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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176133
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】高周波多層基板
(51)【国際特許分類】
   H01P 5/08 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
H01P5/08 Z
H01P5/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094413
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】394025094
【氏名又は名称】三菱電機ディフェンス&スペーステクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺田 晃
(72)【発明者】
【氏名】宮村 良
(72)【発明者】
【氏名】林 和孝
(57)【要約】
【課題】広帯域で反射の少ない、インピーダンス整合が取れる高周波多層基板を提供する。
【解決手段】高周波多層基板100は、第1の誘電体層21の表面に配置された表層信号線31aを有し、X方向に延びるマイクロストリップ線路31と、トリプレート構造のストリップ線路37とを備える。高周波多層基板100は、さらに、マイクロストリップ線路31とストリップ線路37を接続する変換部30を備えている。変換部30は、マイクロストリップ線路31からストリップ線路37に伝送される高周波信号の電磁界伝送モードを、ストリップ線路37に適合する伝送モードに変換するとともに、ストリップ線路37からマイクロストリップ線路31に伝送される高周波信号の電磁界伝送モードを、マイクロストリップ線路31に適合する伝送モードに変換する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の接地導体と、
積層方向における両端の接地導体に挟まれた誘電体領域と、
前記誘電体領域の表面に表層信号線を有し、前記積層方向と直交する直交方向に延びるマイクロストリップ線路と、
前記誘電体領域の内部に内層信号線を有し、前記直交方向に延びるストリップ線路と、
前記マイクロストリップ線路が出力する高周波信号の電磁界の伝送モードを、前記ストリップ線路に適合すべき伝送モードに変換する変換部と、
を備え、
前記変換部は、
前記マイクロストリップ線路の延びる方向に前記マイクロストリップ線路から延び、前記マイクロストリップ線路の出力する高周波信号における電界の前記表層信号線の線幅方向に沿う第1の幅方向成分を、前記マイクロストリップ線路の延びる方向へ遠ざかるに従って徐々に増やす第1の変換線路と、
前記第1の変換線路に接続し、前記誘電体領域の前記表面から前記誘電体領域の内部へ前記積層方向に延びる縦同軸状線路と、
前記誘電体領域の前記内部で前記ストリップ線路の延びる方向に前記ストリップ線路から前記縦同軸状線路に向かって延びて前記縦同軸状線路に接続し、前記縦同軸状線路の出力する高周波信号における電界の前記内層信号線の線幅方向に沿う第2の幅方向成分を、前記縦同軸状線路から前記ストリップ線路に向かって遠ざかるに従って徐々に減らす第2の変換線路と、
を備える高周波多層基板。
【請求項2】
前記変換部は、
前記ストリップ線路が出力する高周波信号の電磁界の伝送モードを、前記マイクロストリップ線路に適合すべき伝送モードに変換する変換線路として機能し、
前記第2の変換線路は、
前記ストリップ線路の出力する高周波信号における電界の前記第2の幅方向成分を、前記縦同軸状線路に向かって前記ストリップ線路から遠ざかるに従って徐々に増やし、
前記第1の変換線路は、
前記縦同軸状線路の出力する高周波信号における電界の前記第1の幅方向成分を、前記マイクロストリップ線路に向かって前記縦同軸状線路から遠ざかるに従って徐々に減らす請求項1に記載の高周波多層基板。
【請求項3】
前記表層信号線は、
前記縦同軸状線路まで延びて前記縦同軸状線路に接続しており、
前記第1の変換線路は、
前記複数の接地導体のうちの第1の接地導体の第1の部分が前記表層信号線の両側のうち一方の側に配置され、前記第1の接地導体の第2の部分が他方の側に配置され、前記表層信号線から前記第1の部分及び第2の部分までの前記表層信号線の線幅方向における各距離が、前記縦同軸状線路に向かうに従って次第に短くなり、
前記内層信号線は、
前記縦同軸状線路まで延びて前記縦同軸状線路に接続しており、
前記第2の変換線路は、
前記内層信号線の延びる方向を法線とする断面において、前記内層信号線が前記複数の接地導体によって囲まれているとともに、前記ストリップ線路との接続箇所ではトリプレート構造であり、前記縦同軸状線路との接続箇所では同軸状線路構造である請求項1または請求項2に記載の高周波多層基板。
【請求項4】
前記誘電体領域は、
前記内層信号線から、前記積層方向における両端の接地導体のうちの一方の接地導体に前記積層方向に沿って向かう第1の厚さと、
前記内層信号線から、前記積層方向における両端の接地導体のうちの他方の接地導体に前記積層方向に沿って向かう第2の厚さとが、
非対称である請求項1または請求項2に記載の高周波多層基板。
【請求項5】
前記内層信号線の線幅を前記表層信号線の線幅で除した値は、2/3よりも大きく1.1以下である請求項4に記載の高周波多層基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広帯域で反射特性が改善された、ストリップ線路とマイクロストリップ線路との接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波基板では、小型高密度化を実現するために、基板を多層化して高周波配線を基板内に通す、トリプレート構造のストリップ線路が多用されている。
多層化した基板内層におけるトリプレート構造のストリップ線路は、配線多層化を利用することで、回路接続の自由度を上げる事ができる。
さらに、基板内層におけるトリプレート構造のストリップ線路は、内層に分布定数回路(例えばフィルター回路)の形成も可能であるので、高周波回路の大幅な小型高密度化が実現できる。
【0003】
多層高周波基板では、回路部品を基板表面に実装する場合や、外部装置と多層高周波基板とを接続する場合に、高周波配線を基板表面層に出す必要がある。
基板表面の高周波配線にはマイクロストリップ線路が使用される。
このため、高周波多層基板では、ストリップ線路とマイクロストリップ線路とを接続する接続部が必要である。
【0004】
接続部に関し、内部がメッキされたスルーホールによって、ストリップ線路とマイクロストリップ線路とを接続する方法が知られている。内部がメッキされたスルーホール導体が、多層基板を垂直に貫通して、内層のトリプレート構造のストリップ線路の信号線と、表面層のマイクロストリップ線路の信号線とを接続する。
【0005】
内部がメッキされたスルーホールを用いる上記接続方法は、表面層のマイクロストリップ線路と、内層のトリプレート構造のストリップ線路との間の伝送線路形状(信号線)の急激な変化により、一方の伝送線路を伝搬する電磁界が他方の伝送線路へスムースに伝達できない結果、信号反射が大きいという課題が生じ得る。伝送線路の接続部の電磁界分布の解析は容易ではないため、従来は、回路モデルに置き換えて検討されてきた。回路モデルでは、2つの伝送線路である、内層のトリプレート構造ストリップ線路と、表面層のマイクロストリップ線路の、伝送インピーダンスを一致(例えば50Ω)させて、スムースに伝送させる。この2つの伝送線路の接続部での形状の急激な変化を、回路モデルでは、接続部にインピーダンス素子が付加されたとして、このインピーダンス不整合が、信号反射が大きい要因と考えてきた。
【0006】
高周波伝送回路を形成するための高周波多層基板の製造工程を説明する。
高周波多層基板の製造工程には、内層工程と外層工程が有る。
最初に、内層工程で、内面基板の導体層のエッチングを行い、配線やグランドのパターンを形成し、その後、各基板のパターン位置を合わせ、プレプリグ材(絶縁層)を挟んで積層し、プレス成型される。
その後、外層工程で、ドリル加工、スルーホールメッキ、外層導体層のエッチングによるパターン形成、印刷や外形加工等されて、多層基板が完成する。
【0007】
従来の手法(例えば特許文献1)では、信号反射が大きい原因として、伝送線路の変換部の導体スルーホールが下層まで貫通している構造が主原因となるインピーダンス不整合としている。
特許文献1の高周波多層基板では、接続部の貫通スルーホールのストリップ線路の中心導体より下層の部分は、ストリップ線路とマイクロストリップ線路とを連結するためには不要で、この不要な導体部分はスタブとして機能する(接続部にインピーダンス素子として浮遊容量が付加された)事が、信号反射が大きい原因と考えている。そのため、スルーホールに連結し内部に導体層を有さず、終端が平面である絶縁孔を設ける事により、信号反射が大きくならないとある。スタブとして機能する不要な導体部分が、接続部に付加されたインピーダンス素子であると考えて、それを物理的に除去するという対策である。
しかし、通常の外層工程に加えて、スルーホール導体部の削り加工工程の追加が必要であるので、高周波多層基板の製造のための工数および時間が、標準の工数および時間に比べて増大するという課題が有る。
【0008】
また、別の従来技術(例えば特許文献2)では、多層基板と垂直に接続する同軸線路と、トリプレート構造のストリップ線路との接続の形態が示されている。
特許文献2でも、上記の接続形態において信号反射が大きい原因が、伝送線路の変換部のスルーホール導体が下層まで貫通している構造が主原因となるインピーダンス不整合であるとする。
このインピーダンス不整合への対処として、特許文献2では、貫通しているスルーホール導体の最下面に、λ/4(λ:波長)長さのスタブパターン(整合回路)を追加することでインピーダンス整合を図る構造が採用されている。
このため、そのスタブ長で決まる整合条件である特定の周波数においては、反射を無くすことが可能となる。
しかし、整合条件は特定周波数に限定されるため、そもそも広い帯域での整合を得る事ができるものではない。
【0009】
上記で述べた従来技術(特許文献1)において、ストリップ線路と、マイクロストリップ線路の伝送インピーダンスを一致(例えば50Ω)させるのが、一般的な方法である。
【0010】
その場合、それぞれの伝送線路の信号線幅を比べると、特許文献1の図1等にも示されるように、表面層のマイクロストリップ線路の伝送幅に対して、内層のトリプレート構造ストリップ線路の伝線幅の方が細くなる。基板の誘電率に依存するものの、1/4から1/2程度までにストリップ線路幅が細くなる。
エッチング精度には限界があり、限界以下の細い線幅では、製造ばらつきによる課題が生ずる。内層のトリプレート構造のストリップ線路を使った、分布定数回路(例えばフィルター回路)を形成する場合、エッチング精度が不足する事によるパターン寸法(線幅や距離)のばらつきが回路構成部のインピーダンスのばらつきをもたらす結果、回路特性(フィルター回路では、中心周波数や透過特性等)に、ばらつきが生じてしまう課題が有る。ストリップ線路の線幅は、マイクロストリップ線路の線幅と同様に幅広として、エッチング精度の影響を受けない様にすることも重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4585587号
【特許文献2】特許第6305066号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本開示は、追加の加工が無く製造しやすく、内層ストリップ線路の分布定数回路の特性ばらつきを抑え、かつ、広帯域で反射の少ない、インピーダンス整合が取れる高周波多層基板の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示に係る高周波多層基板は、
積層された複数の接地導体と、
積層方向における両端の接地導体に挟まれた誘電体領域と、
前記誘電体領域の表面に表層信号線を有し、前記積層方向と直交する直交方向に延びるマイクロストリップ線路と、
前記誘電体領域の内部に内層信号線を有し、前記直交方向に延びるストリップ線路と、
前記マイクロストリップ線路が出力する高周波信号の電磁界の伝送モードを、前記ストリップ線路に適合すべき伝送モードに変換する変換部と、
を備え、
前記ストリップ線路は、その内層信号線をはさむ上下の接地面の距離、即ち、誘電体厚さを多層基板の複数層数を使用することによって適切に確保してあり、
前記変換部は、
前記マイクロストリップ線路の延びる方向に前記マイクロストリップ線路から延び、前記マイクロストリップ線路の出力する高周波信号における電界の前記表層信号線の幅方向に沿う第1の幅方向成分を、前記マイクロストリップ線路の延びる方向へ遠ざかるに従って徐々に増やす第1の変換線路と、
前記第1の変換線路に接続し、前記誘電体領域の前記表面から前記誘電体領域の内部へ前記積層方向に延びる縦同軸状線路と、
前記誘電体領域の前記内部で前記ストリップ線路の延びる方向に前記ストリップ線路から前記縦同軸状線路に向かって延びて前記縦同軸状線路に接続し、前記縦同軸状線路の出力する高周波信号における電界の前記内層信号線の幅方向に沿う第2の幅方向成分を、前記縦同軸状線路から前記ストリップ線路に向かって遠ざかるに従って徐々に減らす第2の変換線路と、
を備える。
【発明の効果】
【0014】
本開示の高周波多層基板では、変換部を有するため、変換部によって電磁界が滑らかに伝送変換される。このため、広帯域で反射の少ない、インピーダンス整合が取れる高周波多層基板が提供できる。また、本開示の高周波多層基板によれば、表層信号線の幅と内層信号線の幅とを同等である。マイクロストリップ線路の信号幅に比べて信号線の幅が小さくなるストリップ線路の信号線について、本開示の高周波多層基板は、ストリップ線路の誘電体厚さを適切に確保することにより広いストリップ線路の信号線の幅を確保できる。よって、内層ストリップ線路の分布定数回路の特性ばらつきを抑える事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態1の図で、一部を断面とした高周波多層基板100を示す斜視図。
図2】実施の形態1の図で、高周波多層基板100の上面図及び断面図。
図3】実施の形態1の図で、各接地導体の平面図。
図4】実施の形態1の図で、各線路の斜視図。
図5】実施の形態1の図で、各線路の断面における電界のイメージを示す図。
図6】実施の形態1の図で、テーパー形状に代替可能な曲線形状を示す図。
図7】実施の形態1の図で、変形例1の高周波多層基板100-1の一部を断面とした斜視図。
図8】実施の形態1の図で、変形例1の高周波多層基板100-1の上面図及び断面図。
図9】実施の形態1の図で、変形例1である高周波多層基板100-1の各接地導体おける貫通スルーホール34a付近を示す図。
図10】実施の形態1の図で、変形例2である高周波多層基板100-2を示す、一部を断面とした斜視図。
図11】実施の形態1の図で、変形例3である高周波多層基板100-3を示す、一部を断面とした斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態の説明および図面において、同じ要素および対応する要素には同じ符号を付している。同じ符号が付された要素の説明は、適宜に省略または簡略化する。
【0017】
実施の形態1.
***構成の説明***
以下、図1から図5を用いて実施の形態1の高周波多層基板100を説明する。
図1は、一部を断面とした高周波多層基板100の斜視図である。
図2は、高周波多層基板100の上面図および断面図である。
断面図は図1のpqrsに対応している。
図3は、高周波多層基板100における各接地導体の平面視を示し、各接地導体を-Z方向へ見た図である。
図4は、各線路の斜視図を示している。
図5は、各線路の断面における電界のイメージを示している。
【0018】
図2のa-a断面は、図4(a),図5(a)に対応し、
図2のb1-b1断面、b2-b2断面は、図4(b),図5(b)に対応し、
図2のc1-c1断面、c2-c2断面は、図4(c),図5(c)に対応し、
図2のd-d断面は、図4(d),図5(d)に対応する。
【0019】
図1に示す断面pqrsは、高周波多層基板100で左右につながるマイクロストリップ線路31とストリップ線路37との表層信号線31a、内層信号線37aの中心で切断している。高周波多層基板100では、接地導体の導体層が5層、誘電体領域は4層である。なお、高周波多層基板100は、一般的に使用されるガラスエポキシ多層基板を想定する。
【0020】
(方向の定義)
図1にはXYZ座標を示している。+X方向あるいは-X方向が、横方向である。+Z方向あるいは-Z方向が、縦方向である。縦方向は、上下方向でもある。+Z方向は上方向、Z方向は下方向である。図1左側には、上表面層のマイクロストリップ線路31を示しいる。図1右側は、内層のストリップ線路37を示している。
【0021】
(高周波多層基板100の構成)
高周波多層基板100は、積層された5枚の接地導体と、誘電体領域と、マイクロストリップ線路31と、トリプレート構造のストリップ線路37と、変換部30とを備えている。誘電体領域とは、第1の誘電体層21から第4の誘電体層24の全体である。
接地導体の数は一例であり、5枚に限定されない。
変換部30は、マイクロストリップ線路31からストリップ線路37へ伝送される高周波の電磁界の伝送モードを、ストリップ線路37に適合すべき伝送モードに変換し、また、ストリップ線路37からマイクロストリップ線路31へ伝送される高周波の電磁界の伝送モードを、マイクロストリップ線路31に適合すべき伝送モードに変換する。
図2に示すように、変換部30は、第1のテーパー部32、半割同軸状線路33、縦方向の同軸状線路34、横方向の同軸状線路35、第2のテーパー部36を備えている。
【0022】
(変換部30)
高周波多層基板100の特徴は、マイクロストリップ線路31と、トリプレート構造のストリップ線路37とに関する変換部30にある。変換部30のマイクロストリップ線路31側では、第1のテーパー部32によって、マイクロストリップ線路31の構成が、縦方向の同軸状線路34に向かうに従って徐々に半割同軸状線路33に変換される。マイクロストリップ線路31の表層信号線31aの線幅W31aは、マイクロストリップ線路31から縦方向の同軸状線路34に至るまで、同一の線幅である。
同様に、変換部30のストリップ線路37側では、第2のテーパー部36によって、ストリップ線路37の構成が、縦方向の同軸状線路34に向かう従って、徐々に横方向の同軸状線路35に変換される。トリプレート構造のストリップ線路37の内層信号線37aの線幅W37aは、ストリップ線路37から縦方向の同軸状線路34に至るまで、同一の線幅である。
【0023】
(変換部30の各伝送線路の接続の関係)
上表面層のマイクロストリップ線路31と、内層のストリップ線路37とは、変換部30を介して接続される。表層と内層との接続のため、垂直の貫通スルーホール34aで信号線(表層信号線31aと内層信号線37a)を接続する事が必須となる。
貫通スルーホール34aは、周りの接地スルーホール51で、縦方向の同軸状線路34
の構造になる。このため、変換部30は、「マイクロストリップ線路31―同軸線路(半割同軸状線路を含む)-ストリップ線路37」という伝送線路変換回路となる。
水平から垂直に直角に伝送方向を変化させる部位は、同軸線路の構成で接続されていれば伝送方向の変化であれば、同じ電磁界モードでの変化であり、電磁界は伝送対応可能である。このため、変換部30は、半割同軸状線路33、縦方向の同軸状線路34、横方向の同軸状線路35の3種の同軸状伝送線路と、その両側の第1のテーパー部3及び第2のテーパー部36の5つの部位による変換器構成をとることで、電磁界は滑らかに伝送される。
【0024】
(マイクロストリップ線路31)
図4(a),図4(b)を参照してマイクロストリップ線路31を説明する。図4(a)には、高周波多層基板100のマイクロストリップ線路31を示す。マイクロストリップ線路31は、表層信号線31a、第1の誘電体層21、第2の接地導体12から構成される。図5(a)は、マイクロストリップ線路31に発生する電界のイメージを矢印で示している。他の図の矢印も電界を示している。
【0025】
(第1のテーパー部32)
図2に示すように、マイクロストリップ線路31は、第1のテーパー部32を介して、半割同軸状線路33に形状が変化する。図3の第1の接地導体11において、「p1-p2」及び「p3-p4」で、テーパー形状を形成している。
半割同軸状線路33は、グランデッドコプレーナ構造とも呼ばれる。マイクロストリップ線路31と第1のテーパー部32の接続部分は、図4(a)の構成であり、表層信号線31aの両側の第1の接地導体11は、表層信号線31aから十分に離れている。ここで第1のテーパー部32では、半割同軸状線路33に向かうに従って、両側の第1の接地導体11と表層信号線31aとの隙間が、テーパー状に狭くなっていき、半割同軸状線路33(グランデッドコプレーナ構造)の形状に近づいていく。第1のテーパー部32は、半割同軸状線路33との接続箇所では、グランデッドコプレーナ構造である。図5(b)は、半割同軸状線路33(グランデッドコプレーナ構造)に発生する電界のイメージを矢印で示している。マイクロストリップ線路31から半割同軸状線路33(グランデッドコプレーナ構造)に形状変化することにより、電磁界分布が、図5(a)から図5(b)を経過して、図5(e)のように変化する。図5(e)は、半割同軸状線路33における電磁界の分布を、半割同軸として模式的に示した図である。すなわち、電磁界分布は、マイクロストリップ線路31の表層信号線31aの真下の誘電体部分に集中している状態(図5(a))から、マイクロストリップ線路31から離れるに従って、だんだん左右横方向にも広がって行く。そして、最後は、電磁界分布は、半割同軸状線路33の表層信号線31aの下と左右の誘電体部分とに存在する分布に変化する。
【0026】
(半割同軸状線路33)
半割同軸状線路33(グランデッドコプレーナ構造)の形状は、図4(b)に示している。図4(b)に示すように、グランデッドコプレーナ構造は、表層信号線31aと隙間を空けて両側に第1の接地導体11、第1の誘電体層21と、第2の接地導体12で形成されている。第1の接地導体11と第2の接地導体12とは、複数の接地スルーホール51で接続されている。第1のテーパー部32の説明で述べたように、グランデッドコプレーナ構造では、表層信号線31aの下及び左右に接地導体があるため、電磁界は下と左右の誘電体部分に存在する。
【0027】
(縦方向の同軸状線路34)
縦方向の同軸状線路34の構成を説明する。縦方向の同軸状線路34は、貫通スルーホール34aおよび貫通スルーホール34aを囲む、第1の接地導体11から第5の接地導体15からなる。貫通スルーホール34aは、最上層の第1の接地導体11から、最下層の第5の接地導体15まで貫通している。貫通スルーホール34aは信号線である。貫通スルーホール34aを取り囲む第1の接地導体11から第5の接地導体15の5つの接地導体は、多数の接地スルーホール51で電気的に互いに接続されている。図5(f)は、縦方向の同軸状線路34における電磁界の分布を、同軸として模式的に示した図である。縦方向の同軸状線路34の電磁界分布は、中心導体と外導体の間の誘電体層で周方向に均一に分布する形状(軸対称分布)である。信号線である貫通スルーホール34aは、最上層で、半割同軸状線路33の表層信号線31aと接続し、内層の第3導体層(第3の接地導体13の層)で、横方向の同軸状線路35の内層信号線37aと接続している。図1では、貫通スルーホール34aを中心に、表層信号線31aは-X方向で、内層信号線37aは+X方向の、180度の直線状に伸びているが、縦方向の同軸状線路34の電磁界分布は軸対称分布であるため、内層信号線37aはXY平面の任意の角度に選択ができる。
【0028】
(ランド41,42,43)
貫通スルーホール34aの最上面、最下面およびトリプレート信号面(内層信号線37aの存在する面)の3つの導体層には、ランド41,42,43が形成されている。それ以外の導体層はランドレスとする。
貫通スルーホール34aの最上面と最下面のランド直径は、マイクロストリップ線路31の信号線である表層信号線31aの線幅W31aと同等とする。貫通スルーホール34aのトリプレート信号面のランド直径は、ストリップ線路37の信号線である内層信号線37aの線幅W37aと同等とする。
【0029】
(横方向の同軸状線路35)
図4(c)は横方向の同軸状線路35を示している。横方向の同軸状線路35は、上部の第1の接地導体11と下部の第5の接地導体15との間の誘電体層に、内層信号線37aと、誘電体層を取り巻く形で第1から第5の接地導体面が存在する構造である。図5(c)は、横方向の同軸状線路35における電磁界の分布を示す図である。電磁界は、内層信号線37aと、上部の接地導体面と下部接地導体面との間の誘電体層に存在し、特に内層信号線37aの真上と真下に集中している。
【0030】
(第2のテーパー部36)
図4(c)及び図4(d)は、第2のテーパー部36の形状をも示している。図3の第2の接地導体12、第3の接地導体13及び第4の接地導体14において、「q1-q2」及び「q3-q4」で、テーパー形状を形成している。図2に示すように、横方向の同軸状線路35は、第2のテーパー部36を介して、ストリップ線路37に形状が変化する。第2のテーパー部36と横方向の同軸状線路35の接続部分は、横方向の同軸状線路35の形状(図4(c))であり、第2のテーパー部36とストリップ線路37の接続部分は、ストリップ線路37の形状(図4(d))である。ストリップ線路37の形状を説明する。図4(d)に示すように、ストリップ線路37は、内層信号線37aと、内層信号線37aを間に挟む第1の接地導体11及び第5の接地導体15と、第1の接地導体11及び第5の接地導体15で挟まれる誘電体層と、で構成されている。上面の第1の接地導体11と、下面の第5の接地導体15も、多数の接地スルーホール51で接続されている。ストリップ線路37では、内層信号線37aの両側の接地導体12~14は十分に離れている。これに対して、第2のテーパー部36では、内層信号線37aと接地導体12~15との隙間(距離)は、横方向の同軸状線路35に向かうに従って、接地導体12~15がテーパー状に狭くなるため、横方向の同軸状線路35との接続箇所で、横方向の同軸状線路35の形状になる。この形状変化を横方向の同軸状線路35からストリップ線路37に向かってみた場合、電磁界分布は、図5(c)から図5(d)へと変化する。すなわり、横方向の同軸状線路35の内層信号線37aの上下と、左右の誘電体部分に存在する分布(図5(cd))から、次第に内層信号線37aの上下に存在する分布(図5(d))に変化する。
【0031】
(ストリップ線路37)
ストリップ線路37の構成及び電磁界の分布は、第2のテーパー部36の説明で述べたとおりである。
第1の変換経路及び第2の変換経路では、各接地導体のテーパー形状を用いて、高周波信号の電磁界の伝送モードを徐々に変換している。伝送モードを徐々に変換するには、テーパー形状に限らず、各接地導体の形状が「滑らかに変化」すればよい。図6は「滑らかに変化」を説明する図である。図1から図5に示した高周波多層基板100では、第1の接地導体11、第2の接地導体12、第3の接地導体13及び第4の接地導体14のテーパー形状によって、高周波信号の電磁界の伝送モードが徐々に変換される。図6では、「滑らかに変化」する形状として曲線形状を示している。図6の第1の接地導体11では、マイクロストリップ線路31における幅W2が、曲線形状により、半割同軸状線路33において幅W1となる。第2の接地導体12から第4の接地導体14についても同様である。曲線形状の場合も、テーパー形状と同様に、高周波信号の電磁界の伝送モードが徐々に変換される。
【0032】
***高周波多層基板100の効果***
高周波多層基板100は変換部30を備えているので、マイクロストリップ線路31からストリップ線路37へ反射を低減した状態で高周波信号を伝送できると共に、ストリップ線路37からマイクロストリップ線路31へ反射を低減した状態で高周波信号を伝送できる。
【0033】
<変形例1>
図7から図9は高周波多層基板100の変形例の高周波多層基板100-1を示す図である。高周波多層基板100-1は6枚の接地導体を備え、5層の誘電体層からなる。
図7は、一部を断面とした高周波多層基板100-1を示す斜視図である。
図8は、高周波多層基板100-1の上面図及び断面図である。
図9は、高周波多層基板100-1の各接地導体おける貫通スルーホール34a付近を示す図である。
【0034】
(誘電体の厚さ)
図8で後述する誘電体の厚さH1、H2を調整することで、表層信号線31aの線幅W31aと、内層信号線37aの線幅W37aとを、同等にすることができる。
図7に示している表層信号線31aの線幅W31aと、内層信号線37aの線幅W37aとは、同等である。例えば、線幅W37aを線幅W31aで除した値は、2/3よりも大きく1.1以下である。
すなわち、
2/3<[W37a/W31a]≦1.1である。
【0035】
以下に具体的に説明する。上表面層のマイクロストリップ線路31と、内層のトリプレート構造のストリップ線路37とは、伝送インピーダンスが一致(例えば50Ω)するように配線パターンが設計される。誘電体層の厚さと誘電率から、線幅が求められる。
内層にある導体層を除去する事により、トリプレート構造ストリップ線路37の誘電体を厚くする構造とする。この構造により、トリプレート構造ストリップ線路37の内層信号線37aの線幅W37aを、上表面層のマイクロストリップ線路31の表層信号線31aの線幅W31aと同じ、あるいは、同等にすることができる。
誘電体層の厚さは、基板枚数の1,2,…と整数単位でしか変化できないが、上下の非対象を含めると、1,1.5、2、2.5、3,…と半整数単位で調整可能となる。
図8では、トリプレート構造のストリップ線路2(内層)の上の誘電体厚さは3層分(第1~第3の誘電体層)、ストリップ線路2の下の誘電体厚さは2層分(第4・第5誘電体層)と厚くしている。この場合、上下の誘電体厚さは非対称となるが、上下対称の場合の2.5層厚と同等である。
【0036】
(誘電体層の厚さ)
図8に示すように、内層信号線37aから表層信号線31aに向かう方向である上方向への内層信号線37aを始点とする誘電体層の厚さをH1とする。
上方向の反対方向である下方向への内層信号線37aを始点とする誘電体層の厚さをH2とする。このとき、図8に示すように、H1とH2とは、内層信号線37aに対して上下方向で非対称である。以上、高周波多層基板100-1を説明した。
【0037】
<変形例2>
図10は、変形例2の高周波多層基板100-2の構成を示す。高周波多層基板100-2は、4層基板での、ストリップ線路2とマイクロストリップ線路3との接続構造を示す。基板材料の誘電率によって、適切な信号線の線幅や積層基板枚数も変わる。ガラスエポキシ基板と比べ、基板材料の誘電率が小さい場合には、マイクロストリップ線路31の表層信号線31aは太くなり、エッチング精度の影響を受けにくくなる。加えて、基板材料の誘電率が小さいと、表面層の表層信号線31aの線幅に対して、内層のトリプレート構造ストリップ線路37の内層信号線37aの線幅の方が細くなる比率が小さい。すなわち、内層信号線37aの線幅があまり細くならない。このことから、誘電率が小さい場合には、誘電体厚さをあまり厚くしなくてもエッチング精度の影響を受けない内層のトリプレート構造ストリップ線路を形成できる。よって、多層基板の基板積層枚数を少なくできる事につながる。基板の積層数削減は基板コスト削減と直結し、最も低コストである導体層が4層の多層基板(4層基板)の使用が可能となる。
【0038】
<変形例3>
図11は、変形例3の高周波多層基板100-3を示す。高周波多層基板100-3では、高周波伝送の多層基板の下に、その他の信号配線層の信号配線部や電源供給用の層の電源配線部を重ねた多層基板の構成である。高周波多層基板100-3は、信号配線部と電源配線部との少なくとも1つを備える。
高周波多層基板には、伝送線路や分布定数回路といった基板パターンによる回路の他に、高周波用部品やその他部品(信号処理や電源)の電子部品を表面実装して、装置の小型軽量化を図る事が多い。
電子部品を表面実装が有る場合、これら多種の電子部品への電源供給配線や、高周波伝送でない他の信号配線が必要となる。その場合には、高周波伝送回路ブロックと、それ以外の回路ブロックを基板上に配置して接地スルーホール51を多用してブロック区切る。そして、高周波伝送の多層基板の下に、その他の信号配線層や電源供給用の層を重ねた多層基板が用いられる。
図11の高周波多層基板100-3は、高周波伝送部の下に、信号配線層である信号配線部や電源供給用層の電源配線部が積層された多層基板である。高周波多層基板100-3では、縦方向の同軸状線路34の接地スルーホール51は、最下層の第8の接地導体18まで貫通したままとした多層基板である。
以上、高周波多層基板100-3を説明した。
【0039】
以上に説明した高周波多層基板100及び各変形例について、内層にあるトリプレート構造ストリップ線路37と、上表面層のマイクロストリップ線路31と変換部30に関し、特徴をまとめておく。
(1)上表面層のマイクロストリップ線路31と、トリプレート構造ストリップ線路37の、伝送インピーダンスを一致(例えば50Ω)させて配線パターンを設計する。誘電体層の厚さと誘電率から、配線(信号線)幅が決められる。
内層にあるトリプレート構造のストリップ線路37は、上下の誘電体層間の導体層をエッチングで除去して誘電体を厚くする。これにより、マイクロストリップ線路31とトリプレート構造ストリップ線路37との伝送インピーダンスを一致(例えば50Ω)させ時、トリプレート構造ストリップ線路37の内層信号線37aの線幅W37aは、上表面層のマイクロストリップ線路31の表層信号線31aの線幅W31aと同等の広さとする事が出来る。トリプレート構造ストリップ線路37の上下の誘電体を厚くする場合、厚さは上下非対称であっても良い。
(2)変換部30は、半割同軸状線路33、縦方向の同軸状線路34、横方向の同軸状線路35の3種の同軸状伝送線路と、その両側の第1のテーパー部32、第2のテーパー部36の5つの部位により構成されている。マイクロストリップ線路31の表層信号線31aは、変換部30の第1のテーパー部32や半割同軸状線路33でも、表層信号線31aは同じ線幅W31aのままとする。トリプレート構造のストリップ線路37の内層信号線37aも、第2のテーパー部36や横方向の同軸状線路35でも、内層信号線37aは同じ線幅W37aのままとする。
(3)内層にあるトリプレート構造のストリップ線路は、接続部である縦方向の同軸状線路の付近で、テーパー形状に、横方向の同軸状線路(トリプレート構造ストリップ線路の信号線を囲む様に、複数の接地導体を配置)を形成する。
(4)接続部である縦方向の同軸状線路は、信号線スルーホールと、信号線スルーホールを囲む複数の接地導体からなる、垂直方向の同軸状構造である。信号線スルーホールは、最下層の導体層まで貫通したままにしておく。信号線スルーホールは、削り取ったり、再下層面にスタブ回路等を付け加えたりしない構成とする。貫通スルーホール34aの最上面、最下面、トリプレート信号面の導体層には,それぞれランド41,42,43を設ける。しかし、それ以外の導体層では、貫通スルーホール.34aはランドレスとする。
(5)貫通スルーホール34aの最上面と最下面のランド41,43の直径を、マイクロストリップの表層信号線31aの線幅W31aと同じ長さとする。トリプレート信号面の導体層のランド42の直径も、線幅W31aと同等の長さする。
【0040】
トリプレート構造のストリップ線路37の内層信号線37aの層から、貫通した最下面の導体層まで導体が伸びており、この導体長(スタブ長)がλ/4(λは波長)程度になる周波数帯より高い周波数では、反射の影響が出てくる。しかし、それより低い周波数であれば、一般に使われる広い高周波帯域での反射の影響は無視できるのは、前述のとおりである。
【0041】
以上に説明した、変形例を含む高周波多層基板は以下のとおりである。
高周波多層基板100では、マイクロストリップ線路からストリップ線路への縦方向の同軸状線路を介した接続は、グランデッドコプレーナ構造、縦方向の同軸状線路および内層の横方向の同軸状構造の接続である。グランデッドコプレーナ構造は半割同軸状構造と見なせる。
加えて、マイクロストリップ線路とストリップ線路の信号線幅が同等である。また、それら信号線の線幅を直径とするランドを持つスルーホールからなる垂直方向の同軸状構造を介する接続構造の特徴から、電磁波が滑らかに伝送できる。つまり、広帯域で反射の少ない変換方式が得られる効果が有る。
なお、多層基板の通常の製造工程による、縦方向の同軸状線路の信号線であるスルーホールが下層まで貫通した構造はそのまま残している。
この貫通部による反射の影響は、貫通部の長さ(スタブ長)がλ/4(λは波長)となる周波数帯(ミリ波帯)近傍に影響は限定される。このため、一般に利用する広い高周波数帯(マイクロ波・超短波・短波・中波帯)での影響は無視できる。よって、スルーホールは下層貫通のままとして、削り取る必要は無い。
広帯域で反射の少ない接続方式が得られるため、下層面にスタブ回路等を付加して整合を取る必要は無い。
誘電体層の厚さを適切に厚くする事で、ストリップ線路幅が、マイクロストリップ線路幅と同じ、あるいは、同等に広く、エッチング精度に鈍感となる。よって、内層のトリプレート構造ストリップ線路を利用した分布定数回路の特性ばらつきが抑えられる効果がある。
従来技術では、トリプレート構造ストリップ線路の上下の誘電体厚さは、上下対称(同じ厚さ)である。これに対して、高周波多層基板100では、上下非対称も取り入れて誘電体層の厚さ設計選択肢を増やしている。これにより、高周波多層基板の構成枚数の選択肢が増え、トリプレート構造ストリップ線路幅の選択肢が増える。
多層基板の構成枚数の削減は、基板コスト低減に直結する上に、トリプレート構造ストリップ線路幅の広さ確保は特性ばらつき削減に直結するため、それぞれ選択肢が増える事はメリットとなる。
【0042】
伝送インピーダンスを一致(例えば50Ω)させる目的で、表面層のマイクロストリップ線路の信号線の幅に対して、内層のトリプレート構造ストリップ線路の信号線の幅を細くした場合には、以下の課題があった。
多層基板の表面層のマイクロストリップ線路でエッチング精度内で特性が良い(ばらつきが少ない)回路形成できたとしても、伝送インピーダンスを一致(例えば50Ω)させた内層のトリプレート構造のストリップ線路ではより細い線幅となる。
細い線幅となるストリップ線路の線幅の要求精度に対して、エッチング精度が不十分である。エッチング精度によるストリップ線路の線幅の製造ばらつきは、伝送インピーダンスのばらつきをもたらす。
変形例を含む高周波多層基板100ではマイクロストリップ線路31の表層信号線31aと、ストリップ線路70の内層信号線37aの線幅とは同等である。よって、マイクロストリップ線路31をストリップ線路70に接続する際のインピーダンスを整合できる。
【0043】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
積層された複数の接地導体と、
積層方向における両端の接地導体に挟まれた誘電体領域と、
前記誘電体領域の表面に表層信号線を有し、前記積層方向と直交する直交方向に延びるマイクロストリップ線路と、
前記誘電体領域の内部に内層信号線を有し、前記直交方向に延びるストリップ線路と、
前記マイクロストリップ線路が出力する高周波信号の電磁界の伝送モードを、前記ストリップ線路に適合すべき伝送モードに変換する変換部と、
を備え、
前記変換部は、
前記マイクロストリップ線路の延びる方向に前記マイクロストリップ線路から延び、前記マイクロストリップ線路の出力する高周波信号における電界の前記表層信号線の線幅方向に沿う第1の幅方向成分を、前記マイクロストリップ線路の延びる方向へ遠ざかるに従って徐々に増やす第1の変換線路と、
前記第1の変換線路に接続し、前記誘電体領域の前記表面から前記誘電体領域の内部へ前記積層方向に延びる縦同軸状線路と、
前記誘電体領域の前記内部で前記ストリップ線路の延びる方向に前記ストリップ線路から前記縦同軸状線路に向かって延びて前記縦同軸状線路に接続し、前記縦同軸状線路の出力する高周波信号における電界の前記内層信号線の線幅方向に沿う第2の幅方向成分を、前記縦同軸状線路から前記ストリップ線路に向かって遠ざかるに従って徐々に減らす第2の変換線路と、
を備える高周波多層基板。
(付記2)
前記変換部は、
前記ストリップ線路が出力する高周波信号の電磁界の伝送モードを、前記マイクロストリップ線路に適合すべき伝送モードに変換する変換線路として機能し、
前記第2の変換線路は、
前記ストリップ線路の出力する高周波信号における電界の前記第2の幅方向成分を、前記縦同軸状線路に向かって前記ストリップ線路から遠ざかるに従って徐々に増やし、
前記第1の変換線路は、
前記縦同軸状線路の出力する高周波信号における電界の前記第1の幅方向成分を、前記マイクロストリップ線路に向かって前記縦同軸状線路から遠ざかるに従って徐々に減らす付記1に記載の高周波多層基板。
(付記3)
前記表層信号線は、
前記縦同軸状線路まで延びて前記縦同軸状線路に接続しており、
前記第1の変換線路は、
前記複数の接地導体のうちの第1の接地導体の第1の部分が前記表層信号線の両側のうち一方の側に配置され、前記第1の接地導体の第2の部分が他方の側に配置され、前記表層信号線から前記第1の部分及び第2の部分までの前記表層信号線の線幅方向における各距離が、前記縦同軸状線路に向かうに従って次第に短くなり、
前記内層信号線は、
前記縦同軸状線路まで延びて前記縦同軸状線路に接続しており、
前記第2の変換線路は、
前記内層信号線の延びる方向を法線とする断面において、前記内層信号線が前記複数の接地導体によって囲まれているとともに、前記ストリップ線路との接続箇所ではトリプレート構造であり、前記縦同軸状線路との接続箇所では同軸状線路構造である付記1または付記2に記載の高周波多層基板。
(付記4)
前記誘電体領域は、
前記内層信号線から、前記積層方向における両端の接地導体のうちの一方の接地導体に前記積層方向に沿って向かう第1の厚さと、
前記内層信号線から、前記積層方向における両端の接地導体のうちの他方の接地導体に前記積層方向に沿って向かう第2の厚さとが、
非対称である付記1から付記3のいずれか1項に記載の高周波多層基板。
(付記5)
前記内層信号線の線幅を前記表層信号線の線幅で除した値は、2/3よりも大きく1.1以下である付記4に記載の高周波多層基板。
【0044】
以上、本開示の実施の形態及び変形例について説明した。これらの実施の形態及び変形例のうち、いくつかを組み合わせて実施してもよい。また、いずれか1つ又はいくつかを部分的に実施してもよい。なお、本開示は、以上の実施の形態及び変形例に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
W31a,W37a 線幅、11 第1の接地導体、12 第2の接地導体、13 第3の接地導体、14 第4の接地導体、15 第5の接地導体、16 第6の接地導体、21 第1の誘電体層、22 第2の誘電体層、23 第3の誘電体層、24 第4の誘電体層、25 第5の誘電体層、30 変換部、31 マイクロストリップ線路、31a 表層信号線、32 第1のテーパー部、33 半割同軸状線路、34 縦方向の同軸状線路、34a 貫通スルーホール、35 横方向の同軸状線路、36 第2のテーパー部、37 ストリップ線路、37a 内層信号線、41,42,43 ランド、51 接地スルーホール、100 高周波多層基板。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11