(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176092
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】BCP対応設備システム
(51)【国際特許分類】
E03C 1/122 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
E03C1/122 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094337
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】522056895
【氏名又は名称】田中 良彦
(71)【出願人】
【識別番号】522056909
【氏名又は名称】日本環境技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 良彦
【テーマコード(参考)】
2D061
【Fターム(参考)】
2D061AA10
2D061AB10
(57)【要約】
【課題】災害などの緊急事態にも対応できる設備システムを提供する。
【解決手段】建物に設置された第1設備から汚水及び雑排水の少なくとも1つを含む排水を吸引する装置と、前記第1設備と接続され、重力方式で排水を流す第1排水管と、前記第1排水管に接続された接続部と、前記接続部と前記装置とを接続する第2排水管と、を備え、前記接続部は、前記第1排水管から受けた排水量が閾値以上になったとき、前記第2排水管へ排水を流す、設備システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に設置された第1設備から汚水及び雑排水の少なくとも1つを含む排水を吸引する装置と、
前記第1設備と接続され、重力方式で排水を流す第1排水管と、
前記第1排水管に接続された接続部と、
前記接続部と前記装置とを接続する第2排水管と、を備え、
前記接続部は、前記第1排水管から受けた排水量が閾値以上になったとき、前記第2排水管へ排水を流す、設備システム。
【請求項2】
前記建物に設置された、前記第1設備と異なる第2設備をさらに備え、
前記第2排水管は、さらに前記第2設備と前記接続部とを接続し、
前記装置は、前記第2設備から汚水及び雑排水の少なくとも1つを含む排水をさらに吸引する、
請求項1に記載の設備システム。
【請求項3】
前記装置は想定浸水位よりも上方に設置される、請求項1に記載の設備システム。
【請求項4】
前記接続部は想定浸水位よりも上方に設置される、請求項1または2に記載の設備システム。
【請求項5】
前記装置から送られる排水を貯留する水槽をさらに備え、
前記水槽は前記建物の1階より上方または屋上に設置される、請求項1に記載の設備システム。
【請求項6】
前記水槽内から排水するポンプをさらに備える、請求項5に記載の設備システム。
【請求項7】
前記水槽に設置された水位計をさらに備え、
前記ポンプは前記水位計の計測した水位に応じて排水を実行する、請求項6に記載の設備システム。
【請求項8】
前記装置から吸引された排水を貯留する予備水槽をさらに備える、請求項5から7のいずれか1項に記載の設備システム。
【請求項9】
前記装置から前記水槽及び前記予備水槽への排水を制御する、1以上のバルブをさらに備える、請求項8に記載の設備システム。
【請求項10】
前記装置は前記建物内の配管系統ごとに設置される、請求項9に記載の設備システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は災害などの緊急事態に対応可能な、すなわちBCP(事業継続計画)に対応可能な設備システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の排水システムでは、便器洗浄水を汚水配管の中で重力によって下方向に排水する、重力方式と言われるシステムが採用されている(非特許文献1など)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】公共建築協会、国土交通省大臣官房官庁営繕部、「設備・環境課建築設備設計基準 令和3年版」、2021年8月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
重力によって排水する方式では、建物の下部や地下に汚水槽を設置する必要がある。広域災害(水害、地震など)が発生すると、建物の地下機械室にある電気設備・給水設備や汚水槽・汚水システムが水没して機能停止が起こり、加えて下水道インフラ設備が機能を停止することから、便器が使用できなくなるという障害が発生してしまう。
【0005】
このような障害が起きると、被災者が避難所としている建物に於いて便器が使用できなくなる。仮設の便器を運搬するまで時間が掛ることに加え、仮設便器の数量が十分でなければ、避難所の衛生上の問題や、避難者の健康被害の問題などが発生し得る。
【0006】
本発明は、斯かる実情に鑑み、災害などの緊急事態にも対応できる設備システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は一態様として、建物に設置された第1設備から汚水及び雑排水の少なくとも1つを含む排水を吸引する装置と、前記設備と接続され、重力方式で排水を流す第1排水管と、前記第1排水管に接続された接続部と、前記接続部と前記装置とを接続する第2排水管と、を備え、前記接続部は、前記第1排水管から受けた排水量が閾値以上になったとき、前記第2排水管へ排水を流す、設備システムを提供する。
【発明の効果】
【0008】
上記構成によれば、災害などの緊急事態にも対応できる設備システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態の設備システム第1例を示す図である。
【
図2】第1実施形態の設備システム第2例を示す図である。
【
図3】第2実施形態の設備システムを示す図である。
【
図4】第2実施形態の設備システムを示す図である。
【
図7】(a)災害時汚水槽の一例と(b)汚水枡の一例を示す図である。
【
図8】設備システムにおける、井戸水及び雨水の取水系統の一例を示す図である。
【
図9】設備システムにおける、井戸水及び雨水の取水系統の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態である設備システム1について図面を参照して説明する。
図1及び
図2はそれぞれ、設備システム1の配管系統の第1例及び第2例を示す。
【0011】
設備システム1は、主に建物Bに設置されるシステムであり、
図1及び
図2に示すように、大便器2、真空排水装置4、バルブ5a、5b、5c、災害時汚水槽6、汚水枡7、雑用水槽8、重力排水式小便器20、及び重力・真空接続用バルブ21を備える。これらの設備、装置は、真空排水管3及び重力排水管19によって互いに接続される。なお、各図では真空排水管3及び重力排水管19に矢印を重ねて記載し、汚水の流れを示している。なお、以下では大便器2及び重力排水式小便器20からの汚水を中心に説明するが、システム1、300は、大便器2以外かつ重力排水式小便器20以外の設備からの汚水、雑排水に対しても適用可能である。
【0012】
大便器2及び重力排水式小便器20は、雑用水槽8から不図示の配管を介して給水を受け、真空排水管3へ排水する。大便器2の下部には弁が設置され、真空排水装置4の動作と連動して開閉される。詳細には、大便器2から汚水、汚物を真空排水管3へ排出する際には弁が開き、それ以外の場合には弁は閉鎖されている。
【0013】
重力排水式小便器20は、雑用水槽8から不図示の配管を介して給水を受け、あるいは給水を受けずに、汚水を重力排水管19へ排水する。重力排水管19は重力排水式小便器20で生じた汚水を重力方式によって流す配管である。
【0014】
重力排水管19と真空排水管3との接続部には、重力・真空接続用バルブ21が設置される。重力・真空接続用バルブ21は、重力排水管19を流れた汚水の量を計測するとともに、一時的に汚水を貯留する機能を有する。また、重力・真空接続用バルブ21は、計測した汚水量が閾値以上になると、真空排水装置4の動作と連動して真空排水管3へ排水する機能を有する。重力・真空接続用バルブ21は、想定浸水レベルよりも上方に設置される。
【0015】
重力・真空接続用バルブ21を
図10に示す。重力・真空接続用バルブ21は、重力排水管19と接続された弁であるバルブ211と、本体部212と、真空排水管3と接続された弁であるバルブ213と、本体部212の上部に設けられて本体部212内を外気に開放する弁であるバルブ214とを備える。重力・真空接続用バルブ21は、バルブ211を開くことによって、重力排水管19からの汚水を本体部212に流入させることができる。
【0016】
真空排水装置4は、負圧を真空排水管3内部に発生させ、大便器2からの汚水を吸引する装置である。さらに真空排水装置4は、汚水に対して正圧を加えて、真空排水管3内でバルブ5a、5bへ向けて圧送する機能を備える。そのため、真空排水装置4は、下方の便器から汚水を吸引することが可能であるし、上方に汚水を送水することも可能である。
【0017】
真空排水装置4は大便器2と電気的に接続されており、大便器2の使用者からの指示を受け付けることができる。使用者の指示に応じて、真空排水装置4は汚水の吸引及び圧送を実行する。
【0018】
真空排水装置4は、建物Bの中間階(一階と屋上の間にある階)にある中間階機械室9に設置される。中間階機械室9は、洪水や津波などの災害時における想定浸水レベルよりも上方に設置される機械室である。中間階機械室9には、さらに非常用電源設備又は蓄電池(不図示)が設置されており、停電時にも真空排水装置4へ電力を供給することができる。なお、中間階とは、ここでは一階と屋上の間にある階とし、最上階を含むものとする。
【0019】
災害時汚水槽6は、災害時に汚水を貯留するための汚水槽であり、バルブ5aを介して汚水を受け、貯留する機能を有する。災害時汚水槽6は、建物Bの屋上(
図1)、または中間階機械室9(
図2)に設置される。中間階機械室9の外に単独で設置されてもよいし、屋外設置されてもよい。いずれの設置箇所においても、災害時汚水槽6は、想定浸水レベルよりも上方に設置される。災害時汚水槽6は様々な材質によって構成し得るが、FRP(繊維補強プラスチック)などの軽量で強度の高い材料が用いられることが好ましい。
【0020】
汚水枡7は、建物Bの外部に設置される筒状の枡であり、バルブ5bを介して真空排水装置4と接続される。ここでは、「筒状」とは角筒状や円筒状など中空の形状を指すものであり、円形や多角形などの様々な断面形状を含む概念である。したがって、汚水枡7は直方体形状または立方体形状の外形を持ち得る。また汚水枡7は、バルブ5cを介して災害時汚水槽6とも接続される。汚水枡7は、一例としてインバート枡であり、汚物による管の詰まりを避け、汚水をスムーズに公共下水へ向けて排水する機能を有する。
【0021】
雑用水槽8は、建物Bで使用する水を貯留するための水槽であり、建物Bの屋上に設置される。雑用水槽8は不図示の配管によって大便器2と接続され、大便器2を洗浄するための水を供給する。
【0022】
(システムの動作:通常時)
通常時、すなわち災害時以外における、設備システム1の動作について説明する。
【0023】
通常時、バルブ5a、5cは閉じられ、バルブ5bは開かれている。大便器2が使用されると、真空排水装置4は、ユーザの指示に応じて大便器2から汚水を吸引し、さらに汚水枡7へ向けて圧送する。
【0024】
また、重力排水式小便器20からの汚水は、バルブ211を通じて本体部212に流入する。本体部212に流入した汚水量が閾値以上になったとき、重力・真空接続用バルブ21は、バルブ211を閉じるとともにバルブ213、214を開き、本体部212内部の汚水を真空排水管3へ排水する。その際、真空排水装置4が真空排水管3内に負圧を与えることによって、汚水は真空排水管3内を移動する。真空排水装置4は、真空排水管3から汚水を吸引し、さらに汚水枡7へ向けて圧送する。
【0025】
圧送された汚水は汚水枡7へ到達し、その後、公共下水へと排水される。
【0026】
(システムの動作:災害時)
災害時など、浸水によって汚水枡7が水没した場合、または公共下水が使用不能となった場合、通常時と異なる運用が実施される。設備システム1では、バルブ5b、5cが閉鎖され、代わりにバルブ5aが開かれる。
【0027】
大便器2が使用されると、真空排水装置4は、ユーザの指示に応じて大便器2から汚水を吸引し、さらに圧送する。汚水は、バルブ5aを通過して流れ、災害時汚水槽6に貯留される。
【0028】
浸水がなくなり、汚水枡7が使用できる状態になるとバルブ5cが開放される。災害時汚水槽6に貯留されていた汚水は、重力またはポンプによって真空排水管3内部を流れ、バルブ5cを通って汚水枡7へ到達する。汚水は、汚水枡7から、公共下水へと排水される。
【0029】
<第2実施形態>
高層ビルにおいては真空排水装置4を、例えば10階毎など、一定の階数ごとに設置することも可能である。例えば、
図3の設備システム300においては、7階ごとに真空排水装置4が設置され、上方の階にある大便器2及び重力排水式小便器20から汚水が吸引される。
【0030】
図3のように、建物Bの中で2系統での排水が行われてもよい。この例において設備システム300は、西系統及び東系統という2つの独立した配管系統を形成する。独立した配管系統は、それぞれ、大便器2、真空排水管3、重力排水管19、重力排水式小便器20、重力・真空接続用バルブ21、及び真空排水装置4を備える。各独立系統における重力排水管19、重力排水式小便器20、重力・真空接続用バルブ21、真空排水管3、真空排水装置4との接続関係は、第1実施形態と同様である。西系統に属する大便器2及び重力排水式小便器20からの汚水は西系統を介して排水されるし、東系統に属する大便器2及び重力排水式小便器20からの汚水は、東系統を介して排水される。すなわち、西系統及び東系統のいずれかに属する大便器2及び重力排水式小便器20からの汚水は、東系統及び西系統のうち異なる系統を介さずに排水される。真空排水装置4は、西系統及び東系統にそれぞれ1台ずつ設置され、東西の独立した各系統から汚水を吸引、圧送する。
【0031】
また、このような系統以外にも様々な方式が考えられる。例えば
図4のように偶数階と奇数階とで配管系統を別としてもよい。この場合においても独立した配管系統は、それぞれ、大便器2、真空排水管3、重力排水管19、重力排水式小便器20、重力・真空接続用バルブ21、及び真空排水装置4を備える。各独立系統における重力排水管19、重力排水式小便器20、重力・真空接続用バルブ21、真空排水管3、真空排水装置4との接続関係は、第1実施形態と同様である。したがって偶数階に属する大便器2及び重力排水式小便器20からの汚水は偶数階に設置された系統を介して排水されるし、奇数階に属する大便器2及び重力排水式小便器20からの汚水は、奇数階に設置された系統を介して排水される。真空排水装置4は、奇数階系統及び偶数階系統にそれぞれ設置され、独立して各系統から汚水を吸引、圧送する。
【0032】
このように複数系統による排水方式とすることにより、設備システム1の維持管理を容易にすることができる。詳細に述べると、2台の真空排水装置4のうち1つを点検管理のために稼働停止した場合においても、1系統は稼働することができる。そのため、建物Bに居る者は、階を大きく移動することなく大便器2及び重力排水式小便器20を使用することができる。事故や災害等により、1つの系統を構成する真空排水管3や設備が損傷した場合においても同様であり、稼働可能な系統が残るため、使用可能な大便器2及び重力排水式小便器20を建物B内に残すことができる。
【0033】
<変形例>
図5の変形例に示すように、設備システム1、300に汚水槽10が加えられ、システム全体での汚水貯留能力を増加させてもよい。汚水槽10は、汚水を貯留するためのタンクであり、真空排水管3及びバルブ5dを介して真空排水装置4と接続される。汚水槽10は、一般的には地下階便器の2~3時間分の汚水を貯留可能な容量を備えるが、条件に応じてそれ以上または以下の容量としてもよい。
図5において汚水槽10は地下に埋設されるが、地上に設置されてもよい。
【0034】
汚水槽10の内部には、
図5に示すようにポンプ11及び水位計12が設置される。ポンプ11は、真空排水管3を経由して汚水枡7へ汚水を圧送する機能を持つ。また、水位計12は、汚水槽10の水量を計測する。
【0035】
図7(a)に示すように、変形例では災害時汚水槽6にもポンプ11及び水位計12が設置され、水槽内の水位を把握可能であるとともに、汚水枡7へ汚水を送水可能である。なお、災害時汚水槽6が地下に設置される場合には、災害時汚水槽6の内部を大気と接続する通気管13がさらに設置される。なお、各図においてポンプ11は枡内及び各汚水槽内に設置されているが、枡外または汚水槽外に設置されてもよい。
【0036】
汚水枡7には、水位計12が設置されてもよい(
図7(b))。水位計12を枡内に設置することにより、枡内の水位、特に満水となった状態を適切に把握することができる。
【0037】
(通常時)
変形例における設備システム1、300の動作について説明する。通常時においては、バルブ5b、5cが開放され、バルブ5a、5dが閉鎖される。大便器2が使用されると、真空排水装置4によって汚水が吸引され、さらに汚水枡7に圧送される。その後汚水は汚水枡7を経て公共下水へ排水される。
【0038】
(災害時)
災害時においては、バルブ5b、5dが開放され、バルブ5a、5cが閉鎖される。大便器2または重力排水式小便器20が使用されると、真空排水装置4によって汚水が大便器2、または重力・真空接続用バルブ21から吸引され、汚水槽10に送られる。
【0039】
汚水槽10の水位は、水位計12によって常時把握される。汚水槽10が満水状態となった場合には、バルブ5aが開放され、バルブ5b、5c、5dが閉鎖される。このようにして大便器2からの汚水は、汚水槽10の代わりに、真空排水装置4から災害時汚水槽6へ送られて貯留される。
【0040】
汚水槽10及び災害時汚水槽6の汚水はポンプ11によって汚水枡7へ排水可能である。そのため、汚水枡7及び公共下水が使用可能になった場合、また汚水枡7において汚水除去(次段落)が可能な場合には、汚水槽10及び災害時汚水槽6の汚水は、ポンプ11によって汚水枡7へ排水される。
【0041】
汚水槽10及び汚水枡7に貯留される汚水及び固形物は、
図6、
図7(b)に示すようにバキュームカーVによっても除去可能である。水位計12によって水位を把握できるため、災害時汚水槽6、汚水槽10及び汚水枡7からの溢水が防止されるとともに、バキュームカーVによって汚水処理すべきタイミングを把握できる。
【0042】
災害によっては公共下水が長期間(この例では7日以上)使用できなくなる場合があるが、この場合でも上記のように汚水槽10及び災害時汚水槽6に貯留し、さらにバキュームカーVによる汚水、固形物除去を行うことにより、設備システム1、300を長期に亘って使用可能とできる。
【0043】
(上水)
実施形態において大便器2を洗浄する水は上水道から供給されていたが、それ以外の手段によって供給されてもよい。
【0044】
一例として
図8及び
図9のように、井戸水及び雨水を水源として大便器2に水を供給する方法が考えられる。なお、
図8及び
図9では理解を容易にするため、設備システム1、300のうち、井戸水及び雨水を供給源として大便器2へ水を供給するシステムを抽出して示し、他の設備及び装置は図示を省略している。
【0045】
設備システム1、300は、
図8及び
図9に示すように、井戸W、ポンプP、ろ過装置15、雨水貯留槽17、及びルーフドレン22を備える。これらの装置、設備は真空排水管3及び竪管18によって接続される。
【0046】
井戸Wの上端及びポンプPは、想定浸水レベルよりも高い位置に設置され、浸水時においても使用可能である。
図8において、ろ過装置15、雨水貯留槽17は、中間階機械室9に設置されるため、浸水時においても使用可能である。なお、建物Bを浸水が起きても使用可能な設計とした場合には、これらの装置、設備を
図9のように想定浸水レベルよりも下方に設置してもよい。
【0047】
ポンプPは、井戸Wから井戸水を吸い上げ、配管31を介して供給する。井戸水は、ろ過装置15によってろ過され、雑用水槽8に貯留される。
【0048】
一方、屋上に降った雨水はルーフドレン22によって取水され、竪管18を介して雨水貯留槽17に供給される。雨水貯留槽17から供給される雨水は、ろ過装置15によってろ過され、その後雑用水槽8に貯留される。
【0049】
雑用水槽8からの大便器2への給水方法及び給水経路は、実施形態等で説明したものと同様である。
【0050】
このような水の供給経路をさらに加えることによって、設備システム1、300は、上水が供給不能となった場合においても長期間に亘って大便器2に水を供給することができる。
【0051】
なお、上記実施形態では、重力排水管19に接続される設備は重力排水式小便器20であるが、重力排水式小便器20以外の設備が重力排水管19に接続されてもよい。つまり、重力排水式小便器20に限らず、汚水または雑排水を流す設備や大便器などが重力排水管19に接続可能である。この場合も、重力排水管19を流れた汚水または雑排水は、重力・真空接続用バルブ21を経由する。また、閾値以上の排水量が重力・真空接続用バルブ21に流入すると、重力・真空接続用バルブ21内の汚水または雑排水は、真空排水装置4によって吸引される。
【0052】
また、大便器2以外の設備が真空排水管3に接続されてもよい。つまり、大便器2に限らず、大便器や雑排水を流す設備などが真空排水管3に接続可能である。
【0053】
<効果>
(態様1)上記実施形態又は変形例の設備システム1、300は、建物に設置された重力排水式小便器20(第1設備に相当)から汚水及び雑排水の少なくとも1つを含む排水を吸引する真空排水装置4と、重力排水式小便器20と接続され、重力方式で排水を流す重力排水管19(第1排水管に相当)と、重力排水管19に接続された重力・真空接続用バルブ21と、重力・真空接続用バルブ21と真空排水装置4とを接続する真空排水管3(第2排水管に相当)と、を備える。重力・真空接続用バルブ21は、重力排水管19から受けた排水量が閾値以上になったとき、真空排水管3へ排水を流す。
【0054】
上記構成によると、重力方式と真空方式の2種類の排水を併用した設備システムとすることができる。重力・真空接続用バルブ21が排水を制御するため、効率よく真空排水装置4を稼働させ、通常時に節水できるだけでなく、災害時の水使用量を抑制できる。
【0055】
また、真空排水装置4を使用するため、重力方式による排水と比較して、大便器2の使用水量を1/7程度(洗浄水量1リットル/回程度)に削減することができる。通常時に節水できるだけでなく、災害時の水使用量を抑制できるため、設備システム1、300は、上水道が使用できない事態にも対処可能である。脱炭素の見地からは、排水量の削減により、都市インフラにおける「CO2排出削減」に貢献できる。
【0056】
(態様2)態様1において、設備システム1、300は、大便器2(第2設備に相当)をさらに備えており、真空排水管3は、さらに大便器2と真空排水装置4とを接続し、真空排水装置4は、大便器2から汚水及び雑排水の少なくとも1つを含む排水をさらに吸引する。
【0057】
上記構成によると、重力方式と真空方式の2種類の排水を併用した設備システムとすることができる。重力・真空接続用バルブ21が排水を制御するため、効率よく真空排水装置4を稼働させ、通常時に節水できるだけでなく、災害時の水使用量を抑制できる。
【0058】
(態様3)態様1または2において、真空排水装置4は想定浸水位よりも上方に設置される。
【0059】
(態様4)態様1から3のいずれかにおいて、重力・真空接続用バルブ21は想定浸水位よりも上方に設置される。
【0060】
(態様5)態様1から4のいずれかにおいて、設備システム1、300は、真空排水装置4から送られる排水を貯留する災害時汚水槽6をさらに備え、災害時汚水槽6は建物Bの1階より上方または屋上に設置される。
【0061】
従来の重力方式による排水では地下躯体の最下部に汚水槽を設ける必要があったが、上記構成では浸水位より上方に災害時汚水槽6を設けられ、水没が防止される。災害時にも使用可能な設備システム1、300とできる。また、災害時汚水槽6を中間階または屋上に設置することは、浸水が発生した場合にも設備システム1、300の使用を可能とする。
【0062】
(態様6)態様1から5のいずれかにおいて、設備システム1、300は、水槽内の汚水を排水するポンプ11を備える。
【0063】
(態様7)態様1から6のいずれかにおいて、また、設備システム1、300は、災害時汚水槽6に設置された水位計をさらに備え、ポンプ11は水位計12の計測した水位に応じて排水を実行する。
【0064】
上記構成では、重力方式によらずともポンプ11によって水槽内から排水を行うことが可能となる。水位計12を用いれば災害時汚水槽6の状況に応じて適切なタイミングで排水することができる。
【0065】
(態様8)態様1から7のいずれかにおいて、設備システム1、300は、真空排水装置4から吸引された汚水を貯留する汚水槽10(予備水槽に相当)をさらに備える。
【0066】
汚水槽10を備えることで、設備システム1、300は汚水を貯留する能力を増加させることができる。
【0067】
(態様9)態様1から8のいずれかにおいて、設備システム1、300は、バルブ5a-5dをさらに備えることにより、汚水の排水先を容易に制御できる。
【0068】
(態様10)態様1から9のいずれかにおいて、真空排水装置4は、建物B内の配管系統ごとに設置される。
【0069】
このような構成とすることにより、真空排水装置4が維持管理や故障により使用できなくなった場合においても別系統での排水が可能である。そのため、建物B内において大便器2の使用が可能となる。
【0070】
尚、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。また、本発明の権利は、優越的な地位を利用した権利の濫用に対しても法に基づき抗し得るものである。
【符号の説明】
【0071】
1、300 設備システム
2 便器
3 配管
4 真空排水装置
5a-5d バルブ
6 災害時汚水槽
7 汚水枡
8 雑用水槽
9 中間階機械室
10 汚水槽
11 ポンプ
12 水位計
13 通気管
15 ろ過装置
17 雨水貯留槽
18 竪管
19 重力排水管
20 重力排水式小便器
21 重力・真空接続用バルブ