(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176102
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】電力管理装置およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20241212BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20241212BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20241212BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/00 160
H02J3/38 130
H02J3/32
H02J13/00 301A
H02J3/38 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094359
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100182718
【弁理士】
【氏名又は名称】木崎 誠司
(72)【発明者】
【氏名】青柳 勲
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆生
(72)【発明者】
【氏名】小野 洋平
(72)【発明者】
【氏名】小野 裕永
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AA04
5G064AB05
5G064AC09
5G064BA02
5G064CB03
5G064CB08
5G064DA07
5G066AA02
5G066AA03
5G066AE01
5G066AE05
5G066AE07
5G066AE09
5G066HA13
5G066HB06
5G066HB09
(57)【要約】
【課題】圧逸脱状態の発生を抑制した上で、電力の多様な活用方法をユーザに選択させる。
【解決手段】電力管理装置は、分散電源の発電電力と、負荷の使用電力とを含むデータを取得するデータ取得部と、天候予報情報を取得する天候情報取得部と、データ記憶部に記憶されたデータと、天候予報情報とを用いて、少なくとも翌日以降の発電電力と、逆潮流電力と、負荷の使用電力と、電圧逸脱状態の発生とを予測する予測部と、電圧逸脱状態が発生する発生予定日における電力の使用用途の情報を検索によって取得し、取得された使用用途の情報および使用用途に用いられる負荷の情報を含む紹介情報と、予測された電圧逸脱状態の発生情報とを含む電圧逸脱予報を作成する電圧逸脱予報作成部と、作成された前記電圧逸脱予報を他の装置へと出力する出力部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統から供給される電力と、分散電源の発電電力との少なくとも一方を、電力を消費する負荷へと供給し、前記電力系統の電圧が予め設定された上限電圧以上となる電圧逸脱状態が発生した場合に、前記分散電源の発電電力の前記電力系統への逆潮流を停止する配電システムに用いられる電力管理装置であって、
前記電力系統の電圧変化と、前記分散電源の発電電力と、前記分散電源から前記電力系統へと逆潮流する逆潮流電力と、前記負荷の使用電力と、を含むデータを取得するデータ取得部と、
少なくとも翌日以降の天候予報情報を取得する天候情報取得部と、
前記データ取得部により取得されたデータと、前記天候情報取得部により取得された前記天候予報情報とを記憶するデータ記憶部と、
前記データ記憶部に記憶されたデータと、前記天候予報情報とを用いて、少なくとも翌日以降の前記分散電源の発電電力と、前記逆潮流電力と、前記負荷の使用電力と、前記電圧逸脱状態の発生とを予測する予測部と、
前記予測部により翌日以降において前記電圧逸脱状態の発生が予測された場合に、前記電圧逸脱状態が発生する発生予定日における電力の使用用途の情報を検索によって取得し、取得された前記使用用途の情報および前記使用用途に用いられる前記負荷の情報を含む紹介情報と、予測された前記電圧逸脱状態の発生情報とを含む電圧逸脱予報を作成する電圧逸脱予報作成部と、
前記電圧逸脱予報作成部により作成された前記電圧逸脱予報を他の装置へと出力する出力部と、
を備える、電力管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力管理装置であって、
前記データ取得部は、さらに電力を蓄電可能な蓄電池が充電する際の充電電力と、前記蓄電池から放電される放電電力と、前記蓄電池の蓄電量とを含むデータを取得し、
前記予測部は、少なくとも翌日の前記蓄電池の蓄電量の推移を予測する、電力管理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電力管理装置であって、さらに、
前記電圧逸脱予報作成部により取得された前記紹介情報を記憶する紹介情報記憶部を備え、
前記電圧逸脱予報作成部は、
前記紹介情報記憶部に記憶された前記紹介情報を参照して、新たに取得した前記紹介情報が過去に取得された前記紹介情報と同じ内容の場合であって、かつ、過去に取得された前記紹介情報が取得された時から所定の期間が経過していない場合に、異なる前記紹介情報を取得し、
前記紹介情報記憶部に記憶された前記紹介情報を参照して、新たに取得した前記紹介情報が過去に取得された前記紹介情報と内容が異なる場合、または、過去に取得された前記紹介情報が取得された時から前記所定の期間を経過している場合に、新たに取得した前記紹介情報を含む前記電圧逸脱予報を作成する、電力管理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電力管理装置であって、
前記紹介情報に含まれる前記使用用途の情報は、料理と、洗濯と、電気自動車の利用と、DIY(Do it yourself)とのいずれかに関連する情報である、電力管理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電力管理装置であって、
前記電圧逸脱予報作成部は、
前記負荷の使用時に用いられる製品の特売情報と、前記負荷である電気機器の新製品の情報との少なくとも一方の情報である付加情報を検索によって取得し、
さらに前記付加情報を含む前記電圧逸脱予報を作成する、電力管理装置。
【請求項6】
請求項2から請求項5までのいずれか一項に記載の電力管理装置であって、
前記予測部は、翌日以降7日間のそれぞれにおける前記蓄電池の蓄電量の推移および前記電圧逸脱状態の発生の推移を予測し、
前記電圧逸脱予報作成部は、予測された翌日以降7日間のうちの少なくとも1日に前記電圧逸脱状態の発生が予測された場合に、前記発生予定日のそれぞれに対応する前記電圧逸脱予報を作成し、
前記出力部は、作成された1日以上の前記電圧逸脱予報を他の装置へと1度にまとめて出力する、電力管理装置。
【請求項7】
電力系統から供給される電力と、分散電源の発電電力との少なくとも一方を、電力を消費する負荷へと供給し、前記電力系統の電圧が予め設定された上限電圧以上となる電圧逸脱状態が発生した場合に、前記分散電源の発電電力の前記電力系統への逆潮流を停止する配電システムに用いられるコンピュータプログラムであって、
前記電力系統の電圧変化と、前記分散電源の発電電力と、前記分散電源から前記電力系統へと逆潮流する逆潮流電力と、前記負荷の使用電力と、を含むデータを取得するデータ取得機能と、
少なくとも翌日以降の天候予報情報を取得する天候情報取得機能と、
前記データ取得機能により取得されたデータと、取得された前記天候予報情報とを記憶するデータ記憶機能と、
前記データ記憶機能に記憶されたデータと、前記天候予報情報とを用いて、少なくとも翌日以降の前記分散電源の発電電力と、前記逆潮流電力と、前記負荷の使用電力と、前記電圧逸脱状態の発生とを予測する予測機能と、
翌日以降において前記電圧逸脱状態の発生が予測された場合に、前記電圧逸脱状態が発生する発生予定日における電力の使用用途の情報を検索によって取得し、取得された前記使用用途の情報および前記使用用途に用いられる前記負荷の情報を含む紹介情報と、予測された前記電圧逸脱状態の発生情報とを含む電圧逸脱予報を作成する電圧逸脱予報作成機能と、
作成された前記電圧逸脱予報を他の装置へと出力する出力機能と、
をコンピュータに実現させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力管理装置およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光発電装置等の分散電源による発電電力を商用電源と組み合わせ、さらに蓄電池に蓄電して、商用電源、分散電源、蓄電池から機器へ電力を供給する配電システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような配電システムは、戸建ての住戸などの需要側の施設に設置されており、分散電源の発電電力を電力系統に逆潮流させて売電することができる。しかし、電力系統の電圧が上限電圧を上回る電圧逸脱状態が発生すると、逆潮流が停止する。逆潮流の停止により、分散電源の発電電力を売電できなくなり、分散電源の保有者が経済的な損失を被るおそれがある。
【0003】
特許文献1に記載された配電システムの電力管理システムは、電圧逸脱状態の発生を抑制するために、電力系統の電圧に応じた電圧逸脱状態の発生リスクを決定する。数時間後の決定された電圧逸脱状態の発生リスクが低い場合には、ユーザに発生リスクについて通知する。一方、数時間後の電圧逸脱状態の発生リスクが高い場合には、分散電源である蓄電池の充電が自動で行われ、分散電源から電力系統へと供給される電力が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された技術では、数時間後の電圧逸脱状態の発生リスクに応じて、ユーザへの報知や蓄電池の充電が行われる。しかしながら、例えば分散電源が太陽光発電の場合には発電量のピークは正午前後である。この場合に、ユーザは、正午の数時間前に電圧逸脱状態の発生リスクを通知されても、蓄電池に蓄えられた電力を有効活用できないおそれがある。特に、日中勤務して在宅していないユーザだと、勤務前の在宅時に電力を有効活用するための考慮時間が極めて短く、有効活用できないおそれがある。また、特許文献1では、電力の活用方法として蓄電池の充電が挙げられているが、活用方法としては、電気自動車の充電や家電への電力供給などの種々の方法が存在する。
【0006】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、電圧逸脱状態の発生を抑制した上で、電力の多様な活用方法をユーザに選択できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現できる。
【0008】
(1)本発明の一形態によれば、電力系統から供給される電力と、分散電源の発電電力との少なくとも一方を、電力を消費する負荷へと供給し、前記電力系統の電圧が予め設定された上限電圧以上となる電圧逸脱状態が発生した場合に、前記分散電源の発電電力の前記電力系統への逆潮流を停止する配電システムに用いられる電力管理装置が提供される。この電力管理装置は、前記電力系統の電圧変化と、前記分散電源の発電電力と、前記分散電源から前記電力系統へと逆潮流する逆潮流電力と、前記負荷の使用電力と、を含むデータを取得するデータ取得部と、少なくとも翌日以降の天候予報情報を取得する天候情報取得部と、前記データ取得部により取得されたデータと、前記天候情報取得部により取得された前記天候予報情報とを記憶するデータ記憶部と、前記データ記憶部に記憶されたデータと、前記天候予報情報とを用いて、少なくとも翌日以降の前記分散電源の発電電力と、前記逆潮流電力と、前記負荷の使用電力と、前記電圧逸脱状態の発生とを予測する予測部と、前記予測部により翌日以降において前記電圧逸脱状態の発生が予測された場合に、前記電圧逸脱状態が発生する発生予定日における電力の使用用途の情報を検索によって取得し、取得された前記使用用途の情報および前記使用用途に用いられる前記負荷の情報を含む紹介情報と、予測された前記電圧逸脱状態の発生情報とを含む電圧逸脱予報を作成する電圧逸脱予報作成部と、前記電圧逸脱予報作成部により作成された前記電圧逸脱予報を他の装置へと出力する出力部と、を備える。
【0009】
この構成によれば、電圧逸脱状態の発生有無が予測される。作成される電圧逸脱予報には、検索によって取得された紹介情報と、電圧逸脱状態の発生情報とが含まれている。すなわち、電圧逸脱状態の発生によって分散電源の発電電力のうち、抑制される予定の電力を、予測により事前に出力される電力の使用用途(例えば、料理や洗濯などの家電の使用)に利用できる。すなわち、ユーザは、翌日以降に抑制される予定だった電力を、紹介情報を参考にして多様な方法により活用できる。このため、抑制されるはずだった電力を有効活用できる。
【0010】
(2)上記態様の電力管理装置において、前記データ取得部は、さらに電力を蓄電可能な蓄電池が充電する際の充電電力と、前記蓄電池から放電される放電電力と、前記蓄電池の蓄電量とを含むデータを取得し、前記予測部は、少なくとも翌日の前記蓄電池の蓄電量の推移を予測してもよい。
この構成によれば、電力の充放電が可能な蓄電池に関するデータが取得される。蓄電池がある場合は、蓄電池がない場合に比べて、蓄電池の充電を利用できるため電力の抑制に備える時間的自由度が上がる。例えば、前日の夜などに蓄電池に蓄えたれた電力を消費して、蓄電池の空き容量を空けておけば、電力の抑制が発生するときに蓄電池に電力を充電することで、電力の抑制を回避できる。
【0011】
(3)上記態様の電力管理装置において、さらに、前記電圧逸脱予報作成部により取得された前記紹介情報を記憶する紹介情報記憶部を備え、前記電圧逸脱予報作成部は、前記紹介情報記憶部に記憶された前記紹介情報を参照して、新たに取得した前記紹介情報が過去に取得された前記紹介情報と同じ内容の場合であって、かつ、過去に取得された前記紹介情報が取得された時から所定の期間が経過していない場合に、異なる前記紹介情報を取得し、前記紹介情報記憶部に記憶された前記紹介情報を参照して、新たに取得した前記紹介情報が過去に取得された前記紹介情報と内容が異なる場合、または、過去に取得された前記紹介情報が作成された時から前記所定の期間を経過している場合に、新たに取得した前記紹介情報を含む前記電圧逸脱予報を作成してもよい。
この構成によれば、所定の期間が経過していない場合には、同じ内容の紹介情報が他の装置に出力されずに済む。一方で、取得された紹介情報が過去と同じ内容であっても所定の期間が経過している、または、取得された紹介情報の内容が過去と異なる場合には、目新しさのある紹介情報として他の装置に出力される。この結果、所定の期間が経過するまで同じ内容の紹介情報をユーザに提案しなくて済み、余剰電力の有効活用を推進するだけでなく、余剰電力の活用を通して、ユーザに新しいことを体験するきっかけを提供できる。
【0012】
(4)上記態様の電力管理装置において、前記紹介情報に含まれる前記使用用途の情報は、料理と、洗濯と、電気自動車の利用と、DIY(Do it yourself)とのいずれかに関連する情報であってもよい。
この構成によれば、電力使用用途が料理、洗濯、電気自動車の利用、およびDIYといった電力の使用用途は、比較的消費電力が大きいが、準備に時間を要する内容である。このため、本技術を用いて事前に準備することで、上記用途で電力を有効活用することが可能となる。
【0013】
(5)上記態様の電力管理装置において、前記電圧逸脱予報作成部は、前記負荷の使用時に用いられる製品の特売情報と、前記負荷である電気機器の新製品の情報との少なくとも一方の情報である付加情報を検索によって取得し、さらに前記付加情報を含む前記電圧逸脱予報を作成してもよい。
この構成によれば、電力使用用途に加えて、特売情報や負荷として用いられる機器の新製品の情報などの付加情報を含む電圧逸脱予報が作成される。そのため、ユーザは、他の装置を介して電圧逸脱予報を取得することで、例えば、電力使用用途が料理だった場合に、料理の食材の準備や、既に保有している古くなった調理器具の新商品への買い換えなどをより安価に行うことができる。
【0014】
(6)上記態様の電力管理装置において、前記予測部は、翌日以降7日間のそれぞれにおける前記蓄電池の蓄電量の推移および前記電圧逸脱状態の発生の推移を予測し、前記電圧逸脱予報作成部は、予測された翌日以降7日間のうちの少なくとも1日に前記電圧逸脱状態の発生が予測された場合に、前記予測日のそれぞれに対応する前記電圧逸脱予報を作成し、前記出力部は、作成された1日以上の前記電圧逸脱予報を他の装置へと1度にまとめて出力してもよい。
この構成によれば、翌日以降7日間の電圧逸脱予報および電力の使用用途が他の装置へと出力される。一週間である7日間を1つのサイクルとする生活リズムのユーザは多い。そのため、翌日以降7日間の電力の使用用途を含む電圧逸脱予報が事前に他の装置へと出力されることにより、他の装置の所持者であるユーザは、生活リズムに沿って一週間の予定を立てることができる。この結果、ユーザは発生予定日に抑制される予定だった電力をより有効活用できる。
【0015】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、配電システム、電力管理装置、電力管理システム、電力管理方法およびこれらの装置を備えるシステム、これら装置を実行するためのコンピュータプログラム、このコンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、コンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態としての電力管理装置を備える配電システムの概略ブロック図である。
【
図2】電圧逸脱予報の作成のフローチャートである。
【
図4】発電電力量を予測するフローチャートである。
【
図7】電圧逸脱状態が発生していない状態の逆潮流電力の上限を予測するフローチャートである。
【
図8】電圧逸脱状態が発生していない状態の逆潮流電力と電圧との相関関数の説明図である。
【
図9】電圧逸脱状態が発生している状態の逆潮流電力の上限を予測するフローチャートである。
【
図10】電圧逸脱状態が発生している状態の逆潮流電力と電圧とのデータの相関を表す説明図である。
【
図11】第1実施例の電圧逸脱予報の作成のフローチャートである。
【
図13】第2実施形態の電力管理装置を備える配電システムの概略ブロック図である。
【
図14】蓄電池容量の予測のフローチャートである。
【
図16】蓄電の開始時刻および終了時刻の算出のフローチャートである。
【
図17】逆潮流電力が最大となる時刻の説明図である。
【
図18】予測された蓄電装置の蓄電量の時間推移の一例の説明図である。
【
図19】蓄電装置がある場合の電圧逸脱予報の一例の説明図である。
【
図20】第2実施例の電圧逸脱予報の作成のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
図1は、本発明の一実施形態としての電力管理装置100を備える配電システム300の概略ブロック図である。本実施形態の配電システム300は、電力を消費する電気機器50(負荷)へと、電力系統から供給される電力と、分散電源としての太陽電池20の発電電力との少なくとも一方を供給する。配電システム300は、太陽電池20の発電電力を電力系統に逆潮流させる逆潮流動作を実現できる。配電システム300は、電力系統の電圧が予め設定された上限電圧以上となる電圧逸脱状態が発生した場合に逆潮流動作を停止する。
【0018】
図1に示されるように、配電システム300は、分電盤10と、太陽光発電を行う太陽電池20と、電力変換装置30と、電力を蓄電可能な蓄電装置(蓄電池)40と、電力を消費する負荷として機能する電気機器50と、ユーザが所持するスマートフォンなどの情報端末(他の装置)60と、電気機器50の消費電力を制御する電力管理装置100とを備えている。
【0019】
分電盤10には、図示されていない電力系統を介して交流電力が供給される。また、分電盤10には、太陽電池20により発電された直流電力が電力変換装置30により変換された交流電力が供給される。分電盤10は、電力系統から供給される電力および電圧を計測する計測部11を備えている。計測部11は、電力変換装置30から分電盤10へと供給される太陽電池の発電電力と、逆潮流電力の電力および電圧とを計測する。計測部11は、定期的に計測した計測データを生成する。計測部11は、生成した計測データを電力管理装置100へと送信する。なお、
図1では、電力の供給が破線で示されている。
【0020】
電力変換装置30は、太陽電池20の発電により出力される直流電力を交流電力に変換する電力変換部31と、電力変換部31の各種動作を制御する電力変換制御部32とを備えている。電力変換部31は、分電盤10を介して直流電力から変換した交流電力を電力系統に供給する。電力変換部31は、電力系統との系統連系が可能となるように、出力する交流電力の周波数および出力電圧を調節する。また、変換した交流電力は、分電盤10から図示されていない分岐回路を介して電気機器50にも供給される。電気機器50で消費されない余剰電力は、電力系統を通って逆潮流して売電される。
【0021】
電力変換制御部32は、電力変換部31の動作を制御して、電力変換部31が出力する発電電力を増減する。電力変換制御部32は、太陽電池の発電電力の計測データを取得する。電力変換制御部32は、取得した各計測データを、分電盤10を経由して電力管理装置100へ送信する。なお、電力変換制御部32は、分電盤10と、電力管理装置100との間で通信を行う通信インターフェースとしても機能する。なお、本実施形態における太陽電池20と電力変換装置30とは、太陽光発電装置として機能する。
【0022】
本実施形態の電力管理装置100は、家電、電気設備を最適に制御する、いわゆるHEMS(Home Energy Management System)である。電力管理装置100は、制御信号を送受信することにより、電力変換装置30、電気機器50、情報端末60の動作状態を監視および制御を実行する。
図1に示されるように、電力管理装置100は、データ取得部110と、計測データ記憶部(データ記憶部)120と、天候情報記憶部(データ記憶部)130と、基準情報記憶部140と、予測部150と、電気機器50を制御する機器制御部(出力部)160と、電圧逸脱予報作成部170と、紹介情報記憶部180として機能する。
【0023】
データ取得部110は、分電盤10の計測部11により計測された計測データと、電力変換装置30の電力変換部31により取得された計測データとを分電盤10から取得する。データ取得部110が取得するデータには、系統電圧と、電気機器50が使用する使用電力と、太陽電池の発電電力と、逆潮流電力とのそれぞれの過去のデータが含まれている。本実施形態のデータ取得部110により取得されるデータには、少なくとも直近の過去7日間の計測データが含まれている。データ取得部110が取得した計測データは、計測データ記憶部120に記憶される。
【0024】
天候情報記憶部130は、過去の天候情報と、少なくとも翌日以降7日間の天候情報の予報(天候予報情報)とを記憶している。本実施形態の天候情報は、曜日ごとに対応付けられた天気および気温の組み合わせである。本実施形態の天候情報記憶部130は、予め過去の天候情報および天候情報の予報を記憶しているが、他の実施形態では、インターネットの接続などを行って天候情報を取得してもよく、天候情報取得部としても機能してもよい。基準情報記憶部140には、逆潮流動作が停止する電力系統の上限電圧が記憶されている。
【0025】
予測部150は、計測データ記憶部120に記憶された過去の計測データと、天候情報記憶部130に記憶された天候情報の予報とを用いて、翌日以降7日間の電圧逸脱状態の発生を予測する。
図1に示されるように、予測部150は、電気機器50の使用電力を予測する需要予測部151と、太陽電池20の発電電力を予測する発電予測部152と、電圧逸脱状態の発生を予測する電圧逸脱予測部154として機能する。電圧逸脱予報作成部170は、上記予測結果及びデータをもとに電圧逸脱予報を作成する。以下では電圧逸脱予報について説明する。各予測部での予測方法については後述する。
【0026】
電圧逸脱予報作成部170は、電圧逸脱状態の発生の予測結果を用いて、翌日以降7日間の電圧逸脱予報を作成する。電圧逸脱予報には、電圧逸脱予報作成部170により検索によって取得された電力の使用用途の情報と、取得された使用用途の情報および使用用途に用いられる電気機器50の情報を含む紹介情報が含まれている。また、電圧逸脱予報には、予測された電圧逸脱状態の発生についての発生情報が含まれている。電圧逸脱予報作成部170は、電力の使用量が大きい機器(例えば、ホットプレート、オーブン、IH(Induction Heating)、乾燥器、BEV(Battery Electric Vehicle)、DIY(Do it yourself)に用いられる電動ドリルなど)を抽出する。電圧逸脱予報作成部170は、これらの機器を用いた電力の使用用途の情報を、インターネットを用いて検索することで取得する。
【0027】
機器制御部160は、電圧逸脱予報作成部170により作成された電圧逸脱予報を情報端末60へと送信する。電圧逸脱予報作成部170により作成された電圧逸脱予報に含まれる紹介情報は、紹介情報記憶部180に記憶される。
【0028】
電圧逸脱予報作成部170は、紹介情報記憶部180に記憶された過去に取得された紹介情報を参照して、インターネットを検索することにより新たに取得された使用用途の情報の作成有無を決定する。具体的には、電圧逸脱予報作成部170は、新たに取得された紹介情報が過去に取得された紹介情報と同じ内容の場合、かつ、過去に取得された紹介情報が取得されたときから所定の期間が経過していない場合には、異なる紹介情報を取得する。一方で、電圧逸脱予報作成部170は、新たに取得された紹介情報が過去に取得された紹介情報と内容が異なる場合、または、過去に取得された紹介情報が取得されたときから所定の期間を経過している場合には、新たに取得した紹介情報を含む電圧逸脱予報を作成する。例えば、電圧逸脱予報作成部170は、所定の期間が14日間であった場合、かつ、電圧逸脱状態が連続する2日間で発生する場合に、連続する2日間で電気機器50であるホットプレートを利用した同じ料理の使用用途を含む電圧逸脱予報を作成しない。あるいは、同じホットプレートを利用したとしても、別の料理の情報を提供するような、電圧逸脱予報を作成する。
【0029】
また、電圧逸脱予報作成部170は、選択された電力の活用に用いられる電気機器50の使用時に用いられる製品の特売情報(例えば、料理器具の使用時に用いられる食材)と、電力の活用に用いられる電気機器50の新製品の情報との少なくとも一方を含む付加情報を含む電圧逸脱予報を作成する。
【0030】
本実施形態の機器制御部160は、翌日以降7日間の電力逸脱予報を、情報端末60に1度にまとめて送信する。1日につき1回送信する。このような構成とすることで、ユーザはいつ、どの程度の電圧逸脱が起きるのかを事前に知ることができ、電力消費の計画/準備を時間的に余裕のある状態で行うことができる。このため、ユーザは準備に時間を要するような電力の消費方法も選択できるようになり、多様な方法で電力の有効活用を行える。また、電力逸脱予報を通して多様な電力の消費方法をユーザに知らせることができるため、電力の有効活用を通して、ユーザがまだ体験したことがないようなことを体験するきっかけを提供することにもつながる。
【0031】
図2は、電圧逸脱予報の作成のフローチャートである。電圧逸脱予報の作成フローでは、初めに、データ取得部110が、分電盤10の計測データと、電力変換装置30の計測データとを取得する(ステップS21)。データ取得部110が取得する計測データには、系統電圧と、電気機器50の使用電力量と、逆潮流電力とが含まれている。
【0032】
需要予測部151は、データ取得部110により取得された計測データを用いて、翌日以降7日間の電気機器50の需要を予測する(ステップS22)。需要予測部151は、一週間前の同じ曜日における、買電力量、太陽電池20の発電電力量、および逆潮流電力を用いて、需要を予測する。
【0033】
発電予測部152は、計測データ記憶部120に記憶された計測データと、天候情報記憶部130に記憶された過去の天候情報の予報を用いて、翌日以降7日間の発電電力量を予測する(ステップS23)。発電予測部152は、予測される天候と同じ天候の過去の日の発電電力量を用いて、予測する日の発電電力量を予測する。予測に用いられる過去の日の発電電力量が電圧逸脱状態の発生により抑制されている場合には、
図2の発電電力量の予測フローを用いて、電圧逸脱状態が発生しなかった場合の発電電力量を予測する。
【0034】
電圧逸脱予測部154は、太陽電池20の発電電力量の予測と、電気機器50の予測された需要電力量とを用いて、電圧逸脱状態の発生を予測する(ステップS24)。
【0035】
電圧逸脱予報作成部170は、電圧逸脱状態が発生する発生予定日における電力の使用用途の情報をインターネット検索により取得する(ステップS25)。電圧逸脱予報作成部170は、取得された電力の使用用途を含む紹介情報と、電圧逸脱状態の発生情報とを含む電圧逸脱予報を作成して(ステップS26)、電圧逸脱予報の作成フローは終了する。ステップS26の処理において、電圧逸脱予報作成部170は、上述したように、新たに取得された電力の使用用途を含む紹介情報が過去に作成された紹介情報と同じ内容の場合には、所定の期間の経過有無の判定により、新たに取得された紹介情報を含む電圧逸脱予報の作成有無を判断する。それでは、以下で、需要予測部151、発電予測部152、電圧逸脱予測部154での予測手順を説明する。
【0036】
需要予測部151は、計測データ記憶部120に記憶された計測データを用いて、電気機器50の翌日以降7日間で需要として発生する需要電力量を予測する。具体的には、需要予測部151は、一週間前の同じ曜日における、電力系統から購入した買電力量、太陽電池20の発電電力量、電力系統への逆潮流電力量を用いて下記式(1)を解くことにより、電気機器50の需要電力量を予測する。
需要電力量=(買電力量+発電電力)-(逆潮流電力)…(1)
【0037】
発電予測部152は、天候情報記憶部130に記憶された過去の天候情報から、翌日以降7日間に予測される天候と同じ天候の過去の日の発電電力量を用いて、翌日以降7日間の各予測日の発電電力量を予測する。
予測は以下の手順で実施する。
(1)予測対象日の天気予報を確認する。
(2)過去1週間の同じ天候の日の発電電力推移を読込む。
この際、過去の同じ天候の日に、発電電力が抑制されているものがあった場合、抑制されなかった場合の発電量を予測する。抑制されなかった場合の発電量の予測方法は
図3,4を用いて後ほど説明する。
(3)(2)で読込んだ過去の発電電力推移(抑制があった日については、抑制されなかった場合の発電電力推移を予測したもの)を平均する。
(4)(3)で平均した発電電力推移を、予測対象日の発電電力推移とする。
【0038】
図3は、発電電力量の予測の説明図である。
図3には、太陽電池20が発電する電力の時間推移が示されている。
図3には、電圧逸脱状態が発生した過去の日の発電電力の推移が実線の曲線C1で示され、電圧逸脱状態が発生していない過去の日の発電電力推移が一点鎖線の曲線C2で示されている。また、電圧逸脱状態が発生した曲線C1で表される過去の日に、電圧逸脱状態が発生しなかった場合の発電電力の推移が破線の曲線C3で示されている。そのため、電圧逸脱状態が発生した過去の日において、抑制された発電電力量P1は、曲線C3から曲線C2を差し引いた
図2のハッチングされた領域の面積で表される。なお、電圧逸脱状態が発生していない日の発電電力推移は、過去1週間の発電電力推移を平均したものでもよい。
【0039】
-発電電力の予測 (2)電圧逸脱が発生した日の発電電力について、抑制されなかった場合の発電力を予測する-
図4は、電圧逸脱状態が発生した過去の日において発電電力が抑制されなかった場合の発電電力量を予測するフローチャートである。初めに、発電予測部152は、予測日と同じ天候であり、かつ、電圧逸脱状態が発生した過去の発電電力量(曲線C1)を取得する(ステップS1)。発電予測部152は、過去の発電電力量を用いて発電が抑制された時刻t1,t2(
図3)を特定する(ステップS2)。発電予測部152は、太陽電池20の電圧推移から、電圧が一定となる時刻t1,t2を特定する。
【0040】
発電予測部152は、電圧逸脱状態が発生した過去の日と同じ天候で、かつ、電圧逸脱状態が発生していない日の発電電力量(曲線C2)を取得する(ステップS3)。発電予測部152は、電圧逸脱状態が発生していない発電電力量を表す曲線C2における時刻t1,t2の電力が、電圧逸脱状態が発生している発電電力量を表す曲線C1の電力と同じになるような係数を算出する(ステップS4)。本実施形態では、発電予測部152は、時刻t1における曲線C1と曲線C2との電力差の二乗と、時刻t2における曲線C1と曲線C2との電力差の二乗との和が最小になるような係数を算出する。発電予測部152は、算出した係数を、電圧逸脱状態が発生していない発電電力量を表す曲線C2に乗じた曲線を、曲線C3で表される電圧逸脱状態が発生しなかった場合の発電電力量として予測し(ステップS5)、発電電力量の予測フローが終了する。
【0041】
-電圧逸脱の予測-
続いて電圧逸脱予測部の予測方法について、
図5を用いて説明する。
図1に示される電圧逸脱予測部154は、予測する時刻における電気機器50の予測された需要電力量から、太陽電池20の予測された発電電力量を差し引いた電力量である残需要を予測する(ステップS12)。
図6は、残需要の説明図である。
図6には、太陽電池20の予測された発電電力が電気機器50の需要電力量を上回り、売電している状態における逆潮流電力の予測値の時間推移(曲線C4)が示されている。逆潮流電力は、太陽電池20から電力系統へと供給電力であるため、残需要の正負が逆の電力である。すなわち、
図6では、残需要の正負が逆になった逆潮流電力の時間推移が示されている。
図6に示されるように、曲線C4は、日中の太陽光により発電するため、時刻t4~t5に含まれる正午近傍で最も高くなる。
【0042】
図5のステップS12の処理が行われると次に、電圧逸脱予測部154は、逆潮流電力の上限Pmax(
図6)を予測する(ステップS13)。過去の逆潮流電力のデータから、電圧逸脱状態が発生せずに逆潮流電力が抑制されていない状態と、電圧逸脱状態が発生して逆潮流電力が抑制された状態とで、それぞれ異なる処理によって逆潮流電力の上限Pmaxが予測される。
【0043】
図7は、電圧逸脱状態が発生していない状態の逆潮流電力の上限Pmaxを予測するフローチャートである。初めに、電圧逸脱予測部154は、過去の電圧逸脱状態が発生していない逆潮流電力と電圧との計測データを取得する(ステップS131A)。電圧逸脱予測部154は、取得された計測データから、逆潮流電力と電圧との相関関数Faを抽出する(ステップS132A)。
【0044】
図8は、電圧逸脱状態が発生していない状態の逆潮流電力と電圧との相関関数Faの説明図である。
図8には、横軸に逆潮流電力が取られ、縦軸に電圧が取られた場合の相関関数Faが示されている。
図8に示されるDT1~DT5は、過去のデータのプロットである。本実施形態の電圧逸脱予測部154は、複数のプロットDT1~DT5に対して最小二乗法を用いることにより、相関関数Faを抽出する。
【0045】
抽出された相関関数Faと、基準情報記憶部140に記憶された電力が抑制される上限電圧とを用いて、逆潮流電力の上限Pmaxが算出される(
図7のステップS133A)。
図8に示されるように、相関関数Fa上において、上限電圧に対応する電力値が、逆潮流電力の上限Pmaxとして算出され、逆潮流電力の上限Pmaxの予測フローが終了する。
【0046】
図9は、電圧逸脱状態が発生している状態の逆潮流電力の上限Pmaxを予測するフローチャートである。初めに、過去の電圧逸脱状態が発生していた逆潮流電力と電圧とのデータが取得される(ステップS131B)。電圧逸脱状態が発生している場合には、取得された計測データのうち、電圧の最大値が取得される(ステップS132B)。取得された計測データから、最大値の電圧に所定の乗数k(例えば、0.995)を乗じた値以上の電圧値の計測データが抽出される(ステップS133B)。所定の乗数kは、ユーザにより設定されてもよいし、基準情報記憶部140に記憶されていてもよい。
【0047】
図10は、電圧逸脱状態が発生している状態の逆潮流電力と電圧とのデータの相関を表す説明図である。
図8には、横軸に逆潮流電力が取られ、縦軸に電圧が取られた場合の9つのデータDT6~DT14がプロットされている。
図8には、データDT6~DT14に加えて、データDT6~DT14のうち、電圧の最大値であるデータDT11の電圧値と、データDT11の最大の電圧値に乗数k(例えば0.995,0<k<1)を乗じた値とが破線で示されている。
【0048】
図9のステップS133Bの処理が行われると、蓄電量予測部153は、抽出された最大の電圧に乗数kを乗じた値以上のデータDT10~DT14(
図10)のうちから、最小値であるデータDT10の電圧値に対応する逆潮流電力を、逆潮流電力の上限Pmaxとして抽出し(ステップS134B)、逆潮流電力の上限Pmaxの予測フローを終了する。
【0049】
電圧逸脱予測部154は、予測された逆潮流電力の上限Pmaxを用いて、太陽電池20の発電電力のうち抑制された抑制電力を算出する(
図5のステップS14)。
図6に示されるように、予測された逆潮流電力の上限Pmaxと、逆潮流電力の時間推移(曲線C4)とを用いることにより、抑制電力量P3が算出される。
【0050】
以上のように、本実施形態の電力管理装置100では、データ取得部110が、分電盤10の計測部11により計測された計測データと、電力変換装置30の電力変換部31により取得された計測データとを取得する。天候情報記憶部130は、過去の天候情報と、少なくとも翌日以降7日間の天候情報の予報とを記憶している。予測部150は、計測データ記憶部120に記憶された過去の計測データと、天候情報記憶部130に記憶された天候情報の予報とを用いて、翌日以降7日間の電圧逸脱状態の発生を予測する。電圧逸脱予報作成部170は、電圧逸脱状態の発生の予測結果を用いて、翌日以降7日間の電圧逸脱予報を作成する。電圧逸脱予報には、電圧逸脱予報作成部170により検索によって取得された電力の使用用途の情報と、取得された使用用途の情報および使用用途に用いられる電気機器50の情報を含む紹介情報が含まれている。また、電圧逸脱予報には、予測された電圧逸脱状態の発生についての発生情報が含まれている。本実施形態では、少なくとも翌日以降の電圧逸脱状態の発生有無が予測される。作成される電圧逸脱予報には、検索によって取得された紹介情報と、電圧逸脱状態の発生情報とが含まれている。そのため、電圧逸脱状態の発生によって太陽電池20の発電電力のうち、抑制される予定の電力が、予測により事前に出力される電力の使用用途に利用できる。すなわち、ユーザは翌日以降に抑制される予定だった電力が紹介情報を参考にして抑制されるはずだった電力を有効活用できる。
【0051】
また、本実施形態の電圧逸脱予報作成部170は、新たに取得された紹介情報が過去に取得された紹介情報と同じ内容の場合、かつ、過去に取得された紹介情報が取得されたときから所定の期間が経過していない場合には、異なる紹介情報を取得する。一方で、電圧逸脱予報作成部170は、新たに取得された紹介情報が過去に取得された紹介情報と内容が異なる場合、または、過去に取得された紹介情報が取得されたときから所定の期間を経過している場合には、新たに取得した紹介情報を含む電圧逸脱予報を作成する。すなわち、所定の期間が経過していない場合には、同じ内容の紹介情報が情報端末60に出力されずに済む。一方で、取得された紹介情報が過去と同じ内容であっても所定の期間が経過している、または、取得された紹介情報の内容が過去と異なる場合には、目新しさのある紹介情報として情報端末60に出力される。この結果、所定の期間が経過するまで同じ内容の紹介情報を情報端末60の所持者であるユーザに提案しなくて済み、余剰電力の有効活用を推進するだけでなく、剰電力の活用を通して、ユーザに新しいことを体験するきっかけを提供できる。
【0052】
また、本実施形態の電圧逸脱予報作成部170は、機器制御部160が制御可能な電気機器50のうち、例えば、ホットプレート、オーブン、IH、乾燥器、BEV、DIYに用いられる電動ドリルなどを抽出し、機器制御部160を介して情報端末60へと送信する。本実施形態では、電力使用用途が料理、洗濯、電気自動車の利用、およびDIYといった電力の使用用途は、比較的消費電力が大きいが、準備に時間を要する内容である。このため、本技術を用いて事前に準備することで 上記用途で電力を有効活用することが可能となる。
【0053】
また、本実施形態の電圧逸脱予報作成部170は、選択された電力の活用に用いられる電気機器50の使用時に用いられる製品の特売情報と、電力の活用に用いられる電気機器50の新製品の情報との少なくとも一方を含む付加情報を、機器制御部160を介して情報端末60へと送信する。本実施形態では、電力の使用用途に加えて、特売情報や負荷として用いられる機器の新製品の情報などの付加情報を含む電圧逸脱予報が作成される。そのため、ユーザは、情報端末60を介して電圧逸脱予報を取得することで、例えば、電力の使用用途が料理だった場合に、料理の食材の準備や、既に保有している古くなった調理器具の新商品への買い換えなどをより安価に行うことができる。
【0054】
また、本実施形態の電圧逸脱予報作成部170は、翌日以降7日間のうち電圧逸脱状態が発生する発生予定日のそれぞれに対応する電力逸脱予報を、情報端末60に1度にまとめて送信する。本実施形態では、翌日以降7日間の電圧逸脱予報および電力の使用用途が情報端末60へと送信される。一週間である7日間を1つのサイクルとする生活リズムのユーザは多い。そのため、翌日以降7日間の電力の使用用途を含む電圧逸脱予報が事前にまとめて情報端末60に送信されることにより、ユーザは、生活リズムに沿って一週間の予定を立てることができる。この結果、ユーザは発生予定日に抑制される予定だった電力をより有効活用できる。
【0055】
<第1実施例>
以下では、電圧逸脱予報に含まれる電力の具体的な活用方法の一例について説明する。本実施例では、電圧逸脱予報作成部170が、電力の使用用途のジャンルとして「料理」を選択した場合に、機器制御部160へと送信される電圧逸脱予報に含まれる紹介情報を取得する。紹介情報には、機器制御部160が電力使用時に制御する電気機器50と、当該電気機器50の使用方法とに関する情報が含まれている。
【0056】
図11は、第1実施例の電圧逸脱予報の作成のフローチャートである。電圧逸脱予報の作成フローでは、初めに、翌日以降7日間で電圧逸脱状態が発生する発生予定日を特定する(ステップS31)。例えば、現時点の日付が5月22日であり、3日後の5月25日に抑制される予定の電力が、2kWh発生する。
【0057】
次に、電圧逸脱予報作成部170は、発生予定日から抑制日の季節を特定する(ステップS32)。電圧逸脱予報作成部170は、機器制御部160が制御可能な調理器具としての電気機器50を特定する(ステップS33)。電圧逸脱予報作成部170は、特定された季節と、電気機器50(例えば、「料理」に用いるホットプレート)とを検索ワードとして、WebやSNS(Social Networking Service)で料理を検索する(ステップS34)。なお、検索時に、「インスタ映え」などの特定の検索ワードを付加してもよい。
【0058】
電圧逸脱予報作成部170は、検索結果の中からアクセス数を考慮して複数の料理を仮決定する(ステップS35)。電圧逸脱予報作成部170は、さらに、仮決定された料理に関連する付加情報を取得する。付加情報としては、料理のレシピに使用される食材の特売情報、料理に合う飲料の情報、特売情報と日付から特定される近隣のスーパーマーケットのチラシ、および料理に用いる電気機器50の特売情報などが挙げられる。
【0059】
電圧逸脱予報作成部170は、紹介情報記憶部180に記憶された過去の紹介情報を参照することにより、仮決定された各料理方法と同じ内容が過去に紹介されているか否かを判定する(ステップS36)。仮決定された料理方法と同じ内容が過去に紹介されていないと判定された場合には(ステップS36:NO)、後述するステップS38の処理が行われる。
【0060】
仮決定された料理方法と同じ内容が過去に紹介されていたと判定された場合には(ステップS36:YES)、電圧逸脱予報作成部170は、過去に紹介されてから所定の期間(例えば、14日間)が経過しているか否かを判定する(ステップS37)。仮決定された料理方法が紹介されてから所定の期間が終了していない場合には(ステップS37:NO)、再度、料理方法の仮決定が行われる(ステップS35)。
【0061】
仮決定された料理方法が紹介されてから所定の期間が経過していると判定された場合には(ステップS37:NO)、電圧逸脱予報作成部170は、仮決定された料理方法の紹介情報を含む電圧逸脱予報を作成して(ステップS38)、電圧逸脱予報の作成フローが終了する。検索により取得された紹介情報は、紹介情報記憶部180に記憶される。紹介情報には、ステップS35の処理で取得された付加情報が含まれていてもよい。なお、ステップS37の処理において、再度の仮決定処理は、1つでも料理方法が紹介される場合には行われなくてもよい。作成された電圧逸脱予報を
図12に示す。今後7日間の天気や電圧逸脱の発生可能性、そして、予測される抑制電力量などが記述されている。また、特売情報や、電力の使用用途の情報(紹介するサイトのURLと、代表的な図など)も同時に記載されている。そして、紹介した電力の使用用途で消費される電力の目安値の情報なども併記しても良い。前記消費される電力の目安値は、インターネットなどの検索結果を用いても良いし、代表的な電気機器について情報を事前に調査しておき、基準情報記憶部140に保存しておいても良い。このように、電圧逸脱予報を受け取ることで、ユーザはいつ、どの程度の電力が抑制されるか、その電力を有効活用するための方法の情報を得ることができる。その結果、ユーザは準備に時間を要するような電力使用用途であっても、時間的に余裕をもって実施することができる。
そして、電圧逸脱予報は毎日1回送付される。そして、電力の使用用途は毎日新しいものが送付される。このため、ユーザは電圧逸脱が起きる前までに、多様な電力使用用途を知ることができ、その中から自分の好みの用途を選択することも可能となる。
【0062】
以上、第1実施例のように電力の使用用途として「料理」が選択された場合には、事前に使用する電気機器50の情報が情報端末60に送信されることで、ユーザは、料理に使用される食材の購入や下ごしらえなどを、余裕を持って行うことができる。また、所定の期間を経過していない過去に作成された紹介情報が情報端末60に送信されないため、ユーザは、新しい電力の使い道(別の料理の作り方)を知ることができる。また、WebやSNSで料理が検索されるため、ユーザが思いつかないような電力の使用用途としての料理が提示される可能性がある。これにより、電力を有効活用できるだけではなく、ユーザがセレンティビティ(思いがけない幸福)を得られる可能性が高くなる。この結果、ユーザの電力の有効活用が更に進む。また、料理に使用される食材の特売情報や料理に用いる電気機器50の特売情報が情報端末60に送信されることで、ユーザは、電力を有効活用しつつ、食費を低減できる。
【0063】
<第2実施形態>
また、第2実施形態のように、電力管理装置100aは、蓄電装置40を保有した状態で使用しても良い。太陽電池だけでなく、蓄電池も保有する場合の動作について、以下で説明する。構成例を
図13に示す。第2実施形態と、第1実施形態(
図1)との違いは、蓄電装置40があること、および、予測部150の電圧逸脱予測部154aが蓄電装置40の蓄電量も予測することである。なお、第2実施形態では、第1実施形態と異なる構成および制御等について説明し、第1実施形態と同じ構成および制御等についての説明を省略する。
【0064】
-需要の予測-
需要予測部151は、計測データ記憶部120に記憶された計測データを用いて、電気機器50の翌日以降7日間で需要として発生する需要電力量を予測する。具体的には、需要予測部151は、一週間前の同じ曜日における、電力系統から購入した買電力量、太陽電池20の発電電力量、電力系統への逆潮流電力量、および蓄電装置40の充放電電力量を用いて下記式(2)を解くことにより、電気機器50の需要電力量を予測する。
需要電力量=(買電力量+発電電力+放電電力)-(逆潮流電力+充電電力)…(2)
【0065】
-蓄電池容量の予測の説明-
図13に示される電圧逸脱予測部154aは、発電予測部152により予測された発電電力量と、需要予測部151により予測された需要電力量とを用いて、翌日以降7日間の予測日それぞれの蓄電装置40が蓄電可能な容量である蓄電池容量を予測する。本実施形態では、電圧逸脱予測部154aは、既知である本日の蓄電装置40の蓄電池容量を用いて、未知の予測日の蓄電池容量を予測する。具体的には、電圧逸脱予測部154aは、1日のうちで逆潮流電力がゼロとなる日の出の時刻および日の入りの時刻の2つの時刻を用いて、順次予測日の蓄電池容量を予測する。電圧逸脱予測部154aは、例えば、既知である当日の日の入りの時刻の蓄電池容量を用いて、未知である翌日の日の出の時刻の蓄電池容量を予測する。また、電圧逸脱予測部154aは、予測された翌日の日の出の時刻の蓄電池容量を用いて、翌日の日の入りの時刻の蓄電池容量を予測する。このようにして、電圧逸脱予測部154aは、翌日以降7日間の蓄電池容量を順次予測する。
【0066】
図14は、蓄電池容量の予測のフローチャートである。電圧逸脱予測部154aは、初めに、逆潮流電力がゼロの時刻の蓄電池容量を取得する(ステップS11a)。電圧逸脱予測部154aは、予測する時刻(例えば、翌日の日の出)の蓄電池容量の1つ前の時刻(当日の日の入り)の蓄電池容量を取得する。電圧逸脱予測部154aは、予測する時刻の1つ前の時刻が既知の蓄電池容量である場合には、計測データ記憶部120から蓄電池容量を取得する。一方で、予測する時刻の1つ前の時刻が未知の蓄電池容量である場合には、順次の予測により予測された1つ前の時刻の蓄電池容量を取得する。
【0067】
図13に示される電圧逸脱予測部154aは、予測する時刻における電気機器50の予測された需要電力量から、太陽電池20の予測された発電電力量を差し引いた電力量である残需要を予測する(ステップS12a)。
図15は、第2実施形態の残需要の説明図である。
図15には、太陽電池20の予測された発電電力が電気機器50の需要電力量を上回り、売電している状態における逆潮流電力の予測値の時間推移(曲線C4)が示されている。逆潮流電力は、太陽電池20から電力系統へと供給電力であるため、残需要の正負が逆の電力である。すなわち、
図15では、残需要の正負が逆になった逆潮流電力の時間推移が示されている。
図1に示されるように、曲線C4は、日中の太陽光により発電するため、時刻t4~t5に含まれる正午近傍で最も高くなる。
【0068】
残需要が予測されると、電圧逸脱予測部154aは、残需要を用いて蓄電装置40の放電電力量を予測する(
図14のステップS13a)。本実施形態では、電圧逸脱予測部154aは、逆潮流電力がゼロとなる日の入りの時刻t6(
図15)と、日の出の時刻t3とを用いて、当日の日の入りの時刻t6から翌日の日の出の時刻t3までの蓄電装置40の放電電力量P2を算出する。
図1に示されるように、時刻t3,t6は、逆潮流電力がゼロ、すなわち、電気機器50の消費電力と、太陽電池20の発電電力とが同じ時刻である。時刻t6以降から翌日の時刻t3までの間では、蓄電装置40の放電により電気機器50の消費電力がまかなわれている。そのため、電圧逸脱予測部154aは、予測された電気機器50の残需要と、日の入りの時刻t6と、日の出の時刻t3とを用いることにより、放電電力量P2を算出できる。なお、時刻t4は、蓄電装置40の蓄電の開始時刻である。時刻t5は、蓄電装置40の蓄電の終了時刻である。時刻t4,t5の予測については後述する。
【0069】
電圧逸脱予測部154aは、予測された放電電力量P2と、既知の日の入りの時刻t6の蓄電装置40の蓄電量とを用いて、未知である翌日の日の出の時刻t3の蓄電装置40の空き容量CSを予測する(
図14のステップS14a)。電圧逸脱予測部154aは、既知の時刻t6の蓄電量から、予測された放電電力量P2(
図15)を差し引いた電力量を、翌日の時刻t3の蓄電量として予測する。電圧逸脱予測部154aは、予測された蓄電量と、太陽電池20が蓄電可能な容量とを用いて、空き容量CSを予測する。
【0070】
電圧逸脱予測部154aは、蓄電量が予測された翌日の時刻t3以降に、蓄電装置40が蓄電の開始時刻t4および終了時刻t5を算出する(ステップS15a)。蓄電装置40の空き容量CSが十分でなく、太陽電池20の発電電力の一部を蓄電装置40に蓄電できない場合に、発電電力の一部を抑制する必要がある。逆潮流電力が大きい時間ほど、発電電力が抑制される可能性は高い。このため、蓄電装置40が逆潮流電力の大きい時間帯に充電することで、発電電力の抑制を回避できる可能性が高くなる。このため、本実施形態では、逆潮流電力が高い時間帯に蓄電装置40を充電するように、蓄電の開始時刻t4および終了時刻t5を算出する。
【0071】
図16は、蓄電の開始時刻t4および終了時刻t5の算出のフローチャートである。電圧逸脱予測部154aは、初めに、予測された逆潮流電力の時間推移を用いて、逆潮流電力が最大となる時刻t7を抽出する(ステップS151)。
図17は、逆潮流電力が最大となる時刻t7の説明図である。
図17には、
図15に示される逆潮流電力の時間推移を表す曲線C4が最大となる時刻t7が示されている。電圧逸脱予測部154aは、曲線C4の時間積分である蓄電装置40の蓄電量が、蓄電装置40の空き容量CSと同じになるような開始時刻t4および終了時刻t5を仮決定する(
図16のステップS152)。本実施形態では、開始時刻t4から時刻t7までの時間と、時刻t7から終了時刻t5までの時間とが等しくなるように、開始時刻t4および終了時刻t5が仮決定される。
【0072】
電圧逸脱予測部154aは、仮決定された開始時刻t4および終了時刻t5と、逆潮流電力の時間推移を表す曲線C4とを用いて、開始時刻t4から終了時刻t5までの間の蓄電量を算出する(ステップS153)。電圧逸脱予測部154aは、算出された蓄電量が、残需要がゼロである時刻t3の蓄電装置40の空き容量未満か否かを判定する(ステップS154)。発電電力量が時刻t3の空き容量以上であると判定された場合には(ステップS154:NO)、後述のステップS156の処理が行われる。
【0073】
ステップS154の処理において、発電電力量が時刻t3の空き容量未満であると判定された場合には(ステップS154:YES)、電圧逸脱予測部154aは、開始時刻t4と終了時刻t5と、逆潮流電力がゼロである時刻t3とt6が同じか否かを判定する(ステップS155)。時刻t3と時刻t4が同じ、かつ、時刻t5と時刻t6が異なると判定された場合には(ステップS155:NO)、ステップS152以降の処理が再度行われる。2つの時刻の組み合わせが同じであると判定された場合には(ステップS155:YES)、電圧逸脱予測部154aは、仮決定された開始時刻t4および終了時刻t5を正式な時刻として決定し、開始時刻および終了時刻の算出フローを終了する。
【0074】
図18は、予測された蓄電装置40の蓄電量ACの時間推移の一例の説明図である。
図18に示されるように、
図15において逆潮流電力がマイナスになる日の入りの時刻t6以降から、蓄電量ACは、放電するため減少し始める。逆潮流電力がマイナスからプラスに変わる日の出の時刻t3から蓄電の開始時刻t4まで、蓄電量ACは変化しない。開始時刻t4以降から終了時刻t5まででは、蓄電装置40が蓄電を開始するため、蓄電量ACが増加し始める。終了時刻t5は、空き容量CS(
図15)がゼロ、すなわち蓄電量ACが最大(
図18のMAX)になるように設定された時刻である。そのため、終了時刻t5における蓄電装置40の蓄電量ACは最大である。
【0075】
図14のステップS15aの処理が行われると、電圧逸脱予測部154aは、逆潮流電力の上限Pmax(
図15)を予測する(ステップS16a)。電圧逸脱予測部154aは、過去の逆潮流電力のデータから、電圧逸脱状態が発生せずに逆潮流電力が抑制されていない状態と、電圧逸脱状態が発生して逆潮流電力が抑制された状態とで、それぞれ異なる処理によって逆潮流電力の上限Pmaxを予測する。予測の手順は第1実施形態の蓄電池の無い構成と同様であるため、説明を省略する。
【0076】
図14のステップS16aの処理が行われると、電圧逸脱予測部154aは、予測された逆潮流電力の上限Pmaxを用いて、太陽電池20の発電電力のうち抑制された抑制電力を算出する(ステップS17a)。電圧逸脱予測部154a、
図15に示されるように、予測された逆潮流電力の上限Pmaxと、逆潮流電力の時間推移(曲線C4)と、蓄電装置40の空き容量CSとを用いることにより、抑制電力量P3を算出する。
【0077】
電圧逸脱予測部154aは、算出された抑制電力量P3を用いて、翌日の日の入りの時刻t6の蓄電装置40の蓄電池容量を予測し(
図14のステップS18a)、蓄電池容量の予測フローが終了する。以上のように、電圧逸脱予測部154aは、既知である当日の日の入りの時刻t6の蓄電池容量から、翌日の日の出の時刻t3の蓄電池容量を予測する。さらに、電圧逸脱予測部154aは、予測された時刻t3の蓄電池容量を用いて翌日の日の入りの時刻t6の蓄電池容量を予測する。このようにして、電圧逸脱予測部154aは、既知の蓄電池容量から、翌日以降の蓄電装置40の蓄電池容量を順次予測する。
【0078】
電圧逸脱予報作成部170は、電圧逸脱状態の発生の予測結果を用いて、翌日以降7日間の電圧逸脱予報を作成する。作成方法は蓄電池の無い構成と同様である。作成された電圧逸脱予報の一例を
図19に示す。電力使用用途の情報は、ジャンルは「料理」で、「ホットプレート」で検索した例である。予報を送付は5/20の午前中(朝7時等)に実施したと仮定する。
図19に示される電圧逸脱予報により、3日後、4日後の2日間に抑制が起きる可能性があることがわかる。電力の抑制量はそれぞれ2kWhであり、抑制日の蓄電量は4kWhである。このことから、ユーザは前日までに2kWhずつ電力を消費すれば、抑制を回避できることがわかる。また、その日の朝8時時点での蓄電量は4kWhであり、使っていない電力が電池に4kWhずつあることがわかる。このうちの2kWhを使用しておけば、抑制を回避できることわかる。そこでユーザは5/22の夜にホットプレートで料理を行う計画を立てると仮定する。この場合、食材を5/22前までに準備すればよい。蓄電装置40の無い構成では電圧逸脱するタイミングで電力を消費する必要があったが、蓄電装置40がある第2実施形態の電力管理装置100aでは、電力を消費するタイミングを前日の夜にできるため、よりユーザの生活スタイルに合わせた電力消費が可能となる。
【0079】
<第2実施例>
第2実施例では、電圧逸脱予報作成部170が、電力の使用用途として「洗濯」を選択した場合に、「洗濯」に対応する紹介情報を取得する。
図20は、第2実施例の電圧逸脱予報の作成のフローチャートである。初めに、電圧逸脱予報作成部170は、電圧逸脱情報が発生する発生予定日を特定する(ステップS41)。
【0080】
電圧逸脱予報作成部170は、特定された発生予定日の季節が衣替えを行う5月、6月、9月、または10月付近であるか否かを判定する(ステップS42)。発生予定日の季節が衣替えを行う季節付近であると判定された場合には(ステップS42:YES)、電圧逸脱予報作成部170は、ジャンル「洗濯」に含まれる衣替え関係の情報を検索する(ステップS43)。衣替えの季節では、衣類だけではなく、シーツ、布団カバー、およびダウンジャケットなども洗濯される場合がある。そのため、普段と比べて洗濯スペース(干す場所など)が不足する可能性がある。この場合に、乾燥器の活用や、エアコンを使用した部屋干しなどの需要があると考えられる。電圧逸脱予報作成部170は、これらの電気機器50の使用用途の情報に加えて、例えば部屋干しなどに適した洗濯商品、衣類の収納商品、洗濯に使用する商品(例えば洗剤)などの電気機器50の使用時に用いられる商品の特売情報などを検索してもよい。
【0081】
ステップS42の処理において、発生予定日の季節が衣替えを行う季節付近ではないと判定された場合には(ステップS42:NO)、電圧逸脱予報作成部170は、衣替え以外の洗濯に関連する情報を検索する(ステップS44)。衣替え以外の洗濯に関連する情報としては、普段の衣類の洗濯とは別に、例えばクッション、カーペット、およびぬいぐるみなどの洗濯についての情報が挙げられる。電圧逸脱予報作成部170は、クッションやぬいぐるみのように普段洗濯しない物の洗濯方法を検索して取得してもよい。
【0082】
電圧逸脱予報作成部170は、情報端末60に送信する洗濯情報を仮決定する(ステップS45)。電圧逸脱予報作成部170は、仮決定された洗濯情報と同じ内容が過去に紹介されているか否かを判定する(ステップS46)。仮決定された洗濯情報と同じ内容が過去に紹介されていないと判定された場合には(ステップS46:NO)、後述するステップS48の処理が行われる。
【0083】
仮決定された洗濯情報と同じ内容が過去に紹介されていたと判定された場合には(ステップS46:YES)、電圧逸脱予報作成部170は、過去に紹介されてから所定の期間が経過しているか否かを判定する(ステップS47)。仮決定された洗濯情報と同じ内容が紹介されてから所定の期間が終了していない場合には(ステップS47:NO)、再度、洗濯情報の仮決定が行われる(ステップS45)。
【0084】
仮決定された洗濯情報と同じ内容が紹介されてから所定の期間が経過していると判定された場合には(ステップS47:NO)、電圧逸脱予報作成部170は、仮決定された洗濯情報を電圧逸脱予報に含まれる紹介情報を含む電圧逸脱予報を作成して(ステップS48)、第2実施例の電圧逸脱予報の作成フローが終了する。検索により取得された紹介情報は、紹介情報記憶部180に記憶される。
【0085】
以上、第2実施例のように電力の活用方法として「洗濯」が選択された場合には、衣替えの季節に電力を有効活用できる。ここで、衣替えの季節は、花粉、PM(Particulate Matter)2.5、および黄砂などの飛散量が多い時期であるため、洗濯物を部屋干ししたいニーズが高まる時期である。さらに、この季節は、太陽電池20の発電電力量が多く、電圧逸脱状態が発生して電力が抑制されやすい時期である。そのため、これらの季節に発生抑制日の予報がユーザに通知されることにより、ユーザは、抑制される予定だった電力を有効的に活用しつつ、洗濯の需要を満足できる。また、ユーザは、抑制される予定だった電力を自宅での洗濯物の乾燥に利用することにより、洗濯コストを低減できる。また、付加情報として、部屋干しなどに適した洗濯商品、衣類の収納商品、洗濯に使用する商品などの特売情報がユーザに通知されることにより、ユーザの電力活用につながる。
【0086】
また、予測部150aは、天候情報の予報に加えて、花粉の飛散量のデータを用いてもよい。この場合に、電圧逸脱予報作成部170は、花粉の飛散量が多い日の電力の使用用途として「料理」を選択して紹介情報を取得し、花粉の飛散量が少ない日の電力の使用用途として「洗濯」を洗濯して紹介情報を取得してもよい。
【0087】
<実施形態の変形例>
本発明は上記実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。また、上記実施形態において、ハードウェアによって実現されるとした構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されるとした構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
【0088】
上記実施形態、第1実施例、および第2実施例に記載された配電システム300の電力管理装置100は、一例であって変形可能である。電力管理装置100は、分電盤10を介して計測データを取得する計測データ記憶部120と、天候情報取得部として機能する天候情報記憶部130と、電力の使用用途を取得して電圧逸脱予報を作成する電圧逸脱予報作成部170とを備える範囲で変形可能である。例えば、電力管理装置100は、紹介情報記憶部180を備えておらず、電圧逸脱予報作成部170により取得された電圧逸脱予報に含まれる紹介情報を、過去に作成された紹介情報と同じ内容であるか否かを参照しなくてもよい。
【0089】
上記実施形態では、翌日以降7日間の電圧逸脱状態が発生する発生予定日が予測されたが、電力管理装置100は、少なくとも翌日以降の発生予定日を予測すればよい。例えば、翌日のみが予測されてもよいし、3日後から7日後の5日間が予測されてもよい。機器制御部160は、翌日以降7日間の発生予定日の電圧逸脱予報を、1度にまとめて情報端末60へと送信した後、発生予定日のそれぞれの午前7時に当該発生予定日のみの電圧逸脱予報を送信したが、電圧逸脱予報の送信方法は変形可能である。例えば、発生予定日当日のみに、当該発生予定日の電圧逸脱予報が送信されてもよいし、送信時間はユーザにより設定されてもよい。なお、発生予定日の当日に電圧逸脱予報が送信される時間は、逆潮流電流が発生し出す日の出の時刻t3(
図15)以前が好ましい。
【0090】
機器制御部160は、予測部150を介してデータ取得部110から電力系統の電圧の情報をリアルタイムで取得してもよい。この場合に、電圧逸脱状態が発生した場合には、機器制御部160は、事前に予測された電圧逸脱状態の発生時刻とは異なる時刻であっても蓄電装置40の充電を開始してもよい。蓄電装置40の充電が開始しても電圧が逸脱してしまう場合には、機器制御部160は、電圧が上限電圧以下となるように太陽電池20の発電電力を抑制してもよい。また、予めユーザの設定により、電圧逸脱状態が発生した場合に、自動で駆動してもよい電気機器50が事前に登録されていてもよい。
【0091】
分散電源として機能する電源は太陽電池20以外であってもよい。分散電源としては、風力を利用した電源、地熱を利用した電源、または水力を利用した電源であってもよい。
【0092】
発電予測部152は、過去の電圧逸脱状態が発生している日において、電圧逸脱状態が発生しなかった場合の発電電力量を、
図2に示されるように、他の電圧逸脱状態が発生していない日の発電電力量に係数を乗じて予測したが、予測方法については変形可能である。例えば、日照時間が異なる場合に、時間軸に係数を乗じて発電電力量が予測されてもよい。
【0093】
上記第1実施例および第2実施例では、ジャンルとして「料理」と「洗濯」が選択された場合の紹介情報を例に挙げて説明したが、選択されるジャンルは変形可能である。例えば、ユーザの休日が発生予定日であった場合には、BEVを利用した「ドライブ」のジャンルの紹介情報がユーザに通知されてもよい。この場合に、電圧逸脱予報には、ドライブとして人気スポットの情報が含まれていてもよい。
【0094】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【0095】
本発明は、以下の形態としても実現することが可能である。
[適用例1]
電力系統から供給される電力と、分散電源の発電電力との少なくとも一方を、電力を消費する負荷へと供給し、前記電力系統の電圧が予め設定された上限電圧以上となる電圧逸脱状態が発生した場合に、前記分散電源の発電電力の前記電力系統への逆潮流を停止する配電システムに用いられる電力管理装置であって、
前記電力系統の電圧変化と、前記分散電源の発電電力と、前記分散電源から前記電力系統へと逆潮流する逆潮流電力と、前記負荷の使用電力と、を含むデータを取得するデータ取得部と、
少なくとも翌日以降の天候予報情報を取得する天候情報取得部と、
前記データ取得部により取得されたデータと、前記天候情報取得部により取得された前記天候予報情報とを記憶するデータ記憶部と、
前記データ記憶部に記憶されたデータと、前記天候予報情報とを用いて、少なくとも翌日以降の前記分散電源の発電電力と、前記逆潮流電力と、前記負荷の使用電力と、前記電圧逸脱状態の発生とを予測する予測部と、
前記予測部により翌日以降において前記電圧逸脱状態の発生が予測された場合に、前記電圧逸脱状態が発生する発生予定日における電力の使用用途の情報を検索によって取得し、取得された前記使用用途の情報および前記使用用途に用いられる前記負荷の情報を含む紹介情報と、予測された前記電圧逸脱状態の発生情報とを含む電圧逸脱予報を作成する電圧逸脱予報作成部と、
前記電圧逸脱予報作成部により作成された前記電圧逸脱予報を他の装置へと出力する出力部と、
を備える、電力管理装置。
[適用例2]
適用例1に記載の電力管理装置であって、
前記データ取得部は、さらに電力を蓄電可能な蓄電池が充電する際の充電電力と、前記蓄電池から放電される放電電力と、前記蓄電池の蓄電量とを含むデータを取得し、
前記予測部は、少なくとも翌日の前記蓄電池の蓄電量の推移を予測する、電力管理装置。
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載の電力管理装置であって、さらに、
前記電圧逸脱予報作成部により取得された前記紹介情報を記憶する紹介情報記憶部を備え、
前記電圧逸脱予報作成部は、
前記紹介情報記憶部に記憶された前記紹介情報を参照して、新たに取得した前記紹介情報が過去に取得された前記紹介情報と同じ内容の場合であって、かつ、過去に取得された前記紹介情報が取得された時から所定の期間が経過していない場合に、異なる前記紹介情報を取得し、
前記紹介情報記憶部に記憶された前記紹介情報を参照して、新たに取得した前記紹介情報が過去に取得された前記紹介情報と内容が異なる場合、または、過去に取得された前記紹介情報が取得された時から前記所定の期間を経過している場合に、新たに取得した前記紹介情報を含む前記電圧逸脱予報を作成する、電力管理装置。
[適用例4]
適用例1から適用例3までのいずれか一項に記載の電力管理装置であって、
前記紹介情報に含まれる前記使用用途の情報は、料理と、洗濯と、電気自動車の利用と、DIY(Do it yourself)とのいずれかに関連する情報である、電力管理装置。
[適用例5]
適用例1から適用例4までのいずれか一項に記載の電力管理装置であって、
前記電圧逸脱予報作成部は、
前記負荷の使用時に用いられる製品の特売情報と、前記負荷である電気機器の新製品の情報との少なくとも一方の情報である付加情報を検索によって取得し、
さらに前記付加情報を含む前記電圧逸脱予報を作成する、電力管理装置。
[適用例6]
適用例1から適用例5までのいずれか一項に記載の電力管理装置であって、
前記予測部は、翌日以降7日間のそれぞれにおける前記蓄電池の蓄電量の推移および前記電圧逸脱状態の発生の推移を予測し、
前記電圧逸脱予報作成部は、予測された翌日以降7日間のうちの少なくとも1日に前記電圧逸脱状態の発生が予測された場合に、前記発生予定日のそれぞれに対応する前記電圧逸脱予報を作成し、
前記出力部は、作成された1日以上の前記電圧逸脱予報を他の装置へと1度にまとめて出力する、電力管理装置。
[適用例7]
電力系統から供給される電力と、分散電源の発電電力との少なくとも一方を、電力を消費する負荷へと供給し、前記電力系統の電圧が予め設定された上限電圧以上となる電圧逸脱状態が発生した場合に、前記分散電源の発電電力の前記電力系統への逆潮流を停止する配電システムに用いられるコンピュータプログラムであって、
前記電力系統の電圧変化と、前記分散電源の発電電力と、前記分散電源から前記電力系統へと逆潮流する逆潮流電力と、前記負荷の使用電力と、を含むデータを取得するデータ取得機能と、
少なくとも翌日以降の天候予報情報を取得する天候情報取得機能と、
前記データ取得機能により取得されたデータと、取得された前記天候予報情報とを記憶するデータ記憶機能と、
前記データ記憶機能に記憶されたデータと、前記天候予報情報とを用いて、少なくとも翌日以降の前記分散電源の発電電力と、前記逆潮流電力と、前記負荷の使用電力と、前記電圧逸脱状態の発生とを予測する予測機能と、
翌日以降において前記電圧逸脱状態の発生が予測された場合に、前記電圧逸脱状態が発生する発生予定日における電力の使用用途の情報を検索によって取得し、取得された前記使用用途の情報および前記使用用途に用いられる前記負荷の情報を含む紹介情報と、予測された前記電圧逸脱状態の発生情報とを含む電圧逸脱予報を作成する電圧逸脱予報作成機能と、
作成された前記電圧逸脱予報を他の装置へと出力する出力機能と、
をコンピュータに実現させるコンピュータプログラム。
【符号の説明】
【0096】
10…分電盤
11…計測部
20…太陽電池(分散電源)
30…電力変換装置
31…電力変換部
32…電力変換制御部
40…蓄電装置(蓄電池)
50…電気機器(負荷)
60…情報端末(他の装置)
100,100a…電力管理装置
110…データ取得部
120…計測データ記憶部(データ記憶部)
130…天候情報記憶部(データ記憶部、天候情報取得部)
140…基準情報記憶部
150,150a…予測部
151…需要予測部
152…発電予測部
154,154a…電圧逸脱予測部
160…機器制御部(出力部)
170…電圧逸脱予報作成部
180…紹介情報記憶部
300,300a…配電システム
AC…蓄電量
CS…蓄電装置の空き容量
DT1~DT5,DT6~DT14…データ
Fa…相関関数
P1…発電電力量
P2…放電電力量
P3…抑制電力量
Pmax…逆潮流電力の上限
t1~t7…時刻