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特開2024-176173揚水井、及びこれに用いるフィルター材
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  • 特開-揚水井、及びこれに用いるフィルター材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176173
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】揚水井、及びこれに用いるフィルター材
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/10 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
E02D3/10 102
E02D3/10 101
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094509
(22)【出願日】2023-06-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-11-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 主催者、発行者名: 公益社団法人日本地下水学会 講演会名:公益社団法人日本地下水学会 2023年春季講演会 刊行物名:2023年5月27日公益社団法人日本地下水学会春季講演会(東大柏キャンパス)予稿 講演、発行年月日: 2023年5月27日 講演予稿82頁-87頁に、掲載するとともに、これらを同講演会にて公開した。
(71)【出願人】
【識別番号】504203572
【氏名又は名称】国立大学法人茨城大学
(71)【出願人】
【識別番号】518427340
【氏名又は名称】株式会社エーバイシー
(71)【出願人】
【識別番号】591066524
【氏名又は名称】日建商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100171941
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 忠行
(72)【発明者】
【氏名】小林 薫
(72)【発明者】
【氏名】本多 顕治郎
(72)【発明者】
【氏名】千葉 浩二
(72)【発明者】
【氏名】堀口 正隆
【テーマコード(参考)】
2D043
【Fターム(参考)】
2D043DA01
2D043DA04
2D043DD20
2D043EA10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】井戸管の周囲に充填した粒状物からなるフィルター材を介して揚水を行う揚水井において、周辺の地盤からフィルター材に砂が混入することを抑制する。
【解決手段】本発明に係る揚水井100は、地盤を掘削して設けた竪穴1と、竪穴1内に立設され、貫通孔、又はスリット22bにより粒状物から水を分離して透過するストレーナ22を備えた井戸管2と、井戸管2と竪穴1の周壁の間に充填される粒状物からなるフィルター材3とを備える。揚水井100は、フィルター材3が、破砕した貝殻からなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を掘削して設けた竪穴と、前記竪穴内に立設され、貫通孔、又はスリットにより粒状物から水を分離して透過するストレーナを備えた井戸管と、前記井戸管と前記竪穴の周壁の間に充填される粒状物からなるフィルター材とを備えた揚水井であって、
前記粒状物が、破砕した貝殻からなることを特徴とする揚水井。
【請求項2】
前記貝殻は、二枚貝の貝殻である請求項1に記載の揚水井。
【請求項3】
前記貝殻は、ホタテ貝の貝殻である請求項1に記載の揚水井。
【請求項4】
前記破砕した貝殻は、粒径が4.75mm以上19mm以下の範囲で右肩上がりに、通過質量百分率が増加する基本粒径部分を含む請求項1に記載の揚水井。
【請求項5】
前記基本粒径部分は、ふるい目9.5mmにおける通過質量百分率が10%以上60%未満である請求項4に記載の揚水井。
【請求項6】
前記破砕した貝殻は、粒径が2mm以上4.75mm未満、及び/又は19mmを超え、95mm以下であるものを含む請求項4に記載の揚水井。
【請求項7】
地盤を掘削して設けた竪穴と、前記竪穴内に立設され、貫通孔、又はスリットにより粒状物から水を分離して透過するストレーナを備えた井戸管と、前記井戸管と前記竪穴の周壁の間に充填される粒状物からなるフィルター材とを備えた揚水井に用いるフィルター材であって、
前記粒状物が、破砕した貝殻からなるフィルター材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、根切り工事等の地下水位低下工法に用いる揚水井に関し、特に粒状物を充填したフィルター材を介して地下水を汲み揚げる揚水井に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤を掘削する根切り工事においては、地下工事を容易にするために、揚水井により地下水を汲み揚げる地下水位低下工法が行われている。この地下水位低下工法には、地盤に設けた竪穴内に土砂を通さず水を通す筒状のストレーナを設け、該ストレーナと竪穴の周壁との間に砂利や珪砂からなるフィルター材を充填して、このフィルター材とストレーナを介して地下水を汲み上げる工法が広く行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、特許文献1には、竪穴内に立設した内管の下端部周壁に地下水流入口を設け、内管の周囲に線材を巻回して設けたストレーナ筒部を環装するとともに、ストレーナ筒部と竪穴周壁の間に粗砂や豆砂利等からなるフィルター材を充填した地下水揚水装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献1の図11には、その出願時における従来技術として、いわゆるディープウエル工法が引用されている。このディープウエル工法では、竪穴に立設した円筒状の井戸の下半分をストレーナ部とし、該ストレーナ部と竪穴の内壁との間に粗砂や豆砂利等からなるフィルター材が充填されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3974851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のように、フィルター材に粗砂や豆砂利を用いた場合には、長期に渡って揚水を行うと、周囲からフィルター材の隙間に周辺地盤の細粒な土が流入してフィルター材が目詰まりを起こし、透水性が低下するという課題がある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、長期間揚水を行っても揚水能力の低下の少ない揚水井の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、地盤を掘削して設けた竪穴と、前記竪穴内に立設され、貫通孔、又はスリット等により水を透過するストレーナを備えた井戸管と、前記井戸管と前記竪穴の周壁の間に充填される粒状物からなるフィルター材とを備えた揚水井であって、前記粒状物が、破砕した貝殻からなることを特徴とする。
【0008】
本発明の揚水井は、このようにフィルター材を破砕した貝殻としたので、砂や砂利からなるフィルター材を用いた揚水井に比べて、周囲から混入する細粒な土によるフィルター材の目詰まりを抑制することができる。
【0009】
前記貝殻は、二枚貝の貝殻であることが好ましい。こうすることで、よりフィルター材が砂で目詰まりすることを抑制できる
【0010】
前記貝殻は、ホタテ貝の貝殻であることが好ましい。こうすることで、さらにフィルター材が砂で目詰まりすることを抑制できる。また、ホタテ貝の産地である北海道や東北地方では、大量に発生するホタテ貝の貝殻の処分に苦慮しており、このように破砕した貝殻にホタテ貝を用いることで、ホタテ貝殻の処理コストを節約できる。
【0011】
前記破砕した貝殻は、粒径が4.75mm以上19mm以下の範囲で右肩上がりに、通過質量百分率が増加する基本粒径部分を含むことが好ましい。こうすることで、フィルター材に細粒な土が混入することによるフィルター材の透水係数の低下を抑制できる。
ここで「粒径がD1mm以上、D2mm以下である」とは、金属製網ふるいの目開きの寸法がD1mmのものを通過せず、D2mmのものを通過することをいうものとする。
「粒径D3mmにおける通過質量百分率」とは、粒径がD1mm以上D2mm以下の破砕した貝殻の全重量に対する粒径D1mmから粒径D3mmまでの粒径の破砕した貝殻の合計質量の百分率をいうものとする。
また、「4.75mm以上19mm以下の範囲で右肩上がりに」とは、4.75mmと19mmの間の少なくとも1点において、通過質量百分率が0%を超え100%未満であることをいうものとする。
【0012】
前記基本粒径部分は、ふるい目9.5mmにおける通過質量百分率が、10%以上60%未満であることが好ましい。こうすることで、フィルター材に細粒な土が混入することによるフィルター材の透水係数の低下をより効果的に抑制できる。
【0013】
前記破砕した貝殻は、粒径が2mm以上4.75mm未満、及び/又は19mmを超え95mm以下のものを含んでもよい。
【0014】
本発明は、地盤を掘削して設けた竪穴と、前記竪穴内に立設され、貫通孔、又はスリットにより粒状物から水を分離して透過するストレーナを備えた井戸管と、前記井戸管と前記竪穴の周壁の間に充填される粒状物からなるフィルター材とを備えた揚水井に用いるフィルター材であって、前記粒状物が、破砕した貝殻からなるフィルター材を含む。
【発明の効果】
【0015】
以上、説明したように、本発明の揚水井によれば、フィルター材の細粒な土による目詰まりを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係る揚水井の模式図である。
図2】本発明の第2実施形態に係る揚水井の模式図である。
図3】実験例1に用いた実験装置の模式図である。
図4】実験例1の実験装置のフィルター材槽に装填した容器の模式図である。
図5】実験例1に用いた試料の乾燥密度である。
図6】実験例1に用いた試料の粒径加積曲線である。
図7】実験例1から求めた実施例1、及び比較例1の砂混入量、砂混入率、及び砂混入率比を比較して示した表である。
図8】フィルター材の透水係数を推定するために、予め実験により求めた透水係数と砂混入率の関係図である。
図9】実験例1で得られた砂混入率に基づいて、図8の関係図を用いて求めた透水係数の推定値である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明に係る揚水井の実施形態について説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、以下の説明において、「砂」とは、特別な粒径に限るものではなく、「細粒な土」も含むものである。
(実施形態1)
図1は、本発明の第1実施形態に係る揚水井100を示している。揚水井100は、地盤を掘削して設けた竪穴1と、竪穴1内に立設される井戸管2と、井戸管2と竪穴1の周壁の間に充填されるフィルター材3とを主に備える他、井戸管2内に流入した水を汲み揚げる揚水ポンプ4と、井戸管2内の空気を吸引する真空ポンプ5とを備えている。
【0018】
揚水井100は、ウルトラディープ工法(登録商標)に用いられるもので、井戸管2は、円筒鋼管からなる内筒21と、内筒21に環装されるストレーナ22とを備えている。
【0019】
内筒21は、有蓋有底の筒状に設けられ、下端部近傍の周壁に、円形貫通孔からなる通水孔21aを備えている。
ストレーナ22は、金属線材をらせん状に巻回して形成され、隣接するらせんの輪22a,22aの間に形成されるらせん状のスリット22bを備えている。ストレーナ22は、内筒21の下端側の一部と上端側の一部を除いて内筒21を囲繞している。
【0020】
フィルター材3は、ストレーナ22と竪穴1の周壁の間を埋めるように、井戸管2のストレーナの無い上端側の一部と下端側の一部においては、内筒21と竪穴1の周壁との間を埋めるように竪穴1に充填されている。
【0021】
地下水Wは、重力と、真空ポンプ5により内筒21内に供給される負圧によって、フィルター材3、ストレーナ22、及び通水孔21aを介して内筒21内に侵入し、内筒21内に貯留される。内筒21内に貯留された地下水Wは、揚水ポンプ4により汲み上げられる。
【0022】
フィルター材3は、破砕した貝殻からなることが重要である。こうすることで、フィルター材3に砂や砂利を用いる場合に比べて、周囲からフィルター材3に混入した砂(細粒な土)でフィルター材3が目詰まりして、フィルター材3の透水性が損なわれることを抑制できる。
【0023】
フィルター材3の破砕した貝殻に用いられる貝殻は特に限定されず、アサリ、ハマグリ、ホタテ貝等の二枚貝であってもよいし、サザエ、アワビ、タカラ貝等の巻貝であってもよいが、二枚貝が好ましく、ホタテ貝が特に好ましい。フィルター材3に二枚貝、特にホタテ貝の破砕した貝殻を用いることで、他の破砕した貝殻を用いる場合に比べて、フィルター材3に砂(細粒な土)が侵入することを効果的に抑制できる。特にホタテ貝は、その貝殻が北海道から東北にかけて25万トン程度発生しており、産業廃棄物として処理するのに大きなコストがかかっている。フィルター材にホタテの貝殻を破砕して用いることで、ホタテ貝の貝殻の処理コストを低減できる。
【0024】
フィルター材3の破砕した貝殻は、粒径が4.75mm以上19mm以下であり、かつ通過質量百分率が当該範囲において右肩上がりに増加する基本粒径部分を含むことが好ましい。こうすることで、フィルター材3に砂(細粒な土)が混入することによる透水係数の劣化を抑制できる。また、この基本粒径分のみの粒径9.5mmにおける通過質量百分率は、10%以上60%未満が好ましく、20%以上50%未満がより好ましく、30%以上40%未満であることが特に好ましい。こうすることで、より効果的にフィルター材3の透水係数の減少を抑制できる。さらに、フィルター材3は、粒径が4.75mm未満の粒状物が全質量の10%未満であることが好ましい。こうすることで、フィルター材の透水係数を高めることができる。
【0025】
フィルター材3の破砕した貝殻は、粒径が2mm以上4.75mm未満のものを含んでもよく、粒径が19mmを超え95mm未満の破砕した貝殻を含んでいてもよい。
【0026】
(第2実施形態)
図2は、本発明の第2実施形態に係る揚水井200を示している。揚水井200は、地盤を掘削して設けた竪穴1と、竪穴1内に立設される井戸管202と、井戸管202と竪穴1の周壁の間に充填されるフィルター材3とを主に備える他、井戸管202内に流入した水を汲み揚げる揚水ポンプ4とを備えている。尚、第2実施形態において、第1実施形態と共通する部材は、第1実施形態と共通する符号を用いて説明を省略する。
【0027】
第2実施形態に係る揚水井200は、いわゆるディープウエル工法に用いる揚水井であり、井戸管202は、上方に開放された無蓋有底の円筒形をなし、円筒鋼管からなる上側部221と、上側部と略同形に線状部材を巻回して形成したストレーナ222とを備えている。フィルター材3は、井戸管202と竪穴1の周壁の間に充填される。
【0028】
<実験例1-浸透試験>
次に、本発明に係る実施例1、及び比較例1に係るフィルター材に対する砂の混入量を測定した浸透試験について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0029】
浸透試験に用いる実験装置には、図3に示すように、厚さ10mmのアクリル板により、直方体に形成した小型土槽300を用いた。小型土槽300は、本発明に係る揚水井を模したものである。小型土槽300は、内寸で幅430mm、奥行き198mm、高さ450mmとした。小型土槽300は、内部を取り外し可能なアクリル板により幅方向に3等分して、図の左側から順に砂槽301、フィルター材槽302、井戸槽303とした。フィルター材槽302には、図4に示した箱型の容器304を装填した。箱型の容器304は、図3図4における手前側と奥側の側壁と底壁をアクリル板で形成し、左右の側壁をジオテキスタイルにより形成して、深さ400mm、幅90mm、奥行き195mmとした。砂槽301の外側(図3の左側)に給水タンク305を設け、砂槽301の外側面の下部近傍に設けた送水管306を介して、給水タンク305と砂槽301を連結した。井戸槽303の外側面(図3の右側面)下部に排水口307を設けた。
【0030】
(実施例1)
容器304に、試験体として破砕したホタテ貝殻を充填したのち、砂槽301に豊浦砂を相対密度Dr=50%となるように深さ250mmまで充填した。井戸槽303は、排水口307を閉じた状態で深さ50mmまで水で満たした。ここで用いた破砕貝殻及び豊浦砂の乾燥密度、及び粒径化正規曲線を図5図6に示す。続けて、十分な時間をかけて水位が豊浦砂の表面に達するまで、給水タンク305から砂槽301に注水を行った。水位が豊浦砂の表面で安定し井戸槽303との水位差が200mmになったことを確認したのち、砂槽301とフィルター材槽302の間にあるアクリル板301aをゆっくりと引き抜いた。その後、排水口307から水が出なくなるまで排水を行い、容器304を取り外した。こうして得られた砂が混入した試験体を24時間炉乾燥し、ふるい分けを行った後、砂混入量を計測した。
【0031】
(比較例1)
試験体を、図5図6に示した乾燥密度、及び粒径加積曲線を有する砕石とした他は、実施例1と同様にして浸透試験を行い、砂混入量を計測した。図6に示すように、実施例1に係る破砕貝殻と比較例1に係る砕石は、粒径加積曲線が概ね一致するものを用いた。また、砕石、及び破砕貝殻のいずれもふるい目9.5mmにおける通過質量百分率%は、約35%(30%以上40%以下)である。
【0032】
<実験例1の結果、及び考察>
【0033】
(砂混入率比)
実験例1(実施例1、比較例1)に係る浸透試験により得られた砂混入量(g)、砂混入率(%)、及び砂混入率比を図7に示す。ここで砂子混入率(%)は、フィルター材の間隙の体積(cm3)に対するフィルター材に混入した砂の体積(cm3)の割合(百分率)を示したもので、砂混入率比は、砕石(比較例1)の砂混入率に対する破砕貝殻(実施例1)の砂混入率の割合を示す。
【0034】
図7に示すように、砕石と破砕貝殻の砂混入量を比較した場合、砕石の方が砂混入量の少ないことが分かる。一方で、破砕貝殻は間隙率が大きいため、砕石と破砕貝殻の砂混入率を比較した場合、破砕貝殻の方が砂混入率の小さいことが分かる。また、砕石の砂購入率に対する破砕貝殻の砂混入率比が0.7であることから、フィルター材に破砕貝殻を用いることで、フィルター材に砕石を用いる場合に比べて砂混入率を7割程度に抑制できることが分かる。
【0035】
(透水係数)
図8は、本発明者らが砕石、及び破砕貝殻に付いて別途の実験により求めた砂混入率(%)と透水係数(m/s)の関係を示すグラフである。また、図9に示した表において、初期透水係数(%)は砂を混入しない状態における透水係数を、砂混入を考慮した透水係数(%)は、図8のグラフを用いて、図7に示した実施例1の破砕貝殻、及び比較例1の砕石の砂混入率(%)おける透水係数(m/s)を読み取ったものである。また、図9の表において、透水係数減少率(%)は、砂混入を考慮した透水係数(%)の初期透水係数(%)からの減少割合を示す。
【0036】
図9に示したように、砂混入による透水係数の減少率は、実施例1の破砕貝殻の方が、比較例1の砕石に比べて小さく、砕石の代わりに破砕貝殻を用いることで砂混入による透水係数の減少を抑制できることが分かった。
【0037】
以上、本発明に係る揚水井は、上述した実施形態に限られるものではなく、例えば、ストレーナは、フィルター材の通過を抑制して水を通す貫通孔やスリットを有していればよく、金属線材をらせん状に巻回したものでなくてもよい。破砕貝殻に用いる貝殻は、ホタテ貝でなくともよいし、二枚貝でなくともよい。破砕貝殻は、粒径が2mm未満のものや95mmを超えるものを含んでもよい。本発明の揚水井は、地中に注水を行う注水井として用いることも可能である。
【符号の説明】
【0038】
100 揚水井
1 竪穴
22b スリット
22 ストレーナ
2 井戸管
3 フィルター材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2024-08-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を掘削して設けた竪穴と、前記竪穴内に立設され、貫通孔、又はスリットにより粒状物水を分離して透過するストレーナを備えた井戸管と、前記井戸管と前記竪穴の周壁の間に充填される粒状物からなるフィルター材とを備えた揚水井であって、
前記粒状物が、破砕した貝殻からなることを特徴とする揚水井。
【請求項2】
前記貝殻は、二枚貝の貝殻である請求項1に記載の揚水井。
【請求項3】
前記貝殻は、ホタテ貝の貝殻である請求項1に記載の揚水井。
【請求項4】
前記破砕した貝殻は、粒径が4.75mm以上19mm以下の範囲で右肩上がりに、通
過質量百分率が増加する基本粒径部分を含む請求項1に記載の揚水井。
【請求項5】
前記基本粒径部分は、ふるい目9.5mmにおける通過質量百分率が10%以上60%未満である請求項4に記載の揚水井。
【請求項6】
前記破砕した貝殻は、粒径が2mm以上4.75mm未満、及び/又は19mmを超え、95mm以下であるものを含む請求項4に記載の揚水井。
【請求項7】
地盤を掘削して設けた竪穴と、前記竪穴内に立設され、貫通孔、又はスリットにより粒状物水を分離して透過するストレーナを備えた井戸管と、前記井戸管と前記竪穴の周壁の間に充填される粒状物からなるフィルター材とを備えた揚水井に用いるフィルター材であって、
前記粒状物が、破砕した貝殻からなるフィルター材。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、地盤を掘削して設けた竪穴と、前記竪穴内に立設され、貫通孔、又はスリットにより粒状物水を分離して透過するストレーナを備えた井戸管と、前記井戸管と前記竪穴の周壁の間に充填される粒状物からなるフィルター材とを備えた揚水井であって、前記粒状物が、破砕した貝殻からなることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
本発明は、地盤を掘削して設けた竪穴と、前記竪穴内に立設され、貫通孔、又はスリットにより粒状物水を分離して透過するストレーナを備えた井戸管と、前記井戸管と前記竪穴の周壁の間に充填される粒状物からなるフィルター材とを備えた揚水井に用いるフィルター材であって、前記粒状物が、破砕した貝殻からなるフィルター材を含む。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
(実施例1)
容器304に、試験体として破砕したホタテ貝殻を充填したのち、砂槽301に豊浦砂を相対密度Dr=50%となるように深さ250mmまで充填した。井戸槽303は、排水口307を閉じた状態で深さ50mmまで水で満たした。ここで用いた破砕貝殻及び豊浦砂の乾燥密度、及び粒径加積曲線を図5図6に示す。続けて、十分な時間をかけて水位が豊浦砂の表面に達するまで、給水タンク305から砂槽301に注水を行った。水位が豊浦砂の表面で安定し井戸槽303との水位差が200mmになったことを確認したのち、砂槽301とフィルター材槽302の間にあるアクリル板301aをゆっくりと引き抜いた。その後、排水口307から水が出なくなるまで排水を行い、容器304を取り外した。こうして得られた砂が混入した試験体を24時間炉乾燥し、ふるい分けを行った後、砂混入量を計測した。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
(砂混入率比)
実験例1(実施例1、比較例1)に係る浸透試験により得られた砂混入量(g)、砂混入率(%)、及び砂混入率比を図7に示す。ここで砂混入率(%)は、フィルター材の間隙の体積(cm3)に対するフィルター材に混入した砂の体積(cm3)の割合(百分率)を示したもので、砂混入率比は、砕石(比較例1)の砂混入率に対する破砕貝殻(実施例1)の砂混入率の割合を示す。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0034
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0034】
図7に示すように、砕石と破砕貝殻の砂混入量を比較した場合、砕石の方が砂混入量の少ないことが分かる。一方で、破砕貝殻は間隙率が大きいため、砕石と破砕貝殻の砂混入率を比較した場合、破砕貝殻の方が砂混入率の小さいことが分かる。また、砕石の砂混入率に対する破砕貝殻の砂混入率比が0.7であることから、フィルター材に破砕貝殻を用いることで、フィルター材に砕石を用いる場合に比べて砂混入率を7割程度に抑制できることが分かる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0035
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0035】
(透水係数)
図8は、本発明者らが砕石、及び破砕貝殻にいて別途の実験により求めた砂混入率(%)と透水係数(m/s)の関係を示すグラフである。また、図9に示した表において、初期透水係数(%)は砂を混入しない状態における透水係数を、砂混入を考慮した透水係数(%)は、図8のグラフを用いて、図7に示した実施例1の破砕貝殻、及び比較例1の砕石の砂混入率(%)おける透水係数(m/s)を読み取ったものである。また、図9の表において、透水係数減少率(%)は、砂混入を考慮した透水係数(%)の初期透水係数(%)からの減少割合を示す。