(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176089
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】全固体電池及び全固体電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20241212BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20241212BHJP
H01M 50/533 20210101ALI20241212BHJP
H01M 50/474 20210101ALI20241212BHJP
H01M 50/545 20210101ALI20241212BHJP
H01M 50/536 20210101ALI20241212BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20241212BHJP
H01M 50/477 20210101ALI20241212BHJP
H01M 50/109 20210101ALI20241212BHJP
H01M 50/153 20210101ALI20241212BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20241212BHJP
H01M 50/56 20210101ALI20241212BHJP
H01M 50/566 20210101ALI20241212BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M50/533
H01M50/474
H01M50/545
H01M50/536
H01M50/489
H01M50/477
H01M50/109
H01M50/153
H01M50/184 E
H01M50/56
H01M50/566
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094325
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 剛
【テーマコード(参考)】
5H011
5H021
5H029
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA01
5H011CC06
5H011DD06
5H011DD13
5H011GG02
5H011HH02
5H011HH09
5H021AA02
5H021EE02
5H021EE29
5H021EE37
5H029AJ11
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK18
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AL18
5H029AM12
5H029BJ02
5H029CJ03
5H029CJ05
5H043AA01
5H043BA20
5H043CA03
5H043CB04
5H043CB09
5H043EA06
5H043EA22
5H043HA02E
5H043HA05E
5H043HA11E
5H043HA13E
5H043JA08E
(57)【要約】
【課題】耐衝撃性を向上できる全固体電池及び全固体電池の製造方法を提供する。
【解決手段】全固体電池は、電池セルと、電極体の一部を覆うように電池セルに装着された衝撃吸収材と、空間が形成され、空間に衝撃吸収材が装着された電池セルが収容された外装体と、を備える。正極タブ及び負極タブのそれぞれは、1つの曲げ点で折り返された折り返し形状又は複数の曲げ点で交互に反対方向に折り返された折り返し形状を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、及び、前記正極及び前記負極の間に介在する固体電解質を含み、正極側面及び負極側面を有する電極体と、前記電極体の前記正極側面に付けられた正極タブと、前記電極体の前記負極側面に付けられた負極タブと、を含む電池セルと、
前記電極体の一部を覆うように前記電池セルに装着された弾性部材と、
空間が形成され、当該空間に前記弾性部材が装着された前記電池セルが収容された外装体と、
を備え、
前記正極タブ及び前記負極タブのそれぞれは、1つの曲げ点で折り返された折り返し形状又は複数の曲げ点で交互に反対方向に折り返された折り返し形状を有する、
全固体電池。
【請求項2】
請求項1に記載の全固体電池において、
前記外装体は、負極端子として機能する第1外装部と、正極端子を含む第2外装部とにより構成され、
前記電池セルは、前記第1外装部と前記第2外装部との間に配置されており、
前記正極タブの一端部は前記電極体の前記正極側面に溶接又はロウ付けされ、前記正極タブの他端部は前記正極側面と対向する領域にある前記正極端子に溶接又はロウ付けされ、
前記負極タブの一端部は前記第1外装部の前記負極側面と対向する領域に溶接又はロウ付けされ、前記負極タブの他端部は前記電極体の前記負極側面に溶接又はロウ付けされた
全固体電池。
【請求項3】
請求項1に記載の全固体電池において、
前記外装体は、負極端子として機能する第1外装部と、正極端子として機能する第2外装部とにより構成され、
前記電池セルは、前記第1外装部と前記第2外装部との間に配置されており、
前記正極タブの一端部は前記電極体の前記正極側面に溶接又はロウ付けされ、前記正極タブの他端部は前記第2外装部の前記正極側面と対向する領域に溶接又はロウ付けされ、
前記負極タブの一端部は前記第1外装部の前記負極側面の対向する領域に溶接又はロウ付けされ、前記負極タブの他端部は前記電極体の前記負極側面に溶接又はロウ付けされた、
全固体電池。
【請求項4】
請求項1に記載の全固体電池において、
前記弾性部材は、衝撃吸収材であり、
前記衝撃吸収材は、前記正極側面の前記正極タブとの接触部分及び前記負極側面の前記負極タブとの接触部分を避けて前記電極体の一部を覆う、
全固体電池。
【請求項5】
請求項1に記載の全固体電池において、
前記電極体は、互いに向かい合う前記正極側面及び前記負極側面と、前記正極側面と前記負極側面との間の側面とを含む形状であり、
前記弾性部材は、衝撃吸収材であり、
前記衝撃吸収材は、前記電極体の前記正極側面の周端部、前記負極側面の周端部及び前記側面の一部を少なくとも含む前記電極体の一部を覆う、
全固体電池。
【請求項6】
請求項5に記載の全固体電池において、
前記外装体は、開口部を有する金属の円筒缶と、正極端子及びガスケットを含み、前記円筒缶の前記開口部を塞ぐように前記円筒缶と組み合わさる金属キャップと、により構成され、
前記電池セルは、前記円筒缶と前記金属キャップとの間に配置され、
前記正極タブは、前記金属キャップと前記電極体の前記正極側面との間に配置され、
前記負極タブは、前記円筒缶の底面と前記電極体の前記負極側面との間に配置された、
全固体電池。
【請求項7】
請求項6に記載の全固体電池において、
前記正極タブの一端部は前記電極体の前記正極側面に溶接又はロウ付けされ、前記正極タブの他端部は前記正極端子に溶接又はロウ付けされ、
前記負極タブの一端部は前記円筒缶の前記底面に溶接又はロウ付けされ、前記負極タブの他端部は前記電極体の前記負極側面に溶接又はロウ付けされた、
全固体電池。
【請求項8】
請求項7に記載の全固体電池において、
前記正極タブは、溶接又はロウ付け箇所を含む前記正極タブの一部の面が、前記正極端子の面と接触した状態になっており、
前記負極タブは、溶接又はロウ付け箇所を含む前記負極タブの一部の面が、前記円筒缶の面と接触した状態になっている、
全固体電池。
【請求項9】
請求項7に記載の全固体電池において、
前記衝撃吸収材は、前記電極体の一部として、前記電極体の前記正極側面の周端部、前記電極体の前記負極側面の周端部及び前記電極体の前記側面を覆う、
全固体電池。
【請求項10】
請求項7に記載の全固体電池において、
前記衝撃吸収材は、前記電極体の一部として、前記電極体の前記正極側面の周端部、前記電極体の前記負極側面の周端部及び前記電極体の前記側面の一部を覆う、
全固体電池。
【請求項11】
請求項7に記載の全固体電池において、
前記正極タブ及び前記負極タブのそれぞれは、複数の曲げ点で交互に反対方向に折り返された前記折り返し形状を有し、
前記折り返し形状は、3つの曲げ点で交互に反対方向に折り返された前記折り返し形状である、
全固体電池。
【請求項12】
請求項1に記載の全固体電池において、
前記正極タブ及び前記負極タブは、同一の形状を有する、
全固体電池。
【請求項13】
請求項1に記載の全固体電池において、
前記正極タブ及び前記負極タブは、互いに異なる形状を有する、
全固体電池。
【請求項14】
請求項13に記載の全固体電池において、
前記正極タブの幅及び前記負極タブの幅が異なり、
前記正極タブ及び前記負極タブのうち、幅が長い方の曲げ点の数を、幅が短い方の曲げ点の数より多くする、
全固体電池。
【請求項15】
請求項1に記載の全固体電池において、
前記電池セルは、
前記電極体として、前記正極を構成する正極材料を含む正極層を含む正極側層と、前記負極を構成する負極材料を含む負極層を含む負極側層と、前記固体電解質を構成する固体電解質材料を含む固体電解質層とが、前記固体電解質層が前記正極側層と前記負極側層との間に介在するように積層された電池成形体を含む、
全固体電池。
【請求項16】
正極、負極、及び、前記正極及び前記負極の間に介在する固体電解質を含み、正極側面及び負極側面を有する電極体と、前記電極体の前記正極側面に付けられた正極タブと、前記電極体の前記負極側面に付けられた負極タブと、を含む電池セルと、
前記電極体の一部を覆うように前記電池セルに装着された衝撃吸収材と、
空間が形成され、当該空間に前記衝撃吸収材が装着された前記電池セルが収容される負極端子となる円筒缶及び正極端子を含む又は正極端子として機能する金属キャップで構成される外装体と、
を備え、
前記正極タブ及び前記負極タブのそれぞれは、1つの曲げ点で折り返された折り返し形状又は複数の曲げ点で交互に反対方向に折り返された折り返し形状を有する全固体電池
を製造する全固体電池の製造方法であって、
前記衝撃吸収材が装着された前記電極体の前記正極側面に前記正極タブの一端部を溶接又はロウ付けにより接合し、前記金属キャップの前記正極端子又は正極端子として機能する前記金属キャップに仮曲げ状態の前記正極タブの他端部を溶接又はロウ付けにより接合することと、
前記円筒缶の底面に仮曲げ状態の前記負極タブの一端部を溶接又はロウ付けにより接合し、前記衝撃吸収材が装着された前記電極体の前記負極側面に前記負極タブの他端部を溶接又はロウ付けにより接合することと、
前記金属キャップ及び前記円筒缶の間に、前記正極タブ、前記電極体及び前記負極タブが配置されるように位置を合わせることと、
前記金属キャップと前記円筒缶との間の距離が近くなるように、前記金属キャップ及び前記円筒缶の少なくとも一方に力を加えることにより、前記金属キャップ及び前記円筒缶を組み合わせると共に、仮曲げ状態の前記正極タブを曲げ、仮曲げ状態の前記負極タブを曲げることにより、前記折り返し形状を形成することと、
を含む、
全固体電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池及び全固体電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
全固体電池を実用化するための開発が活発に行われている。例えば、特許文献1が開示する全固体電池は、硫化物固体電解質を有した電極体と、電極体を収容する外装体と、電極体と外装体との間に配置され、加熱によりガスを生じることなく膨張する材料から得られる加圧部材と、を備える。この特許文献1の開示によれば、硫化物全固体電池であっても、外装体に密閉してから加熱して加圧力を得ることができるため、加圧部材を効率よく配置し、生産性を向上することができる。
【0003】
また、特許文献2が開示するコイン形の全固体電池では、正極缶および負極缶と電極体との間に、黒鉛の成形体で構成され可撓性を有する導電性多孔質部材(カーボンシート)が配置される。この特許文献2の開示によれば、電池の組み立て時に電極(主に負極)にかかる応力が緩和され、電極の割れを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-156220号公報
【特許文献2】国際公開第2020/66323号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
全固体電池では、耐衝撃性を向上することが求められている。そこで、本発明の目的の一つは、耐衝撃性を向上できる全固体電池及び全固体電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の全固体電池は、正極、負極、及び、前記正極及び前記負極の間に介在する固体電解質を含み、正極側面及び負極側面を有する電極体と、前記電極体の前記正極側面に付けられた正極タブと、前記電極体の前記負極側面に付けられた負極タブと、を含む電池セルと、前記電極体の一部を覆うように前記電池セルに装着された弾性部材と、空間が形成され、当該空間に前記弾性部材が装着された前記電池セルが収容された外装体と、を備え、前記正極タブ及び前記負極タブのそれぞれは、1つの曲げ点で折り返された折り返し形状又は複数の曲げ点で交互に反対方向に折り返された折り返し形状を有する。
【0007】
本発明の全固体電池の製造方法は、正極、負極、及び、前記正極及び前記負極の間に介在する固体電解質を含み、正極側面及び負極側面を有する電極体と、前記電極体の前記正極側面に付けられた正極タブと、前記電極体の前記負極側面に付けられた負極タブと、を含む電池セルと、前記電極体の一部を覆うように前記電池セルに装着された衝撃吸収材と、空間が形成され、当該空間に前記衝撃吸収材が装着された前記電池セルが収容される負極端子となる円筒缶及び正極端子を含む又は正極端子として機能する金属キャップで構成される外装体と、を備え、前記正極タブ及び前記負極タブのそれぞれは、1つの曲げ点で折り返された折り返し形状又は複数の曲げ点で交互に反対方向に折り返された折り返し形状を有する全固体電池を製造する全固体電池の製造方法であって、前記衝撃吸収材が装着された前記電極体の前記正極側面に前記正極タブの一端部を溶接又はロウ付けにより接合し、前記金属キャップの前記正極端子又は正極端子として機能する前記金属キャップに仮曲げ状態の前記正極タブの他端部を溶接又はロウ付けにより接合することと、前記円筒缶の底面に仮曲げ状態の前記負極タブの一端部を溶接又はロウ付けにより接合し、前記衝撃吸収材が装着された前記電極体の前記負極側面に前記負極タブの他端部を溶接又はロウ付けにより接合することと、前記金属キャップ及び前記円筒缶の間に、前記正極タブ、前記電極体及び前記負極タブが配置されるように位置を合わせることと、前記金属キャップと前記円筒缶との間の距離が近くなるように、前記金属キャップ及び前記円筒缶の少なくとも一方に力を加えることにより、前記金属キャップ及び前記円筒缶を組み合わせると共に、仮曲げ状態の前記正極タブを曲げ、仮曲げ状態の前記負極タブを曲げることにより、前記折り返し形状を形成することと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐衝撃性を向上できる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載された何れかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は本発明の第1実施形態に係る全固体電池の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は本発明の第1実施形態に係る全固体電池の構成例を説明するための分解斜視図である。
【
図3】
図3は
図1のI-I線に沿った全固体電池の断面図である。
【
図4】
図4は衝撃吸収材付き電池セルの分解斜視図である。
【
図5A】
図5Aは電池セルを正極側から見た場合の斜視図である。
【
図5B】
図5Bは電池セルを負極側から見た場合の斜視図である。
【
図6C】
図6Cは正極タブの形状及び負極タブの形状の他の例を説明するための図である。
【
図7】
図7は衝撃吸収材を説明するための斜視図である。
【
図8A】
図8Aは正極タブ及び負極タブによる作用効果を説明するための図である。
【
図8B】
図8Bは正極タブ及び負極タブによる作用効果を説明するための図である。
【
図9A】
図9Aは全固体電池の製造方法を説明するための図である。
【
図9B】
図9Bは全固体電池の製造方法を説明するための図である。
【
図9C】
図9Cは全固体電池の製造方法を説明するための図である。
【
図9D】
図9Dは全固体電池の製造方法を説明するための図である。
【
図9E】
図9Eは全固体電池の製造方法を説明するための図である。
【
図10】
図10は本発明の第2実施形態に係る全固体電池の衝撃吸収材付き電池セルの斜視図である。
【
図11】
図11は本発明の第2実施形態に係る全固体電池の衝撃吸収材付き電池セルの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<<本発明の概要>>
まず本発明の理解を容易にするため、本発明の概要について説明する。電解液を使用していない全固体電池は、安全性に優れ、且つ、低温~高温などの幅広い温度環境に対応でき、且つ、長寿命であることが長所になっている。
【0011】
一方で、全固体電池を構成する部材の一つである電極は、粉末材料を圧縮成型することにより作製されるため、衝撃に対して脆くなりやすい傾向にあるので、全固体電池では、耐衝撃性(外部から受ける衝撃に対する耐久性)が低くなってしまう可能性がある。従って、全固体電池では、耐衝撃性を向上することが求められる。全固体電池の耐衝撃性を向上することにより、衝撃が懸念されるために使用を控えていた使用対象(使用場面)にも、全固体電池を使用することができるようになる。従って、全固体電池を使用する対象を広げることができる。
【0012】
全固体電池の耐衝撃性を向上させる方法の一例としては、粉末材料の電極の強度を向上させる方法が挙げられる。粉末材料の電極の強度を向上させる方法としては、例えば、電極を硬化させる(即ち、硬くすることにより保護する)、又は、電極を軟化させる(即ち、柔らかさで割れないように保護する)ためにバインダを添加する(添加量を増大)などの方法が挙げられる。しかし、この方法では、電池容量の減少及び出力の低下が生じ得る。
【0013】
全固体電池の耐衝撃性を向上させる方法の他の例としては、外装ケース(アルミ缶など)を硬化(堅く)することにより、衝撃から守る方法が挙げられる。しかし、この方法では、全固体電池に加わる衝撃を吸収することができないので、耐衝撃性能に対して限界がある。即ち、外装ケース内の電池セル(特に電極体)を衝撃から守るには限界がある。
【0014】
そこで、本願発明者等が鋭意検討したところ、上記例のような方法とは異なる方法で、全固体電池の耐衝撃性を向上できる構成を見出した。即ち、本発明では、全固体電池に加わる衝撃を衝撃吸収材で吸収し、更に、特定のタブの構造(形状)を採用することにより、全固体電池の電極体に加わる衝撃を和らげる。これにより、本発明では、全固体電池の耐衝撃性を向上できる。
【0015】
また、特許文献2のコイン電池の電池セルと電池蓋(正極端子)との間、又は、電池セルと円筒缶(負極端子)との間の給電方法としては、弾性電導材(カーボンクッションなど)を利用し、電池セルと電池蓋との間に弾性電導材を配し、厚み方向に干渉させて面接触で給電している。
【0016】
この場合、強い衝撃により、(1)及び(2)のような不具合が生じ得る。
(1)接触が数百μs(マイクロセック)瞬間的に離れ給電が断する。
(2)接触面が擦れ、接触抵抗が上昇し、電池からの出力電圧が下がってしまう。
【0017】
この(1)及び(2)の不具合に対処するため、電池セルと電池蓋(正極端子)とを電気的に接続するための正極タブを用い、電池セルと正極タブの一端部とを直結(溶接又はロウ付けなどにより接合)し、電池蓋(正極端子)と正極タブの他端部とを直結(溶接又はロウ付けなどにより接合)する。同様に、電池セルと円筒缶(負極端子)とを電気的に接続するための負極タブを用い、電池セルと負極タブの一端部とを直結(溶接又はロウ付けなどにより接合)し、円筒缶(負極端子)と負極タブの他端部とを直結(溶接又はロウ付けなどにより接合)する。これにより、(1)及び(2)の発生を抑制し、更に、衝撃吸収材で覆っている。
【0018】
衝撃吸収材で覆われた電池セルは、その衝撃により動くので、直結した部位が外れ損傷してしまうことが生じ得る。
【0019】
これに対して、本発明では、正極タブ及び負極タブを特定の構造(形状)を採用することにより、直結した部位が外れ損傷し難くなっている。即ち、本発明では、正極タブ及び負極タブを特定の構造(形状)を採用することにより、衝撃に対する(直結部位(接合部位))の耐衝撃性も向上できる。
【0020】
<<実施形態>>
以下、本発明の各実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施形態の全図において、同一又は対応する部分には同一の符号を付す場合がある。
【0021】
<<第1実施形態>>
<構成>
本発明の第1実施形態に係る全固体電池について説明する。
図1は第1実施形態に係る全固体電池の外観を示す斜視図である。
図2は第1実施形態に係る全固体電池の構成例を説明するための分解斜視図である。
図3は
図1のI-I線に沿った全固体電池の断面図である。
【0022】
図1に示すように、第1実施形態に係る全固体電池は、円筒形の形状を有する。なお、全固体電池は、円筒形の形状に限定されることない。例えば、全固体電池は、角形等の他の形状であってもよい。
図2に示すように、全固体電池は、金属キャップ100と、開口部を有する円筒缶200と、円筒缶200に収容される電池セル310及び衝撃吸収材320を含む衝撃吸収材付き電池セル300と、を含む。全固体電池は、電池セル310を外装する外装体として金属キャップ100及び円筒缶200で構成される外装体を使用している。なお、円筒缶200は、便宜上、「第1外装部」と称呼される場合がある。金属キャップ100は、便宜上、「第2外装部」と称呼される場合がある。
【0023】
図3に示すように、金属キャップ100には、厚さ方向に貫通する開口101が正極端子110及びガスケット120を配設するために形成されている。開口101には、正極端子110及びガスケット120が設けられている。正極端子110は、開口101の中心側に配設されている。ガスケット120は、正極端子110を囲み、且つ、正極端子110と開口101の開口形成面との間の隙間を封止するように設けられている。ガスケット120は、金属キャップ100と正極端子110とを絶縁する機能を有する。
【0024】
正極端子110は、導電性を有する金属などで構成される。ガスケット120は、絶縁性を有するセラミック(非金属無機固体材料)、絶縁性を有するプラスチックなどで構成される。ガスケット120の材料としては、より具体的には、耐熱性を向上させる観点から、例えば、セラミックとして、ガラス焼結材を使用できる。この場合、ガスケット120は、ガラス封止技術を利用して作製される。また、ガスケット120の材料としては、例えば、ポリプロピレン、ナイロンなどを使用できるほか、電池の用途との関係で耐熱性が要求される場合には、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)などのフッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル(PEE)、ポリスルフォン(PSF)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの融点が240℃を超える耐熱樹脂を使用することもできる。
【0025】
正極端子110の下面は、開口101から全固体電池の内側に露出し、正極端子110の上面は、開口101から全固体電池の外側に露出する。開口101から全固体電池の内側に露出する正極端子110の下面には、電池セル310の正極タブ312aの一部が接触し、正極端子110と正極タブ312aとが電気的に接続される。
【0026】
(円筒缶)
円筒缶200は、例えば、金属により構成され、底面と底面から高さ方向に延びる側面とを含む円筒形状を有し、底面に対向する面が開口しており、衝撃吸収材付き電池セル300が収容される空間が形成されている。円筒缶200の底面には、電池セル310の負極タブ312bの一部が接触し、円筒缶200と負極タブ312bとが電気的に接続される。
【0027】
全固体電池では、上述のように、電池セル310の正極タブ312aと正極端子110とが電気的に接続され、金属キャップ100の開口101から露出される正極端子110が正極端子(正極)として機能し、電池セル310の負極タブ312bと円筒缶200とが電気的に接続され、円筒缶200が負極端子(負極)として機能する。一方、正極、負極の方向は、電池セル310を裏返しに実装することも可能となる。当該実装する場合、電池セル310の正極タブ312bと円筒缶200とが電気的に接続され、円筒缶200が正極端子(正極)として機能し、電池セル310の負極タブ312aと負極端子110とが電気的に接続され、金属キャップ100の開口101から露出される負極端子110が負極端子(負極)として機能する。
【0028】
(衝撃吸収材付き電池セル)
図4は衝撃吸収材付き電池セル300の分解斜視図である。
図4に示すように、衝撃吸収材付き電池セル300は、電池セル310と、衝撃吸収材320と、を含む。衝撃吸収材付き電池セル300は、電池セル310に衝撃吸収材320が装着された部品である(
図2を参照。)。
【0029】
(電池セル)
図5Aは電池セルを正極側から見た斜視図である。
図5Bは電池セルを負極側から見た斜視図である。
図5Cは
図5Aにおける線II-IIに沿った電池セルの断面図である。
【0030】
電池セル310は、電極体311と、電極体311の正極側の面(正極側面)に付けられた正極タブ312aと、電極体311の負極側の面(負極側面)に付けられた負極タブ312bと、を含む。なお、以下において、正極タブ312a及び負極タブ312bは、これらを特に区別する必要がない場合、「給電タブ312」と称呼される。電極体311は、向かい合う正極側面及び負極側面と、正極側面と負極側面との間の側面とを含む円柱状を有する。電極体311は、電池成形体で構成される。電池成形体は、正極側層313と、負極側層314と、正極側層313と負極側層314との間に介在する固体電解質層315とを含む。電池成形体は、固体電解質層315が正極側層313及び負極側層314の間に介在するように積層された積層構造を有する。なお、電極体311は、電池成形体が外装材で覆われた構成であってもよい。
【0031】
(正極側層)
正極側層313は、正極層316と正極集電体層317とを含む。正極側層313は、正極層316のみで構成されていてもよく、正極層316と正極集電体層317とこれらの層以外の他の機能を有する他の層とを含んでいてもよい。正極側層313は、正極層316と他の層とを含んでいてもよい。
【0032】
正極層316は、例えば、正極活物質、導電助剤および固体電解質などを含む正極合剤の成形体で構成される。正極活物質は、従来から知られているリチウムイオン二次電池に用いられている正極活物質、すなわち、Liイオンを吸蔵及び放出可能な活物質であれば特に制限はない。正極活物質の具体例としては、LiMxMn2-xO4(ただし、Mは、Li、B、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Al、Sn、Sb、In、Nb、Mo、W、Y、RuおよびRhよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、0.01≦x≦0.5)で表されるスピネル型リチウムマンガン複合酸化物、LixMn(1-y-x)NiyMzO(2-k)Fl(ただし、Mは、Co、Mg、Al、B、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Zr、Mo、Sn、Ca、SrおよびWよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、0.8≦x≦1.2、0<y<0.5、0≦z≦0.5、k+l<1、-0.1≦k≦0.2、0≦l≦0.1)で表される層状化合物、LiCo1-xMxO2(ただし、Mは、Al、Mg、Ti、Zr、Fe、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Nb、Mo、Sn、SbおよびBaよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、0≦x≦0.5)で表されるリチウムコバルト複合酸化物、LiNi1-xMxO2(ただし、Mは、Al、Mg、Ti、Zr、Fe、Co、Cu、Zn、Ga、Ge、Nb、Mo、Sn、SbおよびBaよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、0≦x≦0.5)で表されるリチウムニッケル複合酸化物、LiM1-xNxPO4(ただし、Mは、Fe、MnおよびCoよりなる群から選択される少なくとも1種の元素で、Nは、Al、Mg、Ti、Zr、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Nb、Mo、Sn、SbおよびBaよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、0≦x≦0.5)で表されるオリビン型複合酸化物、Li4Ti5O12で表されるリチウムチタン複合酸化物などが挙げられ、これらのうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
正極活物質の平均粒子径は、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、また、10μm以下であることが好ましく、8μm以下であることがより好ましい。なお、正極活物質は一次粒子でも一次粒子が凝集した二次粒子であってもよい。平均粒子径が前記範囲の正極活物質を使用すると、固体電解質との界面を多くとれるため、電池の負荷特性がより向上する。
【0034】
正極活物質は、その表面に、固体電解質との反応を抑制するための反応抑制層を有していることが好ましい。
【0035】
正極合剤の成形体内において、正極活物質と固体電解質とが直接接触すると、固体電解質が酸化して抵抗層を形成し、成形体内のイオン伝導性が低下する虞がある。正極活物質の表面に、固体電解質との反応を抑制する反応抑制層を設け、正極活物質と固体電解質との直接の接触を防止することで、固体電解質の酸化による成形体内のイオン伝導性の低下を抑制することができる。
【0036】
反応抑制層は、イオン伝導性を有し、正極活物質と固体電解質との反応を抑制できる材料で構成されていればよい。反応抑制層を構成し得る材料としては、例えば、Liと、Nb、P、B、Si、Ge、TiおよびZrよりなる群から選択される少なくとも1種の元素とを含む酸化物、より具体的には、LiNbO3などのNb含有酸化物、Li3PO4、Li3BO3、Li4SiO4、Li4GeO4、LiTiO3、LiZrO3などが挙げられる。反応抑制層は、これらの酸化物のうちの1種のみを含有していてもよく、また、2種以上を含有していてもよく、さらに、これらの酸化物のうちの複数種が複合化合物を形成していてもよい。これらの酸化物の中でも、Nb含有酸化物を使用することが好ましく、LiNbO3を使用することがより好ましい。
【0037】
反応抑制層は、正極活物質100質量部に対して0.1~1.0質量部で表面に存在することが好ましい。この範囲であれば正極活物質と固体電解質との反応を良好に抑制することができる。正極活物質の表面に反応抑制層を形成する方法としては、ゾルゲル法、メカノフュージョン法、CVD法、PVD法などが挙げられる。
【0038】
正極合剤における正極活物質の含有量は、60~95質量%であることが好ましい。
【0039】
正極の導電助剤としては、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛)、グラフェン、カーボンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブなどの炭素材料などが挙げられる。正極合剤における導電助剤の含有量は、1~10質量%であることが好ましい。
【0040】
正極合剤に含有させる固体電解質は、リチウムイオン伝導性を有していれば特に限定されず、例えば、硫化物系固体電解質、水素化物系固体電解質、ハロゲン化物系固体電解質、酸化物系固体電解質などが使用できる。
【0041】
硫化物系固体電解質としては、Li2S-P2S5、Li2S-SiS2、Li2S-P2S5-GeS2、Li2S-B2S3系ガラスなどの粒子が挙げられる他、近年、Liイオン伝導性が高いものとして注目されているthio-LISICON型のもの〔Li10GeP2S12、Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3などの、Li12-12a-b+c+6d-eM1
3+a-b-c-dM2
bM3
cM4
dM5
12-eXe(ただし、M1はSi、GeまたはSn、M2はPまたはV、M3はAl、Ga、YまたはSb、M4はZn、Ca、またはBa、M5はSまたはSおよびOのいずれかであり、XはF、Cl、BrまたはI、0≦a<3、0≦b+c+d≦3、0≦e≦3〕や、アルジロダイト型のもの〔Li6PS5Clなどの、Li7-f+gPS6-xClx+y(ただし、0.05≦f≦0.9、-3.0f+1.8≦g≦-3.0f+5.7)で表されるもの、Li7-hPS6-hCliBrj(ただし、h=i+j、0<h≦1.8、0.1≦i/j≦10.0)で表されるものなど〕も使用することができる。
【0042】
水素化物系固体電解質としては、例えば、LiBH4、LiBH4と下記のアルカリ金属化合物との固溶体(例えば、LiBH4とアルカリ金属化合物とのモル比が1:1~20:1のもの)などが挙げられる。前記固溶体におけるアルカリ金属化合物としては、ハロゲン化リチウム(LiI、LiBr、LiF、LiClなど)、ハロゲン化ルビジウム(RbI、RbBr、RbF、RbClなど)、ハロゲン化セシウム(CsI、CsBr、CsF、CsClなど)、リチウムアミド、ルビジウムアミドおよびセシウムアミドよりなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0043】
ハロゲン化物系固体電解質としては、例えば、単斜晶型のLiAlCl4、欠陥スピネル型または層状構造のLiInBr4、単斜晶型のLi6-3mYmX6(ただし、0<m<2かつX=ClまたはBr)などが挙げられ、その他にも例えば国際公開第2020/070958や国際公開第2020/070955に記載の公知のものを使用することができる。
【0044】
酸化物系固体電解質としては、例えば、ガーネット型のLi7La3Zr2O12、NASICON型のLi1+OAl1+OTi2-O(PO4)3、Li1+pAl1+pGe2-p(PO4)3、ペロブスカイト型のLi3qLa2/3-qTiO3などが挙げられる。
【0045】
これらの固体電解質の中でも、リチウムイオン伝導性が高いことから、硫化物系固体電解質が好ましく、LiおよびPを含む硫化物系固体電解質がより好ましく、特にリチウムイオン伝導性が高く、化学的に安定性の高いアルジロダイト型の硫化物系固体電解質がさらに好ましい。
【0046】
なお、固体電解質の平均粒子径は、粒界抵抗軽減の観点から、0.1μm以上であることが好ましく、0.2μm以上であることがより好ましく、一方、活物質と固体電解質との間での十分な接触界面形成の観点から、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。
【0047】
正極合剤における固体電解質の含有量は、正極内でのイオン伝導性をより高めて、電池の出力特性をより向上させる観点から、正極活物質の含有量を100質量部としたときに、10質量部以上であることが好ましく、30質量部以上であることがより好ましい。ただし、正極合剤中の固体電解質の量が多すぎると、他の成分の量が少なくなって、それらによる効果が小さくなる虞がある。よって、正極合剤における固体電解質の含有量は、正極活物質の含有量を100質量部としたときに、65質量部以下であることが好ましく、60質量部以下であることがより好ましい。
【0048】
正極集電体層317は、アルミニウム、ニッケルやステンレス鋼などの金属の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタル、発泡メタル、カーボンシートなどを用いることができる。
【0049】
正極合剤の成形体は、例えば、正極活物質、導電助剤および固体電解質、さらには必要に応じて添加されるバインダなどを混合して調製した正極合剤を、加圧成形などによって圧縮することで形成することができる。集電体を有する正極(即ち、正極層及び正極集電体層)の場合には、前記のような方法で形成した正極合剤の成形体を集電体と圧着するなどして貼り合わせることで製造することができる。正極合剤の成形体の厚み(集電体を有する正極の場合は、集電体の片面あたりの正極合剤の成形体の厚み。以下、同じ。)は、電池の高容量化の観点から、200μm以上であることが好ましい。また、正極合剤の成形体の厚みは、通常、2000μm以下である。
【0050】
(負極側層)
負極側層314は、負極層318と負極集電体層319とを含む。負極側層314は、負極層318のみで構成されていてもよく、負極層318と負極集電体層319とこれらの層以外の他の機能を有する他の層とを含んでいてもよい。負極側層314は、負極層318と他の層とを含んでいてもよい。
【0051】
負極層318は、例えば、負極活物質、導電助剤及び固体電解質などを含む負極合剤の成形体で構成される。
【0052】
負極活物質としては、例えば、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維などのリチウムを吸蔵及び放出可能な炭素系材料の1種または2種以上の混合物が用いられる。また、Si、Sn、Ge、Bi、Sb、Inなどの元素を含む単体、化合物およびその合金、リチウム含有窒化物またはリチウム含有酸化物などのリチウム金属に近い低電圧で充放電できる化合物、リチウム金属、リチウム/アルミニウム合金も、負極活物質として用いることができる。例えば、Li4Ti5O12やTiO2、NbO2.5-δ(0≦δ≦0.5)、MoO3-δ(0≦δ≦1)、WO3-δ(0≦δ≦1)、TiNb2O7などの金属酸化物、WS2、MoS2などの金属硫化物の1種または2種以上の混合物を、負極活物質として用いることもできる
固体電解質には、リチウムイオン伝導性を有していれば特に限定されず、例えば、正極層と同様、硫化物系固体電解質、水素化物系固体電解質、ハロゲン化物系固体電解質、酸化物系固体電解質などが使用できる。
【0053】
負極集電体層319は、アルミニウム、ニッケルやステンレス鋼などの金属の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタル、発泡メタル、カーボンシートなどを用いることができる。
【0054】
負極合剤の成形体は、例えば、負極活物質、導電助剤及び固体電解質、さらには必要に応じて添加されるバインダなどを混合して調製した負極合剤を、加圧成形などによって圧縮することで形成することができる。
【0055】
(固体電解質層)
固体電解質層315は、固体電解質を含む。固体電解質には、正極層に使用し得るものとして先に例示した各種の硫化物系固体電解質、水素化物系固体電解質および酸化物系固体電解質のうちの1種または2種以上を使用することができる。ただし、電池特性をより優れたものとするためには、硫化物系固体電解質を含有させることが望ましく、正極、負極および固体電解質層の全てに硫化物系固体電解質を含有させることがより望ましい。固体電解質層は、樹脂製の不織布などの多孔質体を支持体として有していてもよい。固体電解質層315は、固体電解質を加圧成形などによって圧縮する方法、固体電解質を溶媒に分散させて調製した固体電解質層形成用組成物を基材や正極、負極の上に塗布して乾燥し、必要に応じてプレス処理などの加圧成形を行う方法などで形成することができる。
【0056】
固体電解質層形成用組成物に使用する溶媒は、固体電解質を劣化させ難いものを選択することが好ましい。特に、硫化物系固体電解質や水素化物系固体電解質は、微少量の水分によって化学反応を起こすため、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、デカリン、トルエン、キシレンなどの炭化水素溶媒に代表される非極性非プロトン性溶媒を使用することが好ましい。特に、含有水分量を0.001質量%(10ppm)以下とした超脱水溶媒を使用することがより好ましい。また、三井・デュポンフロロケミカル社製の「バートレル(登録商標)」、日本ゼオン社製の「ゼオローラ(登録商標)」、住友3M社製の「ノベック(登録商標)」などのフッ素系溶媒、並びに、ジクロロメタン、ジエチルエーテルなどの非水系有機溶媒を使用することもできる。固体電解質層の厚みは、10~300μmであることが好ましい。
【0057】
(給電タブ)
給電タブ312は、導電性を有する材料で構成される。給電タブ312は、例えば、金属等の導電性を有する材料で構成された板状体である。電池セル310の正極側の面に付けられた正極タブ312aは、電池セル310の正極端子として機能する。電池セル310の負極側の面に付けられた負極タブ312bは、電池セル310の負極端子として機能する。
【0058】
図6Aは正極タブの形状を説明するための図である。
図6Bは負極タブの形状を説明するための図である。
図6Aに示すように、正極タブ312aは、真っ直ぐな板状体が複数の曲げ点(本例では2つの曲げ点)で交互に反対方向に曲げられる(折り返される)ことにより形成された折り返し形状を有する。
【0059】
具体的に述べると、正極タブ312aでは、一端から曲げ点P1までの部分に対して、曲げ点P1で、曲げ点P1から曲げ点P2までの部分が一主面MS1に向かう方向に折り返されており、曲げ点P2で、曲げ点P2から他端までの部分が他主面MS2に向かう方向に折り返されている(即ち、隣り合う曲げ点P1及び曲げ点P2で交互に反対方向に折り返されている。)。
【0060】
このような正極タブ312aは、第1の平坦部312a1と、第1の曲げ部312a2と、第2の平坦部312a3と、第2の曲げ部312a4と、第3の平坦部312a5と、を含む。
【0061】
第1の平坦部312a1及び第3の平坦部312a5は、同じまたは略同じ長さを有し、第2の平坦部312a3は、第1の平坦部312a1及び第3の平坦部312a5より長くなっている。
【0062】
第1の曲げ部312a2は、例えば、円の左半分を切り欠いた略半円弧状であり、第2の曲げ部312a4は、円の右半分を切り欠いた略半円弧状となっている。なお、曲げ部の形状は、略円弧状に限定されるものではない。第1の平坦部312a1と第2の平坦部312a3との間に隙間が形成され、第2の平坦部312a3と第3の平坦部312a5との間に隙間が形成されている。なお、この隙間を形成する隣接し対向する平坦部は、使用状態に応じて一部が接触した状態となっていてもよい。
【0063】
図6Bに示すように、負極タブ312bは、正極タブ312aと同様の形状を有する。負極タブ312bは、真っ直ぐな板状体が複数の曲げ点(本例では2つの曲げ点)で交互に反対方向に曲げられる(折り返される)ことにより形成された折り返し形状を有する。
【0064】
具体的に述べると、負極タブ312bでは、一端から曲げ点P11までの部分に対して、曲げ点P11で、曲げ点P11から曲げ点P12までの部分が一主面MS1に向かう方向に折り返されており、曲げ点P12で、曲げ点P12から他端までの部分が他主面MS2に向かう方向に折り返されている(即ち、隣り合う曲げ点P11及び曲げ点P12で交互に反対方向に折り返されている。)。
【0065】
このような負極タブ312bは、第1の平坦部312b1と、第1の曲げ部312b2と、第2の平坦部312b3と、第2の曲げ部312b4と、第3の平坦部312b5と、を含む。
【0066】
第1の平坦部312b1及び第3の平坦部312b5は、略同じ長さを有し、第2の平坦部312b3は、第1の平坦部312b1及び第3の平坦部312b5より長くなっている。
【0067】
第1の曲げ部312b2は、例えば、円の左半分を切り欠いた略半円弧状であり、第2の曲げ部312b4は、円の右半分を切り欠いた略半円弧状となっている。なお、曲げ部の形状は、略円弧状に限定されるものではない。第1の平坦部312b1と第2の平坦部312b3との間に隙間が形成され、第2の平坦部312b3と第3の平坦部312b5との間に隙間が形成されている。なお、この隙間を形成する隣接し対向する平坦部は、使用状態に応じて一部が接触した状態となっていてもよい。
【0068】
正極タブ312a及び負極タブ312bが複数の曲げ点で交互に反対方向に折り返された折り返し形状を形成することで、正極タブ312a及び負極タブ312bの柔軟性及び弾性を向上させることによって、電極体311の変位に追従して正極タブ312a及び負極タブ312bが変形しやすくなるので、上下方向及び左右方向の衝撃を吸収する機能を付与することができる。これにより、電池セル310の電極体311に加わる衝撃を吸収して、電極体311に加わる衝撃を緩和することができる。
【0069】
また、正極タブ312aの第1の平坦部312a1の一部(例えば、一端部)は、電極体311の正極側面に溶接(レーザ溶接、スポット溶接など)、ロウ付けなどにより接合され、正極タブ312aの第3の平坦部312a5の一部(例えば、他端部)は、金属キャップ100の内側の正極端子110(電極体311の正極側面に対向する領域にある正極端子110)の下面に溶接(レーザ溶接、スポット溶接など)、ロウ付けなどにより接合され、且つ、第3の平坦部312a5の面は、金属キャップ100の内側の正極端子110の下面に接触している。溶接又はロウ付けされた部分によって、全固体電池に対して高い衝撃が加わった場合であっても、正極端子110と正極タブ312aとの瞬断、電極体311と正極タブ312aとの瞬断、接触面が擦れ接触抵抗が上昇し、電池からの出力電圧が下がってしまうこと及びチャタリングが生じ難くなっている。
【0070】
更に、負極タブ312bの第3の平坦部312b5の一部(例えば、他端部)は、電極体311の負極側面に溶接(レーザ溶接、スポット溶接など)、ロウ付けなどにより接合され、負極タブ312bの第1の平坦部312b1の一部(例えば、一端部)は、円筒缶200の内側の底面(底面の電極体311の負極側面に対向する領域)に溶接(レーザ溶接、スポット溶接など)、ロウ付けなどにより接合され、且つ、第1の平坦部312b1の面は、円筒缶200の内側の面に接触している。溶接又はロウ付けされた部分によって、全固体電池に対して、高い衝撃が加わった場合であっても、円筒缶200と負極タブ312bとの瞬断、電極体311と負極タブ312bとの瞬断、接触面が擦れ接触抵抗が上昇し、電池からの出力電圧が下がってしまうこと及びチャタリングが生じ難くなっている。
【0071】
一方で、衝撃吸収材320で覆われた電池セルは、その衝撃により動くので、直結した部位が外れ損傷してしまうことが生じ得る。これに対して、正極タブ312a及び負極タブ312bが複数の曲げ点で交互に反対方向に折り返された折り返し形状を形成することにより、衝撃に対する溶接又はロウ付け部位(直結部位)の耐衝撃性も向上できる。
【0072】
なお、正極タブ312a及び負極タブ312bの形状は、
図6A及び
図6Bに示す、2つの曲げ点で交互に反対方向に曲げられた(折り返された)折り返し形状に限定されるものでない。
図6Cに示すように、正極タブ312a及び負極タブ312bの形状は、例えば、3つの曲げ点で交互に反対方向に折り返された折り返し形状であってもよい。即ち、正極タブ312a及び負極タブ312bの形状は、真っ直ぐな板状体が3つの曲げ点で交互に反対方向に曲げられる(折り返される)ことにより形成された折り返し形状であってもよい。この形状の場合、正極タブ312aを電極体311及び金属キャップ100に溶接又はロウ付けするときに、正極タブ312aを境界として一方側及び他方側に分けた場合に、同じ側から溶接作業又はロウ付け作業ができるので、作業容易の観点から好ましい。同様に、負極タブ312bを電極体311及び円筒缶200に溶接又はロウ付けするときに、負極タブ312bを境界として一方側及び他方側に分けた場合に、同じ側から溶接作業又はロウ付け作業ができるので、作業容易の観点から好ましい。
【0073】
また、正極タブ312a及び負極タブ312bの形状は、例えば、1つの曲げ点で折り返された折り返し形状又は4つ以上の曲げ点で交互に反対方向に折り返された折り返し形状であってもよい。即ち、正極タブ312a及び負極タブ312bの形状は、真っ直ぐな板状体が1つの曲げ点で曲げられる(折り返される)ことにより形成された折り返し形状であってもよく、4つ以上の曲げ点で交互に反対方向に曲げられる(折り返される)ことにより形成された折り返し形状であってもよい。
【0074】
これらの形状であれば、
図6A及び
図6Bに示す形状と同様、給電タブ312の柔軟性及び弾性を向上させることにより、電極体311の変位に追従できるので、電池セル310の電極体311に加わる衝撃を吸収して、電極体311に加わる衝撃を緩和することができる。なお、より衝撃を吸収できる観点からは、1つの曲げ点で折り返された折り返し形状より、複数の曲げ点で交互に反対方向に折り返された折り返し形状の方が好ましい。
【0075】
(衝撃吸収材)
衝撃吸収材320は、衝撃吸収性を有する材料で構成される。衝撃吸収性を有する材料としては、シリコーンを主原料とする非常に柔らかいゲル状の材料、ブチルゴム、シリコンゴム、発泡クッション等の低反発軟質材などが挙げられる。本実施の形態において、衝撃吸収材320としては、衝撃などを吸収できる弾性部材を用いることもできる。
【0076】
図7は衝撃吸収材の構成例を説明するための斜視図である。
図7に示すように、衝撃吸収材320は、一端面及び他端面が開放された筒形状(例えば、円筒形状など)になっている。また、衝撃吸収材320は、一端面だけが開放された筒形状になってもよいし、矩形のシート状になってもよい。衝撃吸収材320は、内周面に囲まれる空間SP1に電池セル310の電極体311が入り、電極体311の給電タブ312との接触部分(正極側面及び負極側面の給電タブ312との接触部分)を避けて、電極体311の正極側面の周端部、負極側面の周端部及び側面を覆うように、電池セル310に装着可能な形状となっている。
【0077】
より具体的に述べると、例えば、筒形状の衝撃吸収材320の内周面は、凹状の溝形状になっている。溝形状は、溝の底部320aと、底部320aから内側に延びる第1壁部320bと、第1壁部320bと対向し、底部320aから第1壁部320bと略平行に内側に延びる第2壁部320cと、を含む形状となっている。第1壁部320bと第2壁部320cとの間の距離は、電池セル310の電極体311の厚さより僅かに長くなっている。
【0078】
電池セル310の電極体311の正極側面の周端部及び負極側面の周端部並びに側面が、衝撃吸収材320の第1壁部320bと第2壁部320cとの間に入り込み、電極体311の側面が溝の底部320aと僅かな隙間を有して対向し、且つ、衝撃吸収材320の対向する第1壁部320b及び第2壁部320cが、電極体311の正極側面の周端部及び下側の周端部に接触し、且つ、電極体311の正極側面の周端部及び負極側面の周端部が第1壁部320b及び第2壁部320cに挟み込まれた状態で、電池セル310が空間SP1に配置される(
図2及び
図3を参照。)。空間SP1に配置された電池セル310の電極体311の正極タブ312a及び負極タブ312bとの接触部分は、衝撃吸収材320に覆われない状態となっている(
図2及び
図3を参照。)。
【0079】
このような状態で、衝撃吸収材320が電池セル310に装着されることによって、衝撃吸収材320は、電極体311の給電タブ312との接触部分を避けて、電極体311の正極側面の周端部、負極側面の周端部及び電極体311の側面を、衝撃吸収材320の第1壁部320b、第2壁部320c及び底部320aで覆う。これにより、衝撃吸収材320は、電池セル310の電極体311に加わる衝撃を吸収し、電極体311に加わる衝撃を緩和することができる。更に、衝撃吸収材320が電池セル310に装着された状態において、衝撃吸収材320は、電極体311の給電タブ312との接触部分を避けて、電極体311の一部を覆うので、電極体311と給電タブ312との電気的接続の妨げにならずに耐衝撃性を向上できる。
【0080】
以下、第1実施形態に係る全固体電池の作用効果について詳細に説明する。上述したように、第1実施形態に係る全固体電池では、電池セル310の電極体311の正極側面の周端部、負極側面の周端部及び側面を覆うように衝撃吸収材320が装着されている。この衝撃吸収材320は、衝撃吸収性を有する材料で構成される。従って、全固体電池の外部から電池セル310の電極体311に加わる衝撃が、衝撃吸収材320によって吸収されるので、全固体電池の耐衝撃性を向上できる。
【0081】
更に、全固体電池は、正極タブ312a及び負極タブ312bのそれぞれが複数の曲げ点で交互に反対方向に折り返された形状を有する。これによっても、全固体電池は、衝撃吸収性を向上できるので、全固体電池の耐衝撃性を向上できる。
【0082】
更に、正極タブ312aは、その一部が正極端子110に溶接又はロウ付けされ、面と面とで接触しているので、高い衝撃が加わった場合であっても、導通状態を維持できる。更に、負極タブ312bは、その一部が円筒缶200の底面に溶接又はロウ付けされ、面と面とで接触しているので、高い衝撃が加わった場合であっても、導通状態を維持できる。
【0083】
更に、正極タブ312aは、その一端部が正極端子110に溶接又はロウ付けされ、その他端部が電極体311の正極側面に溶接又はロウ付けされることによって、全固体電池に対して高い衝撃が加わった場合であっても、正極端子110と正極タブ312aとの瞬断、電極体311と正極タブ312aとの瞬断、接触面が擦れ接触抵抗が上昇し、電池からの出力電圧が下がってしまうこと及びチャタリングが生じ難くなっている。
【0084】
更に、負極タブ312bは、その一端部が円筒缶200の底面に溶接又はロウ付けされ、その他端部が電極体311の負極側面に溶接又はロウ付けされることによって、全固体電池に対して、高い衝撃が加わった場合であっても、円筒缶200と負極タブ312bとの瞬断、電極体311と負極タブ312bとの瞬断、接触面が擦れ接触抵抗が上昇し、電池からの出力電圧が下がってしまうこと及びチャタリングが生じ難くなっている。
【0085】
一方で、衝撃吸収材320で覆われた電池セルは、その衝撃により動くので、直結した部位が外れ損傷してしまうことが生じ得る。これに対して、正極タブ312a及び負極タブ312bが複数の曲げ点で交互に反対方向に折り返された折り返し形状を形成することにより、衝撃に対する溶接又はロウ付け部位(直結部位)の耐衝撃性も向上できる。
【0086】
図8A及び
図8Bを用いて、この正極タブ312a及び負極タブ312bによる作用効果を説明する。
図8Aに示すように、全固体電池に対する衝撃による電池セル310の電極体311の左右方向の移動(矢印a1)に対し、正極タブ312a及び負極タブ312bの折り返し形状が、移動変位(歪み)に追従して変形することにより、電極体311に加わる衝撃を受けとめて衝撃を吸収することで、電極体311に対して加わる衝撃を緩和する。
【0087】
このとき、正極タブ312aの第3の平坦部312a5と正極端子110とが接触している状態を維持し、負極タブ312bの第1の平坦部312b1と円筒缶200とが接触している状態を維持するので、円筒缶200と負極タブ312bとの導通状態を維持する。
【0088】
正極タブ312aの第3の平坦部312a5の面と正極端子110の面とは、一部が溶接又はロウ付けされ、面と面とが密接しているので、高い衝撃に対しても、正極端子110と正極タブ312aとの導通状態が維持できるようになっている。同様に、負極タブ312bの第1の平坦部312b1の面と円筒缶200の面とは、一部が溶接又はロウ付けされ、面と面とが密接しているので、左右方向の高い衝撃に対しても、円筒缶200と負極タブ312bとの導通状態が維持できるようになっている。
【0089】
更に、「正極タブ312a及び正極端子110並びに正極タブ312a及び電極体311の溶接又はロウ付けされた部分」と、「負極タブ312b及び円筒缶200並びに負極タブ312b及び電極体311の溶接又はロウ付けされた部分」とによって、全固体電池に対して左右方向に高い衝撃が加わった場合であっても、正極端子110と正極タブ312aとの瞬断、電極体311と正極タブ312aとの瞬断、円筒缶200と負極タブ312bとの瞬断、電極体311と負極タブ312bとの瞬断、接触面が擦れ接触抵抗が上昇し、電池からの出力電圧が下がってしまうこと及びチャタリングが生じ難くなっている。一方で、衝撃吸収材320で覆われた電池セル310は、その衝撃により左右方向に動くので、直結した部位が外れ損傷してしまうことが生じ得る。これに対して、正極タブ312a及び負極タブ312bの折り返し形状が、移動変位(歪み)に追従して変形することにより、衝撃に対する溶接又はロウ付け部位(直結部位)の耐衝撃性も向上できる。
【0090】
図8Bに示すように、全固体電池に対する衝撃による電極体311の上下方向の移動(矢印b1)に対し、正極タブ312a及び負極タブ312bの折り返し形状が、移動変位(歪み)に追従して変形することにより、電極体311に加わる衝撃を受けとめて衝撃を吸収することで、電極体311に対して加わる衝撃を緩和する。
【0091】
このとき、正極タブ312aの第3の平坦部312a5と正極端子110とが接触している状態を維持し、負極タブ312bの第1の平坦部312b1と円筒缶200とが接触している状態を維持するので、円筒缶200と負極タブ312bとの導通状態を維持する。
【0092】
正極タブ312aの第3の平坦部312a5の面と正極端子110の面とは、一部が溶接又はロウ付けされ、面と面とが密接しているので、高い衝撃に対しても、正極端子110と正極タブ312aとの導通状態が維持できるようになっている。同様に、負極タブ312bの第1の平坦部312b1の面と円筒缶200の面とは、一部が溶接又はロウ付けされ、面と面とが密接しているので、上下方向の高い衝撃に対しても、円筒缶200と負極タブ312bとの導通状態が維持できるようになっている。
【0093】
更に、「正極タブ312a及び正極端子110並びに正極タブ312a及び電極体311の溶接又はロウ付けされた部分」と、「負極タブ312b及び円筒缶200並びに負極タブ312b及び電極体311の溶接又はロウ付けされた部分」とによって、全固体電池に対して上下方向に高い衝撃が加わった場合であっても、正極端子110と正極タブ312aとの瞬断、電極体311と正極タブ312aとの瞬断、円筒缶200と負極タブ312bとの瞬断、電極体311と負極タブ312bとの瞬断、接触面が擦れ接触抵抗が上昇し、電池からの出力電圧が下がってしまうこと及びチャタリングが生じ難くなっている。一方で、衝撃吸収材320で覆われた電池セル310は、その衝撃により上下方向に動くので、直結した部位が外れ損傷してしまうことが生じ得る。これに対して、正極タブ312a及び負極タブ312bの折り返し形状が、移動変位(歪み)に追従して変形することにより、衝撃に対する溶接又はロウ付け部位(直結部位)の耐衝撃性も向上できる。
【0094】
<全固体電池の製造方法>
第1実施形態に係る全固体電池の製造方法について説明する。まず金属キャップ100、円筒缶200、電極体311、衝撃吸収材320、真っ直ぐな板状の正極タブ312a及び負極タブ312bを用意する。正極タブ312aを所定の2か所の曲げ点P1及びP2にて仮曲げ状態まで曲げ、更に、一端部及び他端部の接合対象部分を確保するために所定箇所で曲げる。負極タブ312bを所定の2か所の曲げ点P11及びP12にて仮曲げ状態まで曲げ、更に、一端部及び他端部の接合対象部分を確保するために所定箇所で曲げる。衝撃吸収材320を電極体311に装着する。
【0095】
次に、
図9A乃至
図9Fに示すように、金属キャップ100を、正極タブ312aを介して衝撃吸収材付き電池セル300に積み重ねて組み立て、その組み立て品を、負極タブ312bを介して円筒缶200に積み重ねて組み立て、最後に、正極タブ312a及び負極タブ312bを介して積み重ねるように組み立てた金属キャップ100、衝撃吸収材付き電池セル300及び円筒缶200を、組み合わせることにより、全固体電池を作製する。給電タブ312が、複数の曲げ点で交互に反対方向に折り返された折り返し形状を有するので、このような積み重ね組み立てを可能にする。
【0096】
以下、
図9A乃至
図9Fに示す工程を詳細に説明する。
図9Aに示すように、仮曲げ状態の正極タブ312aの他端部の接合対象部分を溶接(レーザ溶接、スポット溶接など)、ロウ付けなどにより金属キャップ100の正極端子110に接合した後、金属キャップ100を正極タブ312aを介して衝撃吸収材付き電池セル300に積み重ねて、仮曲げ状態の正極タブ312aの一端部の接合対象部分を溶接(レーザ溶接、スポット溶接など)、ロウ付けなどによって、衝撃吸収材320が装着された電極体311の正極側面に接合する。
【0097】
次に、
図9B及び
図9Cに示すように、
図9Aの組み立て部品を、円筒缶200の上方に配し、仮曲げ状態の負極タブ312bの他端部の接合対象部分を、溶接(レーザ溶接、スポット溶接など)、ロウ付けなどにより、
図9Aの組み立て部品の電極体311の負極側面に接合する。その後、
図9Dに示すように、仮曲げ状態の負極タブ312bの一端部の接合対象部分を、溶接(レーザ溶接、スポット溶接など)、ロウ付けなどにより円筒缶200の底面に接合し、
図9Cに示す状態の組み立て部品(円筒缶200を除く)を、負極タブ312bを介して、円筒缶200に積み重ねる。
【0098】
これにより、
図9Eに示すように、金属キャップ100と、衝撃吸収材320が装着された電極体311と、円筒缶200と、正極タブ312aと、負極タブ312bとを、金属キャップ100及び円筒缶200との間に、正極タブ312aと衝撃吸収材320が装着された電極体311と負極タブ312bとが配置されるように、位置合わせがなされる。その後、金属キャップ100及び円筒缶200がこれらの間の距離が短くなるように、金属キャップ100及び円筒缶200の少なくとも一方に力を加える(例えば、白抜き矢印にて示すように上下方向から金属キャップ100及び円筒缶200に力を加える)ことにより、円筒缶200と金属キャップ100とを組み合わせる。
【0099】
これにより、仮曲げ状態の正極タブ312aが、
図9Fに示す状態まで曲げられ、仮曲げ状態の負極タブ312bが、
図9Fに示す状態まで曲げられると共に、金属キャップ100と円筒缶200とが組み合わさり(篏合し)、
図9Fに示すように、第1実施形態に係る全固体電池が完成する。
【0100】
上記各実施形態において、円筒缶200を正極端子として機能させ、正極端子110または開口101が形成されていない金属キャップ100を負極端子として機能させるよう全固体電池が構成されるのであってもよい。この場合、正極タブ312aが円筒缶200側に配置され、負極タブ312bが金属キャップ100側に配置されるよう、電池セル310の向きを上下逆にし、正極タブ312aを円筒缶200と接続し、負極タブ312bを正極端子110または開口101が形成されていない金属キャップ100と接続すればよい。なお、この変形例においては、「正極端子110」は新たに「負極端子110」に変更される。
【0101】
<効果>
以上説明したように、本発明の第1実施形態に係る全固体電池は、電池セル310の電極体311に衝撃吸収材320が電極体311の一部を覆うように装着された構成を有するので、全固体電池に対して衝撃が加わった場合に、衝撃吸収材320によって衝撃を吸収することにより、電極体311に加わる衝撃を緩和できる。更に、第1実施形態に係る全固体電池は、正極タブ312aと負極タブ312bとが特定の折り返し形状を有することにより、全固体電池に対して衝撃が加わった場合に、正極タブ312a及び負極タブ312bが電極体311の変位(歪み)に追従して形状が変化することによって衝撃を吸収することで、電極体311に加わる衝撃を緩和できる。更に、第1実施形態に係る全固体電池は、正極タブ312aと負極タブ312bとが特定の折り返し形状を有することにより、衝撃に対する溶接又はロウ付け部位(直結部位)の耐衝撃性も向上できる。これらにより、第1実施形態に係る全固体電池は、耐衝撃性を向上できる。
【0102】
本発明の第1実施施形態に係る全固体電池は、従来から知られている一次電池や二次電池と同様の用途に適用し得るが、有機電解液に代えて固体電解質を有していることから耐熱性に優れており、高温に曝されるような用途に好ましく使用することができる。
【0103】
<<第2実施形態>>
本発明の第2実施形態に係る全固体電池について説明する。第2実施形態に係る全固体電池は、衝撃吸収材320の形状が第1実施形態の衝撃吸収材320の形状と異なる点のみにおいて、第1実施形態に係る全固体電池と相違点を有する。以下、この相違点を中心に説明する。
【0104】
図10は第2実施形態に係る全固体電池の衝撃吸収材付き電池セルの斜視図である。
図11は第2実施形態に係る衝撃吸収材付き電池セルの分解斜視図である。
【0105】
図10及び
図11に示すように、衝撃吸収材付き電池セル300は、電池セル310と、衝撃吸収材320と、を含む。衝撃吸収材付き電池セル300は、電池セル310に衝撃吸収材320が装着された部品である。
【0106】
衝撃吸収材320は、一端面だけまたは一端面及び他端面が開放され、側面が部分的に開放された略円筒形を有し、円環状の第1円環部320dと、第1円環部320dと間隔を有して対向する円環状の第2円環部320eと、側面に均等の間隔で設けられる第1側部320f1と、第2側部320f2と、第3側部320f3と、第4側部320f4と、を含む形状を有する。なお、以下の説明において、第1側部320f1乃至第4側部320f4は、これらを特に区別する必要がない場合、「側部320f」と称呼される。
【0107】
側部320fの内側の面は、凹状の溝形状になっている。溝形状は、溝の底部320gと、底部320gから内側に延びる第3壁部320hと、第3壁部320hと対向し、底部320gから第3壁部320hと略平行に内側に延びる第4壁部320iと、を含む形状となっている。第3壁部320hは、第1円環部320dの内側の面と同一の平面になるように一体的に繋がっており、第4壁部320iは、第2円環部320eの内側の面と同一の平面になるように一体的に繋がっている。
【0108】
衝撃吸収材320は、第1円環部320d、第2円環部320e、及び、第1側部320f1乃至第4側部320f4に囲まれる空間SP2に電池セル310の電極体311が入り、電極体311の給電タブ312との接触部分(正極側面及び負極側面の給電タブ312との接触部分)を避けて、電極体311の正極側面の周端部及び負極側面の周端部を覆い、且つ、電極体311の側面を部分的に覆うように、電池セル310に装着可能な形状となっている。
【0109】
電池セル310の電極体311の正極側面及び負極側面の周端部並びに側面が、衝撃吸収材320の「第1円環部320d及び第3壁部320h」と「第2円環部320e及び第4壁部320i」との間に入り込み、電極体311の側面が部分的に第1側部320f1乃至第4側部320f4の溝の底部320gと僅かな隙間を有して対向し、且つ、衝撃吸収材320の対向する「第1円環部320d及び第3壁部320h」と、「第2円環部320e及び第4壁部320i」とが、電極体311の正極側面の周端部及び負極側面の周端部に接触し、且つ、電極体311の正極側面の周端部及び負極側面の周端部が「第1円環部320d及び第3壁部320h」と、「第2円環部320e及び第4壁部320i」との間に挟み込まれた状態で、電池セル310が空間SP2に配置される。空間SP2に配置された電池セル310の正極タブ312a及び負極タブ312bとの接触部分は、衝撃吸収材320に覆われない状態となっている。
【0110】
このような状態で、衝撃吸収材320が電池セル310に装着されることによって、衝撃吸収材320は、電極体311の給電タブ312との接触部分を避けて、電池セル310の電極体311の正極側面の周端部及び負極側面の周端部、並びに、電極体311の側面の一部を、衝撃吸収材320の第1円環部320d、第2円環部320e及び第1側部314f1乃至第4側部314f4で覆う。これにより、衝撃吸収材320は、電池セル310の電極体311に加わる衝撃を吸収し、電極体311に加わる衝撃を緩和することができる。
【0111】
衝撃吸収材320は、第1円環部320dと第2円環部320eとの間、且つ、各側部320fとの間に空隙が形成されることによって、第1実施形態の衝撃吸収材320に比べて変形し易い形状になっている。従って、全固体電池に衝撃が加わると、衝撃吸収材320が衝撃を吸収することにより、電池セル310の電極体311に加わる衝撃を緩和できると共に、衝撃により電極体311の変位(歪み)に追従する衝撃吸収材320の変形によって衝撃を受けることで、電極体311に加わる衝撃を緩和できる。従って、第2実施形態の衝撃吸収材320は、第1実施形態の衝撃吸収材320に比べて、より高い衝撃吸収性を有している。これにより、第2実施形態に係る全固体電池は、第1実施形態に比べて耐衝撃性をより向上できる。更に、第2実施形態に係る全固体電池は、第1実施形態と同様、衝撃吸収材320が電池セル310に装着された状態において、衝撃吸収材320は、電極体311の給電タブ312との接触部分を避けて、電池セル310の一部を覆うので、電極体311と給電タブ312との電気的接続の妨げにならずに耐衝撃性を向上できる。
【0112】
<効果>
以上説明したように、本発明の第2実施形態に係る全固体電池は、第1実施形態と同様の効果を奏し、更に、第1実施形態に比べて耐衝撃性をより向上できる。
【0113】
<<変形例>>
本発明は上記各実施形態に限定されることなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。更に、上記各実施形態は、本発明の範囲を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0114】
上記各実施形態において挙げた数値、構造、形状、材料、原料、製造プロセス等は、あくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構造、形状、材料、原料、製造プロセス等を用いてもよい。
【0115】
上記各実施形態の構成、方法、工程、形状、材料、数値等は、本発明の範囲を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0116】
上記各実施形態において、正極タブ312aの折り返し形状及び負極タブ312bの折り返し形状は、互いに異なる形状であってもよい。なお、正極タブ312a及び負極タブ312bが同一の材料、同一の幅及び長さで構成される場合、剛性のバランスを確保する観点から、正極タブ312aの折り返し形状及び負極タブ312bの折り返し形状は、同一であることが好ましい。
【0117】
上記各実施形態において、給電タブ312の幅に応じて、折り返し回数(曲げ点の数)を増減させてもよい。例えば、給電タブ312を同一の材料で構成する場合、幅が大きいほど給電タブ312の剛性が高くなる傾向にあり、幅が小さいほど給電タブ312の剛性が低くなる傾向にある。このため、例えば、正極タブ312aと負極タブ312bとの幅が異なるなどにより、正極タブ312a及び負極タブ312bの剛性が互いに異なる場合、剛性のバランスを確保するために、正極タブ312aと負極タブ312bとの曲げ点の数が互いに異なるようにしてもよい。例えば、正極タブ312aの幅が負極タブ312bより幅が大きい場合、正極タブ312aの曲げ点の数を負極タブ312bの曲げ点の数より多くすることにより、正極タブ312a及び負極タブ312bの剛性のバランスをとるようにしてもよい。
【0118】
上記各実施形態において、金属キャップ100及び開口部を有する円筒缶200により構成された外装体に代えて、アルミニウムラミネートフィルムなどの金属ラミネートフィルムで構成されたラミネートフィルム外装体などの他の外装体を使用することもできる。
【0119】
上記各実施形態において、正極端子110及びガスケット120を省略し、且つ、開口101が形成されていない金属キャップ100と、円筒缶200との間をガスケットで絶縁し、金属キャップ100自体が正極端子として機能するようにしてもよい。この場合、金属キャップ100(例えば、金属キャップ100の電極体311の正極側面に対向する領域)に正極タブ312aの他端部が溶接又はロウ付けされる。
【0120】
本実施形態に係る技術では、電池セルを衝撃吸収材を介して円筒缶内に密閉して収容することで、空気中の水分と反応することが抑制され、耐衝撃性を向上できる。このような技術を提供する本発明によれば、国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の「9産業と技術革新の基盤をつくろう」に貢献できる。
【符号の説明】
【0121】
100…金属キャップ、110…正極端子、120…ガスケット、200…円筒缶、300…衝撃吸収材付き電池セル、310…電池セル、311…電極体、312a…正極タブ、312b…負極タブ、320…衝撃吸収材