IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社建設技術研究所の特許一覧 ▶ シバタ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-砂防堰堤及び捕捉ユニット 図1
  • 特開-砂防堰堤及び捕捉ユニット 図2
  • 特開-砂防堰堤及び捕捉ユニット 図3
  • 特開-砂防堰堤及び捕捉ユニット 図4
  • 特開-砂防堰堤及び捕捉ユニット 図5
  • 特開-砂防堰堤及び捕捉ユニット 図6
  • 特開-砂防堰堤及び捕捉ユニット 図7
  • 特開-砂防堰堤及び捕捉ユニット 図8
  • 特開-砂防堰堤及び捕捉ユニット 図9
  • 特開-砂防堰堤及び捕捉ユニット 図10
  • 特開-砂防堰堤及び捕捉ユニット 図11
  • 特開-砂防堰堤及び捕捉ユニット 図12
  • 特開-砂防堰堤及び捕捉ユニット 図13
  • 特開-砂防堰堤及び捕捉ユニット 図14
  • 特開-砂防堰堤及び捕捉ユニット 図15
  • 特開-砂防堰堤及び捕捉ユニット 図16
  • 特開-砂防堰堤及び捕捉ユニット 図17
  • 特開-砂防堰堤及び捕捉ユニット 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176164
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】砂防堰堤及び捕捉ユニット
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/02 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
E02B7/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094490
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】591091087
【氏名又は名称】株式会社建設技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000106955
【氏名又は名称】シバタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108442
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義孝
(74)【代理人】
【識別番号】100206195
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100224650
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 晴加
(72)【発明者】
【氏名】宇野澤 剛
(72)【発明者】
【氏名】吉田 圭佐
(72)【発明者】
【氏名】池上 浩二
(72)【発明者】
【氏名】鴨志田 毅
(72)【発明者】
【氏名】中西 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】西村 佳樹
(57)【要約】
【課題】透過型の砂防堰堤において、捕捉機能部分をユニット化すると共に、必要に応じ細粒土砂のような粒径の小さい砂礫の流出を抑制できるようにする。
【解決手段】堰堤本体1の一対の側面部3a、3bに形成された溝部6a、6bに、フレーム部11と複数の横梁部材20とを有する捕捉ユニット10を挿入することで砂防堰堤Dが構築される。捕捉ユニット10が着脱可能なので、施工性、経済性を向上させる。捕捉ユニット10の上流側にはネット体等から成る捕捉補助具40が必要に応じ着脱可能に装着される。捕捉補助具40により、捕捉ユニット10を通過する物体の大きさを所定未満に制限して、細粒土砂等の下流への流出を抑制する。
【選択図】 図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路の途中に設置される砂防堰堤であって、
所定間隔を置いて対向するように形成され、前記流路の高さ方向で規定される上下方向に延びる一対の側面部と、前記一対の側面部の下端側に形成され前記流路の幅方向で規定される左右方向に延びる底面部と、前記一対の側面部及び前記底面部により規定されるスリット部とを備える堰堤本体と、
前記堰堤本体に着脱可能に装着されて、前記スリット部を通過する流動体の大きさを所定の大きさ未満に制限する捕捉ユニットとを備え、
前記捕捉ユニットは、前記堰堤本体に対し着脱可能なフレーム部と、前記フレーム部に取り付けられて、予め定めた大きさ以上の流動物の通過を阻止する捕捉部とを備える、砂防堰堤。
【請求項2】
前記一対の側面部それぞれに前記上下方向に延びる一対の溝部が形成され、
前記フレーム部は前記上下方向に延びる一対の縦フレーム部を含み、
前記一対の縦フレーム部それぞれが前記一対の溝部に挿入されて、前記捕捉ユニットが前記堰堤本体に装着される、請求項1記載の砂防堰堤。
【請求項3】
前記捕捉部は、前記上下方向に所定間隔を置いて前記一対の縦フレーム部間に張り渡された複数の横梁部材を含み、
前記横梁部材は、前記一対の縦フレーム部それぞれに対し着脱可能に取り付けられる、
請求項2記載の砂防堰堤。
【請求項4】
前記一対の縦フレーム部それぞれは、前記上下方向に所定の間隔を置いて、前記左右方向に互いに対向して突出するように設けられた一対の横梁固定部を備え、
前記一対の横梁固定部それぞれは取付孔を有し、
前記横梁部材は、その両端部それぞれに、前記取付孔へ着脱可能に挿入される取付具を備える、請求項3記載の砂防堰堤。
【請求項5】
前記横梁部材は、金属製チェーンと、前記金属製チェーンの一部を弾性的に伸張可能な状態で被覆する弾性体とを含む、請求項3又は請求項4記載の砂防堰堤。
【請求項6】
前記弾性体の近傍に、前記金属製チェーンの途中を再接続可能に分離するための接続解除手段を有する、請求項5記載の砂防堰堤。
【請求項7】
前記捕捉ユニットは、前記フレーム部における前記流路の上流側に配置されるシート状の捕捉補助具を更に含み、
前記フレーム部は、前記捕捉補助具を着脱可能に保持する係止保持部を更に備え、
前記捕捉補助具が通過を制限する流動物の大きさは、前記捕捉部が通過を制限する流動物の大きさよりも小さく設定されている、請求項1又は請求項2記載の砂防堰堤
【請求項8】
前記底面部において、前記一対の溝部よりも前記流路の上流側に、前記底面部を基準として上方へ突出する段差部が形成されている、請求項2記載の砂防堰堤。
【請求項9】
前記フレーム部は、前記一対の縦フレーム部におけるそれぞれの下端部を接続する下段フレーム部を備え、
前記段差部の前記底面部からの突出高さは、前記下段フレーム部の高さ寸法よりも大きく設定される、請求項8記載の砂防堰堤。
【請求項10】
外枠を構成するフレーム部と、前記フレーム部に取り付けられて、予め定めた大きさ以上の物体の通過を阻止する捕捉部とを備え、
前記フレーム部は対向して配置された一対の縦フレーム部を含み、
前記捕捉部は、前記一対の縦フレーム部それぞれに対し着脱可能に取り付けられて前記一対の縦フレーム部間に所定間隔を置いて張り渡される複数の横梁部材を含む、
砂防堰堤用の捕捉ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掃流状態で流出する粒径の小さい砂礫の流出を抑制できるようにすること及び捕捉機能部分をユニット化する事を目的とする砂防堰堤に関し、特に、捕捉機能部分をユニット化した捕捉ユニットとその捕捉ユニットを設置することができる開口部を設けたコンクリート構造物からなる砂防堰堤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
砂防堰堤は、洪水や土石流の発生時に流れを緩やかにすると共に流木や土石を堰き止めてこれらの下流域への流出を制限し、家屋・施設・道路等への被害を抑制する機能を有するものである。そして透過型の砂防堰堤は、堰堤本体に通水用のスリット部を有することにより、河川等の流路の水理的連続性を損なわないと共に、平常時や中小出水時には土砂を下流側へ流すので上流側に土砂を堆積させないという利点を有している。
【0003】
このような透過型の砂防堰堤においては、一定以上の大きさの礫や流木を通過させないように通水間隙が設計された捕捉部がスリット部に設けられ、従来、これについて種々の検討がなされている。例えば特許文献1には、梁部材とスペーサとにより、水路の高さに柔軟に対応できると共に、取り付けを容易にした土砂捕捉部材について記載されている。特許文献2には、スリット部を備える砂防堰堤において、スリット部を横切るようにして取り付けられた横梁の取付部を覆うカバーを設け、増水時に運ばれる流下物による損傷から横梁の取付部を保護することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-056488号公報
【特許文献2】特開2010-090698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンクリートや鋼製スリットからなる透過型の砂防堰堤は一般に、土石流中の礫は捕捉し小さな砂礫等はすり抜けさせてしまうため、真砂土等の粒径の小さい砂礫が多く存在する地域では、砂防堰堤を設置する場合、従来、不透過型を採用する必要があった。
【0006】
しかしながら不透過型砂防堰堤は、流路を遮断して、平常時や中小出水時には本来であれば下流へ流されてもよいような土砂までも捕捉して堆積させてしまうので、土石流時の捕捉可能土砂容量が減少するという問題があり、又、渓流の連続性が確保できず、魚の遡上を妨げるなど環境への影響も懸念される。
【0007】
そこで、透過型の砂防堰堤でも小さい砂礫を捕捉できるように捕捉部の通水間隙を狭くすることが考えられるが、通水間隙を小さい砂礫を捕捉できるようにコンクリートや鋼製スリットのみで構成するのは難しく、又、通水間隙を狭くするネット材のような別部材と併用して使用することも考えられるが、大きい礫や流木の衝突等によりネット材が破損する懸念や捕捉した土砂を除石する場合、その砂防堰堤(本堤)の上流側で除石することになり除石の作業性も困難となること、又、中小の洪水でも土砂が捕捉され、すぐに土砂が砂防堰堤で堆砂してしまい除石の頻度も多くなるなどの懸念があった。
【0008】
本発明は、上述のような問題を解決できる透過型の砂防堰堤及び捕捉ユニットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、流路の途中に設置される砂防堰堤であって、所定間隔を置いて対向するように形成され、流路の高さ方向で規定される上下方向に延びる一対の側面部と、一対の側面部の下端側に形成され流路の幅方向で規定される左右方向に延びる底面部と、一対の側面部及び底面部により規定されるスリット部とを備える堰堤本体と、堰堤本体に着脱可能に装着されて、スリット部を通過する流動体の大きさを所定の大きさ未満に制限する捕捉ユニットとを備え、捕捉ユニットは、堰堤本体に対し着脱可能なフレーム部と、フレーム部に取り付けられて、予め定めた大きさ以上の流動物の通過を阻止する捕捉部とを備えるものである。
【0010】
このように構成すると、河川等の流路の途中に設置した砂防堰堤の堰堤本体に捕捉ユニットを装着することで、スリット部を通過する流動体の大きさを所定の大きさ未満に制限する。必要に応じ堰堤本体から捕捉ユニットを取り外せる。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、一対の側面部それぞれに上下方向に延びる一対の溝部が形成され、フレーム部は上下方向に延びる一対の縦フレーム部を含み、一対の縦フレーム部それぞれが一対の溝部に挿入されて、捕捉ユニットが堰堤本体に装着されるものである。
【0012】
このように構成すると、縦フレーム部を溝部に挿入することで捕捉ユニットが堰堤本体に装着され、溝部から縦フレーム部を引き抜くことで、捕捉ユニットを堰堤本体から取り外せる。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の構成において、捕捉部は、上下方向に所定間隔を置いて一対の縦フレーム部間に張り渡された複数の横梁部材を含み、横梁部材は、一対の縦フレーム部それぞれに対し着脱可能に取り付けられるものである。
【0014】
このように構成すると、横梁部材は、捕捉ユニットを通過する流動物のうち、横梁部材の間隔より大きな物体の通過を阻止する。横梁部材は必要に応じフレーム部から取り外せる。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明の構成において、一対の縦フレーム部それぞれは、上下方向に所定の間隔を置いて、左右方向に互いに対向して突出するように設けられた一対の横梁固定部を備え、一対の横梁固定部それぞれは取付孔を有し、横梁部材は、その両端部それぞれに、取付孔へ着脱可能に挿入される取付具を備えるものである。
【0016】
このように構成すると、横梁部材の両端部それぞれの取付具を、一対の縦フレーム部それぞれの横梁固定部の取付孔に挿入することで、横梁部材が一対の縦フレーム部間に張り渡される。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項3又は請求項4記載の発明の構成において、横梁部材は、金属製チェーンと、金属製チェーンの一部を弾性的に伸張可能な状態で被覆する弾性体とを含むものである。
【0018】
このように構成すると、横梁部材に伸張方向の荷重が作用したときに、金属製チェーンのうち弾性体に被覆された部分が、弾性的に伸張する。
【0019】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明の構成において、弾性体の近傍に、金属製チェーンの途中を再接続可能に分離するための接続解除手段を有するものである。
【0020】
このように構成すると、横梁部材の途中を、必要に応じ分離し、再接続できる。
【0021】
請求項7記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の構成において、捕捉ユニットは、フレーム部における流路の上流側に配置されるシート状の捕捉補助具を更に含み、フレーム部は、捕捉補助具を着脱可能に保持する係止保持部を更に備え、捕捉補助具が通過を制限する流動物の大きさは、捕捉部が通過を制限する流動物の大きさよりも小さく設定されているものである。
【0022】
このように構成すると、捕捉ユニットを通過可能な流動物の大きさが、捕捉補助具によって、より小さく制限される。又、捕捉部が、横梁部材と捕捉補助具との二重構造となる。
【0023】
請求項8記載の発明は、請求項2記載の発明の構成において、底面部において、一対の溝部よりも流路の上流側に、底面部を基準として上方へ突出する段差部が形成されているものである。
【0024】
このように構成すると、上流側から見て、フレーム部の下方側の少なくとも一部が、段差部によって覆い隠される。
【0025】
請求項9記載の発明は、請求項8記載の発明の構成において、フレーム部は、一対の縦フレーム部におけるそれぞれの下端部を接続する下段フレーム部を備え、段差部の底面部からの突出高さは、下段フレーム部の高さ寸法よりも大きく設定されるものである。
【0026】
このように構成すると、上流側から見て、下段フレーム部が、段差部によって覆い隠される。
【0027】
請求項10記載の発明は、外枠を構成するフレーム部と、フレーム部に取り付けられて、予め定めた大きさ以上の物体の通過を阻止する捕捉部とを備え、フレーム部は対向して配置された一対の縦フレーム部を含み、捕捉部は、一対の縦フレーム部それぞれに対し着脱可能に取り付けられて一対の縦フレーム部間に所定間隔を置いて張り渡される複数の横梁部材を含むものである。
【0028】
このように構成すると、砂防堰堤に用いると、通過する流動体の大きさを所定の大きさ未満に制限する。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、必要時には捕捉ユニットを取り外すことで、スリット部を通過させる物体の大きさの制限を緩和できる。又、万一、礫や流木の衝突などを受けて捕捉部が損傷を受けたときには、捕捉ユニットだけを交換すればよく、堰堤本体はそのまま使用できるから、補修に要する施工時間・コストを低減できる。
【0030】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、捕捉ユニットが取り扱い易い形態となるから、溝部に対する着脱作業が容易になる。
【0031】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の効果に加えて、一部の横梁部材が損傷したときに、捕捉ユニット全体ではなく、該当する横梁部材だけを交換できるから、補修コストを抑えることができる。
【0032】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明の効果に加えて、横梁部材の縦フレーム部に対する取り付け、取り外しが容易になるから、横梁部材を施工現場でフレーム部に組み付けたり、必要時に施工現場で交換する作業が簡単になる。
【0033】
請求項5記載の発明は、請求項3又は請求項4記載の発明の効果に加えて、横梁部材に伸張方向の荷重が作用したときに、荷重の一部が弾性体を弾性変形させるのに消費されるから、大きな荷重が作用しても、金属製チェーンが破断しにくくなる。
【0034】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明の効果に加えて、左右方向に張り渡された複数の横梁部材の内の一部の途中を分離することで、捕捉ユニットを通過し得る物体の大きさの制限を緩和することができる。金属製チェーンの分離個所に別部材を挿入することで、横梁部材の長さを延長することができる。
【0035】
請求項7記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、粒径の小さな砂礫を、流動物から除去することができる。捕捉補助具はシート状なので、取り扱いが容易である。捕捉ユニットが受ける衝撃を、横梁部材と捕捉補助具とで支持することができるから、耐久性が向上する。
【0036】
請求項8記載の発明は、請求項2記載の発明の効果に加えて、フレーム部の下方部分が流動物と直接衝突するのを緩和できるから、フレーム部の下方部が損傷を受けるのを抑制できる。
【0037】
請求項9記載の発明は、請求項8記載の発明の効果に加えて、下段フレーム部が流動物と直接衝突するのを確実に緩和できるから、下段フレーム部が損傷を受けるのを確実に抑制できる。
【0038】
請求項10記載の発明は、砂防堰堤の捕捉機能部をユニット化したので、必要に応じ、この部分だけを取り外したり、交換したりできるから、補修に要する時間、コストを削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の一実施の形態に係る砂防堰堤の堰堤本体を示すものであって、(A)は平面図、(B)は下流側から見た正面図である。
図2図1の(B)のP-P線における断面図である。
図3図1の(B)のQ-Q線における拡大した断面図である。
図4】本発明の一実施の形態に係る砂防堰堤に用いる捕捉ユニットの正面図である。
図5図4に示す捕捉ユニットの平面図である。
図6図4のR-R線における拡大した断面図である。
図7図6の下端側の一部を拡大した図である。
図8】横梁部材の要部を示す、図4のS-S線における拡大した断面図である。
図9図7において、横梁部材の長さを延長した状態を示す図である。
図10】本発明の一実施の形態に係る砂防堰堤を示すものであって、(A)は平面図、(B)は下流側から見た正面図である。
図11図10の(B)のT-T線における断面図である。
図12図11に示す捕捉ユニットを拡大した図である。
図13】本発明の一実施の形態に係る捕捉補助具のフレーム部に対する取付構造の一例を示すものであって、(A)は上段フレーム部に設けた係止保持部の側面図、(B)は(A)のU-U線における断面図である。
図14】本発明の一実施の形態に係る捕捉補助具のフレーム部に対する取付構造の異なる例を示すものであって、(A)は上段フレーム部に設けた係止保持部の側面図、(B)は(A)のV-V線における断面図である。
図15】本発明の一実施の形態に係る捕捉補助具のフレーム部に対する取付構造のさらに異なる例を示すものであって、(A)は上段フレーム部に設けた係止保持部の側面図、(B)は(A)のW-W線における断面図である。
図16】本発明の一実施の形態に係る砂防堰堤において、下半部の横梁部材を取り外した状況を示すものであって、(A)は正面図、(B)は(A)のX-X線における断面図である。
図17図16の(B)に示す横梁部材の保管状況を拡大した図である。
図18図16の(B)に示す捕捉ユニットの上半部を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、掃流状態で流出する粒径の小さい砂礫の流出を抑制できるようにすること、及び、捕捉機能部分をユニット化することにより施工性を向上させることを目的とするものである。
【0041】
近年の土砂災害の特徴として、豪雨時に発生する土石流などの大規模な土砂災害に加え、発災後、不安定土砂が残っている状態での降雨により、長い期間に渡って細粒な土砂が流出して集落等で氾濫する被害が多発している。本発明は、上に述べた細粒土砂の継続的流出に対応でき、かつ従来の砂防施設が有する課題を解決するため、新たな砂防施設を開発したものである。この新たな砂防堰堤は、豪雨後に渓流内に残存した多くの細粒土砂が、その後の降雨によって下流の居住地域に流出する際の氾濫被害の防止・軽減に効果を発揮する。しかも、本発明に係る砂防堰堤は、使用する部材の軽量化やプレキャスト化を図ることにより、経済性、施工性も向上させるものでもある。
【0042】
以下、上述のような利点を得るために創案された本発明の詳細について、その実施の形態を示す図面を参照して説明する。
【0043】
本発明に係る砂防堰堤の主要な構成要素は、堰堤本体と捕捉ユニットとである。初めに堰堤本体について述べる。尚、以下の説明において「上下方向」とは、流路の高さ方向で規定される方向を言い、「左右方向」とは、流路の幅方向で規定される方向を言うものとする。
【0044】
図1~3は、本発明の一実施の形態に係る砂防堰堤の堰堤本体を示すものであって、図1の(A)は平面図、(B)は下流側から見た正面図であり、図2は、図1の(B)のP-P線における断面図であり、図3は、図1の(B)のQ-Q線における拡大した断面図である。
【0045】
砂防堰堤の堰堤本体1は、コンクリート等で構築され、河川等の流路の幅方向に、流路を横切るように設置される。堰堤本体1は、左右に所定間隔を置いて対向するように配置されたブロック部2a、2b、各ブロック部2a、2bそれぞれの対向位置に形成され、上下方向に延びる一対の側面部3a、3b、一対の側面部3a、3bの下端側に形成され左右方向に延びる底面部4、並びに、一対の側面部3a、3b及び底面部4により規定されるスリット部5を備える。更に、一対の側面部3a、3bそれぞれには、上下方向に延びる一対の溝部6a、6bが形成される。
【0046】
図3を参照して、本例では、各溝部6a、6bの内表面を、補強鋼板61で補強すると共に、更にその表面を弾性部材で被覆している。これは、溝部6aを形成する3面において側面部3aの躯体にスリーブ66付のアンカーボルト65を埋設し、スリーブ66に螺合させたボルト67によって、弾性保護材62を補強鋼板61上に固定することでなされる。尚、弾性保護材62は、ゴム等の弾性体63の内部に鋼板64を埋設した構造のものであり、例えばラバースチール(登録商標:シバタ工業社製)等が用いられる。
【0047】
次に、捕捉ユニットについて述べる。図4~9は、本発明の一実施の形態に係る砂防堰堤に用いる捕捉ユニットを示すものであって、図4は正面図であり、図5は平面図であり、図6図4のR-R線における拡大した断面図であり、図7図6の下端側の一部を拡大した図であり、図8は横梁部材の要部を示す図4のS-S線における拡大した断面図であり、図9図7において、横梁部材の長さを延長した状態を示す図である。
【0048】
図4を参照して、捕捉ユニット10は、堰堤本体1に着脱可能に装着されて、スリット部5を通過する流動体の大きさを所定の大きさ未満に制限するためのものであり、外枠を構成するフレーム部11と、予め定めた大きさ以上の流動物の通過を阻止する捕捉部10aを構成する複数の横梁部材20とを主要な構成要素として含む。
【0049】
本例のフレーム部11は、例えばH型鋼で矩形状又は正方形状に構築され、施工状態において上下方向に延びる左右一対の縦フレーム部11a、11b、左右の縦フレーム部11a、11bの上端部を連結する上段フレーム部11c、及び、左右の縦フレーム部11a、11bの下端部を連結する下段フレーム部11dを有する。
【0050】
図5を参照して、上段フレーム部11cは、その上面に、捕捉ユニット10を吊り上げ又は吊り下げる際にワイヤーロープなどを係止するための係止部13a、13bが設けられる。本例の係止部13a、13bは、ワイヤーロープ等を挿通させるための開孔を有する板状の部材から成る。
【0051】
図6を参照して、縦フレーム部11a、11bには、それぞれの対向面側(フレーム部11の内方を向く側)に、横梁部材20の両端部を着脱可能に取り付けるための複数の横梁固定部12a,12bが、上下方向に所定の間隔を置いて設けられている。本例の各横梁固定部12a、12bは、左右方向に互いに対向して突出するように設けられた板状の部材であり、各横梁固定部12a、12bそれぞれは取付孔12p、12qを有している。又、フレーム部11には、後述するシート状の捕捉補助具を装着するための係止保持部31、32、33が設けられる。本例では、上段フレーム部11c、縦フレーム部11a及び下段フレーム部11dのそれぞれに係止保持部31、32、33を設けている。
【0052】
図7を参照して、下段フレーム部11dの下面側には、弾性体よりなる緩衝部材14が設けられる。本例の緩衝部材14は、内部に中空部を有する断面D型のゴム体からなり、これを下段フレーム部11dを貫通させたボルト16a及びこれに螺合させたナット16bを用いて固定している。緩衝部材14を設けることにより、金属製のフレーム部11がコンクリート製の堰堤本体1の底面部4に直接接触するのを回避して、底面部4が破損するのを防止している。
【0053】
図8を参照して、横梁部材20は、金属製チェーン21と、金属製チェーン21の一部を弾性的に伸張可能な状態で被覆する、ゴム等の弾性体22とを含むものである。ここで弾性的に伸張可能な状態とは、金属製チェーンのリンク間に伸びしろが含まれた状態である。このような構成により、横梁部材20に伸張方向の外力が作用したとき、弾性体22で被覆された金属製チェーン21の部分は伸びしろが有るので、伸張することができる。このときの伸張動作は、弾性体22の弾性変形を伴うので、外力から受けたエネルギーが弾性変形に消費される。このような仕組みにより、本例の横梁部材20は、耐荷重性能が向上するので、大きな外力を受けても破断しにくくなっている。
【0054】
又、弾性体22の両端部から突出する各チェーンリンクには、例えばシャックル等の着脱可能な部材がそれぞれ配置される。それらのうち一方は、横梁固定部12a、12bに対し横梁部材20を着脱可能とする取付具23として機能する。もう一方は、横梁部材20の途中を再接続可能に分離するための接続解除手段24として機能する。
【0055】
このように構成された横梁部材20は、その両端部を取付具23で横梁固定部12a、12bに取り付けることで、縦フレーム部11a、11bに対し、上下方向に所定間隔を置いて複数張り渡すことができる。これら複数の横梁部材20は、相互の間隔よりも大きな物体の通過を阻止するから、捕捉部20aとしての機能を発揮する。
【0056】
接続解除手段24は、横梁部材20の途中を、必要に応じ分離して、通過し得る物体の大きさの制限を緩和することができる。又、金属製チェーン21の分離個所に別部材を挿入することで、横梁部材20の長さを延長することができる。図9を参照して、例えば分離個所に別部材としてターンバックル26を挿入することで、横梁部材20の長さを伸縮可能に延長することが可能である。
【0057】
上述した堰堤本体1に捕捉ユニット10を組み付けることによって、本発明に係る砂防堰堤Dが構築される。図10は本発明の一実施の形態に係る砂防堰堤を示すものであって、(A)は平面図、(B)は下流側から見た正面図であり、図11図10の(B)のT-T線における断面図である。
【0058】
図10、11を参照して、堰堤本体1の左右の側面部3a、3bそれぞれに形成した溝部6a、6bに、左右の縦フレーム部11a、11bそれぞれを挿入して捕捉ユニット10を装着することにより、目的とする砂防堰堤Dが構築される。溝部6a、6bと縦フレーム部11a、11bとの間には、適宜の隙間が生じるように各寸法が設定される。
【0059】
このように構築された砂防堰堤Dは、複数の横梁部材20相互の間隙を通じて流路の推理的連続性を保持すると共に、平常時や中小出水時は有害とならない土砂を流下させることができる。そして流路の増水時や土石流の発生時には、捕捉ユニット10の横梁部材20が流木や岩石等の所定以上の大きさの物体を堰き止めて、それらが下流域へ流出して民家・施設・道路等に被害を及ぼすのを抑制するものである。
【0060】
又、本例では、溝部6a、6bに配置した弾性保護材62、及び、下段フレーム部11dに配置した緩衝部材14により、捕捉ユニット10のフレーム部11が堰堤本体1に直接接触するのを防止している。これにより、堰堤本体1がフレーム部11との衝突で損傷を受けるおそれが少なくなっている。
【0061】
又、本例では、堰堤本体1の底面部4において、溝部6a、6bの上流側に、底面部4を基準として上方へ突出する段差部7が形成されている。この段差部7は、底面部4からの突出高さhが、下段フレーム部11dの高さ寸法と等しいか、それよりも大きく設定されている。又、縦フレーム部11a、11bも、その全体が溝部6a、6b内に収納されるように設定されている。この構成により、流路の上流側から見て、縦フレーム部11a、11b及び下段フレーム部11dが溝部6a、6b及び段差部7によって覆い隠されるため、これらに水流で流される物体が衝突するのを緩和することができる。これにより縦フレーム部11a、11b及び下段フレーム部11dが損傷を受けるのを確実に抑制できるから、捕捉ユニット10の耐久性を高めることができる。
【0062】
更に、段差部7を設けて下段フレーム部11dを隠すことで、水圧及び土圧の外力を下段フレーム部11dが受けにくくなるというメリットが得られる。これにより、下段フレーム部11dに要求される耐圧性能を高くしなくて済むので、下段フレーム部11dを軽量化することが可能となる。
【0063】
尚、段差部7を形成することにより、粒径の大きな礫等は段差部7の付近には停留しにくくなり、溝部6a、6bの周囲に溜まる礫は、手作業で容易に除去できる程度の大きさになると考えられる。このため、捕捉ユニット10を溝部6a、6bから取り外した後、再度取り付ける際の作業が容易となる。尚、本例では、段差部7の底面部4からの高さは、例えばフレーム部11に使用するH型鋼の幅が250mmの場合、緩衝部材14の高さを考慮して、320mm程度に設定し、下段フレーム部11dの上面と段差部7の表面とがほぼ同一となるように設計される。
【0064】
上述した構成の砂防堰堤Dは、堰堤本体1の溝部6a、6bに、別途製作した捕捉ユニット10をクレーン等で吊り下げて挿入するだけで簡単に構築することができるから、現場での施工作業が軽減化され、工期を短縮化できる。特に捕捉ユニット10は、例えば工場や他の現場で予め組み立てておき、これをトラック等の輸送手段で施工場所まで運搬するという施工方法が可能であるから、現場作業の工数を削減でき、作業員の安全確保、施工精度の向上につながる。更に、礫や流木の衝突等を受けて捕捉ユニット10が損傷した場合には、捕捉ユニット10だけを交換すればよく、堰堤本体1はそのまま使用できるから、補修時の施工性、経済性に優れている。
【0065】
尚、礫や流木の衝突等を受けた後の捕捉ユニット10を取り外す際には、例えば、横梁部材20を下流側から取り外してフレーム部11内に作業者が進入可能とすれば、ウォータージェット等でフレーム部11と溝部6a、6bとの隙間に充填された土砂を除去することができるから、捕捉ユニット10をクレーン等で吊り上げるのが容易になる。
【0066】
更に、本例の砂防堰堤の上流側に、コンクリートや鋼製スリットからなる別の透過型砂防堰堤を設けてもよい。こうすることで、大きな礫や流木を透過型砂防堰堤で先行して捕捉され、上流側の透過型砂防堰堤をすり抜けた土砂のみが本例の捕捉ユニットにより捕捉されるため、本例捕捉ユニットで捕捉した土砂の除去がより容易になる。
【0067】
ところで本例の捕捉ユニット10は、シート状の捕捉補助具を装着してもよい。図12図11に示す捕捉ユニットを拡大した図であり、図13は本発明の一実施の形態に係る捕捉補助具のフレーム部に対する取付構造の一例を示すものであって、(A)は上段フレーム部に設けた係止保持部の側面図、(B)は(A)のU-U線における断面図であり、図14は同取付構造の異なる例を示すものであって、(A)は上段フレーム部に設けた係止保持部の側面図、(B)は(A)のV-V線における断面図であり、図15は同取付構造のさらに異なる例を示すものであって、(A)は上段フレーム部に設けた係止保持部の側面図、(B)は(A)のW-W線における断面図である。
【0068】
図12を参照して、本例の捕捉ユニット10は、フレーム部11における流路の上流側に、シート状の通水性を有する捕捉補助具40を装着してもよい。この捕捉補助具40は、通過可能な流動物の大きさを、横梁部材20が通過を許容する流動物の大きさよりも小さくなるよう制限するものである。これには例えば合成樹脂製又は金属製のネットを使用でき、強度、コスト、取り扱い性等を考慮すると、ポリエチレン製ネットの使用が好適である。又、ネットを使用する場合、その目合いは20~50mmとするのが好ましいが、設置状況に応じ、より目合いの小さいものや、より大きいものを使用してもよい。
【0069】
一方、フレーム部11には、捕捉補助具40を着脱可能に保持するための係止保持部が備えられる。本例では、捕捉補助具40をネット状とした場合に、その網目を利用して取り付けるため、上段フレーム部11c、縦フレーム部11a、11b、及び、下段フレーム部11dそれぞれに、シャックルやボルト・ナットを利用した係止保持部31、32、33を設けている。これら係止保持部31~33により、捕捉補助具40が、複数の横梁部材20における上流側のほぼ全面を覆うように装着される。
【0070】
次に図13~15を参照して、係止保持部31~33の具体的構成を説明する。尚、図13~15では上段フレーム部11cに設けた係止保持部31の構成を示すが、縦フレーム部11a、11b及び下段フレーム部11dの係止保持部32、33についても同様の構成を採用することができる。
【0071】
図13に示す係止保持部31は、上段フレーム部11cに設けた保持板31aと、これに形成した開孔に取着されるシャックル31bとで構成される。シャックル31bに捕捉補助具40の上端部40a付近の網目を係合させた状態で、このシャックル31bを保持板31aに取り付ける。これにより、捕捉補助具40の上端部40aが、上段フレーム部11cに係止される。
【0072】
図14に示す係止保持部32は、上段フレーム部11cに設けた保持板31aと、これに形成した開孔を利用して取着されるボルト31c、ナット31d及び押さえ板31eで構成される。捕捉補助具40の上端部40a付近に押さえ板31eを配置し、これらを貫通させたボルト31cを、保持板31aの開孔に挿通し、ナット31dを螺合させて締め付けることにより、捕捉補助具40の上端部40aが、上段フレーム部11cに係止される。
【0073】
図15に示す係止保持部31は、上段フレーム部11cに設けた保持板31aと、これに形成した開孔に取着されるシャックル31bと、ボルト31c、ナット31d及び押さえ板31fで構成される。シャックル31bに捕捉補助具40の上端部40a付近を折り返し、その状態の網目に係合させたシャックル31bを保持板31aに取り付ける。更に、捕捉補助具40の折り返された上端部40a付近を、押さえ板31fを介して、ボルト31c、ナット31dで挟んで締め付けることにより、捕捉補助具40の上端部40aが、上段フレーム部11cに係止される。
【0074】
上に述べたように、捕捉補助具40が装着された捕捉ユニット10は、通過可能な流動物の大きさを、捕捉補助具40によって小さく制限することができるので、粒径の小さな砂礫を、流動物から除去することができる。捕捉補助具40の孔径を適宜設定することで、細粒土砂の除去も可能となる。又、捕捉補助具40を上流側に配置することにより、横梁部材20に流木等が絡みつくのを抑制することができる。尚、捕捉補助具40をシート状とすることにより、取り扱いが容易になるという利点が得られる。更に、捕捉補助具40は分離可能なので、必要に応じ、上流側に堆積した礫の除去作業を容易化できる利点も有している。更に、流路を開放できるため、魚の遡上が可能になる、又、通常出水時には、土砂を通砂し、下流域に供給することが出来るため、近年問題となっている海岸浸食対策にも対応できる。
【0075】
ところで上述のように、捕捉補助具40を捕捉ユニット10に装着すると、平常時には流されてもよい土砂の通過に支障を及ぼす可能性が有る。又、落葉などで目詰まりを起こし、本来、下流へ流れるべき水が溜まってしまおそれもある。そこで、平常時や、増水が起きる可能性が低い非洪水時には、捕捉ユニット10における横梁部材20の一部、及び、捕捉補助具40の一部を取り外して、流路を確保するようにしてもよい。
【0076】
図16は本発明の一実施の形態に係る砂防堰堤において、下半部の横梁部材を取り外した状況を示すものであって、(A)は正面図、(B)は(A)のX-X線における断面図であり、図17図16の(B)に示す横梁部材の保管状況を拡大した図であり、図18図16の(B)に示す捕捉ユニットの上半部を拡大した断面図である。
【0077】
図16を参照して、砂防堰堤Dが設置される河川等の洪水発生の可能性が低い時期や非出水期には、下側の横梁部材20をフレーム部11から取り外すと共に、捕捉補助具40の下半部を上方に折り返すようにしてもよい。これにより、捕捉ユニット10における捕捉部20aの下半領域は、自由に通水可能となり、通過させる物体の大きさの制限が緩和される。
【0078】
尚、図17を参照して、堰堤本体1に保持プレート50をアンカーボルト51等で固定し、これに取り外した横梁部材20を係止させて保管するようにしてもよい。
【0079】
又、図18を参照して、上段フレーム部11cに仮止め用のシャックル35を更に設けて、捕捉補助具40の下半部を上方に折り返したときに、このシャックル35に捕捉補助具40の下端部を係止させて、折り返し状態を保持するようにしてもよい。
【0080】
尚、上記の実施の形態では、捕捉ユニットは堰堤本体の溝部に挿入されて装着されるものであったが、堰堤本体に埋設したアンカーボルトなどを用いて、捕捉ユニットを堰堤本体に対し着脱可能に固定してもよい。
【0081】
又、上記の実施の形態では、堰堤本体は段差部を有するものであったが、段差部は省略してもよい。
【0082】
更に、施工環境に応じ、堰堤本体のブロック部の上面に袖部を形成してもよい。
【0083】
更に、捕捉ユニットの外形は矩形状又は正方形状以外でもよい。例えば上段フレーム部をアーチ形に形成してもよい。或いは、下段側の幅を狭くした等脚台形状に形成してもよい。
【0084】
更に、横梁部材は、金属製チェーン以外に、棒状又は板状の鋼材を用いてもよい。
【0085】
更に、縦フレーム部の横梁固定部は、板状のほか、リング状の部材を用いてもよい。
【0086】
更に、捕捉補助具は、ネット体に限定されず、通水性を有し、通過可能な物体の粒径を制限する機能を有するものであれば使用可能である。
【0087】
更に、図16の実施の形態では、横梁部材及び捕捉補助具の下半部を取り外して流路を確保しているが、捕捉ユニット全体を取り外してもよく、捕捉補助具のみ取り外してもよい。
【0088】
更に、捕捉ユニットのフレーム部は、H形鋼以外に、アングル鋼、チャンネル鋼、ジョイスト鋼(Iビーム)、角鋼管等で構築してもよい。
【0089】
更に、上記の実施の形態では、横梁部材の取付具及び接続解除手段、並びに、縦フレーム部の係止保持部としてシャックルを用いたが、これらの一部又は全部に他の部材や治具を使用してもよい。尚、接続解除手段については、省略してもよい。
【0090】
更に、上記の実施の形態において、堰堤本体の段差部の高さは下段フレーム部の高さより低くしてもよく、段差部を部分的に省略してもよい。
【0091】
更に上記の実施の形態において、捕捉補助具を省略してもよい。
【0092】
更に、砂防堰堤が設置される流路は、平常時又は乾期には渇水状態であり、豪雨時又は雨期にのみ水の流れが生じるような流路であってもよい。
【符号の説明】
【0093】
D…砂防堰堤
1…堰堤本体
3a、3b…側面部
4…底面部
5…スリット部
6a、6b…溝部
7…段差部
10…捕捉ユニット
11…フレーム部
11a、11b…縦フレーム部
11d…下段フレーム部
12a、12b…横梁固定部
14…緩衝部材
20…横梁部材
21…金属製チェーン
22…弾性体
23…取付具
24…接続解除手段
31、32、33…係止保持部
40…捕捉補助具
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18