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特開2024-176129配管溶接部検査システムおよび配管溶接部検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176129
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】配管溶接部検査システムおよび配管溶接部検査方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20241212BHJP
   G06T 7/60 20170101ALI20241212BHJP
   B23K 31/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
G06T7/00 610Z
G06T7/00 350C
G06T7/60 200C
B23K31/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094409
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】595145050
【氏名又は名称】株式会社日立プラントサービス
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中崎 渓一郎
(72)【発明者】
【氏名】坪倉 徹哉
(72)【発明者】
【氏名】平畠 諒大
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA02
5L096AA06
5L096BA03
5L096CA04
5L096EA05
5L096EA06
5L096EA37
5L096FA04
5L096FA14
5L096FA15
5L096FA24
5L096GA51
5L096GA55
5L096HA11
(57)【要約】
【課題】
溶接された配管の溶接部の検査精度を向上させる。
【解決手段】
配管と配管の溶接部を撮影するカメラと、カメラから得られた溶接部の画像を受け取る入出力部と、入出力部が受け取った溶接部の画像から溶接部もしくは管の端部がなす一つ以上の円の中心点を検出する円検出部と、前記一つ以上の円の中心点に基づき溶接部ではない非溶接部領域を推定する非溶接部推定部と、非溶接部推定部が推定した非溶接領域を入出力部が受け取った画像から削除し判定画像を作成する前処理部と、前処理部が作成した判定画像を基に溶接の良否を判定する判定部と、判定部が判定した溶接の良否と判定画像を対応付けてストレージに格納する登録部を備える配管溶接部検査システム。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管と配管の溶接部を撮影するカメラと、
カメラから得られた溶接部の画像を受け取る入出力部と、
入出力部が受け取った溶接部の画像から溶接部もしくは管の端部がなす一つ以上の円の中心点を検出する円検出部と、
前記一つ以上の円の中心点に基づき溶接部ではない非溶接部領域を推定する非溶接部推定部と、
非溶接部推定部が推定した非溶接領域を入出力部が受け取った画像から削除し判定画像を作成する前処理部と、
前処理部が作成した判定画像を基に溶接の良否を判定する判定部と、
判定部が判定した溶接の良否と判定画像を対応付けてストレージに格納する登録部を備える配管溶接部検査システム。
【請求項2】
請求項1に記載の配管溶接部検査システムであって、
判定部は溶接の良否を品質スコアで判定し、判定できなかった溶接部の画像は判定不可を示す情報を付加し、
登録部は判定不可の溶接部の画像を他の溶接部の画像と分けて格納する配管溶接部検査システム。
【請求項3】
請求項1に記載の配管溶接部検査システムであって、
非溶接部推定部は溶接部の画像の輝度勾配に基づき端部の中心点がなす円の外部と内部の少なくとも一方の領域を非溶接領域と推定する配管溶接部検査システム。
【請求項4】
請求項1に記載の配管溶接部検査システムであって、
前記非溶接部領域を前記溶接部の画像に重畳した溶接部強調画像を生成する強調画像生成部と、
強調画像生成部が生成した前記溶接部強調画像を出力する出力部を含むことを特徴とする配管溶接部検査システム。
【請求項5】
請求項4に記載の配管溶接部検査システムであって、
溶接部の画像撮影要求を受付けたとき溶接部が画像内の予め定められた範囲にあることを確認する撮影要求確認部と、前記溶接部強調画像に溶接部が含まれていないとき溶接部を予め定められた範囲に映すことを促すメッセージを表示する表示部を備える配管溶接部検査システム。
【請求項6】
カメラが配管と配管の溶接部を撮影し、
入出力部が得られた溶接部の画像を受け取り、
円検出部が受け取った溶接部の画像から溶接部もしくは管の端部がなす一つ以上の円の中心点を検出し、
非溶接部推定部が前記一つ以上の円の中心点に基づき溶接部ではない非溶接部領域を推定し、
前処理部が推定された非溶接領域を入出力部が受け取った画像から削除した判定画像を作成し、
判定部が判定画像を基に溶接の良否を判定し、
登録部が判定された溶接の良否と判定画像を対応付けてストレージに格納する配管溶接部検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配管溶接部検査システム及び配管溶接部検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場や設備の施工において、配管と配管をつなぐ溶接部の品質の検査は知識や経験を要する熟練作業である。特に、溶接ビードの形状や溶接焼けによる着色は定量化が難しく、一般には人間の目視による官能試験が実施される。放射線や超音波などの人間の目が感度をもつ可視光とは異なる波長帯のセンシングを用いて溶接検査を行うことがあるが、可視光に感度をもつカメラよりも高価な機材が必要になる問題がある。
【0003】
また、磁粉や浸透液などの特殊な材料を利用しキズのある箇所を検出しやすくすることもあるが、検査手順が煩雑になり時間がかかる問題がある。
【0004】
そこで、近年では人間の脳神経の活動を模倣した信号処理技術である深層ニューラルネットワーク(Deep neural network; DNN)によりカメラで取得した画像から外観に関する品質を予測し、外観検査を自動化する技術が登場してきている。
【0005】
高価な機材や特殊な材料を利用せず効率的に外観検査を実施できる方法として、注目を浴びている。
【0006】
特許文献1では、溶接異常診断装置は、被溶接材の裏面を撮影するカメラシステムと、前記被溶接材の溶接時において前記カメラシステムにより撮影された発光撮影画像を収集する溶接部撮影カメラ画像収集部と、溶接条件設定値を収集する溶接制御情報収集部と、前記発光撮影画像と前記溶接条件設定値とに基づいて前記被溶接材の溶接状況を診断するための溶接光特徴量を計算し、前記溶接光特徴量と溶接異常判定上下限値とに基づいて溶接の良不良を判定する溶接状況診断部とを備える溶接異常診断装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2021/111545公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、溶接光や溶接条件設定値といった溶接作業時に計測が必要な情報に基づいて溶接品質の合否を判定している。つまり、溶接作業が完了した後では溶接光のカメラでの撮影や溶接装置を制御するための溶接条件設定値の取得はできないという問題がある。
【0009】
この方法は溶接作業とその結果得られる溶接された製品の検査作業に分けて作業を行う場合は適用が困難である。
【0010】
また、特徴量抽出の対象でない領域を除去し検査の精度を上げる前処理は溶接光の存在が前提となっており、溶接作業時の溶接部の撮影が必要になる。
【0011】
よって、溶接作業と溶接された製品の検査作業が分かれる場合において、溶接品質の合否を判定するためには、溶接作業が完了した後で計測可能な情報から特徴量を抽出し、その特徴量に基づいて溶接された製品の合否を判定することが必要である。その判定を高精度に行うためには、製品の画像から溶接部ではない領域を除去し溶接部のみから特徴量を抽出することが必要となる。
【0012】
本発明の目的は、溶接された配管内の溶接部の検査において、特殊な材料や高価な機材などを利用せず可視光で撮影するカメラを用いて溶接部の画像を取得し、その画像中の溶接部の領域から溶接された製品の合否を判定するのに有用な特徴量を抽出する手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的は、配管と配管の溶接部を撮影するカメラと、カメラから得られた溶接部の画像を受け取る入出力部と、入出力部が受け取った溶接部の画像から溶接部もしくは管の端部がなす一つ以上の円の中心点を検出する円検出部と、前記一つ以上の円の中心点に基づき溶接部ではない非溶接部領域を推定する非溶接部推定部と、非溶接部推定部が推定した非溶接領域を入出力部が受け取った画像から削除し判定画像を作成する前処理部と、前処理部が作成した判定画像を基に溶接の良否を判定する判定部と、判定部が判定した溶接の良否と判定画像を対応付けてストレージに格納する登録部を備える配管溶接部検査システムにより達成される。
【発明の効果】
【0014】
溶接された配管の溶接部の検査精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例におけるシステム構成図の例である。
図2】本発明の実施例における作業員端末のブロック図の例である。
図3】本発明の実施例における検査員端末のブロック図の例である。
図4】本発明の実施例における作業員端末の処理を示すフローチャートの例である。
図5】本発明の実施例における検査部の処理を示すフローチャートの例である。
図6】本発明の実施例における前処理部の処理を示すフローチャートの例である。
図7】本発明の実施例における入力画像の例である。
図8】本発明の実施例における前処理後の画像の例である。
図9】本発明の実施例における評価値の例を示すグラフである。
図10】本発明の実施例におけるガイド表示の例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照し、本発明の実施例について説明する。なお、添付図面は本発明の原理に則った具体的な実施例を示しているが、これらは本発明の理解のためであり、本発明を限定的に解釈されるために用いられるものではない。各図において共通の構成については、原則同一の参照番号が付されている。
【0017】
溶接品質が高い場合、溶接部が映るよう撮影して得られた画像において、溶接部の領域とその周辺の領域との輝度や色のコントラストが低く溶接部の検出が難しくなる。
【0018】
一方、溶接部と同時に映る場合がある管の端部は比較的コントラストが高く検出が容易である。また、その場合上記画像において溶接部と管の端部はそれぞれ円形状をなし、かつそれらの中心点は近くなる。これに着目し、溶接部もしくは管の端部の円形状を検出することで溶接部がなす円の中心点を直接的もしくは間接的に安定して取得することができる。
【0019】
検出した中心点に基づいて定義した円環の外部領域を削除することで、画像全体における溶接部が占める割合が高まり溶接品質の合否を判定するのに有用な特徴量を抽出することができる。
【実施例0020】
図1は、本発明の実施例におけるシステム構成図の例である。本発明はシステムとして構成されるだけでなく、図1に示した構成要素のすべてまたは一部を筐体に搭載した装置として構成されてもよいことは言うまでも無い。
【0021】
実施例の配管溶接部検査システムは、作業員端末1、LAN(Local Area Network)4、検査員端末2を含む、溶接部の画像を格納するストレージ3を備える。作業員端末1は、例えばタブレット型電子端末であり、入力装置5、カメラ6、表示部7を備える。作業員端末1、検査員端末2は複数接続されていても良い。
【0022】
入力装置5は例えばタッチパネルであり、カメラ6からの画像入力を指示する。以降、入力装置5をタッチパネルと表記することがある。カメラ6は、配管内の溶接部が映った映像を取得する。表示部7は例えばディスプレイであり、検査対象の配管の位置情報を表示したり、カメラ6で取得中の画像を表示したりする。以降、表示部7をディスプレイと表記することがある。
【0023】
LAN4は、作業員端末1、検査員端末2及び溶接画像が格納されたクラウド等のストレージ3を接続する。検査員端末2は、例えばPCであり、入力部、表示部、記憶部、CPU及びメモリを含み、主に作業員端末1で取得した配管溶接部の検査情報を表示する。
【0024】
図2は本発明の実施例における作業員端末のブロック図の例である。CPU(Central Processing Unit)20、メモリ23及び種々の入出力部22、外部記憶装置を含む。
【0025】
外部記憶装置21は例えばHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などのストレージであり、作業員端末1で行う配管溶接部検査システムに関するプログラムや判定結果を保存する外部記憶装置21を備える。
【0026】
CPU20は外部記憶装置21に保存してあるプログラムをメモリ23にローディングし実行する。
【0027】
メモリ23はCPU20で実行するプログラムや処理時にプログラムが使用するデータも一時保存する。プログラムにはカメラにより撮影された溶接部の画像から配管の端部や溶接部を検出する円検出部24、検出された円を基に非溶接部を推定する非溶接推定部25、推定された非溶接部を画像から削除する前処理部26がある。
【0028】
前処理部26が作成した溶接部画像を基に検査における溶接品質の合否の判定基準となる見本の配管内の溶接部を撮影し、得られた画像から溶接品質を絶対値で表したスコア(品質スコア)を予測する検査部29やその結果を外部記憶装置21に保存する登録部31がある。
【0029】
撮影時には撮影の要求を受け付ける撮影要求確認部28や、画像内の適切な位置に溶接部が写っていることを確認する強調画像生成部27、撮影された画像を表示部7へ出力する。
これらの処理部はいずれもソフトウェアモジュールとして実現されるが、ハードウェアとして実現しても良い。
【0030】
図3は、本発明の実施例における検査員端末の機能ブロック図の例である。検査員端末2は、登録部31及び検査部29を備え、画像を出力する表示部8に接続されている。検査員端末2は作業員端末1と同じものを用いても良い。
【0031】
検査員端末2では作業員端末1で製品の溶接個所を自動的に良否判定された結果を人の目で見て確認し、結果を承認や、作業員端末1の検査部で自動的に良否を判定できなかった溶接個所について人の目で判定するための端末である。
【0032】
従って、作業員端末と同じものを使用し、検査員が検査員の権限でシステムにログインすることにより最終的な検査をおこなっても良い。
【0033】
検査部29では、作業員により登録された溶接画像を再度検査することが可能である。この場合、検査に必要なパラメータの調整や画像の調整を行うことにより検査員によるより高度な検査を実施することができる。
【0034】
登録部31では、作業員端末での自動的な検査結果を承認、登録し、作業員端末で判定できなかった溶接画像の判定を検査員が行った結果を格納する。
【0035】
図4は本発明の実施例における作業員端末の処理を示すフローチャート図である。登録部31では、まず、溶接品質の合否の判定基準となる見本の配管の内部にカメラ6を挿入し、溶接部を映した状態で映像の取得を開始し、最新のフレームの画像を読み込む(S1)。
【0036】
次に、前処理部26が読み込んだ画像における溶接部ではない(非溶接部)領域を推定し、その領域を削除する前処理を実施する(S2)。これは、後述する品質スコア予測(S5)処理を精度良く行うための処理である。
【0037】
次に、非溶接推定部25が推定した非溶接部領域を削除するため黒塗りにしたマスク画像を生成し、カメラ6で取得した映像のその時点での最新のフレームの画像に重畳して表示部7に表示する。更に、作業員に対し、明るく表示された領域、つまり非溶接部とは推定されなかった領域に溶接部が映っていれば撮影を要求するよう促す旨のメッセージを表示する(S3)。
【0038】
これは、前処理(S2)において非溶接部の領域の推定に誤りがある状態で後述する品質スコア予測(S5)処理を実施することを防止するための処理である。この処理を受け、作業員は表示部7に表示された画像における明るく表示された領域に溶接部が映っていれば、入力装置5のボタンを押下する等の操作により撮影を要求する。
【0039】
次に、作業員の操作により撮影が要求されているかどうかを確認する(S4)。撮影が要求されていなければ、カメラ6から取得した映像の最新のフレームの画像の読み込み(S1)に戻る。撮影が要求されていれば、次に、推定した非溶接部を削除した画像から溶接品質に関する特徴量を抽出し、その特徴量に基づき溶接の品質スコアを予測する(S5)。
【0040】
予測には、事前に推定した非溶接部を削除した画像データと溶接の品質スコアデータのペアを大量に用意しその関係性を学習したDNNを用いてもよい。この場合、DNNには非溶接部画像を入力し、出力として溶接の品質スコアの予測値を得る。溶接品質に関する特徴量の生成および特徴量に基づく品質スコアの予測はDNNの内部で行われる。
【0041】
最後に、登録部31が予測した溶接品質のスコアを外部記憶装置21の判定結果保存部32に保存する(S6)。このとき同時に外部のストレージ3へネットワークを介して保存しても良い。そうすることにより、検査員端末と溶接画像および判定結果を共有できる。
【0042】
図5は本発明の実施例における検査部の処理を示すフローチャートの例である。検査部29では、まず、作業員端末1の表示部7に表示された配管の位置情報に基づき、作業員は検査対象の配管を特定しその内部にカメラ6を挿入し、溶接部を映した状態で映像の取得を開始し、最新のフレームの画像を読み込む(S10)。
【0043】
次の前処理(S11)から溶接品質のスコア予測(S14)までは登録部31の処理と共通である。その次に、予測した品質スコアと、ストレージ3に保存してある見本の溶接部の品質スコアを比較し、検査対象の配管溶接部の品質の合否が判定可能かを判断する(S15)。
【0044】
具体的には見本の品質スコアをs1とし、検査対象の品質スコアをs2、合否判定を可能もしくは不可能と判断する閾値をthとして、s1とs2の差の絶対値とthの大小を比較する。値が等しいもしくはthの方が大きい場合(|s1-s2|≦th)、画像認識による自動での合否判定が不可と判断する(S19)。逆にthの方が小さい場合(|s1-s2|>th)、検査対象の配管溶接部の品質の合否を自動で判定する(S16)。
【0045】
具体的には、s1とs2が等しいもしくはs2の方が大きい場合(s1≦s2)、合格と判定する(S17)。逆にs1の方が大きい場合(s1>s2)、不合格と判定する(S18)。合否を判定後、その結果を検査員端末2に通知し(S20)、処理を終了する。
【0046】
ここで、thを小さな値に設定し見本と検査対象の品質スコアの予測値が近い場合での自動判定を許容すると、検査対象の配管サンプル全体における自動判定が可能なサンプルの割合が高まる。その一方、品質スコアの予測の誤りによっては見本と検査対象の品質スコアの大小関係が実際の品質の優劣とは異なる場合が発生し、自動での合否判定精度が低下する。
【0047】
thを大きな値とすると、合否を自動判定するサンプルの割合が低下するが、検査対象サンプルの合否判定精度が高まる。つまり、thは合否判定を自動化する割合と自動での合否判定精度のバランスを変更可能なパラメータであり、システムの目標値に応じて適切な値を設定する。
【0048】
図6は本発明の実施例における前処理部の処理を示すフローチャートの例である。以下図7図8を参照し処理を説明する。
【0049】
図7は本発明の実施例におけるカメラからの入力画像の例である。カメラから入力された入力画像40は作業者に近い管の端部41、溶接部42、作業者から遠い管の端部43が撮影されている。
【0050】
図8は本発明の実施例における前処理後の画像の例である。入力画像40の前処理(S2)で溶接部ではない(非溶接部)領域を推定し、その領域を削除する処理である。具体的には、まず、溶接部51もしくは管の手前側の端部50、奥側の端部52が円をなす入力画像40に対しハフ変換などの円検出アルゴリズムを適用することで、それらの円の中心点の位置と半径を検出する(S30)。
【0051】
このとき、画像ノイズによる円の誤検知を抑制するため、ガウシアンフィルタなどの平滑化フィルタ、バイラテラルフィルタなどのエッジ保持平滑化フィルタを事前に処理しておいてもよい。この時点では検出された1つ以上の円のどれが溶接部がなすものなのかは分からないため、次に、検出できた円の情報に基づいて溶接部がなす円の中心を推定する(S31)。
【0052】
具体的には、検出できた円の中心点の位置の平均値を求める。溶接部51と管の手前側の端部50,奥側の端部52がなす円はそれぞれ同心円に近い関係があるため、それらの中心点の位置の平均値がおおよそ溶接部51がなす円の中心点の位置に相当する。
【0053】
溶接部51は溶接品質が高いものは特に周囲の領域に対する輝度や色のコントラストが低く、検出が難しい場合がある。一方、管の手前側の端部50や奥側の端部52は比較的コントラストが高く、検出が容易である。よって、仮に円検出(S30)により溶接部51を検出できない場合であっても、上記推定処理により溶接部51の中心点の位置を推定することができる。ただし、溶接部51を検出できる場合は直接溶接部51の中心点の位置を求めることができる。その場合には、管の手前側の端部50および管の奥側の端部52が映った状態の入力画像40を用意する必要はない。
【0054】
次に、推定した溶接部51の円の中心点に基づき溶接部51を包含する円環領域を定義する(S32)。円環の中心点は、直前に推定した溶接部51の中心点とし、外径および内径はそれぞれ入力画像40の短辺、内径はその1/2の長さとしてもよい。また、入力画像40の輝度勾配から管の端部の位置を推定し、その位置に基づいて円環の外径および内径を決定してもよい。
【0055】
次に、定義した円環を入力画像40に重畳し円環の外部領域の画像情報を削除する(S33)。具体的には、入力画像40の長辺が定義した円環の外径と一致するようにクロップする。また、円環の外径より外側の領域および内径より内側の領域の画素値を0とする、もしくはその領域を対象にガウシアンフィルタなどの平滑化フィルタを処理する。以上の処理により、入力画像40から前処理後画像53が得られる。
【0056】
図9は本発明の実施例における評価値を示すグラフである。
【0057】
数1は本発明の実施例における登録部31および検査部29における前処理(S2)において推定した溶接部42の中心点からの平均輝度勾配を表す数式である。
【0058】
【数1】
【0059】
数2は、本発明の実施例における登録部31および検査部29における前処理(S2)において管の端部らしさを表す数式である。
【0060】
【数2】
【0061】
円環を求める処理(S32)は、溶接部がなす円の中心点推定(S31)の結果に基づき溶接部42を包含する円環領域を決定する処理である。円環の中心点は推定した溶接部42がなす円の中心点とすればよく、外径は溶接部42より外側とし、内径は溶接部42より内側とすることが望ましい。
【0062】
溶接部42の外側には管の手前側の端部41が、内側には管の奥側の端部43があり、これらは周囲の領域との輝度や色のコントラストが高い。これに基づき、外径には管の手前側の端部41がなす円の直径を、内径には管の奥側の端部43がなす円の直径を設定する。
【0063】
推定した溶接部42の中心点を基準とした位置(r,θ)(rは距離、θは偏角)における入力画像40の輝度をL(r,θ)とすると、θの区間[0,2π]における輝度勾配の平均値G(r)は数1で表される。図9に示すとおりG(r)の値は、例えば、溶接部42については溶接部の平均輝度勾配61として、管の手前側の端部50については管手前側端部の平均輝度勾配62、管の奥側の端部52については管奥側端部の平均輝度勾配60として、それぞれ表される。
【0064】
この特性に基づき、円環の外径もしくは内径の長さredgeをrの値域[rmin,rmax]においてG(r)が最大となるrの値として数2で求めることができる。外径については、例えば、rmin=3/4*R,rmax=Rとし、内径については、例えば、rmin=0,rmax=1/2*Rとする。以上の処理により、円環の外径および内径が管の手前側の端部50および管の奥側の端部52の直径として設定され、溶接部を包含する円環を定義することができる。
【0065】
図10は本発明の実施例におけるガイド表示(S3)の例である。ガイド表示(S3)は、カメラ画像について前処理(S2)で削除した非溶接部領域70を暗くした画像と、相対的に明るく表示された領域に溶接部が映っていれば撮影を要求するよう促すメッセージ71を併せて表示部7に表示する処理である。
【0066】
具体的には、前処理(S2)で削除した非溶接部領域70を半透明な黒色で表現し入力画像40にオーバレイして表示部7に表示する。これにより、作業員は溶接部が明るい領域と暗い領域のどちらに属するかを容易に確認することができる。更に、メッセージ71を併せて表示することで、前処理(S2)により誤って溶接部が削除されることがない状態で撮影が要求され、後段の処理である品質スコア予測(S5)を高精度に実施することができる。
【0067】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明のより良い理解のために詳細に説明したのであり、必ずしも説明の全ての構成を備えるものに限定されものではない。
【0068】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によってハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによってソフトウェアで実現してもよい。
【0069】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、不揮発性半導体メモリ、ハードディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)等の記憶デバイス、または、ICカード、SDカード、DVD等の計算機読み取り可能な非一時的データ記憶媒体に格納することができる。
【0070】
また、制御線及び情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線及び情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 作業員端末、2 検査員端末、3 ストレージ、4 LAN、5 入力装置、6 カメラ、7、8 表示部、20 CPU、21 外部記憶装置、22 入出力部、23 メモリ、24 円検出部、25 非溶接推定部、26 前処理部、27 強調画像生成部、28 撮影要求確認部、29検査部、30 表示部、31 登録部
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図10