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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176080
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】吹き付け装置及び吹き付けシステム
(51)【国際特許分類】
   B05B 13/04 20060101AFI20241212BHJP
   B05B 12/00 20180101ALI20241212BHJP
【FI】
B05B13/04
B05B12/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094309
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】野村 勇樹
【テーマコード(参考)】
4F035
【Fターム(参考)】
4F035AA03
4F035BB06
4F035BB32
4F035CA01
4F035CA05
4F035CD03
4F035CD06
4F035CD08
4F035CD11
4F035CD18
4F035CD19
(57)【要約】
【課題】吹き付け作業の作業効率を良くすることが可能な吹き付け装置を提供する。
【解決手段】吹き付け装置1は、装置本体10と、ホース130に接続され、吹き付け材を噴射する吹き付けヘッド40と、吹き付けヘッドを上下方向とは交差する交差方向に沿った軸周りに回転させる回転ユニット50と、吹き付けヘッド及び回転ユニットを水平方向の一方向に移動させる移動ユニット60とを備えている。吹き付けヘッド40は、回転ユニット50にヘッド取り付け部材45を介して取り付けられる。ヘッド取り付け部材45は、上面視において回転ユニット50から装置本体10の外側に延びている。吹き付けヘッド40は、ヘッド取り付け部材45の延出端部に取り付けられ、移動ユニット60によって水平方向の一方向に移動したとき、上面視において装置本体10よりも外側に配置される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の躯体に吹き付け材を吹き付ける吹き付け装置であって、
前記吹き付け装置の本体となる装置本体と、
前記吹き付け材を送るホースに接続され、前記吹き付け材を噴射する吹き付けヘッドと、
前記装置本体に対して前記吹き付けヘッド及び前記ホースを上下方向とは交差する交差方向に沿った軸周りに回転させる回転ユニットと、
前記装置本体に対して前記吹き付けヘッド、前記ホース及び前記回転ユニットを水平方向の一方向に移動させる移動ユニットと、を備え、
前記吹き付けヘッドは、前記回転ユニットにヘッド取り付け部材を介して取り付けられ、
前記ヘッド取り付け部材は、上面視において前記回転ユニットから前記装置本体の外側に向かって延びており、
前記吹き付けヘッドは、
前記ヘッド取り付け部材の延出端部に取り付けられ、
前記移動ユニットによって水平方向の前記一方向に移動したとき、上面視において前記装置本体よりも外側に配置されることを特徴とする吹き付け装置。
【請求項2】
前記回転ユニットは、前記吹き付けヘッド及び前記ホースを上下方向とは直交する直交方向に沿った軸周りに回転させる第1回転ユニットであって、
前記装置本体に対して前記吹き付けヘッド、前記ホース、前記第1回転ユニット及び前記移動ユニットを上下方向に沿った軸周りに回転させる第2回転ユニットをさらに備え、
前記移動ユニットは、前記第2回転ユニット上に取り付けられ、
前記吹き付け装置は、前記第2回転ユニット、前記移動ユニット及び前記第1回転ユニットを駆動させて前記吹き付けヘッドの位置及び角度を変更しながら、前記躯体に前記吹き付け材を吹き付けることを特徴とする請求項1に記載の吹き付け装置。
【請求項3】
前記吹き付けヘッドは、
前記ヘッド取り付け部材の延出方向とは交差する方向に延びるヘッド本体と、
前記ヘッド本体の延出方向の一端側に設けられ、前記ホースに接続されるホース接続部と、
前記ヘッド本体の延出方向の他端側に設けられ、前記吹き付け材を噴射するヘッド噴射口と、を有していることを特徴とする請求項1に記載の吹き付け装置。
【請求項4】
前記移動ユニットは、
水平方向の前記一方向に延びている固定レールと、
前記固定レールに沿って移動可能に支持され、前記一方向に前記吹き付けヘッド及び前記ヘッド取り付け部材とともに移動する可動部と、を有し、
前記固定レールと前記ヘッド取り付け部材とが、水平方向において同じ方向に長尺に延びていることを特徴とする請求項1に記載の吹き付け装置。
【請求項5】
前記移動ユニット及び前記回転ユニットを制御する制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、
前記移動ユニットによって前記吹き付けヘッドを水平方向の前記一方向に移動させ、
前記回転ユニットによって前記吹き付けヘッドのヘッド噴射口の角度を変更するように前記吹き付けヘッドを回転させ、
前記吹き付けヘッドが上面視において前記装置本体よりも外側位置に配置されるときに、前記吹き付けヘッドのヘッド噴射口を左右に反転させ、
前記吹き付けヘッドが上面視において前記装置本体と重なる位置に配置されるときには、前記吹き付けヘッドのヘッド噴射口を左右に反転させないことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の吹き付け装置。
【請求項6】
前記移動ユニットによって前記吹き付けヘッドが水平方向の前記一方向に移動したとき、前記吹き付けヘッド及び前記ホースが上面視において前記装置本体よりも外側に配置され、
前記制御装置は、前記吹き付けヘッド及び前記ホースが上面視において前記装置本体よりも外側に配置されるときに、前記吹き付けヘッドにおけるヘッド噴射口とホース接続部を左右に反転させることを特徴とする請求項5に記載の吹き付け装置。
【請求項7】
請求項1に記載の吹き付け装置と、前記吹き付け装置に接続され、前記吹き付け材を噴射する噴射装置と、前記施工現場内において所定位置に設置される測量装置と、を備えた吹き付けシステムであって、
前記吹き付け装置は、前記装置本体に設けられ、前記測量装置によって検出される検出対象物を備え、
前記測量装置は、前記吹き付け装置に搭載された前記検出対象物を検出し、検出結果に基づいて前記吹き付け装置の位置情報を測量し、
前記吹き付けシステムは、
前記建物の3次元設計情報を記憶し、
前記建物の3次元設計情報と、前記吹き付け装置の位置情報とに基づいて前記施工現場内における前記吹き付け装置の現在位置を推定し、
前記吹き付け装置の現在位置と、前記3次元設計情報とに基づいて前記吹き付けヘッドの位置及び角度を制御し、前記噴射装置による前記吹き付け材の噴射を制御することを特徴とする吹き付けシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吹き付け装置及び吹き付けシステムに係り、特に、建物の躯体に吹き付け材を吹き付ける吹き付け装置及び吹き付けシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の躯体(例えば柱や梁)に吹き付け材(例えば耐火被覆材)を吹き付ける作業をする際には、作業者が、吹き付け材を噴射する吹き付けヘッドを手に取って、躯体の周りを移動しながら吹き付け作業をすることが一般的である。
しかしながら、上記吹き付け作業は重労働であってその作業環境も悪いことから、吹き付け装置(吹き付けロボット)を利用することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の吹き付け装置は、吹き付けヘッドを保持し、吹き付けヘッドの位置及び角度を変更するロボットアームと、ロボットアームを吹き付け装置の長さ方向に移動させる横行装置と、ロボットアーム及び横行装置を昇降させる昇降装置と、ロボットアーム、横行装置及び昇降装置を支持しながら水平方向に走行させる走行装置と、を主として備えている。
また、吹き付け装置は、建物の躯体に吹き付け材を吹き付けるべく、ロボットアーム、横行装置、昇降装置及び走行装置を制御する制御部(演算処理装置)を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-20206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のような吹き付け装置では、吹き付けヘッドに吹き付け材を送るためのホース(接続ホース)が取り付けられるところ、吹き付け作業時にホースが絡まらないように(過度に変形しないように)、作業者がホースの取り回しを補助する必要があった。例えば、吹き付け作業時に吹き付けヘッド及びホースを強引に方向転換させると、ホースが破損する虞があった(ホースが装置本体に衝突する虞があった)。
また、作業者がホースの取り回しを補助するときに、吹き付け装置の動作を一旦停止する必要があって、作業効率が悪くなる虞があった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、従来よりも吹き付け作業の作業効率を良くすることが可能な吹き付け装置及び吹き付けシステムを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、吹き付け作業を行うときに、吹き付けヘッドに接続されるホース(接続ホース)を好適に配置することが可能な吹き付け装置及び吹き付けシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の吹き付け装置によれば、建物の躯体に吹き付け材を吹き付ける吹き付け装置であって、前記吹き付け装置の本体となる装置本体と、前記吹き付け材を送るホースに接続され、前記吹き付け材を噴射する吹き付けヘッドと、前記吹き付けヘッドに接続され、前記吹き付けヘッドに前記吹き付け材を送るホースと、前記装置本体に対して前記吹き付けヘッド及び前記ホースを上下方向とは交差する交差方向に沿った軸周りに回転させる回転ユニットと、前記装置本体に対して前記吹き付けヘッド、前記ホース及び前記回転ユニットを水平方向の一方向に移動させる移動ユニットと、を備え、前記吹き付けヘッドは、前記回転ユニットにヘッド取り付け部材を介して取り付けられ、前記ヘッド取り付け部材は、上面視において前記回転ユニットから前記装置本体の外側に向かって延びており、前記吹き付けヘッドは、前記ヘッド取り付け部材の延出端部に取り付けられ、前記移動ユニットによって水平方向の前記一方向に移動したとき、上面視において前記装置本体よりも外側に配置されること、により解決される。
【0008】
上記構成により、従来よりも吹き付け作業の作業効率を良くした吹き付け装置を実現することができる。
詳しく述べると、上記吹き付け装置では、吹き付けヘッドが、ヘッド取り付け部材の延出端部に取り付けられ、また移動ユニットによって水平方向の一方向に移動したときに上面視において装置本体よりも外側に配置される。つまりは、ヘッド取り付け部材を備えることで、吹き付けヘッド及びホースを装置本体よりも外側に配置できる。そのため、吹き付け作業時に吹き付けヘッド及びホースを好適に取り回すことができる(装置本体から極力遠ざけて配置できる)。また、ホースが装置本体に干渉してしまうことを抑制できる。
【0009】
このとき、前記回転ユニットは、前記吹き付けヘッド及び前記ホースを上下方向とは直交する直交方向に沿った軸周りに回転させる第1回転ユニットであって、前記装置本体に対して前記吹き付けヘッド、前記ホース、前記第1回転ユニット及び前記移動ユニットを上下方向に沿った軸周りに回転させる第2回転ユニットをさらに備え、前記移動ユニットは、前記第2回転ユニット上に取り付けられ、前記吹き付け装置は、前記第2回転ユニット、前記移動ユニット及び前記第1回転ユニットを駆動させて前記吹き付けヘッドの位置及び角度を変更しながら、前記躯体に前記吹き付け材を吹き付けると良い。
上記構成により、第2回転ユニット、移動ユニット及び第1回転ユニットを駆動させて吹き付けヘッドの位置及び角度を変更しながら好適に吹き付け材を吹き付けできる。
【0010】
このとき、前記吹き付けヘッドは、前記ヘッド取り付け部材の延出方向とは交差する方向に延びるヘッド本体と、前記ヘッド本体の延出方向の一端側に設けられ、前記ホースに接続されるホース接続部と、前記ヘッド本体の延出方向の他端側に設けられ、前記吹き付け材を噴射するヘッド噴射口と、を有していると良い。
上記構成により、吹き付け作業時(吹き付け制御時)にホースを取り回し易くすることができる。そのため、ホースの絡まりによって吹き付け装置の動作を一旦停止することを抑制でき、効率良く吹き付け作業を行える。
【0011】
このとき、前記移動ユニットは、水平方向の前記一方向に延びている固定レールと、前記固定レールに沿って移動可能に支持され、前記一方向に前記吹き付けヘッド及び前記ヘッド取り付け部材とともに移動する可動部と、を有し、前記固定レールと前記ヘッド取り付け部材とが、水平方向において同じ方向に長尺に延びていると良い。
上記のように、固定レールとヘッド取り付け部材とが水平方向において同じ方向に長尺に延びていることで、吹き付けヘッド及びホースを装置本体から遠ざけて動作させることができる。すなわち、ホースを好適に取り回すことができる。
【0012】
このとき、前記移動ユニット及び前記回転ユニットを制御する制御装置をさらに備え、前記制御装置は、前記移動ユニットによって前記吹き付けヘッドを水平方向の前記一方向に移動させ、前記回転ユニットによって前記吹き付けヘッドのヘッド噴射口の角度を変更するように前記吹き付けヘッドを回転させ、前記吹き付けヘッドが上面視において前記装置本体よりも外側位置に配置されるときに、前記吹き付けヘッドのヘッド噴射口を左右に反転させ、前記吹き付けヘッドが上面視において前記装置本体と重なる位置に配置されるときには、前記吹き付けヘッドのヘッド噴射口を左右に反転させないと良い。
また、前記移動ユニットによって前記吹き付けヘッドが水平方向の前記一方向に移動したとき、前記吹き付けヘッド及び前記ホースが上面視において前記装置本体よりも外側に配置され、前記制御装置は、前記吹き付けヘッド及び前記ホースが上面視において前記装置本体よりも外側に配置されるときに、前記吹き付けヘッドにおけるヘッド噴射口とホース接続部を左右に反転させると良い。
上記構成により、ホースと装置本体を接触させないように吹き付けヘッドを動作させることができる。特に、建物の躯体(例えば柱及び梁)に吹き付け材を吹き付けるときには吹き付けヘッドを左右反転させる動作が必要になるところ、当該反転動作時であってもホースが装置本体に絡まることを防止できる。
【0013】
また前記課題は、本発明の吹き付けシステムによれば、上記の吹き付け装置と、前記吹き付け装置に接続され、前記吹き付け材を噴射する噴射装置と、前記施工現場内において所定位置に設置される測量装置と、を備えた吹き付けシステムであって、前記吹き付け装置は、前記装置本体に設けられ、前記測量装置によって検出される検出対象物を備え、前記測量装置は、前記吹き付け装置に搭載された前記検出対象物を検出し、検出結果に基づいて前記吹き付け装置の位置情報を測量し、前記吹き付けシステムは、前記建物の3次元設計情報を記憶し、前記建物の3次元設計情報と、前記吹き付け装置の位置情報とに基づいて前記施工現場内における前記吹き付け装置の現在位置を推定し、前記吹き付け装置の現在位置と、前記3次元設計情報とに基づいて前記吹き付けヘッドの位置及び角度を制御し、前記噴射装置による前記吹き付け材の噴射を制御すること、によっても解決される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の吹き付け装置及び吹き付けシステムによれば、従来よりも吹き付け作業の作業効率を高めることが可能となる。
また、吹き付け作業を行うときに、吹き付けヘッドに接続されるホース(接続ホース)を好適に配置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態の吹き付けシステムの構成図である。
図2】吹き付け装置の斜視図であって、「通常位置」にいる状態を示す図である。
図3】吹き付け装置の斜視図であって、「上昇位置」にいる状態を示す図である。
図4】吹き付けヘッド、ヘッド取り付け部材、第1回転ユニット、移動ユニット、第2回転ユニットの斜視図である。
図5図4の斜視図であって、ホース及び支持ブラケットを示す図である。
図6図4の状態から、吹き付けヘッド及びホースを左右反転させた状態を示す図である。
図7】吹き付け装置、測量装置、オペレータ端末の機能を示す図である。
図8A】柱、柱・梁接合部に吹き付け材を吹き付ける様子を示す図である。
図8B】梁の一端部に吹き付け材を吹き付ける様子を示す図である。
図8C】吹き付けヘッド及びホースを左右反転させる様子を示す図である。
図8D】吹き付けヘッドを左右反転させて梁の中間部に吹き付け材を吹き付ける様子を示す図である。
図8E】梁の他端部に吹き付け材を吹き付ける様子を示す図である。
図8F】奥側の柱、柱・梁接合部に吹き付け材を吹き付ける様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態について図1図8Fを参照して説明する。
本実施形態は、建物の躯体に吹き付け材を吹き付ける吹き付け装置であって、吹き付け作業を行うときに、吹き付けヘッドに接続されるホース(接続ホース)を好適に配置することを可能とする「吹き付け装置」に関するものである。
また、吹き付け装置を備えた「吹き付けシステム」に関するものである。
【0017】
吹き付けシステムSは、図1に示すように、建物Bの躯体(柱B1や梁B3)に吹き付け材を吹き付ける吹き付け装置1と、吹き付け装置1に接続され、吹き付け材を噴射する噴射装置100と、建物内において所定の測量位置に設置され、吹き付け装置1の相対位置情報を測量する測量装置200と、吹き付け装置1及び測量装置200と通信可能に接続され、吹き付け装置1へ位置情報や所定の吹き付け作業を実行させるオペレータ端末300と、を備えている。
【0018】
<吹き付けシステムのハードウェア構成>
吹き付け装置1は、図1図6に示すように、吹き付けヘッドを搭載した無人搬送車(AGV)であって、装置本体10と、装置本体10の下方に取り付けられる走行ユニット20と、装置本体10上に取り付けられる昇降ユニット30と、昇降ユニット30上に取り付けられる吹き付けヘッド40、第1回転ユニット50、移動ユニット60及び第2回転ユニット70と、を備えている。
また、吹き付け装置1は、装置本体10の内部に取り付けられ、吹き付け材の噴射を調整するエアコンプレッサ80と、装置本体10の外側面の四隅に取り付けられ、測量装置200の検出対象となるプリズム85と、装置本体10の内部に取り付けられ、各駆動ユニットに電力を供給するバッテリ88と、装置本体10の内部に取り付けられ、走行ユニット20、昇降ユニット30、第1回転ユニット50、移動ユニット60、第2回転ユニット70及びエアコンプレッサ80の各種動作を制御する制御装置90と、をさらに備えている。
【0019】
噴射装置100は、図1に示すように、ロックウール(第1材料)とモルタル(第2材料)を混合した耐火被覆材(吹き付け材)を噴射する装置である。
噴射装置100は、ロックウールをほぐす解綿機110と、ほぐされたロックウールを吹き付けヘッド40へ運ぶブロア120と、解綿機110、ブロア120及び吹き付けヘッド40を接続する第1ホース130(ホース)と、を備えている。また、モルタルを混錬するミキサー140と、混錬したモルタルを吹き付けヘッド40へ運ぶポンプ150と、ミキサー140、ポンプ150及び吹き付けヘッド40を接続する第2ホース160と、をさらに備えている。
詳しく述べると、ホース130、160の先端部分は、図1図5に示すように、エアコンプレッサ80を介して吹き付けヘッド40の位置まで延びている。
上記構成により、噴射装置100は、エアコンプレッサ80によって調整させながら、ロックウール及びモルタルを混合した耐火被覆材を吹き付けヘッド40から噴射する。
【0020】
測量装置200は、図1に示すように、測量位置において吹き付け装置1に搭載されたプリズム85を検出し、検出結果に基づいて吹き付け装置1の位置情報(相対位置情報)を測量する自動追尾型のトータルステーションである。
測量装置200は、オペレータ端末300と情報データ通信を行い、オペレータ端末300に向けて吹き付け装置1との位置情報を送信する。
【0021】
測量装置200は、照射方向を連続的に変化させてレーザー光を照射し、検出対象物からの反射光を受光することで、検出対象物との距離及び向きを測量する装置本体201と、装置本体201の内部に取り付けられる制御コントローラ202と、を備えている。
制御コントローラ202は、CPU(プロセッサ)と、記憶装置と、通信用インタフェースとを備えたコンピュータである。
【0022】
オペレータ端末300は、図1に示すように、作業者によって操作されるコンピュータである。
オペレータ端末300は、測量装置200から位置情報を受信して吹き付け装置1の現在位置(位置及び向き)を演算し、吹き付け装置1へ位置情報や所定の吹き付け作業を実行させるプログラムを送信する。
オペレータ端末300は、建物内で操作されても良いし、建物の外部で操作されても良い。
【0023】
<<吹き付け装置の詳細>>
以下、吹き付け装置1のハードウェア構成について詳しく説明する。
【0024】
走行ユニット20は、図2に示すように、装置本体10を水平方向(2次元方向)の全方位に走行させるタイヤ式の走行部であって、装置本体10の四隅にそれぞれ取り付けられている。
具体的には、走行ユニット20は、上面視において装置本体10の四隅にそれぞれ配置され、装置本体10を走行させるために回転する複数の車輪21と、各車輪21の回転軸を構成し、吹き付け装置1の長さ方向に延びている車輪軸22と、各車輪21及び車輪軸22を回転させる駆動モータ23と、を有している。
【0025】
車輪21は、例えばメカナムホイールであって、車輪21の表面が車輪軸22に対して約45度傾けた複数のローラ(バレル)によって覆われている。なお、車輪21は、メカナムホイールのほか、オムニホイールであっても良い。
走行ユニット20は、4つの駆動モータ23によって車輪21(車輪軸22)の回転方向と回転速度を制御することで、吹き付け装置1を旋回させずに水平方向に自由に走行させることができる。
【0026】
昇降ユニット30は、図2図3に示すように、装置本体10に対して吹き付けヘッド40、第1回転ユニット50、移動ユニット60及び第2回転ユニット70を昇降させる駆動ユニットであって、例えば、リニアモータを用いたレール式の駆動ユニットである。
昇降ユニット30は、装置本体10の長さ方向の一端部に取り付けられている。
【0027】
昇降ユニット30は、複数の立方体フレームを有する多段式の駆動ユニットである。
具体的には、昇降ユニット30は、装置本体10上に固定される固定フレーム31と、固定フレーム31内に収容され、固定フレーム31に対して可動する第1可動フレーム32と、固定フレーム31に取り付けられ、第1可動フレーム32を昇降させる第1駆動モータ33と、を備えている。
また、昇降ユニット30は、第1可動フレーム32内に収容され、第1可動フレーム32に対して可動する第2可動フレーム34と、第1可動フレーム32に取り付けられ、第2可動フレーム34を昇降させる第2駆動モータ35と、を備えている。
同様にして、昇降ユニット30は、第3可動フレーム36と、第3駆動モータ37と、を備えている。
吹き付けヘッド40、第1回転ユニット50、移動ユニット60及び第2回転ユニット70は、第3可動フレーム36上に取り付けられている。
【0028】
吹き付けヘッド40は、図4図6に示すように、噴射装置100のホース130に接続され、吹き付け材を噴射する中空状のヘッド部材である。
吹き付けヘッド40は、ヘッド取り付け部材45を介して第1回転ユニット50に取り付けられ、第1回転ユニット50によって上下方向とは直交する直交方向に沿った軸周りに回転する。
詳しく述べると、ヘッド取り付け部材45は、第1回転ユニット50から装置本体10の外側に向かって側方へ延びており、吹き付けヘッド40は、ヘッド取り付け部材45の延出端部に取り付けられる。つまりは、吹き付けヘッド40は、第1回転ユニット50から離間して(偏心して)設置されている。
【0029】
具体的には、吹き付けヘッド40は、ヘッド取り付け部材45の長尺方向とは交差する方向に延びるヘッド本体41と、ヘッド本体の延出方向の一端部に設けられ、第1ホース130に接続されるホース接続部42と、第2ホース160に接続される第2ホース接続部43と、ヘッド本体の他端部に設けられ、吹き付け材を噴射するヘッド噴射口44と、を有している。
ヘッド取り付け部材45は、第1回転ユニット50に軸支される中空状の本体部45aと、本体部45aの延出方向の一端部に設けられ、吹き付けヘッド40を着脱可能に保持する保持部45bと、を有している。
ヘッド取り付け部材45は、第1回転ユニット50の軸に沿って長尺に延びている。また、吹き付けヘッド40は、ヘッド取り付け部材45の延出方向とは交差(直交)する方向に延びている。すなわち、吹き付けヘッド40とヘッド取り付け部材45とでT字形状を形成している。
【0030】
上記構成において、図5に示すように、吹き付けヘッド40及び第1ホース130は、移動ユニット60によって水平方向の一方向(例えば前方向)に移動したとき、上面視において装置本体10よりも外側に配置される。つまりは、吹き付けヘッド40及び第1ホース130は、装置本体10の枠外に配置される。
そうすることで、吹き付け作業時に吹き付けヘッド40及び第1ホース130を好適に取り回すことができる。また、第1ホース130が装置本体10に干渉することを抑制できる。
なお、吹き付け装置1の大型化を抑制するため、第1回転ユニット50が移動ユニット60(固定レール61)の中央位置にいるとき、つまりは吹き付けヘッド40が移動ユニット60によって移動していないときには、吹き付けヘッド40が上面視において装置本体10の内側に配置されると良い。そして、第1回転ユニット50が移動ユニット60(固定レール61)の端部位置(端部側の位置)にいるとき、つまりは吹き付けヘッド40が移動ユニット60によって移動したときに、吹き付けヘッド40が上面視において装置本体10の外側に配置されると良い。
【0031】
第1回転ユニット50は、図4図5に示すように、装置本体10に対して吹き付けヘッド40を上下方向とは直交する直交方向に沿った軸周りに回転させる駆動ユニットであって、例えば、スクリューモータを用いたプーリ式の駆動ユニットである。
第1回転ユニット50は、移動ユニット60(可動部62)に取り付けられ、移動ユニット60によって水平方向の一方向に移動(スライド移動)する。
【0032】
具体的には、第1回転ユニット50は、移動ユニット60上に固定される筐体51と、筐体51の内部にそれぞれ組み付けられる駆動プーリ52、従動プーリ53及びベルト54と、筐体51の外部に組み付けられ、駆動プーリ52に接続される駆動モータ55と、を備えている。
駆動プーリ52及び従動プーリ53はベルト54によって接続されており、従動プーリ53は駆動プーリ52よりも上方位置に配置されている。
駆動プーリ52は駆動モータ55の駆動に伴って回転し、ベルト54が駆動プーリ52の回転動力を従動プーリ53に伝達することで、従動プーリ53が回転する。従動プーリ53は、ヘッド取り付け部材45と接続されており、従動プーリ53の回転動作に伴ってヘッド取り付け部材45及び吹き付けヘッド40が回転する。
【0033】
第1回転ユニット50の駆動によって、吹き付けヘッド40を上下方向とは直交する方向に沿った軸周りに揺動させることができる。
なお、第1回転ユニット50は、吹き付けヘッド40を180度、好ましくは360度回転させるように駆動すると良い。
そうすることで、吹き付けヘッド40の位置及び向きを好適に制御できる。
【0034】
移動ユニット60は、図4図5に示すように、装置本体10に対して吹き付けヘッド40及び第1回転ユニット50を水平方向の一方向に移動させる駆動ユニットであって、例えば、スクリューモータを用いたレール式の駆動ユニットである。
移動ユニット60は、第2回転ユニット70(支持ブラケット71)に取り付けられ、第2回転ユニット70によって上下方向に沿った軸周りに回転する。
【0035】
具体的には、移動ユニット60は、第2回転ユニット70上に固定され、水平方向の一方向に長尺に延びている固定レール61と、固定レール61に沿って摺動可能に支持され、上記一方向に吹き付けヘッド40とともにスライド移動する可動部62(可動スライダ)と、固定レール61の内部に搭載され、可動部62を移動させる駆動モータ63と、を備えている。
なお、固定レール61の幅方向の外側面には、可動部62の移動をガイドし、可動部62の移動範囲を制限する移動規制部64(移動規制溝)が形成されている。
【0036】
上記構成において、移動ユニット60は、可動部62の移動方向と第1回転ユニット50の軸方向とが水平方向において同じ方向になるように設けられている。
そうすることで、吹き付け作業のときに移動ユニット60及び第1回転ユニット50をシンプルな制御で動作させることができる。
【0037】
第2回転ユニット70は、図4図5に示すように、装置本体10に対して吹き付けヘッド40、第1回転ユニット50及び移動ユニット60を上下方向に沿った軸周りに回転させる駆動ユニットである。
第2回転ユニット70は、昇降ユニット30(第3可動フレーム36)上に取り付けられている。
【0038】
具体的には、第2回転ユニット70は、昇降ユニット30上に固定される支持ブラケット71と、支持ブラケット71に組み付けられる固定ベース72(固定板)と、固定ベース72に対して上下方向に沿った軸周りに回転する回転板73(回転テーブル)と、固定ベース72に組み付けられ、回転板73を回転させる駆動モータ74と、を備えている。
駆動モータ74の駆動に伴って回転板73を回転させることで、吹き付けヘッド40、第1回転ユニット50及び移動ユニット60が上下方向に沿った軸周りに回転する。
【0039】
第2回転ユニット70は、装置本体10に対して移動ユニット60を上下方向に沿った軸周りに360度回転させるように駆動する。
このように第2回転ユニット70が移動ユニット60を少なくとも180度回転させることで、多関節ロボットアームを採用しなくても吹き付けヘッド40を動作させて吹き付け作業を実行できる。例えば、第2回転ユニット70によって移動ユニット60及び吹き付けヘッド40を左右対称に動作させることができる。
【0040】
上記構成において、図5に示すように、吹き付けヘッド40及び第1ホース130(第2ホース160)は、移動ユニット60によって水平方向の一方向(例えば前方向)に移動したとき、上面視において装置本体10よりも外側に配置される。図5に示す状態から、第1回転ユニット50によって吹き付けヘッド40におけるヘッド噴射口44とホース接続部42を左右に反転させると、図6に示す状態となる。
そうすることで、第1ホース130と装置本体10を接触させないように吹き付けヘッド40を動作させることができる。例えば、建物Bの柱B1及び梁B3に吹き付け材を吹き付けるときに吹き付けヘッド40を左右反転させる動作が必要になるところ、当該反転動作時において第1ホース130が絡まることや、装置本体10に衝突することを防止できる。
【0041】
また上記構成において、図5に示すように、ヘッド取り付け部材45と、第1回転ユニット50の軸と、移動ユニット60の固定レール61とが、水平方向において同じ方向に延びている。
そうすることで、吹き付けヘッド40及び第1ホース130を装置本体10から遠ざけた上で、シンプルに動作させることができる。すなわち、第1ホース130を好適に取り回すことができ、第1ホース130の破損を避けることができる。
【0042】
エアコンプレッサ80は、図2に示すように、吹き付け材の噴射を調整する装置であって、装置本体10の内部に搭載されている。
なお、エアコンプレッサ80は、走行ユニット20(車輪21)やプリズム85等の表面に付着した吹き付け材等の異物を空圧で取り除くために、走行ユニット20やプリズム85に近接した位置に別途吹き出し口を有しても良い。
【0043】
プリズム85は、図2に示すように、測量装置200の検出対象となる反射プリズムであって、装置本体10の外側面の四隅に取り付けられ、それぞれ異なる高さ位置に配置されている。
そのため、測量装置200が、建物内において4つのプリズム85のうち、少なくとも2カ所のプリズム85を検出し易くなる。そして、測量装置200が2カ所のプリズム85を検出することで、オペレータ端末300が、吹き付け装置1の現在位置を推定できる。
【0044】
制御装置90は、図2に示すように、データの演算・制御処理としてのCPU(プロセッサ)と、記憶装置としてのROM、RAM、及びHDD(SSD)と、通信によってデータの送受信を行う通信用インタフェースと、を有するコンピュータであって、装置本体10の内部に搭載されている。
なお、制御装置90は、立体形状の制御モジュールに格納されている。
【0045】
制御装置90は、CPUが生成する制御信号を、通信用インタフェースを介して走行ユニット20、昇降ユニット30、第1回転ユニット50、移動ユニット60、第2回転ユニット70及びエアコンプレッサ80に送信することにより、これら駆動ユニットの動作をそれぞれ制御する。
言い換えれば、制御装置90のROM、RAM、及びHDDには、図7に示すように、コンピュータとして必要な機能を果たすメインプログラムに加えて、吹き付けプログラムが記憶されており、これらプログラムがCPUによって実行されることで、吹き付け装置1の機能が発揮される。
【0046】
<吹き付けシステムの機能>
吹き付け装置1(制御装置90)は、図7に示すように、機能面から説明すると、「設計データ」、「走行経路データ」のほか、各種プログラム及び各種データをオペレータ端末300から読み込んで一時的に記憶しておく記憶部91と、測量装置200、オペレータ端末300との間で各種データを送受信する通信部92と、建物内における現在位置の情報を取得する位置情報取得部93と、建物内において所定の走行経路に沿って走行させ、吹き付け処理を実行させる吹き付け制御部94と、を主な構成要素として備えている。
これらは、CPU、ROM、RAM、HDD、通信用インタフェース、及び各種プログラム等によって構成されている。
言い換えれば、制御装置90が、記憶部91と、通信部92と、位置情報取得部93と、吹き付け制御部94との機能を実行する。
【0047】
記憶部91に記憶される「設計データ」とは、建物の3次元形状の設計情報であって、具体的には、建物のBIM(Building Information Modeling)データである。
「設計データ」は、3次元形状の設計図に関する情報を含むデータであって、建物の部屋毎に作成され、かつ、施工段階毎に作成される。
設計図に関する情報は、建物の所定の部屋において所定の施工段階における図面を示すものであって、当該設計図には吹き付け材の吹き付け位置情報も含まれている。
例えば、建物の情報と、建物の部屋の情報と、部屋の施工段階の情報とが対応付けられている。
本実施形態では、建物の3次元形状を示す設計データを想定しているが、施工処理の内容によっては2次元形状の設計データであっても良い。
【0048】
「走行経路データ」とは、建物の部屋内において吹き付け作業を行うための走行経路を示すデータである。「走行経路データ」は、例えば、建物の部屋毎に作成され、かつ、施工段階毎に作成されている。
【0049】
測量装置200は、各種プログラム及び各種データを記憶する記憶部210と、吹き付け装置1、オペレータ端末300との間で各種データを送受信する通信部211と、測量位置に設置された状態で測量を実行する測量実行部212と、を主な構成要素として備えている。
これらは、CPU、ROM、RAM、HDD、通信用インタフェース、及び各種プログラム等によって構成されている。
【0050】
オペレータ端末300は、各種プログラム及び各種情報データを保持して格納しておく記憶部310と、吹き付け装置1及び測量装置200との間で各種データを送受信する通信部311と、建物内における吹き付け装置1の現在位置の情報を推定する位置推定部312と、を主な構成要素として備えている。
記憶部310は、「設計データ」及び「走行経路データ」を記憶している。
これらは、CPU、ROM、RAM、HDD、通信用インタフェース、及び各種プログラム等によって構成されている。
【0051】
<<吹き付け装置の現在位置の推定>>
吹き付けシステムSは、以下のように吹き付け装置1の現在位置を推定する。
まず、測量装置200の測量実行部212は、図1に示す測量位置において吹き付け装置1に搭載されたプリズム85を検出し、検出結果に基づいて吹き付け装置1の相対位置情報を測量する。
そして、通信部211は、オペレータ端末300とデータ通信を行い、吹き付け装置1の相対位置情報を送信する。
【0052】
オペレータ端末300の通信部311は、測量装置200から吹き付け装置1の相対位置情報を受信する。
そして、位置推定部312は、「設計データ」に含まれる建物の部屋の設計情報と、測量装置200によって測量された吹き付け装置1の相対位置情報とに基づいて、建物の部屋内における吹き付け装置1の現在位置を推定する。
そして、通信部311は、吹き付け装置1に向けて吹き付け装置1の位置情報を送信する。
「位置情報」とは、2次元の位置情報であって、例えば所定の柱B1の中心位置を原点位置(X0,Y0)と設定したときの位置座標(X,Y)によって特定される。なお、「位置情報」は、位置座標(X,Y,Z)によって特定される3次元の位置情報であっても良い。
【0053】
吹き付け装置1の通信部92は、オペレータ端末300から吹き付け装置1の位置情報を受信する。
そして、位置情報取得部93は、吹き付け装置1の現在位置の情報を取得する。
【0054】
<<吹き付け作業の実行>>
吹き付けシステムSは、以下のように吹き付け作業を実行する。
吹き付け装置1の吹き付け制御部94は、「設計データ(設計情報)」に基づいて吹き付け位置を特定する。
そして、吹き付け装置1の現在位置の情報と、特定した吹き付け位置の情報に基づいて吹き付け装置1の走行経路決定し、「走行経路データ」を取得する。
そして、吹き付け制御部94は、「走行経路データ」に基づいて吹き付け装置1の「吹き付け開始位置」及び「吹き付け開始向き」を決定し、決定した「吹き付け開始位置」まで吹き付け装置1を移動させる。
【0055】
吹き付け装置1が「吹き付け開始位置」に到達したときに、吹き付け制御部94は、吹き付け装置1の位置情報と、設計情報とに基づいて吹き付けヘッド40の位置及び角度を制御し、噴射装置100による吹き付け材の噴射を制御する。
詳しく述べると、ヘッド移動制御部94aが、走行ユニット20、昇降ユニット30、第2回転ユニット70、移動ユニット60及び第1回転ユニット50を駆動させて吹き付けヘッド40の位置及び角度を制御する。そして、噴射制御部94bが、エアコンプレッサ80を駆動させて吹き付け材の噴射量を制御する。
【0056】
なお、本実施形態では、オペレータ端末300が、吹き付け装置1の位置情報を推定し、当該位置情情報を吹き付け装置1に向けてデータ送信しているが、オペレータ端末300の代わりに吹き付け装置1が、自己の位置情報を推定しても良い。
すなわち、吹き付け装置1が、自律移動ロボットとして「位置推定部」を構成要素として備え、自身で吹き付けプログラムを実行しても良い。
その場合には、吹き付け装置1が、測量装置200と直接データ通信を行い、相対位置情報を取得すると良い。
その場合には、オペレータ端末300は、吹き付け装置1に対し、吹き付け装置1の自律移動以外の移動指令(搬出入時の移動など)を行うと良い。また測量装置200に対し、測量装置200が認識するプリズム85の位置の指示を行うと良い。
【0057】
また本実施形態では、吹き付け装置1(制御装置90)が、吹き付け作業の制御を行っているが、吹き付け装置1の代わりにオペレータ端末300が、吹き付け装置1の吹き付け作業の制御を行っても良い。
その場合には、オペレータ端末300が、吹き付け装置1とリアルタイムでデータ通信を行い、吹き付け装置1の動作を遠隔制御すると良い。
【0058】
<<吹き付け装置の吹き付けパターン>>
次に、吹き付け装置1による吹き付けパターンの一例として、柱及び梁に吹き付け材を吹き付けるパターンについて、図8A図8Fに基づいて説明する。
図8Aは、柱B1、柱・梁接合部B2に吹き付け材を吹き付ける様子を示す図である。
吹き付け制御部94は、柱B1、柱・梁接合部B2の側面に吹き付けヘッド40を正対させた向きで、吹き付けヘッド40を上下方向及び左右方向に動作させることで、吹き付け材を吹き付ける。
具体的には、吹き付け制御部94は、昇降ユニット30を制御して吹き付けヘッド40を昇降させ、または第1回転ユニット50を制御して吹き付けヘッド40を上下に揺動させる。また、吹き付け制御部94は、移動ユニット60を制御して吹き付けヘッド40を左右方向にスライド移動させる。
なお、第2回転ユニット70を制御して吹き付けヘッド40を左右に揺動させても良い。
【0059】
図8Bは、梁B3の一端部に吹き付け材を吹き付ける様子を示す図である。
吹き付け制御部94は、梁B3の側面に吹き付けヘッド40を正対させた向きで、吹き付けヘッド40を上下方向及び左右方向に動作させることで、吹き付け材を吹き付ける。
具体的には、吹き付け制御部94は、まず第2回転ユニット70を制御して移動ユニット60らを90度回転させ、移動ユニット60を梁B3に沿わせた方向(吹き付け装置1の左右方向)に延ばす。そして、吹き付け制御部94は、第1回転ユニット50を制御して吹き付けヘッド40を上下に揺動させる。また、移動ユニット60を制御して吹き付けヘッド40を左右方向にスライド移動させ、または走行ユニット20を制御して吹き付けヘッド40を左右方向に移動させる。
【0060】
図8Cは、吹き付けヘッド40及びホース130を左右反転させる様子を示す図である。
梁B3の一端部から中間部に吹き付け材を吹き付けた後、吹き付け制御部94は、第2回転ユニット70を制御して移動ユニット60らを90度回転させ、移動ユニット60を梁B3とは直交方向(吹き付け装置1の前後方向)に延ばす。そして、移動ユニット60を制御して吹き付けヘッド40を前方向に移動させる。
このとき、吹き付けヘッド40及び第1ホース130は、上面視において装置本体10よりも外側に配置される。
そして、吹き付け制御部94は、第1回転ユニット50を制御して吹き付けヘッド40(ヘッド噴射口44)及び第1ホース130を左右に反転させる。
なお、吹き付け制御部94は、吹き付けヘッド40が上面視において装置本体10と重なる位置に配置されるときには、吹き付けヘッド40を左右反転させないように制御する。
【0061】
図8Dは、吹き付けヘッド40を左右反転させて梁B3の中間部に吹き付け材を吹き付ける様子を示す図である。
吹き付け制御部94は、梁B3の側面に吹き付けヘッド40を正対させた向きで、吹き付けヘッド40を上下方向及び左右方向に動作させることで、吹き付け材を吹き付ける。
具体的には、吹き付け制御部94は、第2回転ユニット70を制御して移動ユニット60らを90度回転させ、移動ユニット60を梁B3に沿わせた方向に延ばす。
そして、吹き付け制御部94は、第1回転ユニット50を制御して吹き付けヘッド40を上下に揺動させる。また、移動ユニット60を制御して吹き付けヘッド40を左右方向にスライド移動させる。
【0062】
図8Eは、梁B3の他端部に吹き付け材を吹き付ける様子を示す図である。
吹き付け制御部94は、第2回転ユニット70を制御して移動ユニット60らを45度回転させ、移動ユニット60を梁B3に対し傾けた方向に延ばす。
そして、吹き付け制御部94は、第1回転ユニット50を制御して吹き付けヘッド40を上下に揺動させる。また、吹き付け制御部94は、移動ユニット60を制御して吹き付けヘッド40を左右方向にスライド移動させる。
【0063】
図8Fは、奥側の柱B1、柱・梁接合部B2に吹き付け材を吹き付ける様子を示す図である。
吹き付け制御部94は、奥側の柱B1、柱・梁接合部B2の側面に吹き付けヘッド40を正対させた向きで、吹き付けヘッド40を上下方向及び左右方向に動作させることで、吹き付け材を吹き付ける。
具体的には、吹き付け制御部94は、第2回転ユニット70を制御して移動ユニット60らをさらに45度回転させ、移動ユニット60を梁B3とは直交方向に延ばす。
そして、吹き付け制御部94は、第1回転ユニット50を制御して吹き付けヘッド40を上下に揺動させる。また、移動ユニット60を制御して吹き付けヘッド40を左右方向にスライド移動させる。
なお、第2回転ユニット70を制御して吹き付けヘッド40を左右に揺動させても良い。
【0064】
上記吹き付け制御により、ホース130、160を絡ませることなく、またホース130、160と装置本体10を極力接触させることなく、シンプルな動作で柱B1、梁B3及び奥側の柱B1に吹き付け材を吹き付けることができる。具体的には、吹き付けヘッド40及びホース130、160を装置本体10に接触させることなく左右反転させることができる。
なお、吹き付け制御部94は、上記吹き付けパターンを逸脱したことを検出したとき、あるいは意図しない事由によって上記吹き付けパターンを行うことができないと判断したときに、これら駆動ユニット50、60、70の動作を停止させ、警告音を発出しても良い。具体的には、装置本体10、吹き付けヘッド40又はホース130等に不図示の検出センサ(例えば接触センサ)が取り付けられると良い。
【0065】
以上の構成により、従来よりも吹き付け作業の効率を高めた吹き付け装置1(吹き付けシステムS)を実現できる。特に、吹き付け作業を行うときに、吹き付けヘッド40に接続されるホース130、160を好適に取り回すことができる。
【0066】
<その他の実施形態>
上記実施形態では、図1に示すように、吹き付け装置1が自動走行(自律走行)するものあったが、特に限定されなくても良い。
例えば、作業者が吹き付け装置1を遠隔操作することで、吹き付け装置1の各駆動ユニットを動作させ、所定の吹き付け位置に吹き付け材を吹き付けることとしても良い。
【0067】
上記実施形態では、図4に示すように、吹き付けヘッド40がヘッド取り付け部材45を介して第1回転ユニット50に取り付けられており、ロボットアームを不要としたシンプルな構成となっているが、これに限定されなくても良い。
例えば、第1回転ユニット50の代わりにロボットアームを採用しても良い(第1回転ユニット50をロボットアームとしても良い)。
【0068】
上記実施形態では、オペレータ端末300(吹き付け装置1)が読み取り可能な記録媒体に吹き付けプログラムが記憶されており、オペレータ端末300(吹き付け装置1)が当該プログラムを読み出して実行することによって処理が実行される。ここでオペレータ端末300が読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。
そのほか、オペレータ端末300を利用して専用ソフトを起動させて、ウェブブラウザ上で吹き付けプログラムが実行されても良い。
【0069】
上記実施形態では、主として本発明に係る吹き付け装置及び吹き付けシステムに関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0070】
S 吹き付けシステム
1 吹き付け装置
10 装置本体
20 走行ユニット
21 車輪
22 車輪軸
23 駆動モータ
30 昇降ユニット
31 固定フレーム
32 第1可動フレーム
33 第1駆動モータ
34 第2可動フレーム
35 第2駆動モータ
36 第3可動フレーム
37 第3駆動モータ
40 吹き付けヘッド
41 ヘッド本体
42 ホース接続部
43 第2ホース接続部
44 ヘッド噴射口
45 ヘッド取り付け部材
45a 本体部
45b 保持部
50 第1回転ユニット(回転ユニット)
51 筐体
52 駆動プーリ
53 従動プーリ
54 ベルト
55 駆動モータ
60 移動ユニット
61 固定レール
62 可動部
63 駆動モータ
64 移動規制部
70 第2回転ユニット
71 支持ブラケット
72 固定ベース(固定盤)
73 回転板(回転テーブル)
74 駆動モータ
80 エアコンプレッサ
85 プリズム(検出対象物)
88 バッテリ
90 制御装置
91 記憶部
92 通信部
93 位置情報取得部
94 吹き付け制御部
94a ヘッド移動制御部
94b 噴射制御部
100 噴射装置
110 解綿機
120 ブロア
130 第1ホース(ホース)
140 ミキサー
150 ポンプ
160 第2ホース
200 測量装置(トータルステーション)
201 装置本体
202 制御コントローラ
210 記憶部
211 通信部
212 測量実行部
300 オペレータ端末
310 記憶部
311 通信部
312 位置推定部
B 建物
B1 柱
B2 柱・梁接合部
B3 梁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F