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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176163
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20241212BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094489
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 拓哉
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA21
5H770BA02
5H770DA03
5H770PA12
5H770PA21
5H770QA01
5H770QA02
5H770QA06
5H770QA08
5H770QA11
5H770QA13
5H770QA21
5H770QA27
(57)【要約】
【課題】耐振性を確保しつつ、小型化及び低コスト化した電力変換装置を得ること。
【解決手段】半導体チップを有し、並べて配置された、第一面、第一面とは反対側の第二面、及び第一面と第二面とを取り囲む4つの面を有する直方体状の複数のパワーモジュールと、複数のパワーモジュールの第二面に間隔を空けて配置され、複数のパワーモジュールのそれぞれが有したモジュール端子と電気的に接続された基板と、基板と複数のパワーモジュールとの間の間隔に配置され、基板を保持し、絶縁性を有した樹脂部材からなる基板保持部材とを備え、複数のパワーモジュールは第三面に平行な方向に並べられ、モジュール端子は、パワーモジュールの第二面、パワーモジュールの第三面、及び第三面とは反対側の第四面の少なくとも1つの面から突出した後、基板の方向に延出し、基板の方向に延出したモジュール端子の部分は、基板保持部材が有した貫通孔を貫通している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップを有し、並べて配置された、第一面、前記第一面とは反対側の第二面、及び前記第一面と前記第二面とを取り囲む4つの面である、第三面、第四面、第五面、第六面を有する直方体状の複数のパワーモジュールと、
前記複数のパワーモジュールの前記第二面に間隔を空けて配置され、前記複数のパワーモジュールのそれぞれが有したモジュール端子と電気的に接続された基板と、
前記基板と前記複数のパワーモジュールとの間の前記間隔に配置され、前記基板を保持し、絶縁性を有した樹脂部材からなる基板保持部材と、を備え、
前記複数のパワーモジュールは、前記第三面に平行な方向に並べられ、
前記モジュール端子は、前記パワーモジュールの前記第二面、前記パワーモジュールの前記第三面、及び前記第三面とは反対側の前記第四面の少なくとも1つの面から突出した後、前記基板の方向に延出し、
前記基板の方向に延出した前記モジュール端子の部分は、前記基板保持部材が有した貫通孔を貫通している電力変換装置。
【請求項2】
前記複数のパワーモジュールの前記第一面が熱的に接続された冷却面を有した冷却器と、
前記冷却器を有し、前記冷却面が設けられた側と同じ側に配置面を有した筐体と、
バスバーを介して前記複数のパワーモジュールに電気的に接続され、前記複数のパワーモジュールに隣接し、前記筐体の前記配置面に熱的に接続されたフィルムコンデンサと、を備え、
前記配置面は、前記基板保持部材が有した固定ボスが固定されたボス固定部を有し、
前記ボス固定部は、前記冷却面、及び前記フィルムコンデンサと前記バスバーとを前記配置面に投影した前記配置面の投影部分を除いた前記配置面の部分に設けられている請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記貫通孔は、前記複数のパワーモジュールの側の開口が前記基板の側の開口よりも大きい漏斗形状である請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記基板保持部材は、前記基板と機械的に接続された接続端子を有し、
前記接続端子は、前記基板保持部材に埋設された埋設部、及び前記基板の方向に延出し、前記基板に接続された延出部を有し、
前記基板は、前記接続端子により前記基板保持部材に保持されている請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記接続端子の部分が、電気回路用配線である請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
複数の前記基板を有し、
前記接続端子は、前記複数の基板に機械的に接続され、
前記接続端子の部分が、電気回路用配線である請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記複数のパワーモジュールの前記第二面に垂直な方向に見て、前記複数の基板の少なくとも一部が重複して配置されている請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
重複した前記複数の基板の間の部分に、追加の基板保持部材が設けられ、
前記追加の基板保持部材は、少なくとも一つの前記基板を保持している請求項7に記載の電力変換装置。
【請求項9】
ACバスバーを有し、前記ACバスバーを介して前記複数のパワーモジュールに電気的に接続されたACターミナルを備え、
前記基板と、前記バスバー及び前記ACバスバーとの間の少なくとも一部に、前記基板保持部材が設けられている請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項10】
実装部品であり、前記パワーモジュールと電気的に接続された、トランス、アルミ電解コンデンサ、及びバックアップトランスの少なくとも一つが前記基板に設けられ、
前記基板保持部材に対向した前記実装部品の部分と、前記基板保持部材とが、接着剤を介して接着されている請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記基板保持部材は、金属からなるプレートを内部に有し、
前記基板保持部材の前記固定ボス及び前記筐体は、金属からなり、
前記プレートと前記固定ボスと前記基板のグランドとが電気的に接続されている請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記筐体は、車両における振動発生源である、エンジン、トランスミッション、モータ、及びe-axleの少なくとも一つと剛体接続されている請求項2、9、11のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV、PHEV)、電気自動車(EV)、及び燃料電池車(FCV)といった電動化車両には、電動化の為のコンポーネントである電力変換装置が搭載されている。電力変換装置としては、バッテリからの直流電力をモータへの交流電力に変換して、交流電力を駆動用のモータに供給するインバータ、バッテリの電圧を昇圧するコンバータ等が挙げられる。電力変換装置は、近年、低コスト化が求められている。
【0003】
また、HV、PHV,PHEVにおいては、エンジンに加えて、電力変換装置がエンジンルーム内に搭載される。そのため、小型の電力変換装置が求められる傾向がある。また、EVでもリア側に駆動モータ及びインバータが搭載されることがあり、トランクルーム及び乗員の居住空間を確保するために、小型の電力変換装置が求められる傾向がある。
【0004】
また、近年、各電力変換装置の接続ハーネスを短くする目的で、各電力変換装置の筐体の数を低減すると共に、低コスト化、小型化を図る目的で、モータ、エンジン、又はトランスミッション等の筐体にインバータ等の電力変換装置を直接剛体接続することが増えている。そのため、電力変換装置の内部部品が、厳しい振動スペックに耐えることが求められている。厳しい振動スペックに耐える一般的な電力変換装置の構造が開示されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に開示された構造では、基板が、放熱部材であるベース部材に、支持部材により直接固定されている。そのため、基板及び基板に実装された部品の耐振性が確保されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6369355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電動化車両の電力変換装置、例えば、インバータは、様々なレイアウトが考えられる。レイアウトの一つに、UVW相の各パワーモジュールを冷却器上に並べ、パワーモジュールの鉛直上方向に基板が設けられ、パワーモジュールから基板にパワーモジュールを制御する為の端子が伸びているレイアウトがある。冷却器上のパワーモジュールの実装面積を最小限にするためには、隣り合う2つのパワーモジュールの間に十分な隙間を設けることができない。上記特許文献1に記載された、基板を固定するボス固定部を冷却器に設けることができないため、基板及び基板に実装された部品が、振動スペックに耐えることは難しいという課題があった。
【0007】
上記特許文献1においては、基板がベース部材に固定されているため、基板及び基板に実装された部品は厳しい振動スペックに耐えることができる。しかしながら、ベース部材に基板を直接固定する構成であるため、基板に対向したベース部材の部分に基板を固定するスペースが必要になりベース部材が大型化するので、電力変換装置の小型化及び低コスト化が難しいという課題があった。
【0008】
そこで、本願は、耐振性を確保しつつ、小型化及び低コスト化した電力変換装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願に開示される電力変換装置は、半導体チップを有し、並べて配置された、第一面、第一面とは反対側の第二面、及び第一面と第二面とを取り囲む4つの面である、第三面、第四面、第五面、第六面を有する直方体状の複数のパワーモジュールと、複数のパワーモジュールの第二面に間隔を空けて配置され、複数のパワーモジュールのそれぞれが有したモジュール端子と電気的に接続された基板と、基板と複数のパワーモジュールとの間の間隔に配置され、基板を保持し、絶縁性を有した樹脂部材からなる基板保持部材と、を備え、複数のパワーモジュールは、第三面に平行な方向に並べられ、モジュール端子は、パワーモジュールの第二面、パワーモジュールの第三面、及び第三面とは反対側の第四面の少なくとも1つの面から突出した後、基板の方向に延出し、基板の方向に延出したモジュール端子の部分は、基板保持部材が有した貫通孔を貫通しているものである。
【発明の効果】
【0010】
本願に開示される電力変換装置によれば、半導体チップを有し、並べて配置された、第一面、第一面とは反対側の第二面、及び第一面と第二面とを取り囲む4つの面を有する直方体状の複数のパワーモジュールと、複数のパワーモジュールの第二面に間隔を空けて配置され、複数のパワーモジュールのそれぞれが有したモジュール端子と電気的に接続された基板と、基板と複数のパワーモジュールとの間の間隔に配置され、基板を保持し、絶縁性を有した樹脂部材からなる基板保持部材とを備え、複数のパワーモジュールは第三面に平行な方向に並べられ、モジュール端子は、パワーモジュールの第二面、パワーモジュールの第三面、及び第三面とは反対側の第四面の少なくとも1つの面から突出した後、基板の方向に延出し、基板の方向に延出したモジュール端子の部分は、基板保持部材が有した貫通孔を貫通しているため、基板が基板と複数のパワーモジュールとの間の間隔に配置された基板保持部材により保持されるので、基板及び基板に実装された部品の耐振性を確保することができる。並べて配置されたパワーモジュールの間に隙間を設けて基板を保持する必要がないため、電力変換装置を小型化及び低コスト化することができる。基板保持部材が有した貫通孔をモジュール端子が貫通して基板に接続されるため、モジュール端子を短縮できるので、電力変換装置を小型化及び低コスト化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る電力変換装置の概略を示す分解斜視図である。
図2】実施の形態1に係る電力変換装置の概略を示す斜視図である。
図3図2のA-A断面位置で切断した電力変換装置の断面図である。
図4図2のB-B断面位置で切断した電力変換装置の断面図である。
図5】実施の形態1に係る電力変換装置のパワーモジュールを示す斜視図である。
図6】実施の形態1に係る電力変換装置の駆動回路用基板を示す斜視図である。
図7】実施の形態1に係る電力変換装置の制御回路用基板を示す斜視図である。
図8】実施の形態1に係る電力変換装置の設置状態の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本願の実施の形態による電力変換装置を図に基づいて説明する。なお、各図において同一、又は相当部材、部位については同一符号を付して説明する。
【0013】
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る電力変換装置1の概略を示す分解斜視図、図2は電力変換装置1の概略を示す斜視図、図3図2のA-A断面位置で切断した電力変換装置1の断面図、図4図2のB-B断面位置で切断した電力変換装置1の断面図、図5は電力変換装置1のパワーモジュール2を示す斜視図、図6は電力変換装置1の駆動回路用基板3bを示す斜視図、図7は電力変換装置1の制御回路用基板3aを示す斜視図、図8は電力変換装置1の設置状態の例を示す図である。電力変換装置1は、入力電流を直流から交流、交流から直流、又は入力電圧を異なる電圧に変換する装置である。本実施の形態では、電力変換装置1を、直流電力を、パワーモジュール2で電力変換して3相交流を出力するインバータとして説明する。電力変換装置1の構成はこれに限るものではない。
【0014】
<電力変換装置1>
電力変換装置1は、図1に示すように、複数のパワーモジュール2と、基板3と、基板保持部材4とを備える。パワーモジュール2は、半導体チップ10(図1では図示せず)を有し、並べて配置される。パワーモジュール2のそれぞれは、図5に示すように、第一面2a、第一面2aとは反対側の第二面2b、及び第一面2aと第二面2bとを取り囲む4つの面である、第三面2c、第四面2d、第五面2e、第六面2fを有する直方体状である。基板3は、図1に示すように、複数のパワーモジュール2の第二面2bに間隔を空けて配置され、複数のパワーモジュール2のそれぞれが有したモジュール端子2gと電気的に接続される。基板保持部材4は、基板3と複数のパワーモジュール2との間の間隔に配置され、基板3を保持する。基板保持部材4は、絶縁性を有した樹脂部材からなる。
【0015】
基板3は1枚に限るものではなく、本実施の形態では、電力変換装置1は、2枚の基板3を有する。2枚の基板3は、制御回路用基板3aと、駆動回路用基板3bである。複数のパワーモジュール2は、第三面2cに平行な方向に並べられる。図では第三面2cに平行な方向をX方向とする。モジュール端子2gは、パワーモジュール2の第二面2b、パワーモジュール2の第三面2c、及び第三面2cとは反対側の第四面2dの少なくとも1つの面から突出した後、基板3の方向に延出する。基板3の方向に延出したモジュール端子2gの部分は、図4に示すように、基板保持部材4が有した貫通孔4aを貫通している。本実施の形態では、モジュール端子2gは、パワーモジュール2の第三面2c及び第四面2dのそれぞれに一つ設けられ、駆動回路用基板3bに接続される。モジュール端子2gを配置するパワーモジュール2の配置面、モジュール端子2gの本数、及びモジュール端子2gが接続される基板3はこれに限るものではない。本実施の形態では、基板3は、基板保持部材4が有した接続端子4cにより保持される。基板3を保持する接続端子4cの詳細については後述する。
【0016】
このように構成することで、基板3が基板3と複数のパワーモジュール2との間の間隔に配置された基板保持部材4により保持されるので、基板3及び基板3に実装された部品の耐振性を確保することができる。並べて配置されたパワーモジュール2の間に隙間を設けて基板3を保持する必要がないため、電力変換装置1を小型化及び低コスト化することができる。基板保持部材4が有した貫通孔4aをモジュール端子2gが貫通して基板3に接続されるため、モジュール端子2gを短縮できるので、電力変換装置1を小型化及び低コスト化することができる。また、モジュール端子2gが短縮されるため、パワーモジュール2と駆動回路との間の距離が短縮できるので、パワーモジュール2の制御性を向上させることができる。
【0017】
モジュール端子2gは、駆動回路用基板3bに設けたスルーホール3gにおいて、駆動回路用基板3bに接続される。本実施の形態では、貫通孔4aは、複数のパワーモジュール2の側の開口が駆動回路用基板3bの側の開口よりも大きい漏斗形状である。このように構成することで、モジュール端子2gとスルーホール3gとを接続する際に必要になる、モジュール端子2gをスルーホール3gに誘導するための追加のガイド部品が不要になるため、パワーモジュール2と駆動回路用基板3bと間の距離を短縮することができる。パワーモジュール2と駆動回路用基板3bと間の距離が短縮されるため、パワーモジュール2と駆動回路との間の距離が短縮できるので、パワーモジュール2の制御性を向上させることができる。また、電力変換装置1の高さが低減されるので、電力変換装置1を小型化することができる。
【0018】
<冷却器9、筐体6、フィルムコンデンサ5>
電力変換装置1は、図1に示すように、さらに、冷却器9と、筐体6と、フィルムコンデンサ5とを備える。冷却器9は、複数のパワーモジュール2の第一面2aが熱的に接続された冷却面9aを有する。冷却器9は、図3に示すように、冷媒が流れる流路部9bを有する。冷却面9aは、流路部9bを覆う蓋部9cに形成される。冷媒には、例えば、水又はエチレングリコール液が使用される。筐体6は、図1に示すように、冷却器9を有し、冷却面9aが設けられた側と同じ側に配置面6aを有する。本実施の形態では、冷却面9aと配置面6aは、同一平面上に設けられる。筐体6は、アルミニウムなどの金属からダイカストにより作製される。蓋部9cは、例えば、鍛造アルミ合金である。フィルムコンデンサ5は、バスバー7を介して複数のパワーモジュール2に電気的に接続される。フィルムコンデンサ5は、複数のパワーモジュール2に隣接し、筐体6の配置面6aに熱的に接続される。複数のパワーモジュール2及びフィルムコンデンサ5は、冷却器9により冷却される。バスバー7は、パワーモジュール2のパワー端子2hに、例えば、溶接により接続される。
【0019】
配置面6aは、基板保持部材4が有した固定ボス4bが固定されたボス固定部6bを有する。ボス固定部6bは、冷却面9a、及びフィルムコンデンサ5とバスバー7とを配置面6aに投影した配置面6aの投影部分を除いた配置面6aの部分に設けられている。固定ボス4bとボス固定部6bとの固定方法は、例えば、ねじ止めである。このように構成することで、基板3を保持した基板保持部材4が、冷却面9a、及びフィルムコンデンサ5とバスバー7とを配置面6aに投影した配置面6aの投影部分を除いた配置面6aの部分に固定されるため、並べて配置されたパワーモジュール2の間、流路部9bが内側に設けられた冷却面9a、及びパワーモジュール2とフィルムコンデンサ5との間にボス固定部6bを設ける必要がない。並べて配置されたパワーモジュール2の間、冷却面9a、及びパワーモジュール2とフィルムコンデンサ5との間にボス固定部6bを設ける必要がないので、電力変換装置1を小型化及び低コスト化することができる。基板3は基板保持部材4に保持されているため、基板3及び基板3に実装された部品の耐振性を確保することができる。
【0020】
また、複数のパワーモジュール2の第二面2bに垂直な方向に見て、高さが高い部品であるフィルムコンデンサ5とは重複しない位置に基板3を設置するため、無駄な空間が無くなり、電力変換装置1の高さを低くすることができる。なお、基板保持部材4の固定箇所は、筐体6の配置面6aに限るものではない。例えば、パワーモジュール2が、半導体チップ10をケースに収容し、ケースの内部にゲルを充填した構成である場合、ケースの内側であって基板保持部材4の側に、ボス固定部を設けた構成でも構わない。
【0021】
<パワーモジュール2>
パワーモジュール2について説明する。図5では、破線により1つの半導体チップ10を示している。1つのパワーモジュール2が有する半導体チップ10の個数は1つに限るものではなく、パワーモジュール2は複数の半導体チップ10を有しても構わない。パワーモジュール2は、直流電力を電力変換して3相交流を出力する。本実施の形態では、図1に示すように、電力変換装置1は、各相に対応した3つのパワーモジュール2を備える。電力変換装置1が備えるパワーモジュール2の個数はこれに限るものではない。パワーモジュール2の個数は2つでもよく、4つ以上であっても構わない。接合部材(図示せず)を介して、パワーモジュール2の第一面2aが冷却面9aに熱的に接続される。接合部材は、例えば、半田である。
【0022】
複数のパワーモジュール2の配置は、第三面2cに平行な方向であるX方向に、パワーモジュール2のそれぞれを同じ向きに並べた配置である。このように構成することで、複数のパワーモジュール2が同じ方向に整列して配置されるため、電力変換装置1を小型化することができる。なお、さらに複数のパワーモジュール2を設ける場合、パワーモジュール2を2列に整列させて配置しても構わない。
【0023】
モジュール端子2g及びパワー端子2hは、例えば、電気抵抗率が小さく導電性に優れた銅から作製される。モジュール端子2gは、パワーモジュール2の駆動に係わる端子である。パワー端子2hは、パワーモジュール2の入出力に係わる端子である。例えば、一方のパワー端子2hは直流電源に接続され、他方のパワー端子2hは負荷であるモータに接続される。本実施の形態では、一方のパワー端子2hは、バスバー7を介してフィルムコンデンサ5に接続され、フィルムコンデンサ5を介して直流電源(図示せず)に接続される。フィルムコンデンサ5は、パワーモジュール2に入力される電力を平滑化する。
【0024】
パワーモジュール2は、トランスファーモールドにより成形されている。そのため、半導体チップ10は、モールド樹脂により覆われている。このように構成することで、半導体チップ10を外部から容易に保護することができる。また、トランスファーモールドにより成形されたパワーモジュール2において基板3を保持することは困難であるが、本願では、基板3を保持する基板保持部材4を設けたため、パワーモジュール2において基板3を保持しなくても基板3の耐振性を向上させることができる。なお、パワーモジュール2は、トランスファーモールドにより成形した構成に限るものではなく、半導体チップ10をケースに収容し、ケースの内部にゲルを充填した構成でも構わない。ゲルにより半導体チップ10を封止した構成であっても基板3の耐振性を向上させることができる。
【0025】
<基板保持部材4>
基板保持部材4における、基板3を保持する構成について、図4を用いて説明する。基板保持部材4は、基板3と機械的に接続された接続端子4cを有する。接続端子4cは、基板保持部材4に埋設された埋設部4c1、及び基板3の方向に延出し、基板3に接続された延出部4c2を有する。基板3は、接続端子4cにより基板保持部材4に保持されている。接続端子4cは、例えば、金属により作製される。本実施の形態では、制御回路用基板3a及び駆動回路用基板3bの双方が、複数の接続端子4cに接続されて、基板保持部材4に保持されている。また本実施の形態では、接続端子4cはU字状に形成され、U字の底部が埋設部4c1であり、接続端子4cの一端と他端に延出部4c2が形成される。制御回路用基板3aは、複数のパワーモジュール2の第二面2bに垂直な方向に見て、制御回路用基板3aが基板保持部材4に重複した部分で接続端子4cの一端に接続されている。駆動回路用基板3bは、複数のパワーモジュール2の第二面2bに垂直な方向に見て、駆動回路用基板3bが基板保持部材4に重複した部分で接続端子4cの他端に接続されている。基板3と接続端子4cとは、例えば、半田により接続される。接続端子4cは、例えば、基板保持部材4を樹脂により成形する際に、基板保持部材4に設けられる。
【0026】
このように構成することで、ボルトなどの締結部材を用いることなく、基板3を基板保持部材4に固定するための構造部材として接続端子4cを用いることができる。ボルトと比較して接続端子4cにより基板3を固定する場合、少ない面積での基板3の固定が可能になるので、電力変換装置1を小型化することができる。また、ボルトと比較して接続端子4cにより基板3を固定する場合、製造面において、短時間で基板3の固定が可能になるので、製造組立時の組立工数、及び組立設備の投資額の低減が可能になり、電力変換装置1の生産性を向上させることができる。
【0027】
上述した構成の効果についてさらに説明する。基板3の耐振性を向上させるには、基板3の剛性を確保することが望ましい。基板単体で剛性を確保するためには、式(1)で示される、断面2次モーメントを上げることが求められる。具体的には、基板3の長手方向である、X方向まわりの基板3の断面2次モーメントを上げることが求められる。基板3の長方形断面における断面2次モーメントIの計算式を式(1)に示す。
I=b×h3/12 ・・・(1)
式(1)において、長方形の幅をb、高さをhとする。長方形断面を有した構造において、幅b、高さhを大きくすることで断面2次モーメントを上げることができる。断面2次モーメントを上げる方策の1つとして、基板3の厚みを厚くする方法が考えられるが、基板3の厚みを一般に流通していない厚みにしてしまうと、基板3のコストが上がる要因となる。
【0028】
また、基板3の剛性を確保するためには、基板3の撓みを抑制することが求められる。基板3の中心部の撓みδの計算式を式(2)に示す。
δ=w×l4/(384×E×I) ・・・(2)
式(2)において、等分布荷重(基板3の自重)をw、梁の長さ(基板3の長手方向の部分の長さ)をl、ヤング率をE、断面2次モーメントをIとする。
【0029】
梁の長さlは基板3に搭載される電気部品の大きさ及び回路の大きさに依存するため、梁の長さlを減少させることは困難である。断面2次モーメントIは、上述したように増加させることが困難である。そのため、式(2)における梁の長さl、及び断面2次モーメントIは、本願の構成では制限されている。
【0030】
基板3の厚みを厚くする方法以外に、基板3を多くの箇所でボルトにより基板保持部材4に固定し、基板3と基板保持部材4とを1つの剛性部材とすることで、断面2次モーメントを上げる方法が考えられる。しかしながら、ボルトによる固定部の数を増やすと、電力変換装置1の大型化、製造組立時の組立工数の増加、及び組立設備の投資額の増加に繋がる。
【0031】
本願の構成では、樹脂で成形した基板保持部材4に接続端子4cを設け、接続端子4cにより基板3を固定しているため、構造部材である接続端子4cにより基板3の撓みを抑制することができる。本実施の形態では、基板保持部材4は複数の接続端子4cを有し、複数の接続端子4cは基板3の長手方向に並べられているため、さらに基板3の撓みを抑制することができる。基板3の撓みが抑制されるため、基板3及び基板3に実装されている部品の耐振性を向上させることができる。
【0032】
本実施の形態では、接続端子4cの部分が、電気回路用配線である。接続端子4cは、例えば、電気伝導性に優れた銅により作製される。接続端子4cと基板3とを、例えば半田により接続し、接続端子4cを電力変換装置1の電気回路の配線として利用する。接続端子4cが電気回路の配線として利用できるため、基板3上の配線パターンが削減されるので、電力変換装置1を小型化することができる。
【0033】
本実施の形態では、電力変換装置1は複数の基板3を有し、接続端子4cは、複数の基板3に機械的に接続され、接続端子4cの部分が、電気回路用配線である。電力変換装置1がインバータである場合、インバータに用いる基板は、大きく分けて、制御回路部と駆動回路部の2つの機能に分けられる。制御回路用の基板と駆動回路用の基板のそれぞれを準備し、それぞれの基板をコネクタとハーネスで接続する場合、コネクタとハーネスの費用が追加されることになる。コネクタとハーネスの費用を削減するために、制御回路用の基板と駆動回路用の基板に分けずに1枚の基板に制御回路部と駆動回路部とを設けることはできる。制御回路部と駆動回路部とを1枚の基板に設けた場合、基板の大きさが大きくなるため、高さが高い電気部品(例えばフィルムコンデンサ5)と基板とが干渉しないように、部品高さの高い部品の上に、基板を配置することになる。その場合、部品高さの低い部品(例えばパワーモジュール2)と基板との間に無駄な空間ができてしまう。
【0034】
本実施の形態では、電力変換装置1は、複数の基板3として、制御回路用基板3a及び駆動回路用基板3bを有する。複数の基板3の枚数は2枚に限るものではない。制御回路用基板3a及び駆動回路用基板3bの双方は、基板保持部材4に設けた接続端子4cにより機械的かつ電気的に接続されているため、高さが高い電気部品の上には基板を設置せず、高さが高い電気部品の周囲における高さが低い電気部品のエリアに制御回路用基板3a及び駆動回路用基板3bの双方を配置することができる。高さが高い電気部品の周囲に制御回路用基板3a及び駆動回路用基板3bの双方を設置するため、高さが高い電気部品の周囲の無駄な空間を無くすことができるので、電力変換装置1を小型化することができる。また、双方の基板を接続する基板接続用のコネクタとハーネスが不要になるため、電力変換装置1を小型化及び低コスト化することができる。
【0035】
本実施の形態では、複数のパワーモジュール2の第二面2bに垂直な方向に見て、複数の基板3の少なくとも一部が重複して配置されている。図1に示すように、電力変換装置1は、複数の基板3として、制御回路用基板3a及び駆動回路用基板3bを有する。制御回路用基板3aと駆動回路用基板3bとは、接続端子4cに接続される制御回路用基板3aの部分を除いて重複している。制御回路用基板3aと駆動回路用基板3bとが重複する領域はこれに限るものではない。
【0036】
このように構成することで、複数のパワーモジュール2の第二面2bに垂直な方向に見て、電力変換装置1における基板3の占有する面積を縮小することができるので、電力変換装置1を小型化することができる。なお本願では、電力変換装置1が複数の基板3を備えた例を示したが、電力変換装置1の大型化が抑制されるのであれば、基板3は1枚であっても構わない。また、本願では、電力変換装置1が複数の基板3を備え、複数の基板3が重複して配置された例を示したが、電力変換装置1の大型化が抑制されるのであれば、複数の基板3は、複数のパワーモジュール2の第二面2bに垂直な方向に見て、重複せずに並べて配置しても構わない。
【0037】
本実施の形態では、重複した複数の基板3の間の部分に、追加の基板保持部材11が設けられ、追加の基板保持部材11は、少なくとも一つの基板3を保持している。電力変換装置1が複数の基板3を有した場合、図1に示すように、電力変換装置1は重複して設けた制御回路用基板3aと駆動回路用基板3bとの間に追加の基板保持部材11を設けても構わない。追加の基板保持部材11は、絶縁性を有した樹脂部材により作製される。追加の基板保持部材11は、基板固定部11aを有し、制御回路用基板3aの固定部3hが基板固定部11aに固定される。また本実施の形態では、基板保持部材4は、基板固定部4eを有し、駆動回路用基板3bの固定部3hが基板固定部4eに固定される。これらの部分は一括して固定してもよく、固定方法は、例えば、ねじ止めである。
【0038】
このように構成することで、制御回路用基板3aと駆動回路用基板3bとの間に絶縁性を有した追加の基板保持部材11が設けられるので、制御回路用基板3aと駆動回路用基板3bとの間の絶縁性を向上させることができる。制御回路用基板3aは、接続端子4cに加えて、追加の基板保持部材11の基板固定部11aで保持されるので、制御回路用基板3a及び制御回路用基板3aに実装されている部品の耐振性をさらに向上させることができる。なお本実施の形態では、追加の基板保持部材11は固定ボス11cを有し、固定ボス11cは、駆動回路用基板3bが有した固定補助部3iを介して、固定ボス4bと共にボス固定部6bに固定される。固定方法は、例えば、ねじ止めである。
【0039】
本実施の形態では、電力変換装置1は、ACバスバー8aを有し、ACバスバー8aを介して複数のパワーモジュール2に電気的に接続されたACターミナル8を備える。ACターミナル8は、複数のパワーモジュール2のフィルムコンデンサ5の側とは反対側の配置面6aに配置される。ACバスバー8aは、パワーモジュール2のパワー端子2hに、例えば、溶接により接続される。ACバスバー8aのパワー端子2hの側とは反対側の端部は、例えば、モータ(図示せず)に接続される。基板3である駆動回路用基板3bと、バスバー7及びACバスバー8aとの間の少なくとも一部に、図4に示すように、基板保持部材4が設けられている。バスバー7及びACバスバー8aは、高電圧になる部材である。
【0040】
このように構成することで、高電圧になる、バスバー7及びACバスバー8aの部分と駆動回路用基板3bとの間に、絶縁性を有した基板保持部材4が設けられるので、バスバー7及びACバスバー8aの部分と駆動回路用基板3bとの間の絶縁を基板保持部材4により確保することができる。バスバー7及びACバスバー8aの部分と駆動回路用基板3bとの間の絶縁が確保されるので、バスバー7及びACバスバー8aの部分と駆動回路用基板3bとの間の距離を短縮することができる。バスバー7及びACバスバー8aの部分と駆動回路用基板3bとの間の距離が短縮できるので、電力変換装置1を小型化することができる。
【0041】
実装部品であり、パワーモジュール2と電気的に接続された、トランス、アルミ電解コンデンサ、及びバックアップトランスの少なくとも一つが基板3に設けられる。本実施の形態では、図6に示すように、駆動回路用基板3bにトランス3c、及びアルミ電解コンデンサ3dが設けられる。図7に示すように、制御回路用基板3aにバックアップトランス3eが設けられる。トランス3c及びアルミ電解コンデンサ3dは、駆動回路用基板3bのパワーモジュール2の側とは反対側に設けられ、バックアップトランス3eは、制御回路用基板3aのパワーモジュール2の側に設けられる。
【0042】
基板保持部材に対向した実装部品の部分と、基板保持部材とが、接着剤3fを介して接着されている。本実施の形態では、図3に示すように、追加の基板保持部材11に対向したトランス3c及びアルミ電解コンデンサ3dの部分と、追加の基板保持部材11とが、接着剤3fを介して接着されている。図4に示すように、追加の基板保持部材11に対向したバックアップトランス3eの部分と、追加の基板保持部材11とが、接着剤3fを介して接着されている。
【0043】
このように構成することで、トランス3c、アルミ電解コンデンサ3d、及びバックアップトランス3eが基板保持部材である追加の基板保持部材11に固定されるので、基板3及び基板3に実装される電気部品の耐振性をさらに確保することができる。基板3及び基板3に実装される電気部品の耐振性がさらに確保されるので、耐振性の要求が厳しい、自動車用モータに剛体接続される電力変換装置に本願で開示した電力変換装置1を用いることができる。剛体接続とは、振動吸収材を介さずに2つの部材を機械的に接続することを意味し、2つの部材が接続された部分において撓まない接続である。
【0044】
また本実施の形態では、図3に示すように、トランス3c及びアルミ電解コンデンサ3dが対向した追加の基板保持部材11の部分に凹部11bが設けられ、凹部11bの底部において、トランス3c及びアルミ電解コンデンサ3dが接着剤3fを介して接着される。図4に示すように、バックアップトランス3eが対向した追加の基板保持部材11の部分に凹部11bが設けられ、凹部11bの底部において、バックアップトランス3eが接着剤3fを介して接着される。このように構成することで、制御回路用基板3aと駆動回路用基板3bとの間の距離を短くすることができるので、電力変換装置1を小型化することができる。
【0045】
基板保持部材4は、図4に示すように、金属からなるプレート4dを内部に有する。プレート4dは、例えば、基板保持部材4を樹脂により成形する際に、基板保持部材4に設けられる。基板保持部材4の固定ボス4b及び筐体6は、金属からなり、プレート4dと固定ボス4bと基板3である駆動回路用基板3bのグランドとが電気的に接続されている。筐体6の電位はグランドであり、プレート4dと固定ボス4bと駆動回路用基板3bのグランドとは、筐体6の電位と同一になる。プレート4dと固定ボス4bと基板3のグランドとは、例えば、接続端子4cを利用して電気的に接続される。プレート4dと固定ボス4bとの接続には、基板保持部材4を樹脂により成形する際に接続配線4fを設けて、双方を接続しても構わない。
【0046】
このように構成することで、駆動回路用基板3bの駆動回路に接続されたトランス3cに必要なグランドパターンを容易に設けることができる。また、プレート4dが、パワーモジュール2の半導体チップ10と駆動回路用基板3bとの間に設けられてグランドに接続されているため、半導体チップ10のスイッチング時に発生されるノイズを遮断する、ノイズシールドとしてプレート4dを機能させることができる。プレート4dがノイズシールドとして機能するため、ノイズシールドを新たに追加する必要がないので、電力変換装置1の生産性を向上させることができる。また、プレート4dは基板保持部材4の樹脂材料と比較してヤング率が高いため、基板保持部材4の剛性を向上させることができる。また、基板保持部材4の剛性が向上するので、基板保持部材4に固定された基板3及び基板3に実装された電気部品の耐振性を向上させることができる。
【0047】
<電力変換装置1の設置例>
電力変換装置1は、例えば、車両12に搭載される機器である。車両12は、エンジン、トランスミッション、モータ、又はe-axle等の振動発生源13を有する。筐体6は、図8に示すように、車両12における振動発生源13である、エンジン、トランスミッション、モータ、及びe-axleの少なくとも一つと剛体接続されている。図8において、筐体6は破線で示した部分である。上述した構成の電力変換装置1であれば、耐振性の要求が厳しい車両12が有した振動発生源13に電力変換装置1の筐体6を剛体接続しても、電力変換装置1の耐振性を確保することができる。なお、パワーモジュール2は、トランスファーモールドにより成形された構成でも、ゲルにより封止された構成でも、耐振性の要求が厳しい車両12が有した振動発生源13に電力変換装置1の筐体6を剛体接続された状態において、電力変換装置1の耐振性を確保することができる。
【0048】
以上のように、実施の形態1による電力変換装置1において、半導体チップ10を有し、並べて配置された、第一面2a、第一面2aとは反対側の第二面2b、及び第一面2aと第二面2bとを取り囲む4つの面を有する直方体状の複数のパワーモジュール2と、複数のパワーモジュール2の第二面2bに間隔を空けて配置され、複数のパワーモジュール2のそれぞれが有したモジュール端子2gと電気的に接続された基板3と、基板3と複数のパワーモジュール2との間の間隔に配置され、基板3を保持し、絶縁性を有した樹脂部材からなる基板保持部材4とを備え、複数のパワーモジュール2が、第三面2cに平行な方向に並べられ、モジュール端子2gが、第二面2b、第三面2c、及び第三面2cとは反対側の第四面2dの少なくとも1つの面から突出した後、基板3の方向に延出し、基板3の方向に延出したモジュール端子2gの部分が、基板保持部材4が有した貫通孔4aを貫通しているため、基板3が基板3と複数のパワーモジュール2との間の間隔に配置された基板保持部材4により保持されるので、基板3及び基板3に実装された部品の耐振性を確保することができる。並べて配置されたパワーモジュール2の間に隙間を設けて基板3を保持する必要がないため、電力変換装置1を小型化及び低コスト化することができる。基板保持部材4が有した貫通孔4aをモジュール端子2gが貫通して基板3に接続されるため、モジュール端子2gを短縮できるので、電力変換装置1を小型化及び低コスト化することができる。
【0049】
配置面6aが、基板保持部材4が有した固定ボス4bが固定されたボス固定部6bを有し、ボス固定部6bが、冷却面9a、及びフィルムコンデンサ5とバスバー7とを配置面6aに投影した配置面6aの投影部分を除いた配置面6aの部分に設けられている場合、基板3を保持した基板保持部材4が、冷却面9a、及びフィルムコンデンサ5とバスバー7とを配置面6aに投影した配置面6aの投影部分を除いた配置面6aの部分に固定されるため、並べて配置されたパワーモジュール2の間、流路部9bが内側に設けられた冷却面9a、及びパワーモジュール2とフィルムコンデンサ5との間にボス固定部6bを設ける必要がない。並べて配置されたパワーモジュール2の間、冷却面9a、及びパワーモジュール2とフィルムコンデンサ5との間にボス固定部6bを設ける必要がないので、電力変換装置1を小型化及び低コスト化することができる。基板3は基板保持部材4に保持されているため、基板3及び基板3に実装された部品の耐振性を確保することができる。
【0050】
貫通孔4aが、複数のパワーモジュール2の側の開口が駆動回路用基板3bの側の開口よりも大きい漏斗形状である場合、モジュール端子2gをスルーホール3gに誘導するための追加のガイド部品が不要になるため、パワーモジュール2と駆動回路用基板3bと間の距離を短縮することができる。パワーモジュール2と駆動回路用基板3bと間の距離が短縮されるため、パワーモジュール2と駆動回路との間の距離が短縮できるので、パワーモジュール2の制御性を向上させることができる。また、電力変換装置1の高さが低減されるので、電力変換装置1を小型化することができる。
【0051】
基板3が、接続端子4cにより基板保持部材4に保持されている場合、ボルトなどの締結部材を用いることなく、基板3を基板保持部材4に固定するための構造部材として接続端子4cを用いることができる。ボルトと比較して接続端子4cにより基板3を固定する場合、少ない面積での基板3の固定が可能になるので、電力変換装置1を小型化することができる。また、ボルトと比較して接続端子4cにより基板3を固定する場合、製造面において、短時間で基板3の固定が可能になるので、製造組立時の組立工数、及び組立設備の投資額の低減が可能になり、電力変換装置1の生産性を向上させることができる。
【0052】
接続端子4cの部分が、電気回路用配線である場合、接続端子4cが電気回路の配線として利用できるため、基板3上の配線パターンが削減されるので、電力変換装置1を小型化することができる。
【0053】
電力変換装置1が複数の基板3を有し、接続端子4cが、複数の基板3に機械的に接続され、接続端子4cの部分が、電気回路用配線である場合、高さが高い電気部品の上には基板を設置せず、高さが高い電気部品の周囲における高さが低い電気部品のエリアに複数の基板3を配置することができる。高さが高い電気部品の周囲に複数の基板3を設置するため、高さが高い電気部品の周囲の無駄な空間を無くすことができるので、電力変換装置1を小型化することができる。また、複数の基板3を接続する基板接続用のコネクタとハーネスが不要になるため、電力変換装置1を小型化及び低コスト化することができる。
【0054】
複数のパワーモジュール2の第二面2bに垂直な方向に見て、複数の基板3の少なくとも一部が重複して配置されている場合、複数のパワーモジュール2の第二面2bに垂直な方向に見て、電力変換装置1における基板3の占有する面積を縮小することができるので、電力変換装置1を小型化することができる。
【0055】
重複した複数の基板3の間の部分に、追加の基板保持部材11が設けられ、追加の基板保持部材11が、少なくとも一つの基板3を保持している場合、重複した複数の基板3の間の絶縁性を向上させることができる。少なくとも一つの基板3が、基板保持部材4の接続端子4cに加えて、追加の基板保持部材11で保持されるので、少なくとも一つの基板3及び基板3に実装されている部品の耐振性をさらに向上させることができる。
【0056】
駆動回路用基板3bと、バスバー7及びACバスバー8aとの間の少なくとも一部に、基板保持部材4が設けられている場合、バスバー7及びACバスバー8aの高電圧の部分と駆動回路用基板3bとの間に、絶縁性を有した基板保持部材4が設けられるので、バスバー7及びACバスバー8aの部分と駆動回路用基板3bとの間の絶縁を基板保持部材4により確保することができる。バスバー7及びACバスバー8aの部分と駆動回路用基板3bとの間の絶縁が確保されるので、バスバー7及びACバスバー8aの部分と駆動回路用基板3bとの間の距離を短縮することができる。バスバー7及びACバスバー8aの部分と駆動回路用基板3bとの間の距離が短縮できるので、電力変換装置1を小型化することができる。
【0057】
基板保持部材に対向した実装部品の部分と、基板保持部材とが、接着剤3fを介して接着されている場合、実装部品が基板保持部材に固定されるので、基板3及び基板3に実装された実装部品の耐振性をさらに確保することができる。基板3及び基板3に実装された実装部品の耐振性がさらに確保されるので、耐振性の要求が厳しい、自動車用モータに剛体接続される電力変換装置に本願で開示した電力変換装置1を用いることができる。
【0058】
基板保持部材4の固定ボス4b及び筐体6が金属からなり、プレート4dと固定ボス4bと基板3のグランドとが電気的に接続されている場合、プレート4dと固定ボス4bと基板3のグランドとが、筐体6の電位であるグランドと同一になるので、基板3の駆動回路に接続されたトランス3cに必要なグランドパターンを容易に設けることができる。また、プレート4dが、パワーモジュール2の半導体チップ10と基板3との間に設けられてグランドに接続されているため、半導体チップ10のスイッチング時に発生されるノイズを遮断する、ノイズシールドとしてプレート4dを機能させることができる。プレート4dがノイズシールドとして機能するため、ノイズシールドを新たに追加する必要がないので、電力変換装置1の生産性を向上させることができる。また、プレート4dは基板保持部材4の樹脂材料と比較してヤング率が高いため、基板保持部材4の剛性を向上させることができる。また、基板保持部材4の剛性が向上するので、基板保持部材4に固定された基板3及び基板3に実装された電気部品の耐振性を向上させることができる。
【0059】
筐体6が、車両12における振動発生源13である、エンジン、トランスミッション、モータ、及びe-axleの少なくとも一つと剛体接続されている場合、耐振性の要求が厳しい車両12が有した振動発生源13に電力変換装置1の筐体6を剛体接続しても、電力変換装置1の耐振性を確保することができる。
【0060】
また本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、又は複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、又は様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合又は省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【0061】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
半導体チップを有し、並べて配置された、第一面、前記第一面とは反対側の第二面、及び前記第一面と前記第二面とを取り囲む4つの面である、第三面、第四面、第五面、第六面を有する直方体状の複数のパワーモジュールと、
前記複数のパワーモジュールの前記第二面に間隔を空けて配置され、前記複数のパワーモジュールのそれぞれが有したモジュール端子と電気的に接続された基板と、
前記基板と前記複数のパワーモジュールとの間の前記間隔に配置され、前記基板を保持し、絶縁性を有した樹脂部材からなる基板保持部材と、を備え、
前記複数のパワーモジュールは、前記第三面に平行な方向に並べられ、
前記モジュール端子は、前記パワーモジュールの前記第二面、前記パワーモジュールの前記第三面、及び前記第三面とは反対側の前記第四面の少なくとも1つの面から突出した後、前記基板の方向に延出し、
前記基板の方向に延出した前記モジュール端子の部分は、前記基板保持部材が有した貫通孔を貫通している電力変換装置。
(付記2)
前記複数のパワーモジュールの前記第一面が熱的に接続された冷却面を有した冷却器と、
前記冷却器を有し、前記冷却面が設けられた側と同じ側に配置面を有した筐体と、
バスバーを介して前記複数のパワーモジュールに電気的に接続され、前記複数のパワーモジュールに隣接し、前記筐体の前記配置面に熱的に接続されたフィルムコンデンサと、を備え、
前記配置面は、前記基板保持部材が有した固定ボスが固定されたボス固定部を有し、
前記ボス固定部は、前記冷却面、及び前記フィルムコンデンサと前記バスバーとを前記配置面に投影した前記配置面の投影部分を除いた前記配置面の部分に設けられている付記1に記載の電力変換装置。
(付記3)
前記貫通孔は、前記複数のパワーモジュールの側の開口が前記基板の側の開口よりも大きい漏斗形状である付記1又は2に記載の電力変換装置。
(付記4)
前記基板保持部材は、前記基板と機械的に接続された接続端子を有し、
前記接続端子は、前記基板保持部材に埋設された埋設部、及び前記基板の方向に延出し、前記基板に接続された延出部を有し、
前記基板は、前記接続端子により前記基板保持部材に保持されている付記1から3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
(付記5)
前記接続端子の部分が、電気回路用配線である付記4に記載の電力変換装置。
(付記6)
複数の前記基板を有し、
前記接続端子は、前記複数の基板に機械的に接続され、
前記接続端子の部分が、電気回路用配線である付記4に記載の電力変換装置。
(付記7)
前記複数のパワーモジュールの前記第二面に垂直な方向に見て、前記複数の基板の少なくとも一部が重複して配置されている付記6に記載の電力変換装置。
(付記8)
重複した前記複数の基板の間の部分に、追加の基板保持部材が設けられ、
前記追加の基板保持部材は、少なくとも一つの前記基板を保持している付記7に記載の電力変換装置。
(付記9)
ACバスバーを有し、前記ACバスバーを介して前記複数のパワーモジュールに電気的に接続されたACターミナルを備え、
前記基板と、前記バスバー及び前記ACバスバーとの間の少なくとも一部に、前記基板保持部材が設けられている付記2から8のいずれか1項に記載の電力変換装置。
(付記10)
実装部品であり、前記パワーモジュールと電気的に接続された、トランス、アルミ電解コンデンサ、及びバックアップトランスの少なくとも一つが前記基板に設けられ、
前記基板保持部材に対向した前記実装部品の部分と、前記基板保持部材とが、接着剤を介して接着されている付記1から9のいずれか1項に記載の電力変換装置。
(付記11)
前記基板保持部材は、金属からなるプレートを内部に有し、
前記基板保持部材の前記固定ボス及び前記筐体は、金属からなり、
前記プレートと前記固定ボスと前記基板のグランドとが電気的に接続されている付記2から10のいずれか1項に記載の電力変換装置。
(付記12)
前記筐体は、車両における振動発生源である、エンジン、トランスミッション、モータ、及びe-axleの少なくとも一つと剛体接続されている付記2、9、11のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【符号の説明】
【0062】
1 電力変換装置、2 パワーモジュール、2a 第一面、2b 第二面、2c 第三面、2d 第四面、2e 第五面、2f 第六面、2g モジュール端子、2h パワー端子、3 基板、3a 制御回路用基板、3b 駆動回路用基板、3c トランス、3d アルミ電解コンデンサ、3e バックアップトランス、3f 接着剤、3g スルーホール、3h 固定部、3i 固定補助部、4 基板保持部材、4a 貫通孔、4b 固定ボス、4c 接続端子、4c1 埋設部、4c2 延出部、4d プレート、4e 基板固定部、4f 接続配線、5 フィルムコンデンサ、6 筐体、6a 配置面、6b ボス固定部、7 バスバー、8 ACターミナル、8a ACバスバー、9 冷却器、9a 冷却面、9b 流路部、9c 蓋部、10 半導体チップ、11 追加の基板保持部材、11a 基板固定部、11b 凹部、11c 固定ボス、12 車両、13 振動発生源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8