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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176157
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/10 20160101AFI20241212BHJP
   B60K 6/485 20071001ALI20241212BHJP
   B60W 20/00 20160101ALI20241212BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20241212BHJP
   B60L 50/61 20190101ALI20241212BHJP
【FI】
B60W20/10
B60K6/485
B60W20/00 900
B60L50/16
B60L50/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094472
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100195659
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 祐介
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 英人
(72)【発明者】
【氏名】上田 松栄
(72)【発明者】
【氏名】池戸 隆人
(72)【発明者】
【氏名】増田 糧
(72)【発明者】
【氏名】山本 幸久
(72)【発明者】
【氏名】加藤 英長
(72)【発明者】
【氏名】松本 宝
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA09
3D202BB01
3D202BB11
3D202BB53
3D202CC02
3D202DD01
3D202DD06
3D202DD20
3D202DD24
3D202DD45
3D202FF04
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA00
5H125BD17
5H125CA01
5H125CA09
5H125CC04
5H125EE52
(57)【要約】
【課題】ハイブリッド車両の制御装置において、実施可能期間の推定精度を向上することができる技術を提供する。
【解決手段】ハイブリッド車両の制御装置であって、要求トルクに応じて、エンジントルクおよびモータジェネレータトルクを設定する設定部と、走行情報を収集する情報収集部と、を備え、設定部は、エンジントルクの許容上限が要求トルクより小さい場合、アシストモードとして、当該エンジントルクと要求トルクとの差をモータジェネレータトルクとして設定し、エンジントルクの許容上限が要求トルクより小さい状態から要求トルクより大きい状態に移行した場合、充電走行モードとして、充電トルクと要求トルクとの和をエンジントルクとして設定し、アシストモード時の走行情報と充電走行モードの実施が可能な実施可能期間とを対応付けたマップを参照して、実施可能期間を推定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源であるエンジンおよびモータジェネレータと、前記モータジェネレータに電力を供給するとともに前記モータジェネレータによって発電された電力を蓄電する二次電池と、を備えたハイブリッド車両の制御装置であって、
前記ハイブリッド車両に要求された要求トルクに応じて、前記エンジンから出力されるエンジントルクおよび前記モータジェネレータから出力されるモータジェネレータトルクを設定する設定部と、
走行中の前記ハイブリッド車両に関する走行情報を収集する情報収集部と、を備え、
前記設定部は、
出力が許容される前記エンジントルクの許容上限が前記要求トルクより小さい場合、アシストモードとして、前記許容上限以下の前記エンジントルクを設定したうえで、当該エンジントルクと前記要求トルクとの差を前記モータジェネレータトルクとして設定し、
前記エンジントルクの前記許容上限が前記要求トルクより小さい状態から前記要求トルクより大きい状態に移行した場合、充電走行モードとして、前記二次電池の充電に用いる充電トルクと前記要求トルクとの和を前記エンジントルクとして設定したうえで、当該充電トルクに応じて負の前記モータジェネレータトルクを設定するとともに、前記アシストモード時の前記走行情報と前記充電走行モードの実施が可能な実施可能期間とを対応付けたマップを参照して、前記実施可能期間を推定する、ハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置であって、
前記情報収集部が収集する前記走行情報には、前記アシストモードが終了した時点での前記ハイブリッド車両の車速が含まれており、
前記実施可能期間と対応付けられた走行情報には、前記アシストモードが終了した時点での前記ハイブリッド車両の車速が含まれている、ハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置であって、
前記マップは、前記ハイブリッド車両が新規に走行した際の、前記アシストモード時の前記走行情報と当該走行情報に対応する前記実施可能期間とを用いて更新される、ハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載のハイブリッド車両の制御装置であって、さらに、
前記ハイブリッド車両の外部と通信する通信部を備え、
前記設定部は、前記外部との通信を介して、他の前記ハイブリッド車両の走行による前記アシストモード時の前記走行情報と当該走行情報に対応する前記実施可能期間とを用いて更新された前記マップを参照可能である、ハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置であって、さらに、
前記ハイブリッド車両の外部と通信する通信部を備え、
前記設定部は、前記外部との通信を介して、他の前記ハイブリッド車両が参照している他車両マップを用いて補正された前記マップを参照可能である、ハイブリッド車両の制御装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のハイブリッド車両の制御装置であって、
前記設定部は、推定された前記実施可能期間に応じて、前記充電トルクを設定する、ハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動源であるエンジンおよびモータジェネレータと、モータジェネレータとの間で電力の授受を行う二次電池と、を備えたハイブリッド車両が知られている。このようなハイブリッド車両では、加速のために要求される要求トルクに応じて、エンジントルクおよびモータジェネレータトルクの配分が設定される。特許文献1~3には、この配分の設定に関する種々の制御手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-77897号公報
【特許文献2】特開2002-256918号公報
【特許文献3】特開2011-63089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~3では、モータジェネレータの稼働により消費された二次電池の充電量の不足を抑制することについては十分に考慮されていなかった。ここで、二次電池の充電量の不足を抑制するために、例えば、出力が許容されるエンジントルクの許容上限が要求トルクより大きい状態である際に、二次電池の充電に用いる充電トルクと要求トルクとの和をエンジントルクとして設定する充電走行モードを実施することが考えられる。このとき充電トルクは、充電走行モードの実施が可能な実施可能期間の長さに応じて設定するべきである。しかし、この実施可能期間は、走行環境や運転手の状態(急いでいる、慣れた道である等)等の影響で変動するため推定が難しい。また、低い精度で推定された実施可能期間に応じて充電トルクが設定された場合には、二次電池を十分に充電できず、モータジェネレータの走行補助による燃費の改善効果および排気ガスの低減効果を維持できなくなることが懸念される。そのため、充電走行モードを実施する場合、実施可能期間の推定精度を向上することができる技術が望まれる。
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、ハイブリッド車両の制御装置において、実施可能期間の推定精度を向上することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、ハイブリッド車両の制御装置が提供される。この制御装置は、駆動源であるエンジンおよびモータジェネレータと、前記モータジェネレータに電力を供給するとともに前記モータジェネレータによって発電された電力を蓄電する二次電池と、を備えたハイブリッド車両の制御装置であって、前記ハイブリッド車両に要求された要求トルクに応じて、前記エンジンから出力されるエンジントルクおよび前記モータジェネレータから出力されるモータジェネレータトルクを設定する設定部と、走行中の前記ハイブリッド車両に関する走行情報を収集する情報収集部と、を備え、前記設定部は、出力が許容される前記エンジントルクの許容上限が前記要求トルクより小さい場合、アシストモードとして、前記許容上限以下の前記エンジントルクを設定したうえで、当該エンジントルクと前記要求トルクとの差を前記モータジェネレータトルクとして設定し、前記エンジントルクの前記許容上限が前記要求トルクより小さい状態から前記要求トルクより大きい状態に移行した場合、充電走行モードとして、前記二次電池の充電に用いる充電トルクと前記要求トルクとの和を前記エンジントルクとして設定したうえで、当該充電トルクに応じて負の前記モータジェネレータトルクを設定するとともに、前記アシストモード時の前記走行情報と前記充電走行モードの実施が可能な実施可能期間とを対応付けたマップを参照して、前記実施可能期間を推定する。
【0008】
本願発明者らは、市街地や郊外、高速道路をハイブリッド車両に走行させた際の複数のデータを解析したところ、充電走行モードが開始される直前のアシストモード時の走行情報と、充電走行モードの実施が可能な実施可能期間と、の間に正の相関があることを見出した。この構成によれば、そのような知見に基づいて作成されたアシストモード時の走行情報と実施可能期間とを対応付けたマップを参照して、実施可能期間を推定することから、実施可能期間の推定精度を向上することができる。その結果、精度良く推定された実施可能期間に基づいて充電走行モードが実施されるため、二次電池の充電量が不足するのを抑制できることから、モータジェネレータの走行補助による燃費の改善効果および排気ガスの低減効果を維持することができる。
【0009】
(2)上記形態の制御装置において、前記情報収集部が収集する前記走行情報には、前記アシストモードが終了した時点での前記ハイブリッド車両の車速が含まれており、前記実施可能期間と対応付けられた走行情報には、前記アシストモードが終了した時点での前記ハイブリッド車両の車速が含まれてもよい。
本願発明者らは、アシストモードが終了した時点でのハイブリッド車両の車速と、実施可能期間と、の間に正の相関があることを見出した。この構成によれば、マップにおいて実施可能期間に対応付けられる走行情報に当該車速が含まれていることから、実施可能期間の推定精度をより一層向上することができる。
【0010】
(3)上記形態の制御装置において、前記マップは、前記ハイブリッド車両が新規に走行した際の、前記アシストモード時の前記走行情報と当該走行情報に対応する前記実施可能期間とを用いて更新されてもよい。
この構成によれば、ハイブリッド車両が新規に走行した際のデータを用いてマップを更新できることから、実施可能期間の推定精度をより一層向上することができる。
【0011】
(4)上記形態の制御装置において、さらに、前記ハイブリッド車両の外部と通信する通信部を備え、前記設定部は、前記外部との通信を介して、他の前記ハイブリッド車両の走行による前記アシストモード時の前記走行情報と当該走行情報に対応する前記実施可能期間とを用いて更新された前記マップを参照可能であってもよい。
この構成によれば、他のハイブリッド車両の走行によるデータを用いて更新されたマップを参照できることから、実施可能期間の推定精度をより一層向上することができる。
【0012】
(5)上記形態の制御装置において、さらに、前記ハイブリッド車両の外部と通信する通信部を備え、前記設定部は、前記外部との通信を介して、他の前記ハイブリッド車両が参照している他車両マップを用いて補正された前記マップを参照可能であってもよい。
この構成によれば、他のハイブリッド車両が参照している他車両マップを用いて補正されたマップを参照できることから、実施可能期間の推定精度をより一層向上することができる。
【0013】
(6)上記形態の制御装置において、前記設定部は、推定された前記実施可能期間に応じて、前記充電トルクを設定してもよい。
この構成によれば、推定された実施可能期間が比較的長い場合には充電トルクを小さく設定することによって、エンジントルクが大きくなるのを抑制しつつ二次電池を充電することができる。一方、推定された実施可能期間が比較的短い場合には充電トルクを大きく設定することによって、推定された実施可能期間が短かったとしても、二次電池の充電量を確保することができる。すなわち、この構成によれば、エンジンに対する負荷と充電走行モードにおける充電効率の観点から適切な充電トルクを設定することができる。
【0014】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、当該制御装置を搭載したハイブリッド車両、ハイブリッド車両の制御方法などの形態で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態の制御装置の構成を例示した説明図である。
図2】ハイブリッド車両の車速に応じて変化するモードの説明図である。
図3】充電走行モードの持続期間の設定に関する説明図である。
図4】充電走行モードの持続期間の設定に関する説明図である。
図5】充電走行モードの持続期間の設定に関する説明図である。
図6】市場走行パターンから抽出した車速の出現頻度を示した説明図である。
図7】アシストモード終了時点の車速と実施可能期間との関係を示す説明図である。
図8】車速と実施可能期間とを対応付けたマップを示す説明図である。
図9】持続設定期間が異なるハイブリッド車両の走行結果を示す説明図である。
図10】比較例のハイブリッド車両と、本実施形態の制御装置を備えたハイブリッド車両との性能を比較した結果を示す説明図である。
図11】第2実施形態の制御装置の構成を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の制御装置20(詳細は後述)を備えたハイブリッド車両1の構成を例示した説明図である。ハイブリッド車両1は、制御装置20の他に、エンジン11と、変速機12と、プロペラシャフト13と、ディファレンシャルギア14と、ドライブシャフト15と、タイヤ16と、モータジェネレータ17と、二次電池18と、を備える。
【0017】
ハイブリッド車両1では、エンジン11から出力されるエンジントルク(以降、EGトルクと呼ぶ)が、車軸トルクとしてプロペラシャフト13へ伝達される。また、力行時には、二次電池18から供給された電力を用いてモータジェネレータ17から出力されるモータジェネレータトルク(以降、MGトルクと呼ぶ)が、車軸トルクとしてプロペラシャフト13へ伝達される。車軸トルクは、ディファレンシャルギア14およびドライブシャフト15を介して、タイヤ16へ駆動トルクとして伝達される。エンジン11およびモータジェネレータ17は、ハイブリッド車両1の駆動源にあたる。
【0018】
一方、回生時には、車軸トルクがモータジェネレータ17へMGトルクとして伝達される。このMGトルクは、モータジェネレータ17による発電に用いられる。モータジェネレータ17で発電された電力は二次電池18に充電される。このように、二次電池18は、力行時には、モータジェネレータ17に電力を供給するとともに、回生時には、モータジェネレータ17によって発電された電力を蓄電する。
【0019】
制御装置20は、設定部21と、EG駆動制御部23と、MG駆動制御部25と、情報収集部27と、を含む。設定部21は、ハイブリッド車両1に要求された要求トルクに応じて、エンジン11から出力されるEGトルクおよびモータジェネレータ17から出力されるMGトルクを設定する。ここで、要求トルクは、ハイブリッド車両1のアクセルペダル(不図示)の踏み込み量やブレーキペダル(不図示)の踏み込み量に応じて算出される。EG駆動制御部23は、設定されたEGトルクに応じて、エンジン11を駆動させる。MG駆動制御部25は、設定されたMGトルクに応じて、モータジェネレータ17を駆動させる。情報収集部27は、走行中のハイブリッド車両1に関する走行情報を収集する。情報収集部27は、ハイブリッド車両1が稼働している間、走行情報を定期的に収集しており、それら情報を示す信号を設定部21に送信している。例えば、走行情報には、現在の二次電池18の充電量が含まれている。
【0020】
図2は、ハイブリッド車両1の車速に応じて変化するモードの説明図である。図2(A)は、ハイブリッド車両1の車速の経時的な変化を示した図である。図2(A)の縦軸は、ハイブリッド車両1の車速を示し、図2(A)の横軸は、時間を示す。なお、次に説明する図2(B)(C)の横軸も同様に時間を示す。図2(B)は、エンジン11が出力するEGトルクの経時的な変化を示した図である。図2(B)の縦軸は、エンジン11が出力するEGトルクを示す。図2(B)の実線b1は、経時的に変化するEGトルクを示し、一点鎖線b2は、経時的に変化する要求トルクを示す。図2(C)は、二次電池18の充電量の経時的な変化を示した図である。図2(C)の縦軸は、二次電池18の充電量を示す。図2(C)の実線c1は、経時的に変化する二次電池18の充電量を示す。図2(C)の一点鎖線c2は、二次電池18の充電量の回復目標である回復目標充電量を示す。
【0021】
タイミングt1において、アクセルペダルの踏み込み量の増加により、車速V(図2(A)参照)まで加速する加速要求が検知されると、その踏み込み量に応じて、要求トルクが算出される。このとき、情報収集部27は、走行情報として、例えば、エンジン11における吸入空気量、吸気管圧力、燃料噴射量、回転数などの情報を示す信号を設定部21に送信する。設定部21は、それら情報を基にして、エンジン11からの排気ガスの排出基準を満たす許容範囲の上限(許容上限)以下でEGトルクを設定する。この設定によって、EGトルクは、図2(B)の実線b1で示すように、タイミングt1から増加し始める。
【0022】
エンジン11からの排気ガスの排出基準を満たす許容範囲とは、ハイブリッド車両1から排出される排気ガス中の窒素酸化物(NOx)、粒子状物質(PM)、ハイドロカーボン(HC)、一酸化炭素(CO)等の有害物質に対する排出基準を満たす許容範囲を意味する。この許容範囲は、物理モデルや実験式又はそれらの組み合わせによって作成した物理式、数値マップ又はニューラルネットワーク等で表されたエンジンモデルを用いて算出される。このようなエンジンモデルに対し、現時点での運転条件(回転数、負荷等)と状態量(過給圧、EGR率等)を入力することによって、次の時点での許容範囲が算出される。なお、このような許容範囲の設定手法は、エンジンモデルを用いた手法に限られず、任意の手法を用いてよい。
【0023】
タイミングt1からタイミングt3までの間におけるEGトルクは、許容上限のEGトルクである。よって、この間において、出力が許容されたEGトルクの許容上限は、要求トルクより小さい。このような場合、設定部21は、アシストモードとして、許容上限以下のEGトルクを設定したうえで、このEGトルクと要求トルクとの差をMGトルクとして設定する。すなわち、タイミングt1からタイミングt3までの間においては、許容上限以下で設定されるEGトルクの補助として、MGトルクが設定される。このとき、図2(C)の実線c1で示すように、タイミングt1からタイミングt3までの間において、二次電池18の充電量は、EGトルクの補助に用いられたMGトルクの分だけ低下する。
【0024】
ハイブリッド車両1の車速が車速V(図2(A)参照)に近付くことにより、タイミングt2からアクセルペダルの踏み込み量の減少が始まることで、要求トルクの減少も始まる(図2(B)参照)。その後、タイミングt3において、減少する要求トルクと許容上限を維持しながら増加するEGトルクとが等しくなる(実線b1と一点鎖線b2とが交差する)。このとき、EGトルクの許容上限が要求トルクより小さい状態から要求トルクより大きい状態に移行し、これを契機として、設定部21は、充電走行モードとして、二次電池18の充電に用いる充電トルクと要求トルクとの和をEGトルクとして設定する。図2(B)には、充電トルクTcが示されている。また、設定部21は、その充電トルクに応じて負のMGトルクを設定する。負のMGトルクとは、二次電池18に蓄電する電力を発電する回生時のMGトルクを意味する。充電トルクは、二次電池18の充電量の回復目標である回復目標充電量(図2(C)の一点鎖線c2参照)と現在の二次電池18の充電量(図2(C)の実線c1参照)との差である不足電力量を、充電走行モードの持続期間と、モータジェネレータ17の回転速度と、で除することで算定される。回復目標充電量は、現時点の車速からハイブリッド車両1が停止に至る際のブレーキ回生によって回収可能な電力量、モータジェネレータ17による二次電池18の充電効率等を考慮して設定される。また、算定された充電トルクと要求トルクとの和がEGトルクの許容上限よりも大きい場合には、その和がEGトルクの許容上限以下となるよう充電トルクが調整されるのが好ましい。充電トルクの算定に関する説明は後述する。
【0025】
タイミングt3以降、充電走行モードが持続されたことにより、図2(C)に示すように、タイミングt4において、二次電池18の充電量は、回復目標充電量に至る(実線c1と一点鎖線c2とが交差する)。このとき、充電走行モードは終了し、図2(B)の実線b1で示すように、充電トルクと要求トルクとの和に相当していたEGトルクのうち充電トルクTcに相当する分のトルクを0にすることによって、要求トルクのみに応じたEGトルクが設定される。タイミングt4からタイミングt5までの間は、要求トルクのみに応じたEGトルクが設定されていることから、実線b1と一点鎖線b2とは重なっている。そして、タイミングt5において、再びアクセルペダルの踏み込み量が増加することによって、その踏み込み量に応じて要求トルクが算出された際、設定部21は、アシストモードとして、許容上限以下のEGトルクを設定するとともに、このEGトルクと要求トルクとの差をMGトルクとして設定する。なお、図2では、二次電池18の充電量が回復目標充電量に至ることで充電走行モードが終了していたが、EGトルクの許容上限が再び要求トルクより小さくなった場合、もしくは、ハイブリッド車両1のブレーキペダルの踏み込み量が増加することによって要求トルクが負のトルクとなった場合にも、充電走行モードは終了する。
【0026】
充電走行モード(図2ではタイミングt3からタイミングt4までの間)において、EGトルクおよびMGトルクの設定に用いられる充電トルクは、上述したように、不足電力量を、充電走行モードの持続期間と、モータジェネレータ17の回転速度と、で除することで算定される。不足電力量およびモータジェネレータ17の回転速度は時々刻々で変化するが、情報収集部27に逐次収集される走行情報から取得可能である。一方、充電走行モードの持続期間は、充電走行モードの開始時点でその終了タイミングが不明であるものの、充電走行モード時のEGトルクおよびMGトルクの設定に用いられる充電トルクの算出に必要なパラメータであることから、充電走行モードの開始時点で予め設定しておく必要がある。なお、エンジン11に対する負荷と充電走行モードにおける充電効率の観点から、持続期間を長く設定するほど充電トルクは小さく算定され、持続期間を短く設定するほど充電トルクは大きく算定される。
【0027】
図3~5は、充電走行モードの持続期間の設定に関する説明図である。図3~5の縦軸および横軸は、いずれも図2(B)と同様である。また、一点鎖線b2についても、図2と同様に経時的に変化する要求トルクを示す。
【0028】
図3において、タイミングstは、EGトルクの許容上限が要求トルクより小さい状態から要求トルクより大きい状態に移行するタイミングであり、アシストモードから充電走行モードに移行するタイミングにあたる。タイミングgenは、アクセルペダルの踏み込み量の増加によって、EGトルクの許容上限が要求トルクより小さくなるタイミングであり、充電走行モードからアシストモードに移行するタイミングにあたる。すなわち、タイミングstからタイミングgenまでは、充電走行モードの実施が可能な実施可能期間gである。図4,5のタイミングst、タイミングgen、実施可能期間gも同様である。
【0029】
一方、図3において、持続設定期間fは、充電走行モードの開始時に充電トルクを算定するために、充電走行モードが持続する期間の見込みの長さとして予め設定される期間である。タイミングfenは、持続設定期間fの終了タイミングである。図4,5の持続設定期間fおよびタイミングfenも同様である。図3図5においては、持続設定期間fが設定された場合、タイミングfenにおいて、充電走行モードは終了するものとする。また、持続設定期間f中であっても実施可能期間gが終了する場合にも、充電走行モードは終了するものとする。図3図5において、持続設定期間fと実施可能期間gとの大小関係は異なる。図3は、持続設定期間fが実施可能期間gよりも長かった場合を示している。図4は、持続設定期間fが実施可能期間gよりも短かった場合を示している。図5は、持続設定期間fと実施可能期間gとが一致した場合を示している。
【0030】
まず初めに、図3について説明する。図3の実線d1は、経時的に変化するEGトルクを示す。図3の場合、タイミングfenが到来する前に実施可能期間gが終了(タイミングgenが到来)することから、充電走行モードは、持続設定期間fよりも短い期間しか持続することができない。このときの充電走行モードにおける充電トルクTc1は、持続設定期間fの間、充電走行モードが持続することを前提として算定されている。図3においては、実施可能期間gの終了によって持続設定期間fが中断されているため、この間(タイミングstからタイミングgenまでの間)に実施した充電走行モードで回収される発電量は、持続設定期間fを通して充電走行モードを実施した場合に回収できる発電量よりも少なくなる。図3のような事象の発生頻度が高い場合、二次電池18の充電量が不足し、ひいては、アシストモード時にMGトルクによるEGトルクの補助ができなくなる。その結果、例えば、要求トルクに応じるために許容上限よりも大きいEGトルクが出力されることによって、エンジン11からの排気ガスの排出基準を満たせなくなったり、許容上限以下のEGトルクに対してMGトルクによる補助が足りず、要求トルクの一部にしか応じられないことでハイブリッド車両1の運転性が損なわれたりする。
【0031】
次に、図4について説明する。図4の実線d2は、図3の実線d1と同様、経時的に変化するEGトルクを示す。図4の場合、実施可能期間gが終了する前に持続設定期間fは終了する。このため、十分な発電量を確保することができる一方で、持続設定期間fを短く設定するほど充電トルク(図4に充電トルクTc2として図示)は大きく算定されることから、場合によっては、加速要求時の要求トルクよりも充電走行モード時のEGトルクの方が大きくなることも起こり得る。すなわち、充電走行モード時の充電トルクと要求トルクとの和がEGトルクの許容上限よりも大きくなる可能性があり、そのような場合には、エンジン11からの排気ガスの排出基準を満たせなくなるため好ましくない。
【0032】
最後に、図5について説明する。図5の実線d3は、図3の実線d1および図4の実線d2と同様、経時的に変化するEGトルクを示す。図5の場合、実施可能期間gは、持続設定期間fと同時に終了している。すなわち、タイミングgenとタイミングfenとは、同じタイミングである。このため、持続設定期間fと実施可能期間gとが一致していることから、十分な発電量を確保しつつ、持続設定期間fが短いことで充電トルク(図5に充電トルクTc3として図示)が大きく算定されるのも抑制できている。図3図5の説明から、予め持続設定期間fを設定する際、実施可能期間gと一致するよう設定するのが好適である。しかし、実施可能期間gは、走行環境や運転手の状態(急いでいる、慣れた道である等)等の影響で変動するため推定が難しい。
【0033】
この点において、本願発明者らは、市街地や郊外、高速道路をハイブリッド車両1に走行させた際の複数のデータを解析したところ、充電走行モードが開始される直前のアシストモード時の走行情報と、実施可能期間gと、の間に正の相関があることを見出した。そこで、本実施形態の制御装置20に含まれる設定部21では、アシストモード時の走行情報と実施可能期間gとを対応付けたマップを参照して、実施可能期間gを推定する。ここで、当該マップから実施可能期間gを推定するとは、このマップに対してアシストモード時の走行情報を適用し、その走行情報に対応した実施可能期間gを取得することを意味する。本実施形態では、実施可能期間gと対応付けられる走行情報は、アシストモードが終了した時点でのハイブリッド車両1の車速である。そのため、情報収集部27が収集する走行情報には、アシストモードが終了した時点でのハイブリッド車両1の車速が含まれている。また、設定部21は、推定された実施可能期間gに応じて、充電トルク(図3~5の充電トルクTc1~3に相当)を設定する。
【0034】
実施可能期間gを推定する際、アシストモード時の走行情報と実施可能期間gとを対応付けたマップを参照する理由を、図6図8を用いて説明する。図6は、ハイブリッド車両1の市場走行パターンから抽出した車速の出現頻度を示した説明図である。図6(A)~(C)の横軸は、いずれもハイブリッド車両1の車速を示し、図6(A)~(C)の縦軸は、いずれもハイブリッド車両1の車速の出現頻度を示す。図6(A)は、ハイブリッド車両1が市街地を走行したときの車速の出現頻度を示す。図6(B)は、ハイブリッド車両1が郊外を走行したときの車速の出現頻度を示す。図6(C)は、ハイブリッド車両1が高速道路を走行したときの車速の出現頻度を示す。図6(A)~(C)が示すように、ハイブリッド車両1の車速の出現頻度は、市街地、郊外および高速道路で異なっている。
【0035】
図7は、アシストモードが終了した時点(図3図5のタイミングstに相当)でのハイブリッド車両1の車速Vcと、実施可能期間gと、の関係を示した説明図である。図7の横軸は、車速Vcを示し、図7の縦軸は、実施可能期間gを示す。図7に示す複数の白丸プロットは、図6(A)~(C)の市場走行パターンを計測した際に併せて計測された計測結果を示す。図7に示す複数の黒丸プロットは、各車速域における車速Vcの平均値および実施可能期間gの平均値を示す。各車速域は、0~30km/hの範囲の車速域と、30~60km/hの範囲の車速域と、60~90km/hの範囲の車速域と、90~120km/hの範囲の車速域と、120~150km/hの範囲の車速域と、である。
【0036】
図8は、車速Vcと実施可能期間gとを対応付けたマップMを示す説明図である。近似曲線で示されたマップMは、図7に示した複数の黒丸プロットに対して、最小二乗法を用いて二次曲線をフィッティングすることで導出される。図8に示すように、充電走行モードが開始される直前のアシストモード時の走行情報(本実施形態ではアシストモードが終了した時点でのハイブリッド車両1の車速Vc)と実施可能期間gとの間には、正の相関があることが確認された。このため、上述したように、本実施形態の制御装置20に含まれる設定部21では、アシストモード時の走行情報と実施可能期間gとを対応付けたマップMを参照して、実施可能期間gを推定する。このマップMは設定部21に記憶されていてもよいし、設定部21と通信可能な別個の装置に記憶されていてもよい。この別個の装置は、ハイブリッド車両1の内部および外部のいずれに備えられていてもよい。
【0037】
図9は、予め設定される持続設定期間fの長さが異なるハイブリッド車両の各々(詳細は後述)の走行結果を示す説明図である。図9に示す走行結果は、ハイブリッド車両の各々が、0~2000秒までの間は市街地を走行し、2000~4000秒までの間は郊外を走行し、4000~6000秒までの間は高速道路を走行した場合の結果である。
【0038】
実線M1は、本実施形態の制御装置20を備えたハイブリッド車両1の走行結果である。ハイブリッド車両1では、アシストモードから充電走行モードに移行するタイミング(図3図5のタイミングstに相当)のたびに、マップMを参照して推定された実施可能期間gの長さを持続設定期間fとして設定する。なお、本実施形態の制御装置20が設定する持続設定期間fは、充電走行モード開始時の充電トルクの算定に用いられるとともに、持続設定期間fの終了タイミング(図3~5のタイミングfenに相当)が到来した場合には充電走行モードは終了されるものとする。また、図2にて説明したように、ハイブリッド車両1の充電走行モードは、二次電池18の充電量が回復目標充電量に至った場合、EGトルクの許容上限が再び要求トルクより小さくなった場合、もしくは、ハイブリッド車両1のブレーキペダルの踏み込み量が増加することによって要求トルクが負のトルクとなった場合、のいずれかの場合にも終了されるものとする。破線M2は、比較例として、常に持続設定期間fを10秒に設定するハイブリッド車両の走行結果である。一点鎖線M3は、比較例として、常に持続設定期間fを15秒に設定するハイブリッド車両の走行結果である。二点鎖線M4は、比較例として、常に持続設定期間fを20秒に設定するハイブリッド車両の走行結果である。これら比較例についても、ハイブリッド車両1と同様に、持続設定期間fは、充電走行モード開始時の充電トルクの算定に用いられ、持続設定期間fの終了タイミング(図3~5のタイミングfenに相当)が到来した場合、充電走行モードは終了されるものとする。
【0039】
図9の横軸は、走行時間を示し、図9の縦軸は、誤差の累積値を示す。誤差とは、予め設定した持続設定期間fと、充電走行モードが持続した実際の持続期間と、の誤差である。持続設定期間fが実際の持続期間よりも長かった場合には、その誤差の分だけ累積値を増やし、持続設定期間fが実際の持続期間よりも短かった場合には、その誤差の分だけ累積値を減らす。例えば、持続設定期間fが実際の持続期間よりも2秒長かった場合には、累積値を2秒増やし、持続設定期間fが実際の持続期間よりも2秒短かった場合には、累積値を2秒減らす。
【0040】
持続設定期間fが一定であるハイブリッド車両の走行結果(破線M2、一点鎖線M3および二点鎖線M4)のうち、一点鎖線M3で示すように、常に持続設定期間fを15秒に設定するハイブリッド車両では、誤差の累積値はほぼゼロとなっていた。一方、実線M1で示すように、充電走行モードが開始されるたびマップMを参照して推定された実施可能期間gを持続設定期間fとして設定するハイブリッド車両1においても、誤差の累積値はほぼゼロとなっていた。この結果より、マップMを参照して持続設定期間fを設定した場合、持続設定期間fについてのパラメータスタディをすることなく、誤差の累積値をほぼゼロとする走行が可能となることを確認した。
【0041】
図10は、常に持続設定期間fを15秒に設定するハイブリッド車両と、本実施形態の制御装置20を備えたハイブリッド車両1と、の性能を比較した結果を示す説明図である。図10に示す結果は、図9と同様、0~2000秒までの間は市街地を走行し、2000~4000秒までの間は郊外を走行し、4000~6000秒までの間は高速道路を走行した場合の結果である。図10には、常に持続設定期間fを15秒に設定するハイブリッド車両の性能を1としたときの、本実施形態の制御装置20を備えたハイブリッド車両1の性能の比率が示されており、比較する性能の種類としては、充電量、燃費およびNOxの排出量が示されている。充電量および燃費は比率の値が大きいほど改善されているとみなし、NOxの排出量は比率の値が小さいほど改善されているとみなす。
【0042】
図10に示す結果から、本実施形態の制御装置20を備えたハイブリッド車両1では、常に持続設定期間fを15秒に設定するハイブリッド車両と比べて、燃費については同等であったが、充電量およびNOxの排出量は改善されていることを確認できた。一方、今回の結果では、ハイブリッド車両の駆動エネルギーに関する性能である充電量と燃費とのうち充電量のみが改善されていたが、充電量が改善された分(図10では、比率0.05=1.05-1に相当する部分)を二次電池18の回復目標充電量の値を小さくすることで減らしつつ、その減らした分だけ燃費の改善に回すことも可能である。
【0043】
また、マップM(図8参照)は、ハイブリッド車両1が新規に走行した際の、アシストモード時の走行情報と当該走行情報に対応する実施可能期間gとを用いて更新される。本実施形態では、マップMは、ハイブリッド車両1が新規に走行した際の、アシストモードが終了した時点でのハイブリッド車両1の車速と、当該車速に対応する実施可能期間gと、を用いて更新される。当該車速とそれに対応する実施可能期間gとは、図7に示す白丸プロットに相当する。更新の際、新規の走行で新たに得られたデータ(新たな白丸プロット)と黒丸プロット(図7,8参照)との各々には、重みがかけられるものとする。各々の重みは、黒丸プロットに対する新たな白丸プロットの反映度合を考慮して設定される。
【0044】
図6図8で説明したように、本願発明者らは、市街地や郊外、高速道路をハイブリッド車両1に走行させた際の複数のデータを解析したところ、充電走行モードが開始される直前のアシストモード時の走行情報(本実施形態ではアシストモードが終了した時点でのハイブリッド車両1の車速Vc)と、実施可能期間gと、の間に正の相関があることを見出した。以上説明した第1実施形態の制御装置20によれば、そのような知見に基づいて作成されたアシストモード時の走行情報と実施可能期間gとを対応付けたマップMを参照して、実施可能期間gを推定することから、実施可能期間gの推定精度を向上することができる。その結果、精度良く推定された実施可能期間gに基づいて充電走行モードが実施される(適切な充電トルクが設定される)ため、二次電池18の充電量が不足するのを抑制できることから、モータジェネレータ17の走行補助による燃費の改善効果および排気ガスの低減効果を維持することができる。
【0045】
また、第1実施形態の制御装置20では、実施可能期間gと対応付けられる走行情報は、アシストモードが終了した時点でのハイブリッド車両の車速Vcである。本願発明者らは、車速Vcと実施可能期間gとの間に正の相関があることを見出した。マップMにおいて実施可能期間gに対応付けられた走行情報はこの車速Vcであることから、実施可能期間gの推定精度をより一層向上することができる。
【0046】
また、第1実施形態の制御装置20では、マップM(図8参照)は、ハイブリッド車両1が新規に走行した際の、アシストモード時の走行情報と当該走行情報に対応する実施可能期間gとを用いて更新される。このため、ハイブリッド車両1が新規に走行した際のデータを用いてマップMを更新できることから、実施可能期間gの推定精度をより一層向上することができる。
【0047】
また、第1実施形態の制御装置20では、設定部21は、推定された実施可能期間gに応じて、充電トルクを設定する。このため、推定された実施可能期間gが比較的長い場合には充電トルクを小さく設定することによって、EGトルクが大きくなるのを抑制しつつ二次電池18を充電することができる。一方、推定された実施可能期間gが比較的短い場合には充電トルクを大きく設定することによって、推定された実施可能期間gが短かったとしても、二次電池18の充電量を確保することができる。すなわち、エンジン11に対する負荷と充電走行モードにおける充電効率の観点から適切な充電トルクを設定することができる。
【0048】
<第2実施形態>
図11は、第2実施形態の制御装置20aを備えたハイブリッド車両1aの構成を例示した説明図である。第2実施形態の制御装置20aは、第1実施形態の制御装置20と比べて、さらに通信部29を備える点を除いて、第1実施形態の制御装置20と同じである。
【0049】
制御装置20aは、ハイブリッド車両1aの外部と通信する通信部29を備える。第2実施形態では、設定部21は、外部との通信を介して、ハイブリッド車両1a(自車両)とは異なる他のハイブリッド車両の走行によるアシストモード時の走行情報と当該走行情報に対応する実施可能期間gとを用いて更新されたマップMを参照可能である。すなわち、設定部21は、他のハイブリッド車両と通信することで、他のハイブリッド車両が走行した際に実施されたアシストモードの終了時点における車速Vcと、その後の実施可能期間gと、を対応付けたデータ(図7の白丸プロットに相当)を取得し、そのデータを用いて更新したマップMを参照して、実施可能期間gを推定することができる。または、設定部21は、ハイブリッド車両1aが有する複数の白丸プロット(図7参照)に相当するデータを外部演算装置に送信したのち、外部演算装置において当該データと他のハイブリッド車両の走行による白丸プロットに相当したデータとを用いて更新されたマップMを受信し、そのマップMを参照して、実施可能期間gを推定してもよい。いずれにしても、第2実施形態の制御装置20aでは、他のハイブリッド車両の走行によるデータを用いて更新されたマップMを参照できることから、実施可能期間gの推定精度をより一層向上することができる。また、設定部21が外部演算装置において更新されたマップMを参照する場合、マップMの更新に用いられる他のハイブリッド車両の白丸プロットに相当したデータを、ハイブリッド車両1が現在走行している地域周辺を走行したデータに限定できるのならば、そのように限定されたデータを用いてマップMを更新することにより、その地域周辺を走行する際の実施可能期間gの推定精度向上に特化したマップMを生成することができる。
【0050】
<第3実施形態>
第3実施形態の制御装置は、第2実施形態の制御装置20aと同じ構成であるが、外部との通信を介してやり取りする情報の種類が異なる。
【0051】
第3実施形態においては、設定部21は、外部との通信を介して、ハイブリッド車両1aとは異なる他のハイブリッド車両が参照している他車両マップを用いて補正されたマップMを参照可能である。他車両マップとは、他のハイブリッド車両におけるマップMに相当する。すなわち、設定部21は、他のハイブリッド車両と通信することで、他車両マップを取得し、他車両マップを用いて補正したマップMを参照して、実施可能期間gを推定することができる。または、設定部21は、マップMに相当するデータを外部演算装置に送信したのち、外部演算装置においてマップMと他車両マップとを用いて補正されたマップMを受信し、その補正後のマップMを参照して、実施可能期間gを推定してもよい。いずれにしても、第3実施形態の制御装置では、他のハイブリッド車両が参照している他車両マップを用いて補正されたマップMを参照できることから、実施可能期間gの推定精度をより一層向上することができる。また、設定部21が外部演算装置において補正されたマップMを参照する場合、マップMの補正に用いられる他車両マップを、ハイブリッド車両1が現在走行している地域周辺を走行したことのある他のハイブリッド車両の他車両マップに限定できるのならば、そのように限定された他車両マップを用いてマップMを補正することにより、その地域周辺を走行する際の実施可能期間gの推定精度向上に特化したマップMを生成することができる。
【0052】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0053】
[変形例1]
上記実施形態では、制御装置20,20aは、EG駆動制御部23およびMG駆動制御部25を含んでいたが、これに限られない。制御装置20,20aは、EG駆動制御部23およびMG駆動制御部25を含んでいなくてもよい。このような場合、ハイブリッド車両1,1aの内部において制御装置20,20aの外部に備えられたEG駆動制御部23およびMG駆動制御部25は、設定部21にて設定されたEGトルクやMGトルクを受信したのち、そのEGトルクやMGトルクに応じて、エンジン11やモータジェネレータ17を駆動させる。
【0054】
[変形例2]
上記実施形態では、実施可能期間gと対応付けられる走行情報は、アシストモードが終了した時点でのハイブリッド車両1の車速であったが、これに限られない。例えば、実施可能期間gと対応付けられる走行情報には、アシストモードが終了した時点でのハイブリッド車両1,1aの車速が含まれていればよく、その他の情報も含まれていてもよい。その他の情報としては、アシストモード開始時の車速、アシストモード中の車速の変化量、アシストモードの持続時間等が挙げられ、これら情報についても、実施可能期間gとの間に正の相関があることが見出されている。このような場合に実施可能期間gの取得に用いられるマップは、アシストモードが終了した時点でのハイブリッド車両1,1aの車速および上記その他の情報が適用されると、それに対応した実施可能期間gを取得できるマップである。むろん、このような場合に情報収集部27が収集する走行情報には、アシストモードが終了した時点でのハイブリッド車両1,1aの車速および上記その他の情報が含まれる。また、自車両内もしくは外部との通信を介したマップの更新にも、上記その他の情報が用いられてもよい。
【0055】
[変形例3]
上記実施形態では、マップMは、図7に示した複数の黒丸プロットに対して、最小二乗法を用いて二次曲線をフィッティングすることで導出されていたが、これに限られない。例えば、マップMは、図7に示した複数の白丸プロットに対して、最小二乗法を用いて最小二乗法を用いて二次曲線をフィッティングすることで導出されてもよい。または、マップMは、図7に示した複数の黒丸プロット間を直線で補間することで導出されてもよい。
【0056】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【0057】
本発明は、以下の形態としても実現することが可能である。
[適用例1]
駆動源であるエンジンおよびモータジェネレータと、前記モータジェネレータに電力を供給するとともに前記モータジェネレータによって発電された電力を蓄電する二次電池と、を備えたハイブリッド車両の制御装置であって、
前記ハイブリッド車両に要求された要求トルクに応じて、前記エンジンから出力されるエンジントルクおよび前記モータジェネレータから出力されるモータジェネレータトルクを設定する設定部と、
走行中の前記ハイブリッド車両に関する走行情報を収集する情報収集部と、を備え、
前記設定部は、
出力が許容される前記エンジントルクの許容上限が前記要求トルクより小さい場合、アシストモードとして、前記許容上限以下の前記エンジントルクを設定したうえで、当該エンジントルクと前記要求トルクとの差を前記モータジェネレータトルクとして設定し、
前記エンジントルクの前記許容上限が前記要求トルクより小さい状態から前記要求トルクより大きい状態に移行した場合、充電走行モードとして、前記二次電池の充電に用いる充電トルクと前記要求トルクとの和を前記エンジントルクとして設定したうえで、当該充電トルクに応じて負の前記モータジェネレータトルクを設定するとともに、前記アシストモード時の前記走行情報と前記充電走行モードの実施が可能な実施可能期間とを対応付けたマップを参照して、前記実施可能期間を推定する、ハイブリッド車両の制御装置。
[適用例2]
適用例1に記載のハイブリッド車両の制御装置であって、
前記情報収集部が収集する前記走行情報には、前記アシストモードが終了した時点での前記ハイブリッド車両の車速が含まれており、
前記実施可能期間と対応付けられた走行情報には、前記アシストモードが終了した時点での前記ハイブリッド車両の車速が含まれている、ハイブリッド車両の制御装置。
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載のハイブリッド車両の制御装置であって、
前記マップは、前記ハイブリッド車両が新規に走行した際の、前記アシストモード時の前記走行情報と当該走行情報に対応する前記実施可能期間とを用いて更新される、ハイブリッド車両の制御装置。
[適用例4]
適用例1から適用例3までのいずれかに記載のハイブリッド車両の制御装置であって、さらに、
前記ハイブリッド車両の外部と通信する通信部を備え、
前記設定部は、前記外部との通信を介して、他の前記ハイブリッド車両の走行による前記アシストモード時の前記走行情報と当該走行情報に対応する前記実施可能期間とを用いて更新された前記マップを参照可能である、ハイブリッド車両の制御装置。
[適用例5]
適用例1から適用例4までのいずれかに記載のハイブリッド車両の制御装置であって、さらに、
前記ハイブリッド車両の外部と通信する通信部を備え、
前記設定部は、前記外部との通信を介して、他の前記ハイブリッド車両が参照している他車両マップを用いて補正された前記マップを参照可能である、ハイブリッド車両の制御装置。
[適用例6]
適用例1から適用例5までのいずれかに記載の記載のハイブリッド車両の制御装置であって、
前記設定部は、推定された前記実施可能期間に応じて、前記充電トルクを設定する、ハイブリッド車両の制御装置。
【符号の説明】
【0058】
1,1a…ハイブリッド車両
11…エンジン
12…変速機
13…プロペラシャフト
14…ディファレンシャルギア
15…ドライブシャフト
16…タイヤ
17…モータジェネレータ
18…二次電池
20,20a…制御装置
21…設定部
23…EG駆動制御部
25…MG駆動制御部
27…情報収集部
29…通信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11