗布膜を形成できる。塗布膜としては、例えば、離型膜、粘着膜、ハードコート膜、易接着膜、帯電防止膜などが挙げられる。また、回収したポリエステル系フィルムからも、塗布膜を除去し、再度ポリエステル系フィルムを回収し、押し出し成形してポリエステル製品を製造できる。
【0089】
再度回収したポリエステル系フィルムから製造されるポリエステル製品としても、特に限定されるものではなく、通常のポリエステル用途に用いることができる。ポリエステル用途としては、例えば、上記したのと同様のポリエステルフィルム、ペットボトル、ポリエステル繊維、ポリエステルシート、ポリエステル容器などが挙げられる。
【0090】
以上のとおり、本明細書には次の構成が開示されている。
<1>長尺状のポリエステル系フィルム上の少なくとも一部に少なくとも1層の塗布膜を有してなる長尺状ポリエステル系フィルム基材から、前記塗布膜を除去して前記ポリエステル系フィルムを回収する方法であって、下記工程(1)を含む方法。
(1)複数の前記長尺状ポリエステル系フィルム基材を同時に溶媒に接触させる工程
<2>前記工程(1)において、前記溶媒がアルカリ性の処理液である、前記<1>に記載の方法。
<3>前記工程(1)の後に、下記工程(4)を含む、前記<1>または<2>に記載の方法。
(4)水により前記長尺状ポリエステル系フィルム基材を洗浄する工程
<4>前記工程(1)の前に、下記工程(2)を含む、前記<1>~<3>のいずれか1に記載の方法。
(2)界面活性剤、アルコールまたは界面活性剤若しくはアルコールを溶解した水溶液に前記長尺状ポリエステル系フィルム基材を接触させる工程
<5>前記工程(1)の前に、下記工程(3)を含む、前記<1>~<4>のいずれか1に記載の方法。
(3)コロナ放電処理、プラズマ処理、グロー放電処理、火焔処理及び紫外線処理から選ばれる少なくとも1の表面改質処理を行う工程
<6>複数の長尺状ポリエステル系フィルム基材をローラー上に並べて搬送し、溶媒と接触させるにあたり、前記長尺状ポリエステル系フィルム基材の蛇行走行防止機能及び斜行走行防止機能を備えたポリエステル系フィルムの処理装置。
<7>前記<1>~<5>のいずれか1に記載の方法または前記<6>に記載の処理装置で回収したポリエステル系フィルムを、押し出し成形してポリエステル製品を製造するポリエステル製品の製造方法。
【実施例0091】
以下、実施例に基づき、本発明の実施態様をさらに詳細に説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。なお、本発明による塗布膜除去方法の有用性は、塗布膜の除去能で表すことができる。以下では特に断りのない限り、「%」は質量%を、「部」は質量部を意味する。
【0092】
(塗布膜の除去評価)
各特性は次のようにして測定した。
【0093】
1.蛇行走行性、斜行走行性の評価
ポリエステル系フィルム基材の搬送状態をカメラで撮影し、搬送中のフィルム右端、左端位置を確認し、巻出部でのフィルム右端、左端位置との差を測定することで、蛇行走行性、斜行走行性を評価した。
蛇行走行性、斜行走行性を比較し、以下の基準で評価した。なお、「○」及び「△」が合格であり、「×」が不合格である。
〔評価基準〕
〇(良好):巻出部でのフィルム右端、左端位置と比較して搬送中のフィルム右端、左端位置差が0.5cm以下
△(可) :巻出部でのフィルム右端、左端位置と比較して搬送中のフィルム右端、左端位置差が0.5cm超1.5cm未満
×(不可):巻出部でのフィルム右端、左端位置と比較して搬送中のフィルム右端、左端位置差が1.5cm以上
【0094】
2.処理性の評価
回収したポリエステル系フィルムを細かく裁断した後、溶融プレス機で円柱状に成型し、蛍光X線分析装置(株式会社リガク製「3270型」)を用いてケイ素(Si)の含有量を測定した。蛍光X線測定法により、あらかじめ作成した蛍光X線強度の検量線からSi含有量を定量した。
各実施例又は比較例の方法による処理性を、得られたSi含有量に基づいて、以下の基準で評価した。なお、「◎」、「○」及び「△」が合格であり、「×」が不合格である。
〔評価基準〕
◎(優良):Siの含有量が検出下限(100質量ppm)以下
○(良好):Siの含有量が100質量ppm超300質量ppm未満
△(可) :Siの含有量が300質量ppm以上500質量ppm未満
×(不可):Siの含有量が500質量ppm以上
【0095】
3.処理回収量の評価
1系列の装置にて得られたペレット量を以下の基準で評価した。なお、「◎」、「○」及び「△」が合格であり、「×」が不合格である。
〔評価基準〕
◎(優良):得られたペレット量が1系列の装置あたり1100g/分以上
○(良好):得られたペレット量が1系列の装置あたり1100g/分以上700g/分未満
△(可) :得られたペレット量が1系列の装置あたり700g/分以上300g/分未満
×(不可):得られたペレット量が1系列の装置あたり300g/分以下
【0096】
(試料フィルムの作製)
次のとおり、離型膜を有する積層ポリエステルフィルムを、試料フィルムとして用意した。
【0097】
1.ポリエステル系フィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製“ルミラー”T60、厚さ38μm、固有粘度0.61)を準備した。該フィルムの片面に、バーコーターで、硬化型シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製LTC-350Bを100部、同社製硬化剤SRX-212を0.8部含む)の5%トルエン溶液をコーティングし、トンネルオーブン中にて100℃で加熱して離型フィルムを作製し、巻き取った。
【0098】
2.セラミックスラリーと導電性ペーストの塗布
上記の離型フィルムの離型層面に、下記組成からなるセラミックスラリーを、ブレードコーターで均一に塗布した。これをトンネルオーブンにて85℃で乾燥して、離型フィルム上に厚さ20μmのセラミック層を形成した。次に、該セラミック層上に下記組成の導電性ペーストをスクリーン印刷し、80℃で10分間乾燥させて電極を形成した後、20℃にて1時間放置した。
《セラミックスラリー組成》
セラミック粉体(チタン酸バリウム) :100部
バインダー(ポリビニルブチラール) : 10部
可塑剤(フタル酸ジオクチル) : 5部
溶剤(トルエン/イソプロピルアルコール=1/1(質量比)):100部
《導電性ペースト組成》
Ni系粉末 : 90部
有機ビヒクル : 10部
ターピネオール : 30部
【0099】
3.セラミック膜と内部電極の剥離
上記のセラミック層と電極を形成した離型フィルム上に、セラミック層と電極を形成した部分の塗布膜にのみ10cm×10cmの形状にスリットを入れた後、真空吸着機でセラミック層と電極を吸引して離型フィルムから剥離させ、長尺状の試料フィルムを得た。なお、試料フィルムの離型層表面には、一部剥離できなかったセラミック層と電極が付着した状態であった。
【0100】
[実施例1]
(表面改質処理)
試料フィルムの離型膜側表面を、コロナ放電処理装置で、電力密度8W/cm2、処理強度60Wmin/m2でコロナ放電処理を行った。
【0101】
(搬送方法)
長尺状ポリエステル系フィルム基材4ロールを、巻出部にてロール毎に別軸で巻出し、同一のローラー上に並べて、70m/分の速度で搬送し、搬送途中に後記する各処理を実施したのち、巻取部にてロール毎に別軸で巻取った。方法1:搬送ローラーの両側に板を設置した搬送ローラーを設置した上で、フィルムを搬送させ、上記した「蛇行走行性、斜行走行性の評価」を行った。
【0102】
(界面活性剤、アルコール、界面活性剤またはアルコールを溶解した水溶液に接触させる工程)
コロナ放電処理をした試料フィルムを、常温である25℃の非イオン性界面活性剤(富士フイルム和光純薬株式会社製「ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル」)0.03wt%の水溶液に、1秒浸漬させた。
【0103】
(アルカリ性の処理液を接触させる工程)
3%の水酸化ナトリウムと0.03%の非イオン性界面活性剤(富士フイルム和光純薬株式会社製「ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル」)の混合水溶液1000Lを80℃まで加熱した。そこに、試料フィルムを70m/秒で搬送させ、60秒間アルカリ性の処理液と接液させることにより、離型層を除去し、回収ポリエステル系フィルムを得た。回収ポリエステル系フィルムを用いて、上記した「処理性の評価」を行った。
【0104】
(水洗・乾燥・ペレット化)
検体フィルム(回収ポリエステル系フィルム)を水の入った水槽に45秒浸漬させた後、熱風を吹き付けることで乾燥させた。乾燥後の検体フィルムを粉砕し、押出機に投入して溶融、ペレット化した。得られたペレットを用いて、上記した「処理回収量の評価」を行った。
【0105】
(ポリエステルフィルムの製造)
検体フィルムから得たペレットを150℃で3時間乾燥し、押し出し機に供給し、285℃で溶融押し出しを行い、静電印加された20℃のキャストドラム上にキャストし未延伸シートを得た。この未延伸シートを90℃に加熱された延伸ロールによって長手方向に3.1倍延伸し、次いでテンター式延伸機によって120℃で幅方向に3.7倍延伸し、その後230℃で熱固定してロールに巻き取った。
【0106】
[実施例2]
長尺状ポリエステル系フィルム基材2ロールを、同一のローラー上に並べて搬送したこと以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを作製した。
【0107】
[実施例3]
長尺状ポリエステル系フィルム基材6ロールを、同一のローラー上に並べて搬送したこと以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを作製した。
【0108】
[実施例4]
長尺状ポリエステル系フィルム基材8ロールを、同一のローラー上に並べて搬送したこと以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを作製した。
【0109】
[実施例5]
長尺状ポリエステル系フィルム基材10ロールを、同一のローラー上に並べて搬送したこと以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを作製した。
【0110】
[実施例6]
蛇行走行防止、斜行走行防止処置として、方法2:フィルム搬送ロールを円錐面状とし、傾斜によりフィルムを片寄せして搬送を行ったこと以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを作製した。
【0111】
[実施例7]
蛇行走行防止、斜行走行防止処置として、方法3:搬送ロールやベルトに溝加工を設けて搬送を行ったこと以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを作製した。
【0112】
[実施例8]
蛇行走行防止、斜行走行防止処置として、方法4:搬送ロールやベルトに山部を設けて搬送を行ったこと以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを作製した。
【0113】
[実施例9]
蛇行走行防止、斜行走行防止処置として、方法5:2つ以上の駆動装置間の回転数を調整することでフィルム基材に掛かる張力を一定にして搬送を行ったこと以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを作製した。
【0114】
[実施例10]
蛇行走行防止、斜行走行防止処置である方法1~5を実施せずに搬送を行ったこと以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを作製した。
【0115】
[実施例11]
長尺状ポリエステル系フィルム基材4ロールを、50m/分にて搬送したこと以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを作製した。
【0116】
[実施例12]
長尺状ポリエステル系フィルム基材4ロールを、200m/分にて搬送したこと以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを作製した。
【0117】
[実施例13]
表面改質処理を実施しなかったこと以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを作製した。
【0118】
[実施例14]
界面活性剤、アルコール、界面活性剤またはアルコールを溶解した水溶液に接触させる工程を実施しなかったこと以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを作製した。
【0119】
[比較例1]
長尺状ポリエステル系フィルム基材1ロールだけをローラー上に並べて搬送したこと以外は、実施例1と同様の表面改質処理、界面活性剤、アルコール、界面活性剤またはアルコールを溶解した水溶液に接触させる工程を実施した後、実施例1と同様にアルカリ性の処理液と接触させ、水洗、乾燥し、ポリエステルフィルムを作製した。
【0120】
[比較例2]
実施例1と同様に、長尺状ポリエステル系フィルム基材4ロールを同一のローラー上に並べて搬送し、表面改質処理、界面活性剤、アルコール、界面活性剤またはアルコールを溶解した水溶液に接触させる工程を実施した後、実施例1に記載のアルカリ性の処理液と接触する工程は実施せずに、水洗、乾燥し、ポリエステルフィルムを作製した。
【0121】
実施例1~14並びに比較例1及び2について、評価した結果を下記表1~表4に記載した。
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
表1~表4に示すように、本発明の方法によれば、少なくとも1層の塗布膜を有する長尺状ポリエステル系フィルム基材から、効率よく、塗布膜を除去することが可能であり、ポリエステル系フィルムの回収およびこのポリエステル系フィルムを原料の一部とするポリエステル製品を効率よく、製造することができた。
【0127】
また、実施例1の結果から、複数の長尺状ポリエステル系フィルム基材を同時に搬送したのち、長尺フィルム基材の少なくとも塗布膜を有する面に、溶媒を接触させる工程を実施することで、短時間で、多量のフィルムの塗布層除去が可能であることが分かった。
【0128】
これに対し、長尺状ポリエステル系フィルム基材1ロールだけを搬送した比較例1では、実施例1と比較して同一の装置、同一の時間で塗布膜の除去ができたフィルムの量が少なかった。また、アルカリ性の処理液への接触工程を実施しなかった比較例2においても、塗布膜の除去ができなかった。
【0129】
以上のように、本発明の方法によれば、該複数の長尺状ポリエステル系フィルム基材を同時に溶媒に接触させることで、塗布層を効率よく除去でき、ポリエステル系フィルムの回収および該ポリエステル系フィルムを原料の一部とするポリエステル製品を効率よく製造することが可能である。また、蛇行走行、斜行走行を防止する処置を実施することで、フィルム同士が重なることで溶媒における処理性を低下させることなく、短時間で効率的に塗布膜の除去も可能となり、極めて有用である。