(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017610
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/56 20060101AFI20240201BHJP
H01R 13/514 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
H01R13/56
H01R13/514
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120363
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】菅野 秀千
【テーマコード(参考)】
5E021
5E087
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA09
5E021FC02
5E087EE11
5E087FF08
5E087FF13
5E087GG17
5E087JJ05
5E087RR25
(57)【要約】
【課題】フード取付けの専用手段を必要とせず、簡易に取付け可能なフードを備えるコネクタを提供する。
【解決手段】モジュール40はケーブル200に取り付けられる端子41と、端子41を収容するインシュレータ42とよりなり、インシュレータ42は2つのばね片44と、2つのばね片44に形成された2つの突起44bを有し、ハウジング30は収容空間31を囲む側壁の対向する位置に貫通穴36を有し、モジュール40は2つの突起44bが貫通穴36に内側から嵌入して収容空間31に収容され、フード50は2つの分割体60,70で構成され、分割体60,70の突出部67,77が貫通穴36に外側から嵌入し、結合手段で結合されることでハウジング30に固定されることが可能であり、分割体60,70はフード50がハウジング30に固定された状態ではケーブル200を引き出すストレート引出し穴51とアングル引出し穴52を形成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングとモジュールとフードとを備えるコネクタであって、
前記モジュールはケーブルの端末に取り付けられて相手方コネクタの相手方端子と接続される端子と、前記端子を収容保持するインシュレータとよりなり、
前記インシュレータは互いに反対側に位置する外面に形成された2つのばね片と、前記2つのばね片に互いに外向きに突出形成された2つの突起とを有し、
前記ハウジングは収容空間を有し、前記収容空間を囲む側壁の互いに対向する位置には貫通穴がそれぞれ形成されており、
前記モジュールは前記2つの突起が前記側壁の互いに対向する位置に形成されている前記貫通穴にそれぞれ内側から嵌入することで前記収容空間に位置決め収容されて前記ハウジングに取り付けられており、
前記フードは分離及び結合が可能な2つの分割体で構成され、前記2つの分割体には突出部がそれぞれ形成されており、
前記フードは、前記2つの分割体の前記突出部が前記側壁の互いに対向する位置に形成されている前記貫通穴にそれぞれ外側から嵌入し、かつ結合手段によって前記2つの分割体が結合されることで、前記ハウジングに位置決め固定されることが可能であり、
前記端子と前記相手方端子との接続方向を上下方向とするとき、前記2つの分割体は、前記フードが前記ハウジングに位置決め固定された状態では、前記ケーブルを前記フードから上方に引き出すことのできるストレート引出し穴と、前記フードから上下方向と垂直な方向に引き出すことのできるアングル引出し穴とを形成する形状を有していることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタにおいて、
互いに対向する位置に位置する前記貫通穴の組が複数組前記側壁に形成され、
前記収容空間は前記モジュールを複数位置決め収容可能とされていることを特徴とするコネクタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコネクタにおいて、
前記ストレート引出し穴と前記アングル引出し穴とは互いに等しい形状及び寸法を有し、
前記ストレート引出し穴及び前記アングル引出し穴の任意の一方を塞ぐことのできるグロメットをさらに備えることを特徴とするコネクタ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のコネクタにおいて、
前記結合手段は結束バンドと前記2つの分割体のそれぞれに設けられた結束バンド通し穴とで構成されていることを特徴とするコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はケーブル引出し部位を保護するフードを備えたコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
図6及び7はフード(コネクタフード)がコネクタに取り付けられている構成の従来例として特許文献1に記載されている構成を示したものであり、
図6中、10はフードを示し、13はケーブルを示す。また、20はコネクタが接続されているMFC(マスフローコントローラ)を示す。
【0003】
図7は
図6におけるフード10の内部構造を示したものであり、MFC20の上面に設けられたコネクタ端子11にフード10が接続されている。フード10は第1部材1、第2部材2、第3部材3(
図6参照、
図7では図示省略)、コネクタ端子11用の開口部を含む第4部材4、側面用スクリューねじ5、上面用スクリューねじ6を含んでいる。側面用スクリューねじ5は第1~第4部材1~4等を連結する役割を果たし、上面用スクリューねじ6はフード10に保持されたコネクタ端子11をMFC20に固定する役割を果たす。
【0004】
フード10の内部にはコネクタ端子11、電線12、ケーブル13、ブッシュ14が含まれ、電線12はコネクタ端子11の各ピンに接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来構成ではフードの取付け固定にねじを用いるものとなっており、よってフードの固定対象(上述した例ではMFC20)にねじが螺合するねじ穴を形成する必要があり、つまり従来構成ではフードの取付け固定に際し、固定対象に新たに専用のねじ穴を設けるといった作業が必要となっていた。
【0007】
この発明の目的はこの点に鑑み、フードを取り付けるための専用の手段を新たに必要とすることなく、取付け可能なフードを備えたコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明によれば、ハウジングとモジュールとフードとを備えるコネクタにおいて、モジュールはケーブルの端末に取り付けられて相手方コネクタの相手方端子と接続される端子と、端子を収容保持するインシュレータとよりなり、インシュレータは互いに反対側に位置する外面に形成された2つのばね片と、2つのばね片に互いに外向きに突出形成された2つの突起とを有し、ハウジングは収容空間を有し、収容空間を囲む側壁の互いに対向する位置には貫通穴がそれぞれ形成されており、モジュールは2つの突起が前記側壁の互いに対向する位置に形成されている貫通穴にそれぞれ内側から嵌入することで収容空間に位置決め収容されてハウジングに取り付けられており、フードは分離及び結合が可能な2つの分割体で構成され、2つの分割体には突出部がそれぞれ形成されており、フードは2つの分割体の突出部が前記側壁の互いに対向する位置に形成されている貫通穴にそれぞれ外側から嵌入し、かつ結合手段によって2つの分割体が結合されることで、ハウジングに位置決め固定されることが可能であり、端子と相手方端子との接続方向を上下方向とするとき、2つの分割体は、フードがハウジングに位置決め固定された状態では、ケーブルをフードから上方に引き出すことのできるストレート引出し穴と、フードから上下方向と垂直な方向に引き出すことのできるアングル引出し穴とを形成する形状を有しているものとされる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、フードを取り付けるための専用の手段を新たに必要とせず、簡易に取り付けることが可能なフードを具備するコネクタを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】Aはこの発明によるコネクタの一実施例を示す前方から見た斜視図、Bはこの発明によるコネクタの一実施例を示す後方から見た斜視図。
【
図3】
図1Aに示したコネクタからフードを取り外した状態を示す斜視図。
【
図5】Aはフードの一方の分割体を示す上方から見た斜視図、Bはフードの他方の分割体を示す上方から見た斜視図、Cはフードの一方の分割体を示す下方から見た斜視図、Dはフードの他方の分割体を示す下方から見た斜視図。
【
図6】フードがコネクタに取り付けられている従来構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明の実施形態を図面を参照して実施例により説明する。
【0012】
図1はこの発明によるコネクタの一実施例の外観を示したものであり、
図2はその断面構造を示したものである。コネクタ100はこの例ではハウジング30とモジュール40とフード50とを備えて構成されている。なお、
図1,2中、200はコネクタ100に接続されているケーブルを示し、ケーブル200はこの例では一部のみ示し、全体の図示は省略している。
【0013】
図3はコネクタ100からフード50が取り外された状態を示したものであり、
図4はその断面構造を示したものである。これら
図3及び4を参照して、まずハウジング30及びモジュール40の構成を説明する。
【0014】
ハウジング30は略四角枠状をなし、その内部には上下に開口した収容空間31を有している。収容空間31を囲む4つの側壁32~35のうち、四角枠の長辺部分に位置する側壁32,33の上端側にはハウジング30の内外を連通する角穴形状の貫通穴36が形成されており、この例では側壁32,33にそれぞれ6つの貫通穴36が長辺の延伸方向に配列され、かつ側壁32,33の互いに対向する位置に位置して形成されている。なお、詳細説明は省略するが、ハウジング30は相手方コネクタとの接続時のロック用としてレバー37を備えている。
【0015】
モジュール40はケーブル200の端末に取り付けられて相手方コネクタの相手方端子と接続される端子41と、端子41を収容保持するインシュレータ42とよりなる。この例ではインシュレータ42は上下方向に貫通した4つの取付け穴43を有しており、これら取付け穴43に4つの端子41を取り付けることができるものとなっている。端子41は取付け穴43に上方から挿入され、切り起こし片41aが取付け穴43に形成された段部43aに引っ掛かることによって抜け止めされるものとなっている。なお、端子41の上端にはケーブル200の芯線201がかしめられて接続されている。
【0016】
インシュレータ42の互いに反対側に位置する外面には外面に沿うようにばね片44がそれぞれ形成されている。ばね片44は下端が固定端とされ、上端が遊端とされており、2つのばね片44の遊端には互いに外向きに突出する突部44aがそれぞれ形成され、さらに遊端の近くに互いに外向きに突出する突起44bがそれぞれ形成されている。
【0017】
上記のような構成を有するモジュール40はハウジング30の収容空間31に取り付けられる。取付けは収容空間31の上方から収容空間31にモジュール40を挿入することによって行われ、モジュール40は2つのばね片44に形成されている2つの突起44bが側壁32,33の互いに対向する位置に形成されている貫通穴36にそれぞれ内側から嵌入することで収容空間31に位置決め収容されてハウジング30に取り付けられる。なお、ばね片44に設けられている突部44aと突起44bは
図4に示したように側壁32,33の貫通穴36より上に位置する部分(上端部分)を挟み込んだ状態となる。
【0018】
モジュール40は上記のようにハウジング30に取り付けられるが、ハウジング30の側壁32,33にはこの例では互いに対向する位置に位置する貫通穴36の組が6組形成されているため、最大6個のモジュール40をハウジング30の収容空間31に位置決め収容することができる。なお、この例では同一仕様のモジュール40が6個収容された状態を図示しているが、モジュール40の収容数やモジュール40が備える端子41の仕様さらには端子41が取り付けられるインシュレータ42の取付け穴43の仕様や数はコネクタ100によって接続されるケーブル200の仕様や数によって適宜、決定される。
【0019】
次に、このコネクタ100が具備するフード50について説明する。
【0020】
フード50は分離及び結合が可能な2つの分割体60,70で構成されている。
図5A,Bはこれら分割体60,70をそれぞれ示したものであり、
図5C,Dは見る方向を変えて分割体60,70をそれぞれ示したものである。
【0021】
分割体60と70はこの例では面対称な形状を有し、分割体60はフード50の左半部を構成し、分割体70はフード50の右半部を構成する。
【0022】
分割体60は大略、側面板部61と上面板部62と前面板部63と背面板部64とよりなり、分割体70も同様に側面板部71と上面板部72と前面板部73と背面板部74とよりなる。分割体60,70の上面板部62,72には分割体60,70を、側面板部61,71を互いの外側として突き合わせた時に円形の穴を形成する半円状の切欠き65,75がそれぞれ形成されており、前面板部63,73の傾斜部63a,73aにも同様に円形の穴を形成する半円状の切欠き66,76がそれぞれ形成されている。
【0023】
これら分割体60,70の側面板部61,71の各内面の下端には互いに内向きに突出する突出部67,77がそれぞれ形成されている。突出部67はこの例では前面板部63寄りに3つ形成され、背面板部64寄りに1つ形成されており、突出部77も同様に前面板部73寄りに3つ形成され、背面板部74寄りに1つ形成されている。これら突出部67と77は互いに対向する位置に位置してハウジング30の側壁33,32に配列形成されている貫通穴36にそれぞれ嵌入可能とされている。
【0024】
さらに、分割体60,70には結束バンドで互いに結合するための結束バンド通し穴68,78がそれぞれ設けられている。結束バンド通し穴68,78は
図5に示すように分割体60,70の外面にそれぞれ突出形成された4つの固定部69,79にそれぞれ形成されている。
【0025】
以下、フード50の取付けについて説明する。
【0026】
分割体60の4つの突出部67をハウジング30の側壁33に配列形成されている貫通穴36にそれぞれ外側から嵌入し、同様に分割体70の4つの突出部77をハウジング30の側壁32に配列形成されている貫通穴36にそれぞれ外側から嵌入して分割体60,70をハウジング30に取り付ける。
【0027】
次に、結束バンド80を分割体60,70の結束バンド通し穴68,78に通して結束バンド80で分割体60と70とを結合する。この例では分割体60,70には結束バンド通し穴68,78が4箇所に設けられているため、4本の結束バンド80により分割体60と70とが結合され、これによりフード50はハウジング30に位置決め固定されてハウジング30に取り付けられた状態となり、即ち
図1,2に示した状態となる。
【0028】
図1に示したように分割体60と70とが結合され、ハウジング30へのフード50の取付けが完了した状態では、分割体60の切欠き65と分割体70の切欠き75によって円形のストレート引出し穴51が形成され、さらに分割体60の切欠き66と分割体70の切欠き76によって円形のアングル引出し穴52が形成される。この例ではこれらストレート引出し穴51とアングル引出し穴52は互いに等しい形状及び寸法を有するものとなっている。
【0029】
このコネクタ100はハウジング30の下方に位置する相手方コネクタと嵌合接続される構成となっており、端子41と相手方コネクタの相手方端子との接続方向を上下方向とするとき、フード50に設けられたストレート引出し穴51を用いればケーブル200をフード50から上方に引き出すことができ、またアングル引出し穴52を用いればケーブル200をフード50から上下方向と垂直な方向に引き出すことができるものとなっている。
図1はケーブル200がフード50から上方に引き出されている状態を示しており、アングル引出し穴52にはこの例ではグロメット90が取り付けられてグロメット90によりアングル引出し穴52は塞がれている。
【0030】
以上、この発明によるコネクタの一実施例について説明したが、上述したコネクタ100によれば下記の効果を得ることができる。
【0031】
(1)フード50の取付けはモジュール40を位置決めして取り付けるためにハウジング30の側壁32,33に形成されている貫通穴36を流用するものであって、即ちモジュール40の突起44bが位置しない貫通穴36の外側部分を利用してフード50を取り付けるものとなっている。従って、フード50を取り付けるための専用の手段を新たに設ける必要はなく、簡易にフード50を取り付けることができる。
【0032】
(2)フード50を2つの分割体60,70で構成し、分割体60と70をハウジング30に取り付けた後、それらを結束バンド80で固定することによってフード50の取付けが完了するものであり、このように結束バンド80を用いることで取付け作業を簡素化することができる。
【0033】
(3)フード50はケーブル200を引き出すための穴としてストレート引出し穴51とアングル引出し穴52の2つの穴を有するため、コネクタ100の使用環境、使用条件に応じてケーブル200を引き出す方向を選択することができ、また状況によっては2つの穴を使用して2つの方向にそれぞれケーブル200を引き出すこともでき、その点で使い勝手のよいコネクタ100を提供することができる。
【0034】
なお、上述した実施例ではフード50を構成する2つの分割体60,70にはハウジング30の貫通穴36に嵌入する突出部67,77がそれぞれ4つ形成されているが、突出部67,77の数はこれに限らず、例えば各分割体60,70に1つであってもよい。
【0035】
また、上述した実施例ではケーブル200の引出しに使用していないアングル引出し穴52をグロメット90で塞いでいるが、状況に応じてグロメット90で塞がない形態を採用してもよい。
【0036】
さらに、フード50の2つの分割体60,70を結合する結合手段として結束バンド80を用いているが、結合手段はこれに限るものではなく、例えばねじを用いてねじ止めとしてもよい。
【0037】
なお、この発明によるコネクタは部品として上述したような構成を有するフード50を具備するものとなっているが、フード50が不要な場合、フード50を取り付けない態様も採用しうる。
【符号の説明】
【0038】
1 第1部材 2 第2部材
3 第3部材 4 第4部材
5 側面用スクリューねじ 6 上面用スクリューねじ
10 フード 11 コネクタ端子
12 電線 13 ケーブル
14 ブッシュ 20 MFC
30 ハウジング 31 収容空間
32~35 側壁 36 貫通穴
37 レバー 40 モジュール
41 端子 41a 切り起こし片
42 インシュレータ 43 取付け穴
43a 段部 44 ばね片
44a 突部 44b 突起
50 フード 51 ストレート引出し穴
52 アングル引出し穴 60,70 分割体
61,71 側面板部 62,72 上面板部
63,73 前面板部 63a,73a 傾斜部
64,74 背面板部 65,66,75,76 切欠き
67,77 突出部 68,78 結束バンド通し穴
69,79 固定部 80 結束バンド
90 グロメット 100 コネクタ
200 ケーブル 201 芯線