IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機エンジニアリング株式会社の特許一覧

特開2024-176152レーザスキャナ、出来形管理装置、出来形管理方法およびプログラム
<>
  • 特開-レーザスキャナ、出来形管理装置、出来形管理方法およびプログラム 図1
  • 特開-レーザスキャナ、出来形管理装置、出来形管理方法およびプログラム 図2
  • 特開-レーザスキャナ、出来形管理装置、出来形管理方法およびプログラム 図3
  • 特開-レーザスキャナ、出来形管理装置、出来形管理方法およびプログラム 図4
  • 特開-レーザスキャナ、出来形管理装置、出来形管理方法およびプログラム 図5
  • 特開-レーザスキャナ、出来形管理装置、出来形管理方法およびプログラム 図6
  • 特開-レーザスキャナ、出来形管理装置、出来形管理方法およびプログラム 図7
  • 特開-レーザスキャナ、出来形管理装置、出来形管理方法およびプログラム 図8
  • 特開-レーザスキャナ、出来形管理装置、出来形管理方法およびプログラム 図9
  • 特開-レーザスキャナ、出来形管理装置、出来形管理方法およびプログラム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176152
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】レーザスキャナ、出来形管理装置、出来形管理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/30 20060101AFI20241212BHJP
   E01C 23/01 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
G01B11/30 W
E01C23/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094452
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西澤 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】平 謙二
【テーマコード(参考)】
2D053
2F065
【Fターム(参考)】
2D053AA32
2D053AA36
2D053FA03
2F065AA49
2F065BB27
2F065CC40
2F065FF11
2F065GG04
2F065MM07
2F065MM16
2F065MM26
2F065PP22
(57)【要約】
【課題】 キャリブレーションにより計測精度を上げた状態で路面上の計測範囲全体の三次元座標を計測することができる、レーザスキャナを提供する。
【解決手段】 レーザスキャナ(11)は、建設機械(C)の後部に設けられ、レーザ光を路面(A)に送信して路面(A)から反射したレーザ光を受信するレーザ送受信部(114)と、路面(A)側を撮影するカメラ部(113)と、レーザ送受信部(114)によってレーザ光が送受信された路面(A)までの距離を計測する制御部(115)と、を備え、制御部(115)は、建設機械(C)の後部の路面(A)上に設けられたキャリブレーション用マーカ(M)を用いて、路面(A)までの距離の計測に関するキャリブレーションを行う。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路を移動しながら路面の舗装工事を行う建設機械の後部に設けられるレーザスキャナであって、
レーザ光を路面に送信して路面から反射したレーザ光を受信する送受信部と、
路面側を撮影するカメラ部と、
前記送受信部によってレーザ光が送受信された路面までの距離を計測する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記建設機械の後部の路面上に設けられたキャリブレーション用マーカを用いて、路面までの距離の計測に関するキャリブレーションを行う
ことを特徴とするレーザスキャナ。
【請求項2】
前記制御部は、路面までの距離の計測に関するキャリブレーションとして、
前記キャリブレーション用マーカに送受信されたレーザ光の強度に基づいたレーザ光の強度に関する第1のキャリブレーション、および、
前記キャリブレーション用マーカの撮影画像を用いた路面までの距離情報に関する第2のキャリブレーションを行う
ことを特徴とする請求項1に記載のレーザスキャナ。
【請求項3】
前記キャリブレーション用マーカは、
前記送受信部によるレーザ光の走査方向に沿ったグレースケールチャートと、
ピクセル列からなる複数の線を含むピクセル検出エリアと、を有し、
前記制御部は、
前記グレースケールチャートに送受信されたレーザ光の強度を用いて前記第1のキャリブレーションを行い、
前記ピクセル検出エリアの撮影画像における線の数と、路面までが基準距離であるときに撮影された前記ピクセル検出エリアの撮影画像における線の数とに基づいて、前記第2のキャリブレーションを行う
ことを特徴とする請求項2に記載のレーザスキャナ。
【請求項4】
トータルステーションによるレーザスキャナの追尾に利用される反射部と、
路面までの距離を示す計測距離情報を、路面舗装の出来形管理情報として送信し、前記トータルステーションによって前記反射部を用いた追尾により計測されたレーザスキャナの移動情報を受信する通信部と、を備えた
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレーザスキャナ。
【請求項5】
請求項4に記載のレーザスキャナによって計測された前記計測距離情報と前記トータルステーションによって計測された前記移動情報とを取得する情報取得部と、
前記計測距離情報および前記移動情報を用いて、路面の状態を視覚的に表す面データを生成する面データ生成部と、を備えた
ことを特徴とする出来形管理装置。
【請求項6】
出来形管理装置によって実行される出来形管理方法であって、
情報取得部が、請求項4に記載のレーザスキャナによって計測された前記計測距離情報と前記トータルステーションによって計測された前記移動情報とを取得するステップと、
面データ生成部が、前記計測距離情報および前記移動情報を用いて、路面の状態を視覚的に表す面データを生成するステップと、を備えた
ことを特徴とする出来形管理方法。
【請求項7】
コンピュータを、
請求項4に記載のレーザスキャナによって計測された前記計測距離情報と、前記トータルステーションによって計測された前記移動情報とを取得する情報取得部、
前記計測距離情報および前記移動情報を用いて、路面の状態を視覚的に表す面データを生成する面データ生成部、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザスキャナ、出来形管理装置、出来形管理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
道路の舗装修繕工事は、例えば、路面を所定の深さまで切削した切削層を形成し、切削層上に基層が敷設され、基層上に表層が敷設される。この場合、基層および表層についての厚さ、舗装修繕した幅および長さの出来形管理を行う必要がある。
例えば、特許文献1には、舗装修繕工事が行われた道路の出来形管理システムが記載されている。この出来形管理システムは、既知点(例えば、基準点)に設置されるトータルステーション(以下、TSと記載する。)と、TSとともに使用されるプリズムと、端末装置とを有している。
【0003】
TSは、道路の路面における各点について、既知点に対する各点の三次元座標を取得する。プリズムは、リモートキャッチャであり、TSと無線で接続される。TSは、作業者により道路の路面における各点に設置されたプリズムに向けて測距光を出射し、プリズムにおいて反射した反射光を受光し、出射から受光までに光波が発振した回数に基づいて、既知点に対する各点の三次元座標を取得する。端末装置は、表示画面を有する携帯情報端末であり、TSにより各点の三次元座標が取得されると、その三次元座標がTSから供給される。
【0004】
例えば、表層および基層が敷設される舗装修繕工事が行われる場合、端末装置は、表層表面の設計面データおよび各層の設計厚さを用いて、舗装道路の出来形を管理する。表層表面の設計面データには、道路の路面表面にある任意の各点についての三次元点群データが含まれる。舗装修繕工事は、表層表面の設計面データに基づいて作成される各層の設計面データと、各層の設計厚さとに基づいて行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2023-039357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載される従来の出来形管理は、プリズムを用いて路面上の複数の計測点の三次元座標をそれぞれ取得している。しかしながら、従来の出来形管理では、計測点間の高さおよび厚みを計測していないため、その部分での高さおよび厚みの計測精度が担保されないという課題があった。
【0007】
本開示は上記課題を解決するものであり、キャリブレーションにより計測精度を上げた状態で路面上の計測範囲全体の三次元座標を計測することができる、レーザスキャナを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るレーザスキャナは、道路を移動しながら路面の舗装工事を行う建設機械の後部に設けられるレーザスキャナであって、レーザ光を路面に送信して路面から反射したレーザ光を受信する送受信部と、路面側を撮影するカメラ部と、送受信部によってレーザ光が送受信された路面までの距離を計測する制御部と、を備え、制御部は、建設機械の後部の路面上に設けられたキャリブレーション用マーカを用いて、路面までの距離の計測に関するキャリブレーションを行うものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、建設機械の後部の路面上に設けられたキャリブレーション用マーカを用いて、路面までの距離の計測に関するキャリブレーションを行う。これにより、本開示に係るレーザスキャナは、キャリブレーションにより計測精度を上げた状態で路面上の計測範囲全体の三次元座標を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1Aおよび図1Bは、マーカの設置の概要を示す上面図である。
図2】実施の形態1に係るレーザスキャナを備えた出来形管理システムの構成例を示す概要図である。
図3】実施の形態1に係るレーザスキャナの構成例を示すブロック図である。
図4】キャリブレーション用マーカの例を示す上面図である。
図5】キャリブレーション用マーカのグレースケールチャートを示す上面図である。
図6】キャリブレーション用マーカのピクセル検出エリアを用いたキャリブレーションの概要を示す概要図である。
図7】実施の形態1に係る出来形管理装置の構成例を示すブロック図である。
図8】面データの表示例を示す画面図である。
図9】実施の形態1に係る出来形管理方法を示すフローチャートである。
図10】実施の形態1に係る出来形管理装置の機能を実現するハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
まず、従来の路面舗装の出来形管理を説明し、続いて、従来の出来形管理に対する実施の形態1に係る出来形管理の有効性について説明する。
図1Aは、従来の出来形管理におけるマーカM1~M4の設置例を示す上面図である。図1Aにおいて、路面Aにおける、破線で示す位置SPから、道路の長さ方向に約80m離れた破線で示す位置EPまでのエリアが、路面状態の計測エリアである。位置SPは、路面状態の計測開始地点であり、位置EPは、路面状態の計測終了地点である。路面Aの舗装は、矢印Bの方向に進行する建設機械Cにより行われる。建設機械Cは、路面舗装を行う車両であり、例えば、ロードローラである。
【0012】
従来の出来形管理では、舗装工事を行った後の路面Aが設計通りの状態であるかどうかを確認するため、路面Aの状態を計測する必要がある。路面Aの状態には、道路の幅員、路面高さ、基準点の高さ、または、道路の厚さ等がある。従来の出来形管理は、舗装前の路面Aの各点の位置座標と舗装後の路面Aの各点の位置座標とを参照して、路面Aの状態の計測精度を上げている。
【0013】
例えば、図1Aに示すように、路面Aの計測エリアの四隅の位置にマーカM1~M4を設置し、道路沿いの基準点に設置したTS100を用いて、マーカM1~M4を設置した各点の三次元座標が計測される。具体的には、作業者が、プリズムをマーカM1~M4に順次設置する。TS100は、プリズムに向けて測定光を出射し、このプリズムで測定光が反射した反射光を受光して、測定光の出射から反射光の受光までの時間差に基づいて、基準点に対するマーカM1~M4の中心位置の三次元座標を計測する。
【0014】
路面Aの各点の三次元座標を計測する作業は、作業者がプリズムをマーカM1~M4に順次設置し、プリズムが設置されたマーカの三次元座標をTS100が計測する、という煩雑な処理である。また、この作業は、TS100からプリズムに向けて出射された測定光、または、プリズムからTS100に戻る反射光を遮るものがないことが前提である。例えば、他の作業者がTS100とマーカM1~M4のそれぞれに設置されたプリズムとの間を横切って光を遮ると、計測データ抜けが発生する可能性がある。さらに、計測中はマーカM1~M4を動かせないので、この計測以外の作業を行っている作業者にとっては邪魔な存在となる。
【0015】
そこで、実施の形態1に係る出来形管理では、TSによる路面Aの各点の三次元座標を計測する作業を行うことなく、路面舗装の出来形管理を行うものである。
図1Bは実施の形態1に係る出来形管理におけるキャリブレーション用マーカMの設置を示す上面図である。図1Bにおいて、破線で示す位置SPは、路面状態の計測開始地点である。実施の形態1に係る出来形管理では、建設機械Cの後部にレーザスキャナが搭載されており、このレーザスキャナが路面Aの状態を計測する。また、キャリブレーション用マーカMは、建設機械Cの後部の路面Aに設置される。
【0016】
実施の形態1に係る出来形管理は、建設機械Cの後部に搭載されたものである。このため、従来の出来形管理のように、路面Aの複数の点の三次元座標を計測することなく路面舗装の出来形管理を行うことができる。
【0017】
また、例えば、図1Bに示すように、建設機械Cが位置SP(計測開始地点)から路面舗装を行える位置にある場合、その後部の路面Aにキャリブレーション用マーカMが設置される。これにより、レーザスキャナは、建設機械Cが路面舗装を開始する前に、キャリブレーション用マーカMを用いたキャリブレーションを済ますことができる。このため、レーザスキャナは、建設機械Cによる路面舗装と連動して路面Aの状態を正確に計測することが可能である。
【0018】
図2は、実施の形態1に係るレーザスキャナ11を備えた出来形管理システム1の構成例を示す概要図である。図2において、出来形管理システム1は、舗装された路面Aの出来形を管理するシステムであり、レーザスキャナ11、TS13、アクセスポイント14および出来形管理装置15を有する。また、キャリブレーション用マーカMは、位置SPから路面Aの舗装を行える位置にある建設機械Cの後部の路面Aに設置される。
【0019】
レーザスキャナ11は、建設機械搭載型レーザスキャナであり、図2に示すように、建設機械Cの後部、すなわち建設機械Cの進行方向とは反対側の端部に設けられる。
また、レーザスキャナ11は、路面Aの状態の計測に用いられるレーザ光を送受信する機能と、路面A側を撮影する機能とを有している。例えば、レーザスキャナ11の上部には、プリズム111が設けられる。また、レーザスキャナ11の下部には、レーザ光を送受信するための光学系112と、路面A側を撮影するためのカメラ部113とが設けられている。
【0020】
建設機械Cが矢印Bの方向へ進行すると、レーザスキャナ11は、光学系112を制御することにより、建設機械Cの移動に伴って路面Aをレーザ走査する。このレーザ走査によって路面Aの状態が計測される。
【0021】
さらに、レーザスキャナ11は、建設機械Cの後部の路面上に設けられたキャリブレーション用マーカMを用いて、路面Aまでの距離の計測に関するキャリブレーションを行うものである。例えば、レーザスキャナ11は、キャリブレーション用マーカMに送受信したレーザ光の強度に基づいて、レーザ光の強度に関する第1のキャリブレーションを行い、カメラ部113により撮影されたキャリブレーション用マーカMの撮影画像を用いて、路面Aまでの距離に関する第2のキャリブレーションを行う。
レーザスキャナ11が、キャリブレーション用マーカMを用いてキャリブレーションを行うことにより計測精度を上げた状態で、出来形管理システム1は、路面A上の計測範囲全体の三次元座標を計測することができる。
【0022】
TS13は、自動追尾型TSであり、建設機械Cとともに移動するレーザスキャナ11の移動情報を計測するものである。例えば、基準点に設置されたTS13は、一定の時間間隔(例えば、100ミリ秒間隔)で、プリズム111に向けて測定光を出射(レーザ光の送信)し、測定光がプリズム111で反射した反射光を受光(レーザ光の受信)する。そして、TS13は、測定光の出射から反射光の受光までの時間差に基づいて、基準点に対するレーザスキャナ11の三次元座標を逐次計測する。レーザスキャナ11の移動情報は、レーザスキャナ11の上記時間間隔ごとの位置情報を含む情報であり、TS13からアクセスポイント14を介してレーザスキャナ11に送信される。
【0023】
アクセスポイント14は、レーザスキャナ11、TS13および出来形管理装置15の無線通信を中継する装置であり、例えばWifi(登録商標)アクセスポイントである。Wifiのアクセスポイント14は、LAN(Local Area Network)を介して、レーザスキャナ11、TS13および出来形管理装置15の無線通信を中継する。なお、アクセスポイント14は、LANの他、無線基地局を介したWAN(Wide Area Network)、第3世代(3G)の通信方式、LTEなどの第4世代(4G)の通信方式、第5世代(5G)以降の通信方式、Bluetooth(登録商標)、特定小電力無線方式等の無線通信ネットワークを介した無線通信を中継するものであってもよい。
【0024】
出来形管理装置15は、作業者Dに操作される携帯端末であり、レーザスキャナ11が計測した路面Aの状態を示す計測距離情報およびTS13が計測したレーザスキャナ11の移動情報を取得し、計測距離情報および移動情報を用いて路面Aの状態を視覚的に表す面データを生成する。出来形管理装置15は、アクセスポイント14を介して、レーザスキャナ11とTS13との通信が可能であり、例えば、タブレット端末、スマートフォンまたはノートタイプのパーソナルコンピュータ(PC)である。
【0025】
出来形管理装置15は、上記端末装置と通信可能なサーバが備える構成要素であってもよい。例えば、端末装置は、SaaS(Software as a Service)の形態で提供される出来形管理を行うことができる。SaaSの形態で出来形管理を行う場合、端末装置には、出来形管理用の情報処理アプリケーションがインストールされていなくてよい。出来形管理用の情報処理アプリケーションは上記サーバで実行されており、端末装置は、汎用のWebブラウザ上で、上記面データ等が提供される。情報処理アプリケーションは、サーバが備える記憶部に記憶されている。
また、端末装置には、出来形管理用の情報処理アプリケーションがインストールされていてもよい。出来形管理用の情報処理アプリケーションがインストールされた端末装置では、この情報処理アプリケーションが実行されることで、出来形管理が可能となる。
【0026】
図3は、実施の形態1に係るレーザスキャナ11の構成例を示すブロック図である。図3において、レーザスキャナ11は、プリズム111、光学系112、カメラ部113、レーザ送受信部114、制御部115、通信部116および無線LANアンテナ117を備える。プリズム111は、TS13によるレーザスキャナ11の追尾に利用される反射部である。例えば、プリズム111は、全周プリズムであり、入射したレーザ光を、入射した方向へ反射させることができる光学要素である。
【0027】
光学系112は、レーザ送受信部114が出射したレーザ光LSを路面A側に送信し、路面Aで反射したレーザ光LSをレーザ送受信部114に向けて反射する。
また、光学系112は、レーザ光LSを走査するための駆動機構(図3において不図示)を有する。例えば、制御部115が制御する駆動機構が光学系112を駆動することにより、レーザ光LSは、道路幅方向に走査される。
【0028】
カメラ部113は、矢印PHで示す路面A側を撮影するカメラであり、路面A側を拡大して撮影するための望遠レンズを有する。また、カメラ部113は、レンズ画角、歪み、および被写体との距離情報についてのキャリブレーションが予め行われている。
以下の説明では、カメラ部113の1画素当たりの距離情報が0.1mm/pxであるものとする。
【0029】
レーザ送受信部114は、レーザ光LSを路面Aに送信して、路面Aから反射してきたレーザ光LSを受信する送受信部である。また、レーザ送受信部114は、制御部115からの制御により、レーザ光LSの出力強度を変更可能である。さらに、レーザ送受信部114は、予め定められた一定の時間間隔でレーザ光LSを送受信する。
【0030】
制御部115は、レーザ送受信部114によってレーザ光が送受信された路面Aまでの距離を計測する。例えば、制御部115は、レーザ送受信部114がレーザ光を送信してから路面Aで反射したレーザ光LSを受信するまでの時間に基づいて、路面Aまでの距離(高さ)を計測するものである。制御部115が、レーザ光LSを道路幅方向に走査することで、路面Aの幅方向の起伏を計測し、この起伏を表す計測データが、レーザ光LSを送受信する上記時間間隔で順次計測される。制御部115は、レーザスキャナ11の移動情報を用いて矢印B方向のレーザスキャナ11の移動位置を特定し、レーザスキャナ11の移動位置ごとの路面Aの幅方向の起伏を表す計測データを統合することで、路面A全体の起伏を求めることが可能である。
【0031】
制御部115は、レーザ送受信部114がキャリブレーション用マーカMに送受信したレーザ光の強度に基づいて、レーザ光の強度に関する第1のキャリブレーションを行い、キャリブレーション用マーカMの撮影画像を用いて、路面Aまでの距離に関する第2のキャリブレーションを行う。第1のキャリブレーションは、例えば、キャリブレーション用マーカMに向けて出射されたレーザ光LSの出力強度と、キャリブレーション用マーカMにおける反射率に応じたレーザ光LS(反射光)の受信強度との差分に基づいて算出したキャリブレーション値を用いて、レーザ光LSの出力強度を補正する処理である。第2のキャリブレーションは、キャリブレーション用マーカMの撮影画像から特定されるキャリブレーション用マーカMまでの距離情報に応じたキャリブレーション値を用いて、路面Aまでの距離情報を補正する処理である。
【0032】
通信部116は、無線LANアンテナ117により、路面Aまでの距離を示す計測距離情報を、路面Aを舗装した道路の出来形管理情報として送信し、TS13が計測したレーザスキャナ11の移動情報を受信する。レーザスキャナ11の移動情報は、通信部116から制御部115に出力され、制御部115によって図3において不図示のメモリに記憶される。無線LANアンテナ117は、アクセスポイント14との無線通信に用いられるアンテナである。
【0033】
また、通信部116は、GNSS(全世界測位システム)受信機としての機能も有しており、GNSS衛星から受信したGNSS時刻情報を、制御部115に出力する。
制御部115は、レーザスキャナ11の移動情報、および、路面Aまでの計測距離情報に対してGNSS時刻情報が紐付けられた計測情報を、上記メモリに記憶する。
制御部115は、通信部116および無線LANアンテナ117により、メモリに記憶した上記計測情報を、出来形管理装置15に送信する。出来形管理装置15は、アクセスポイント14を介して計測情報を取得すると、取得した計測情報を用いて面データを生成することができる。
【0034】
図4は、キャリブレーション用マーカMの例を示す上面図である。キャリブレーション用マーカMは、横方向に長い帯状の外形を有しており、図4において、長手方向が300mm、幅方向が50mmの大きさである。また、キャリブレーション用マーカMの幅方向は、二つに区分けされており、区分けされた一方の領域にグレースケールチャートGSが形成されており、もう一方の領域にはピクセル検出エリアPAが設けられている。
グレースケールチャートGSは、図4に示すように、両端部が白く、中央部に向かうにつれて黒くなるよう形成されている。ピクセル検出エリアPAには、ピクセル列からなる複数の線が描かれている。
【0035】
レーザスキャナ11は、路面Aまでの距離を計測するときに、レーザ光LSを路面Aの幅方向に走査する。一方、キャリブレーション用マーカMは、その長手方向が路面Aの幅方向に設置される。これにより、グレースケールチャートGSはレーザ光LSの走査方向に沿ったものとなる。さらに、キャリブレーション用マーカMは、ピクセル検出エリアPAがカメラ部113と対向する位置に設置される。これにより、ピクセル検出エリアPAは、カメラ部113の撮影範囲内に含まれる。
【0036】
図5は、キャリブレーション用マーカMにおけるグレースケールチャートGSを示す上面図である。図5に示すように、グレースケールチャートGSは、道路面に近い両端部が白く、中央部に向かうにつれて黒くなるよう形成されているので、両端部のレーザ光LSの反射率が最も高く、中央部のレーザ光LSの反射率が最も低くなっている。
【0037】
制御部115は、光学系112とレーザ送受信部114を制御することにより、レーザ光LSの出力強度を変更しながら、グレースケールチャートGSの長手方向に走査する。これにより、レーザ光LSの出力強度とグレースケールチャートGSで反射したレーザ光LSの強度との対応関係が得られる。制御部115は、この対応関係に基づいて、レーザ光LSの出力強度に関するキャリブレーション値を生成する。そして、制御部115は、レーザ送受信部114から出力されるレーザ光LSの強度を、このキャリブレーション値を用いて補正する第1のキャリブレーションを行う。レーザスキャナ11は、第1のキャリブレーションを施したレーザ光LSを測定光として、路面Aまでの距離の計測を行う。
【0038】
図6は、ピクセル検出エリアPAを用いた第2のキャリブレーションの概要を示す概要図である。図6の左側の図は、カメラ部113とピクセル検出エリアPAとの位置関係を示しており、カメラ部113からピクセル検出エリアPAまでの距離が基準値H1であるものとする。制御部115は、TS13により計測された移動情報と、ピクセル単位での距離情報とを用いて、カメラ部113からピクセル検出エリアPAまでの距離H2を算出する。
【0039】
図6の右側の図は、カメラ部113によって撮影されたピクセル検出エリアPAの撮影領域を示している。制御部115は、ピクセル検出エリアPAの撮影画像にピクセル単位で線が何本あるかに基づいて、基準値H1からのずれを検出する。ここで、制御部115は、ピクセル検出エリアPAの撮影画像における線の数と、基準値H1であるときに撮影されたピクセル検出エリアPAの撮影画像における線の数とに基づいて、第2のキャリブレーションを行う。また、カメラ部113は、1画素当たりの距離情報が0.1mm/pxである。これが、第2のキャリブレーションにおけるキャリブレーション値である。
【0040】
基準値H1(=1m)から0.1mm高い距離H2であれば、基準値H1における画像PA1に含まれる線の数からピクセル列の線が1本増えた画像PA2が撮影されるようにカメラ部113の画角を調整しておく。制御部115は、レーザ光LSを用いた距離計測で得られた距離を、ピクセル検出エリアPAの撮影画像における線の数とピクセル検出エリアPAまでの距離との関係を満たすように補正する第2のキャリブレーションを行う。
なお、レーザ光LSを用いた距離計測で得られた距離は、第1のキャリブレーションが行われたものである。第1のキャリブレーションおよび第2のキャリブレーションを行うことにより、レーザスキャナ11は、路面Aまでの距離を正確に計測することができる。
【0041】
なお、キャリブレーション用マーカMは、建設機械Cの後部の路面Aに設けられて、建設機械搭載型レーザスキャナであるレーザスキャナ11が、路面Aまでの距離の計測に関するキャリブレーションを行えるものであればよい。すなわち、キャリブレーション用マーカMは、グレースケールチャートGSおよびピクセル検出エリアPAを有するものに限定されない。例えば、キャリブレーション用マーカMは、一様のパターンを有するものであってもよい。また、グレースケールチャートGSの白黒パターンが中央部が白く両端部が黒いものであってもよく、ピクセル検出エリアPAにおける複数の線が長手方向に並んだものであってもよい。
【0042】
図7は、実施の形態1に係る出来形管理装置15の構成例を示すブロック図である。
図7に示すように、出来形管理装置15は、通信部151、演算部152および表示部153を備える。通信部151は、アクセスポイント14を介して、レーザスキャナ11またはTS13と通信を行う。例えば、通信部151は、LAN方式による無線LAN通信が可能な通信装置であり、レーザスキャナ11またはTS13といった他の機器と通信可能である。また、通信部151は、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信手段を備えていてもよい。
【0043】
演算部152は、出来形管理装置15の全体動作を制御する。演算部152は、情報取得部1521および面データ生成部1522を備える。演算部152が、出来形管理処理を提供するための情報処理アプリケーションを実行することにより、情報取得部1521および面データ生成部1522の各種の機能が実現される。
【0044】
表示部153は、演算部152の演算処理で得られた情報を表示する表示装置である。例えば、表示部153は、タブレット端末、スマートフォン、またはノートタイプPCが備える表示装置である。
【0045】
情報取得部1521は、レーザスキャナ11が第1のキャリブレーションおよび第2のキャリブレーションを行って計測した計測距離情報と、TS13が計測した移動情報とを取得する。例えば、情報取得部1521は、通信部151により、アクセスポイント14を介して、計測情報をレーザスキャナ11から取得する。
なお、計測情報は、レーザスキャナ11の移動情報および路面Aまでの計測距離情報に対してGNSS時刻情報が紐付けられた情報である。
【0046】
面データ生成部1522は、計測距離情報および移動情報を用いて、面データを生成する。面データは、路面Aの状態を視覚的に表すデータである。
例えば、面データ生成部1522は、レーザスキャナ11の移動情報および路面Aまでの計測距離情報を用いて、路面Aを高解像度に表す三次元点群データからなる面データを、舗装路面の出来形管理データとして生成する。
面データ生成部1522が生成した面データは、表示部153に表示される。
【0047】
図8は、面データA1の表示例を示す画面図である。表示部153は、面データA1を表示画面153Aに表示する。図8に示すように、面データA1は、路面Aを表す三次元点群データであり、例えば、白い部分がその他の領域よりも突出した部分である。作業者は、面データA1を参照することにより、舗装路面の出来形を確認することができる。
【0048】
図9は、実施の形態1に係る出来形管理方法を示すフローチャートである。
情報取得部1521は、レーザスキャナ11によって計測された計測距離情報と、TS13によって計測された移動情報とを取得する(ステップST1)。
面データ生成部1522は、計測距離情報および移動情報を用いて路面Aの状態を視覚的に表す面データを生成する(ステップST2)。
出来形管理装置15が、この出来形管理方法を実行することにより、キャリブレーションにより計測精度を上げた状態で路面A上の計測範囲全体の三次元座標を計測することができる。
【0049】
図10は、出来形管理装置15の機能を実現するハードウェア構成を示すブロック図である。例えば、出来形管理装置15は、ハードウェア構成として、通信インタフェース200、入出力インタフェース201、プロセッサ202、およびメモリ203を有する。出来形管理装置15が備える情報取得部1521および面データ生成部1522の各機能は、これらのハードウェア構成において、情報処理アプリケーションが実行されることにより実現される。
【0050】
通信インタフェース200は、アクセスポイント14を介して、レーザスキャナ11、または、TS13から受信されたデータをプロセッサ202へ出力し、プロセッサ202が生成したデータを、アクセスポイント14を介してレーザスキャナ11またはTS13へ送信する。プロセッサ202は、入出力インタフェース201を介して、メモリ203に対しデータを読み書きする。
【0051】
情報取得部1521および面データ生成部1522の各機能を実現するための情報処理アプリケーションを構成するプログラムは、メモリ203に記憶されている。プロセッサ202は、入出力インタフェース201を介してメモリ203から読み出したプログラムを実行する。これにより、プロセッサ202は、情報取得部1521および面データ生成部1522の各機能を実現する。メモリ203は、例えばRAM(Random Access Memory)である。
【0052】
以上のように、実施の形態1に係るレーザスキャナ11は、建設機械Cの後部に設けられ、レーザ光LSを路面Aに送信して路面Aから反射したレーザ光LSを受信するレーザ送受信部114と、路面A側を撮影するカメラ部113と、レーザ光LSが送受信された路面Aまでの距離を計測する制御部115と、を備える。制御部115は、建設機械Cの後部の路面A上に設けられたキャリブレーション用マーカMを用いて、路面Aまでの距離の計測に関するキャリブレーションを行うものである。これにより、レーザスキャナ11は、キャリブレーションにより計測精度を上げた状態で路面A上の計測範囲全体の三次元座標を計測することが可能である。
【0053】
実施の形態1に係るレーザスキャナ11において、制御部115は、路面Aまでの距離の計測に関するキャリブレーションとして、キャリブレーション用マーカMに送受信されたレーザ光の強度に基づいてレーザ光の強度に関する第1のキャリブレーションを行い、キャリブレーション用マーカMの撮影画像を用いて路面Aまでの距離に関する第2のキャリブレーションを行う。これにより、レーザスキャナ11は、キャリブレーションにより計測精度を上げた状態で路面A上の計測範囲全体の三次元座標を計測することができる。
【0054】
実施の形態1に係るレーザスキャナ11において、キャリブレーション用マーカMは、レーザ光の走査方向に沿ったグレースケールチャートGSと、ピクセル列からなる複数の線を含むピクセル検出エリアPAと、を有する。制御部115は、グレースケールチャートGSに送受信されたレーザ光の強度を用いて第1のキャリブレーションを行い、ピクセル検出エリアPAの撮影画像における線の数と、路面Aまでが基準距離であるときに撮影されたピクセル検出エリアPAの画像における線の数とに基づいて、第2のキャリブレーションを行う。第1のキャリブレーションおよび第2のキャリブレーションを行うことにより、レーザスキャナ11は、路面Aまでの距離を正確に計測することができる。
【0055】
実施の形態1に係るレーザスキャナ11において、TS13によるレーザスキャナ11の追尾に利用されるプリズム111と、路面Aまでの距離を示す計測距離情報を、路面舗装の出来形管理情報として送信し、TS13によってプリズム111を用いた追尾により計測されたレーザスキャナ11の移動情報を受信する通信部116と、を備える。これにより、レーザスキャナ11は、路面Aまでの距離を正確に計測することができる。
【0056】
実施の形態1に係る出来形管理装置15は、レーザスキャナ11によって計測された計測距離情報とTS13によって計測された移動情報とを取得する情報取得部1521と、計測距離情報および移動情報を用いて、路面Aの状態を視覚的に表す面データを生成する面データ生成部1522と、を備える。これにより、出来形管理装置15は、キャリブレーションにより計測精度を上げた状態で路面A上の計測範囲全体の三次元座標を計測することが可能である。
【0057】
実施の形態1に係る出来形管理方法は、情報取得部1521が、レーザスキャナ11によって計測された計測距離情報とTS13によって計測された移動情報とを取得するステップST1と、面データ生成部1522が、計測距離情報および移動情報を用いて、路面Aの状態を視覚的に表す面データを生成するステップST2と、を備える。出来形管理装置15が、この出来形管理方法を実行することで、キャリブレーションにより計測精度を上げた状態で路面A上の計測範囲全体の三次元座標を計測することが可能である。
【0058】
実施の形態1に係るプログラムをコンピュータが実行することにより、当該コンピュータは、レーザスキャナ11によって計測された計測距離情報とTS13によって計測された移動情報とを取得する情報取得部1521、計測距離情報および移動情報を用いて、路面Aの状態を視覚的に表す面データを生成する面データ生成部1522として機能する。これにより、キャリブレーションにより計測精度を上げた状態で路面A上の計測範囲全体の三次元座標を計測することができる出来形管理装置15を提供することができる。
【0059】
なお、実施の形態の任意の構成要素の変形もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 出来形管理システム、11 レーザスキャナ、13 トータルステーション(TS)、14 アクセスポイント、15 出来形管理装置、111 プリズム、112 光学系、113 カメラ部、114 レーザ送受信部、115 制御部、116 通信部、117 無線LANアンテナ、151 通信部、152 演算部、153 表示部、153A 表示画面、200 通信インタフェース、201 入出力インタフェース、202 プロセッサ、203 メモリ、1521 情報取得部、1522 面データ生成部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10