(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176078
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】スラグ磨砕機の運転方法及び制御装置
(51)【国際特許分類】
B02C 17/04 20060101AFI20241212BHJP
B02C 25/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B02C17/04 Z
B02C25/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094304
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本(阿部) 夏季
(72)【発明者】
【氏名】宮谷 寿博
(72)【発明者】
【氏名】澤田 和弥
【テーマコード(参考)】
4D063
4D067
【Fターム(参考)】
4D063FF02
4D063GD02
4D063GD20
4D067FF02
4D067FF15
4D067GA05
4D067GB10
(57)【要約】
【課題】処理スラグの品質の経時的変化を抑制し、処理スラグの品質を安定させることのできるスラグ磨砕機の運転方法及び制御装置を提供する。
【解決手段】一般廃棄物溶融処理施設で生成する溶融スラグS1の磨砕処理を行い、溶融スラグS1を処理スラグS2とするスラグ磨砕機Aの運転方法において、磨砕処理を行うための駆動部1を駆動させる電動機3の電流値の変動に対応する運転条件を調整し、電動機3の電流値を安定させる対応を実施する。制御装置6は前記対応を実施する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般廃棄物溶融処理施設で生成する溶融スラグの磨砕処理を行い、前記溶融スラグを処理スラグとするスラグ磨砕機の運転方法において、
前記磨砕処理を行うための駆動部を駆動させる電動機の電流値の変動に対応する運転条件を調整し、前記電動機の電流値を安定させることを特徴とするスラグ磨砕機の運転方法。
【請求項2】
前記駆動部は回転ドラムを含み、前記運転条件として前記回転ドラムの回転数を調整する、請求項1に記載のスラグ磨砕機の運転方法。
【請求項3】
前記回転ドラムの回転数を1000~2500rpmの範囲で調整する、請求項2に記載のスラグ磨砕機の運転方法。
【請求項4】
前記電動機の電流値は、前記駆動部とその付属部における消耗品を交換後に所定値にセットして運転開始し、運転開始後、前記電動機の電流値の移動平均値が所定量増加したとき、前記回転ドラムの回転数を所定量低下させて前記電動機の電流値を安定させる、請求項2又は3に記載のスラグ磨砕機の運転方法。
【請求項5】
前記回転ドラムの回転数が予め定めた所定下限値に達したら、前記消耗品を交換する、請求項4に記載のスラグ磨砕機の運転方法。
【請求項6】
一般廃棄物溶融処理施設で生成する溶融スラグの磨砕処理を行い、前記溶融スラグを処理スラグとするスラグ磨砕機の運転を制御する制御装置であって、
前記磨砕処理を行うための駆動部を駆動させる電動機の電流値の変動に対応する運転条件を調整し、前記電動機の電流値を安定させることを特徴とするスラグ磨砕機の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般廃棄物溶融処理施設で生成する溶融スラグの磨砕処理を行い、その溶融スラグを処理スラグとするスラグ磨砕機の運転方法及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般廃棄物処理施設において、廃棄物を1200℃以上で高温溶融した溶融物を、水等を使用し急冷して生成した物質を溶融スラグという。溶融スラグは、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化カルシウム(CaO)、酸化アルミニウム(Al2O3)等から構成され、天然骨材の代替としてアスファルト混合物やコンクリート二次製品用骨材、埋め戻し材等の幅広い用途に使用される。溶融スラグは、天然砂と比較すると角張り粒形が大きいため、骨材の代替に使用するためには尖った形状を丸くし骨材形状の指標となる粒形判定実積率の改良や用途に応じた粒度分布、骨材粒子の大きさの指標となる粗粒率、75μm以下の骨材粒径の重量割合を示す微粒分量等の基準値を満足するとともに、変動幅が少ない安定的品質を維持する必要がある。
【0003】
その対応としては、溶融スラグの加工装置として整粒機を使用することが一般的である。整粒機型式は、一般的に溶融スラグをハンマー等で破砕する「破砕式」と溶融スラグ自身を擦り合わせる「磨砕式」があるが、粒形判定実積率向上等土木分野の用途拡大が期待できる磨砕式整粒機、すなわち「スラグ磨砕機」を使用する事例が多くなっている。このようなスラグ磨砕機の一例として特許文献1には、高速回転する回転ドラム及びその外周縁に配置した環状体を含むものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているような回転ドラムを含むスラグ磨砕機の運転方法において回転ドラムの回転数は、磨砕処理後の溶融スラグである処理スラグの品質が所定の基準値を満足するように予め設定し、その設定した回転数で運転を継続することが一般的であった。すなわち、従来のスラグ磨砕機では、処理スラグの品質が所定の基準値を満足するように運転条件を予め設定し、基本的にその運転条件で運転を継続することが一般的であった。
【0006】
しかし、本発明者らがスラグ磨砕機による長期間の試験を重ねたところ、従来のように運転開始時に設定した運転条件で長期間継続した場合、処理スラグの品質が経時的に変化することがわかり、処理スラグの品質が基準値を満足できず、溶融スラグの使用に支障を及ぼすことに繋がる状況となる懸念が生じる。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、処理スラグの品質の経時的変化を抑制し、処理スラグの品質を安定させることのできるスラグ磨砕機の運転方法及び制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが、処理スラグの品質が経時的に変化する要因について試験及び検討を重ねた結果、スラグ磨砕機において溶融スラグの磨砕処理を行うための駆動部(例えば上述の回転ドラム)を駆動させる電動機の電流値の継時的な変動(通常は電流値上昇)が大きな要因であることがわかった。この電動機の電流値は、スラグ磨砕機における溶融スラグの磨砕処理時の負荷である磨砕負荷を示す指標であり、例えば電動機の電流値上昇は磨砕負荷の上昇を示す。すなわち、電動機の電流値変動は、スラグ磨砕機において溶融スラグの磨砕処理を行うための駆動部(例えば上述の回転ドラム)やその付属部(例えば上述の環状体)の摩耗や損耗により溶融スラグの挙動等が運転開始時と異なってきていることを示し、これに伴い磨砕負荷も運転開始時と異なってきていることを示す。そして、この磨砕負荷の変動により処理スラグの品質が経時的に変化する。
【0009】
このような知見を踏まえ本発明者らは、処理スラグの品質の経時的変化を抑制してその品質を安定させるためには、電動機の電流値を安定させることが肝要であると考え、さらに試験及び検討を重ねた結果、本発明に想到するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の一観点によれば、次のスラグ磨砕機の運転方法が提供される。
一般廃棄物溶融処理施設で生成する溶融スラグの磨砕処理を行い、前記溶融スラグを処理スラグとするスラグ磨砕機の運転方法において、
前記磨砕処理を行うための駆動部を駆動させる電動機の電流値の変動に対応する運転条件を調整し、前記電動機の電流値を安定させることを特徴とするスラグ磨砕機の運転方法。
また、本発明の別の観点によれば、次のスラグ磨砕機の制御装置が提供される。
一般廃棄物溶融処理施設で生成する溶融スラグの磨砕処理を行い、前記溶融スラグを処理スラグとするスラグ磨砕機の運転を制御する制御装置であって、
前記磨砕処理を行うための駆動部を駆動させる電動機の電流値の変動に対応する運転条件を調整し、前記電動機の電流値を安定させることを特徴とするスラグ磨砕機の制御装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、処理スラグの品質の経時的変化を抑制し、処理スラグの品質を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る運転方法を実施するスラグ磨砕機の一例を示す全体構成図。
【
図3】スラグ磨砕機の回転ドラムの回転数を一定として長期運転を実施した際の、電動機の電流値及び処理スラグの品質の推移を概念的に示す図。
【
図4】従来技術に係る比較例の運転方法で運転した期間での電動機の電流値及び処理スラグの品質の推移を示す図。
【
図5】本発明に係る実施例の運転方法で運転した期間での電動機の電流値及び処理スラグの品質の推移を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明に係る運転方法を実施するスラグ磨砕機の一例を示す全体構成図、
図2は
図1に示すスラグ磨砕機の要部拡大説明図である。
図1及び
図2に示すスラグ磨砕機Aは、駆動部としての回転ドラム1、付属部としての環状体2、及び回転ドラム1を回転駆動させる電動機3を備えるとともに、溶融スラグS1を回転ドラム1へ供給するためのホッパ4、及び回転ドラム1の上方に配置された散水機5、並びに回転ドラム1の回転数等を制御する制御装置6を備えている。
【0014】
回転ドラム1は、ホッパ4から供給される溶融スラグS1を貯留し遠心方向に移動させるために高速回転する。この回転ドラム1は、鉛直軸周りに回転する鉛直軸回転型であり、電動機3の回転をベルト31で伝達することにより回転する。すなわち、回転ドラム1の回転数は電動機3の回転数により調整することができる。そして電動機3の回転数は、
図1に概念的に示している制御装置6により自動的に制御することができるほか、作業者により手動的に制御することもできる。作業者により手動的に制御する場合、例えば、制御装置6は作業者の入力操作を受け付ける入力受付部を有し、入力受付部を介して入力された回転数の値に基づいて電動機3の回転数を制御することができる。回転ドラム1の回転数と電動機3の回転数との対応関係(モータ特性)は、制御装置6に予め記憶させておくと好ましい。
【0015】
環状体2は、回転ドラム1の上部外周縁であるドラムエッジ11の周囲に所定の隙間Gをもって固定的に配置されている。この環状体2は、内面に複数の突条211を有する筒状部21と、筒状部21の下端に接合された板状部22とを含み、板状部22の内周縁とドラムエッジ11の外周面との間に隙間Gがある。
【0016】
スラグ磨砕機Aによる溶融スラグS1の磨砕処理の概要は次の通りである。ホッパ4から供給される溶融スラグS1は、回転ドラム1の上部と環状体2の内部に滞留する。なお、溶融スラグS1の滞留時間は、回転ドラム1及び環状体2の高さ、回転ドラム1の回転数、溶融スラグS1の供給量等で設定する。滞留時間中、溶融スラグS1は、回転ドラム1の高速回転により遠心方向に回転しながら移動し、また環状体2の内面に押し付けられて反転する。このような溶融スラグS1の遠心方向への移動及び反転と回転により、溶融スラグS1が互いに擦られ、溶融スラグS1の角が丸みを帯び、粒形が小さくなり、処理スラグS2となって排出される。なお、スラグ磨砕機Aは、溶融スラグS1同士が擦られることによる摩擦熱により溶融スラグS1の表面付着水分が蒸発し磨砕性能が低下することを抑制するために、回転ドラム1内や環状体2内に散水する散水機5を備えている。
【0017】
ここで、スラグ磨砕機Aの磨砕処理能力すなわち処理スラグS2の品質は、溶融スラグS1の供給量、溶融スラグS1の滞留時間、回転ドラム1の回転数、散水機5からの散水量等で調整可能であるが、上述の通り従来技術では、処理スラグS2の品質が所定の基準値を満足するように回転ドラム1の回転数を予め設定し、その設定した回転数で運転を継続する運転方法が一般的であった。
【0018】
しかし、このような従来の運転方法では、上述の通り、処理スラグS2の品質が経時的に変化する。その一例として
図3に、スラグ磨砕機Aの回転ドラム1の回転数を一定として長期運転を実施した際の、電動機3の電流値及び処理スラグS2の品質(粗粒率)の推移を概念的に示している。同図に示しているように、回転ドラム1及び環状体2における消耗品交換後の運転開始初期では電動機3の電流値は低位安定状況であるが、長期間稼働(溶融スラグS1の供給量により変わるが通常は数ヶ月程度経過後)により電流値は上昇する。そして電動機3の電流値上昇に伴い、処理スラグS2の粗粒率が低下する。
上述の通り電動機3の電流値は、スラグ磨砕機Aにおける溶融スラグS1の磨砕処理時の負荷である磨砕負荷を示す指標であり、電動機3の電流値上昇は磨砕負荷の上昇を示す。すなわち、電動機3の電流値変動は、スラグ磨砕機Aにおいて溶融スラグの磨砕処理を行うための駆動部である回転ドラム1及びその付属部である環状体2の摩耗や損耗により溶融スラグの挙動等が運転開始時と異なってきていることを示し、これに伴い磨砕負荷も運転開始時と異なってきていることを示す。そして、この磨砕負荷の変動により処理スラグS2の品質が経時的に変化することになる。なお、この状況は、スラグ磨砕機Aにおける各部品、特に回転ドラム1及び環状体2における消耗品の摩耗・損耗速度を一層促進することになるため、摩耗が進むと各部品の部材厚みが薄くなり、強度保持等の観点で消耗品交換が必要となる。ここで、スラグ磨砕機Aにおいて消耗品の典型例は、回転ドラム1のドラムエッジ11と、環状体2の筒状部21及び板状部22である。
【0019】
このように従来の運転方法では処理スラグS2の品質が経時的に変化する。その対応として本発明では、磨砕処理を行うための駆動部を駆動させる電動機3の電流値の変動に対応する運転条件を調整し、電動機3の電流値を安定させる。そして本実施形態では、磨砕処理を行うための駆動部である回転ドラム1を駆動させる電動機3の電流値の変動に対応する運転条件として回転ドラム1の回転数を調整し、電動機3の電流値を安定させる。以下、本実施形態の運転方法について詳細に説明する。
【0020】
本実施形態では、上述の消耗品を交換後に電動機3の電流値を所定値にセットして運転開始し、運転開始後、電動機3の電流値の移動平均値が所定量増加したとき、回転ドラム1の回転数を所定量低下させて電動機3の電流値を安定させる対応を実施する。すなわち、例えば、制御装置6において、初回運転時又は消耗品交換後等の消耗品が消耗していないときに、電動機3の電流値を、処理スラグS2の品質が所定の基準値を満足するような回転ドラム1の回転数(目標回転数)に対応する所定の基準値(設定値)にセットして運転開始する。そして、運転開始後、電動機3の電流値の移動平均値が所定量増加したとき、制御装置6において、回転ドラム1の回転数(あるいは電動機3の回転数の設定値)を所定量低下させるように電動機3の電流値を再びセットし(設定値を更新し)、電動機3の電流値を安定させる制御を行う。運転時間の経過とともに再び電動機3の電流値の移動平均値が所定量増加したときは、同じ対応を繰り返す。なお、このような一連の対応は、全てを作業者により手動的に実施することができるし、一部を作業者により手動的に実施し、残りを制御装置6により自動的に実施することもできる。無論、全てを制御装置6により自動的に実施することもできる。
ここで、回転ドラム1の回転数は、溶融スラグS1の品質と、処理スラグS2の品質要求レベルにもよるが、スラグ磨砕機Aの磨砕処理能力確保の観点から1000~2500rpmの範囲が目安となる。回転ドラム1の回転数が1000rpm未満となると、溶融スラグS1への遠心力が低減し、スラグ磨砕機Aの磨砕処理能力が低下傾向となる。また、回転ドラム1の回転数が2500rpm超となると、溶融スラグS1への遠心力が過大となることに伴い溶融スラグS1の滞留時間が短くなり、その結果、スラグ磨砕機Aの磨砕処理能力が低下傾向となる。以上より本実施形態では、回転ドラム1の回転数を1000~2500rpmの範囲で調整し、回転ドラム1の回転数が予め定めた所定下限値(例えば1200rpm)に達したら消耗品を交換する対応を実施する。
【0021】
以上の通り本実施形態では、電動機3の電流値の変動に対応する運転条件として回転ドラム1の回転数を調整し、電動機3の電流値を安定させる対応を実施することから、スラグ磨砕機Aにおける磨砕負荷の経時的な変動を抑制することができ、これにより処理スラグS2の品質の経時的変化を抑制し、処理スラグS2の品質を安定させることができる。また本実施形態では、回転ドラム1の回転数を1000~2500rpmの範囲で調整することにより、スラグ磨砕機Aの磨砕処理能力を適切な範囲に維持・確保することができ、これにより、処理スラグS2の品質をさらに安定させることができるとともに、消耗品の長寿命化を図ることができる。さらに本実施形態では、回転ドラム1の回転数が予め定めた所定下限値(例えば1200rpm)に達したら消耗品を交換する対応を実施することにより、消耗品の摩耗・損耗に伴う処理スラグS2の品質の経時的変化を抑制することができ、これにより処理スラグS2の品質をさらに安定させることができる。
【0022】
以上の本実施形態では、電動機3の電流値の変動に対応する運転条件として回転ドラム1の回転数を調整するようにしたが、本発明において調整する運転条件は、回転ドラム1の回転数のみには限定されず、例えば、ホッパ4からの溶融スラグS1の供給量、散水機5からの散水量等の他の運転条件を単独で又は回転ドラム1の回転数との組合せで調整することもできる。
【実施例0023】
図1のスラグ磨砕機Aを有する一般廃棄物溶融処理施設(以下「A施設」という。)において、本発明の実施例として電動機3の電流値の移動平均に伴い回転ドラム1の回転数を調整する運転方法を実施するとともに、比較例として電動機3の電流値の変動に関わらず回転ドラム1の回転数を一定とする運転方法を実施し、それぞれ得られた処理スラグS2の品質として粗粒率の推移を評価した。
ここで、実施例の運転方法においては、消耗品交換後の運転開始時の回転ドラム1の回転数を2000rpm、電動機3の電流値の基準値を22Aにセットし、運転開始後、電動機の電流値の3日間の移動平均値が0.3A増加したとき、回転ドラム1の回転数を100rpm低下させて電動機の電流値を安定させる対応を実施した。また、回転ドラム1の回転数が所定下限値(1200rpm)に達したら、消耗品を交換する対応を実施した。一方、比較例の運転方法においては、電動機3の電流値の変動に関わらず回転ドラム1の回転数を一定(2000rpm)とした。
表1に、比較例の運転方法で運転した期間と、実施例の運転方法で運転した期間での処理スラグS2の粗粒率の評価結果を示している。また、
図4には比較例の運転方法で運転した期間での電動機3の電流値及び処理スラグS2の粗粒率の推移を示し、
図5には実施例の運転方法で運転した期間での電動機3の電流値及び処理スラグS2の粗粒率の推移を示している。
【0024】
【0025】
A施設における粗粒率の基準値は2.8±0.2であるが、比較例の場合、粗粒率は平均で2.6、最大2.8~最小2.2で推移し、標準偏差は0.3であった。また比較例の場合、
図4に示すように運転時間の経過により電動機3の電流値が顕著に上昇し粗粒率が低下する傾向が見られ、その後、消耗品交換のタイミングで電動機3の電流値が低下して粗粒率が上昇した。
これに対して実施例の場合、粗粒率は平均で2.7、最大2.9~最小2.6で推移し、標準偏差は0.1と比較例に比べ安定して推移し、処理スラグ品質の安定化効果が確認された。具体的には
図5に示すように、運転時間の経過に伴う電動機3の電流値の上昇が抑制されるとともに、消耗品交換直後の電動機3の電流値の低下も抑制されて電動機3の電流値が安定化されたことにより、粗粒率の安定化を長期的に満足することができた。さらに、電動機3の電流値の移動平均値の増加管理値を小さくするとともに、移動平均値の変化状況と回転ドラム1の回転数の変動対応を自動化することで(例えば、制御装置6に移動平均値の変化状況と回転ドラム1の回転数の変更量との対応関係を予め記憶させ、制御装置6が移動平均値の変化量に基づいて回転ドラム1の回転数を自動制御することで)、粗粒率の標準偏差は一層低減することが期待できる。
【0026】
このように本発明の運転方法によれば、電動機の電流値の安定化対応により、処理スラグの用途に対応する品質を安定的に確保できる。また、上述の実施例のように回転ドラムの回転数の低減対応を実施することで、溶融スラグによる消耗品の摩耗・損耗速度を低減することができ、消耗品の交換時間/交換寿命の延長も期待できる。