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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176127
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】セラミックスサセプタ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20241212BHJP
   C04B 35/569 20060101ALI20241212BHJP
   C04B 37/02 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H01L21/68 N
C04B35/569
C04B37/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094406
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(72)【発明者】
【氏名】北林 徹夫
(72)【発明者】
【氏名】下嶋 浩正
【テーマコード(参考)】
4G026
5F131
【Fターム(参考)】
4G026BA14
4G026BB21
4G026BG05
4G026BH13
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA32
5F131BA03
5F131BA04
5F131BA19
5F131BA23
5F131CA17
5F131EA03
5F131EA04
5F131EB01
5F131EB11
5F131EB16
5F131EB31
5F131EB78
5F131EB82
(57)【要約】
【課題】GHz帯域の半導体製造プロセスに使用でき、大熱量が基板に流入してもセラミックスサセプタと半導体基板支持部材等との応力や歪を緩和することができるセラミックスサセプタを提供する。
【解決手段】セラミックスサセプタ100であって、半導体基板支持部材を載置する載置面18を有し、SiCを主成分とするセラミックス焼結体により形成された基材10を備え、前記セラミックス焼結体は、0.2GHzでの誘電正接tanδが0.45以下であり、0.5GHzでの誘電正接tanδが0.70以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックスサセプタであって、
半導体基板支持部材を載置する載置面を有し、SiCを主成分とするセラミックス焼結体により形成された基材を備え、
前記セラミックス焼結体は、0.2GHzでの誘電正接tanδが0.45以下であり、
0.5GHzでの誘電正接tanδが0.70以下であることを特徴とするセラミックスサセプタ。
【請求項2】
前記セラミックス焼結体は、20℃での体積抵抗率が10Ωcmより小さいことを特徴とする請求項1に記載のセラミックスサセプタ。
【請求項3】
前記セラミックス焼結体は、0.5GHzでの誘電正接tanδが0.40以上であり、
20℃での体積抵抗率が10Ωcmより小さいことを特徴とする請求項2に記載のセラミックスサセプタ。
【請求項4】
前記セラミックス焼結体は、Alを0.2mol%以上1.1mol%以下含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のセラミックスサセプタ。
【請求項5】
前記基材に埋設された高周波用電極をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のセラミックスサセプタ。
【請求項6】
前記基材は、内部に媒体流路が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のセラミックスサセプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックスサセプタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体プロセスの高出力化に伴い、半導体基板を支持するサセプタに対する要求が高まってきている。そして、従来Al合金によって構成されていたサセプタをSiCセラミックスに代替することが検討されている。これにより、プロセスにより大熱量が基板に流入しても基台の熱膨張がAl合金製のサセプタと比較して小さく抑制されるため、サセプタの上に固定される主にセラミックス焼結体からなるヒーターや静電チャック等との応力や歪を緩和することができ、基板の処理が安定化する。
【0003】
特許文献1は、焼結により炭化珪素焼結体を生成する原料粉末中の窒化ホウ素の配合量を制御することによって、炭化珪素原料粉末中の窒化ホウ素の配合量を1.0重量%以上とし、焼結体の誘電正接を低く制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-131298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような高出力化プロセスとして高密度プラズマ源としてECRプラズマなどGHz帯域の利用がなされるようになると、SiC自体がGHz帯域での電波吸収体でもあるためSiC製のサセプタ自体に発熱が生じ、静電チャックやヒーター等、さらに処理される基板の温度分布に影響を及ぼすことが無視できなくなってきた。
【0006】
特許文献1は、焼結体の誘電正接を13.56MHzで測定しているのみであるため、GHz帯域のプロセスで使用できるかどうか不明である。そこで、このような高出力のプロセスでも温度分布に対する影響を抑制できる半導体基板支持部材用のセラミックスサセプタが要望されてきた。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、GHz帯域の半導体製造プロセスに使用でき、大熱量が基板に流入してもセラミックスサセプタと半導体基板支持部材等との応力や歪を緩和することができるセラミックスサセプタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記の目的を達成するため、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の適用例のセラミックスサセプタは、セラミックスサセプタであって、半導体基板支持部材を載置する載置面を有し、SiCを主成分とするセラミックス焼結体により形成された基材を備え、前記セラミックス焼結体は、0.2GHzでの誘電正接tanδが0.45以下であり、0.5GHzでの誘電正接tanδが0.70以下であることを特徴としている。
【0009】
これにより、セラミックスサセプタの誘電特性を向上させることができ、セラミックスサセプタ自体の発熱を抑制することができる。
【0010】
(2)また、上記(1)の適用例のセラミックスサセプタにおいて、前記セラミックス焼結体は、20℃での体積抵抗率が10Ωcmより小さいことを特徴としている。
【0011】
これにより、セラミックスサセプタのインピーダンスの増大を抑制でき、プラズマプロセスに与える影響を低減できる。その結果、半導体支持部材や基板の温度分布の安定化をより図ることができる。
【0012】
(3)また、上記(1)または(2)の適用例のセラミックスサセプタにおいて、前記セラミックス焼結体は、0.5GHzでの誘電正接tanδが0.40以上であり、20℃での体積抵抗率が10Ωcmより小さいことを特徴としている。
【0013】
これにより、低tanδと低体積抵抗率が両立し、セラミックスサセプタの高周波特性がさらに改善する。
【0014】
(4)また、上記(1)から(3)のいずれかの適用例のセラミックスサセプタにおいて、前記セラミックス焼結体は、Alを0.2mol%以上1.1mol%以下含むことを特徴としている。
【0015】
これにより、上記範囲の誘電正接tanδや体積抵抗率を有するセラミックスサセプタを具体的に構成することができる。
【0016】
(5)また、上記(1)から(4)のいずれかの適用例のセラミックスサセプタにおいて、前記基材に埋設された高周波用電極をさらに備えることを特徴としている。
【0017】
これにより、セラミックスサセプタを高周波環境で使用できるRF印加用基台として機能させることができる。
【0018】
(6)また、上記(1)から(5)のいずれかの適用例のセラミックスサセプタにおいて、前記基材は、内部に媒体流路が設けられていることを特徴としている。
【0019】
これにより、セラミックスサセプタに媒体による加熱、冷却の機能を付与することができ、セラミックスサセプタの機能を拡充することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のセラミックスサセプタによれば、セラミックスサセプタの誘電特性を向上させることができ、その結果、セラミックスサセプタ自体の発熱を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】(a)は、本発明の実施形態に係るセラミックスサセプタの一例を示した模式的な断面図である。(b)は、図1(a)のセラミックスサセプタの使用例を示した模式的な断面図である。
図2】本発明の実施形態に係るセラミックスサセプタの変形例を示した模式的な断面図である。
図3】本発明の実施形態に係るセラミックスサセプタの変形例を示した模式的な断面図である。
図4】本発明の実施形態に係るセラミックスサセプタの上面の一例を示した模式図である。
図5】本発明の実施形態に係るセラミックスサセプタの変形例を示した模式的な断面図である。
図6】本発明の実施形態に係るセラミックスサセプタの上面の変形例を示した模式図である。
図7】(a)~(d)、それぞれセラミックスサセプタの製造方法の一段階を示した模式的な断面図である。
図8】(a)~(d)、それぞれセラミックスサセプタの製造方法の一段階を示した模式的な断面図である。
図9】セラミックスサセプタの製造方法の一段階を示した模式的な断面図である。
図10】実施例および比較例の製造条件および各種試験の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。なお、構成図において、各構成要素の大きさは概念的に表したものであり、必ずしも実際の寸法比率を表すものではない。
【0023】
[実施形態]
(セラミックスサセプタの構成)
本発明の実施形態に係るセラミックスサセプタについて、図1(a)、(b)を参照して説明する。図1(a)は、本発明の実施形態に係るセラミックスサセプタの一例を示した模式的な断面図である。図1(b)は、図1(a)のセラミックスサセプタの使用例を示した模式的な断面図である。本発明の実施形態に係るセラミックスサセプタ100は、半導体基板支持部材を載置する載置面18を有する基材10を備えている。載置面18は、基材10の上面12に設けられている。半導体基板支持部材とは、例えば、静電チャック、真空チャック、ヒーター等である。
【0024】
基材10は、SiCを主成分とするセラミックス焼結体により形成されている。セラミックス焼結体がSiCを主成分とするとは、セラミックス焼結体のSiCの濃度が50wt%以上であることをいう。基材10は略円板状のほか、多角形板状または楕円板状などのさまざまな形状であってもよい。基材10は、載置面12に形成される貫通孔等を除いて平板状である。
【0025】
基材10を形成するセラミックス焼結体は、0.2GHzでの誘電正接tanδが0.45以下であり、0.5GHzでの誘電正接tanδが0.70以下である。これにより、セラミックスサセプタ100のGHz帯域での誘電特性を向上させることができる。その結果、セラミックスサセプタ100をGHz帯域のプロセスで使用した場合、高周波電力の吸収を抑制できるので、セラミックスサセプタ100自体の発熱を抑制することができる。なお、誘電正接tanδとは、複素誘電率εの実数部の誘電率ε’と虚数部の誘電率ε’’の比ε’’/ε’である。また、GHz帯域とは、0.1GHz以上の帯域をいう。
【0026】
セラミックス焼結体は、0.5GHzでの誘電正接tanδが0.40以上であることが好ましい。これにより、低tanδと後述する低体積抵抗率を両立させることができるので、セラミックスサセプタ100の高周波特性がさらに改善する。
【0027】
なお、セラミックス焼結体は、0.2GHzでの誘電正接tanδが0.2以上であることが好ましい。また、セラミックス焼結体は、1.0GHzでの誘電正接tanδが0.3以上0.92以下であることが好ましい。
【0028】
セラミックス焼結体の体積抵抗率は、20℃で10Ωcmより小さいことが好ましく、20℃で10Ωcmより小さいことがより好ましい。これにより、セラミックスサセプタ100のインピーダンスの増大を抑制でき、プラズマプロセスに与える影響を低減できる。その結果、半導体支持部材や基板の温度分布の安定化をより図ることができる。一般的に、体積抵抗率が小さくなると誘電正接tanδが大きくなる傾向にある。そのため、体積抵抗率を上記の範囲とすることで、低tanδと低体積抵抗率が両立し、セラミックスサセプタの高周波特性をさらに改善することができる。なお、セラミックス焼結体の体積抵抗率の下限値は特に限定する必要はないが、例えば、20℃で0.5Ωcm以上であってもよく、20℃で10Ωcm以上であってもよい。
【0029】
セラミックス焼結体の表面抵抗率は、20℃で10Ω/□以下であることが好ましく、20℃で10Ω/□以下であることがより好ましい。高周波電流は、表皮効果により主に基台の表皮を流れるため、表面抵抗率が小さいことで、プラズマプロセスの安定化を図ることができる。なお、セラミックス焼結体の表面抵抗率の下限値は特に限定する必要はないが、例えば、20℃で0.5Ω/□以上であってもよく、20℃で10Ω/□以上であってもよい。
【0030】
セラミックス焼結体は、Alを0.2mol%以上1.1mol%以下含むことが好ましい。これにより、上記範囲の誘電正接tanδや体積抵抗率、表面抵抗率を有するセラミックスサセプタ100を具体的に構成することができる。ここで、mol%はセラミックス焼結体が含有するAl原子のmol数をセラミックス焼結体を構成する全原子のmol数で割ったものである。セラミックス焼結体は、Bを0.04mol%以上0.19mol%以下含むことが好ましい。これらの原子は、AlやAlN、BC、BNなどの化合物で添加されることが好ましい。
【0031】
図2は、本発明の実施形態に係るセラミックスサセプタの変形例を示した模式的な断面図である。図2に示されるように、セラミックスサセプタ100は、基材10に埋設された高周波用電極20をさらに備えることが好ましい。これにより、セラミックスサセプタ100を高周波環境で使用できるRF印加用基台として機能させることができる。高周波用電極20は、セラミックスサセプタ100の設計に応じた形状のものが埋設される。高周波用電極20は、W、Moまたはこれらを主成分とする合金からなることが好ましい。
【0032】
図3は、本発明の実施形態に係るセラミックスサセプタの変形例を示した模式的な断面図である。図4は、本発明の実施形態に係るセラミックスサセプタの上面の一例を示した模式図である。図3は、図4のAA線における断面を示している。
【0033】
図3および図4に示されるように、基材10は、内部に媒体流路30が設けられていることが好ましい。媒体流路30は、例えば、管状に形成される。媒体流路30の幅は、1mm以上60mm以下であることが好ましい。媒体流路30の断面形状は、矩形に限られず、円形、楕円形、半円形、段差付きの形状など、製造可能な形状であればどのようなものでもよい。
【0034】
媒体流路30は、低温のチラーを循環する方式であることが好ましい。そのため、媒体流路30は、チラーを流入させる流入口および流出させる流出口が形成されることが好ましい。
【0035】
基材10に媒体流路30が形成される場合、基材10はセラミックス焼結体により一体的に形成されることが好ましい。基材10がセラミックス焼結体により一体的に形成されるとは、媒体流路30の天井部を形成するセラミックス焼結体と媒体流路30の底部を形成するセラミックス焼結体がセラミックスを含む接合材を用いてもしくは接合材を用いずに直接接合されていることをいう。これにより、基材10の機械的強度が高くなる。
【0036】
媒体流路30は、基材10を上面12から透視した形状で、基材10の中心16を中心とする略円環状の形状を含むことが好ましい。これにより、基材10表面の半径方向の温度分布を調整できる。略円環状とは、図4のように円環状の円弧の一部がつながっていない形状および通常の円環状を含む。図4の点線は、基材10を上面12から透視したときの媒体流路30の形状を示している。媒体流路30以外の透視される構造は省略している。これらは、基材10の冷却仕様に合わせて多様に設計しうる。
【0037】
図5は、本発明の実施形態に係るセラミックスサセプタの変形例を示した模式的な断面図である。図6は、本発明の実施形態に係るセラミックスサセプタの上面の変形例を示した模式図である。図5は、図6のBB線における断面を示している。なお、図5および図6は、高周波用電極20が埋設され、媒体流路30が設けられている。このような場合、媒体流路30は、基材10の垂直な断面において、高周波用電極20が埋設された層より基材10の下面14に近い位置にあることが好ましい。
【0038】
図5および図6に示されるように、媒体流路30は、基材10を上面12から透視した形状で、基材10の中心16を中心とする同心円状に配置されることが好ましい。これにより、基材10の表面の半径方向の温度分布を細かく調整できる。同心円状に配置される略円環状の媒体流路30は、図5および図6のように2重であってもよいし、3重以上であってもよい。同心円状に配置される略円環状の媒体流路30は、図6のように基材10の内部で連通していてもよいし、それぞれに流入口および流出口が形成されてもよい。また、隣接する媒体流路30の間隙の幅(隣接する媒体流路30の間隙に存在する基材10の幅)は、2mm以上であることが好ましい。また、隣接する媒体流路30の間隙の幅は、媒体流路30の幅の25%以上であることが好ましい。これにより、基材10の内部に媒体流路30を形成しても、基材10の強度を保つことができる。
【0039】
媒体流路30は、直線状の形状を含んでもよい。また、略円環状の媒体流路30と直線状の媒体流路30を組み合わせてもよい。略円環状の媒体流路30と直線状の媒体流路30は、連通していてもよい。
【0040】
セラミックスサセプタ100は、基材10に高周波用電極20が埋設される場合、必要に応じて端子50、51や端子穴52を備えていてもよい。
【0041】
[セラミックスサセプタの製造方法]
次に、本発明の実施形態に係るセラミックスサセプタの製造方法を説明する。本発明の実施形態に係るセラミックスサセプタは、例えば、以下に説明する成形体ホットプレス法によって作製される。なお、セラミックスサセプタの製造方法は本方法に限られず、例えば、粉末ホットプレス法や従前のグリーンシート積層法等であってもよい。粉末ホットプレス法は、セラミックス原料粉と所定の発熱抵抗体や電極を交互に重ねることにより発熱抵抗体や電極をセラミックスの内部に埋設し、それを1軸ホットプレス焼成する方法である。
【0042】
本発明の実施形態に係るセラミックスサセプタの成形体ホットプレス法による製造方法は、セラミックス成形体形成工程、セラミックス脱脂体作製工程、積層体形成工程、積層体焼成工程、基材加工工程を備えている。
【0043】
セラミックス成形体形成工程では、例えば、SiC(炭化珪素)を主成分とするセラミックス原料粉から1または複数のセラミックス成形体を形成する。必要に応じて焼結助剤が添加されてもよい。例えば、SiCセラミックス原料粉に焼結助剤のBC、Cを含む添加物、バインダ、可塑剤、分散剤などの添加剤を適宜添加して混合して、スラリーを作製し、スプレードライ法等により造粒粉を造粒する。その後、造粒粉を加圧成形して複数のセラミックス成形体を形成することができる。
【0044】
原料となるSiCセラミックス原料粉は、アチソン法により作製された原料粉やCVD法により作製された原料粉などが用いられる。
【0045】
セラミックス原料粉は、高純度であることが好ましく、その純度は、好ましくは99%以上、より好ましくは99.9%以上である。また、セラミックス原料粉の平均粒径は、好ましくは0.1μm以上1.0μm以下である。
【0046】
混合方法は、湿式、乾式の何れであってもよく、例えばボールミル、振動ミルなどの混合器を用いることができる。成形方法としては、例えば、一軸加圧成形や冷間静水等方圧加圧(CIP:Cold Isostatic Pressing)法などの公知の方法を用いればよい。なお、セラミックス成形体を形成する方法は、加圧成形に限らず、例えば、グリーンシート積層、または鋳込み成形であっても適用が可能であり、これらを適宜脱脂、またはさらに仮焼する工程により、セラミックス成形体を製造することができる。
【0047】
セラミックス成形体は、成形後、機械加工により成形体の形状が整えられてもよい。また、高周波用電極を埋設する場合、セラミックス成形体の片面または両面(他のセラミックス成形体との接合面)に、高周波用電極、ビア、配線等の形状に合わせた形状の溝が形成されてもよい。機械加工は、脱脂後に行なってもよい。
【0048】
セラミックス脱脂体作製工程では、1または複数のセラミックス成形体を所定の温度以上、所定の時間以上脱脂処理して1または複数のセラミックス脱脂体を作製する。
【0049】
セラミックス成形体は、例えば、500℃以上900℃以下の温度で熱処理され、セラミックス脱脂体となる。脱脂時間は、1時間以上120時間以下であることが好ましい。脱脂には、大気炉または窒素雰囲気炉を用いることができるが、バインダの有機成分を除去するために、大気炉の方が好ましい。
【0050】
積層体形成工程では、必要な場合、高周波用電極、ビアの材料、配線を準備し、これらと複数のセラミックス脱脂体を組み合わせ、平板状に形成された積層体を形成する。図7(a)~(d)は、それぞれセラミックスサセプタの製造工程の一段階を示す模式的な断面図である。図7(a)は、上面が載置面となるセラミックス脱脂体101、高周波用電極20、高周波用電極20が配置される凹部が形成されたセラミックス脱脂体102の断面を示している。図7(b)は、セラミックス脱脂体101、高周波用電極20、およびセラミックス脱脂体102か組み合わされて1の積層体110が形成されている。図7は、2つのセラミックス脱脂体を用いて積層体110を作製しているが、セラミックス脱脂体の数は、セラミックスサセプタの設計に応じて1でも3以上でもよい。高周波用電極20を埋設しない場合、積層体形成工程を省略してもよい。
【0051】
高周波用電極20、ビアの材料、配線はモリブデンやタングステンなどの箔、薄板、ワイヤー、メッシュまたはこれら材質の多孔体、ペースト充填、印刷により形成される。高周波用電極20は、セラミックスサセプタ100の設計に応じた形状に加工されたものを準備する。高周波用電極20の形状は、設計に応じた様々な形状とすることができる。また、材質も、モリブデン、タングステンなど、様々な材質とすることができる。
【0052】
積層体焼成工程では、形成された積層体110を、積層方向に一軸加圧焼成して基材を形成する。焼成条件のうち、加圧する力は4MPa以上であることが好ましい。また、焼成温度は、2000℃以上2200℃以下であることが好ましい。焼成時間は、1時間以上12時間以下であることが好ましく、1時間以上5時間以下であることがより好ましい。焼成雰囲気は、例えば、窒素や不活性ガス雰囲気であるが、真空などの雰囲気であってもよい。また、真空雰囲気の後に不活性ガス雰囲気とすることでもよい。これにより、それぞれの積層体で1または複数のセラミックス脱脂体が焼結してセラミックス焼結体となり、これらが一体化され、基材を得ることができる。図7(c)は、基材加工前の基材の断面を示している。
【0053】
基材加工工程では、基材の外形の加工をする。また、必要な場合、下面の所定の位置に端子を接続するための端子穴の穿設を行なう。そして、端子穴にロウ材等で端子を接続する。端子は、Ni等を用いることができる。また、ロウ材はAuロウ等を用いることができる。図7(d)は、端子を接続した基材の断面を示している。
【0054】
なお、セラミックス脱脂体作製工程と、積層体形成工程との間に、セラミックス仮焼体作製工程を設けてもよい。セラミックス仮焼体作製工程を設ける場合、セラミックス脱脂体を所定の温度で仮焼してセラミックス仮焼体を作製する。これにより、セラミックスサセプタの寸法精度をより高くすることができる。仮焼温度は1200℃以上1900℃以下であることが好ましい。仮焼時間は、0.5時間以上12時間以下であることが好ましい。仮焼雰囲気は、窒素や不活性ガス雰囲気であることが好ましいが、真空などの雰囲気であってもよい。仮焼体作製工程を設ける場合、機械加工は仮焼体作製工程の後に行なってもよい。
【0055】
このようにして、セラミックスサセプタ自体の発熱を抑制することができる電極が埋設されたセラミックスサセプタを製造することができる。
【0056】
[セラミックスサセプタの製造方法の変形例]
次に、本発明のセラミックスサセプタの製造方法の変形例を説明する。本発明の実施形態に係る媒体流路を備えるセラミックスサセプタの成形体ホットプレス法による製造方法は、セラミックス成形体形成工程、セラミックス脱脂体作製工程、積層体形成工程、積層体焼成工程、基材前駆体加工工程、基材前駆体接合工程、および基材加工工程を備えている。セラミックス成形体形成工程、セラミックス脱脂体作製工程、および基材加工工程は、上記と同様であるため、説明を省略する。
【0057】
積層体形成工程では、必要な場合、高周波用電極20、ビアの材料、配線を準備し、これらと複数のセラミックス脱脂体を組み合わせ、平板状に形成された1または複数の積層体を形成する。図8(a)~(d)および図9は、それぞれセラミックスサセプタの製造工程の一段階を示す模式的な断面図である。図8(a)は、上面が載置面となるセラミックス脱脂体101、高周波用電極20、高周波用電極20が配置される凹部が形成され、下面が媒体流路の天井部となるセラミックス脱脂体102、媒体流路の一部となる溝105が形成されるセラミックス脱脂体103の断面を示している。図8(b)は、セラミックス脱脂体101、高周波用電極20、およびセラミックス脱脂体102か組み合わされて1の積層体110が形成されている。また、セラミックス脱脂体103のみから1の積層体110が形成されている。積層体110は、1のセラミックス脱脂体からなるものがあってもよい。
【0058】
積層体焼成工程では、形成された積層体を、それぞれ積層方向に一軸加圧焼成して1または複数の基材前駆体を形成する。焼成条件は、上記と同様である。複数の基材前駆体とは、例えば、電極が埋設された基材前駆体、媒体流路の蓋となる基材前駆体、媒体流路の一部が形成される基材前駆体などである。
【0059】
基材前駆体加工工程では、1または複数の基材前駆体に対し、それぞれ必要な加工を行う。例えば、接合後媒体流路となる溝の形成をする。図8(c)は、基材前駆体122に接合後媒体流路となる溝105が形成された断面を示している。図8では、溝105に他の基材前駆体121が蓋をすることで媒体流路が形成されているが、2つの基材前駆体にそれぞれ形成された溝が組み合わさって媒体流路が形成されてもよい。このような方法によると、様々な形状の媒体流路を形成することができる。
【0060】
基材前駆体接合工程では、複数の基材前駆体を接合して、基材を作製する。接合は、接合材を用いた接合方法、および接合材を用いない接合方法のいずれかを用いることができる。図8(d)は、接合後の基材を示している。
【0061】
最初に接合材を用いた接合方法を説明する。まず、接合材を準備し、基材前駆体の接合する側の端面の少なくとも一方に接合材を塗布する。基材前駆体の接合する側の端面は、表面粗さRaを1.6μm以下にすることが好ましく、0.4μm以下に研磨することがより好ましい。塗布する接合材の厚さは、5μm以上30μm以下であることが好ましい。
【0062】
次に、複数の基材前駆体を配置し、基板載置面に垂直方向に加圧しつつ加熱する。接合条件のうち加圧する力は、5kPa以上であることが好ましい。また、加熱温度は、1500℃以上1800℃以下であることが好ましい。加熱時間は、0.5時間以上5時間以下であることが好ましい。加熱雰囲気は、例えば、窒素や不活性ガス雰囲気であるが、真空などの雰囲気であってもよい。これにより、複数の基材前駆体を接合することができる。
【0063】
接合材は、基材前駆体同士を接合できればどのようなものであってもよい。例えば、基材前駆体と同一の主成分であるSiC粉末にBC粉末を少なくとも含む混合粉末のペーストであってもよい。また、SiCを90wt%以上含み、必要に応じて接合時融液となる温度を調節するためにSiやBを含むペーストであってもよい。
【0064】
次に、接合材を用いない接合方法を説明する。まず、複数の基材前駆体を配置する。基材前駆体の接合する側の端面は、表面粗さRaを0.1μm以下に研磨することが好ましい。次に、基板載置面に垂直方向に加圧しつつ加熱する。接合条件のうち、加圧する力は、1MPa以上であることが好ましい。また、加熱温度は、1800℃以上2000℃以下であることが好ましい。加熱時間は、0.5時間以上6時間以下であることが好ましい。加熱雰囲気は、例えば、窒素や不活性ガス雰囲気であるが、真空などの雰囲気であってもよい。これにより、複数の基材前駆体を接合することができる。
【0065】
また、上述した方法では、基材前駆体をセラミックス焼結体で形成して、それらを接合して基材としたが、基材前駆体をセラミックス仮焼体で形成して、それらを接合しつつ焼結させて基材を作製してもよい。また、媒体流路等の構造が単純な場合は、セラミックス脱脂体を加工して、積層、焼結して基材を作製することもできる。媒体流路等の構造が複雑な場合や媒体流路に外部から連通する流路を設ける場合、媒体流路の寸法精度を高くする場合は、セラミックス焼結体を接合する方法のほうが好ましい。
【0066】
このようにして、セラミックスサセプタ自体の発熱を抑制することができる電極が埋設され媒体流路が形成されたセラミックスサセプタを製造することができる。
【0067】
[実施例および比較例]
(実施例1)
実施例1は、セラミックスサセプタの実施例である。基材の原料は、CVD法で作製されたSiC原料粉(純度99.9wt%、平均粒子径0.1μm)を使用した。SiC原料粉に、焼結助剤としてBCを内割で0.1wt%、Cを内割で0.5wt%添加し、バインダ、分散剤などを適宜添加して混合して、スラリーを作製し、スプレードライ法により造粒粉を造粒した。
【0068】
次に、造粒粉を静水圧成形し、成形後Φ320mm、厚さt10mmの円板状の成形体とΦ320mm、厚さt20mmの円板状の成形体に加工した。また、厚さt20mmの成形体の片面にΦ294mm深さ0.15mmの凹部を形成した。高周波用電極は、厚さt0.1mmのW(タングステン)箔を用いた。高周波用電極は、外径がおよそΦ300mmの範囲に収まる形状とした。
【0069】
次に、厚さt20mmの成形体の凹部に高周波用電極を配置し、厚さt10mmの成形体と組み合わせて積層体を形成した。次に、積層体を真空雰囲気で1500℃で2時間熱処理後、焼成雰囲気をN添加Ar雰囲気(N/Ar流量比=0.03)、焼成温度2200℃、ホットプレス圧力4MPaでホットプレス焼成した。焼成時間は、3時間とした。焼成後、外径をΦ300mm、上面から高周波用電極までの距離(厚み)を1mmとし、上面をRa0.2μmに研磨加工した。また、電極まで止まり穴を形成し、コバール製の端子をBag-8ロウ材で真空中、850℃でロウ付けした。このようにして、実施例1のセラミックスサセプタを作製した。また、同一の造粒粉を使用し、同一の焼成条件で厚さt10mmの板状の実施例1の試験用試料を作製した。
【0070】
(実施例2)
実施例2は、焼成雰囲気をAr雰囲気とした。それ以外は、実施例1と同様の条件で実施例2のセラミックスサセプタを作製した。また、同一の造粒粉を使用し、同一の焼成条件で厚さt10mmの板状の実施例2の試験用試料を作製した。
【0071】
(実施例3)
実施例3は、基材の原料をアチソン法で作製され微細化処理されたSiC原料粉(純度99.9wt%、平均粒子径0.5μm)に変更した。また、焼成温度を2150℃とした。それ以外は、実施例1と同様の条件で実施例3のセラミックスサセプタを作製した。また、同一の造粒粉を使用し、同一の焼成条件で厚さt10mmの板状の実施例3の試験用試料を作製した。
【0072】
(比較例1)
比較例1は、Al源の添加物としてAlを添加した。焼結助剤および添加物を原料粉に対して内割で、0.1wt%BC+1.0wt%C+0.5wt%Alとして添加して、造粒粉を造粒した。また、焼成温度を2100℃とした。それ以外は、実施例3と同様の条件で比較例1のセラミックスサセプタを作製した。また、同一の造粒粉を使用し、同一の焼成条件で厚さt10mmの板状の比較例1の試験用試料を作製した。
【0073】
(実施例4)
実施例4は、焼結助剤を0.2wt%BC+1.0wt%Cとして造粒粉を造粒した。また、焼成雰囲気をN添加Ar雰囲気とした。それ以外は、実施例3と同様の条件で実施例4のセラミックスサセプタを作製した。また、同一の造粒粉を使用し、同一の焼成条件で厚さt10mmの板状の実施例4の試験用試料を作製した。
【0074】
(実施例5)
実施例5は、添加物としてAlを添加した。焼結助剤および添加物を原料粉に対して内割で、0.1wt%BC+1.0wt%C+0.5wt%Alとして添加して、造粒粉を造粒した。それ以外は、実施例3と同様の条件で実施例5のセラミックスサセプタを作製した。また、同一の造粒粉を使用し、同一の焼成条件で厚さt10mmの板状の実施例5の試験用試料を作製した。
【0075】
(実施例6)
実施例6は、添加物としてAlNを添加した。焼結助剤および添加物を原料粉に対して内割で、0.2wt%BC+1.0wt%C+0.5wt%AlNとして添加して、造粒粉を造粒した。また、焼成温度を2100℃とした。それ以外は、実施例3と同様の条件で実施例6のセラミックスサセプタを作製した。また、同一の造粒粉を使用し、同一の焼成条件で厚さt10mmの板状の実施例6の試験用試料を作製した。
【0076】
(比較例2)
比較例2は、焼成雰囲気をN添加Ar雰囲気とした。また、焼成温度を2100℃とした。それ以外は、実施例5と同様の条件で比較例2のセラミックスサセプタを作製した。また、同一の造粒粉を使用し、同一の焼成条件で厚さt10mmの板状の比較例2の試験用試料を作製した。
【0077】
(実施例7)
実施例7は、焼成温度を2100℃とした。それ以外は、実施例5と同様の条件で実施例7のセラミックスサセプタを作製した。また、同一の造粒粉を使用し、同一の焼成条件で厚さt10mmの板状の実施例7の試験用試料を作製した。
【0078】
(実施例8)
実施例8は、焼結助剤および添加物を原料粉に対して内割で、0.3wt%BC+3.0wt%C+1.0wt%AlNとして添加して、造粒粉を造粒した。また、焼成雰囲気をN添加Ar雰囲気とした。また、焼成温度を2050℃とした。それ以外は、実施例6と同様の条件で実施例6のセラミックスサセプタを作製した。また、同一の造粒粉を使用し、同一の焼成条件で厚さt10mmの板状の実施例8の試験用試料を作製した。
【0079】
(比較例3)
比較例3は、焼結助剤および添加物を原料粉に対して内割で、0.5wt%BC+3.0wt%C+2.0wt%Alとして添加して、造粒粉を造粒した。また、焼成温度を2050℃とした。それ以外は、実施例5と同様の条件で比較例3のセラミックスサセプタを作製した。また、同一の造粒粉を使用し、同一の焼成条件で厚さt10mmの板状の比較例3の試験用試料を作製した。
【0080】
(実施例9)
実施例9は、焼結助剤および添加物を原料粉に対して内割で、0.5wt%BC+5.0wt%C+2.0wt%AlNとして添加して、造粒粉を造粒した。また、焼成雰囲気をN添加Ar雰囲気とした。また、焼成温度を2050℃とした。それ以外は、実施例6と同様の条件で実施例6のセラミックスサセプタを作製した。また、同一の造粒粉を使用し、同一の焼成条件で厚さt10mmの板状の実施例9の試験用試料を作製した。
【0081】
(実施例10)
実施例10は、焼結助剤および添加物を原料粉に対して内割で、0.5wt%BC+5.0wt%C+2.0wt%Alとして添加して、造粒粉を造粒した。また、焼成温度を2050℃とした。それ以外は、実施例5と同様の条件で実施例10のセラミックスサセプタを作製した。また、同一の造粒粉を使用し、同一の焼成条件で厚さt10mmの板状の実施例10の試験用試料を作製した。
【0082】
(誘電正接tanδの測定)
インピーダンスアナライザを用いた容量法によりインピーダンスを測定し解析することによって、実施例および比較例の試験用試料の誘電正接tanδを求めた。実施例および比較例の試験用試料を切り出し、Φ15mm、厚さt1mmの円板状に加工した。今回の測定では行わなかったが、必要に応じて試料の両面にAu蒸着をしてもよい。測定器(キーサイト・テクノロジー社製インピーダンスアナライザE4991B、テスト・フィクスチャ16453A)を用いて、インピーダンスを測定し、測定器に搭載された材料測定ファームウェアにより誘電正接tanδを算出した。測定周波数は、0.2GHz、0.5GHz、1GHzとした。測定温度は20℃(室温)とした。なお、測定周波数1GHzにおける誘電正接tanδは、ネットワークアナライザ等を用いて共振器法、同軸・導波管法、フリースペース法等で測定してもよい。
【0083】
(体積抵抗率の測定)
実施例および比較例の試験用試料の体積抵抗率を3端子法(JIS C 2139-3)により測定した。実施例および比較例の試験用試料を切り出し、Φ60mm、厚さ2mmtの円板状に加工した。電極はAgペーストを印刷して形成した。測定器(アドバンテスト社製R8340(超高抵抗計))を用いて、試験電圧500VDC、電圧印加後1分経過後の体積抵抗率を測定した。測定温度は、20℃(室温)とした。
【0084】
(表面抵抗率の測定)
実施例および比較例の試験用試料の表面抵抗率は、電極構成および電圧印加方法を表面抵抗率測定用に変更したのち、体積抵抗率の測定同様の規定(JIS C 2139-3)により測定した。
【0085】
(焼成後成分分析)
実施例および比較例の試験用試料に対し、GDMSによる微量成分分析を行い、セラミックス焼結体全体に対するAlのモル濃度を算出した。
【0086】
図10は、実施例および比較例の製造条件および各種試験の結果を示す表である。SiC組織は抵抗の低い粒内組織と、その周りの抵抗の高い空間欠乏層によって構成されている(2層コンデンサモデル)と仮定することができる。そのように仮定すると、その誘電体の緩和時間τは(粒内の抵抗)×(空間欠乏層の静電容量)に比例するとされる。粒内の抵抗は(キャリア濃度)×(移動度)に影響を受ける。したがって、本発明のセラミックスサセプタを形成するセラミックス焼結体は、添加物を構成する元素が粒内に拡散しキャリア濃度が増加することによって粒内の抵抗が小さくなった結果、緩和時間τが小さくなり、それに伴って誘電正接tanδが小さくなったものと推定される。
【0087】
実施例および比較例により、焼成温度が高くなるにつれて誘電正接tanδが小さくなる傾向が見られた。詳細は不明であるが、焼成温度が高くなるにつれて粒子径が大きくなり、相対的に2層コンデンサモデルの容量成分が少なくなったためτが小さくなり、低tanδとなったと推定される。一方、適切な焼成温度は、焼結助剤や添加物の原料粉末への添加量にも関係しているため、高ければ高いほどよいわけではない。
【0088】
アチソン法によるSiC粉末とCVD法によるSiC粉末とでは、アチソン法によるSiC粉末のほうが粒子径は大きく、CVD法によるSiC粉末のほうが粒子径は小さい。焼成条件が同じである場合、焼成後もその傾向は一定程度維持される。そのため、CVD法による原料を用いた場合、粒子径が小さく2層コンデンサモデルでの粒内の静電容量が大きくなり、その結果τが大きくなり、高tanδとなりやすいと推定される。また、CVD法による原料粉末のほうが微細であり焼成後も相対的に微細な組織が残存し、多くの粒界が形成される。そのため、体積抵抗率が高くなると推定される。さらに、アチソン法の原料粉末には比較的多くの不純物が含有されうることも、相対的にCVD法によるSiC粉末を原料とした場合のほうが高い体積抵抗率を有する原因であると推定される。
【0089】
実施例および比較例から、ホウ素(B)やアルミニウム(Al)の添加量が多いほど体積抵抗率は低かった。よって、低抵抗化には、ホウ素やアルミニウム添加量はある程度多いほうがよいことが分かった。これは、ホウ素やアルミニウムのSiC格子中への固溶に関係し、SiCバンド中にアクセプタレベルが形成されたためと推定される。また、Nを含有するAr雰囲気中で焼結を行うことにより、体積抵抗率の増加が認められた。これは、SiC格子中にNが侵入することによる影響と推定される。なお、実施例5から10のセラミックス焼結体のアルミニウム含有量は、最小値が0.2mol%、最大値が1.01mol%であった。
【0090】
これらを総合すると、比較例1のセラミックスサセプタは、焼結助剤や添加物の原料粉末への添加量に対して焼成温度が低かったため、誘電正接tanδが大きくなったと推定される。また、比較例2のセラミックスサセプタは、焼成雰囲気をN添加Ar雰囲気としたため、誘電正接tanδが大きくなったと推定される。また、比較例3のセラミックスサセプタは、焼結助剤や添加物の原料粉末への添加量に対して焼成温度が低かったため、誘電正接tanδが大きくなったと推定される。
【0091】
以上により、本発明のセラミックスサセプタは、GHz帯域で高出力のプロセスでも使用できることが確かめられた。
【0092】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形および均等物に及ぶことはいうまでもない。また、各図面に示された構成要素の構造、形状、数、位置、大きさ等は説明の便宜上のものであり、適宜変更しうる。
【符号の説明】
【0093】
10 基材
12 上面
14 下面
16 中心
18 載置面
20 高周波用電極
30 媒体流路
50、51 端子
52 端子穴
100 セラミックスサセプタ
101、102、103 セラミックス脱脂体
105 溝
110 積層体
121、122 基材前駆体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10