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特開2024-176128プロセスモニタユニットおよびレーザ溶接情報の取得方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176128
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】プロセスモニタユニットおよびレーザ溶接情報の取得方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20241212BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20241212BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
B23K26/21 A
G01N21/88 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094408
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138771
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 将明
(72)【発明者】
【氏名】大角 敏裕
(72)【発明者】
【氏名】川合 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】村山 直寛
(72)【発明者】
【氏名】柴田 憲三
(72)【発明者】
【氏名】山本 敦樹
【テーマコード(参考)】
2G051
4E168
【Fターム(参考)】
2G051AB02
2G051AB13
2G051AB14
2G051BA04
2G051BA10
2G051BB17
2G051CA02
2G051CB01
2G051CB10
2G051CC15
4E168BA71
4E168BA87
4E168BA88
4E168CA02
4E168CA03
4E168CA05
4E168CA06
4E168DA03
4E168EA17
(57)【要約】
【課題】レーザ溶接の溶接状態が遷移する場合であっても、溶接箇所の良否を判定可能な情報を取得できる。
【解決手段】プロセスモニタユニットは、レーザ溶接のレーザ光照射時に発生する光を受光して電気信号に変換する変換部と、第1ゲインで電気信号を増幅する第1増幅部と、第1ゲインより大きい第2ゲインで電気信号を増幅する第2増幅部と、第1増幅部により増幅された第1電気信号、および第2増幅部により増幅された第2電気信号のうちいずれか一方の電気信号を取得して出力する取得部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ溶接のレーザ光照射時に発生する光を受光して電気信号に変換する変換部と、
第1ゲインで前記電気信号を増幅する第1増幅部と、
前記第1ゲインより大きい第2ゲインで前記電気信号を増幅する第2増幅部と、
前記第1増幅部により増幅された第1電気信号、および前記第2増幅部により増幅された第2電気信号のうちいずれか一方の電気信号を取得して出力する取得部と、を備える、
プロセスモニタユニット。
【請求項2】
前記取得部は、前記第2電気信号が前記第2電気信号の飽和値以下であると判定した場合、前記第2電気信号を取得する、
請求項1に記載のプロセスモニタユニット。
【請求項3】
前記取得部は、前記第2電気信号が前記第2電気信号の飽和値以下でないと判定した場合、前記第1電気信号を取得する、
請求項2に記載のプロセスモニタユニット。
【請求項4】
前記取得部は、いずれか他方の電気信号の取得を省略して削除する、
請求項1に記載のプロセスモニタユニット。
【請求項5】
前記取得部により取得された前記いずれか一方の電気信号に基づいて、異なる複数の溶接状態に遷移する前記レーザ溶接の良否判定を実行し、前記良否判定の結果を出力する判定部、をさらに備える、
請求項1に記載のプロセスモニタユニット。
【請求項6】
前記レーザ光は、青色レーザである、
請求項1に記載のプロセスモニタユニット。
【請求項7】
コンピュータが行うレーザ溶接情報の取得方法であって、
レーザ溶接のレーザ光照射時に発生する光を受光して電気信号に変換し、
第1ゲインと、前記第1ゲインより大きい第2ゲインとでそれぞれ前記電気信号を増幅し、
前記第1ゲインで増幅された第1電気信号、および前記第2ゲインで増幅された第2電気信号のうちいずれか一方の電気信号を取得する、
レーザ溶接情報の取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プロセスモニタユニットおよびレーザ溶接情報の取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、レーザトーチでワークにレーザ光を照射して溶接を行うレーザ溶接機が開示されている。レーザ溶接機は、レーザトーチの筐体内に、ワークに照射されるレーザ光の光軸と同軸になるようにして溶接箇所から発する溶接光を集光する集光レンズを設け、集光レンズで集光された光を、互いに隣接させて配置した複数の受光手段により受光し、複数の受光手段で受光した複数の光の強度に基づいて溶接箇所の欠陥検出を行う。
【0003】
また、特許文献2には、被溶接材料のレーザ溶接が正常に行われているか否かを判定するレーザ溶接モニタリング装置が開示されている。レーザ溶接モニタリング装置は、レーザ溶接機に備えられている加工ヘッドが射出するレーザビームを被溶接材料に照射しているときに、レーザビームの照射位置で発生する、レーザビームの反射光と、反射光とは異なる光である熱放射によるモニタリング光とを含む放射光を受光し、分光ユニットにより放射光に含まれている反射光とモニタリング光とを分光し、分光したモニタリング光を第1の電気信号に変換し、分光した反射光をトリガユニットにより第2の電子信号に変換し、第2の電気信号のレベルが所定の閾値以上であるときにトリガ信号を出力し、レーザ溶接モニタによりトリガ信号が入力されると、第1の電気信号に基づいて、被溶接材料のレーザ溶接が正常に行われているか否かの判定を開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-42769号公報
【特許文献2】特開2021-137867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、上述した従来の事情に鑑みて案出され、レーザ溶接の溶接状態が遷移する場合であっても、溶接箇所の良否を判定可能な情報を取得するプロセスモニタユニットおよびレーザ溶接情報の取得方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、レーザ溶接のレーザ光照射時に発生する光を受光して電気信号に変換する変換部と、第1ゲインで前記電気信号を増幅する第1増幅部と、前記第1ゲインより大きい第2ゲインで前記電気信号を増幅する第2増幅部と、前記第1増幅部により増幅された第1電気信号、および前記第2増幅部により増幅された第2電気信号のうちいずれか一方の電気信号を取得して出力する取得部と、を備える、プロセスモニタユニットを提供する。
【0007】
また、本開示は、コンピュータが行うレーザ溶接情報の取得方法であって、レーザ溶接のレーザ光照射時に発生する光を受光して電気信号に変換し、第1ゲインと、前記第1ゲインより大きい第2ゲインとでそれぞれ前記電気信号を増幅し、前記第1ゲインで増幅された第1電気信号、および前記第2ゲインで増幅された第2電気信号のうちいずれか一方の電気信号を取得する、レーザ溶接情報の取得方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、レーザ溶接の溶接状態が遷移する場合であっても、溶接箇所の良否を判定可能な情報を取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係るレーザ加工ヘッドシステムの全体構成例を示すブロック図
図2】熱伝導溶接からキーホール溶接に移行する場合に第1増幅回路により得られる電圧信号波形例を示す図
図3】熱伝導溶接からキーホール溶接に移行する場合に第2増幅回路により得られる電圧信号波形例を示す図
図4】キーホール溶接から熱伝導溶接に移行する場合に第1増幅回路により得られる電圧信号波形例を示す図
図5】キーホール溶接から熱伝導溶接に移行する場合に第2増幅回路により得られる電圧信号波形例を示す図
図6】実施の形態におけるプロセスモニタユニットの動作手順例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示に至る経緯)
従来、レーザ光の照射箇所(つまり、溶接箇所)から発する溶接光に基づいて溶接箇所の欠陥検出を行う技術がある。ここで、レーザ溶接機は、溶接箇所あるいはレーザのパワー密度によって、熱伝導溶接またはキーホール溶接の異なる状態のレーザ溶接を行うことができる。しかし、レーザ溶接の状態は、ワークの変形、レーザの焦点位置のずれ等の要因によって溶接中にも遷移してしまうことがある。このような場合、溶接箇所から発する溶接光の強度が溶接中に大きく変化する。よって、レーザ溶接機は、溶接光を電気信号に変換する時の現在のゲイン設定がレーザ溶接の状態に対応するゲイン設定でない場合、溶接光に基づく電気信号がサチュレーションを起こしたり、電気信号の強度が足りなくなったりして正しい電気信号を得ることができず、溶接箇所の欠陥検出が困難になる可能性があった。
【0011】
そこで、レーザ溶接の状態の使い分けに合わせて電気信号のゲインを変更する方法が考えられる。しかし、ゲインを変更する場合、レーザ溶接機は、一連の工程にゲインの変更作業に伴う工数が追加されて工程内の工数が増加するという課題があった。
【0012】
また、各レーザ溶接の状態に対応するゲインに調整された複数のレーザ溶接機またはレーザ溶接モニタリング装置を使用する方法が考えられる。しかし、このような場合、各レーザ溶接の状態に対応してレーザ溶接機またはレーザ溶接モニタリング装置を用意しなければならず、設備コストが増加するという課題があった。
【0013】
そこで、以下の実施の形態では、レーザ溶接の溶接状態が遷移する場合であっても、溶接箇所の良否を判定可能な情報を取得するプロセスモニタユニットおよびレーザ溶接情報の取得方法の例を説明する。
【0014】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係るプロセスモニタユニットおよびレーザ溶接情報の取得方法を具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長化することを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであり、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0015】
<用語の定義>
以下の説明において、「レーザ溶接」という用語は、別途明示的に説明しない限り、可能な限り広範な意味を有するものであり、溶接、はんだ付け、溶融精錬、接合、焼なまし、軟化、粘着付与、リサーフェシング、ピーニング、熱処理、融合、封止、積付けを含むとする。
【0016】
図1を参照して、実施の形態に係るレーザ加工ヘッドシステム100について説明する。図1は、実施の形態に係るレーザ加工ヘッドシステム100の全体構成例を示すブロック図である。なお、図1に示すレーザ加工ヘッドシステム100は、一例であってこれに限定されないことは言うまでもない。
【0017】
レーザ加工ヘッドシステム100は、ヘッド制御ユニットS1と、発振器S2と、レーザヘッドS3と、プロセスモニタユニットPMと、モニタMNとを含む。なお、モニタMNは、端末装置P3と一体的に構成されてもよい。
【0018】
レーザ加工ヘッドシステム100は、ヘッド制御ユニットS1による制御指令に基づいて、発振器S2を駆動させて、レーザヘッドS3からワークの溶接箇所に向けてレーザ光を照射することでレーザ溶接を実行する。レーザ加工ヘッドシステム100は、溶接箇所に照射されたレーザ光の反射光と、溶接箇所で発生するプラズマ光と、溶接箇所から発生する熱放射光とを、光ファイバを介して分光ユニットP1にそれぞれ出力する。
【0019】
レーザ加工ヘッドシステム100は、分光ユニットP1によって入力された電気信号を増幅し、増幅後の電気信号を、中継基板P2を介して端末装置P3に出力する。レーザ加工ヘッドシステム100は、端末装置P3によって増幅後の電気信号を記録するとともに、増幅後の電気信号と、溶接品質が良好である場合に得られる電気信号との比較に基づいて、溶接不良(欠陥)が発生したか否かの判定(つまり、レーザ溶接の良否判定)を実行する。
【0020】
ヘッド制御ユニットS1は、中継基板P2、発振器S2およびレーザヘッドS3のそれぞれとの間でデータ通信可能に接続される。
【0021】
ヘッド制御ユニットS1は、レーザヘッドS3を制御するための制御指令を生成してレーザヘッドS3に送信したり、レーザヘッドS3に電源を供給したりする。ヘッド制御ユニットS1は、レーザヘッドS3から送信されたレーザヘッドS3のセンサ(不図示)および制御に関する情報(例えば、レーザヘッドS3が備える各種センサにより取得された情報、各種制御完了通知等)を取得する。また、ヘッド制御ユニットS1は、発振器S2から送信された発振器S2の制御結果等を取得する。
【0022】
発振器S2は、ヘッド制御ユニットS1および中継基板P2のそれぞれとの間でデータ通信可能に接続される。また、発振器S2は、レーザヘッドS3との間で光ファイバを用いて接続される。発振器S2は、中継基板P2を介して、ヘッド制御ユニットS1から送信された発振器S2により照射されたレーザ光のパワー指令値(出力値)の情報を取得する。発振器S2は、取得されたパワー指令値の情報に基づいて、レーザ光を出力する。出力されたレーザ光は、光ファイバを介してレーザヘッドS3に出力される。
【0023】
ここで、発振器S2により照射されるレーザ光は、青色(つまり、400nm~500nm)の波長を有する、所謂青色レーザ光であってもよいし、他の波長のレーザ光であってもよい。特に、青色レーザ光は、銅に対して高い吸収率(最大65%程度)で吸収される特性を有するため、積層金属箔をレーザ溶接する場合に有効である。
【0024】
また、ここでいう「銅」は、別途明示的に説明しない限り、可能な限り広範な意味を有するものであり、銅、銅材料、銅金属、銅で電気めっきされている材料、少なくとも約10重量%から100重量%の銅を含有する金属材料、少なくとも約10重量%から100重量%の銅を含有する金属および合金、少なくとも約20重量%から100重量%の銅を含有する金属および合金、少なくとも約50重量%から100重量%の銅を含有する金属および合金、少なくとも約70重量%から100重量%の銅を含有する金属および合金、少なくとも約90重量%から100重量%の銅を含有する金属および合金、のいずれも含むとする。
【0025】
レーザヘッドS3は、ヘッド制御ユニットS1との間でデータ通信可能に接続され、発振器S2および分光ユニットP1との間で光ファイバを介して光信号を送受信可能に接続される。レーザヘッドS3は、ヘッド制御ユニットS1から送信された制御指令に基づいて、発振器S2から出力されたレーザ光をワークの溶接箇所に照射し、レーザ溶接を実行する。また、レーザヘッドS3は、レーザ光の反射光と、プラズマ光と、熱放射光とをそれぞれ集光し、光ファイバを介して分光ユニットP1に送る。
【0026】
プロセスモニタユニットPMは、ヘッド制御ユニットS1、発振器S2、レーザヘッドS3およびモニタMNのそれぞれとの間でデータあるいは光信号を送受信可能に接続される。プロセスモニタユニットPMは、レーザヘッドS3により集光されたレーザ光の反射光、プラズマ光および熱放射光のそれぞれの光強度に対応する信号(後述する電圧信号)基づいて、レーザ溶接の良否判定を実行する。プロセスモニタユニットPMは、分光ユニットP1と、中継基板P2と、端末装置P3とを含む。
【0027】
分光ユニットP1は、レーザヘッドS3との間で各種光を、中継基板P2との間で信号通信可能に接続される。分光ユニットP1は、センサ10A~10Cと、I/V変換回路11と、第1増幅回路12と、第2増幅回路13とを含む、例えば1以上の集積回路により構成される。なお、第1増幅回路12は、3種の光(反射光、プラズマ光および熱放射光のそれぞれ)をそれぞれ増幅する3つの増幅回路により実現されてよい。また、同様に、第2増幅回路13は、3種の光(反射光、プラズマ光および熱放射光のそれぞれ)をそれぞれ増幅する3つの増幅回路により実現されてよい。
【0028】
センサ10A~10Cのそれぞれ(変換部の一例)は、例えばフォトダイオード等の光電素子により実現される。センサ10A~10Cのそれぞれは、光ファイバを介してレーザヘッドS3から送信されたレーザ光の反射光、プラズマ光および熱放射光をそれぞれ受光する。センサ10Aは、受光されたレーザ光の反射光を、反射光の光強度に対応する第1電流に変換する。センサ10Bは、受光されたプラズマ光を、プラズマ光の光強度に対応する第2電流に変換する。センサ10Cは、受光された熱放射光を、熱放射光の光強度に対応する第3電流に変換する。センサ10A~10Cのそれぞれは、変換後の第1電流、第2電流および第3電流のそれぞれをI/V変換回路11に出力する。
【0029】
I/V変換回路11は、センサ10A~10Cのそれぞれから出力された第1電流、第2電流および第3電流のそれぞれを取得し、電圧信号に変換する。具体的に、I/V変換回路11は、第1電流を第1電圧信号に、第2電流を第2電圧信号に、第3電流を第3電流信号にそれぞれ変換する。I/V変換回路11は、変換後の第1電圧信号、第2電圧信号および第3電圧信号のそれぞれを第1増幅回路12(レーザ溶接情報の一例)に出力する。
【0030】
第1増幅回路12は、第2増幅回路13と異なるゲインであって、第2増幅回路13で設定された第2ゲインよりも小さい第1ゲインが設定される。第1増幅回路12は、I/V変換回路11から出力された第1電圧信号、第2電圧信号および第3電圧信号のそれぞれを第1ゲインで増幅する。第1増幅回路12は、増幅後の第1電圧信号、第2電圧信号および第3電圧信号のそれぞれ(レーザ溶接情報の一例)を、第2増幅回路13、および、中継基板P2を介して端末装置P3に出力する。なお、第1増幅回路12は、第1電圧信号、第2電圧信号および第3電圧信号に一対一で対応する個別の増幅回路を有してもよい。また、このような場合、第1増幅回路12は、第2増幅回路13に設定された第2ゲインよりも小さいゲインであって、第1電圧信号、第2電圧信号および第3電圧信号をそれぞれ異なる3つのゲインで増幅してもよい。
【0031】
第2増幅回路13は、第1増幅回路12と異なるゲインであって、第1増幅回路12で設定された第1ゲインより大きい第2ゲインが設定される。第2増幅回路13は、第1増幅回路12から出力された第1電圧信号、第2電圧信号および第3電圧信号のそれぞれを第2ゲインで増幅する。第2増幅回路13は、増幅後の第1電圧信号、第2電圧信号および第3電圧信号のそれぞれ(レーザ溶接情報の一例)を、中継基板P2を介して端末装置P3に出力する。なお、第2増幅回路13は、第1電圧信号、第2電圧信号および第3電圧信号に一対一で対応する個別の増幅回路を有してもよい。また、このような場合、第2増幅回路13は、第1増幅回路12に設定された第1ゲインより大きいゲインであって、第1電圧信号、第2電圧信号および第3電圧信号をそれぞれ異なる3つのゲインで増幅してもよい。
【0032】
中継基板P2は、ヘッド制御ユニットS1、発振器S2、分光ユニットP1、端末装置P3のそれぞれとの間でデータを伝送可能に接続される。中継基板P2は、ヘッド制御ユニットS1、発振器S2、分光ユニットP1、端末装置P3のそれぞれから送信または入力された各種データあるいは各種信号を、所定の送信先に送信または出力する。
【0033】
端末装置P3は、例えばPersonal Computer(PC)、ノートPC、タブレット端末等により実現される。端末装置P3は、中継基板P2とモニタMNとの間でそれぞれデータ通信可能に接続される。端末装置P3は、通信部30と、プロセッサ31と、メモリ32とを含む。
【0034】
通信部30は、中継基板P2と、モニタMNとの間でそれぞれデータの送受信を実行する。通信部30は、中継基板P2から送信された各種信号をプロセッサ31に出力する。また、通信部30は、プロセッサ31により生成された電圧信号画面(不図示)あるいは良否判定結果画面(不図示)をモニタMNに送信して表示させる。
【0035】
プロセッサ31(取得部および判定部の一例)は、例えばCentral Processing Unit(CPU)またはField Programmable Gate Array(FPGA)を用いて構成されて、メモリ32と協働して、各種の処理および制御を行う。具体的には、プロセッサ31は、メモリ32に保持されたプログラムおよびデータを参照し、そのプログラムを実行することにより、後述するプロセッサ31の各種機能を実現する。
【0036】
プロセッサ31は、第1増幅回路12から出力された第1電圧信号、第2電圧信号および第3電圧信号のそれぞれと、第2増幅回路13から出力された第1電圧信号、第2電圧信号および第3電圧信号のそれぞれとを取得する。プロセッサ31は、第2増幅回路13から出力された第1電圧信号、第2電圧信号および第3電圧信号のそれぞれ、つまり、第2ゲインで増幅処理が行われた各電圧信号が計測上限UL(飽和値の一例,図2参照)以上であるか否かを判定する。
【0037】
プロセッサ31は、第2増幅回路13から出力された各電圧信号が計測上限UL(図2参照)以上であるか否かに基づいて、第2増幅回路13から出力された信号を用いるのか、もしくは、第1増幅回路12から出力された電圧信号のいずれを取得するかを判定する。
【0038】
なお、ここでいう計測上限ULは、第2増幅回路13から出力された各電圧信号の上限値(飽和値)であって、ユーザにより任意に設定される値である。プロセッサ31は、電圧信号の信号レベルが計測上限UL以上の信号レベルである場合、第2増幅回路13から出力された電圧信号がサチュレーション状態(飽和状態)であると判定する。
【0039】
プロセッサ31は、第2増幅回路13から出力された各電圧信号が計測上限UL以上であると判定した場合、第1増幅回路12から出力された信号を取得し、各電圧信号が計測上限UL以上でないと判定した場合、第2増幅回路13から出力された信号を取得する。つまり、プロセッサ31は、電圧信号ごとに、第1増幅回路12または第2増幅回路13からレーザ溶接の良否判定に適した信号を取得する。よって、プロセッサ31は、電圧信号ごとに異なる増幅回路から出力された信号を取得する可能性があることは言うまでもない。
【0040】
プロセッサ31は、レーザ光の反射光、プラズマ光および熱放射光のそれぞれに対応し、第1増幅回路12または第2増幅回路13によって増幅された各電圧信号のうちレーザ溶接の良否判定に適した電気信号をそれぞれ取得し、取得された各電気信号をSolid State Drive(以降、「SSD」と表記)あるいはHard Disk Drive(以降、「HDD」と表記)等のストレージデバイス(不図示)に記録するとともに、該電圧信号を用いてレーザ溶接の良否判定を実行する。なお、レーザ溶接の良否判定に用いられる基準は、計測上限ULであってもよいし、ユーザにより新たに設定された任意の値であってもよい。
【0041】
なお、このような場合、プロセッサ31は、第1増幅回路12または第2増幅回路13からプロセッサ31に出力されたが、レーザ溶接の良否判定に使用されなかった電圧信号のデータを削除してもよい。
【0042】
また、プロセッサ31は、第1増幅回路12および第2増幅回路13から出力された第1電圧信号、第2電圧信号および第3電圧信号のうち、レーザ溶接の良否判定に用いられる電圧信号の電圧信号波形を可視化した電圧信号画面(不図示)、あるいは、レーザ溶接の良否判定結果を含む良否判定結果画面(不図示)を生成して、モニタMNに出力してもよい。
【0043】
メモリ32は、例えばプロセッサ31の各処理を実行する際に用いられるワークメモリとしてのRandom Access Memory(RAM)と、プロセッサ31の動作を規定したプログラムおよびデータを格納するRead Only Memory(ROM)とを有する。RAMには、プロセッサ31により生成あるいは取得されたデータもしくは情報が一時的に保存される。ROMには、プロセッサ31の動作を規定するプログラムが書き込まれている。
【0044】
モニタMNは、端末装置P3との間でデータ通信可能に接続される。モニタMNは、例えばLiquid Crystal Display(LCD)または有機Electroluminescence(EL)等のディスプレイを用いて構成される。モニタMNは、端末装置P3により生成されて出力された電圧信号画面(不図示)あるいは良否判定結果画面(不図示)を表示する。
【0045】
なお、図1に示す分光ユニットP1は、第1増幅回路12と第2増幅回路13とが直列的に接続される構成を有する例について示すが、これに限定されない。例えば、第1増幅回路12と第2増幅回路13とは、I/V変換回路11に対して並列的に接続されてもよい。このような場合、第2増幅回路13により増幅されるから出力された第1電圧信号、第2電圧信号および第3電圧信号のそれぞれは、第2ゲインのみで増幅される。
【0046】
次に、図2および図3のそれぞれを参照して、熱伝導溶接からキーホール溶接に移行する場合において、第1増幅回路12により増幅された電気信号について説明する。図2は、熱伝導溶接からキーホール溶接に移行する場合に第1増幅回路12により得られる電圧信号波形SG11,SG21例を示す図である。図3は、熱伝導溶接からキーホール溶接に移行する場合に第2増幅回路13により得られる電圧信号波形SG12,SG22例を示す図である。
【0047】
なお、図2および図3に示す電圧信号波形SG21,SG22のそれぞれは、説明を分かりやすくするために、プラズマ光に対応する電圧信号波形と、熱放射光に対応する電圧信号波形とを1つの電圧信号波形でまとめて図示している。また、第1増幅回路12と第2増幅回路13のそれぞれに設定されたゲインの違いを分かりやすくするために、図3に示す電圧信号波形SG12,SG22は、それぞれ時刻T1前後で計測上限UL以上の信号レベルに増幅される例を示すが、第2増幅回路13により増幅された電圧信号が必ず計測上限UL以上となること限らないことは言うまでもない。
【0048】
電圧信号波形SG11は、反射光に対応する電圧信号であって、第1増幅回路12により第1ゲインで増幅された第1電圧信号である。電圧信号波形SG21は、プラズマ光および熱放射光に対応する電圧信号であって、第1増幅回路12により第1ゲインで増幅された第2電圧信号および第3電圧信号である。電圧信号波形SG11,SG21のそれぞれは、横軸が時間、縦軸が電圧信号の信号レベルの大きさを示す。
【0049】
電圧信号波形SG12は、反射光に対応する電圧信号であって、第1増幅回路12により第1ゲインで増幅された第1電圧信号が、第2増幅回路13により第2ゲインでさらに増幅された第1電圧信号である。電圧信号波形SG22は、プラズマ光および熱放射光に対応する電圧信号であって、第1増幅回路12により第1ゲインで増幅された第2電圧信号および第3電圧信号が、第2増幅回路13により第2ゲインでさらに増幅された第2電圧信号および第3電圧信号である。電圧信号波形SG12,SG22のそれぞれは、横軸が時間、縦軸が電圧信号の信号レベルの大きさを示す。
【0050】
図2および図3に示す例において、レーザ溶接の状態は、時刻T1で熱伝導溶接からキーホール溶接に変化する。このような場合、第1電圧信号に対応する電圧信号波形SG11,SG12は、時刻T1以降において信号レベルが低下する。一方、第2電圧信号および第3電圧信号のそれぞれに対応する電圧信号波形SG21,SG22は、時刻T1以降において信号レベルが増加する。
【0051】
次に、図4および図5のそれぞれを参照して、キーホール溶接から熱伝導溶接に移行する場合において、第1増幅回路12により増幅された電気信号について説明する。図4は、熱伝導溶接からキーホール溶接に移行する場合に第1増幅回路12により得られる電圧信号波形SG13,SG23例を示す図である。図5は、熱伝導溶接からキーホール溶接に移行する場合に第2増幅回路13により得られる電圧信号波形SG14,SG24例を示す図である。
【0052】
なお、図4および図5に示す電圧信号波形SG23,SG24のそれぞれは、説明を分かりやすくするために、プラズマ光に対応する電圧信号波形と、熱放射光に対応する電圧信号波形とを1つの電圧信号波形でまとめて図示している。また、第1増幅回路12と第2増幅回路13のそれぞれに設定されたゲインの違いを分かりやすくするために、図5に示す電圧信号波形SG14,SG24は、それぞれ時刻T1前後で計測上限UL以上の信号レベルに増幅される例を示すが、第2増幅回路13により増幅された電圧信号が必ず計測上限UL以上となること限らないことは言うまでもない。
【0053】
電圧信号波形SG13は、反射光に対応する電圧信号であって、第1増幅回路12により第1ゲインで増幅された第1電圧信号である。電圧信号波形SG23は、プラズマ光および熱放射光に対応する電圧信号であって、第1増幅回路12により第1ゲインで増幅された第2電圧信号および第3電圧信号である。電圧信号波形SG13,SG23のそれぞれは、横軸が時間、縦軸が電圧信号の信号レベルの大きさを示す。
【0054】
電圧信号波形SG14は、反射光に対応する電圧信号であって、第1増幅回路12により第1ゲインで増幅された第1電圧信号が、第2増幅回路13により第2ゲインでさらに増幅された第1電圧信号である。電圧信号波形SG24は、プラズマ光および熱放射光に対応する電圧信号であって、第1増幅回路12により第1ゲインで増幅された第2電圧信号および第3電圧信号が、第2増幅回路13により第2ゲインでさらに増幅された第2電圧信号および第3電圧信号である。電圧信号波形SG14,SG24のそれぞれは、横軸が時間、縦軸が電圧信号の信号レベルの大きさを示す。
【0055】
図4および図5に示す例において、レーザ溶接の状態は、時刻T1でキーホール溶接から熱伝導溶接に変化する。このような場合、第1電圧信号に対応する電圧信号波形SG13,SG14は、時刻T1以降において信号レベルが増加する。一方、第2電圧信号および第3電圧信号のそれぞれに対応する電圧信号波形SG23,SG24は、時刻T1以降において信号レベルが低下する。
【0056】
次に、図6を参照して、プロセスモニタユニットPMの動作手順例について説明する。図6は、実施の形態におけるプロセスモニタユニットPMの動作手順例を示すフローチャートである。
【0057】
分光ユニットP1は、レーザヘッドS3から送信されたレーザ光の反射光、プラズマ光および熱放射光をそれぞれの光に対応するセンサ10A~10Cのそれぞれで受光する。分光ユニットP1は、受光されたレーザ光の反射光、プラズマ光、および熱放射光のそれぞれをI/V変換回路11によって第1電圧信号、第2電圧信号、および第3電圧信号のそれぞれに変換することで、レーザ光の反射光、プラズマ光、および熱放射光のそれぞれに対応する電圧信号を取得する(St11)。
【0058】
分光ユニットP1は、取得された第1電圧信号、第2電圧信号、および第3電圧信号のそれぞれを、第1ゲインが設定された第1増幅回路12で増幅し、増幅後の第1電圧信号、第2電圧信号、および第3電圧信号のそれぞれを第2増幅回路13と端末装置P3とに出力する。分光ユニットP1は、増幅後の第1電圧信号、第2電圧信号、および第3電圧信号のそれぞれを第2ゲインが設定された第2増幅回路13で増幅し、増幅後の第1電圧信号、第2電圧信号、および第3電圧信号のそれぞれを端末装置P3に出力する(St12)。なお、ここで第1ゲイン<第2ゲインである。
【0059】
端末装置P3は、第1電圧信号、第2電圧信号、および第3電圧信号のそれぞれについて、第1増幅回路12または第2増幅回路13のいずれか一方で増幅された電圧信号をレーザ溶接の良否判定に適した電圧信号として取得する(St13)。
【0060】
具体的に、端末装置P3は、反射光に対応し、第2増幅回路13により増幅された第1電圧信号が計測上限UL以上の信号レベルであるか否かに基づいて、第1増幅回路12により増幅された第1電圧信号と、第2増幅回路13により増幅された第1電圧信号のいずれがレーザ溶接の良否判定に適した電圧信号であるか否かを判定する(St14)。
【0061】
端末装置P3は、第2増幅回路13により増幅された第1電圧信号が計測上限UL以上の信号レベルであると判定した場合(St14,YES)、第1増幅回路12により増幅された第1電圧信号がレーザ溶接の良否判定に適した電圧信号であると判定し、第1増幅回路12により増幅された第1電圧信号を取得してメモリ32に記録する(St15)。このような場合、端末装置P3は、第2増幅回路13により増幅された第1電圧信号を削除する。
【0062】
端末装置P3は、第2増幅回路13により増幅された第1電圧信号が計測上限UL以上の信号レベルでないと判定した場合(St14,NO)、第2増幅回路13により増幅された第1電圧信号がレーザ溶接の良否判定に適した電圧信号であると判定し、第2増幅回路13により増幅された第1電圧信号を取得してメモリ32に記録する(St16)。このような場合、端末装置P3は、第1増幅回路12により増幅された第1電圧信号を削除する。
【0063】
端末装置P3は、上述したステップSt14~ステップSt16の処理を、プラズマ光に対応する第2電気信号と、熱放射光に対応する第3電気信号とにそれぞれ実行し、レーザ溶接の良否判定に適した第2電気信号および第3電気信号のそれぞれを取得する。
【0064】
以上により、実施の形態におけるプロセスモニタユニットPMは、レーザ溶接中にレーザ溶接の状態が変化した場合であっても、レーザ光の反射光、プラズマ光および熱放射光のそれぞれに対応する電圧信号において、レーザ溶接の良否判定により適した電圧信号を取得できる。また、プロセスモニタユニットPMは、第2増幅回路13により増幅された各電気信号と計測上限ULとを比較することにより、計測上限UL以下であって、かつ、より大きい電圧信号を取得できる。
【0065】
また、プロセスモニタユニットPMは、それぞれ異なるゲインで第1電圧信号、第2電圧信号および第3電圧信号のそれぞれを増幅することによって、レーザ溶接中のゲインの調整が不要となり、ゲインの調整に要する工数の増加を防止できる。また、プロセスモニタユニットPMは、それぞれ異なるゲインに調整されたプロセスモニタユニットを複数設けなくてもよい。
【0066】
また、実施の形態におけるプロセスモニタユニットPMは、レーザ溶接の良否判定により適していないと判定され、不要な電圧信号を削除することで、レーザ溶接の良否判定に必要なレーザ光の反射光、プラズマ光および熱放射光のそれぞれに対応する電圧信号のみを記録できる。これにより、プロセスモニタユニットPMは、記録先であるストレージデバイスの容量不足をより効果的に抑制できるとともに、プロセスモニタユニットPMを管理するユーザによる電圧信号の確認において、確認作業をより効率的に行えるように支援できる。
【0067】
以上により、実施の形態におけるプロセスモニタユニットPMは、レーザ溶接のレーザ光照射時に発生する光を受光して電気信号に変換するセンサ10A~10C(変換部の一例)と、第1ゲインで電気信号を増幅する第1増幅回路12と、第1ゲインと異なる第2ゲインで電気信号を増幅する第2増幅回路13と、第1増幅回路12により増幅された第1電気信号(具体的には、第1増幅回路12から出力された第1電圧信号、第2電圧信号および第3電圧信号のそれぞれ)、および第2増幅回路13により増幅された第2電気信号(具体的には、第2増幅回路13から出力された第1電圧信号、第2電圧信号および第3電圧信号のそれぞれ)のうちいずれか一方の電気信号を取得して出力するプロセッサ31(取得部の一例)と、を備える。
【0068】
これにより、実施の形態におけるプロセスモニタユニットPMは、レーザ溶接の状態が熱伝導溶接とキーホール溶接との間で遷移することで、取得される各電圧信号の信号レベルの大きさが変化する場合であっても、2つの異なるゲインで電圧信号を増幅することにより、現在のレーザ溶接の状態に適し、かつ、レーザ溶接の要否を判定可能な電圧信号(レーザ溶接情報の一例)を取得できる。
【0069】
また、実施の形態におけるプロセスモニタユニットPMのプロセッサ31は、第1電気信号が第1電気信号の計測上限UL(飽和値の一例)以下であると判定した場合、第1電気信号を取得する。これにより、実施の形態におけるプロセスモニタユニットPMは、現在のレーザ溶接の状態に適し、かつ、レーザ溶接の要否を判定可能な電圧信号(レーザ溶接情報)を取得できる。
【0070】
また、実施の形態におけるプロセスモニタユニットPMのプロセッサ31は、第1電気信号が第1電気信号の計測上限UL以下でないと判定した場合、第2電気信号を取得する。これにより、実施の形態におけるプロセスモニタユニットPMは、現在のレーザ溶接の状態に適し、かつ、レーザ溶接の要否を判定可能な電圧信号(レーザ溶接情報)を取得できる。
【0071】
また、実施の形態におけるプロセスモニタユニットPMのプロセッサ31は、いずれか他方の電気信号の取得を省略して削除する。これにより、実施の形態におけるプロセスモニタユニットPMは、レーザ溶接の良否判定に不要な電圧信号(レーザ溶接情報)の記録によるメモリ32、HDD、あるいはSSD等の記憶装置または記憶媒体の容量不足を効果的に抑制できる。
【0072】
また、実施の形態におけるプロセスモニタユニットPMのプロセッサ31により取得されたいずれか一方の電気信号に基づいて、異なる複数の溶接状態(つまり、熱伝導溶接およびキーホール溶接のそれぞれ)に遷移可能なレーザ溶接の良否判定を実行し、良否判定の結果を出力するプロセッサ31(判定部の一例)、をさらに備える。これにより、実施の形態におけるプロセスモニタユニットPMは、レーザ溶接の状態が熱伝導溶接とキーホール溶接との間を遷移する場合であっても、取得された第1電気信号または第2電気信号に基づいて、レーザ溶接の良否判定を実行できる。
【0073】
また、実施の形態におけるプロセスモニタユニットPMのレーザ光は、青色レーザである。これにより、実施の形態におけるプロセスモニタユニットPMは、青色(つまり、400nm~500nm)の波長を有するレーザ溶接の要否を判定可能な電圧信号を取得できる。青色レーザ光は、銅に対して高い吸収率(最大65%程度)で吸収される特性を有するため、銅をレーザ溶接する場合に特に有効である。
【0074】
以上、添付図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても本開示の技術的範囲に属すると了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本開示は、レーザ溶接の溶接状態が遷移する場合であっても、溶接箇所の良否を判定可能な情報を取得できるプロセスモニタユニットおよびレーザ溶接情報の取得方法として有用である。
【符号の説明】
【0076】
10A,10B,10C センサ
11 I/V変換回路
12 第1増幅回路
13 第2増幅回路
100 レーザ加工ヘッドシステム
MN モニタ
P1 分光ユニット
P2 中継基板
P3 端末装置
PM プロセスモニタユニット
S1 ヘッド制御ユニット
S2 発振器
S3 レーザヘッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6