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特開2024-176107曲げ成形装置、曲げ成形方法、およびコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176107
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】曲げ成形装置、曲げ成形方法、およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   B21D 7/08 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
B21D7/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094365
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100182718
【弁理士】
【氏名又は名称】木崎 誠司
(72)【発明者】
【氏名】大坪 将士
(72)【発明者】
【氏名】太田 英一
【テーマコード(参考)】
4E063
【Fターム(参考)】
4E063AA04
4E063BB02
4E063CA03
4E063LA02
4E063LA09
(57)【要約】
【課題】曲げ成形後にへこみが発生しないように長尺部材を曲げ成形する。
【解決手段】曲げ成形装置は、予め作成された予測モデルを用いて、狙いの形状となるように長尺部材を曲げ成形した場合の形状を予測する形状予測部と、予測された曲げ成形した場合の長尺部材の形状に、狙いの形状よりも閾値以上の誤差であるへこみ部が発生している場合に、狙いの形状を異なる形状である代替形状に変換する変換部と、を備え、代替形状は、長尺部材の長手方向において、へこみ部を含む所定の区間における曲げ成形時の曲率を狙いの形状よりも小さくするとともに、所定の区間以外の区間における曲げ成形時の曲率を狙いの形状よりも大きくした形状であり、形状予測部は、予測モデルを用いて、変換部により変換された代替形状となるように長尺部材を曲げ成形した場合の形状を予測する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲げ成形装置であって、
予め作成された予測モデルを用いて、狙いの形状となるように長尺部材を曲げ成形した場合の形状を予測する形状予測部と、
予測された曲げ成形した場合の前記長尺部材の形状に、前記狙いの形状よりも閾値以上の誤差であるへこみ部が発生している場合に、前記狙いの形状を異なる形状である代替形状に変換する変換部と、
を備え、
前記代替形状は、前記長尺部材の長手方向において、前記へこみ部を含む所定の区間における曲げ成形時の曲率を前記狙いの形状よりも小さくするとともに、前記所定の区間以外の区間における曲げ成形時の曲率を前記狙いの形状よりも大きくした形状であり、
前記形状予測部は、前記予測モデルを用いて、前記変換部により変換された前記代替形状となるように前記長尺部材を曲げ成形した場合の形状を予測する、曲げ成形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の曲げ成形装置であって、
前記変換部は、前記代替形状における前記長尺部材上の所定の2地点の位置関係が、前記狙いの形状における前記長尺部材上の前記所定の2地点の位置関係と同じになるように、前記狙いの形状を前記代替形状に変換する、曲げ成形装置。
【請求項3】
請求項2に記載の曲げ成形装置であって、
前記変換部は、前記所定の区間以外の区間として、前記所定の区間の両側に位置する区間の全体を選択する、曲げ成形装置。
【請求項4】
請求項3に記載の曲げ成形装置であって、
前記長尺部材は、厚さと材質との少なくとも一方が異なる2種類の金属製の管材が溶接された溶接管である、曲げ成形装置。
【請求項5】
請求項4に記載の曲げ成形装置であって、
前記2種類の管材のそれぞれの厚さは、0.6mm以上3.0mm以下であり、
前記2種類の管材の厚さの比は、1以上5以下である、曲げ成形装置。
【請求項6】
請求項5に記載の曲げ成形装置であって、
前記2種類の管材のそれぞれの厚さは、1.2mm以上2.3mm以下であり、
前記2種類の管材の厚さの比は、1以上2以下である、曲げ成形装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の曲げ成形装置であって、さらに、
前記長尺部材を送り方向に送りながら曲げ成形する曲げ成形部を備える、曲げ成形装置。
【請求項8】
請求項7に記載の曲げ成形装置であって、さらに、
前記曲げ成形部による曲げ成形後の前記長尺部材の形状と、前記形状予測部に予測された曲げ成形された場合の前記長尺部材の形状との誤差を算出する誤差算出部と、
前記誤差算出部により算出された誤差を用いて、前記予測モデルを補正する補正部と、
を備える、曲げ成形装置。
【請求項9】
曲げ成形方法であって、コンピュータが、
予め作成された予測モデルを用いて、狙いの形状となるように長尺部材を曲げ成形した場合の形状を予測する第1予測工程と、
予測された曲げ成形した場合の前記長尺部材の形状に、前記狙いの形状よりも閾値以上の誤差であるへこみ部が発生している場合に、前記狙いの形状を異なる形状である代替形状に変換する変換工程と、
前記予測モデルを用いて、変換された前記代替形状となるように前記長尺部材を曲げ成形した場合の形状を予測する第2予測工程と、
を実行し、
前記代替形状は、前記長尺部材の長手方向において、前記へこみ部を含む所定の区間における曲げ成形時の曲率を前記狙いの形状よりも小さくするとともに、前記所定の区間以外の区間における曲げ成形時の曲率を前記狙いの形状よりも大きくした形状である、曲げ成形方法。
【請求項10】
コンピュータプログラムであって、
予め作成された予測モデルを用いて、狙いの形状となるように長尺部材を曲げ成形した場合の形状を予測する形状予測機能と、
予測された曲げ成形した場合の前記長尺部材の形状に、前記狙いの形状よりも閾値以上の誤差であるへこみ部が発生している場合に、前記狙いの形状を異なる形状である代替形状に変換する変換機能と、
をコンピュータに実行させ、
前記代替形状は、前記長尺部材の長手方向において、前記へこみ部を含む所定の区間における曲げ成形時の曲率を前記狙いの形状よりも小さくするとともに、前記所定の区間以外の区間における曲げ成形時の曲率を前記狙いの形状よりも大きくした形状であり、
前記形状予測機能は、前記予測モデルを用いて、前記変換機能により変換された前記代替形状となるように前記長尺部材を曲げ成形した場合の形状を予測する、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲げ成形装置、曲げ成形方法、およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
管材などの長尺部材を曲げ成形する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、曲げ成形前の長尺部材における正確な位置で180度曲げ成形する曲げ加工装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-161670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
曲げ成形では、成形不良の1つとして、曲げ成形後の曲率が狙いの曲率と異なり、狙いの曲率よりも大きい曲率のへこみが発生する場合がある。特許文献1に記載された曲げ加工装置では、正確な位置で曲げ成形できるものの、曲げ成形後に発生するへこみについて考慮されていない。特に、曲げ成形される部材が、厚さや材質の異なる部材が溶接された長尺部材である場合に、溶接部近傍でへこみが発生しやすい。
【0005】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためのものであり、曲げ成形後にへこみが発生しないように長尺部材を曲げ成形することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためのものであり、以下の形態として実現できる。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、曲げ成形装置が提供される。この曲げ成形装置は、予め作成された予測モデルを用いて、狙いの形状となるように長尺部材を曲げ成形した場合の形状を予測する形状予測部と、予測された曲げ成形した場合の前記長尺部材の形状に、前記狙いの形状よりも閾値以上の誤差であるへこみ部が発生している場合に、前記狙いの形状を異なる形状である代替形状に変換する変換部と、を備え、前記代替形状は、前記長尺部材の長手方向において、前記へこみ部を含む所定の区間における曲げ成形時の曲率を前記狙いの形状よりも小さくするとともに、前記所定の区間以外の区間における曲げ成形時の曲率を前記狙いの形状よりも大きくした形状であり、前記形状予測部は、前記予測モデルを用いて、前記変換部により変換された前記代替形状となるように前記長尺部材を曲げ成形した場合の形状を予測する。
【0008】
この構成によれば、形状予測部により予測された長尺部材の曲げ成形された形状にへこみ部が発生している場合に、狙いの形状は代替形状に変換される。変換された代替形状では、長尺部材が曲げ成形された場合にへこみ部が発生する区間の曲率が小さくなるため、へこみ部が発生しづらくなる。そのため、本構成では、長尺部材は、曲げ成形後にへこみ部が発生していない形状に曲げ成形される。さらに、代替形状では、曲率を小さくする区間とは異なる区間の曲率が大きくなる。そのため、本構成では、へこみ部が発生する区間のみの曲率を変化させた場合と比較して、代替形状を、変換する前の狙いの形状により近づけることができる。
【0009】
(2)上記態様の曲げ成形装置において、前記変換部は、前記代替形状における前記長尺部材上の所定の2地点の位置関係が、前記狙いの形状における前記長尺部材上の前記所定の2地点の位置関係と同じになるように、前記狙いの形状を前記代替形状に変換してもよい。
この構成によれば、狙いの形状と代替形状とのそれぞれにおける所定の2地点の位置関係が同じになるように、狙いの形状から代替形状に変換される。そのため、例えば、曲げ成形後の長尺部材における所定の2地点が、他の部材に固定する場所であった場合に、変換後の代替形状でも他の部材に固定できる。すなわち、本構成の代替形状は、他の部材の固定位置が一致する形状として変換される。
【0010】
(3)上記態様の曲げ成形装置において、前記変換部は、前記所定の区間以外の区間として、前記所定の区間の両側に位置する区間の全体を選択してもよい。
この構成によれば、代替形状において、曲率が大きく変換される区間は、曲率が小さく変換される所定の区間の両側に位置する区間の全体である。そのため、曲率が大きく変換される区間が、所定の区間に隣接しない区間や、所定の区間以外の区間のうちの一部である場合と比較して、狙いの形状と代替形状との形状の差を小さくできる。さらに、曲率が大きく変換される所定の区間以外の区間の曲率の変化が抑制される。
【0011】
(4)上記態様の曲げ成形装置において、前記長尺部材は、厚さと材質との少なくとも一方が異なる2種類の金属製の管材が溶接された溶接管であってもよい。
この構成では、特にへこみ部が発生しやすい2種類の管材が溶接された溶接部を有する溶接管に対して、狙いの形状から代替形状が変換される。そのため、へこみ部が発生しやすい長尺部材に対するへこみ部の発生を効果的に抑制できる。
【0012】
(5)上記態様の曲げ成形装置において、前記2種類の管材のそれぞれの厚さは、0.6mm以上3.0mm以下であり、前記2種類の管材の厚さの比は、1以上5以下であってもよい。
この構成によれば、2種類の管材が溶接された溶接管のうち、へこみ部が発生しやすい管材の厚さおよび2種類の管材の厚さの比の長尺部材を曲げ成形する場合に、狙いの形状から代替形状が変換される。そのため、へこみ部が発生しやすい長尺部材に対するへこみ部の発生を効果的に抑制できる。
【0013】
(6)上記態様の曲げ成形装置において、前記2種類の管材のそれぞれの厚さは、1.2mm以上2.3mm以下であり、前記2種類の管材の厚さの比は、1以上2以下であってもよい。
この構成によれば、2種類の管材が溶接された溶接管のうち、特にへこみ部が発生しやすい管材の厚さおよび2種類の管材の厚さの比の長尺部材を曲げ成形する場合に、狙いの形状から代替形状が変換される。そのため、特にへこみ部が発生しやすい長尺部材に対するへこみ部の発生を効果的に抑制できる。
【0014】
(7)上記態様の曲げ成形装置において、さらに、前記長尺部材を送り方向に送りながら曲げ成形する曲げ成形部を備えていてもよい。
この構成では、従来から存在する曲げ成形部を用いて、曲げ成形後にへこみ部が発生していない長尺部材の曲げ成形を行うことができる。
【0015】
(8)上記態様の曲げ成形装置において、さらに、前記曲げ成形部による曲げ成形後の前記長尺部材の形状と、前記形状予測部に予測された曲げ成形された場合の前記長尺部材の形状との誤差を算出する誤差算出部と、前記誤差算出部により算出された誤差を用いて、前記予測モデルを補正する補正部と、を備えていてもよい。
この構成によれば、へこみ部が発生しない代替形状に曲げ成形された後の長尺部材の形状と、形状予測部により予測された曲げ成形された場合の長尺部材の形状との誤差を用いて、予測モデルが補正される。そのため、補正された予測モデルは、狙いの形状または代替形状に曲げ成形された場合の長尺部材に発生するへこみ部を精度よく予測できる。この結果、へこみ部が発生しない代替形状への変換精度が向上する。
【0016】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、曲げ成形装置、加工装置、及びこれらの装置を備えるシステム、曲げ成形方法、これら装置及びシステムの制御方法、これら装置及びシステムにおいて実行されるコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、そのコンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等の形態で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態としての曲げ成形システムの概略ブロック図である。
図2】成形装置の概略上面図である。
図3】曲げ成形前の長尺部材の概略上面図である。
図4】曲げ成形後の長尺部材の概略上面図である。
図5】へこみ部を含む接合区間の概略拡大図である。
図6】狙いの形状に曲げ成形された場合の長尺部材の内側のCAE結果の説明図である。
図7】長尺部材の曲率と、へこみ部のへこみ量との関係を表す説明図である。
図8】長尺部材の長手方向の位置に応じた曲率の変化を表す説明図である。
図9】狙いの形状と代替形状とにおける接合区間の曲率の説明図である。
図10】変換部による狙いの形状から代替形状への変換処理のフローチャートである。
図11】長尺部材の区間の曲率を変化させる際の説明図である。
図12】本実施形態の曲げ成形方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
図1は、本発明の一実施形態としての曲げ成形システム(曲げ成形装置)100の概略ブロック図である。本実施形態の曲げ成形システム100は、管材などの長尺部材を狙いの形状に曲げ成形する場合に、予測モデルを用いて、長尺部材の曲げ成形後の形状を予測する。本実施形態では、予測された形状にへこみ部が発生している場合に、曲げ成形後にへこみ部が発生しないように、狙いの形状が代替形状へと変換される。曲げ成形システム100は、長尺部材を、狙いの形状の代わりに、へこみ部が発生しない代替形状に曲げ成形する。
【0019】
曲げ成形システム100は、図1に示されるように、長尺部材を送り方向に送りながら曲げ成形する成形装置(曲げ成形部)80と、成形装置80を制御する成形制御装置50と、を備えている。
【0020】
図2は、成形装置80の概略上面図である。成形装置80は、図の左側から右側への送り方向DR1に沿って長尺部材LGを送りながら曲げ成形する。図2に示されるように、成形装置80は、送り方向DR1において上流側に配置されるサポートツール82と、送り方向DR1においてサポートツール82よりも下流側に配置される曲げツール81と、を備えている。なお、図2に示される直交座標系CSは、図3以降で示される直交座標系CSと対応している。
【0021】
サポートツール82および曲げツール81は、長尺部材LGに押し当てられることにより長尺部材LGを曲げ成形する。サポートツール82は、送り方向DR1において長尺部材LGを挟み込むように配置される上流側の回転ローラRL1,RL2と、送り方向DR1に沿って下流側に回転ローラRL1,RL2と異なる位置かつ長尺部材LGを挟み込むように配置される回転ローラRL3,RL4と、を有している。4つの回転ローラRL1~RL4は、Z軸に平行な軸回りに回転する。
【0022】
曲げツール81は、サポートツール82の回転ローラRL1~RL4と同じように、長尺部材LGを挟み込むように配置された回転ローラRL5,RL6を有している。曲げツール81は、成形制御装置50の制御により、XY平面上において移動可能である。曲げツール81は、XY平面上におけるサポートツール82に対する相対位置を変化させる。曲げツール81の相対位置の変化量は、Y軸に沿う移動量Dと、XY平面においてZ軸に平行な軸回りの回転量θとで表される。なお、図2に示される成形制御装置50が備えるセンサ21については後述する。
【0023】
図2に示される状態では、長尺部材LGは、回転ローラRL2に接触する点P1と、回転ローラRL3に接触する点P2と、回転ローラRL6に接触する点P3との3点支持により曲げ成形されている。
【0024】
図1に示される成形制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)10と、センサ21と、記憶部22と、表示部23と、入力部24とを備えている。成形制御装置50は、例えば、パーソナルコンピュータ(Personal Computer)等で構成される。センサ21は、図2に示されるように、長尺部材LGのうち、送り方向DR1においてサポートツール82と曲げツール81との間に位置する中間部分のY軸に沿った変位量の実測値を検出する変位センサである。本実施形態のセンサ21は、所定の送り量ごとに実測値を検出する。
【0025】
記憶部22は、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)などで構成されている。記憶部22は、長尺部材LGが成形装置80により曲げ成形された場合に、曲げツール81(図2)の移動量Dおよび回転量θに応じて変化する曲げ成形後の長尺部材LGの形状を予測する予測モデルが記憶されている。本実施形態の予測モデルは、予め、長尺部材LGの厚さ等の形状および長尺部材LGの材質と、移動量Dおよび回転量θとを変化させた複数回の長尺部材LGの曲げ成形の測定結果に基づいて作成されている。予測モデルは、長尺部材LGの厚さ等の形状および長尺部材LGの材質と、移動量Dおよび回転量θと、曲げ成形後の長尺部材LGの曲率とが対応付けられている。また、本実施形態の予測モデルは、曲げ成形後の長尺部材LGの曲率と、センサ21により検出されたサポートツール82と曲げツール81との間で検出された曲げ成形中の長尺部材LGの変位量とも対応付けられている。そのため、センサ21の検出値と、長尺部材LGの形状(厚さ)および材質とから、予測モデルにより曲げ成形後の長尺部材LGの形状が予測される。さらに、予測モデルにより、曲げ成形後のへこみ部のへこみ量も予測される。
【0026】
表示部23は、各種画像を表示可能なモニタであり、CPU10から送信された情報に応じて、各種情報を表示する。表示部23には、例えば、予測モデルを用いて予測された曲げ成形された場合の長尺部材LGの各部の曲率やセンサ21の検出値などが表示される。入力部24は、各種操作を受け付けるマウスやキーボードで構成されたユーザーインターフェースである。入力部24は、例えば、予測モデルを用いて長尺部材LGが曲げ成形された場合の形状を予測する場合に、長尺部材LGの形状や材質、曲げ成形後の狙いの形状などの各種設定を受け付ける。
【0027】
CPU10は、図示されていないROM(Read Only Memory)に記憶されているプログラムをRAM(Random Access Memory)に展開することにより、プログラムを実行する。CPU10は、予測部(形状予測部)11と、変換部12と、成形装置80の各部を制御する制御部13と、測定部(誤差算出部)14と、補正部15として機能する。予測部11は、記憶部22に記憶された予測モデルを用いて、曲げ成形後の狙いの形状となるように長尺部材LGを曲げ成形した場合の形状を予測する。
【0028】
変換部12は、予測部11により予測された曲げ成形した場合の長尺部材LGの形状に、へこみ部が発生している場合に、狙いの形状を、狙いの形状とは異なる形状である代替形状に変換する。へこみ部とは、狙いの形状よりも閾値以上の誤差である部分のことである。本実施形態では、変換部12は、狙いの形状の曲率よりも所定値以下の曲率が発生している部分をへこみ部とみなす。なお、へこみ部の判定に用いられる閾値は、記憶部22に記憶されている。
【0029】
図3は、曲げ成形前の長尺部材LGの概略上面図である。図3に示される長尺部材LGは、同一の材質(STKM11A)で形成されている。また、長尺部材LGは、管厚が異なる2種類の金属製の第1管材MT1と第2管材MT2とが溶接された溶接管である。第1管材MT1の管厚は、1.2mmである。第1管材MT1の長手方向に沿った長さL1は、600mmである。第2管材MT2の管厚は2.3mmである。そのため、第1管材MT1と第2管材MT2との2種類の管材において、第1管材MT1に対する第2管材MT2の厚さの比は、1.92(=2.3mm/1.2mm)である。第2管材MT2の長手方向に沿った長さL1は、1500mmである。第1管材MT1および第2管材MT2の管径φ(外径)は、50.8mmである。なお、曲げ成形時には、第1管材MT1が第2管材MT2よりも先に曲げツール81により曲げ成形される。
【0030】
図4は、曲げ成形後の長尺部材LGの概略上面図である。図4には、長尺部材LGが狙いの形状に曲げ成形された場合に予測された形状が破線で示され、長尺部材LGが代替形状に曲げ成形された場合に予測された形状が実線で示されている。また、代替形状に曲げ成形された場合の長尺部材LGの中心線が一点鎖線で示されている。なお、図4では、X軸方向およびY軸方向に沿った目盛りが示されている。図4では、後述の位置Paを基準(X座標およびY座標の原点)として、左下に第1管材MT1が位置し、右上に第2管材MT2が位置するように、長尺部材LGが示されている。
【0031】
図4に示される長尺部材LGでは、第1管材MT1と第2管材MT2とが溶接されている部分を含む接合部に、へこみ部が含まれている。本実施形態の変換部12は、長尺部材LGの長手方向において、へこみ部を含む接合区間PT2における曲げ成形時の曲率を狙いの形状よりも小さくした代替形状に変換する。変換部12は、さらに、代替形状として、接合区間PT2以外の区間PT1,PT3における曲げ成形時の曲率を狙いの形状よりも大きくする。なお、区間PT1~PT4における長手方向に沿った長さは、それぞれ200mm、150mm、250mm、200mmである。
【0032】
図4に示される位置Pa,Pb,Pcは、曲げ成形後の長尺部材LGが他の部材に接続する接続位置である。変換部12は、狙いの形状から代替形状に変換した場合に、長尺部材LG上の接続位置Pa,Pb,Pcの位置関係が同じになるように、狙いの形状を代替形状へと変換する。
【0033】
図5は、へこみ部PDを含む接合区間PT2の概略拡大図である。図5には、へこみ部PDを含む第1管材MT1と第2管材MT2とが溶接された部分を拡大した概略上面図が示されている。図5に示されるへこみ部PDのへこみ量δは、予測部11による予測モデルを用いた形状から算出される。
【0034】
図6は、狙いの形状に曲げ成形された場合の長尺部材LGaの内側のCAE(Computer Aided Engineering)結果の説明図である。図6に示される長尺部材LGaは、図3~5で示される長尺部材LGと異なる。長尺部材LGaは、へこみ部PDのへこみ量δと、曲率との関係を説明するために用いられる長尺部材の一例である。
【0035】
図6(a)には、長尺部材LGa全体のCAE結果が示されている。図6(b)には、図6(a)における領域RG1を拡大したCAE結果が示されている。図6(b)に示されるように、長尺部材LGaのCAE結果は、長尺部材LGa上の離散した複数の座標が接続されて形成されている。本実施形態の変換部12は、連続する3つの離散した座標の値が同一の曲率半径の円弧上に存在すると仮定して、長尺部材LGaの曲率を算出している。
【0036】
図7は、長尺部材LGaの曲率と、へこみ部PDのへこみ量δとの関係を表す説明図である。図7に示されるように、図6に示される連続する3つの離散した座標から算出される曲率半径rと、円弧の長さLと、へこみ量δと、曲率半径rとへこみ量δとの差aと、円弧の中心角αとを用いると、へこみ量δは、下記式(1)のように表される。
【数1】
【0037】
図8は、長尺部材LGaの長手方向の位置に応じた曲率の変化を表す説明図である。変換部12は、図7に示される許容値を超えたへこみ量δを曲率として算出して評価する。変換部12は、へこみ量δが許容値を超えないように、狙いの形状を代替形状へと変換する。なお、図8には、第1管材MT1と第2管材MT2との溶接部近傍の曲率変化が一点鎖線で囲われている。
【0038】
図9は、狙いの形状と代替形状とにおける接合区間PT2(図4)の曲率の説明図である。図9(a),(b)では、長尺部材LGの長手方向に沿った送り量に対する曲率の変化が示されている。図9(a)には、接合区間PT2にへこみ部PDが存在しない代替形状の曲率変化Lc1が示されている。図9(b)には、狙いの形状の曲率変化Lc2が示されている。
【0039】
図9に示される例では、接合区間PT2の曲率の閾値Th(曲率0.58m-1)が設定されている。そのため、変換部12は、接合区間PT2において、閾値Th以上を超える曲率はへこみ部PDと判断する。変換部12は、へこみ部PDが発生している場合に、接合区間PT2の曲率を小さくするとともに、接合区間PT2に隣接する区間PT1,PT3の曲率を大きくするように、狙いの形状を代替形状へと変換する。なお、区間PT1,PT3の曲率を大きくしても狙いの形状から代替形状に変換できない場合は、区間PT4の曲率を、狙いの形状の曲率から変更しても良い。
【0040】
図10は、変換部12による狙いの形状から代替形状への変換処理のフローチャートである。図10の変換フローでは、初めに、変換部12は、予測モデルを用いた予測部11の曲げ成形した場合の長尺部材LGに対するへこみ部PDの発生有無を判定する(ステップS1)。へこみ部PDが発生していないと判定された場合には(ステップS1:NO)、代替形状への変換が行われずに変換フローが終了する。この場合には、長尺部材LGは、狙いの形状として曲げ成形される。
【0041】
ステップS1の処理において、へこみ部PDが発生していると判定された場合には(ステップS1:YES)、変換部12は、へこみ部PDが発生している接合区間PT2の曲率を小さくする(ステップS2)。曲率を小さくする具体的な計算方法については、後述のステップS4の処理で説明する。
【0042】
変換部12は、接合区間PT2の曲率を小さくした曲げ成形した場合の長尺部材LGの形状において、他の部材との接続位置Pa,Pb,Pcのそれぞれの位置が、狙いの形状における接続位置Pa,Pb,Pcの位置に対する所定誤差の範囲内であるか否かを判定する(ステップS3)。接続位置Pa,Pb,Pcのそれぞれの位置が所定の誤差の範囲内であると判定された場合には(ステップS3:YES)、後述のステップS5の処理が行われる。接続位置Pa,Pb,Pcのそれぞれの位置が所定の誤差の範囲内ではないと判定された場合には(ステップS3:NO)、変換部12は、曲率を小さくした接合区間PT2以外の区間PT1,PT3の曲率を大きくする(ステップS4)。なお、接続位置Pa,Pb,Pcの誤差判定に用いられる基準として所定誤差の範囲は、記憶部22に予め記憶されている。ステップS2およびステップS4は、変換工程に相当する。
【0043】
図11は、長尺部材LGbの区間PT1a~PT3aの曲率を変化させる際の説明図である。図11には、代替形状の曲率の算出方法を説明するために、長尺部材LGと異なる長尺部材LGbが示されている。図11には、長尺部材LGbが狙いの形状に成形された場合の円弧S(破線)および直線Lrl,Lrrが、円弧Sl,Sc,Srで構成される代替形状に変換された場合の曲げ成形後の長尺部材LGが示されている。なお、他の部材との接続位置は、Paa,Pbaである。
【0044】
本実施形態の変換部12は、狙いの形状から代替形状へと変化する場合に、狙いの形状よりも曲げ成形時における曲率を大きくする区間として、へこみ部PDが発生している接合区間PT2aの両側に位置する区間の全体を選択する。具体的には、接続位置Paaと接続位置Pbaとの間に弧Sl,Sc,Srのうち、接合区間PT2aの弧Sc以外の区間PT1a、PT3aが選択される。円弧Scは、へこみ部PDが発生している接合区間PT2aの変換された後のへこみ部PDが発生しない円弧である。円弧Sl,Srは、接合区間PT2aに隣接して、へこみ部PDが発生していない区間PT1a、PT3aである。なお、図11に示される長尺部材LGbでは、計算を簡易化するために、円弧Sl,Sc,Srの長さは同一としている。
【0045】
図11に示される長尺部材LGbでは、狙いの形状に曲げ成形された場合の円弧Sと、直線Lrl,Lrrとの合計の長尺部材LGbの中間地点である接合部の座標(Xr_c,Yr_c)にへこみ部PDが発生している。この場合に、接続位置Paa,Pbaが変化しない状態で、接合区間PT2aの曲率が小さくなった変換後の円弧Sc上において、へこみ部PDが発生した座標は(Xrc_c,Yrc_c)に変化する。なお、直線Lrlと、直線Lrrとの長さは同一である。
【0046】
ここで、円弧Sの曲率半径Rと、角度Aとでは、下記式(2)が成立する。
【数2】
【0047】
狙いの形状におけるへこみ部PDの座標(Xr_c,Yr_c)を原点(0,0)とすると、円弧Sと、直線Lrl,Lrrとの交点の座標(Xr_l,Yr_l),(Xr_r,Yr_r)は、それぞれ下記関係式(3)のように表される。
【数3】
【0048】
代替形状の接合区間PT2aの円弧Scは、曲率半径Rcと、角度Acとを用いて下記式(4)のように表される。
【数4】
【0049】
ここで、代替形状における接合区間PT2aと、区間PT1a,PT3aとの円弧Sl,Sc,Srの角度Al,Ac,Arの合計が、変換前の狙いの形状における円弧Sの角度Aに一致する必要があるため、角度について下記式(5)が成立する。
【数5】
【0050】
ここで、代替形状における円弧Slの中心角度Alと、円弧Srの中心角度Arとが同じであるため、角度Al,Arは、上記式(5)の関係を用いて下記式(6)のように表される。
【数6】
【0051】
円弧Sl,Srは、角度Al,Arを用いて下記式(7)のように表される。
【数7】
【0052】
上記関係式(2)~(7)と、代替形状の円弧Scにおける座標(Xrc_c,Yrc_c)とを用いて、区間PT1a,PT3aのそれぞれの両端の座標は、下記関係式(8)のように表される。
【数8】
【0053】
ここで、代替形状の円弧ScにおけるX座標のXrc_cが、狙いの形状におけるへこみ部PDのX座標のXr_cと一致すると、円弧Slの左側の端点のY座標のYrl_lは、下記式(9)で表される関数Y1上に位置する。または、円弧Srの右側の端点のY座標のYrr_rは、下記式(10)で表される関数Y2上に位置する。
【0054】
【数9】
【数10】
【0055】
上記式(9),(10)から、下記関係式(11)が導かれる。
【数11】
変換部12は、下記式(2)~(11)を用いて、狙いの形状から代替形状への曲率の変化を最小にした代替形状を算出する。変換部12は、制約条件を用いて、円弧Scの曲率半径Rcを決定する。例えば、本実施形態の場合、へこみ部PDが生じない曲率の閾値Thに相当する曲率半径がRcとなる。
【0056】
図10のステップS4の処理が行われると、予測部11は、変換後の代替形状で長尺部材LGが曲げ成形された場合の形状を予測する(ステップS5)。なお、ステップS5の処理は、第2予測工程に相当する。変換部12は、予測された形状においてへこみ部があるか否かを判定する(ステップS6)。ステップS5の処理で判定されるへこみ部は、接合区間PT2を含む全区間PT1~PT4に対してである。へこみ部が有ると判定された場合には(ステップS6:YES)、ステップS2以降の処理が行われる。へこみ部がないと判定された場合には(ステップS6:NO)、変換部12は、へこみ部が発生していない形状を代替形状として決定し(ステップS7)、変換フローが終了する。すなわち、本実施形態では、狙いの形状から変換した代替形状にもへこみ部PDが発生している場合には、変換部12は、へこみ部PDが発生しなくなるまで変換フローを繰り返し行う。
【0057】
図1に示される制御部13は、成形装置80を制御することにより、曲げ成形対象である長尺部材LGを狙いの形状または代替形状に曲げ成形する。測定部14は、センサ21の検出値を取得する。測定部14は、成形装置80による曲げ成形後の長尺部材LGの形状と、狙いの形状または代替形状として予測された曲げ成形された場合の長尺部材LGの形状との誤差を算出する。具体的には、測定部14は、センサ21により取得されたサポートツール82と曲げツール81との間の曲げ成形中の長尺部材LGの変位量と、予測モデルとから、曲げ成形後の長尺部材LGの実測値を予測する。測定部14は、実測値が、狙いの形状または代替形状に対して所定の誤差の範囲内に収まっているか否かを評価する。補正部15は、実測値が所定の誤差の範囲内に収まっていない場合には、実測値の誤差を用いて、記憶部22に記憶されている予測モデルを補正する。具体的には、補正部15は、曲げツール81の移動量D(図2)および回転量θと、曲げ成形後の長尺部材LGの曲率との対応付けを補正する。なお、予測モデルの補正に用いられる所定の誤差は、記憶部22に記憶されている。
【0058】
図12は、本実施形態の曲げ成形方法のフローチャートである。図12に示される成形フローでは、初めに、予測部11は、予測モデルを用いて狙いの形状に長尺部材LGを曲げ成形した場合の形状を予測する(ステップS11)。ステップS11の処理は、第1予測工程に相当する。変換部12は、図10に示される変換処理を行う(ステップS12)。変換処理では、予測された形状にへこみ部PDが発生している場合には、狙いの形状が、へこみ部PDが発生しない代替形状へと変換される。
【0059】
変換処理が行われると(ステップS12)、制御部13は、成形装置80を制御することにより、長尺部材LGを狙いの形状または代替形状へと曲げ成形する(ステップS13)。測定部14は、曲げ成形時のセンサ21の検出値を取得する(ステップS14)。測定部14は、取得された検出値から、長尺部材LGの曲げ成形後の実測値が、狙いの形状または代替形状に対する誤差の範囲内か否かを評価する(ステップS15)。実測値が誤差の範囲ないではないと評価された場合には(ステップS15:NO)、補正部15は、実測値の誤差を用いて、記憶部22に記憶された予測モデルを補正し(ステップS16)、ステップS12以降の処理が繰り返される。実測値が誤差の範囲と評価された場合には(ステップS15:YES)、成形フローは終了する。
【0060】
以上のように、本実施形態の予測部11は、記憶部22に記憶された予測モデルを用いて、曲げ成形後の狙いの形状となるように長尺部材LGを曲げ成形した場合の形状を予測する。変換部12は、予測部11により予測された曲げ成形した場合の長尺部材LGの形状に、へこみ部PDが発生している場合に、狙いの形状を、狙いの形状とは異なる形状である代替形状に変換する。変換部12は、長尺部材LGの長手方向において、へこみ部PDを含む接合区間PT2(図4)における曲げ成形時の曲率を狙いの形状よりも小さくした代替形状に変換する。変換部12は、さらに、代替形状として、接合区間PT2以外の区間PT1,PT3における曲げ成形時の曲率を狙いの形状よりも大きくする。本実施形態では、予測部11により予測された長尺部材LGを曲げ成形された形状にへこみ部PDが発生している場合に、狙いの形状は代替形状に変換される。変換された代替形状では、長尺部材LGが曲げ成形された場合にへこみ部PDが発生する接合区間PT2の曲率が小さくなるため、へこみ部PDが発生しづらくなる。そのため、本実施形態では、長尺部材LGは、曲げ成形後にへこみ部PDが発生していない形状に曲げ成形される。さらに、代替形状では、曲率を小さくする接合区間PT2とは異なる区間PT1,PT3の曲率が大きくなる。そのため、本実施形態では、へこみ部PDが発生する接合区間PT2のみの曲率を変化させた場合と比較して、代替形状を、変換する前の狙いの形状により近づけることができる。
【0061】
また、本実施形態の変換部12は、狙いの形状から代替形状に変換した場合に、長尺部材LG上の接続位置Pa,Pb,Pcの位置関係が同じになるように、狙いの形状を代替形状へと変換する。本実施形態では、狙いの形状と代替形状とのそれぞれにおける所定の2地点の位置関係が同じになるように、狙いの形状から代替形状に変換される。そのため、曲げ成形後の長尺部材LGにおける他の部材との接続位置である位置Pa,Pb,Pc(図4)が、変換後の代替形状でも他の部材の接続位置と同じである。すなわち、本実施形態の代替形状は、他の部材の接続位置が一致する形状として変換される。
【0062】
また、本実施形態の変換部12は、狙いの形状から代替形状へと変化する場合に、狙いの形状よりも曲げ成形時における曲率を大きくする区間として、へこみ部PDが発生している接合区間PT2a(図11)の両側に位置する区間の全体を選択する。具体的には、接続位置Paaと接続位置Pbaとの間に弧Sl,Sc,Srのうち、接合区間PT2aの弧Sc以外の区間PT1a、PT3aが選択される。本実施形態では、代替形状において、曲率が大きく変換される区間は、曲率が小さく変換される接合区間PT2aの両側に位置する区間の全体である区間PT1a,PT3aである。そのため、曲率が大きく変換される区間PT1a,PT3aが、接合区間PT2aに隣接しない区間や、接合区間PT2a以外の区間のうちの一部である場合と比較して、狙いの形状と代替形状との形状の差を小さくできる。さらに、曲率が大きく変換される接合区間PT2a以外の区間PT1a,PT3aの曲率の変化が抑制される。
【0063】
また、本実施形態の図3に示される長尺部材LGは、同一の材質(STKM11A)で形成されている。また、長尺部材LGは、管厚が異なる2種類の金属製の第1管材MT1と第2管材MT2とが溶接された溶接管である。本実施形態では、特にへこみ部PDが発生しやすい2種類の管材が溶接された溶接部を有する溶接管に対して、狙いの形状から代替形状が変換される。そのため、へこみ部PDが発生しやすい長尺部材LGに対するへこみ部PDの発生を効果的に抑制できる。
【0064】
また、本実施形態の第1管材MT1の管厚は、1.2mmである。第1管材MT1の長手方向に沿った長さL1は、600mmである。第2管材MT2の管厚は2.3mmである。そのため、第1管材MT1と第2管材MT2との2種類の管材において、第1管材MT1に対する第2管材MT2の厚さの比は、1.92である。本実施形態では、第1管材MT1と第2管材MT2とが溶接された溶接管のうち、へこみ部PDが発生しやすい管材の厚さおよび2種類の管材の厚さの比の長尺部材LGを曲げ成形する場合に、狙いの形状から代替形状が変換される。そのため、へこみ部PDが発生しやすい長尺部材LGに対するへこみ部PDの発生を効果的に抑制できる。
【0065】
また、本実施形態の成形装置80は、長尺部材LGを送り方向DR1に送りながら曲げ成形する。そのため、本実施形態では、従来から存在する成形装置80を用いて、曲げ成形後にへこみ部PDが発生していない長尺部材LGの曲げ成形を行うことができる。
【0066】
また、本実施形態の測定部14は、成形装置80による曲げ成形後の長尺部材LGの形状と、狙いの形状または代替形状として予測された曲げ成形された場合の長尺部材LGの形状との誤差を算出する。補正部15は、曲げ成形後の実測値が所定の誤差の範囲内に収まっていない場合には、実測値の誤差を用いて、記憶部22に記憶されている予測モデルを補正する。本実施形態では、へこみ部PDが発生しない代替形状に曲げ成形された後の長尺部材LGの形状と、予測部11により予測された曲げ成形された場合の長尺部材LGの形状との誤差を用いて、予測モデルが補正される。そのため、補正された予測モデルは、狙いの形状または代替形状に曲げ成形された場合の長尺部材LGに発生するへこみ部PDを精度よく予測できる。この結果、へこみ部PDが発生しない代替形状への変換精度が向上する。
【0067】
<実施形態の変形例>
本発明は上記実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。また、上記実施形態において、ハードウェアによって実現されるとした構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されるとした構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
【0068】
<変形例1>
上記実施形態では、曲げ成形装置の一例である曲げ成形システム100について説明した。しかし、曲げ成形装置は、予測モデルを用いて狙いの形状に曲げ成形した場合の長尺部材LGにへこみ部PDが発生すると予測された場合に、狙いの形状を代替形状へと変換する範囲で変形可能である。例えば、曲げ成形装置は、成形装置80と、センサ21と、記憶部22と、表示部23と、入力部24とを備えておらず、制御部13、測定部14、および補正部15として機能しなくてもよい。曲げ成形装置は、狙いの形状から代替形状を変換するに留まり、長尺部材LGを実際に曲げ成形しなくてもよい。予測部11は、記憶部22に記憶された予測モデルを用いずに、通信によって他の装置から予測モデルを取得してもよい。曲げ成形装置は、表示部23および入力部24を備えておらず、通信によって代替形状の変換に必要な情報を他の装置から取得してもよい。曲げ成形装置は、センサ21および測定部14を備えておらず、曲げ成形後の長尺部材LGの形状の実測値を測定しなくてもよい。また、曲げ成形装置は、補正部15による予測モデルの補正を行わなくてもよい。
【0069】
上記実施形態では、第1管材MT1と第2管材MT2とが溶接された長尺部材LGの曲げ成形について説明したが、曲げ成形の対象となる部材については、変形可能である。成形対象部材は、溶接されておらず1種類の管材で形成されてもよいし、板材等であってもよい。上記実施形態の長尺部材LGでは、第1管材MT1の材質と、第2管材MT2の材質とが同じであったが、他の長尺部材では、溶接される2種類の管材の材質が異なっていてもよい。厚さと材質との少なくとも一方が異なる2種類の金属材が溶接された長尺部材が形成される場合に、2種類のそれぞれの管材の厚さは、0.6mm以上3.0mm以下が好ましい。さらに、2種類のそれぞれの管材の厚さは、1.2mm以上2.3mm以下が好ましい。また、2種類の管材の厚さの比は、1以上5以下が好ましく、さらに、1以上2以下が好ましい。
【0070】
本実施形態における長尺部材LGとは、へこみ部PDが発生して代替形状において曲率が狙いの形状よりも小さくなる区間と、それ以外の区間で曲率が大きくなる区間とのそれぞれの長さ有する部材のことを言う。また、長尺部材LG上において、必ずしも接続位置Pa,Pb,Pc等が予め設定されていなくてもよい。接続位置が設定されていない場合に、例えば、変換部12は、へこみ部PDを中心とする任意の長さで3分割された区間を、へこみ部PDを含む曲率を小さくする区間と、曲率を大きくする2つの隣接区間として設定してもよい。上記実施形態では、図4に示されるように、接続位置Paと接続位置Pbとの2地点の位置関係が、狙いの形状から代替形状への変換前後で同じになるように代替形状が変換された。しかし、変換前後で位置関係が同じになる接続位置は、2地点ではなく、例えば、3地点や4地点であってもよい。
【0071】
<変形例2>
上記実施形態の成形装置80は、送り方向DR1に長尺部材LGを送りながら、曲げツール81およびサポートツール82による3点曲げによって長尺部材LGを曲げ成形した。しかし、成形装置80として、周知の曲げ成形装置を適用できる。成形装置80は、送り方向DR1に送りながら曲げ成形を行わなくてもよい。成形装置80は、3点曲げ以外の方法によって長尺部材LGを曲げ成形してもよい。
【0072】
上記実施形態のセンサ21は、サポートツール82と曲げツール81との間における長尺部材LGの変位量を検出したが、センサ21が検出する変位量については変形可能である。例えば、センサ21は、曲げツール81により曲げ成形された後の長尺部材LGの変位量を検出してもよい。センサ21は、曲げツール81により曲げ成形される前後の2つの変位量を検出してもよい。センサ21の検出値に合わせて、補正部15は、予測モデルを補正してもよい。
【0073】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【0074】
本発明は、以下の形態としても実現することが可能である。
[適用例1]
曲げ成形装置であって、
予め作成された予測モデルを用いて、狙いの形状となるように長尺部材を曲げ成形した場合の形状を予測する形状予測部と、
予測された曲げ成形した場合の前記長尺部材の形状に、前記狙いの形状よりも閾値以上の誤差であるへこみ部が発生している場合に、前記狙いの形状を異なる形状である代替形状に変換する変換部と、
を備え、
前記代替形状は、前記長尺部材の長手方向において、前記へこみ部を含む所定の区間における曲げ成形時の曲率を前記狙いの形状よりも小さくするとともに、前記所定の区間以外の区間における曲げ成形時の曲率を前記狙いの形状よりも大きくした形状であり、
前記形状予測部は、前記予測モデルを用いて、前記変換部により変換された前記代替形状となるように前記長尺部材を曲げ成形した場合の形状を予測する、曲げ成形装置。
[適用例2]
適用例1に記載の曲げ成形装置であって、
前記変換部は、前記代替形状における前記長尺部材上の所定の2地点の位置関係が、前記狙いの形状における前記長尺部材上の前記所定の2地点の位置関係と同じになるように、前記狙いの形状を前記代替形状に変換する、曲げ成形装置。
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載の曲げ成形装置であって、
前記変換部は、前記所定の区間以外の区間として、前記所定の区間の両側に位置する区間の全体を選択する、曲げ成形装置。
[適用例4]
適用例1から適用例3までのいずれか一項に記載の曲げ成形装置であって、
前記長尺部材は、厚さと材質との少なくとも一方が異なる2種類の金属製の管材が溶接された溶接管である、曲げ成形装置。
[適用例5]
適用例1から適用例4までのいずれか一項に記載の曲げ成形装置であって、
前記2種類の管材のそれぞれの厚さは、0.6mm以上3.0mm以下であり、
前記2種類の管材の厚さの比は、1以上5以下である、曲げ成形装置。
[適用例6]
適用例1から適用例5までのいずれか一項に記載の曲げ成形装置であって、
前記2種類の管材のそれぞれの厚さは、1.2mm以上2.3mm以下であり、
前記2種類の管材の厚さの比は、1以上2以下である、曲げ成形装置。
[適用例7]
適用例1から適用例6までのいずれか一項に記載の曲げ成形装置であって、さらに、
前記長尺部材を送り方向に送りながら曲げ成形する曲げ成形部を備える、曲げ成形装置。
[適用例8]
適用例1から適用例7までのいずれか一項に記載の曲げ成形装置であって、さらに、
前記曲げ成形部による曲げ成形後の前記長尺部材の形状と、前記形状予測部に予測された曲げ成形された場合の前記長尺部材の形状との誤差を算出する誤差算出部と、
前記誤差算出部により算出された誤差を用いて、前記予測モデルを補正する補正部と、
を備える、曲げ成形装置。
[適用例9]
曲げ成形方法であって、コンピュータが、
予め作成された予測モデルを用いて、狙いの形状となるように長尺部材を曲げ成形した場合の形状を予測する工程と、
予測された曲げ成形した場合の前記長尺部材の形状に、前記狙いの形状よりも閾値以上の誤差であるへこみ部が発生している場合に、前記狙いの形状を異なる形状である代替形状に変換する工程と、
前記予測モデルを用いて、変換された前記代替形状となるように前記長尺部材を曲げ成形した場合の形状を予測する工程と、
を実行し、
前記代替形状は、前記長尺部材の長手方向において、前記へこみ部を含む所定の区間における曲げ成形時の曲率を前記狙いの形状よりも小さくするとともに、前記所定の区間以外の区間における曲げ成形時の曲率を前記狙いの形状よりも大きくした形状である、曲げ成形方法。
[適用例10]
コンピュータプログラムであって、
予め作成された予測モデルを用いて、狙いの形状となるように長尺部材を曲げ成形した場合の形状を予測する形状予測機能と、
予測された曲げ成形した場合の前記長尺部材の形状に、前記狙いの形状よりも閾値以上の誤差であるへこみ部が発生している場合に、前記狙いの形状を異なる形状である代替形状に変換する変換機能と、
をコンピュータに実行させ、
前記代替形状は、前記長尺部材の長手方向において、前記へこみ部を含む所定の区間における曲げ成形時の曲率を前記狙いの形状よりも小さくするとともに、前記所定の区間以外の区間における曲げ成形時の曲率を前記狙いの形状よりも大きくした形状であり、
前記形状予測機能は、前記予測モデルを用いて、前記変換機能により変換された前記代替形状となるように前記長尺部材を曲げ成形した場合の形状を予測する、コンピュータプログラム。
【符号の説明】
【0075】
11…予測部(形状予測部)
12…変換部
13…制御部
14…測定部(誤差算出部)
15…補正部
21…センサ
22…記憶部
23…表示部
24…入力部
50…成形制御装置
80…成形装置(曲げ成形部)
81…曲げツール
82…サポートツール
100…成形システム(曲げ成形装置)
110…CPU
CS…直交座標系
DR1…送り方向
LG,LGa,LGb…長尺部材
MT1…第1管材
MT2…第2管材
PD…へこみ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12