(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176090
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094326
(22)【出願日】2023-06-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000103208
【氏名又は名称】コーセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 哲郎
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730BB23
5H730BB43
5H730BB57
5H730DD03
5H730DD41
5H730EE02
5H730EE07
5H730FG01
(57)【要約】
【課題】トランスに蓄積されたエネルギーを有効利用して、低消費電力化を実現することを可能にするスイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】スイッチング電源装置100は、トランス102の入力巻線102aに接続され、直列に接続されたクランプキャパシタ106a及びクランプスイッチング素子106bを備えるクランプ回路106と、クランプスイッチング素子106bを駆動するドライブ回路107と、クランプキャパシタ106a及びクランプスイッチング素子106bに接続された電流供給回路108とを備え、クランプキャパシタ106aに充電された電荷の少なくとも一部は、電流として電流供給回路108を通ってドライブ回路107に向かって流れ、ドライブ回路107は、クランプキャパシタ106aに充電された電荷の少なくとも一部によってクランプスイッチング素子106bを駆動する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力巻線及び出力巻線を有するトランスと、
前記入力巻線に接続されたメインスイッチング素子であって、前記メインスイッチング素子がオンにされた場合に、第1の入力電源の入力電圧が前記入力巻線に印加される、メインスイッチング素子と、
前記出力巻線に接続された出力回路であって、前記トランスを介して伝達されたエネルギーから出力電流及び出力電圧を生成する出力回路と、
直列に接続されたクランプキャパシタ及びクランプスイッチング素子を備えるクランプ回路であって、前記入力巻線に接続されたクランプ回路と、
前記クランプスイッチング素子を駆動するドライブ回路と
を備えるスイッチング電源装置であって、
前記クランプキャパシタ及び前記クランプスイッチング素子に接続された電流供給回路であって、前記クランプキャパシタに充電された電荷の少なくとも一部が、電流として前記電流供給回路を通って前記ドライブ回路に向かって流れ、前記ドライブ回路が前記クランプキャパシタに充電された電荷の少なくとも一部によって前記クランプスイッチング素子を駆動することを可能にする電流供給回路を更に備える、スイッチング電源装置。
【請求項2】
前記クランプスイッチング素子は、前記入力巻線のインダクタンスによる電流を、前記クランプスイッチング素子を通って前記クランプキャパシタに向かって流れさせて、前記クランプキャパシタを充電させることを可能にする、請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記スイッチング電源装置は、前記クランプキャパシタに充電された電荷の少なくとも一部を使用して、前記ドライブ回路に所定の電圧を印加させるように構成されている、請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記クランプキャパシタに対して並列に抵抗が接続されていない、請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記スイッチング電源装置は、前記メインスイッチング素子がオンにされ、前記クランプスイッチング素子がオフにされる第1の期間、前記第1の期間後に、前記メインスイッチング素子がオフにされる第2の期間、前記第2の期間後に、前記クランプスイッチング素子がオンにされる第3の期間、及び前記第3の期間後に、前記クランプスイッチング素子がオフにされる第4の期間を有し、前記第1の期間において、前記電流供給回路は、前記クランプキャパシタに充電された電荷の少なくとも一部を、電流として前記電流供給回路を通って前記ドライブ回路に向かって流れさせることを可能にする、請求項1~4の何れか一項に記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】
前記クランプスイッチング素子は、並列に接続されたトランジスタ及びダイオードを備え、前記ドライブ回路は、前記トランジスタを駆動する、請求項5に記載のスイッチング電源装置。
【請求項7】
前記ダイオードは、前記第2の期間において、前記入力巻線のインダクタンスによる電流を、前記ダイオードを通って前記クランプキャパシタに向かって流れさせることを可能にする、請求項6に記載のスイッチング電源装置。
【請求項8】
前記トランジスタは、前記第3の期間において、前記入力巻線のインダクタンスによる電流を、前記トランジスタを通って前記クランプキャパシタに向かって流れさせることを可能にする、請求項6に記載のスイッチング電源装置。
【請求項9】
前記スイッチング電源装置は、前記第4の期間において、前記メインスイッチング素子に印加される電圧を減少させるように構成されている、請求項5に記載のスイッチング電源装置。
【請求項10】
前記スイッチング電源装置は、前記第1の期間において、前記ドライブ回路に第2の入力電源の入力電圧を印加させるように構成されている、請求項5に記載のスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスに蓄積されたエネルギーを有効利用して、低消費電力化を実現することを可能にするスイッチング電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源装置、特にフライバック電力変換器は、入力巻線及び出力巻線を有するトランスと、入力巻線に接続されたメインスイッチング素子と、出力巻線に接続された出力回路とを備える。メインスイッチング素子がオンにされた場合に、入力電源の入力電圧が入力巻線に印加され、トランスにエネルギーが蓄積される。そして、メインスイッチング素子がオフにされた場合に、トランスの逆起電力を利用して、トランスに蓄積されたエネルギーが、整流平滑回路である出力回路によって出力電圧及び出力電流として出力される。このようなフライバック電力変換器においては、メインスイッチング素子がオフにされた後に、入力巻線の漏れインダクタンスに起因するサージエネルギーを処理するために、入力巻線及びメインスイッチング素子に接続されたクランプ回路が採用されている。
【0003】
特許文献1には、互いに直列に接続された第1の並列回路及び第2の並列回路を含むハイブリッド型クランプ回路であって、第1の並列回路が、並列に接続されたクランプスイッチング素子及びクランプダイオードを有し、第2の並列回路が、並列に接続されたクランプキャパシタ及びクランプ抵抗を有し、クランプスイッチング素子が周期的にオンオフにされる場合にはアクティブクランプ回路を提供し、クランプスイッチング素子がオフにされる場合にはパッシブクランプ回路を提供するハイブリッド型クランプ回路を備えるフライバック電力変換器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によるフライバック電力変換器において、ハイブリッド型クランプ回路がパッシブクランプ回路を提供している場合には、入力巻線の漏れインダクタンスに起因するサージエネルギーは、クランプキャパシタに並列に接続されたクランプ抵抗によって熱として損失されるだけであって、サージエネルギーを有効利用することができないという問題点がある。また、このようなフライバック電力変換器においては、第1の並列回路のクランプスイッチング素子を駆動するドライブ回路、及びドライブ回路に電流を供給するブートストラップ回路を備えるのが一般的であるが、ハイブリッド型クランプ回路がパッシブクランプ回路を提供している場合にも、ブートストラップ回路が動作し続け、更には、ドライブ回路が常時電流を消費しているために、ブートストラップ回路及びドライブ回路によってエネルギーが損失され続けるという問題点がある。また、特許文献1によるフライバック電力変換器において、ハイブリッド型クランプ回路がアクティブクランプ回路を提供している場合には、クランプ抵抗は不要であるにも関わらず、クランプ抵抗によってエネルギーが損失され続けるという問題点がある。また、特許文献1によるフライバック電力変換器は、メインスイッチング素子に対してゼロ電圧スイッチング(ZVS)によるソフトスイッチングを行うことによって、スイッチング損失が小さくなって、高周波でメインスイッチング素子を駆動することが可能であるが、このようなフライバック電力変換器において一般的である、クランプスイッチング素子を駆動するドライブ回路に電流を供給するブートストラップ回路を高周波で駆動すると、ブートストラップ回路のダイオードのスイッチング損失が大きくなるという問題点がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解決して、トランスに蓄積されたエネルギーを有効利用して、低消費電力化を実現することを可能にするスイッチング電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの観点によれば、スイッチング電源装置が、入力巻線及び出力巻線を有するトランスと、入力巻線に接続されたメインスイッチング素子であって、メインスイッチング素子がオンにされた場合に、第1の入力電源の入力電圧が入力巻線に印加される、メインスイッチング素子と、出力巻線に接続された出力回路であって、トランスを介して伝達されたエネルギーから出力電流及び出力電圧を生成する出力回路と、直列に接続されたクランプキャパシタ及びクランプスイッチング素子を備えるクランプ回路であって、入力巻線に接続されたクランプ回路と、クランプスイッチング素子を駆動するドライブ回路とを備え、スイッチング電源装置が、クランプキャパシタ及びクランプスイッチング素子に接続された電流供給回路であって、クランプキャパシタに充電された電荷の少なくとも一部が、電流として電流供給回路を通ってドライブ回路に向かって流れ、ドライブ回路がクランプキャパシタに充電された電荷の少なくとも一部によってクランプスイッチング素子を駆動することを可能にする電流供給回路を更に備える。
【0008】
本発明の一具体例によれば、スイッチング電源装置において、クランプスイッチング素子が、入力巻線のインダクタンスによる電流を、クランプスイッチング素子を通ってクランプキャパシタに向かって流れさせて、クランプキャパシタを充電させることを可能にする。
【0009】
本発明の一具体例によれば、スイッチング電源装置が、クランプキャパシタに充電された電荷の少なくとも一部を使用して、ドライブ回路に所定の電圧を印加させるように構成されている。
【0010】
本発明の一具体例によれば、スイッチング電源装置において、クランプキャパシタに対して並列に抵抗が接続されていない。
【0011】
本発明の一具体例によれば、スイッチング電源装置が、メインスイッチング素子がオンにされ、クランプスイッチング素子がオフにされる第1の期間、第1の期間後に、メインスイッチング素子がオフにされる第2の期間、第2の期間後に、クランプスイッチング素子がオンにされる第3の期間、及び第3の期間後に、クランプスイッチング素子がオフにされる第4の期間を有し、第1の期間において、電流供給回路が、クランプキャパシタに充電された電荷の少なくとも一部を、電流として電流供給回路を通ってドライブ回路に向かって流れさせることを可能にする。
【0012】
本発明の一具体例によれば、スイッチング電源装置において、クランプスイッチング素子が、並列に接続されたトランジスタ及びダイオードを備え、ドライブ回路が、トランジスタを駆動する。
【0013】
本発明の一具体例によれば、スイッチング電源装置において、ダイオードが、第2の期間において、入力巻線のインダクタンスによる電流を、ダイオードを通ってクランプキャパシタに向かって流れさせることを可能にする。
【0014】
本発明の一具体例によれば、スイッチング電源装置において、トランジスタが、第3の期間において、入力巻線のインダクタンスによる電流を、トランジスタを通ってクランプキャパシタに向かって流れさせることを可能にする。
【0015】
本発明の一具体例によれば、スイッチング電源装置が、第4の期間において、メインスイッチング素子に印加される電圧を減少させるように構成されている。
【0016】
本発明の一具体例によれば、スイッチング電源装置が、第1の期間において、ドライブ回路に第2の入力電源の入力電圧を印加させるように構成されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、クランプキャパシタに充電された電荷の少なくとも一部を、クランプスイッチング素子を駆動するドライブ回路に流れる電流として有効利用して、低消費電力化を実現することができる。
【0018】
なお、本発明の他の目的、特徴及び利点は、添付図面に関する以下の本発明の実施例の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態としてのスイッチング電源装置の概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態としての電流供給回路を備えるスイッチング電源装置の概略図である。
【
図3】本発明の別の実施形態としての電流供給回路を備えるスイッチング電源装置の概略図である。
【
図4】本発明の別の実施形態としての電流供給回路を備えるスイッチング電源装置の概略図である。
【
図5】
図1の実施形態のスイッチング電源装置のメインスイッチング素子及びクランプスイッチング素子を動作させるためのタイミングチャートである。
【
図6】
図1の実施形態のスイッチング電源装置のブートストラップ回路に流れる電流の向きを示す概略図である。
【
図7】本発明の別の実施形態としてのスイッチング電源装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0021】
図1~
図7を参照して、本発明の幾つかの実施形態としてのスイッチング電源装置100について説明する。スイッチング電源装置100は、入力巻線102a及び出力巻線102bを有するトランス102と、入力巻線102aに接続されたメインスイッチング素子103と、出力巻線102bに接続された出力回路104と、互いに直列に接続されたクランプキャパシタ106a及びクランプスイッチング素子106bを備えるクランプ回路106と、クランプスイッチング素子106bを駆動するドライブ回路107とを備える。メインスイッチング素子103がオンにされた場合に、第1の入力電源101の入力電圧V
11が入力巻線102aに印加され、トランス102にエネルギーが蓄積される。そして、メインスイッチング素子103がオフにされた場合に、トランス102の逆起電力を利用して、トランス102に蓄積されたエネルギーが放出されて、エネルギーがトランス102を介して入力側から出力側に伝達される。出力回路104は、整流平滑回路として機能し、整流素子104a及び平滑キャパシタ104bを備えてもよい。放出されたエネルギーは、出力回路104によって出力電圧V
0及び出力電流I
0として出力され、出力電圧V
0が、出力負荷105に印加される。
図1~
図4においては、整流素子104aはダイオードであるが、NMOSトランジスタ、等の他の整流素子であってもよい。
図1~
図4においては、メインスイッチング素子103は、NMOSトランジスタであるが、NMOSトランジスタに逆並列に接続されたダイオードを含んでもよく、ダイオードは、NMOSトランジスタの寄生ダイオードであってもよい。NMOSトランジスタは、ワイドバンドギャップ半導体ベースのトランジスタであってもよく、例えば、SiCベースのトランジスタ、GaNベースのトランジスタであってもよい。また、メインスイッチング素子103は、NPNトランジスタ、等の他のトランジスタであってもよく、そのトランジスタに逆並列に接続されたダイオードを含んでもよい。なお、スイッチング電源装置100は、
図1~
図4に示すようなフライバック型コンバータであってもよく、また、スイッチング電源装置100は、
図7に示すような、還流素子104c及びチョークコイル104dを更に備える出力回路104を備えるフォワード型コンバータ、等の他のコンバータであってもよい。
【0022】
スイッチング電源装置100は、入力巻線102aに接続されたクランプ回路106を備え、クランプ回路106は、互いに直列に接続されたクランプキャパシタ106a及びクランプスイッチング素子106bを備える。メインスイッチング素子103がオフにされた後に、入力巻線102aの漏れインダクタンスに蓄積されたエネルギーを含む、トランスに蓄積されたエネルギーの少なくとも一部をクランプキャパシタ106aに伝達することを可能にするために、クランプスイッチング素子106bはオンにされる。また、スイッチング電源装置100は、クランプスイッチング素子106bを駆動するドライブ回路107を備える。入力巻線102aとメインスイッチング素子103とが接続される接続点n1に、クランプスイッチング素子106bの一端が接続され、クランプ回路106は、入力巻線102aに並列に接続されてもよく、また、メインスイッチング素子103に並列に接続されてもよい。
【0023】
スイッチング電源装置100は、クランプキャパシタ106a及びクランプスイッチング素子106bに接続された電流供給回路108を更に備える。クランプキャパシタ106aとクランプスイッチング素子106bとが接続される接続点n
0に、電流供給回路108は接続されてもよい。また、電流供給回路108は、ドライブ回路107に接続点n
2において接続されてもよい。電流供給回路108は、クランプキャパシタ106aに充電された電荷の少なくとも一部を、電流として電流供給回路108を通ってドライブ回路107に向かって流れさせることを可能にし、ドライブ回路107がクランプキャパシタ106aに充電された電荷の少なくとも一部によってクランプスイッチング素子106bを駆動することを可能にする。具体的には、クランプキャパシタ106aが充電されて、接続点n
0の電位が接続点n
2の電位より高くなった場合に、
図1に示す電流の向き112のように、電流供給回路108は、電流が接続点n
0から接続点n
2に向かって流れることを可能にし、クランプキャパシタ106aからの電流は、電流供給回路108を通って流れた後、ドライブ回路107を通って流れ、クランプスイッチング素子106bを駆動するために使用される。なお、クランプキャパシタ106aからの電流は、ドライブ回路107がクランプスイッチング素子106bを駆動していない場合であっても、電流供給回路108を通って流れた後、ドライブ回路107を通って流れてもよい。なお、電流が電流供給回路108からクランプ回路106に向かって流れるのを防止するために、電流供給回路108とクランプ回路106との間に、逆流防止用のダイオードが設けられてもよく、また、電流がドライブ回路107から電流供給回路108に向かって流れるのを防止するために、ドライブ回路107と電流供給回路108との間に、逆流防止用のダイオードが設けられてもよい。
【0024】
メインスイッチング素子103がオフにされた後に、トランス102に蓄積されたエネルギーの少なくとも一部をクランプキャパシタ106aに伝達することを可能にするために、クランプスイッチング素子106bがオンにされ、入力巻線102aのインダクタンスによる電流を、クランプスイッチング素子106bを通ってクランプキャパシタ106aに向かって流れさせて、クランプキャパシタ106aを充電させることを可能にする。具体的には、メインスイッチング素子103がオフにされた後に、第1の入力電源101の入力電圧V11に入力巻線102aに印加された電圧が加えられた電位が接続点n1に生成される。接続点n1の電位が接続点n0の電位より高くなった場合に、クランプスイッチング素子106bは、電流が接続点n1から接続点n0に向かって流れることを可能にし、接続点n1の電位による電流は、クランプスイッチング素子106bを通って流れ、クランプキャパシタ106aを充電するために使用される。このように、トランス102に蓄積されたエネルギーの少なくとも一部は、クランプキャパシタ106aに伝達されて、クランプスイッチング素子106bを駆動するドライブ回路107に流れる電流として有効利用されることができ、更にスイッチング電源装置100の低消費電力化を実現することができる。
【0025】
クランプキャパシタ106aに対して並列に抵抗は接続されていない。クランプキャパシタ106aに対して並列に抵抗は接続された場合、エネルギーを単に熱として損失するだけであって、トランス102に蓄積されたエネルギーの少なくとも一部を有効利用することが妨げられる。なお、クランプキャパシタ106aに対して並列に抵抗が接続されたとしても、クランプキャパシタ106aからの電流が、電流供給回路108を通ってドライブ回路107に向かって流れる場合もあるが、トランス102に蓄積されたエネルギーの少なくとも一部が有効利用されることができず、クランプキャパシタ106aに対して並列に抵抗を接続しないことが望ましい。
【0026】
クランプキャパシタ106aに充電された電荷の少なくとも一部を使用して、所定の電圧が、ドライブ回路107に印加されてもよい。
図2に示すように、電流供給回路108は、電圧調整スイッチング素子108aを備えてもよい。電圧調整スイッチング素子108aは、例えば、ドライブ回路107に印加された電圧が所定の電圧以下になった場合にドライブ回路107によってオンにされて、電流が接続点n
0から接続点n
2に向かって流れることを可能にする。このように、クランプキャパシタ106aからの電流を使用して、ドライブ回路107は、ドライブ回路107に所定の電圧が印加されるように調整されることができる。また、電流供給回路108は、ドライブ回路107に印加される電圧を抑制するために、インダクタ108b及びダイオード108cを備えてもよい。
【0027】
また、
図3に示すように、電流供給回路108は、NPNトランジスタ108d、抵抗108e、及びツェナーダイオード108fを備えてもよい。NPNトランジスタ108dは、接続点n
0と接続点n
2との間の電圧がNPNトランジスタ108dのベース-エミッタ間の閾値電圧より大きくなった場合にオンにされて、電流が接続点n
0から接続点n
2に向かって流れることを可能にする。接続点n
0と接続点n
1との間の電圧がツェナーダイオード108fのツェナー電圧より大きくなった場合に、ツェナーダイオード108fがオンにされて、ツェナーダイオード108fのカソードとアノードとの間の電圧はツェナー電圧にクランプされ、ドライブ回路107に印加された電圧がツェナーダイオード108fのツェナー電圧からNPNトランジスタ108dのベース-エミッタ間の閾値電圧を引いた電圧より小さくなった場合に、NPNトランジスタ108dがオンにされて、電流が接続点n
0から接続点n
2に向かって流れることを可能にする。このように、クランプキャパシタ106aからの電流を使用して、ドライブ回路107は、ドライブ回路107にツェナーダイオード108fのツェナー電圧に基づく所定の電圧が印加されるように調整されることができる。
【0028】
また、
図4に示すように、電流供給回路108は、電流供給抵抗108g及びツェナーダイオード108hを備えてもよい。電流供給抵抗108gは、接続点n
0の電圧が接続点n
2の電圧より大きくなった場合に、電流が接続点n
0から接続点n
2に向かって流れることを可能にする。電流供給抵抗108gは、接続点n
2の電圧が接続点n
0の電圧より大きくなった場合にも、電流が接続点n
2から接続点n
0に向かって流れることを可能にするが、接続点n
0から接続点n
2に向かって流れる電流を正の向きとした場合に、スイッチング電源装置100が動作している間に、接続点n
0から接続点n
2に向かって流れる電流の平均値が必ず正(すなわち、0A以上)になるように、電流供給抵抗108gの抵抗値は設定されている。ドライブ回路107に印加された電圧がツェナーダイオード108hのツェナー電圧より大きくなった場合に、ツェナーダイオード108hがオンにされて、接続点n
2と接続点n
1との間の電圧がツェナー電圧にクランプされることを可能にする。このように、クランプキャパシタ106aからの電流を使用して、ドライブ回路107は、ドライブ回路107にツェナーダイオード108hのツェナー電圧に基づく所定の電圧が印加されるように調整されることができる。電流供給抵抗108gは、接続点n
0から接続点n
2に向かって電流を流れさせることを可能にする定電流回路、例えば、定電流ダイオードに置き換えられてもよい。
【0029】
スイッチング電源装置100は制御回路110を備え、制御回路110は、メインスイッチング素子103を制御し、また、ドライブ回路107を介してクランプスイッチング素子106bを制御する。
図1~
図4に示すように、メインスイッチング素子103及びクランプスイッチング素子106bがNMOSトランジスタである場合には、
図5に示すように、メインスイッチング素子103及びクランプスイッチング素子106bのNMOSトランジスタのゲート-ソース間電圧V
gsは制御されてもよい。制御回路110は、第1の期間において、メインスイッチング素子103がオンにされ、且つクランプスイッチング素子106bがオフにされ、第1の期間後の第2の期間において、メインスイッチング素子103がオフにされ、且つクランプスイッチング素子106bが引き続きオフにされ、第2の期間後の第3の期間において、メインスイッチング素子103が引き続きオフにされ、且つクランプスイッチング素子106bがオンにされ、第3の期間後の第4の期間において、メインスイッチング素子103が引き続きオフにされ、且つクランプスイッチング素子106bがオフにされるように、メインスイッチング素子103及びクランプスイッチング素子106bを制御し、第1~第4の期間は逐次繰り返される。
【0030】
制御回路110は、第1の期間において、メインスイッチング素子103がオンにされるようにメインスイッチング素子103を制御して、第1の入力電源101の入力電圧V
11が入力巻線102aに印加され、トランス102にエネルギーが蓄積される。スイッチング電源装置100は、ドライブ回路107がクランプスイッチング素子106bを駆動するための電流を補充するために、ブートストラップ回路111を備えてもよい。ブートストラップ回路111は、ダイオード111a及びキャパシタ111bを備える。ダイオード111aのアノードが第2の入力電源109に接続され、ダイオード111aのカソードが接続点n
2に接続され、メインスイッチング素子103がオンにされていることから、
図6に示す電流の向き113のように、電流が接続点n
2から接続点n
1に向かって流れることを可能にし、第2の入力電源109の入力電圧V
12をキャパシタ111bに印加することによって、キャパシタ111bが充電されて、キャパシタ111bは、ドライブ回路107の電源として使用されてもよく、キャパシタ111bからの電流が、ドライブ回路107を通って流れ、クランプスイッチング素子106bを駆動するために使用されてもよい。なお、クランプキャパシタ106aからの電流によってキャパシタ111bが十分に充電されて、クランプスイッチング素子106bが駆動されることができる場合には、スイッチング電源装置100は、ブートストラップ回路111を備えなくてもよく、ダイオード111aは省かれてもよい。このように、クランプキャパシタ106aからの電流によって、ダイオード111aに流れる電流を減少させることができるので、ブートストラップ回路111を高周波で駆動する場合であっても、ダイオード111aのスイッチング損失を減少させることができ、更にスイッチング電源装置100の低消費電力化を実現することができる。なお、第2の入力電源109は、制御回路110の電源として使用されてもよい。
【0031】
制御回路110は、第2の期間において、メインスイッチング素子103がオフにされるようにメインスイッチング素子103を制御して、トランス102の逆起電力を利用して、トランス102に蓄積されたエネルギーが放出されて、エネルギーがトランス102を介して入力側から出力側に伝達される。クランプスイッチング素子106bは、並列に接続されたクランプトランジスタ及びクランプダイオードを備えてもよく、ドライブ回路107は、クランプトランジスタを駆動してもよい。
図1~
図4においては、クランプスイッチング素子106bは、NMOSトランジスタであるが、NMOSトランジスタが、クランプトランジスタであって、クランプダイオードは、NMOSトランジスタに逆並列に接続されたダイオードであってもよく、NMOSトランジスタの寄生ダイオードであってもよい。NMOSトランジスタは、ワイドバンドギャップ半導体ベースのトランジスタであってもよく、例えば、SiCベースのトランジスタ、GaNベースのトランジスタであってもよい。また、クランプスイッチング素子106bは、NPNトランジスタ、及びNPNトランジスタに逆並列に接続されたクランプダイオードを備えてもよい。
【0032】
クランプダイオードは、第2の期間において、入力巻線102aのインダクタンスによる電流を、クランプダイオードを通ってクランプキャパシタ106aに向かって流れさせて、クランプキャパシタ106aを充電させることを可能にする。具体的には、第2の期間において、第1の入力電源101の入力電圧V11に入力巻線102aに印加された電圧が加えられた電位が接続点n1に生成される。接続点n1の電位が接続点n0の電位より高くなった場合に、クランプダイオードは、電流が接続点n1から接続点n0に向かって流れることのみを可能にし、接続点n1の電位による電流は、クランプダイオードを通って流れ、クランプキャパシタ106aを充電するために使用される。クランプダイオードを流れる電流によって、接続点n1と接続点n0との間の電圧が減少する。第2の期間後の第3の期間において、接続点n1と接続点n0との間の電圧を減少させたままで、クランプトランジスタがオンにされることを可能にする。クランプスイッチング素子106bに対してゼロ電圧スイッチング(ZVS)によるソフトスイッチングを行うことによって、クランプスイッチング素子106bのスイッチング損失を減少させることができ、更にスイッチング電源装置100の低消費電力化を実現することができる。
【0033】
制御回路110は、第3の期間において、クランプスイッチング素子106bがオンにされるようにクランプスイッチング素子106bを制御する。クランプスイッチング素子106bがクランプトランジスタを備える場合には、制御回路110は、ドライブ回路107を介してクランプトランジスタがオンにされるようにクランプトランジスタを制御する。クランプトランジスタは、第3の期間において、第2の期間と同様に、入力巻線102aのインダクタンスによる電流を、クランプトランジスタを通ってクランプキャパシタ106aに向かって流れさせて、クランプキャパシタ106aを充電させることを可能にする。そして、第3の期間において、入力巻線102aのインダクタンスによる電流の向きは反転して、クランプトランジスタは、クランプキャパシタ106aからの電流を、クランプトランジスタを通って入力巻線102aに向かって流れさせることを可能にしてもよい。なお、クランプスイッチング素子106bがクランプダイオードを備える場合には、スイッチング電源装置100の使用方法によっては、第3の期間において、クランプトランジスタはオンにされずにオフにされたままであってもよい。
【0034】
制御回路110は、第4の期間において、クランプスイッチング素子106bがオフにされるようにクランプスイッチング素子106bを制御する。第3の期間において、入力巻線102aのインダクタンスによる電流の向きは反転して、第4の期間においても、電流は入力巻線102aに向かって流れ続け、入力巻線102aのインダクタンスによる電流は、メインスイッチング素子103に印加される電圧を減少させることを可能にする。具体的には、接続点n1に接続された寄生キャパシタに、接続点n1の電位による電荷が充電されているが、入力巻線102aのインダクタンスによる電流によって、寄生キャパシタに充電された電荷が引き抜かれて、接続点n1の電位が減少する。第4の期間後の第1の期間において、メインスイッチング素子103に印加された電圧を減少させたままで、メインスイッチング素子103がオンにされることを可能にする。このように、メインスイッチング素子103に対してゼロ電圧スイッチング(ZVS)によるソフトスイッチングを行うことによって、メインスイッチング素子103のスイッチング損失を減少させることができ、更にスイッチング電源装置100の低消費電力化を実現することができる。
【0035】
制御回路110は、第1の期間において、メインスイッチング素子103がオンにされるようにメインスイッチング素子103を制御して、スイッチング電源装置100は、上記のように動作する。更に、電流供給回路108は、第1の期間において、クランプキャパシタ106aに充電された電荷の少なくとも一部を、電流として電流供給回路108を通ってドライブ回路107に向かって流れさせて、ドライブ回路107を通って流れさせることを可能にする。具体的には、第2及び第3の期間においてクランプキャパシタ106aが充電され、第4の期間においてクランプスイッチング素子106bがオフにされて、接続点n
0と接続点n
1とが電気的に切り離された後、第1の期間において、接続点n
0の電位が接続点n
2の電位より高くなった場合に、
図1に示す電流の向き112のように、電流供給回路108は、電流が接続点n
0から接続点n
2に向かって流れることを可能にし、クランプキャパシタ106aからの電流は、キャパシタ111bに充電されてもよく、ドライブ回路107を通って流れてもよい。キャパシタ111bに充電された電荷は、第3の期間において、クランプスイッチング素子106bを駆動するために使用される。接続点n
0から接続点n
2に向かって流れる電流を正の向きとした場合に、電流供給回路108は、第1~第4の期間の間に、接続点n
0から接続点n
2に向かって流れる電流の平均値が必ず正(すなわち、0A以上)になるように構成されている。なお、第4の期間が長く設定され、第4の期間においても接続点n
0の電位が接続点n
2の電位より高い場合には、電流供給回路108は、電流が接続点n
0から接続点n
2に向かって流れることを可能にし、クランプキャパシタ106aからの電流は、キャパシタ111bに充電されてもよく、ドライブ回路107を通って流れてもよい。
【0036】
上記のように、入力巻線102aのインダクタンスによる電流が、クランプキャパシタ106aに充電され、クランプキャパシタ106aに充電された電荷の少なくとも一部が、電流としてドライブ回路107を通って流れ、クランプスイッチング素子106bを駆動するために使用されることによって、ブートストラップ回路のダイオード111aに流れる電流を減少させることができるので、ダイオード111aのスイッチング損失を減少させることができ、特に、出力負荷105を無負荷状態してスイッチング電源装置100を動作させている場合の無負荷損失(待機電力)を減少させることができ、スイッチング電源装置100の低消費電力化を実現することができる。
【0037】
上記記載は特定の実施例についてなされたが、本発明はそれに限らず、本発明の原理と添付の特許請求の範囲の範囲内で種々の変更及び修正をすることができることは当業者に明らかである。
【符号の説明】
【0038】
100 スイッチング電源装置
101 第1の入力電源
102 トランス
102a 入力巻線
102b 出力巻線
103 メインスイッチング素子
104 出力回路
104a 整流素子
104b 平滑キャパシタ
104c 還流素子
104d チョークコイル
105 出力負荷
106 クランプ回路
106a クランプキャパシタ
106b クランプスイッチング素子
107 ドライブ回路
108 電流供給回路
108a 電圧調整スイッチング素子
108b インダクタ
108c ダイオード
108d NPNトランジスタ
108e 抵抗
108f ツェナーダイオード
108g 電流供給抵抗
108h ツェナーダイオード
109 第2の入力電源
110 制御回路
111 ブートストラップ回路
111a ダイオード
111b キャパシタ
112 電流の向き
113 電流の向き