(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017613
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】支承装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20240201BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
F16F15/02 E
F16F15/02 L
E04H9/02 331E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120368
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】津田 知英
(72)【発明者】
【氏名】松井 伸仁
(72)【発明者】
【氏名】林田 佑介
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AA05
2E139AC06
2E139AC19
2E139AC20
2E139CA01
2E139CA24
3J048AA07
3J048BD01
3J048BG04
3J048CB30
3J048DA01
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】摺動方向によって摺動性を変化させることができる支承装置を提供することを目的とする。
【解決手段】上部構造物200及び下部構造物300におけるそれぞれの対向部分に配設した上沓10及び下沓20で構成され、上沓10及び下沓20の対向部分における摺動面10a,20a同士が摺動する滑り支承装置1において、上沓10に、上沓摺動面10aを構成する滑り材12が備えられ、下沓20に下沓摺動面20aを構成するとともに、滑り材12より広いスライドプレート22が備えられ、スライドプレート22の下沓摺動面20aに、所定方向Xに摺動する際の摩擦係数μ2より、反所定方向Yに摺動する際の摩擦係数μ1が高くなる表面処理部23が形成された。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1構造物及び第2構造物におけるそれぞれの対向部分に配設した第1沓及び第2沓で構成され、前記第1沓及び前記第2沓の対向部分における摺動面同士が摺動する支承装置であって、
前記第1沓及び前記第2沓の一方に、前記摺動面を構成する滑り部材が備えられ、
前記第1沓及び前記第2沓の他方に前記摺動面を構成するとともに、前記滑り部材より広い滑り板材が備えられ、
前記滑り板材及び前記滑り部材の少なくとも一方の前記摺動面の少なくとも一部に、
所定方向の摺動に対する摩擦係数より、前記所定方向の反対方向である反所定方向の摺動に対する摩擦係数が高くなる異方性摩擦部が形成された
支承装置。
【請求項2】
前記滑り板材は、面内方向における全方向において前記滑り部材より広く形成された
請求項1に記載の支承装置。
【請求項3】
前記異方性摩擦部は、前記滑り板材の摺動面に設けられ、
前記所定方向は、前記滑り板材に対して前記滑り部材が前記面内方向における外側から内側に向かって摺動する方向であり、
前記反所定方向は、前記滑り板材に対して前記滑り部材が前記面内方向における前記内側から前記外側に向かって摺動する方向である
請求項2に記載の支承装置。
【請求項4】
前記滑り板材の摺動面における面内方向の内側に摺動方向によって前記異方性摩擦部の摩擦係数より小さな摩擦係数が変わらない一般摩擦部が設けられ、前記一般摩擦部の外側に前記異方性摩擦部が設けられ、
前記所定方向は、前記滑り板材に対して前記滑り部材が前記面内方向における外側から内側に向かって摺動する方向であり、
前記反所定方向は、前記滑り板材に対して前記滑り部材が前記面内方向における前記内側から前記外側に向かって摺動する方向である
請求項2に記載の支承装置。
【請求項5】
前記滑り板材は、面内方向における前記所定方向において前記滑り部材より広く形成され、
前記滑り部材が備えられた前記第1沓及び前記第2沓の一方に、前記所定方向に直交する直交方向の摺動を規制する規制部が設けられた
請求項1に記載の支承装置。
【請求項6】
前記滑り板材の摺動面において、前記第1沓及び前記第2沓が組付けられた組付け状態における前記滑り部材が配置される組付位置と、前記所定方向の両側の端部との間のそれぞれに前記異方性摩擦部が設けられ、
前記所定方向は、前記滑り板材に対して前記滑り部材が前記端部から前記組付位置に向かって摺動する方向であり、
前記反所定方向は、前記滑り板材に対して前記滑り部材が前記組付位置から前記端部に向かって摺動する方向である
請求項5に記載の支承装置。
【請求項7】
前記滑り板材の摺動面において、
前記第1沓及び前記第2沓が組付けられた組付け状態における前記滑り部材が配置される組付位置と、前記所定方向の両側の端部の一方との間に前記異方性摩擦部が設けられ、
前記組付位置と他方側の端部との間に、摺動方向によって前記異方性摩擦部の摩擦係数より小さな摩擦係数が変わらない一般摩擦部が設けられ、
前記所定方向は、前記滑り板材に対して前記滑り部材が前記端部から前記組付位置に向かって摺動する方向であり、
前記反所定方向は、前記滑り板材に対して前記滑り部材が前記組付位置から前記端部に向かって摺動する方向である
請求項5に記載の支承装置。
【請求項8】
前記滑り板材の摺動面における面内方向の内側に摺動方向によって前記異方性摩擦部の摩擦係数より小さな摩擦係数が変わらない一般摩擦部が設けられ、前記所定方向における前記一般摩擦部の外側に前記異方性摩擦部が設けられ、
前記所定方向は、前記滑り板材に対して前記滑り部材が前記外側から前記一般摩擦部に向かって摺動する方向であり、
前記反所定方向は、前記滑り板材に対して前記滑り部材が前記一般摩擦部から前記外側に向かって摺動する方向である
請求項5に記載の支承装置。
【請求項9】
前記滑り部材は、
充填材が混入された充填材入り樹脂で構成された
請求項1乃至請求項8のうちいずれかに記載の支承装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、上部構造物と下部構造物との間に配置し、下部構造物で上部構造物を支持する支持構造における支承装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、免震構造物、あるいは固定構造物同士を接続する接続部分等の振動や相対変位が生じる構造物において、可動支持する支承装置がある。これらの支承装置は、特許文献1に開示されているように、上部構造物に設けた上沓と、下部構造物に設けた下沓とが備えられ、上沓と下沓の摺動面同士が摺動し、可動支持可能に構成している。
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示された支承装置のように、水平方向に沿って摺動する支承装置は、いずれの方向に摺動しても同じ摩擦係数で摺動する。そのため、例えば、大規模地震動に対応するため、摺動面を高い摩擦係数で構成した場合、地震動の入力によって摺動して相対移動すると、当初位置(組付位置)に復帰するにも、大規模地震動と同程度の外力を作用させる必要があるように、摺動方向によらず同じ摺動性で摺動することしかできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明では、摺動方向によって摺動性を変化させることができる支承装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、第1構造物及び第2構造物におけるそれぞれの対向部分に配設した第1沓及び第2沓で構成され、前記第1沓及び前記第2沓の対向部分における摺動面同士が摺動する支承装置であって、前記第1沓及び前記第2沓の一方に、前記摺動面を構成する滑り部材が備えられ、前記第1沓及び前記第2沓の他方に前記摺動面を構成するとともに、前記滑り部材より広い滑り板材が備えられ、前記滑り板材及び前記滑り部材の少なくとも一方の前記摺動面の少なくとも一部に、所定方向の摺動に対する摩擦係数より、前記所定方向の反対方向である反所定方向の摺動に対する摩擦係数が高くなる異方性摩擦部が形成されたことを特徴とする。
【0007】
上記第1構造物及び第2構造物は、例えば、ビルを第1構造物とし、基礎構造を第2構造物とする建造物、橋脚を第2構造物とし、主桁を第1構造物とする橋梁、ビルを第2構造物とし、ビルとビルとを連絡する渡り廊下を第1構造物とする連絡通路、柱を第2構造物とし、トラス屋根を第1構造物とする屋根構造、あるいは、ビルを第2構造物とし、別のビルを第1構造物とするエキスパンション構造における構造物としてもよい。あるいは、サーバを第1構造物とし、ラックを第2構造物とする構造物であってもよい。
【0008】
上記支承装置は、剛滑り支承、弾性滑り支承など様々な構造の支承装置が含まれる。
上述の摩擦係数は、静止摩擦係数及び動摩擦係数のうち少なくとも一方が他の部分の摩擦係数に比べて高いことをいう。
【0009】
上述の前記滑り板材及び前記滑り部材の少なくとも一方の前記摺動面の少なくとも一部に異方性摩擦部が形成されたとは、前記滑り板材の前記摺動面の一部あるいは全部、前記滑り部材の前記摺動面の一部あるいは全部、前記滑り板材の前記摺動面の一部と前記滑り部材の前記摺動面の一部あるいは全部、さらには前記滑り板材の前記摺動面の全部と前記滑り部材の前記摺動面の一部あるいは全部に、異方性摩擦部が形成されたことを指す。
【0010】
この発明により、摺動方向によって摺動性を変化させることができる。
詳述すると、前記滑り板材及び前記滑り部材の少なくとも一方の前記摺動面の少なくとも一部に異方性摩擦部が形成されているため、反所定方向に向かう前記滑り部材と前記滑り板材との摺動に比べて、所定方向に向かう前記滑り部材と前記滑り板材との摺動の方が小さな外力で摺動することができる。
【0011】
このように、前記滑り部材と前記滑り板材の少なくとも一方の摺動面の少なくとも一部に前記異方性摩擦部を設けることで摺動方向によって摺動性を変化させることができ、同じ外力で摺動距離を変化させたり、異なる外力で同じ摺動距離を摺動させたりすることができる。
【0012】
この発明の態様として、前記滑り板材は、面内方向における全方向において前記滑り部材より広く形成されてもよい。
この発明により、全方向に摺動可能な支承装置において摺動方向によって摺動性を変化させることができる。
【0013】
なお、上述の面内方向における全方向において前記滑り部材より広く形成された前記滑り板材は、平面視において、円形、八角形などの多角形、楕円形など適宜の平面視形状とすることができる。
【0014】
またこの発明の態様として、前記異方性摩擦部は、前記滑り板材の摺動面に設けられ、前記所定方向は、前記滑り板材に対して前記滑り部材が前記面内方向における外側から内側に向かって摺動する方向であり、前記反所定方向は、前記滑り板材に対して前記滑り部材が前記面内方向における前記内側から前記外側に向かって摺動する方向であってもよい。
【0015】
上述の前記面内方向における外側及び内側は、水平な滑り板材における平面視外側及び平面視内側であり、前記滑り板材が平面視円形である場合、径外側及び径内側となり、すなわち平面視円形状の前記滑り板材における放射方向に沿った方向となる。
この発明により、面内方向の内側から外側に向かう前記滑り部材の摺動より、小さな外力で外側から内側に向かって前記滑り部材を摺動させることができる。したがって、例えば、大規模地震動の入力によって面内方向の内側から外側に向って前記滑り部材が摺動した後、大規模地震動より小さな外力で当初の組付位置に前記滑り部材を復帰させることができる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記滑り板材の摺動面における面内方向の内側に摺動方向によって前記異方性摩擦部の摩擦係数より小さな摩擦係数が変わらない一般摩擦部が設けられ、前記一般摩擦部の外側に前記異方性摩擦部が設けられ、前記所定方向は、前記滑り板材に対して前記滑り部材が前記面内方向における外側から内側に向かって摺動する方向であり、前記反所定方向は、前記滑り板材に対して前記滑り部材が前記面内方向における前記内側から前記外側に向かって摺動する方向であってもよい。
前記一般摩擦部の摩擦係数と、前記異方性摩擦部の所定方向の摩擦係数とは、前記異方性摩擦部の反所定方向の摩擦係数より小さければ、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0017】
この発明により、前記異方性摩擦部を外側に向かって摺動するような大きな外力が作用するまでは前記滑り部材は前記一般摩擦部を摺動し、大きな外力が作用すると前記滑り部材は前記異方性摩擦部を面内方向における内側から外側に向かって摺動する。そして、前記滑り部材が前記異方性摩擦部を摺動した後、面内方向における外側から内側に向かって小さな力で摺動して復帰することができる。
【0018】
したがって、例えば、風荷重や数十年に一度発生するおそれがある中地震(LV1)などの小さい外力が作用すると前記滑り部材は前記一般摩擦部を摺動し、数百年に一度発生するおそれがある大地震(レベル2)や数千年に一度発生するおそれがある極大地震(レベル3)などの大規模地震動のような大きな外力が作用すると、前記滑り部材は前記異方性摩擦部を摺動することとなる。
【0019】
またこの発明の態様として、前記滑り板材は、面内方向における前記所定方向において前記滑り部材より広く形成され、前記滑り部材が備えられた前記第1沓及び前記第2沓の一方に、前記所定方向に直交する直交方向の摺動を規制する規制部が設けられてもよい。
この発明により、所定方向に沿った一方向に摺動可能な支承装置において摺動方向によって摺動性を変化させることができる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記滑り板材の摺動面において、前記第1沓及び前記第2沓が組付けられた組付け状態における前記滑り部材が配置される組付位置と、前記所定方向の両側の端部との間のそれぞれに前記異方性摩擦部が設けられ、前記所定方向は、前記滑り板材に対して前記滑り部材が前記端部から前記組付位置に向かって摺動する方向であり、前記反所定方向は、前記滑り板材に対して前記滑り部材が前記組付位置から前記端部に向かって摺動する方向であってもよい。
上記組付位置とは、可動支持できる支承装置において、可動(摺動)する前の初期状態において、滑り板材に対して滑り部材が配置された当初の位置である。
【0021】
この発明により、前記滑り板材に対して前記組付位置からいずれの端部に向かって前記滑り部材が摺動する際に作用する外力より小さな外力で、摺動した前記滑り部材が前記組付位置に戻る方向に摺動することができる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記滑り板材の摺動面において、前記第1沓及び前記第2沓が組付けられた組付け状態における前記滑り部材が配置される組付位置と、前記所定方向の両側の端部の一方との間に前記異方性摩擦部が設けられ、前記組付位置と他方側の端部との間に、摺動方向によって前記異方性摩擦部の摩擦係数より小さな摩擦係数が変わらない一般摩擦部が設けられ、前記所定方向は、前記滑り板材に対して前記滑り部材が前記端部から前記組付位置に向かって摺動する方向であり、前記反所定方向は、前記滑り板材に対して前記滑り部材が前記組付位置から前記端部に向かって摺動する方向であってもよい。
【0023】
この発明により、前記滑り板材に対して前記組付位置から前記異方性摩擦部が設けられた側の端部に向う方向に前記滑り部材が摺動する場合の外力より小さな外力で、前記滑り板材に対して前記組付位置から前記一般摩擦部が設けられた反対側の端部に向う方向に前記滑り部材を摺動させることができるとともに、前記滑り板材に対して前記組付位置から前記異方性摩擦部が設けられた側の端部に向かって摺動した前記滑り部材を小さな外力で前記組付位置に復帰させることができる。
【0024】
またこの発明の態様として、前記滑り板材の摺動面における面内方向の内側に摺動方向によって前記異方性摩擦部の摩擦係数より小さな摩擦係数が変わらない一般摩擦部が設けられ、前記所定方向における前記一般摩擦部の外側に前記異方性摩擦部が設けられ、前記所定方向は、前記滑り板材に対して前記滑り部材が前記外側から前記一般摩擦部に向かって摺動する方向であり、前記反所定方向は、前記滑り板材に対して前記滑り部材が前記一般摩擦部から前記外側に向かって摺動する方向であってもよい。
【0025】
この発明により、前記滑り板材に対して前記異方性摩擦部を端部に向かって摺動するような大きな外力が作用するまでは前記滑り部材は前記一般摩擦部を摺動し、大きな外力が作用すると前記滑り部材は前記異方性摩擦部を端部に向かって摺動する。そして、前記滑り板材に対して前記滑り部材が前記異方性摩擦部を摺動した後、端部から前記組付位置に向かって小さな力で摺動して復帰することができる。
【0026】
したがって、例えば、風荷重や数十年に一度発生するおそれがある中地震(LV1)などの小さい外力が作用すると前記滑り板材に対して前記滑り部材が前記一般摩擦部を摺動し、数百年に一度発生するおそれがある大地震(レベル2)や数千年に一度発生するおそれがある極大地震(レベル3)などの大規模地震動のような大きな外力が作用すると、前記滑り板材に対して前記滑り部材が前記異方性摩擦部を摺動することとなる。
【0027】
またこの発明の態様として、前記滑り部材は、充填材が混入された充填材入り樹脂で構成されてもよい。
この発明により、所望の摺動性を有するととともに、充填材が混入されているため、所定の強度を有する滑り部材を構成することができる。したがって、前記異方性摩擦部において所定方向の摺動より摩擦係数の高い反所定方向の摺動に対しても前記滑り部材の摩耗を抑制することができる。
【0028】
またこの発明の態様として、前記異方性摩擦部は、前記滑り板材の摺動面に設けられてもよい。
この発明により、前記異方性摩擦部を前記滑り板材の摺動面の全面に形成したり、一部に形成したり、全面に形成するものの、所定方向が異なる前記異方性摩擦部を形成するなど様々な態様で前記異方性摩擦部を形成することができる。
【0029】
またこの発明の態様として、前記異方性摩擦部が設けられた、前記組付位置と前記一方の端部との前記所定方向の長さが、前記一般摩擦部が設けられた、前記組付位置と他方の端部との前記所定方向の長さより短くてもよい。
【0030】
この発明により、同程度の外力が作用する場合、前記組付位置より前記一般摩擦部が設けられた側の前記滑り部材の摺動距離よりも、前記組付位置より前記異方性摩擦部が設けられた側の前記滑り部材の摺動距離を短くすることができる。そして、前記滑り板材に対して前記組付位置から前記異方性摩擦部が設けられた側の端部に向かって摺動した前記滑り部材を小さな外力で前記組付位置に復帰させることができる。つまり、前記組付位置から一般摩擦部が設けられた側の前記滑り部材の移動範囲より前記異方性摩擦部が設けられた側の前記滑り部材の摺動距離を短くすることができる。これにより、例えば、前記組付位置から片側において前記滑り部材が移動できる範囲を狭くしないといけないといった環境下に用いることができる。
【0031】
またこの発明の態様として、前記第1構造物は上部構造物であり、前記第2構造物は前記上部構造物を支持する下部構造物であり、前記第1沓は前記上部構造物に固定された上沓であり、前記第2沓は前記下部構造物に固定された下沓であってもよい。
【0032】
この発明により、上部構造物に固定された上沓に滑り部材が設けられ、下部構造物に固定された下沓に、滑り部材より広い滑り板材が設けられているため、上部構造物に固定された上沓に滑り板材が設けられ、下部構造物に固定された下沓に滑り部材が設けられて支承装置に比べて、安定した可動支持を実現することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明により、摺動方向によって摺動性を変化させることができる支承装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図9】別の実施形態の一方向滑り支承装置の説明図。
【
図10】さらに別の実施形態の一方向滑り支承装置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1は滑り支承装置1の概略断面図を示し、
図2は滑り支承装置1の分解斜視図を示し、
図3は下沓20の説明図を示している。
【0036】
詳述すると、
図3(a)はスライドプレート22の平面図を示し、
図3(b)は
図3(a)のA-A矢視図を示し、
図3(c)は
図3(b)のa部拡大図を示し、
図3(d)は滑り支承装置1の変位と摩擦係数との摩擦係数履歴ループ図を示している。
【0037】
なお、
図3(a)において、組付位置Zの滑り材12を破線で示している。また、
図3(b)において、下沓20におけるスライドプレート22の図示を省略している。
【0038】
滑り支承装置1は、免震構造物100を構成する上部構造物200と下部構造物300との間に配設される免震装置であり、上部構造物200に固定された上沓10と、下部構造物300に固定された下沓20とで構成され、上沓10と下沓20の境界面、つまり摺動面10a,20aが摺動することで、境界面(摺動面)における面内方向に変位可能に支持し、例えば、地震や強い風等による振動エネルギを吸収し、免震することができる。
【0039】
なお、滑り支承装置1は、下部構造物300に対して移動した上部構造物200を組付位置Zに復帰させるためのゴム支承装置(図示省略)などと併用される。ここで組付位置Zとは、可動支持できる滑り支承装置1において、下沓20に対して上沓10が可動(摺動)する前の初期状態において、スライドプレート22に対して滑り材12が配置された当初の位置である。
【0040】
詳しくは、滑り支承装置1は、
図1に示すように、上部構造物200の底面200aに固定された上沓10と、下部構造物300の上面300aに固定された下沓20とで構成している。
【0041】
上沓10は、上部構造物200の底面200aに固定される滑り材ホルダ11と、滑り材ホルダ11に保持された滑り材12とで構成している。
滑り材ホルダ11は、上部構造物200の底面200aに固定される取付部11aと、取付部11aから下方に向かって突出する円柱状の台座部11bとが一体構成されている。
【0042】
滑り材12は、台座部11bの底面に固定される円盤状であり、適宜の滑り性能を有している。なお、滑り材12は台座部11bよりひとまわり小さな径で形成している。
具体的には、滑り材12は、自己潤滑性を有するとともに、表面が低摩擦係数のPTFE製の平面視円形の板状体である。より詳しくは、ガラス繊維を10~30%の配合比率で含んだ充填材入りPTFE製である。このように、ガラス繊維を充填材として含んだ充填材入りPTFE製で構成した滑り材12の底面12aは上沓10の上沓摺動面10aを構成し、所定の滑り性を備えている。なお、滑り材12は、所定の要求性能を満足すれば充填材入りPTFE製でなくてもよいし、充填材としてガラス繊維でなく、所定の材料を用いてもよい。
【0043】
下沓20は、
図2に示すように、下部構造物300の上面300aに固定されるバックプレート21と、バックプレート21上に装着されるスライドプレート22とで構成し、スライドプレート22の上面22aで、上述の上沓10の上沓摺動面10aと摺動する下沓摺動面20aを構成している。
【0044】
なお、
図2及び
図3に示すように、バックプレート21は平面視正方形に形成され、スライドプレート22はバックプレート21よりひとまわり小さな平面視八角形に形成され、水平に設置されている。
【0045】
スライドプレート22は、所定の厚みを有するオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)の板材で構成している。なお、スライドプレート22は、後述する表面化処理等が施すことができ、その他の要求性能が満足すれば、オーステナイト系ステンレス鋼に限定されず、適宜の材料で構成された板材を用いてもよい。
そして、スライドプレート22の上面22aには、後述する表面化処理を施した表面処理部23を形成している。
【0046】
表面処理部23は、スライドプレート22に対して滑り材12が平面視中心から平面視外側に向かって摺動する際には高い摩擦係数μ1となり、スライドプレート22に対して滑り材12が平面視外側から平面視中心に向かって摺動する際には摩擦係数μ1より低い摩擦係数μ2となるように、ブラスト加工等によってスライドプレート22の上面22aに対して凹凸24を形成している。
【0047】
上述の摩擦係数μ1,μ2は、静止摩擦係数及び動摩擦係数のうち少なくとも動摩擦係数の摩擦係数に比べて高いことをいう。
なお、平面視外側から平面視中心に向かう方向を所定方向Xとし、摺動平面視中心から平面視外側に向かう方向を反所定方向Yとする。
【0048】
凹凸24は、
図3(c)に示すように、平面視中央側の傾斜角度がきつく、平面視外側の傾斜角度が緩やかな略三角の断面形状であり、これが放射方向に沿って連続して形成されている。これにより、スライドプレート22に対して滑り材12が反所定方向Yに摺動する際には、凹凸24の傾斜角度がきつい傾斜面側を摺動するため、その摩擦係数は摩擦係数μ1となり、所定方向Xに摺動する際には、凹凸24の傾斜角度が緩い傾斜面側を摺動するため、その摩擦係数は摩擦係数μ1より低い摩擦係数μ2となる。
【0049】
なお、上述のような凹凸24は、例えば、射角方向からブラスト材を噴射させるブラスト加工や、射角方向からレーザ光を照射するレーザ加工、エッチング加工などで形成してもよいし、凹凸24を有するスライドプレート22自体を三次元積層加工で形成してもよい。
【0050】
また、凹凸24は、所定方向Xの傾斜角度と反所定方向Yの傾斜角度が異なるように形成できれば上述のような形状に限定されず、例えば、断面平行四辺形状、断面台形状など様々な断面形状で形成することができる。
さらに、凹凸24は放射方向に連続して配置されずに、間隔を設けて配置してもよいし、例えば、平面視渦巻き状となるように配置してもよいし、千鳥格子状に配置してよい。
【0051】
このように凹凸24を有する表面処理部23をスライドプレート22の上面22aに形成した下沓20と、上沓10とで構成する滑り支承装置1を加振すると、
図3(d)に示すような摩擦係数履歴ループ図を示す。
図3(d)に示す摩擦係数履歴ループ図は、横軸を変位δ、縦軸を摩擦係数μとしている。
【0052】
図3(d)の摩擦係数履歴ループ図における右上の第一象限に示すように、スライドプレート22における平面視中心に配置された滑り材12が平面視外側に向かって反所定方向Yに摺動すると、徐々に摩擦係数μ1に向かって摩擦係数μが上昇し、反所定方向Yに所定距離摺動すると摩擦係数μ1となる。
【0053】
そのままさらに反所定方向Yに摺動し、平面視外側の端部近くで反所定方向Yの摺動が停止し、所定方向Xに摺動すると、
図3(d)の摩擦係数履歴ループ図における右下の第四象限に示すように、摩擦係数μ2で摺動する。そして、所定方向Xに所定距離摺動し、平面視中心に近づくと、摩擦係数μ1に向かって上昇する。
【0054】
さらに平面視中心を超えて反対側の平面視外側に向かうと、
図3(d)の摩擦係数履歴ループ図における左下の第三象限に示すように、摩擦係数μ1に向かって摩擦係数μはさらに上昇し、反所定方向Yに所定距離摺動すると摩擦係数μ1となる。
【0055】
そのままさらに反所定方向Yに摺動し、平面視外側の端部近くで反所定方向Yの摺動が停止し、所定方向Xに摺動すると、
図3(d)の摩擦係数履歴ループ図における左上の第二象限に示すように、摩擦係数μ2で摺動する。そして、所定方向Xに所定距離摺動し、平面視中心に近づくと、摩擦係数μ1に向かって上昇する。
【0056】
このように、上部構造物200及び下部構造物300におけるそれぞれの対向部分に配設した上沓10及び下沓20で構成され、上沓10及び下沓20の対向部分における摺動面10a,20a同士が摺動する滑り支承装置1は、上沓10に上沓摺動面10aを構成する滑り材12が備えられ、下沓20に下沓摺動面20aを構成するとともに、滑り材12より広いスライドプレート22が備えられ、スライドプレート22の下沓摺動面20aに、所定方向Xに摺動する際の摩擦係数μ2より、所定方向Xの反対方向である反所定方向Yに摺動する際の摩擦係数μ1が高くなる表面処理部23が形成されているため、摺動方向によって摺動性を変化させることができる。
【0057】
詳述すると、スライドプレート22の下沓摺動面20aに表面処理部23が形成されているため、反所定方向Yに向かう滑り材12の摺動に比べて、所定方向Xに向かう滑り材12の摺動の方が小さな外力で摺動することができる。
【0058】
このように、スライドプレート22の下沓摺動面20aに表面処理部23を設けることで摺動方向によって摺動性を変化させることができ、同じ外力で摺動距離を変化させたり、異なる外力で同じ摺動距離を摺動させたりすることができる。
【0059】
また、スライドプレート22は、面内方向における全方向において滑り材12より広く形成されているため、全方向に摺動可能な滑り支承装置1において摺動方向によって摺動性を変化させることができる。
【0060】
また、表面処理部23は、スライドプレート22の下沓摺動面20aに設けられ、所定方向Xは、スライドプレート22に対して滑り材12が平面視外側から平面視内側に向かって摺動する方向であり、反所定方向Yは、スライドプレート22に対して滑り材12が平面視内側から平面視外側に向かって摺動する方向であるため、平面視内側から平面視外側に向かう滑り材12の摺動より、小さな外力で平面視外側から平面視内側に向かって滑り材12を摺動させることができる。
【0061】
したがって、例えば、大規模地震動の入力によって平面視内側から平面視外側に向って滑り材12が摺動した後、併用するゴム支承装置(図示省略)などによって、大規模地震動より小さな外力で当初の組付位置Zに滑り材12を復帰させることができる。
【0062】
また、滑り材12は、充填材が混入された充填材入り樹脂で構成されてもよい。
ため、所望の摺動性を有するととともに、充填材が混入されているため、所定の強度を有する滑り材12を構成することができる。したがって、表面処理部23において所定方向Xの摺動より摩擦係数の高い反所定方向Yの摺動に対しても滑り材12の摩耗を抑制することができる。
【0063】
なお、
図4に示すように、スライドプレート22Sが異なる滑り支承装置1Sであってもよい。
図4は上述の滑り支承装置1とスライドプレート22が異なる別の実施形態の滑り支承装置1Sの説明図を示している。
【0064】
詳述すると、
図4(a)はスライドプレート22Sの平面図を示し、
図4(b)は
図4(a)のA-A矢視図を示し、
図4(c)は
図4(b)のb部拡大図を示し、
図4(d)は
図4(b)のb部拡大図を示し、
図4(e)は滑り支承装置1Sの変位と摩擦係数との摩擦係数履歴ループ図を示している。
【0065】
なお、
図4(a)において、組付位置Zの滑り材12を破線で示している。また、
図4(b)において、下沓20Sにおけるスライドプレート22Sの図示を省略している。
【0066】
上述の滑り支承装置1はスライドプレート22の上面22a全体に凹凸24で構成する表面処理部23が形成されていたが、
図4に示す滑り支承装置1Sは、スライドプレート22Sの上面22aの一部に表面処理部23を形成している。なお、滑り支承装置1Sにおけるスライドプレート22S以外の構成は、上述の滑り支承装置1の構成と同じであるため、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0067】
滑り支承装置1Sにおける下沓20Sのスライドプレート22Sは、上面22aにおいて、組付位置Zの滑り材12に対応する箇所に表面処理部23を形成しておらず、その平面視外側にのみ表面処理部23を形成している。
スライドプレート22Sの上面22aにおける平面視中心の組付位置Zである滑り材12に対応する円形状に表面処理部23が形成されていない部分を一般摩擦部25とする。
【0068】
一般摩擦部25は、滑り材12の摺動面である底面12aと同径の円形状であり、表面処理部23が施されていないため、下沓20S自体の一般摩擦係数μ3である。一般摩擦係数μ3は、表面処理部23における所定方向Xの摺動に対する摩擦係数μ2より小さな摩擦係数となる。
なお、一般摩擦部25は、滑り材12の底面と同径の円形状であるが、ひと回り大きい、あるいはひと回り小さい円形でもよいし、八角形などの多角形状であってもよい。
【0069】
一般摩擦部25の平面視外側に形成された表面処理部23は、滑り支承装置1のスライドプレート22の上面22aに形成した表面処理部23と同様に、
図4(c),(d)に示すように、凹凸24を放射方向に並べて形成している。
【0070】
このように凹凸24を有する表面処理部23をスライドプレート22Sの上面22aに形成した下沓20と、上沓10とで構成する滑り支承装置1Sを加振すると、
図4(e)に示すような摩擦係数履歴ループ図を示す。
図4(e)に示す摩擦係数履歴ループ図における右上の第一象限に示すように、スライドプレート22Sにおける平面視中心に配置された滑り材12が平面視外側に向かって反所定方向Yに摺動すると、徐々に摩擦係数μ1に向かって摩擦係数μが上昇し、反所定方向Yに所定距離摺動すると摩擦係数μ1となる。
【0071】
そのままさらに反所定方向Yに摺動し、平面視外側の端部近くで反所定方向Yの摺動が停止し、所定方向Xに摺動すると、
図4(e)の摩擦係数履歴ループ図における右下の第四象限に示すように、摩擦係数μ2で摺動する。そして、所定方向Xに所定距離摺動し、平面視中心に近づくと、一般摩擦係数μ3に向かって減少する。
【0072】
さらに平面視中心を超えて反対側の平面視外側に向かうと、
図4(e)の摩擦係数履歴ループ図における左下の第三象限に示すように、摩擦係数μ1に向かって摩擦係数μはさらに上昇し、反所定方向Yに所定距離摺動すると摩擦係数μ1となる。
【0073】
そのままさらに反所定方向Yに摺動し、平面視外側の端部近くで反所定方向Yの摺動が停止し、所定方向Xに摺動すると、
図4(e)の摩擦係数履歴ループ図における左上の第二象限に示すように、摩擦係数μ2で摺動する。そして、所定方向Xに所定距離摺動し、平面視中心に近づくと、一般摩擦係数μ3に向かって減少する。
【0074】
このように、上面22aの平面視中心に一般摩擦部25を有し、その平面視外側に表面処理部23が形成されたスライドプレート22Sを有する下沓20Sと、上沓10とで構成した滑り支承装置1Sは、上述の滑り支承装置1で奏する作用効果に加え、スライドプレート22Sの下沓摺動面20aにおける平面視内側に、摺動方向によって表面処理部23の摩擦係数より小さな一般摩擦係数μ3が変わらない一般摩擦部25が設けられ、一般摩擦部25の平面視外側に表面処理部23が設けられ、所定方向Xは、スライドプレート22Sに対して滑り材12が平面視外側から平面視内側に向かって摺動する方向であり、反所定方向Yは、スライドプレート22Sに対して滑り材12が平面視内側から平面視外側に向かって摺動する方向である。そのため、表面処理部23を平面視外側に向かって摺動するような大きな外力が作用するまでは滑り材12は一般摩擦部25を摺動し、大きな外力が作用すると滑り材12が表面処理部23を平面視内側から平面視外側に向かって摺動する。そして、滑り材12が表面処理部23を摺動した後、平面視外側から平面視内側に向かって小さな力で摺動して復帰することができる。
【0075】
したがって、例えば、風荷重や数十年に一度発生するおそれがある中地震(LV1)などの小さい外力が作用すると滑り材12は一般摩擦部25を摺動し、数百年に一度発生するおそれがある大地震(レベル2)や数千年に一度発生するおそれがある極大地震(レベル3)などの大規模地震動のような大きな外力が作用すると、滑り材12が表面処理部23を摺動することができる。
【0076】
上述の滑り支承装置1,1Sは、滑り材12に対して全方向に広いスライドプレート22,22Sを有する滑り支承装置1,1Sについて説明したが、所定方向にのみ摺動する一方向支承装置1Tであってもよい。
図5は一方向支承装置1Tの概略斜視図を示し、
図6は一方向支承装置1Tの分解斜視図を示し、
図7及び
図8は一方向支承装置1Tの説明図を示している。
【0077】
詳述すると、
図7(a)は一方向支承装置1Tの平面図を示し、
図7(b)は一方向支承装置1Tの正面図を示し、
図7(c)は一方向支承装置1Tの左側面を示している。また、
図8(a)は下沓20Tの平面図を示し、
図8(b)は
図8(a)のC-C矢視図を示し、
図8(c)は
図8(b)のd部拡大図を示し、
図8(d)は一方向支承装置1Tの変位と摩擦係数との摩擦係数履歴ループ図を示している。
【0078】
一方向支承装置1Tは、上部構造物の底面に固定され、上沓として機能する上沓10Tと、下部構造物の上面に固定され、下沓として機能する下沓20Tとで構成している。
【0079】
下沓として機能する下沓20Tは、延設方向Lに長い平面視長方形状に形成されている。そして、下沓20Tは、幅広の基板部21Taと、レール部21Tbと、張出しフランジ部21Tcとで断面エ型に構成されたソールプレート21Tとともに、張出しフランジ部21Tcの上面に、スライドプレート22Tを備えている。
スライドプレート22Tは、表面を研磨したSUS製のプレートで構成であり、後述する滑り材12Tの外径よりひとまわり大きな幅員方向Wの長さで形成している。
【0080】
スライドプレート22Tの上面22aには、上述の滑り支承装置1のスライドプレート22Tの上面22aに形成した表面処理部23と同様に、凹凸24を有する表面処理部23を形成している。
具体的には、凹凸24は、
図8(c)に示すように、延設方向Lの中央側の傾斜角度がきつく、延設方向Lの端部側の傾斜角度が緩やかな略三角の断面形状であり、これが延設方向Lに沿って連続して形成されている。これにより、スライドプレート22Tに対して滑り材12Tが反所定方向Yに摺動する際には、凹凸24の傾斜角度がきつい傾斜面側を摺動するため、その摩擦係数は摩擦係数μ1となり、所定方向Xに摺動する際には、凹凸24の傾斜角度が緩い傾斜面側を摺動するため、その摩擦係数は摩擦係数μ1より低い摩擦係数μ2となる。
【0081】
上沓10Tは、鋼製であるとともに、上述の基板部21Taと略同じ幅員方向Wの長さを有する幅方向に長い長方形状のベースポット13Tと、ベースポット13Tの底面側中央に配置した平面視円形状の滑り材12Tとで構成している。
【0082】
詳しくは、上沓10Tは、
図7(c)に示すように、アッパープレート112と、上述の張出しフランジ部21Tcより幅広の逆向き凹状のベースポット13Tと、ベースポット13Tの下端位置において、張出しフランジ部21Tcの下端位置でレール部21Tbに向かって突出するストッパ14Tとで構成している。
【0083】
なお、
図7において、ベースポット13Tとストッパ14Tとを一体的に図示しているが、別体構成のベースポット13Tとストッパ14Tとを組み付けて構成してもよいし、一体構成してもよい。
【0084】
ベースポット13Tの底面側中央に装着される滑り材12Tは、自己潤滑性を有しており、表面が低摩擦係数であるフッ素樹脂で構成された平面視円形の板状体であり、ソールプレート21Tに設けたスライドプレート22Tと摺動可能に構成している。
【0085】
このように構成した上沓10Tは、滑り材12Tをベースポット13Tの底面側中央に装着し、下沓20Tの上方から載置して上沓として機能させて、一方向支承装置1Tを構成する。
【0086】
このとき、上沓10Tの滑り材12Tの底面12aと、下沓20Tのスライドプレート22Tの上面22aとが接し、延設方向Lに摺動することができる。このように、一方向支承装置1Tは、延設方向Lという一方向に摺動方向を規制するが、ベースポット13Tの内側面と張出しフランジ部21Tcの側面との間に幅員方向Wに隙間を形成しているため、アソビ程度の幅員方向Wの摺動については許容している。
【0087】
また、一方向支承装置1Tは、上沓10Tのストッパ14Tが、張出しフランジ部21Tcの下側において、レール部21Tbに向かって突出する態様で組み付けるため、下沓20Tに対して上沓10Tが浮き上がることを防止できる。しかしながら、ストッパ14Tの上面と張出しフランジ部21Tcの底面との間に上下方向の隙間が形成されているため、アソビ程度の浮き上がりについては許容している。
【0088】
このように凹凸24を有する表面処理部23をスライドプレート22Tの上面22aに形成した下沓20Tと、上沓10Tとで構成する滑り支承装置1を加振すると、
図8(d)に示すような摩擦係数履歴ループ図を示す。
そして、
図8(d)の摩擦係数履歴ループ図における右上の第一象限に示すように、スライドプレート22Tにおける平面視中心に配置された滑り材12Tが外側に向かって反所定方向Yに摺動すると、徐々に摩擦係数μ1に向かって摩擦係数μが上昇し、反所定方向Yに所定距離摺動すると摩擦係数μ1となる。
【0089】
そのままさらに反所定方向Yに摺動し、外側の端部近くで反所定方向Yの摺動が停止し、所定方向Xに摺動すると、
図8(d)の摩擦係数履歴ループ図における右下の第四象限に示すように、摩擦係数μ2で摺動する。そして、所定方向Xに所定距離摺動し、平面視中心に近づくと、摩擦係数μ1に向かって上昇する。
【0090】
さらに平面視中心を超えて反対側の外側に向かうと、
図8(d)の摩擦係数履歴ループ図における左下の第三象限に示すように、摩擦係数μ1に向かって摩擦係数μはさらに上昇し、反所定方向Yに所定距離摺動すると摩擦係数μ1となる。
【0091】
そのままさらに反所定方向Yに摺動し、外側の端部近くで反所定方向Yの摺動が停止し、所定方向Xに摺動すると、
図8(d)の摩擦係数履歴ループ図における左上の第二象限に示すように、摩擦係数μ2で摺動する。そして、所定方向Xに所定距離摺動し、平面視中心に近づくと、摩擦係数μ1に向かって上昇する。
【0092】
このように、上沓10Tと下沓20Tとで構成する一方向支承装置1Tは、上述の滑り支承装置1,1Sで奏する作用効果に加え、スライドプレート22Tは、面内方向における延設方向Lにおいて滑り材12Tより広く形成され、滑り材12Tが備えられた上沓10に、延設方向Lに直交する幅員方向Wの摺動を規制するベースポット13Tが設けられているため、延設方向Lに沿った一方向に摺動可能な一方向支承装置1Tにおいて摺動方向によって摺動性を変化させることができる。
【0093】
また、表面処理部23は、スライドプレート22Tの下沓摺動面20aに設けられているため、表面処理部23をスライドプレート22Tの下沓摺動面20aの全面に形成することができる。
【0094】
また、スライドプレート22Tの下沓摺動面20aにおいて、上沓10及び下沓20が組付けられた組付け状態における滑り材12Tが配置される組付位置Zと、延設方向Lの両側の端部との間のそれぞれに表面処理部23が設けられ、所定方向Xは、スライドプレート22Tに対して滑り材12Tが端部から組付位置Zに向かって摺動する方向であり、反所定方向Yは、スライドプレート22Tに対して滑り材12Tが組付位置Zから端部に向かって摺動する方向である。そのため、スライドプレート22Tに対して組付位置Zからいずれの端部に向かって滑り材12Tが摺動する際に作用する外力より小さな外力で、摺動した滑り材12Tが組付位置Zに戻る方向に摺動することができる。
【0095】
なお、
図9に示すように、スライドプレート22Uが異なる一方向支承装置1Uであってもよい。
図9は上述の一方向支承装置1Tとスライドプレート22Tが異なる別の実施形態の一方向支承装置1Uの説明図を示している。
【0096】
詳述すると、
図9(a)はスライドプレート22Uの平面図を示し、
図9(b)は
図9(a)のA-A矢視図を示し、
図9(c)は
図9(b)のb部拡大図を示し、
図9(d)は
図9(b)のb部拡大図を示し、
図9(e)は一方向支承装置1Uの変位と摩擦係数との摩擦係数履歴ループ図を示している。
【0097】
上述の一方向支承装置1Tはスライドプレート22Tの上面22a全体に凹凸24で構成する表面処理部23が形成されていたが、
図9に示す一方向支承装置1Uは、スライドプレート22Uの上面22aの一部に表面処理部23を形成している。なお、一方向支承装置1Uにおけるスライドプレート22U以外の構成は、上述の一方向支承装置1Tの構成と同じであるため、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0098】
一方向支承装置1Uにおける下沓20Uのスライドプレート22Uは、上面22aにおいて、組付位置Zの滑り材12Tに対応する延設方向Lの中央に表面処理部23を形成しておらず、その外側にのみ表面処理部23を形成している。
スライドプレート22Uの上面22aにおける延設方向Lの中央の滑り材12Tに対応する円形状に表面処理部23が形成されていない部分を一般摩擦部25とする。
【0099】
一般摩擦部25は、滑り材12Tの摺動面である底面12aと同径の円形状であり、表面処理部23が施されていないため、下沓20U自体の一般摩擦係数μ3である。一般摩擦係数μ3は、表面処理部23における所定方向Xの摺動に対する摩擦係数μ2より小さな摩擦係数となる。
なお、一般摩擦部25は、滑り材12Tの底面と同径の円形状であるが、ひと回り大きい、あるいはひと回り小さい円形でもよいし、八角形などの多角形状であってもよい。
【0100】
一般摩擦部25の端部側に形成された表面処理部23は、滑り支承装置1のスライドプレート22の上面22aに形成した表面処理部23と同様に、
図9(c),(d)に示すように、凹凸24を放射方向に並べて形成している。
【0101】
このように凹凸24を有する表面処理部23をスライドプレート22Uの上面22aに形成した下沓20と、上沓10とで構成する一方向支承装置1Uを加振すると、
図9(e)に示すような摩擦係数履歴ループ図を示す。
【0102】
図9(e)に示す摩擦係数履歴ループ図における右上の第一象限に示すように、スライドプレート22Uにおける延設方向Lの中央に配置された滑り材12Tが一方の端部側に向かって反所定方向Yに摺動すると、徐々に摩擦係数μ1に向かって摩擦係数μが上昇し、反所定方向Yに所定距離摺動すると摩擦係数μ1となる。
【0103】
そのままさらに反所定方向Yに摺動し、端部近くで反所定方向Yの摺動が停止し、所定方向Xに摺動すると、
図9(e)の摩擦係数履歴ループ図における右下の第四象限に示すように、摩擦係数μ2で摺動する。そして、所定方向Xに所定距離摺動し、延設方向Lの中央に近づくと、一般摩擦係数μ3に向かって減少する。
【0104】
さらに延設方向Lの中央を超えて反対側である延設方向Lの他方の端部側に向かうと、
図9(e)の摩擦係数履歴ループ図における左下の第三象限に示すように、摩擦係数μ1に向かって摩擦係数μはさらに上昇し、反所定方向Yに所定距離摺動すると摩擦係数μ1となる。
【0105】
そのままさらに反所定方向Yに摺動し、端部近くで反所定方向Yの摺動が停止し、所定方向Xに摺動すると、
図9(e)の摩擦係数履歴ループ図における左上の第二象限に示すように、摩擦係数μ2で摺動する。そして、所定方向Xに所定距離摺動し、延設方向Lの中央に近づくと、一般摩擦係数μ3に向かって減少する。
【0106】
このように、上面22aの延設方向Lの中央に一般摩擦部25を有し、その端部側に表面処理部23が形成されたスライドプレート22Uを有する下沓20Uと、上沓10とで構成した一方向支承装置1Uは、上述の滑り支承装置1,1S及び一方向支承装置1Tで奏する作用効果に加え、スライドプレート22Uの下沓摺動面20aにおける面内方向の内側に摺動方向によって表面処理部23の摩擦係数より小さな一般摩擦係数μ3が変わらない一般摩擦部25が設けられ、延設方向Lにおける一般摩擦部25の外側に表面処理部23が設けられ、所定方向Xは、スライドプレート22Uに対して滑り材12Tが外側から一般摩擦部25に向かって摺動する方向であり、反所定方向Yは、スライドプレート22Uに対して滑り材12Tが一般摩擦部25から外側に向かって摺動する方向である。そのため、スライドプレート22Uに対して表面処理部23を端部に向かって摺動するような大きな外力が作用するまでは滑り材12Tは一般摩擦部25を摺動し、大きな外力が作用すると滑り材12Tが表面処理部23を端部に向かって摺動する。そして、スライドプレート22Uに対して滑り材12Tが表面処理部23を摺動した後、端部から組付位置Zに向かって小さな力で摺動して復帰することができる。
【0107】
したがって、例えば、風荷重や数十年に一度発生するおそれがある中地震(LV1)などの小さい外力が作用するとスライドプレート22Uに対して滑り材12Tが一般摩擦部25を摺動し、数百年に一度発生するおそれがある大地震(レベル2)や数千年に一度発生するおそれがある極大地震(レベル3)などの大規模地震動のような大きな外力が作用すると、スライドプレート22Uに対して滑り材12Tが表面処理部23を摺動することができる。
【0108】
さらに、
図10に示すように、下沓20Vが異なる一方向支承装置1Vであってもよい。
図10は上述の一方向支承装置1Tとスライドプレート22Tが異なるさらに別の実施形態の一方向支承装置1Vの説明図を示している。
【0109】
詳述すると、
図10(a)はスライドプレート22Vの平面図を示し、
図10(b)は
図10(a)のA-A矢視図を示し、
図10(c)は
図10(b)のb部拡大図を示し、
図10(d)は一方向支承装置1Vの変位と摩擦係数との摩擦係数履歴ループ図を示している。
【0110】
上述の一方向支承装置1Tはスライドプレート22Tの上面22a全体に凹凸24で構成する表面処理部23が形成されるとともに、スライドプレート22Tが組付位置Zから両方向の端部までの長さが等しく形成され、つまりスライドプレート22Tの延設方向Lの中央が組付位置Zであったが、
図10に示す一方向支承装置1Vの下沓20V及びスライドプレート22Vは、組付位置Zから表面処理部23が形成された側の端部までの長さが、組付位置Zから一般摩擦部25である側の端部までの長さより短く形成されている。つまり、スライドプレート22Vにおける延設方向Lの中央より組付位置Zが表面処理部23が形成された側にずれている。
【0111】
これは、同程度の外力が作用する場合、一般摩擦係数μ3である一般摩擦部25を滑り材12Tが摺動する摺動距離より、摩擦係数μ1である反所定方向Yに表面処理部23を滑り材12Tが摺動する摺動距離の方が短くなるため、組付位置Zみから端部までの長さをそれぞれの摺動範囲に応じた長さに形成している。
【0112】
このように凹凸24を有する表面処理部23をスライドプレート22Vの上面22aに形成した下沓20と、上沓10とで構成する一方向支承装置1Vを加振すると、
図10(d)に示すような摩擦係数履歴ループ図を示す。
【0113】
図10(d)に示す摩擦係数履歴ループ図における右上の第一象限に示すように、スライドプレート22Vにおける組付位置Zに配置された滑り材12Tが表面処理部23が形成された側の端部に向かって反所定方向Yに摺動すると、徐々に摩擦係数μ1に向かって摩擦係数μが上昇し、反所定方向Yに所定距離摺動すると摩擦係数μ1となる。
【0114】
そのままさらに反所定方向Yに摺動し、端部近くで反所定方向Yの摺動が停止し、所定方向Xに摺動すると、
図10(d)の摩擦係数履歴ループ図における右下の第四象限に示すように、摩擦係数μ2で摺動する。そして、所定方向Xに所定距離摺動し、組付位置Zに近づくと、一般摩擦係数μ3に向かって減少する。
【0115】
さらに組付位置Zを超えて反対側である一般摩擦部25である側の端部に向かうと、
図10(d)の摩擦係数履歴ループ図における左下の第三象限に示すように、一般摩擦係数μ3に向かって摩擦係数μはさらに減少し、反所定方向Yに所定距離摺動すると一般摩擦係数μ3となる。
【0116】
そのままさらに反所定方向Yに摺動し、端部近くで反所定方向Yの摺動が停止し、所定方向Xに摺動してもと、
図10(d)の摩擦係数履歴ループ図における左上の第二象限に示すように、一般摩擦係数μ3で摺動する。そして、所定方向Xに所定距離摺動し、組付位置Zに近づくと、摩擦係数μ1に向かって上昇する。
【0117】
このように、スライドプレート22Vを有する下沓20Vと上沓10Tとで構成する一方向支承装置1Vは、組付位置Zより表面処理部23が形成された側の摺動距離(第一象限及び第四象限)が、一般摩擦部25である側の摺動距離(第二象限及び第三象限)より短くなる。
【0118】
上述のように、スライドプレート22Vを有する下沓20Vと、上沓10Tとで構成した一方向支承装置1Vは、上述の滑り支承装置1,1S及び一方向支承装置1Tで奏する作用効果に加え、スライドプレート22Vの下沓摺動面20aにおいて、上沓10及び下沓20が組付けられた組付け状態における滑り材12Tが配置される組付位置Zと、延設方向Lの両側の端部の一方との間に表面処理部23が設けられ、組付位置Zと他方側の端部との間に、摺動方向によって表面処理部23の摩擦係数より小さな一般摩擦係数μ3が変わらない一般摩擦部25が設けられ、所定方向Xは、スライドプレート22Vに対して滑り材12Tが端部から組付位置Zに向かって摺動する方向であり、反所定方向Yは、スライドプレート22Vに対して滑り材12Tが組付位置Zから端部に向かって摺動する方向である。
【0119】
そのため、スライドプレート22Vに対して組付位置Zから表面処理部23が設けられた側の端部に向う方向に滑り材12Tが摺動する場合の外力より小さな外力で、スライドプレート22Vに対して組付位置Zから一般摩擦部25が設けられた反対側の端部に向う方向に滑り材12Tを摺動させることができるとともに、スライドプレート22Vに対して組付位置Zから表面処理部23が設けられた側の端部に向かって摺動した滑り材12Tを小さな外力で組付位置Zに復帰させることができる。
【0120】
また、表面処理部23が設けられた、組付位置Zと一方の端部との延設方向Lの長さが、一般摩擦部25が設けられた、組付位置Zと他方の端部との延設方向Lの長さより短いため、組付位置Zより一般摩擦部25が設けられた側の滑り材12Tの摺動距離よりも、組付位置Zより表面処理部23が設けられた側の滑り材12Tの摺動距離を短くすることができるとともに、スライドプレート22Vに対して組付位置Zから表面処理部23が設けられた側の端部に向かって摺動した滑り材12Tを小さな外力で組付位置Zに復帰させることができる。
【0121】
つまり、組付位置Zから一般摩擦部25が設けられた側の滑り材12Tの移動範囲より表面処理部23が設けられた側の滑り材12Tの摺動距離を短くすることができる。これにより、例えば、組付位置Zから片側において滑り材12Tが移動できる範囲を狭くしないといけないといった環境下に用いることができる。
【0122】
以上、本発明の構成と、前述の実施態様との対応において、本発明の第1構造物,上部構造物は上部構造物200に対応し、
以下同様に、
第2構造物,下部構造物は下部構造物300に対応し、
第1沓,上沓は上沓10,10Tに対応し、
第2沓,下沓は下沓20,20Tに対応し、
摺動面は上沓摺動面10a,下沓摺動面20aに対応し、
滑り部材は滑り材12,12Tに対応し、
滑り板材はスライドプレート22,22S,22T,22U,22Vに対応し、
所定方向は所定方向Xに対応し、
所定方向の摺動に対する摩擦係数は摩擦係数μ2に対応し、
反所定方向は反所定方向Yに対応し、
反所定方向の摺動に対する摩擦係数は摩擦係数μ1に対応し、
異方性摩擦部は表面処理部23に対応し、
支承装置は滑り支承装置1,1S,一方向支承装置1T,1U,1Vに対応し、
面内方向における外側は平面視外側に対応し、
面内方向における内側は平面視内側に対応し、
小さな摩擦係数は一般摩擦係数μ3に対応し、
一般摩擦部は一般摩擦部25に対応し、
直交方向は幅員方向Wに対応し、
規制部はベースポット13Tに対応し、
組付位置は組付位置Zに対応するも、上記実施形態に限定するものではない。
【0123】
例えば、上述の説明においては、滑り支承装置1,1Sは、上沓10において滑り材ホルダ11の台座部11bに滑り材12が固定された剛滑り支承であり、一方向支承装置1T、1U,1Vはベースポット13Tに滑り材12Tを装着した剛滑り支承であったが、上沓10及び上沓10Tにおいて、台座部11bやベースポット13Tに対して弾性部材を介在させたピストンに滑り材12や滑り材12Tを取り付けた弾性滑り支承であってもよい。
【0124】
上記上部構造物200及び下部構造物300は、例えば、ビルを上部構造物200とし、基礎構造を下部構造物300とする建造物、橋脚を下部構造物300とし、主桁を上部構造物200とする橋梁、ビルを下部構造物300とし、ビルとビルとを連絡する渡り廊下を上部構造物200とする連絡通路、柱を下部構造物300とし、トラス屋根を上部構造物200とする屋根構造、あるいは、ビルを下部構造物300とし、別のビルを上部構造物200とするエキスパンション構造における構造物としてもよい。あるいは、サーバを上部構造物200とし、ラックを下部構造物300とする構造物であってもよい。
【0125】
なお、上述の面内方向における全方向において滑り材12,12Tより広く形成されたスライドプレート22,22S,22T,22U,22Vは、平面視において、円形、六角形などの多角形、楕円形など適宜の平面視形状とすることができる。
一般摩擦部25の摩擦係数と、表面処理部23の反所定方向Yの摩擦係数より小さければ、表面処理部23の所定方向Xの摩擦係数と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0126】
1,1S,1T,1U,1V…滑り支承装置及び一方向支承装置
10,10T…上沓
10a…上沓摺動面
12,12T…滑り材
13T…ベースポット
20,20S…下沓
20a…下沓摺動面
20T,20U,20V…ソールプレート
22,22S,22T,22U,22V…スライドプレート
23…表面処理部
25…一般摩擦部
200…上部構造物
300…下部構造物
X…所定方向
Y…反所定方向
W…幅員方向
Z…組付位置